説明

色素および色素増感太陽電池

【課題】高い光電変換効率と高い耐久性を有する増感色素の提供。
【解決手段】下式で示される色素。


[式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム原子を表す。L1、L2は、下式あるいは特定のビピリジル骨格を有する化合物で表される二座配位子である。また、L3は一価の原子あるいは原子団を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色素およびそれを用いた色素増感型の太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅などの化合物太陽電池が実用化もしくは研究開発の対象となっている。これらの太陽電池を更に普及させる為には、製造コスト、原材料、エネルギーペイバックタイム等に関する問題点を克服する必要がある。一方、大面積化や低価格を指向した有機材料を用いた太陽電池もこれまでに多く提案されているが、これらは変換効率が低く、耐久性も悪いという問題があった。
【0003】
こうした状況の中で、色素によって増感された半導体微多孔質体を用いた光電変換電極及び光電変換セル、並びにこれを作製する為の材料及び製造技術が開示されている。(非特許文献1および特許文献1参照)開示されている電池は、ルテニウム錯体色素によって分光増感された酸化チタン多孔質薄層を作用電極とし、ヨウ素を主体とする電解質層および対電極から成る色素増感型の光電変換セルである。この方式の第一の利点は、酸化チタン等の安価な酸化物半導体を用いることから安価な光電変換素子の提供が可能であることである。また、第二の利点は、使用されるルテニウム錯体色素が可視光域に幅広く吸収を有していることから比較的高い変換効率が得られることである。
【0004】
ルテニウム錯体色素により増感された酸化チタン多孔質薄層を電極とし、電解質層および対電極から構成される電池が開発された背景を次に記す。
【0005】
半導体光電極と電解質溶液及び白金極等の対極から構成される湿式太陽電池は古くから研究が行われていた。それらの電池では光電変換効率が10%以上の結果も得られてはいるものの、大部分の電池では電極の光化学的安定性が低く、耐久性が不十分であった。この理由から、半導体光電極の安定化の為の処理を施す必要があり、その結果として構成が複雑になるという短所もあった。1960年代後半からは、光化学的に安定であるが紫外領域の光のみが利用できるワイドギャップ半導体である酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン等の光電極に色素を吸着させ、その増感作用により安定かつ可視光を利用できる湿式太陽電池を作製する試みが始められた。湿式太陽電池に対するこのような色素増感効果は、1968年に初めて報告された。(非特許文献2)このような湿式太陽電池に使用された材料は、半導体電極としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン等のn型半導体単結晶、多結晶及び焼結体、色素としては、ローズベンガル、シアニン、メロシアニン、フタロシアニン、クロロフィル等、電解質としては、ヨウ化カリウム、フェロシアン化カリウム、ハイドロキノン等であった。上記の材料を用いて作製された電池は総じて光電変換効率が低く、変換効率向上のために半導体表面を多孔性にして色素が吸着する表面積を増加させる方法が研究されていた。これらの電池の光電変換効率が低い原因の一つは色素の光吸収領域が狭いことにあったが、これはルテニウム錯体色素により制約が打破された。この色素は、1970年代から活発になった人口光合成研究において、均一系触媒による光エネルギー変換系の研究過程で見出されたものである。特に、ビピリジル誘導体を配位子とするルテニウム系錯体は600nmまでの可視光を吸収し、光励起寿命が長く、且つ、電子移動過程において生ずる酸化種が安定であるという特徴を有する色素として注目された。1980年には酸化チタン単結晶電極の表面に色素を固定する際に有利とされるルテニウムビピリジル錯体のカルボン酸誘導体が合成され、それを酸化チタン光電極に固定した色素増感太陽電池が報告されている。(非特許文献3)1985年にはルテニウム錯体色素を、単結晶ではなく表面積の大きい酸化チタン光電極に吸着させ、450nmの単色光を用いて12%の光電変換効率を示す電池が報告されている。(非特許文献4)その後は、更に光吸収領域のより広いルテニウム錯体色素の開発、酸化チタン光電極の高表面積化の検討が行われ、1997年には、600nm付近に吸収極大を有し、800nm付近まで吸収の広がったブラックダイと呼ばれるルテニウム錯体色素(下記式1参照)を用いることにより、太陽光照射下において10〜11%の光電変換効率を示す太陽電池が作製された。(非特許文献5)
【0006】
式1
【化1】




【0007】
式1においてTBAはテトラブチルアンモニウムイオンを表す。
【0008】
色素増感太陽電池用の色素としては、上記のブラックダイ以外にN3(下記式2参照)、N719(下記式3参照)と呼ばれる色素もまた広く用いられている。
【0009】
式2
【化2】

【0010】
式3
【化3】

【0011】
これらの色素は量子収率という観点からは優れてはいるが、光電変換効率、耐久性の点に関しては未だ不十分であり、更に高い光電変換効率と耐久性を有する太陽電池の提供を可能にする増感色素が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許4927721号明細書
【特許文献2】特開2002‐164089号公報
【特許文献3】WO 02/11213号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Nature(353巻、737頁、1991年)
【非特許文献2】Physical Chemistry(72巻、437頁、1968年)
【非特許文献3】Faraday Discussions of the Chemical Society(70巻、285頁、1980年)
【非特許文献4】Journal of the American Chemical Society(107巻、2988頁、1985年)
【非特許文献5】Chemical Communications(1705頁、1997年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記の状況を鑑みた上でなされたものであり、その目的は色素増感太陽電池に用いた場合に高い光電変換効率と高い耐久性を有する増感色素を提供することにある。さらにはこの増感色素を無機半導体多孔質体表面に連結させた太陽電池材料、及び、導電性表面を有する透明基材の電導面に積層して成る太陽電池電極、及び、太陽電池電極を電解質層を介して導電性対極と組み合わせて成る太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、透明導電性基板上に積層させた無機酸化物半導体表面に特定の増感色素を連結させることにより、良好な特性を示す太陽電池の作製が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は下記の一般式(1)で表される色素に関する。


【0017】
一般式(1)
【化4】

【0018】
[式中、Mは鉄、ルテニウム、または、オスミウム原子を表す。
1およびL2はそれぞれ独立に、下記一般式(2)あるいは一般式(3)で表される二座配位子であり、L1およびL2の少なくとも一方は一般式(2)で表される二座配位子である。
また、L3は一価の原子あるいは原子団を表す。]
【0019】
一般式(2)
【化5】

【0020】
[式中、R1乃至R4はそれぞれ独立に電子吸引基を表す。
また、X1乃至X4はそれぞれ独立に、無置換もしくは炭素数12以下のアルキル基で置換された二価のチオフェン残基、あるいは、無置換もしくは炭素数12以下のアルキル基で置換された二価の縮合チオフェン残基を表す。
また、a、b、c及びdはそれぞれ整数を表し、a、b、c及びdの和は1乃至12である。]
【0021】
一般式(3)
【化6】

【0022】
[式中、R5乃至R12はそれぞれ独立に、水素原子、酸性官能基、炭素数12以下のアルキル基を表し、R5乃至R12の少なくとも一つは酸性官能基である。]
【0023】
また、本発明は、R1およびR3がシアノ基であり、R2およびR4がカルボキシ基である上記色素に関する。
【0024】
また、本発明は、Mがルテニウム原子である上記色素に関する。
【0025】
また、本発明は、上記色素を含んで成る太陽電池用増感色素に関する。
【0026】
また、本発明は、上記増感色素と無機半導体多孔質体とを連結させて成る太陽電池材料に関する。
【0027】
また、本発明は、上記太陽電池材料を透明電極に積層させて成る電極に関する。
【0028】
また、本発明は、上記電極、電解質層及び導電性対極を含んで成る太陽電池に関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高い光電変換効率を有する色素増感太陽電池を提供することが可能である。また、本発明の増感色素と他の増感色素を組み合わせることにより、太陽光に対して幅広い波長領域で高効率な光電変換機能を発現する太陽電池材料、電極及び太陽電池の作製が可能である。更に、本発明の色素はチオフェンあるいは縮合チオフェンの連結した構造を有し、光、熱等による劣化が無く、安定性の高い太陽電池の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、太陽電池試験試料の構成を表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0032】
色素増感型太陽電池の動作機構は次に記す過程より成るものである。すなわち、太陽光を吸収した増感色素が光励起された後に励起状態の増感色素から酸化チタン等の無機半導体の伝導帯へ電子が注入される過程、無機半導体に電子を注入して酸化された増感色素に対してヨウ素をはじめとするレドックス系からの電子注入による還元過程である。
【0033】
従って、光電変換用増感色素に必要な機能としては、色素が広い吸収領域を有して太陽光を効率的に吸収できること、酸化チタン等の無機化合物半導体に効率よく電荷を注入できること等が挙げられる。
【0034】
一般式(1)で表される増感色素は、末端に酸性官能基もしくはその誘導体等の電子吸引性の基を有している為、酸化チタン等の無機化合物半導体表面への物理吸着、エステル結合等を介した化学吸着等が可能であり、色素分子と酸化チタンとの間に極めて安定な状態を形成することが可能である。また、この効果により、色素から酸化チタン等の無機半導体への電子注入が効率的に行われる。
【0035】
また、R1乃至R4が電子吸引性の基であるシアノ基、酸性官能基等の構造をとることにより、これらの官能基の結合する炭素原子の電子受容性が著しく高くなり、この性質が二重結合を介してピリジン環、更に中心原子Mへと波及している。このため、励起電子が中心原子M、ピリジン環及びこの環に結合した電子吸引基を経由して酸化チタン等の無機半導体へ極めて効率的に注入される。
【0036】
さらに、一般式(1)で表される色素の化学構造の特徴としては、電子受容性部位となるビピリジル誘導体と、一価の原子あるいは原子団であるL3を中心原子Mでつなぐ構造をとっている。このような特徴的な化学構造は、基底状態で電子が一価の原子あるいは原子団L3に局在化し、励起状態では電子が電子受容性部位であるビピリジル誘導体部位に局在化するという傾向がある。その結果、電子受容性部位から酸化チタン等の無機化合物半導体への電子注入を極めて効率的に行なうことができる。
【0037】
すなわち、一般式(1)で表される色素の化学構造は、高い光電変換効率と高い安定性を達成し得る構造であると言える。
【0038】
次に、一般式(2)あるいは一般式(3)で表される二座配位子中の各置換基について説明する。
【0039】
一般式(2)で表される二座配位子中のR1乃至R4はそれぞれ独立に電子吸引基を表す。
【0040】
本発明における電子吸引基とは、ハメットの置換基定数σの値が正である官能基を表す。これらの官能基としては、好ましくは、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、酸性官能基もしくはその誘導体などの電子吸引基である。
【0041】
酸性官能基としては、特に制限はないが、好ましくはカルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、ヒドロキシ基、ヒドロキサム酸基、ボロン酸基、スクアリン酸基等があげられる。これらの酸性官能基は、その誘導体であってもよい。誘導体としては特に制限はないが、例えば、エステル体、アミド体、陽イオンを対イオンとする塩が挙げられる。
【0042】
酸性官能基のアミド体としては、カルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジフェニルカルバモイル基、スルホンアミド基、ジメチルアミノスルホニル基、ジエチルアミノスルホニル基、ジフェニルアミノスルホニル基等が挙げられる。
【0043】
陽イオンを対イオンとする酸性官能基における陽イオンとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0044】
酸性官能基以外では特に制限はないが、前述のシアノ基、ペルフルオロアルキル基の他にカルボキシ基、ニトロ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ペルフルオロアルキルカルボニル基、4−シアノフェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0045】
また、ペルフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0046】
また、アシル基としては、アセチル基、チオアセチル基、ベンゼンスルホニル基、ホスホノニトリドイル基等が挙げられる。
【0047】
また、アルキルオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0048】
また、アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0049】
また、アルキルスルホニル基としては、メシル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基等が挙げられる。
【0050】
また、アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられる。
【0051】
また、ペルフルオロアルキルカルボニル基としては、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基、ヘプタフルオロプロピルカルボニル基等が挙げられる。
【0052】
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0053】
また、一般式(2)で表される二座配位子中のX1及びX2はそれぞれ独立に、無置換もしくは炭素数12以下のアルキル基を有する二価のチオフェン残基、あるいは、無置換もしくは炭素数12以下のアルキル基を有する二価の縮合チオフェン残基を表す。
【0054】
本発明において、炭素数12以下のアルキル基としては、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0055】
本発明における縮合チオフェン残基とはチオフェン環が2乃至7個縮合した構造の残基であり、下記の構造式(1)乃至構造式(6)に示す。
【0056】
構造式(1)
【化7】



【0057】
構造式(2)
【化8】



【0058】
構造式(3)
【化9】



【0059】
構造式(4)
【化10】



【0060】
構造式(5)
【化11】

【0061】
構造式(6)
【化12】



【0062】
上記の構造式(1)乃至構造式(6)に示した縮合チオフェン残基は、例えば、Journal of Organic Chemistry、72巻、442頁乃至451頁(2007年)に記載されている方法により製造することが出来る。
【0063】
一般式(3)で表される二座配位子中のR5乃至R12は、それぞれ独立に、水素原子、酸性官能基、炭素数12以下のアルキル基を表し、少なくとも一つは酸性官能基である。ここで、酸性官能基としては、一般式(2)で表される二座配位子中のR1乃至R4の説明において述べた酸性官能基と同義である。また、炭素数12以下のアルキル基としては、一般式(2)で表される二座配位子の説明における炭素数12以下のアルキル基と同義である。
【0064】
次の表1に本発明の光電変換用増感色素として用いることができる化合物の代表例を示すが、本発明はこれらの代表例に限定されるものではない。
【0065】
表1
【表1】

【0066】
【表1】

【0067】
【表1】

【0068】
【表1】

【0069】
【表1】

【0070】
【表1】

【0071】
【表1】

【0072】
【表1】

【0073】
【表1】

【0074】
【表1】

【0075】
【表1】

【0076】
【表1】

【0077】
【表1】

【0078】
【表1】

【0079】
【表1】

【0080】
【表1】

【0081】
【表1】

【0082】
【表1】

【0083】
【表1】

【0084】
ところで、本発明において用いられる光電変換用増感色素は、一般式(1)で表される増感色素が吸収し得ない領域の太陽光の吸収を補うために他の増感色素と組み合わせて用いることが出来る。ここにおいて他の増感色素としてはアゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素等及びその誘導体等があげられる。これらの増感色素はその化学構造中に無機半導体多孔質体表面に連結し得るような官能基を有していることが望ましい。その理由としては、光励起された色素の励起電子を無機半導体多孔質体の伝導帯に迅速に伝達可能であることが挙げられる。ここでいう官能基とは、前述の酸性官能基等が挙げられるが、無機半導体多孔質体表面に増感色素を連結し、色素の励起電子を無機半導体多孔質体の伝導帯に迅速に伝え得る機能を有する置換基であればよい。
【0085】
以下、本発明で使用される光電変換用増感色素以外の材料について説明する。
【0086】
(無機酸化物)
本発明において用いられる光電変換用増感色素は連結基を介して無機半導体多孔質体表面に連結することによって無機半導体多孔質体が増感された光電変換材料を形成する。無機半導体は、一般に、一部の領域の光に対して光電変換機能を有しているが、この表面に増感色素を連結することによって可視光及び/又は近赤外光領域までの光電変換が可能となる。無機半導体多孔質体としては主に無機酸化物が用いられるが、増感色素を連結することによって光電変換機能を有する無機半導体多孔質体であればこれに限らない。無機半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、III族‐V族系半導体、金属カルコゲニド等が挙げられる。本発明で用いられる無機酸化物半導体多孔質体としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等の多孔質体を挙げることができるが、これらの表面が増感色素を連結することによって可視光及び/又は近赤外光領域までの光電変換が可能となるものであればこれらに限らない。無機酸化物半導体多孔質体表面が増感色素によって増感されるためには無機酸化物の伝導帯が増感色素の光励起準位から電子を受容し易い準位に存在することが望ましい。この理由から、前記無機酸化物半導体多孔質体の中でも、特に酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が用いられる。さらに、価格や環境衛生性等の点から、特に酸化チタンが用いられる。また、本発明においては前記無機酸化物半導体多孔質体から一種類又は複数の種類を選択して組み合わせることができる。
【0087】
(無機酸化物の多孔質化)
無機半導体多孔質体は多量の増感色素をその表面に連結し、高効率な光電変換能力を発現させる目的から、多孔質化することにより広い表面積を有している。多孔質化の方法としては、粒子径が数乃至数十ナノメートルの酸化チタン等の無機酸化物粒子をペースト化した後に焼結する方法が広く知られているが、多孔質化して広い表面積を得る方法であればこれに限らない。
【0088】
(光電変換電極)
本発明において用いられる光電変換材料は電導性表面を有する透明基材の電導面に積層することによって光電変換電極を形成する。
【0089】
(電導性表面)
本発明において用いられる電導性表面としては、太陽光の可視領域から近赤外領域に対して光吸収が少ない導電材料であれば特に限定されないが、ITO(インジウム−スズ酸化物)や酸化スズ(フッ素等によりドープされたものを含む)、酸化亜鉛等の電導性の良好な金属酸化物が好適である。
【0090】
(透明基材)
用いられる透明基材としては太陽光の可視領域から近赤外領域における光吸収の少ない材料であれば特に限定されない。石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、塩化ビニール等の樹脂基材等を用いることができる。
【0091】
(積層方法)
本発明において用いられる光電変換材料を、電導性表面を有する透明基材の電導面に積層する方法としては、電導面にペースト化した無機酸化物粒子を塗布した後に乾燥又は焼結させることにより無機酸化物半導体多孔質体を形成し、これを透明基材ごと増感色素を溶解させた溶液中に浸すことにより、無機多孔質表面と増感色素の連結基の親和性を利用して増感色素を無機多孔質表面に結合させる方法が一般的であるが、この方法に限定されない。無機酸化物粒子をペースト化させるためには無機酸化物粒子を水又は適当な有機溶媒中に分散させる。均質で表面積が大きい無機多孔質表面として積層させるには分散性の良いペーストにすることが重要であり、必要に応じて、硝酸やアセチルアセトン等の酸やポリエチレングリコール、トリトンX−100等の分散剤をペースト成分に混合し、ペイントシェーカー等を用いてペースト化する。ペーストを透明基材の電導面に塗布する方法としてはスピンコーターによる塗布方法、スクリーン印刷法、スキージを用いた塗布方法、ディップ法、吹き付け法、ローラー法等が用いられる。塗布された無機酸化物ペーストは乾燥又は焼成後にペースト中の揮発成分が除去され透明基材の電導面上に無機酸化物半導体多孔質体を形成する。乾燥又は焼成の条件としては、例えば400℃から500℃の温度で30分乃至1時間程度の熱エネルギーを与える方法が一般的であるが、透明基材の電導面に密着性を有し、太陽光照射時に良好な起電力が得られる乾燥又は焼成方法であればこれに限らない。
【0092】
増感色素を溶解させた溶液を調製する際に用いる溶剤としては、エタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン等の炭酸エステル系溶剤、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチルイミダゾリノン、N−メチルピロリドン、水等を用いることができるがこれらに限らない。
【0093】
透明基材の電導面上に形成される無機酸化物半導体多孔質体の膜厚は0.5μm乃至200μmであることが望ましい。膜厚がこの範囲未満の場合には良好な変換効率が得られない。又膜厚がこの範囲より厚い場合には成膜時に割れや剥がれが生じる等作製が困難になるだけでなく、無機酸化物半導体多孔質体表層と電導面との距離が長くなり、発生した電荷が電導面に有効に伝えられなくなる為に良好な変換効率を得ることが困難になる。
【0094】
(光電変換セル)
本発明において用いられる光電変換電極は、電解質層を介して導電性対極を組み合わせることにより光電変換セルを形成する。
【0095】
(電解質層)
本発明で用いられる電解質層は電解質、媒体及び添加物から構成されることが好ましい。本発明の電解質はヨウ素とヨウ化物(例としてヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化第一銅、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等)の混合物、臭素と臭化物(例として臭化リチウム等)の混合物、Inorganic Chemistry,35巻,1168−1178頁(1996年)に記載の溶融塩等を用いることができるがこの限りではない。この中でもヨウ素とヨウ化物の組み合わせとしてヨウ化リチウム、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等を混合した電解質が本発明では好ましいが、この組み合わせに限らない。好ましい電解質濃度は、媒体中のヨウ素が0.01M乃至0.5Mでありヨウ化物の混合物が0.1M乃至15Mである。
【0096】
本発明で電解質層に用いられる媒体は、良好なイオン電導性を発現できる化合物であることが望ましい。溶液状の媒体としては、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン性極性溶媒、水などを用いることができる。
【0097】
また、固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、ポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーを前記溶液状媒体中に添加したり、エチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーを前記溶液状媒体中で重合させることにより媒体を固体状にする。
【0098】
電解質層としては、この他にCuI、CuSCN媒体を必要としない電解質及びNature,395巻,583−585頁(1998年)記載の2,2',7,7'−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9'−スピロビフルオレンのような正孔輸送材料を用いることができる。
【0099】
本発明に用いられる電解質層には、光電変換セルの電気的出力を向上させたり、耐久性を向上させる働きをする添加物を添加することができる。電気的出力を向上させる添加物として4−t−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等があげられる。耐久性を向上させる添加物としてはヨウ化マグネシウム等が挙げられる。
【0100】
(導電性対極)
本発明で用いられる電導性対極は光電変換セルの正極として機能するものである。具体的に対極に用いる導電性の材料としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、ITO(インジウム‐スズ酸化物)や酸化スズ(フッ素等によりドープされたものを含む)、酸化亜鉛等の金属酸化物、または炭素等が挙げられる。対極の膜厚は特に制限はないが、5nm乃至10μmであることが好ましい。
【0101】
(組み立て方)
前記の光電変換電極と導電性対極を、電解質層を介して組み合わせることにより光電変換セルを形成する。必要に応じて電解質層の漏れや揮発を防ぐために、光電変換セルの周囲に封止を施す。封止には熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、ガラスフリット等を封止材料として用いることができる。光電変換セルは必要に応じて小面積の光電変換セルを連結させて作る。光電変換セルを直列に組み合わせることにより起電圧を高くすることができる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を具体的に示すが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、本発明の色素の合成例を示す。
【0103】
色素(1)の合成
cis−ジクロロビス(2,2'−ビピリジン)ルテニウム(II)二水和物0.31g(0.51mmol)及び下記の式(4)で表されるビピリジル誘導体0.52g(1.02mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド140ml中、遮光、窒素気流下、室温にて15分間攪拌した。攪拌下に80℃まで加熱し、この温度において4時間攪拌した。次に、2,2'−ビピリジン−4,4'−ジカルボン酸0.25g(1.02mmol)を添加し、140℃において4時間攪拌した。更に、チオシアン酸カリウム2.67g(27.47mmol)及び蒸留水5mlで調製した水溶液を滴下し、140℃において4時間攪拌した。N,N−ジメチルホルムアミド及び水を減圧溜去した後に0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液20mlを添加し、攪拌した後にろ過した。0.5M硝酸を用いてろ液をpH3.5に調製し、0〜5℃に冷却下、3時間攪拌した。液温を室温に戻した後にろ過し、pH3.5の水で洗浄し、室温にて減圧乾燥することにより、生成物0.88g(収率88.9%)を得た。この生成物に対してカラムクロマトグラフィー精製(吸着剤:Sephadex LH−20、溶離液:メタノール)を施し、精製物0.61gを得た。
【0104】
式(4)
【化13】




【0105】
この精製物が色素(1)であることを、質量分析、核磁気及び赤外分光分析及び炭素、水素、窒素に関する元素分析の結果から確認した。
元素分析の結果を次に示す。
40228O8RuS4として、
炭素 水素 窒素
計算値(%) 49.43 2.28 11.53
実測値(%) 49.51 2.31 11.46
【0106】
色素(6)の合成
塩化ルテニウム三水和物0.52g(2.00mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド50ml中、遮光、窒素気流下、室温にて15分間攪拌した。次に、式(4)で表されるビピリジル誘導体2.04g(4.00mmol)及び N,N−ジメチルホルムアミド50mlを添加し、加熱還流下に3時間攪拌した後に室温まで冷却した。減圧溜去によりN,N-ジメチルホルムアミドを除去した後にアセトンとジエチルエーテルを1:4で混合した溶媒を添加、攪拌し、ろ過した。更に、遮光下、2M塩酸100ml中、室温で2時間攪拌した後に、ろ過、乾燥することにより生成物1.99g(収率83.6%)を得た。
【0107】
上記の生成物1.68g(1.41mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド85mlに溶解し、この溶液にチオシアン酸カリウム4.95g(50.94mmol)と蒸留水9mlで調製した水溶液を滴下した。遮光、還流加熱下に5時間攪拌した後に室温まで冷却し、ろ過した。減圧溜去により、ろ液からN,N−ジメチルホルムアミドを除去し、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加、攪拌した後にろ過した。ろ液を0.5M硝酸を用いてpH3.5に調整し、0〜5℃において12時間静置した。室温に戻した後にろ過、水洗、風乾することにより精製物1.42g(収率81.1%)を得た。この生成物に対してカラムクロマトグラフィー精製(吸着剤:Sephadex LH−20、溶離液:メタノール)を施し、精製物1.09gを得た。
【0108】
この精製物が色素(6)であることを、質量分析、核磁気及び赤外分光分析及び炭素、水素、窒素に関する元素分析の結果から確認した。
元素分析の結果を次に示す。
542810O8RuS6として、
炭素 水素 窒素
計算値(%) 52.38 2.28 11.31
実測値(%) 52.29 2.24 11.38
【0109】
光電変換用増感色素の評価法として、増感色素を用いて組み立てた光電変換セルの変換効率を測定する方法について、光電変換セルの試験試料を表した図1を用いて説明する。
【0110】
透明電極
フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)を使用した。
【0111】
導電性対極
フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3(旭ガラス社製、タイプU−TCO)の導電層上に、スパッタリング法により白金層(白金電極層)(厚み150nm)を積層した導電性対極4を用いた。
【0112】
酸化チタンペーストの調製
下記の処方で酸化チタンとジルコニアビーズを混合し、ペイントシェーカーを用いて分散することにより酸化チタンペーストを得た。
酸化チタン(日本アエロジル社製 P25 粒子径 21nm) 6 部
水(硝酸添加でpH2に調整) 14 部
アセチルアセトン 0.6 部
界面活性剤(ICN社製 Triton X−100) 0.04 部
PEG‐#500,000 0.3 部
【0113】
酸化チタン多孔質層の作成
透明電極の導電面(透明電極層3)に厚さ60μmのメンディングテープを張り、1cm角のテープを除去することでマスクを作り、空いた部分に上記酸化チタンペーストを数滴たらした後に、スキージで余分のペーストを除去した。風乾後、全てのマスクを除去し、450℃のオーブンで1時間焼成して、有効面積1cm2の酸化チタン多孔質層を有する酸化チタン電極を得た。
【0114】
増感色素の吸着
光電変換用増感色素をt−ブタノール:アセトニトリル=1:1(体積比)に溶解(濃度0.5mmol/L)し、メンブランフィルターで不溶分を除去した後に、この色素溶液に上記酸化チタン電極を浸漬し、室温で24時間放置した。浸漬時間は、実際にセルを作成して変換効率を求め、その変換効率が最大となるように設定した。
着色した電極表面を、溶解に使用した溶媒およびアルコールで洗浄した後、4−t−ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分浸した後、乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質層1を有する光電変換電極を得た。
【0115】
電解質溶液の調製
下記処方の電解質溶液を調製した。溶媒にはメトキシアセトニトリルを用いた。
ヨウ化リチウム 0.1M
ヨウ素 0.05M
4−t−ブチルピリジン 0.5M
1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド 0.6M
【0116】
光電変換セルの組み立て
図1に示すように、光電変換セルの試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記の手順により光電変換用増感色素を吸着させた酸化チタン多孔質層1が形成された透明電極(フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板3)と、フッ素ドープ型酸化スズ層付ガラス基板の導電層上に白金層が積層された導電性対極4とを、樹脂フィルム製スペーサー6(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(25μm厚))を挟んで固定し、その空隙に上記の電解質溶液を注入して電解質溶液層2を形成した。ガラス基板3及び白金対極層には、それぞれ変換効率測定用の導線7を固定した。
【0117】
変換効率の測定方法
ORIEL社製ソーラーシミュレーター(#8116)とエアマスフィルターを組み合わせ、光量計で100mW/cm2 の光量に調整して測定用光源とした。光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI−Vカーブ特性を測定した。変換効率ηは、I−Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)及びff(フィルファクター値)を用いて下記の式により算出した。
【0118】

η(%)= Voc(V)×Isc(mA)×ff×100
100(mW/cm2)× 1(cm2

【0119】
実施例1〜14
表1に記載した例示色素のうち、表2に示す色素を増感色素として用い、上記の方法により組み立てたセルを用いて評価を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0120】
なお、表2には比較例として、既に背景技術の説明において例示した色素N3(式2参照)について、実施例1と同様の評価を行った結果を併記した。
【0121】
【表2】

【0122】
表2に示した実施例から明らかなように、本発明の光機能材料を用いて作製した素子は蛍光灯下暴露24時間後及び擬似太陽光照射100時間後において、作製直後とほぼ同等の変換効率を示している。これらの実施例に対して比較例では、前記の何れの条件下においても、変換効率が作製直後の値から著しく低下していることが分かる。
【符号の説明】
【0123】
1.酸化チタン多孔質層(光電変換用増感色素を吸着済み)
2.電解質溶液層
3.透明電極層(フッ素ドープ型酸化スズ)
4.Pt電極層
5.ガラス基盤
6.樹脂フィルム製スペーサー
7.変換効率測定用導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される色素。
一般式(1)
【化1】

ML12(L32

[式中、Mは鉄、ルテニウム、または、オスミウム原子を表す。
1およびL2はそれぞれ独立に、下記一般式(2)あるいは一般式(3)で表される二座配位子であり、L1およびL2の少なくとも一方は一般式(2)で表される二座配位子である。
また、L3は一価の原子あるいは原子団を表す。]
一般式(2)
【化2】

[式中、R1乃至R4はそれぞれ独立に電子吸引基を表す。
また、X1乃至X4はそれぞれ独立に、無置換もしくは炭素数12以下のアルキル基で置換された二価のチオフェン残基、あるいは、無置換もしくは炭素数12以下のアルキル基で置換された二価の縮合チオフェン残基を表す。
また、a、b、c及びdはそれぞれ整数を表し、a、b、c及びdの和は1乃至12である。]


一般式(3)
【化3】

[式中、R5乃至R12はそれぞれ独立に、水素原子、酸性官能基、炭素数12以下のアルキル基を表し、R5乃至R12の少なくとも一つは酸性官能基である。]
【請求項2】
1およびR3がシアノ基であり、R2およびR4がカルボキシ基である請求項1に記載の色素。
【請求項3】
Mがルテニウム原子である請求項1に記載の色素。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の色素を含んで成る太陽電池用増感色素。
【請求項5】
請求項4記載の増感色素と無機半導体多孔質体とを連結させて成る太陽電池材料。
【請求項6】
請求項5記載の太陽電池材料を透明電極に積層させて成る電極。
【請求項7】
請求項6記載の電極、電解質層及び導電性対極を含んで成る太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−131906(P2012−131906A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285258(P2010−285258)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】