色素乾皮症遺伝子からのDNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型及びその使用
I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADG コアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有するI-CreI 変異型であって、色素乾皮症遺伝子からのDNA標的配列を切断できる変異型。該変異型及び誘導生成物の、色素乾皮症の予防及び治療のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素乾皮症遺伝子(XP遺伝子)からのDNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターにより改変された細胞、動物又は植物、並びに該メガヌクレアーゼ変異型及びその誘導生成物のインビボ及びエクスビボ(遺伝子細胞治療)でのゲノム療法及びゲノム工学のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
色素乾皮症(XP)は、紫外線A (UV)の光線への露出に対する過敏症、太陽光線に露出された領域での皮膚がんの発生についての高い素因、及びある場合においては神経障害により特徴付けられる希な常染色体上の劣性遺伝子の疾患である(Hengge, U.R.及びW. Bardenheuer, Am. J. Med. Genet. C. Semin. Med. Genet., 2004, 131: 93〜100; Magnaldo, T.及びA. Sarasin, Cells Tissues Organs, 2004, 177: 189〜198; Cleaver, J. E., Nat. Rev. Cancer, 2005, 5: 564〜573; Hengge U.R., Clin. Dermatol., 2005, 23: 107〜114)。XP患者の細胞は、UVにより誘発されるDNA損傷を除去する能力が低下している(Cordonnier, A.M.及びR.P. Fuchs, Mutat. Res., 1999, 435, 111〜119)。このような異常は、真核生物の間で保存された応用のきく機構であり、損傷されたヌクレオチドの切り出し及び再合成により損傷されたDNAを修正することを含む核酸切り出し修復(Nucleotide Excision Repair;NER)プロセスにおける欠陥に起因する。このプロセスにおける欠陥は、DNAにおけるUV損傷の持続を導き、UVに曝露された皮膚領域での突然変異誘発及び腫瘍の発生をもたらす。3つの主要な種類の皮膚癌、扁平上皮癌、基底細胞癌及び悪性黒色腫は、小児期にすでに発現する。XP患者は、細胞融合実験により7つの相補群(XP-A〜XP-G)に割り当てられ、各相補群は、独特なNER遺伝子における変異によることがわかった。ヒト遺伝子、及びコードされるタンパク質は、しばしは、相補群にちなんで命名された。例えば、XP-C相補群で変異しているXPC遺伝子(図1A)は、DNA損傷結合タンパク質をコードする。
【0003】
現在までに、XP患者が利用可能な治療は、太陽への露出に対する(及び長波長UVを作り出すある種の一般的な電灯に対する)防御、又は出現した皮膚がんを除去する外科手術の反復でしかなかった。このような癌性の領域を、患者の体の露出されていない部分からの皮膚で置き換える自己移植の試みが、何度か行われている。しかし、移植された細胞が太陽に感受性であるので、患者にとっての利益は最善でも数年に限られ、患者の大多数が転移により成人に到達する前に死亡する。皮膚の移植は局所的に行うことができるが、免疫寛容の点で移植片の一般的な制限がある。
【0004】
よって、遺伝子及び細胞療法は、この種の疾患についての大きい希望である。皮膚の系統からの細胞はインビトロにおいて容易に操作できるので、腫瘍部位にそれらを移植して戻す前に、親の細胞を操作し、それらの遺伝子欠損を修正する可能性が考えられる。他のXP相補群に比較して、XP-Cは、修正遺伝子移動(corrective gene transfer)について最良の候補であるようである。欧州及び北アメリカでは、XP-Cは、半数を超えるXP患者に関連し、XPC発現は遍在しているけれども、XP-C患者は、他のXP群に見られる神経の問題を有しないままである。XP患者の組織療法を目的とする予備研究では、種々の相補群(XP-A、XP-B、XP-C、XP-D)からのXP繊維芽細胞、及びXP遺伝子がクローニングされたXP-C初代ケラチノサイトのインビトロでのレトロウイルスによる形質導入が、完全なDNA修復能力の回復をもたらすことが示されている(Arnaudeau-Begardら, Hum. Gene Ther., 2003, 14, 983〜996; Armeliniら, Cancer Gene Ther., 2005, 12, 389〜396)。さらに、皮膚の系統からの細胞は容易に操作でき、次いで、機能的な皮膚を再構築するために用い得る(Arnaudeau-Begardら, Hum. Gene Ther., 2003, 14, 983〜996; Armeliniら, Cancer Gene Ther., 2005, 12, 389〜396)。つまり、長期の組織療法の合理的で有望な代替法は、患者に再構成された皮膚を移植して戻す前の、ケラチノサイトのXP-C遺伝子座のエクスビボ遺伝子修正にある。
【0005】
相同組換えは、所定の遺伝子座を正確に工学的に改変する(engineer)ための最適な様式である。相同遺伝子標的化(targeting)ストラテジは、内因性遺伝子のノックアウト(Capecchi, M. R., Science, 1989, 244: 1288〜1292; Smithies O., Nat. Med., 2001, 7: 1083〜1086)、又は染色体における外因性配列のノックインに用いられている。これは、遺伝子の修正、及び原則として、XPのような単一遺伝子疾患につながる変異の修正のためにも用い得る。しかし、この使用は、方法の効率が低いので(トランスフェクションされた細胞の10-6〜10-9)、実際には困難である。最近10年間で、この収率を向上させるためにいくつかの方法が開発されている。例えば、キメラ形成法(chimeraplasty) (De Semirら J. Gene Med., 2003, 5: 625〜639)、及び小フラグメント相同置換(Small Fragment Homologous Replacement) (Gonczら., Gene Ther, 2001, 8: 961〜965; Brusciaら, Gene Ther., 2002, 9: 683〜685; Sangiuoloら, BMC Med. Genet., 2002, 3: 8〜; De Semir及びAran, Oligonucleotides, 2003, 13: 261〜269; 米国特許第6,010,908号)が、CFTR変異の修正を行うために試験的に用いられており、種々のレベルの成功を示している。
組換えの効率を向上させる別のストラテジは、メガヌクレアーゼを用いて、標的遺伝子座にDNA二本鎖切断(double-strand break)をもたらすことである。メガヌクレアーゼは、定義によると、長い配列(12〜45 bp)を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼである。これらは、生体細胞内の独特な部位を切断でき、そのことにより、切断部位の近傍における遺伝子標的化を1000倍以上に向上させ得る(Puchtaら, Nucleic Acids Res., 1993, 21: 5034〜5040; Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14, 8096〜8106; Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 1968〜1973; Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996, 93, 5055〜5060; Sargentら, Mol. Cell. Biol., 1997, 17, 267〜277; Donohoら, Mol. Cell. Biol, 1998, 18, 4070〜4078; Elliottら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 93〜101; Cohen-Tannoudjiら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 1444〜1448)。最近では、I-SceIを用いて、インビボでのマウス肝細胞における標的組換えが刺激された。組換えは、肝細胞の1%までで観察できた(Goubleら, J. Gene Med., 2006, 8, 616〜622)。
【0006】
しかし、この技術の使用は、天然のメガヌクレアーゼのレパートリーにより制限される。例えば、ヒトXP遺伝子には、既知の天然メガヌクレアーゼの切断部位が存在しない。よって、仕立てられた特異性を有するメガヌクレアーゼを作製することが精力的に行われており、いくつかの研究室は、天然のメガヌクレアーゼの特異性を変更するか、又は人工的エンドヌクレアーゼを作製することを試みている。
【0007】
最近、Cys2-His2型ジンクフィンガータンパク質(ZFP)の、IIS型FokIエンドヌクレアーゼの触媒ドメインとの融合を用いて、機能的配列特異的人工エンドヌクレアーゼが作製された(Smithら, Nucleic Acids Res., 1999, 27: 674〜681; Bibikovaら, Science, 2003, 300: 764; Porteus M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300: 763)。ZFPの結合特異性は比較的容易に操作でき、多くの(g/a)nn(g/a)nn(g/a)nn配列に結合できる新規な人工ZFPのレパートリーは、現在、利用可能である(Paboら, Annu. Rev. Biochem., 2001, 70, 313〜340; Segal, D.J.及びC.F. Barbas, Curr. Opin. Biotechnol., 2001, 12, 632〜637; Isalanら, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)。この最後のストラテジは、インビトロでのIL2RG遺伝子の工学的改変を、最近、可能にした(Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651)。にもかかわらず、非常に狭い特異性が保存されることは、ゲノム工学への応用のために主要な問題点であり、現在、ZFPが、治療への応用についての非常に厳しい要件を満たすかどうか不明である。
【0008】
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、数百のタンパク質を含む天然メガヌクレアーゼの広範にわたるファミリーである(Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。これらのタンパク質は、「ホーミング」とよばれるプロセスにより伝播する可動性の遺伝要素によりコードされる。該エンドヌクレアーゼは、可動性の要素が存在しない同族の対立遺伝子を切断し、このことにより、受容側の遺伝子座において可動性DNAを重複させる相同組換え事象を刺激する(Kostrikenら, Cell; 1983, 35, 167〜174; Jacquier, A.及びB. Dujon, Cell, 1985, 41, 383〜394)。それらの天然の機能、並びに効率及び特異性の点でのそれらの希な切断特性に鑑みて、HEは、ゲノム工学のための新規なエンドヌクレアーゼを導くための理想的な骨格を提供する。最近10年間で、4つのHEファミリーのうちで最大のLAGLIDADGファミリーを特徴付けるデータが蓄積されている(Chevalier及びStoddard, 既出)。LAGLIDADGは、ファミリー全体で実際に保存され、かつタンパク質中で1又は(より頻繁には) 2つのコピーが見出される唯一の配列のことである。単一モチーフを有するタンパク質、例えばI-CreIは、ホモダイマーを形成し、パリンドローム又は偽パリンドロームDNA配列を切断するが、より大きい重複モチーフタンパク質、例えばI-SceIはモノマーであり、非パリンドローム標的を切断する。7つの異なるLAGLIDADGタンパク質が結晶化されており、これらは、コア構造が非常に著しく保存されているが、1次配列のレベルでの類似性がないことと対照的である(Juricaら, Mol. Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316 ; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269; Moureら, J. Mol. Biol, 2003, 334, 685〜695; Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9, 764〜770; Ichiyanagiら, J. Mol. Biol., 2000, 300, 889〜901; Duanら, Cell, 1997, 89, 555〜564; Bolducら, Genes Dev., 2003, 17, 2875〜2888; Silvaら, J. Mol. Biol., 1999, 286, 1123〜1136)。このコア構造において、2つのモノマー、又は重複したLAGLIDAGタンパク質中の2つのドメインが寄与するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインともよばれる2つの特徴的なαββαββα折り畳みは、2回回転対称により互いに面している。DNA結合は、逆平行βシートに折り畳まれ、かつDNAヘリックス主溝上のサドルを形成する各ドメインからの4つのβ鎖に依存する(図2)。その天然の標的に結合したI-CreI構造の分析により、各モノマーにおいて、8つの残基(Y33、Q38、N30、K28、Q26、Q44、R68及びR70)が、±3、4、5、6、7、9及び10位の7つの塩基と直接相互作用を確立していることが示されている(Juricaら, 1998, 既出; 図3)。さらに、いくつかの残基は、7つの塩基と水媒介接触を確立している。例えば、S40及びN30は、+8位及び-8位の塩基対とである(Chevalierら, 2003, 既出)。触媒コアは、中央にあり、対称のモノマー/ドメインの両方の寄与がある。このコア構造に加えて、他のドメインも見出され得る。例えばインテインであるPI-SceIは、タンパク質スプライシングドメインと、さらなるDNA結合ドメインを有する(Moureら, 2002, 既出; Grindlら, Nucleic Acids Res., 1998, 26, 1857〜1862)。
【0009】
ホーミングエンドヌクレアーゼから、新しい特異性を有する新規なエンドヌクレアーゼを導くために2つのアプローチが用いられている:
- タンパク質変異型
Seligmanらは、I-CreIαββαββα折り畳みの具体的な個別の残基を置換するために、合理的なアプローチを用いた(Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342, 31〜41; Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1653〜64)。実質的な切断は、わずかなI-CreI変異型(Y33C、Y33H、Y33R、Y33L、Y33S、Y33T、S32K、S32R)について、かつ±10位で改変された標的についてのみ観察された。
【0010】
同様の様式で、Gimbleらは、PI-SceIのさらなるDNA結合ドメインを改変した(J. Mol. Biol., 2003, 334, 993〜1008)。彼らは、結合特異性が変更されたタンパク質変異型を得たが、特異性は変更されず、変異型のほとんどは、野生型標的配列についての親和性のほとんどを維持した。
これらの研究において用いられた半合理的なアプローチは、特異性が変更されたエンドヌクレアーゼの同定を許容する。しかし、予測される特異性を有するエンドヌクレアーゼの直接的な産生は可能にならない。
【0011】
- ハイブリッド又はキメラ単鎖タンパク質
新しいメガヌクレアーゼは、異なるモノマーのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインを交換することにより得ることができた(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619号及びWO 2004/031346号)。異なるメガヌクレアーゼからの2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインがスペーサーにより連結されているこれらの単鎖キメラメガヌクレアーゼは、2つの半分の(half)親のDNA標的配列の融合に相当するハイブリッド標的を切断可能である。
【0012】
キメラ及び単鎖人工HEの構築は、コンビナトリアルアプローチを用いて新規な(非パリンドローム)標的配列を切断する新規なメガヌクレアーゼを得ることができることを示唆した。異なるモノマー又はコアドメインを、単独のタンパク質に融合させて、新規な特異性を達成することができた。これらの結果は、I-CreIダイマーの2つのDNA結合ドメインが、独立して行動することを意味する。それぞれのDNA結合ドメインは、DNA標的部位の異なる半分に結合する(図2A)。最近、2工程ストラテジを用いて、天然のHE、例えばI-CreIの特異性を仕立てることが行われた(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355: 443〜458)。第1工程では、残基Q44、R68及びR70に突然変異を誘発し、±3〜5位で特異性が変更された(5NNN DNA標的)一連の変異型を、スクリーニングにより同定した。第2工程において、2つの異なる変異型を組み合わせ、それぞれの変異型DNA標的配列の異なる半分の融合から得られるキメラ標的を切断できる機能的ヘテロダイマーエンドヌクレアーゼに組み立てた。
【0013】
一連の新規なメガヌクレアーゼを作製すること、及び2つの異なるモノマー/コアドメインを組み立てることによりこれらを組み合わせることができることは、標的にされ得るDNA配列の数を著しく豊富にするが(図4A)、全ての可能な配列は、まだ満たされていない。
【0014】
より多数の配列に到達するために、組み合わせ得るより小さい独立したサブドメインを同定できることは、非常に価値があるだろう(図2B)。
しかし、コンビナトリアルアプローチは、モノマー間に用いるよりも単独モノマー又はドメイン内で用いることがさらにより困難である。なぜなら、結合界面の構造が非常に緻密であり、実質的に全ての塩基特異的相互作用を担う2つの異なるββヘアピンが別々のサブドメインを構成せずに、単独の折り畳みの一部分であるからである。例えば、I-CreIのDNA結合領域の内部では、gtcトリプレットには、第1ヘアピンからの1つの残基(Q44)、及び第2ヘアピンからの2つの残基が結合する(R68及びR70; Chevalierら, 2003, 既出、の図1Bを参照)。
【0015】
酵母ハイスループットスクリーニング法により支援される半合理的設計により、本発明者らは、±8〜10位の特異性が変更された(10NNN DNA標的)、28位、30位、33位、38位及び40位での数千のI-CreI変異型を同定及び単離することが可能になった。これらの新しいタンパク質は、I-CreIの元来の標的部位の±10、±9、±8のヌクレオチドで縮重した64個の標的(10NNN DNA標的)の1つを切断するように設計された(図3)。さらに、構造レベルでの明確なモジュール性がないにもかかわらず、I-CreI部位の±8〜10位に結合する残基28〜40、及び±3〜5位に結合する残基44〜77は、2つの分離可能な機能的サブドメインを形成し、I-CreIホーミングエンドヌクレアーゼハーフサイトの別個の部分に結合できることが明らかになった(図3及び図4B)。異なるモノマーからの2つのサブドメイン又は同じモノマー内のコアドメインを組み立てることにより、本発明者らは、それぞれの親のモノマー/コアドメインの±3〜5位及び±8〜10位のヌクレオチドを有するパリンドロームキメラ標的(図4B)を切断できる、機能的ホーミングエンドヌクレアーゼ(ホモダイマー)変異型を工学的に作製した。さらに、より大きいコンビナトリアルアプローチは、4つの異なるサブドメインを組み立てることにより(図4C:右上、中左及び右、左下)、非パリンドロームキメラ標的を切断できる(右下)新しいヘテロダイマー分子を形成することが可能になる。異なるサブドメインは、別々に改変でき、興味のある遺伝子からの標的を切断できる1つのメガヌクレアーゼ変異型(ヘテロダイマー又は単鎖分子)に組み立てることができる。工学的に作製された変異型は、二本鎖切断により誘発される組換えにより遺伝子修正のために用いることができる(図1B及び1C)。
【0016】
4つのサブドメインを組み合わせる能力により、標的にされ得るDNA配列の数が著しく増加する(図4C)。しかし、このコンビナトリアルアプローチを用いて到達できる配列の範囲を完全に認識するのは、まだ困難である。最もわかりにくい因子の1つは、I-CreI標的部位の4つの中心ヌクレオチドの影響である(パリンドロームI-CreI部位C1221のgtac, 図3)。塩基対±1及び±2がタンパク質と全く接触を示さないが、これらの位置が、特に塩基対±1について、内容の情報を欠くわけではないことが示されており(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)、さらなる基質特異性の供給源であり得る(Argastら, J. Mol. Biol., 1998, 280, 345〜353; Juricaら, Mol. Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。無作為に突然変異を誘発した切断可能なI-CreI標的のインビトロ選択(Argastら, 既出)は、タンパク質結合及び切断活性におけるこれらの4つの塩基対の重要性を明らかにした。活性部位で見出される規則正しい水分子のネットワークが、DNA標的の位置決定に重要であることが示唆されている(Chevalierら,Biochemistry, 2004, 43, 14015〜14026)。さらに、I-CreI結合の際にこの領域に出現する広範な構造変化は、4つの中心ヌクレオチドが、おそらく配列に依存する構造の選択により基質特異性に寄与し得ることを示唆する(Chevalierら, 2003, 既出)。
【0017】
つまり、gtacである4つの中心ヌクレオチドを含むパリンドローム配列を切断するホモダイマーとして10NNN及び5NNN DNA標的に対して同定される変異体が、4つの中心ヌクレオチドが変更された標的を切断する新しいエンドヌクレアーゼの設計を可能にするかは、明確でなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者らは、I-CreI変異型により切断され得るXP遺伝子中の数百のDNA標的を同定した。図4に記載されるコンビナトリアルストラテジを用いて、I-CreIタンパク質のDNA結合ドメインを広く再設計し、そのことにより、完全に工学的に改変された特異性を有する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製し、I-CreI C1221の22 bpのパリンドローム部位とは、±1〜2位の中心ヌクレオチドを含む17ヌクレオチドが異なる(Xa.1, 図3、9及び23)か、又は4つの中心ヌクレオチドの2つ(-1位及び-2位)を含む11ヌクレオチドが異なる(Xc.1, 図23)、XPC遺伝子からの2つのDNA標的(Xa.1及びXc.1)を切断した。
【0019】
組み合わせた変異型は、それぞれヌクレオチド10NNN及び5NNNに対して当初は同定され、標的の4つの中心ヌクレオチドの工学的に作製されたメガヌクレアーゼの活性に対する強い影響が観察されたが、標的の別の塩基対についての特異性における完全な変更を有する機能的メガヌクレアーゼを選択した。さらに、工学的に作製されたタンパク質の活性は、I-CreIタンパク質の活性に比較して、2回連続のランダム突然変異誘発及びスクリーニングにより著しく改良できた。最後に、DNA結合ドメインの広範な再設計は、特異性のレベルを犠牲にしては行われず、新規なエンドヌクレアーゼは、切断可能な同族標的の非常に狭い範囲の数を維持している。
【0020】
XP遺伝子からのDNA標的配列を切断できるこれらのI-CreI変異型は、色素乾皮症に関連する変異の修復のために用いることができる。他の可能な応用は、XP遺伝子の遺伝子座でのゲノム工学を含む。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、色素乾皮症(XP)遺伝子からのDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型に関する。
【0022】
本発明による変異型の切断活性は、公知のインビトロ又はインビボの切断アッセイ、例えば国際PCT出願WO 2004/067736又はArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355: 443〜458に記載されるものにより測定し得る。例えば、本発明の変異型の切断活性は、レポーターベクターを用いて、酵母又は哺乳動物細胞における直列反復配列組換えアッセイにより測定し得る。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクター内にクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮された(truncated)非機能的コピー(直列反復配列)と、ゲノムDNA標的配列とを介在配列内に有する。変異型の発現により、ゲノムDNA標的配列を切断できる機能的エンドヌクレアーゼが得られる。この切断は、直列反復配列間の相同組換えを誘導し、その発現が適切なアッセイにより監視できる機能的レポーター遺伝子をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
定義
- ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表す。例えば、QはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
【0024】
- ヌクレオチドは、以下のように表す:1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについては、rはg又はaを表し(プリンヌクレオチド)、kはg、又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はcを表し(ピリミジンヌクレオチド)、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0025】
- 「I-CreI」により、配列表の配列番号217に相当する配列SWISSPROT P05725、又はpdbアクセッションコード1g9yを有する野生型I-CreIを意図する。
- 「I-CreI変異型」又は「変異型」により、I-CreIの少なくとも1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換により得られるタンパク質を意図する。
【0026】
- 「機能的I-CreI変異型」により、DNA標的、好ましくはI-CreIにより切断されないDNA標的を切断できるI-CreI変異型を意図する。例えば、このような変異型は、DNA標的配列と接触する位置、又は該DNA標的と直接若しくは間接的に相互作用する位置にアミノ酸の変更を有する。
【0027】
- 「新規な特異性を有するI-CreI変異型」により、親のメガヌクレアーゼのものと異なる切断される標的のパターンを有する変異型を意図する。等価であり同様に用いられる用語「新規な特異性」、「改変された特異性」、「新規な切断特異性」、「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことをいう。
【0028】
- 「I-CreI部位」により、I-CreIにより切断される22〜24 bpの二本鎖DNA配列を意図する。I-CreI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-CreIホーミング部位と、C1221ともよばれる派生パリンドローム配列、例えば配列5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号25)を含む(図3及び9)。
【0029】
- 「ドメイン」又は「コアドメイン」は、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。上記のドメインは、DNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれた4つのベータ鎖(β1、β2、β3、β4)を含む。このドメインは、別のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインと会合でき(associate)、これはDNA標的の他方の半分と相互作用して、該DNA標的を切断できる機能的エンドヌクレアーゼを形成する。例えば、ダイマーホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。
【0030】
- 「サブドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの独特な部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。2つの異なるサブドメインは、独立して行動し、一方のサブドメインにおける変異は、他方のサブドメインの結合及び切断特性を変更しない。よって、2つのサブドメインは、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの独特な部分に結合する。
【0031】
- 「ベータヘアピン」により、ループ又はターンにより連結されているLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行ベータシートの2つの連続するベータ鎖(β1β2又はβ3β4)を意図する。
【0032】
- 「単鎖メガヌクレアーゼ」、「単鎖キメラメガヌクレアーゼ」、「単鎖メガヌクレアーゼ誘導体」、「単鎖キメラメガヌクレアーゼ誘導体」又は「単鎖誘導体」により、ペプチドスペーサにより連結された2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼドメイン又はコアドメインを含むメガヌクレアーゼを意図する。単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの親のメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含むキメラDNA標的を切断できる。
【0033】
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」;「興味のある部位」;「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」は、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼにより認識され切断される20〜24 bpの二本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)、又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、エンドヌクレアーゼにより二本鎖切断(切断)が導入されるDNAの独特な位置、好ましくはゲノム上の位置のことをいう。DNA標的は、C1221について上記したように、二本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'から3'の配列により定義される。DNA標的の切断は、センス及びアンチセンス鎖についてそれぞれ+2位及び-2位のヌクレオチドに生じる。特に記載しない限り、I-Cre Iメガヌクレアーゼ変異型によるDNA標的の切断が生じる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に相当する。
【0034】
- 「DNA標的ハーフサイト」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフサイト」は、各LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
【0035】
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合体を意図する。さらに、該標的の少なくとも1つの半分は、少なくとも2つの別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組み合わせ(組み合わさったDNA標的)を含み得る。
【0036】
-「XP遺伝子」により、哺乳動物の色素乾皮症相補群(XP-A、XP-B、XP-C、XP-D、XP-E、XP-F)の1つの遺伝子を意図する。例えば、ヒトXP遺伝子は、NCBIデータベースにおいて、記載するアクセッション番号:XPA: 遺伝子ID:7507, アクセッションNC_000009, 領域: 相補(97516747..97539194); XPB: 遺伝子ID:2071, アクセッションNC_000002, 領域: 相補(127731096..127767982); XPC: 遺伝子ID:7508, アクセッションNC_000003, 領域: 相補(14161651..14195087); XPD: 遺伝子ID:2068, アクセッションNC_000019, 領域: 相補(50546686..50565669); XPE: 遺伝子ID:1642, アクセッションNC_000011, 領域: 相補(60823502..60857125); XPF: 遺伝子ID:2072, アクセッションNC_000016, 領域: 13921524..13949705; XPG: 遺伝子ID:2073, アクセッションNC_000013, 領域: 102296421..102326346の下で入手可能である。
【0037】
- 「XP遺伝子からの DNA標的配列」、「ゲノムDNA標的配列」、「ゲノムDNA切断配列」、「ゲノムDNA標的」又は「ゲノム標的」により、メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼ誘導体により認識され切断される哺乳動物のXP遺伝子の20〜24 bpの配列を意図する。
【0038】
- 「ベクター」により、それに連結されている別の核酸を移動させ得る核酸分子を意図する。
【0039】
- 「相同な」により、配列間で相同組換えを導くのに充分な別の配列との同一性、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、及びより好ましくは99%の同一性を有する配列を意図する。
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列され得る各配列の位置を比較することにより決定できる。比較される配列における位置が同じ塩基により占められる場合、該分子はその位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一又はマッチするヌクレオチドの数の関数である。GCG配列分析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部分として入手可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムが、2つの配列間の同一性を計算するために用いられ得る。
【0040】
- 「個体」は、哺乳動物、及びその他の脊椎動物(例えば鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語「哺乳動物」及び「哺乳類」は、本明細書で用いる場合、その子に授乳し、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))又は産卵する(後獣類(metatharian)又は無胎盤哺乳類(nonplacental mammals))単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含むいずれの脊椎動物のことをいう。哺乳動物の種の例は、ヒト、及びその他の霊長類(例えばサル、チンパンジー)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)及び反芻類(例えばウシ、ブタ、ウマ)を含む。
【0041】
- 変異により、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列中の1又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、付加を意図する。該変異は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。これは、ゲノム配列の構造、又はコードされたmRNAの構造/安定性にも影響し得る。
【0042】
本発明によると、変異の位置は、I-CreIアミノ酸配列である配列番号217を参照にして示される。
【0043】
上記の変異型の好ましい実施形態において、I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記の置換は、I-CreIの28位〜40位、及び44位〜70位に位置するサブドメイン内にあり、好ましくは28位、30位、32位、33位、38位、44位、68位及び/又は70位にある。
【0044】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、該変異型は、75位のアスパラギン酸の、非荷電アミノ酸、好ましくはアスパラギン(D75N)又はバリン(D75V)による置換を含む。
【0045】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、該変異型は、DNA標的配列に接触するか、又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用するさらなる位置に、1又は複数の置換を含む。I-CreIの相互作用する残基は、当該技術において公知である。変異される残基は、DNAバックボーン又はヌクレオチド塩基と、直接又は水分子を介して相互作用し得る。
【0046】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、該変異型は、XP遺伝子のDNA標的配列に指向された変異型の結合及び/又は切断の特性を改良する1又は複数のさらなる変異を含む。変異されるさらなる残基は、I-CreI配列全体にあり得る。これらの変異は、19、24、42、69、80、85、87、87、109、133及び161位での置換であり得る。これらの変異は、活性部位(19位)、タンパク質-DNA界面(例えば69位)、疎水性コア(例えば85、87又は109位)、又はC末端部分(例えば161位)に影響し得る。
【0047】
上記の変異型のさらに別の好ましい実施形態において、上記の置換は、当初のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、W、L及びVからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである。
【0048】
本発明による変異型は、パリンドローム又は偽パリンドロームのDNA標的配列を切断できるホモダイマーであり得る。或いは、上記の変異型は、I-CreIの26位〜40位と44位〜77位、好ましくは28位〜40位と44位〜70位に異なる変異を有する第1モノマーと第2モノマーの会合により得られるヘテロダイマーであり、該ヘテロダイマーは、XP遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できる。
【0049】
上記の変異型により切断されるDNA標的配列は、XP遺伝子のエキソン又はイントロン内にあり得る。好ましくは、これは、変異の近傍、好ましくは変異から500 bp以内、又は変異の上流、好ましくは上記のXP遺伝子の全ての変異の上流に位置する。
【0050】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記のDNA標的配列は、ヒトXP遺伝子からである(XPA〜XPG遺伝子)。
各ヒトXP遺伝子からのDNA標的は、表IX〜XV及び図16〜22に示す。
例えば、配列番号1〜24の配列は、XPC遺伝子からのDNA標的である。配列番号1〜23は、エキソンの1つの内部又はその近くに位置し、これらの配列は、XP遺伝子の全てのエキソンをカバーする(表XI及び図18)。標的配列である配列番号24 (Xa.1)は、変異の上流にある第3イントロン内に位置する(図1A)。標的配列である配列番号12 (Xc.1)は、欠失1132AA及び挿入insVAL580の近傍のエキソン9内に位置する(図1A)。
【0051】
各DNA標的を切断するヘテロダイマー変異型は、表I〜VIII及び図16〜22に示す。
各変異型の配列は、記載する位置でのアミノ酸残基により定義される。例えば、表Iの第1のヘテロダイマー変異型は、28位、33位、38位、40位、44位、68位、70位及び75位にそれぞれK、S、R、D、K、R、G及びNを有する第1モノマーと、28位、30位、38位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれR、D、R、K、A、S、N及びIを有する第2モノマーとからなる。位置は、I-CreI配列SWISSPROT P05725、配列番号217、又はpdbアクセッションコード1g9yを参照にして示される。I-CreIは、19位、24位、26位、28位、30位、32位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、69位、70位、75位、77位、80位、85位、87位、109位、133位及び161位にそれぞれG、I、Q、K、N、S、Y、Q、S、A、Q、R、D、R、D、I、E、H、F、I、A及びSを有する。変異型は、表に記載されるアミノ酸残基を有するI-CreI配列からなることができる。この場合、記載されていない位置は変異されておらず、よって、野生型I-CreI配列に相当する。或いは、変異型は、表に記載されるようなアミノ酸残基を有するI-CreI配列を含み得る。後者の場合、記載されていない位置は、上記で定義されるような変異を含み得るか、又は変異されなくてよい。例えば、変異型は、配列番号26によりコードされるI-CreI骨格タンパク質から導かれることができ、該I-CreI骨格タンパク質(配列番号218)は、2位にアラニンの挿入、A42T、D75N、W110E及びR111Qの置換、並びに3つのさらなるアミノ酸(A、A及びD)をC末端に有する。さらに、野生型I-CreI又はI-CreI骨格タンパク質に由来する上記の変異型は、上記で定義されるようにさらなる変異を有し得る。
【0052】
各ヘテロダイマー変異型により切断される標的は、表の最後の列に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
さらに、本発明の変異型は、配列のNH2末端及び/又はCOOH末端に挿入された1又は複数の残基を含み得る。例えば、タグ(エピトープ又はポリヒスチジン配列)を、NH2末端及び/又はCOOH末端に導入する。該タグは、該変異型の検出及び/又は精製に有用である。
【0062】
本発明の主題は、上記で定義されるI-CreI変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼでもある。単鎖キメラメガヌクレアーゼは、2つのI-CreIモノマー、2つのI-CreI コアドメイン(I-CreIの6位〜94位)又はこれらの両方の組み合わせを含む融合タンパク質である。好ましくは、2つのモノマー/コアドメイン又はこれらの両方の組み合わせは、ペプチドリンカーにより連結される。
【0063】
本発明の主題は、上記で定義される変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。該ポリヌクレオチドは、ホモダイマー若しくはヘテロダイマー変異型の1つのモノマー、又は単鎖キメラメガヌクレアーゼの2つのドメイン/モノマーをコードし得る。
【0064】
本発明の主題は、本発明による変異型又は単鎖メガヌクレアーゼを発現するための組換えベクターでもある。該組換えベクターは、上記で定義されるような変異型又は単鎖メガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む。好ましい実施形態において、上記のベクターは、それぞれがヘテロダイマー変異型のモノマーの1つをコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む。
【0065】
本発明において用い得るベクターは、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、又は染色体の、非染色体の、半合成の若しくは合成のDNAからなり得る直鎖若しくは環状DNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自己複製が可能なベクター(エピソームベクター)及び/又はそれらが連結された核酸の発現が可能になるベクター(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られ、市販で入手可能である。
【0066】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病又は水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版, B. N. Fieldsら編, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0067】
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;S. cerevisiaeについてTRP1;E. coliにおいてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
【0068】
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下に位置して、該変異型の産生又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、該コードポリヌクレオチドに機能可能に連結するプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、上記の変異型がヘテロダイマーである場合、各モノマーをコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。適切なプロモーターは、組織特異的及び/又は誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターの例は、重金属のレベルの増加により誘導される真核メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核lacZプロモーター、及び温度の増加により誘導される真核熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、骨格筋クレアチンキナーゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、α-抗トリプシンプロテアーゼ、ヒト界面活性(SP) A及びBタンパク質、β-カゼイン及び酸性ホエータンパク質遺伝子である。
【0069】
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、該ベクターは、上記で定義されるゲノムDNA標的切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列を含む標的化構築物(targeting construct)を含む。
或いは、I-CreI変異型をコードするベクター、及び標的化構築物を含むベクターは、異なるベクターである。
どちらの場合においても、標的化構築物は、以下で定義される変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列に挟まれた、導入される配列を含む。
【0070】
より好ましくは、上記の標的化DNA構築物は、以下のものを含む:
a) 上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列と、
b) a)の配列により挟まれている導入される配列。
【0071】
好ましくは、少なくとも50 bp、好ましくは100 bpより多い、より好ましくは200 bpより多い相同配列が用いられる。実際に、有するDNA相同性は、切断部位の上流及び下流に隣接する領域に位置し、導入されるDNA配列は、2つのアームの間に位置するべきである。導入される配列は、好ましくは、ゲノム療法の目的のための、興味のある遺伝子の変異を修復する配列(遺伝子修正又は機能的遺伝子の回復)である。或いは、特定の配列を改変するか、興味のある内因性遺伝子を減弱又は活性化させるか、興味のある内因性遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は欠失させるか、興味のある部位に変異を導入するか、又は外因性遺伝子若しくはその一部分を導入するために用いられる配列を含む、ある特定の様式で染色体DNAを変更させるために用いられるいずれのその他の配列であり得る。このような染色体DNAの変更は、ゲノム工学(動物モデル)に用いられる。
【0072】
XP遺伝子を修正するために、遺伝子の切断が、変異の近傍、好ましくは変異から500 bp以内で生じる(図1B)。標的化構築物は、切断を修復するための、標的部位に接する相同配列の少なくとも200 bpを有するXP遺伝子フラグメント(最小修復マトリクス)を含み、変異を修復するための、XP遺伝子の正しい配列を含む(図1B)。よって、遺伝子修正のための標的化構築物は、最小修復マトリクスを含むか、又はこれからなる。これは、200 pb〜6000 pb、好ましくは1000 pb〜2000 pbである。
【0073】
例えば、各変異型(表I〜VIII)により切断される標的、及び各変異型を用いて切断を修復するための最小マトリクスを、表IX〜XV及び図16〜22に示す。
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】
【表13】
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】
例えば、図1Aに示されるような、色素乾皮症(XP)で見出されるXPC遺伝子における変異のいくつかを修復するために、以下の変異型/標的化構築物の組み合わせを用い得る:
- ARG579TER (エキソン4; 未熟な停止コドン):
* 変異型: 28Q,33S,38R,40K,44Q,68Y,70S,75N,77Y (第1モノマー)/ 28T,33T,38Q,40R,44T,68E,70S,75R,77R (第2モノマー)、並びに
DNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも9887位〜10086位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
* 変異型30D,33R,38T,44N,68R,70S,75Q,77R (第1モノマー)/ 28R,33A,38Y,40Q,44D,68Y,70S,75S,77R (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも10173位〜10372位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0082】
- エキソン6: 置換PRO218HIS:
* 変異型: 28K,33N,38Q,40Q,44R,68Y,70S,75E,77I (第1モノマー)/ 28K,33T,38A,40Q,44K,68Q,70S,75N,77R (第2モノマー)、並びに
DNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも13051位〜13250位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0083】
- エキソン9: 欠失DEL1132AA又は挿入insVAL580:
* 変異型: 28K,30N,38Q,44Q,68R,70S,75R,77T,80K (第1モノマー)/ 28T,33T,38Q,40R,44T,68Y,70S,75R,77V (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも19580位〜19779位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
* 変異型: 28K,30N,38Q,44A,68Y,70S,75Y,77K (第1モノマー)/ 28K,33R,38E,40R,44T,68R,70S,75Y,77T,133V (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも20303位〜20502位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0084】
* 変異型: 28K,33R,38Q,40A,44Q,68R,70N,75N (第1モノマー)/ 28K,33R,38A,40Q,44Q,68R,70S,75N,77K (第2モノマー)、又は33H,75N (第1モノマー)及び33R,38A,40Q,44K,70N,75N (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも20349位〜20548位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
* 変異型: 30N,33H,38Q,44K,68A,70S,75N,77I (第1モノマー)/ 28K,33N,38Q,40Q,44R,68Y,70S,75E,77V (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも20389位〜20588位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0085】
- エキソン14: 置換LYS822GLN:
* 変異型: 28Q,33S,38R,40K, 42T,44K,70S,75N,77Y (第1モノマー)/ 28R,33A,38Y,40Q,44A,68R,70S,75E,77R (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも30416位〜30615位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0086】
或いは、機能的遺伝子を復帰させるために(図1C)、遺伝子の切断は、変異の上流、例えば9119位で生じる(標的配列番号24)。好ましくは、上記の変異は、遺伝子の配列の第1の既知の変異であるので、遺伝子の下流の変異は全て、同時に修正できる。標的化構築物は、フレーム内で融合された切断部位の下流のエキソン(cDNAにおけるような)と、3'での転写を停止するポリアデニル化部位とを含む。導入される配列(エキソンノックイン構築物)は、切断部位を取り囲むイントロン又はエキソンの配列に挟まれていることにより、工学的に作製された遺伝子(エキソンノックイン遺伝子)の、機能的タンパク質をコードし得るmRNAへの転写を可能にする(図1C)。例えば、エキソンで切断が起こる場合、エキソンノックイン構築物は、上記で定義される最小修復マトリクスからの切断部位の上流及び下流にある配列で挟まれる。
【0087】
本発明の主題は、上記で定義されるような少なくとも1つの変異型、1つの単鎖キメラエンドヌクレアーゼ、及び/又は上記の変異型/単鎖分子をコードする少なくとも1つの発現ベクターを含むことを特徴とする組成物でもある。
該組成物の好ましい実施形態において、これは、上記で定義されるような、上記の変異型のゲノムDNA切断部位と相同性を有する配列により挟まれた、XP遺伝子中の変異を修復する配列を含む標的化DNA構築物を含む。変異を修復する配列は、上記で定義されるような正しい配列の遺伝子のフラグメント又はエキソンノックイン構築物である。
【0088】
好ましくは、上記の標的化DNA構築物は、組換えベクターに含まれるか、これは、本発明による変異型/単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに含まれる。
【0089】
2つのベクターが用いられる場合、本発明の主題は、色素乾皮症における同時、別個又は連続的な使用のための併用製剤としての、上記で定義されるようなI-CreI変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼ発現ベクターと、上記で定義されるような標的化構築物を含むベクターとを含有する製品でもある。
【0090】
本発明の主題は、上記で定義されるような少なくとも1つのメガヌクレアーゼ変異型/単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は1つの発現ベクターの、必要とする個体において色素乾皮症を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用でもあり、該医薬品は、該個体に任意の手段により投与される。
【0091】
この場合、メガヌクレアーゼ(変異型/単鎖誘導体)の使用は、少なくとも、(a) 個体の体組織において、該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含む興味のある部位での二本鎖切断を、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより誘導し、(b) 個体に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと(2) 標的化DNAと染色体DNAとの間の組換えにより興味のある部位を修復するDNAとを含む標的化DNAを導入する工程を含む。標的化DNAは、個体に、標的化DNAを興味のある部位に導入するのに適する条件下で導入される。
【0092】
本発明によると、上記の二本鎖切断は、該メガヌクレアーゼの個体への投与により全体として(in toto)、又は個体から回収して、改変の後に個体に戻される体細胞(皮膚細胞)へのメガヌクレアーゼの導入によりエクスビボで、誘発される。
【0093】
本発明の主題は、必要とする個体における色素乾皮症を予防、改善又は治癒する方法でもあり、該方法は、該個体に、上記で定義される組成物を任意の手段により投与する工程を少なくとも含む。
【0094】
メガヌクレアーゼ(変異型/単鎖誘導体)は、ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物として用い得る。これは、個体の体細胞に、単独で又は少なくとも適切なビヒクル若しくはキャリア及び/又は標的化DNAと組み合わせて、具体的な細胞の型に適切な、当該技術において公知の任意の簡便な手段により導入される。
【0095】
本発明による使用の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(ポリペプチド)は、以下のものと組み合わされる:
- リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI);このような場合、上記の組み合わされたものは投与され、標的体細胞に導入される。
- 膜輸送性ペプチド(membrane translocating peptides) (Bonetta, 2002, The Scientist, 16, 38; Fordら, Gene Ther, 2001, 8, 1〜4 ; Wadia及びDowdy, 2002, Curr Opin Biotechnol, 13, 52〜56);この場合、変異型/単鎖誘導体の配列は、膜輸送性ペプチドの配列と融合される(融合タンパク質)。
【0096】
本発明による使用の別の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド)及び/又は標的化DNAは、ベクターに挿入される。標的化DNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、種々の方法により(例えば注射、直接摂取、弾丸衝撃、リポソーム)細胞に導入できる。メガヌクレアーゼは、発現ベクターを用いて細胞で安定的に又は一過性で発現できる。真核細胞での発現法は、当該技術において公知である(Current Protocols in Human Genetics: 第12章"Vectors For Gene Therapy"及び第13章"Delivery Systems for Gene Therapy"を参照)。任意に、核局在化シグナルを組換えタンパク質に組み込んで、それが核内で発現されることを確実にすることが好ましい。
【0097】
細胞内に一旦入ると、メガヌクレアーゼと、存在するならば、標的化DNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターとは、細胞に取り込まれるか、又は細胞により、細胞質から核の作用部位に移される。
【0098】
治療の目的のために、メガヌクレアーゼと医薬的に許容される賦形剤とを、治療有効量で投与する。このような組み合わせは、投与される量が生理的に著しい場合、「治療有効量」で投与されるという。薬剤は、その存在が、受容者の生理機能に検出可能な変化をもたらす場合、生理的に著しい。この関係において、薬剤は、その存在は、標的にされた疾患の1又は複数の症状の重篤度を低下させ、欠損若しくは異常のゲノム修正をもたらす場合、生理的に著しい。
【0099】
本発明による使用のある実施形態において、メガヌクレアーゼは、実質的に非免疫原性であり、すなわち不都合な免疫学的応答をほとんど又は全く生じない。この種類の有害な免疫学的応答を緩和するか又は消去するための種々の方法を、本発明にしたがって用い得る。好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、N-ホルミルメチオニンを実質的に有さない。望ましくない免疫学的応答を回避する別の方法は、メガヌクレアーゼを、ポリエチレングリコール(「PEG」)又はポリプロピレングリコール(「PPG」) (好ましくは平均分子量(MW)500〜20,000ダルトン)とコンジュゲートさせることである。例えばDavisら(US 4,179,337)により記載されるようなPEG又はPPGとのコンジュゲートは、抗ウイルス活性を有する非免疫原性の、生理的に活性な、水溶性のエンドヌクレアーゼコンジュゲートを与え得る。ポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーを用いる類似の方法は、Saiferら(US 5,006,333)に記載される。
【0100】
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターで改変された原核又は真核の宿主細胞にも関する。
【0101】
本発明は、その細胞の全て又は一部分が、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターで改変されたことを特徴とする、非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことである。
【0102】
本発明の主題は、さらに、上記で定義されるメガヌクレアーゼ(変異型又は単鎖誘導体)、好ましくは発現ベクターに含まれる1又は2つのポリヌクレオチドの、非治療目的でのゲノム工学(動物モデルの作製:ノックイン又はノックアウト)のための使用である。
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、興味のある遺伝子に二本鎖切断を誘導し、それによりDNA組換え事象、DNA欠損又は細胞死を誘導するためである。
【0103】
本発明によると、上記の二本鎖切断は、特定の配列を修復するか、特定の配列を改変するか、変異された遺伝子の代わりに機能的遺伝子を復帰させるか、興味のある内因性遺伝子を減弱又は活性化するか、興味のある部位に変異を導入するか、外因性遺伝子又はその一部分を導入するか、内因性遺伝子又はその一部分を不活性化又は欠失させるか、染色体腕を転位させるか、又はDNAを修復されないままにして分解させるためである。
【0104】
上記の使用の別の有利な実施形態によると、上記の変異型、ポリヌクレオチド、ベクターは、上記で定義される標的化DNA構築物と組み合わされる。
【0105】
本発明によるメガヌクレアーゼ(変異型/単鎖誘導体)の使用の第1の実施形態において、これは、少なくとも以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むゲノム遺伝子座に、二本鎖切断を、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより導入し、2) 標的にされる遺伝子座と相同性を有する配列に挟まれた、導入される配列を含む標的化DNA構築物を提供する。上記のメガヌクレアーゼ変異型は、細胞に直接、又は該メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含み、かつ用いられる細胞内でのその発現に適する発現ベクターにより提供され得る。このストラテジを用いて、標的部位にDNA配列を導入して、例えば薬剤試験に用い得るノックイン若しくはノックアウト動物モデル又は株化細胞を作製する。
【0106】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ変異型の、他のメガヌクレアーゼを作製するための骨格としての使用でもある。例えば、新規な第3世代のホーミングエンドヌクレアーゼを作製する目的のために、3回目の突然変異誘発と、選択/スクリーニングを変異型に対して行うことができる。
【0107】
本発明に従うI-CreI変異型の異なる使用、及び該I-CreI変異型を用いる方法は、該変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ、上記で定義される変異型又は単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物若しくは非ヒトトランスジェニック哺乳動物の使用も含む。
【0108】
本発明によるI-CreI 変異型は、少なくとも以下の工程を含む、興味のある遺伝子、例えば哺乳動物遺伝子からのゲノムDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型を工学的に作製する方法により得ることができる:
(a) I-CreIの26位〜40位、好ましくはI-CreIの28位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1系列を構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位、好ましくはI-CreIの44位〜70位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2系列を構築し、
【0109】
(c) (i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) (i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
【0110】
(e) (i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) (i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
【0111】
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、かつ(iv) +3位〜+5位のトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
【0112】
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
【0113】
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせてヘテロダイマーを形成し、
(j) 哺乳動物遺伝子に位置する前記ゲノムDNA標的を切断可能な工程(i)からのヘテロダイマーを選択及び/又はスクリーニングする。
【0114】
工程(a)、(b)、(g)、(h)及び(i)は、変異体の結合及び/又は切断特性を改良するために、さらなる変異の導入をさらに含み得る。さらなる変異は、DNA標的配列に接触するか又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用する他の位置に導入され得る。このさらなる工程は、国際PCT出願WO 2004/067736に記載されるようにして、変異型のライブラリーを作製することにより行い得る。
【0115】
本発明のI-CreI変異型を工学的に作製する方法は、有利には、変異型全体又は変異型の一部分、特に変異型のC末端の半分(80位〜163位)に、ランダム変異と導入して、興味のある遺伝子からのDNA標的に対する変異体の結合及び/又は切断特性を改良することを含む。この突然変異誘発は、当該技術において公知であり市販で入手可能な標準的な突然変異誘発法に従って、変異型のプールに対してランダム突然変異誘発ライブラリーを作製することにより行い得る。好ましくは、突然変異誘発は、工程(i)で形成されるか又は工程(j)で得られるヘテロダイマーの1つのモノマーの配列全体に対して、有利にはモノマーのプールに対して、好ましくは工程(i)又は(j)のヘテロダイマーの両方のモノマーに対して行われる。
【0116】
好ましくは、図25に記載されるプロセスに従って、2回目の選択/スクリーニングを行う。1回目では、ヘテロダイマーの一方のモノマーに突然変異を誘発し(図25のモノマー4)、他方のモノマーと同時発現させて(図25のモノマー3)、ヘテロダイマーを形成し、改良されたモノマー4を、興味のある遺伝子からの標的に対して選択する。2回目では、他方のモノマー(モノマー3)に突然変異を誘発し、改良されたモノマー4と同時発現させて、ヘテロダイマーを形成し、興味のある遺伝子からの標的に対して選択して、改良された活性を有するメガヌクレアーゼを得る。
【0117】
工程(g)及び(h)における変異の組み合わせは、2つのサブドメインのそれぞれを含む重複フラグメントを、公知の重複PCR法に従って、増幅することにより行い得る。
【0118】
工程(g)からの1つの変異型と、工程(h)からの1つの変異型との同時発現により、工程(i)において変異型の組み合わせを行って、ヘテロダイマーの形成を可能にする。例えば、宿主細胞は、上記の変異型をコードする1又は2つの組換え発現ベクターにより改変され得る。細胞は、次いで、変異型の発現を可能にする条件下で培養され、それによりヘテロダイマーが宿主細胞内で形成される。
【0119】
工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)における選択及び/又はスクリーニングは、国際PCT出願WO 2004/067736又はArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355(3): 443〜58に記載されるようなインビトロ又はインビボでの切断アッセイを用いることにより行うことができる。
【0120】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)は、上記の変異型により作製される変異DNA標的配列中の二本鎖切断が、上記のDNA二本鎖切断の組換え媒介修復により、陽性の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は陰性の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を導く条件下で、インビボにおいて行われる。
【0121】
本発明で定義される変異型によりコードされるポリヌクレオチド配列は、当業者に知られる任意の方法により作製できる。例えば、これらは、cDNA鋳型から、特定のプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。好ましくは、該cDNAのコドンは、所望の発現系での上記のタンパク質の発現に好ましいように選択される。
【0122】
上記のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、公知の組換えDNA及び遺伝子工学の方法により得て、宿主細胞に導入できる。
【0123】
本発明の変異型は、上記で定義されるポリペプチドを発現することにより産生される。好ましくは、上記のポリペプチドは、1又は2つの発現ベクターで改変された宿主細胞内で、該ポリペプチドの発現又は同時発現に適する条件下で発現又は同時発現され、変異型は、宿主細胞培養から回収される。
【0124】
興味のある遺伝子からのDNA標的を切断できる単鎖キメラメガヌクレアーゼは、本発明による変異型から、当該技術において公知の方法により導かれる(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619号及びWO 2004/031346号)。このような方法のいずれも、本発明において定義される変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼを構築するために用い得る。
【0125】
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型及びそれらの使用について説明する実施例及び添付の図面に言及する以下の記載から明らかになる他の特徴もさらに含む。添付の図面において:
- 図1は、ヒトXPC遺伝子、及びメガヌクレアーゼが誘発する組換えによる機能的遺伝子の復帰のための2つの異なるストラテジを表す。A. XPC遺伝子CDSジャンクションを示す。XP-C相補群で見出される変異は、矢印により強調する。Xa.1配列(9119位、配列番号24)は、イントロン(intronic)配列で見出される。Xc.1配列(20438位、配列番号12)は、エキソン9で見出される。B. 遺伝子修正。変異は、既知の遺伝子内で生じる。メガヌクレアーゼによる切断及び修復マトリクスによる組換えの際に、有害な変異が修正される。C. エキソン配列ノックイン。変異は、既知の遺伝子内で生じる。変異されたmRNA転写産物を、遺伝子の下に強調する。修復マトリクス内で、切断部位の下流に位置するエキソンは、ポリアデニル化部位とフレーム内で融合されて(cDNA内でのように)、3'で転写を停止する。イントロン及びエキソンの配列は、相同領域として用い得る。エキソン配列ノックインは、機能的なタンパク質をコードし得るmRNAに転写される、工学的に作製された遺伝子をもたらす。
【0126】
- 図2は、本発明の原理を示す。A: その標的に結合したI-CreIの構造。実験データは、2つの独立したサブドメイン(四角)は、DNA結合ドメイン内で同定できたことを示す。コアドメインの各サブドメインは、DNA標的の異なる半分に結合する。B. 半分のDNA標的の明確な部分にそれぞれが結合するより小さい独立したサブドメイン(四角)を同定したいと考えるだろう。しかし、この仮定を支持する構造的又は実験的データはない。
【0127】
- 図3は、I-CreIと、そのDNA標的であるC1221 (配列番号25)との塩基特異的相互作用マップを示す(Chevalier及びStoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜74 ; Chevalierら J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜69)。本発明者らは、領域-10〜-8及び+8〜+10、又は-5〜-3及び+3〜+5で改変されたDNA標的に結合できる新規なI-CreI由来エンドヌクレアーゼを同定している。これらのDNA領域を、灰色の箱で示す。
【0128】
- 図4は、コンビナトリアルアプローチの原理を示す。A. 2つのDNA結合サブドメインの分離性を鑑みて(左上)、I-CreI標的配列に由来する異なる配列に結合する異なるI-CreIモノマーを組み合わせて(右上及び左下)、非パリンドロームキメラ標的を切断するヘテロダイマー又は単鎖の融合分子を得ることができる(右下)。B. より小さい独立したサブユニット、すなわち単独モノマー又はαββαββα折り畳み内のサブユニットの同定(右上及び左下)は、同じモノマー内の変異の組み合わせにより、新規なキメラ分子の設計を可能にするだろう(右下)。このような分子は、パリンドロームキメラ標的を切断するだろう(右下)。C. 上記の2つの工程の組み合わせにより、4つの異なるサブドメインを伴う(右上、中左及び右、左下)より大きいコンビナトリアルアプローチを可能にし、これは新しい分子に組み合わせることができる(右下)。つまり、各サブドメインについての少数の新しい切断者(cleavers)の同定により、非常に多数の新規なエンドヌクレアーゼの設計が可能になる。
【0129】
- 図5は、I-CreI N75骨格タンパク質をコードするcDNA、並びにUlib4及びUlib5ライブラリー構築に用いた縮重プライマーの配列を示す。A. 骨格(配列番号26)は、2位へのアラニンコドンの挿入、A42T、D75N、W110E及びR111Qコドン置換並びに3'末端での3つの追加のコドン(AAD)を含むI-CreI ORF (配列番号218)をコードする。B. プライマー(配列番号27、28、29)。
【0130】
- 図6は、28位、30位、33位、38位及び/又は40位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。スクリーニング後に得られ、28位、30位、33位、38位、40位、70位及び75位の残基により定義される141個のI-CreI変異型のそれぞれについて、酵母において、±8〜10位のヌクレオチド置換により、I-CreIにより切断されるC1221パリンドローム標的に由来する64個の標的を用いて、切断を監視した。標的は、-10位、-9位及び-8位のヌクレオチドに相当する3文字で表す。例えばGGGは、tcgggacgtcgtacgacgtcccga標的(配列番号30)に相当する。値は、フィルタの走査の後に適切なソフトウェアにより評価された切断強度に相当する。各タンパク質について、切断が観察されたか(黒い箱)又は切断が観察されなかったか(0)を、64個の標的のそれぞれについて示す。全ての変異型は、75位で変異している:D75N。
【0131】
- 図7は、44位、68位及び/又は70位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。スクリーニング後に得られ、44位、68位及び70位の残基により定義される(最初の3つの列)292個のI-CreI変異型のそれぞれについて、酵母において、±3〜5位のヌクレオチド置換による、I-CreIにより切断されるC1221パリンドローム標的に由来する64個の標的を用いて、切断を監視した。標的は、-5位、-4位及び-3位のヌクレオチドに相当する3文字により表す。各タンパク質について、切断が観察されたか(1)又は切断が観察されなかったか(0)を、64個の標的のそれぞれについて示す。全ての変異型は、75位で変異している:D75N。
【0132】
- 図8は、その標的に結合したI-CreIホモダイマーに対する、タンパク質及びDNA標的における変異の局在化を表す。2組の変異(残基44、68及び70; 残基28、30、33、38及び40)は、左側のモノマー上に黒色で示す。2組の変異は、空間的に明確に区別される。しかし、別個のサブドメインの構造的証拠はない。DNA標的部位の同族の領域(領域-5〜-3; 領域-10〜-8)は、一方のハーフサイトに灰色で示す。
【0133】
- 図9は、標的のXa系列、及び近い誘導体を示す。C1221 (配列番号25)は、I-CreIパリンドローム標的配列の1つである。10TGC_P、10AGG_P、5CCT_P及び5TTT (配列番号31、32、33、34)は、I-CreI変異型により切断されることが見出された近い誘導体である。これらは、箱で囲んだモチーフによりC1221から異なっている。C1221、10TGC_P、10AGG_P、5CCT_P及び5TTTは、24 bp配列として最初に記載されたが、構造データは、22 bpのみがタンパク質/DNA相互作用に関係していることを示唆する。しかし、±12位は、括弧内に示す。Xa.1 (配列番号24)は、9119位にてヒトXPC遺伝子に位置するDNA配列である。Xa.2標的(配列番号35)において、標的の中ほどにあるTTGA配列は、C1221で見出される塩基であるGTACに置換されている。Xa.3 (配列番号36)は、Xa.2の左側部分に由来するパリンドローム配列であり、Xa.4 (配列番号37)は、Xa.2の右側部分に由来するパリンドローム配列である。10TGC_P、10AGG_P、5CCT_P及び5TTTからの箱で囲んだモチーフは、標的のXa系列で見出される。
【0134】
- 図10は、pCLS1055プラスミドベクターマップを表す。
- 図11は、pCLS10542プラスミドベクターマップを表す。
- 図12は、Xa.3標的の切断を示す。この図は、I-CreI K28, N30, S33, R38, S40, S70 N75 (KNSRSSN)及びI-CreI A28, N30, S33, R38, K40, S70 N75 (ANSRKSN)変異体の、Xa.1、Xa.2、Xa.3及びXa.4標的(配列番号24、35、36、37)を用いた2次スクリーニングを示す。
- 図13は、Xa.4標的の切断を示す。この図は、表XVIに記載されるもののうちのコンビナトリアル変異体の系列の、Xa.1、Xa.2、Xa.3及びXa.4標的(配列番号24、35、36、37)を用いた2次スクリーニングを示す。
【0135】
- 図14は、pCLS1107ベクターマップを表す。
- 図15は、Xa.1及びXa.2標的の切断を示す。Xa.4を切断するI-CreI N75変異体の系列を、KNSRSS (a)又はANSRKS (b)と同時発現させる。切断は、Xa.1、Xa.2、Xa.3及びXa.4標的(配列番号24、35、36、37)を用いて試験する。Xa.1を切断する変異体を丸で囲む。
【0136】
- 図16〜22は、ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。標的配列に最も近いエキソン、及びエキソンジャンクションを示し(第1及び2列)、DNA標的の配列を、その位置とともに(第4列)示す(第3列)。標的部位での切断を修復するための最小修復マトリクスを、その最初のヌクレオチド(始点、第7列)及び最後のヌクレオチド(終点、第8列)により示す。各変異型の配列は、記載する位置でのそのアミノ酸残基により定義する。例えば、図16の最初のヘテロダイマー変異型は、K、S、R、D、K、R、G及びNを28位、33位、38位、40位、44位、68位、70位及び75位にそれぞれ有する第1モノマーと、R、D、R、K、A、S、N及びIを28位、30位、38位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれ有する第2モノマーとからなる。位置は、I-CreI配列SWISSPROT P05725又はpdbアクセッションコード1g9yを参照して示す。I-CreIは、I、Q、K、N、S、Y、Q、S、A、Q、R、R、D、I、E及びAを24位、26位、28位、30位、32位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び133位にそれぞれ有する。記載していない位置は、変異され得るか又はされ得ない。後者の場合、記載していない位置は、野生型I-CreI配列に相当する。
【0137】
- 図23は、ヒトXPC遺伝子において同定された、C1221から導かれる3つの標的: Xa.1、Xb.1及びXc.1 (配列番号24, 8, 12)を表す。それぞれの当初の標的を、I-CreI切断についてより好ましいXx.2標的(配列番号35、219、222)、次いで2つのパリンドローム標的Xx.3 (配列番号36、220、223)及びXx.4 (配列番号37、221、224)に変換させた。星印は、遺伝子中で見出される、可能性のある標的を表す。黒の四角又は垂直の線は、XPCエキソンを表す。
【0138】
- 図24は、カスタム設計のホーミングエンドヌクレアーゼの作製及びスクリーニングのためのストラテジを示す。A. 1次スクリーニングの一般的なストラテジ。局所的に特異性を変更した適切なI-CreI誘導体を、データベースで同定する。次いで、コンビナトリアルアプローチを用いて、これらの変異体を、インビボクローニングにより組み立てる。活性なコンビナトリアル変異体を、Xx.3又はXx.4標的のいずれかに対して、酵母スクリーニングアッセイを用いてホモダイマーとして同定する。ヘテロダイマーは、ともに非パリンドローム標的であるXx.2及びXx.1に対する同時発現によりスクリーニングした。B. ヘテロダイマースクリーニングの例。それぞれの新しいエンドヌクレアーゼを、ともの非パリンドロームであり、±2位及び±1位で異なる標的Xx.2及びXx.1に対してスクリーニングする。スクリーニングは、以前に記載されたようにして行う(国際PCT出願WO 2004/067736; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。青色の着色は、切断を示す。
【0139】
- 図25は、カスタム設計ホーミングエンドヌクレアーゼの活性改良のストラテジを示す。Xx.4に対して活性な4つのモノマーのプールを、修復ミスの多い(error-prone) PCRにより突然変異誘発し、その対の片方(Xx.3に対して活性なモノマー)を用いて、標的Xx.1を含む酵母発現株を作製する。突然変異誘発ライブラリーを、第2酵母株に形質転換し、インビボクローニングによりクローニングする。ヘテロダイマー活性のスクリーニングを、2つの酵母株を交配させることにより行う。同じ手順を、次いで、Xx.3標的に対して活性なI-CreI変異型に対して繰り返す。
【0140】
- 図26は、Xb.1標的を切断する改良されたヘテロダイマーのスクリーニング及び特徴決定を示す。A. 当初のものから改良されたバージョンへのヘテロダイマーの最終的なスクリーニング。I-SceIホーミングエンドヌクレアーゼの2つの形を、対照として用いる:I-SceI*、活性が乏しいI-SceI変異型;I-SceI、強い活性を有する元来のI-SceI ORF。φ:空のベクターで形質転換された酵母。当初:改良の前の代表的な変異体活性。Xa.3又はXa.4のいずれかに対して活性な改良された変異体を含む酵母株を、改良された変異体及びXa.1標的を含む酵母株と交配させた。B. 最も活性が高いI-CreI変異型のタンパク質配列。I: 活性の改良前のタンパク質配列。M: 修復ミスの多いPCRによるランダム突然変異誘発後のタンパク質配列。
【0141】
- 図27は、哺乳動物細胞におけるヘテロダイマー活性を示す。ヘテロダイマー活性は、材料及び方法の部分に記載するように、同時発現アッセイにより定量した。φ:空のベクターでトランスフェクションしたCHO。I-SceI:I-SceI発現ベクターでトランスフェクションしたCHO。I:活性の改良前の変異体。M:活性の改良後の変異体。全ての標的ベクターは、切断効率が低い余分の最適以下18bp I-SceI部位を有する。これは、対照実験として用いる。I-SceI活性は、全ての標的ベクターを用いて得られた平均を表す。
【0142】
- 図28は、コンビナトリアルホモダイマー変異体のプロファイリングを表す。A. I-CreI C1221パリンドローム標的のハーフサイトは、各箱の下部の線上に記載する。それぞれの位置において耐性があった個別のヌクレオチドの変化を示す。文字のサイズは、酵素I-CreI D75N及び野生型の活性に比例する。B. Xa.3及びXa.4パリンドローム標的のハーフサイトを、下部の線上に記載する。それぞれの位置において耐性があった個別のヌクレオチドの変化を、変異体.3及び変異体.4についてそれぞれ示す。文字のサイズは、変異体の活性に比例する。
【0143】
実施例1:±8位〜±10位での特異性が改変されたI-CreI変異型の工学的作製
メガヌクレアーゼ変異型の製造方法、及び特異性が変更された変異型をスクリーニングするために用いる哺乳動物又は酵母細胞での切断誘発組換えに基づくアッセイは、国際PCT出願WO 2004/067736、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458、Epinatら, N.A.R., 2003, 31, 2952〜2962及びChamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178に記載される。これらのアッセイは、標準的な方法で監視できる機能的LacZレポーター遺伝子をもたらす。
【0144】
A) 材料及び方法
a) Ulib4、Ulib5及びLib4ライブラリーの構築
I-CreI wt及びI-CreI D75Nのオープンリーディングフレームを、以前に記載されたようにして合成した(Epinatら, N.A.R., 2003, 31, 2952〜2962)。変異D75Nを、コドン75をaacで置換することにより導入した。3つのコンビナトリアルライブラリー(Ulib4、Ulib5及びLib4)は、I-CreI D75Nタンパク質から、1つのDNA標的ハーフサイトの±8位〜±10位の塩基との相互作用におそらく関わる残基の3つの異なる組み合わせを置き換えることにより導いた。メガヌクレアーゼライブラリーの多様性は、選択された位置のそれぞれにおいてユニーク縮重コドン(10〜12の異なるアミノ酸をコードする)を有する縮重プライマーを用いるPCRにより作製した。
【0145】
N30位、Y33位及びQ38位(Ulib4ライブラリー)又はK28位、N30位及びQ38位(Ulib5ライブラリー)での3つのコドンを、12の異なるアミノ酸:A,D,E,G,H,K,N,P,Q,R,S,Tをコードする縮重コドンVVK (18コドン)により置き換えた。その結果、これらのタンパク質ライブラリーの最大(理論的)多様性は、123、すなわち1728であった。しかし、核酸の点では、多様性は183、すなわち5832であった。所望の変異の組み合わせを有するフラグメントは、縮重プライマー対(Ulib456for及びUlib4rev; Ulib456for及びUlib5rev、図5B)と、DNA鋳型としてD75Nオープンリーディングフレーム(ORF)(図5A)とを用いるPCRにより得た。対応するPCR産物を、LEU2栄養要求性マーカー遺伝子を有する酵母複製発現ベクターpCLS0542 (Epinatら, 既出)中のI-CreI N75 ORFにクローニングして戻した。この2ミクロンに基づく複製ベクターにおいて、I-CreI変異型は、ガラクトース誘導プロモーターの制御下にある。
【0146】
BIOMETHODESから入手したLib4において、まず、70位のアルギニンをセリンで置き換えた(R70S)。次いで、28位、33位、38位及び40位を無作為化した。通常のアミノ酸(K28、Y33、Q38及びS40)を、10アミノ酸(A,D,E,K,N,Q,R,S,T,Y)のうちの1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で10000の理論的複雑さ(complexity)を有する。
【0147】
b) 標的クローンの構築
C1221の24 bpのパリンドローム(tcaaaacgtcgtacgacgttttga, (配列番号25)は、ほぼパリンドロームの天然I-CreI標的(tcaaaacgtcgtgagacagtttgg, 配列番号38)のハーフサイトの繰り返しである。C1221は、インビトロ及びエクスビボにおいて、酵母及び哺乳動物細胞の両方において、I-CreI天然標的と同様に効率よく切断される。
64個のパリンドローム標的を、C1221から以下のようにして導いた:64対のオリゴヌクレオチド((ggcatacaagtttcnnnacgtcgtacgacgtnnngacaatcgtctgtca (配列番号39)及び逆相補配列)をSigmaから入手し、アニールし、同じ向きでpGEM-T Easy (PROMEGA)にクローニングした。次いで、400 bpのPvuIIフラグメントを切り出し、酵母ベクターpFL39-ADH-LACURAZ (pCLS0042ともよばれる)、及び哺乳動物ベクターpcDNA3誘導体(pcDNA3.1-LAACZ)にクローニングし(ともに以前に記載されている(Epinatら, 2003, 既出))、64個の酵母レポーターベクター(標的プラスミド)を得た。
【0148】
或いは、一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製した二本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いて、酵母及び哺乳動物レポーターベクターにクローニングした。
【0149】
c) 酵母株
メガヌクレアーゼ発現変異型のライブラリーを、leu2変異体1倍体酵母株FYC2-6A: アルファ, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200に形質転換した。由来するDNA 1μgあたり106の独立した形質転換体を日常的に与える伝統的な化学/熱ショックプロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)を、形質転換に用いた。個別の形質転換体(Leu+)クローンを、96ウェルマイクロプレートで個別に採取した。13824個のコロニーを、コロニーピッカー(QpixII, GENETIX)を用いて採取し、144枚のマイクロタイタープレートで成長させた。
【0150】
64個の標的プラスミドを、同じプロトコルを用いて、1倍体酵母株FYBL2-7B: a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202に形質転換して、64個の試験株を得た。
【0151】
d) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
メガヌクレアーゼ発現クローンを、64個の標的株のそれぞれと交配させ、2倍体を、Arnouldら, 2006, 既出の図2に示すスクリーニングアッセイを用いて、ベータ-ガラクトシダーゼ活性について試験した。I-CreI変異型クローン、及び酵母レポーター株をグリセロール(20%)中に貯蔵し、新しいマイクロプレートで複製させた。交配は、コロニーグリッダー(QpixII, GENETIX)を用いて行った。変異体を、高格子密度(gridding density)(約20スポット/cm2)を用いて、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上にグリッドした。第2のグリッドプロセスを、同じフィルタ上で行って、各変異型について64個の異なるレポーター保持酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを、固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして交配させた。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、ガラクトース(2%)を炭素源として(及び同時発現実験についてG418を含む)含有する合成培地に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する2倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5 Mリン酸ナトリウムバッファー, pH 7.0、0.1 % SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7 mM β-メルカプトエタノール、1%アガロース中に0.02% X-Galを含む固形アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性を監視した。2日間のインキュベーションの後に、陽性のクローンを走査により同定した。クローンのβ-ガラクトシダーゼ活性を、適切なソフトウェアを用いて定量した。少なくとも1つの標的に対して活性を示すクローンを単離した(第1スクリーニング)。次いで、スポット密度を4スポット/cm2に減らし、各陽性クローンを、4重で64個のレポーター株に対して試験し、このことにより、完全なプロファイルを作製した(2次スクリーニング)。
【0152】
e) 配列
酵母における1次及び/又は2次スクリーニングの間に同定した陽性クローンのオープンリーディングフレーム(ORF)を、PROLIGOからのプライマー:PCR-Gal10-F (gcaactttagtgctgacacatacagg, 配列番号40)及びPCR-Gal10-R (acaaccttgattgcagacttgacc, 配列番号41)、又は5'ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc 3' (配列番号225)及び5'ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc 3' (配列番号226)を用いて、酵母コロニー上でPCRにより増幅した。簡単に、酵母コロニーを採取し、100μlのLGlu液体培地に再懸濁し、一晩培養する。遠心分離の後に、酵母ペレットを10μlの滅菌水に再懸濁し、1.5μlの各特異的プライマー(100 pmol/μl)を含有する50μlの最終容量でPCR反応を行なうのに用いる。PCR条件は、94℃にて10分間の変性を1サイクル、94℃にて30秒間の変性、55℃にて1分間のアニーリング、72℃にて1.5分間の伸長を35サイクル、及び5分間の最終伸長であった。得られたPCR産物を、次いで、配列決定した。
【0153】
f) 1次ヒットの再クローニング
1次スクリーニングの間に同定された陽性クローンのオープンリーディングフレーム(ORF)を、Gatewayプロトコル(Invitrogen)を用いて再クローニングした。ORFを、e)に記載するようにして、酵母コロニー上でPCRにより増幅した。PCR産物を、次いで、(i) ガラクトース誘導プロモーター、選択可能なマーカーとしてLEU2又はKanR、及び2ミクロン複製起点を保持する酵母ゲートウェイ発現ベクター、(ii) NOVAGENからのpET 24d(+)ベクター、及び(iii) INVITROGENからのCHOゲートウェイ発現ベクターpcDNA6.2にクローニングした。得られたクローンは、配列決定(MILLEGEN)により確認した。
【0154】
B) 結果
I-CreIは、22 bpの偽パリンドローム標的を切断するダイマーホーミングエンドヌクレアーゼである。その天然の標的に結合したI-CreI構造の分析により、各モノマーにおいて、8残基が7塩基と直接の相互作用を確立していることが示された(Juricaら, 1998, 既出)。これらの構造データによると、±8〜10位のヌクレオチドの塩基が、I-CreIのアミノ酸N30、Y33及びQ38と特異的な接触を確立している(図3)。つまり、30位、33位及び38位に変異を有する新規なタンパク質は、I-CreIにより切断されるパリンドローム標的の±8位、±9位及び±10位の置換から得られる64個の標的との新規な切断プロファイルを示すことができた。さらに、変異は、DNA塩基との直接接触に関与する残基の数及び位置を変更させるだろう。より具体的には、30位でも33位でも38位でもないが、折り畳まれたタンパク質の非常に近傍にある位置は、同じ塩基対との相互作用に関与し得るだろう。
【0155】
網羅的なタンパク質ライブラリー対標的ライブラリーのアプローチは、DNA結合界面のこの部分を局所的に改変するために行われた。まず、I-CreI骨格をD75からNに変異させた。D75N変異は、タンパク質構造に影響しなかったが、過剰発現実験においてI-CreIの毒性を減少させた。
【0156】
次いで、Ulib4ライブラリーを構築した。残基30、33及び38を無作為化し、通常のアミノ酸(N30、Y33及びQ38)を、12アミノ酸(A,D,E,G,H,K,N,P,Q,R,S,T)の1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で1728の複雑さを有する(核酸の点で5832)。
【0157】
次いで、2つの他のライブラリー、Ulib5及びLib4を構築した。Ulib5において、残基28、30及び38を無作為化し、通常のアミノ酸(K28、N30及びQ38)を、12アミノ酸(ADEGHKNPQRST)の1つで置き換えた。得られたライブラリーはタンパク質の点で1728の複雑さを有する(核酸の点で5832)。Lib4において、70位のアルギニンを、まず、セリンに置き換えた。次いで、28位、33位、38位及び40位を無作為化し、通常のアミノ酸(K28、Y33、Q38及びS40)を10アミノ酸(A,D,E,K,N,Q,R,S,T,Y)の1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で10000の複雑さを有する。
【0158】
1次スクリーニング実験において、Ulib4からの20000クローン、Ulib5からの10000クローン、及びLib4からの20000クローンを、64個の試験株のそれぞれ1つずつと交配させ、2倍体をベータ-ガラクトシダーゼ活性について試験した。64個の標的のうちの少なくとも1つとの切断活性を示す全てのクローンを、64個の標的に対する2回目のスクリーニングにおいて、4重で試験し、各切断プロファイルを確立した。次いで、メガヌクレアーゼORFを各株からPCRにより増幅し、配列決定し、141個の異なるメガヌクレアーゼ変異型を同定した。
【0159】
141個の確認されたクローンは、非常に多様なパターンを示した。これらの新しいプロファイルのいくつかは、野生型骨格といくらかの類似性を示したが、他のほとんどのものは全く異なっていた。結果を図6にまとめる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、それらの標的配列におけるいくらかの縮重に、通常、合わせることができ、I-CreI N75骨格タンパク質自体は、±10位〜±8位のaaa、aac、aag及びaatに相当する一連の4つの標的を切断する。強い切断活性がaaa、aag及びaatを用いて観察されるが、AACはわずかしか切断されない(そして、ときどき切断が観察されない)。類似のパターンが、I-CreI K28 N30 D33 Q38 S40 R70 N75、I-CreI K28 N30 Y33 Q38 S40 R70 N75のような他のタンパク質で見られる。I-CreI R28 N30 N33 Q38 D40 S70 N75及びI-CreI K28 N30 N33 Q38 S40 R70 N75のようないくつかのタンパク質では、aacは全く切断されない。
【0160】
しかし、多くのタンパク質は非常に異なるパターンを示す。いくつかの変異型では、独特の配列の切断が観察される。例えば、タンパク質I-CreI K28 R30 G33 T38 S40 R70 N75は「ggg」標的に対して活性であり、これは野生型タンパク質によっては切断されず、I-CreI Q28 N30 Y33 Q38 R40 S70 N75はAATを切断し、これはI-CreI N75により切断される標的の1つである。他のタンパク質は、一連の異なる標的を効率的に切断する。例えば、I-CreI N28 N30 S33 R38 K40 S70 N75は、ggg、tgg及びtgtを切断し、CreI K28 N30 H33 Q38 S40 R70 N75は、aag、aat、gac、gag、gat、gga、ggc、ggg及びggtを切断する。切断される配列の数は、1〜10の範囲である。まとめると、I-CreIにより切断されない34個の標的と、I-CreIにより切断される3個の標的(aag、aat及びaac、図6)とを含む37個の新規な標的が変異型により切断された。
【0161】
実施例2:XPC遺伝子からの標的を切断する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製するためのストラテジ
I-CreIの44位、68位及び/又は70位に少なくとも1つの置換を有し、かつ±3〜5位に変動を有する変異I-CreI部位を切断できるI-CreI変異型の第1系列は、以前に同定されている(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。変異型の切断パターンを、図7に示す。
【0162】
I-CreIの28位、30位、33位又は28位、33位、38位及び40位に少なくとも1つの置換を有し、かつ±8〜10位に変動を有する変異I-CreI部位を切断できるI-CreI変異型の第2系列は、実施例1に記載するようにして同定した。変異型の切断パターンは、図6に示す。
【0163】
一方では、28位、30位、33位、38位及び40位、他方で44位、68位及び70位は、同じDNA結合折り畳み上にあり、これらが独立して挙動することは構造的に証明されていない。しかし、2組の変異は、DNA標的の異なる領域の周りに位置するこの折り畳み(図8)の2つの空間的に異なる領域上に明らかに存在する。これらのデータは、I-CreIが、組み合わせることにより新規なキメラ標的を切断できる2つの独立した機能的サブユニットを含むことを示唆する。キメラ標的は、各サブドメインにより結合される±3〜5位及び±8〜10位のヌクレオチドを含む。
【0164】
この仮定は、興味のある遺伝子、XPC遺伝子中に位置する標的を用いることにより証明された。I-CreI変異型により切断される標的は、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221の24 bp誘導体である。しかし、そのDNA標的に結合したI-CreIの構造は、これらの標的の2つの外の塩基対(-12位及び12位)が、結合及び切断に対して影響を有さないことを示唆し(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774; Chevalierら, 2003, J. Mol. Biol., 329, 253〜269)、この研究においては、-11位〜11位のみを考慮した。その結果、XPC遺伝子において同定される一連の標的は、24 bpではなく22 bpとして定義された。
【0165】
Xa.1、Xb.1及びXc.1は、ヒトXPC遺伝子(図1A、9及び23)のそれぞれ9119位、13521位及び20438位に位置する22 bp (非パリンドローム)標的である。Xa.1、Xb.1又はXc.1を切断するメガヌクレアーゼは、切断部位の近傍の変異(図1B)を修正するため得に用い得る。遺伝子修正の効率は、DSBへの距離が増加する場合に減少するので(Elliottら, Mol Cell Biol, 1998, 18, 93〜101)、このストラテジは、切断部位の500 bp内に位置する変異に最も効果的であろう。例えば、Xc.1を切断するメガヌクレアーゼは、エキソン9 における変異を修正するために用い得る(欠失DEL1132AA又は挿入insVAL580、図1A)。或いは、同じメガヌクレアーゼを用いて、XPC遺伝子座にて機能的XPC遺伝子を復帰させるエキソン配列をノックインし得る(図1C)。このストラテジは、切断部位の下流のいずれの変異についても用い得る。
【0166】
Xa.1は、部分的に、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される(図6及び7)、10TGC_P、10AGG_P、5TTT_P及び5CCT_P標的のパッチワークである(図9及び23)。つまり、Xa.1は、これらの以前に同定されたメガヌクレアーゼに起因するコンビナトリアル変異体により切断できる。
【0167】
Xb.1は、部分的に、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される(図6及び7)、10GGG_P、10TGT_P、5GGG_P及び5TAC_P標的のパッチワークである(図23)。つまり、Xb.1は、これらの以前に同定されたメガヌクレアーゼに起因するコンビナトリアル変異体により切断できる。
【0168】
Xc.1は、部分的に、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される(図6及び7)、10GAG_P、10GTA_P及び5TCT_P標的(図23)、及びI-CreIにより切断されるC1221の配列である5GTC_Pのパッチワークである。つまり、Xc.1は、これらの以前に同定されたメガヌクレアーゼに起因するコンビナトリアル変異体により切断できる。
【0169】
よって、これらの仮定を証明するために、同定された標的(Xx.1)の左半分(Xx.3)及び右半分(Xx.4)の配列に相当する2つのパリンドローム標的を作製した(図9及び23)。これらの2つの派生パリンドローム標的は、-2位〜+2位にて、C1221パリンドロームI-CreI標的からのGTAC配列を維持する(図9及び23)。Xx.3及びXx.4はパリンドロームであるので、これらは、ホモダイマータンパク質により切断されるはずである。第1工程において、図24Aに示すように、ホモダイマーとしてのXx.3及びXx.4配列を切断できるタンパク質を設計した(実施例3及び4)。第2工程において、図24Aに示すように、実施例3及び4で得られたタンパク質を同時発現させて、いくつかのヘテロダイマーについて(実施例5)、Xx.2及びXx.1を切断するヘテロダイマーを得た。
【0170】
実施例3:Xx.3を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異型がパリンドロームの形のXx.2標的の左部分に由来するXx.3 DNA標的配列を切断できることを示す(図9及び23)。この実施例に記載される標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらは、最初の11ヌクレオチド、続いて接尾辞_Pによってのみ記載される。例えば、標的Xa.3は、ctgccttttgt_Pとも表される。
【0171】
Xa.3は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±11位にて5TTT_Pに、そして±1位、±2位、±8位、±9位、±10位及び±11位にて10TGC_Pに類似する。
Xb.3は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±11位にて5GGG_Pに、そして±1位、±2位、±8位、±9位、±10位及び±11位にて10GGG_Pに類似する。
Xc.3は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±7位及び±11位においてC1221に、そして±1位、±2位、±7位、±8位、±9位、±10位及び±11位において10GAG_Pに類似する。
【0172】
野生型I-CreIは、±11位、±7位及び±6位でのヌクレオチド置換に寛容であることが知られている(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269; Juricaら, Mol. Cell., 1998, 2, 469〜476)。つまり、±6位及び±7位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないことが仮定された。
【0173】
5TTT_P及び5GGG_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する44位、68位及び70位、又はI-CreI S70に対する44位、68位、75位及び77位での突然変異誘発により、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載されるように、以前に得られている(図7)。10TGC_P、10GGG_P及び10TGA_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する28位、30位、38位又は30位、33位、38位、I-CreI S70 N75に対する28位、33位、38位及び40位及び70位、又はI-CreI D75若しくはN75に対する28、30、32、33、38及び40位から選択される2つの位置での突然変異誘発により得られた(実施例1及び図6)。つまり、このような変異体の対を組み合わせることにより、Xx.3標的の切断が可能になるだろう。
【0174】
タンパク質のいくつかの組は、ともに70位で変異されている。しかし、2つの分離可能な機能的サブドメインがI-CreIに存在することが仮定されていた。このことは、この位置が標的の塩基10〜8における特異性にほとんど影響しないことを意味する。
よって、組み合わせた変異体がXa.3及びXb.3標的を切断できるかを確かめるために、標的の5NNN領域(5TTT_P及び5GGG_P標的)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位及び/又は75位での変異を、図24Aに示すように、標的の10NNN領域(10TGC_P及び10GGG_P標的)を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38及び/又は40変異と組み合わせた。
【0175】
±3〜5位にてC1221と同一であるXc.3は、10GAG_P標的を切断する以前に同定された変異体(変異の組み合わせなし)により切断されるはずである。
【0176】
A) 材料及び方法
a) 標的ベクターの構築:
C1221由来標的を、次のようにしてクローニングした。ゲートウェイクローニング配列に接する標的配列に相当するオリゴヌクレオチドを、Proligoに注文した(例として: 5' tggcatacaagtttctgccttttgtacaaaaggcagacaatcgtctgtca 3' (Xa.3標的について配列番号42)。一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製した二本鎖標的DNAを、GatewayRプロトコル(INVITROGEN)を用いて、酵母レポーターベクター(pCLS1055, 図10)にクローニングした。酵母レポーターベクターで、S. cerevisiae FYBL2-7B株(MATアルファ, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を形質転換した。
【0177】
b) コンビナトリアル変異体の構築:
10TGC_P、10GGG_P、5TTT_P又は5GGG_Pを切断するI-CreI変異体を、10TGC_P、10GGG_P及び5TTT_P、5GGG_P標的についてそれぞれ実施例1及び図6、並びにArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び図7に記載するようにして同定した。両方の系列からの変異を含むI-CreI由来コード配列を作製するために、I-CreIコード配列の5'末端(アミノ酸1〜43位)又は3'末端(39〜167位)を増幅する別々の重複PCR反応を行った。5'及び3'末端の両方について、PCR増幅を、ベクター(pCLS0542, 図11)に特異的なプライマー:Gal10F又はGal10R、及びアミノ酸39〜43のI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5'-ctannnttgaccttt-3' (配列番号43)又はassR 5'-aaaggtcaannntag-3' (配列番号44)) (ここで、nnnは残基40をコードする)を用いて行う。得られたPCR産物は、互いに15bpの相同性、及びLEU2遺伝子をマーカーとして含む2ミクロンベースの複製ベクターであるpCLS0542、及びカナマイシン耐性遺伝子を含むpCLS1107と約100〜200 bpの相同性を有する。
【0178】
つまり、酵母においてインビボ相同組換えにより無傷のコード配列を作製するために、2つの重複PCRフラグメントのそれぞれを約25 ng、及びNcoI及びEagIでの消化により直線化したpCLS0542ベクターDNA 25 ng、又はDraIII及びNgoMIVでの消化により直線化したpCLS1107ベクターDNA 25ngを用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz, R.D.及びR.A. Woods, Methods Enzymol, 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。コンビナトリアル変異体は、有利には、ライブラリーとして作製され得る。PCR反応物を、等モル量でプールし、直線化したプラスミドとともに酵母を形質転換した。形質転換体を、ロイシン欠乏合成培地(pCLS0542)又はG418含有リッチ培地(pCLS1107)のいずれかで選択した。コロニーを、コロニーピッカー(QpixII, Genetix)を用いて採取し、96ウェルマイクロタイタープレートで成長させた。
【0179】
c) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング:
実験手順は、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いた以外は、実施例1に記載されるとおりである。
【0180】
c) 変異体の配列決定
プラスミドを発現する変異体を回収するために、酵母DNAを、標準プロトコルを用いて抽出し、これを用いてE. coliを形質転換した。次いで、変異体ORFの配列決定を、MILLEGEN SAにより、プラスミド上で行った。代わりに、酵母での1次スクリーニングの間に同定された陽性クローンのORFを、コロニーからの酵母DNA抽出物に対して、PROLIGOからのプライマー5'ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc 3' (配列番号225)及び5'ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc 3' (配列番号226)を用いてPCRにより増幅し(Akadaら, Biotechniques, 2000, 28(4): 668〜70, 672, 674)、配列決定をMILLEGENにより、PCR産物に対して直接行った。PCR産物を、(i) ガラクトース誘導プロモーター、選択マーカーとしてLEU2又はKanR、及び2ミクロン複製起点を有する酵母ゲートウェイ発現ベクター、(ii) INVITROGENからのCHOゲートウェイ発現ベクターpCDNA6.2のいずれかにクローニングした。得られたクローンを、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0181】
B) 結果
10TGC_P (ctgcacgtcgt_P)標的を切断するI-CreI N75変異体、及び5TTT_P (caaaactttgt_P)標的を切断するI-CreI N75 (Q44, R68, R70)変異体を組み合わせて、Xa.3標的(ctgccttttgt_P)に対してスクリーニングされたコンビナトリアル変異体を得た。
10GGG_P標的を切断するI-CreI N75変異体、及び5GGG_P標的を切断するI-CreI N75変異体を組み合わせて、Xb.3標的に対してスクリーニングされたコンビナトリアル変異体を得た。
各ライブラリーの多様性の少なくとも2倍をスクリーニングした。同定された活性な変異体の数と、試験した組み合わせの数との間に、相関関係は観察されなかった。
【0182】
Xc.3標的配列は、±5位、±4位及び±3位に野生型配列GTCを含んでいた。よって、コンビナトリアルアプローチは、この標的に対して特異的な変異型を作製するために必要ではなかった。塩基±10、±9及び±8に対する基質特異性が変更された、以前に同定されたI-CreI変異型は、Xc.3 DNA標的に対して直接スクリーニングされた。
【0183】
【表16】
【0184】
8つのコンビナトリアル変異体が、Xa.3標的を切断することが見出された(表XVI)。Xa.3標的を切断する変異体の2つは、以下の配列を有する:
- I-CreI K28, N30, S33, R38, S40とI-CreI S70,N75との組み合わせにより得られたI-CreI K28, N30, S33, R38, S40, S70及びN75 (KNSRSSNという)、及び
- I-CreI K28, N30, S33, R38, K40とI-CreI S70, N75との組み合わせにより得られたI-CreI A28, N30, S33, R38, K40, S70及びN75 (ANSRKSNという)。
【0185】
30個のコンビナトリアル変異体が、Xb.3標的を切断することが見出された(表XVI)。
試験した10GAG_P標的を切断する変異体のうち、21個がXc.3標的を切断することが見出された(表XVI)。
これらの結果は、2次スクリーニング(図12)により確認され、推定アミノ酸1次構造は、配列決定により確認された。
【0186】
実施例4:Xx.4を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異型がパリンドローム形のXx.2標的の右側部分に由来するXx.4 DNA標的配列を切断できることを示す(図9及び23)。この実施例に記載する全ての標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらは、最初の11ヌクレオチド、続いて接尾辞_Pのよってのみ表される。例えば、Xa.4はtaggatcctgt_P (配列番号37)とよばれる。
【0187】
Xa.4は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位において5CCT_Pに類似し、±1位、±2位、±7位、±8位、±9位及び±10位において10AGG_Pに類似する。±6位及び±11位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないであろうと仮定された。
Xb.4は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±6位及び±11位において5TAC_Pに類似し、±1位、±2位、±6位、±8位、±9位、±10位及び±11位において10TGT_Pに類似する。±7位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないであろうと仮定された。
Xc.4は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±7位及び±11位において5TCT_Pに類似し、±1位、±2位、±7位、±8位、±9位、±10位及び±11位において10GTA_Pに類似する。±6位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないであろうと仮定された。
【0188】
5CCT_P、5TAC_P及び5TCT_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する44位、68位及び70位、又はI-CreI S70に対する44位、68位、75位及び77位での突然変異誘発により、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載されるように、以前に得られている(図7)。10AGG_P、10TGT_P及び10GTA_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する28位、30位、38位若しくは30位、33位、38位、I-CreI S70 N75に対する28位、33位、38位及び40位及び70位、又はI-CreI D75若しくはN75に対する28位、30位、32位、33位、38位及び40位から選択される2つの位置での突然変異誘発により得られた(実施例1及び図6)。つまり、変異体のこのような対を組み合わせることにより、Xx.4標的の切断が可能になる。
【0189】
タンパク質のいくつかの組は、ともに70位で変異されている。しかし、I-CreIが2つの分離可能なサブドメインを含むと仮定されていた。このことは、この位置が標的の塩基10〜8における特異性にほとんど影響しないことを意味する。
よって、組み合わせた変異体がXx.4標的を切断できるかを確かめるために、5CCT_P、5TAC_P及び5TCT_P標的を切断するタンパク質からの44位、68位、70位及び/又は75位での変異を、図24Aに示すように、10AGG_P、10TGT_P及び10GTA_P標的を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38及び/又は40変異と組み合わせた。
【0190】
A) 材料及び方法
実施例3を参照されたい。
【0191】
B) 結果
I-CreI組み合わせ変異体を、44位、68位及び70位での変異を、I-CreI N75骨格の28、30、33、38及び40変異と会合させることにより構築した。組み合わせた変異体を、Xx.4 DNA標的に対してスクリーニングした。各ライブラリーの多様性の少なくとも2倍をスクリーニングした。同定された活性な変異体の数と、試験した組み合わせの数との間に、相関関係は観察されなかった。ハイブリッド変異体の2パーセントは、Xb.4 DNA標的について機能的であるとみられるが、55%ほど多くがXa.4に対して活性であった。2次スクリーニング及び配列決定の後に、Xa.4、Xb.4及びXc.4標的についてそれぞれ、104、8及び4個の異なる切断者が同定された(表XVII)。
【0192】
【表17】
【0193】
10AGG_P (caggacgtcgt_P; 配列番号32)標的を切断するI-CreI N75変異体(28位、30位、33位、38位及び40位のアミノ酸を示す)と、5CCT_P (caaaaccctgt_P; 配列番号34)標的を切断するI-CreI N75変異体(44位、68位及び70位のアミノ酸を示す)を、表XVIIIに列挙する。104個の陽性のうち39個を、図13及び表XVIIIに示す。
【0194】
【表18】
【0195】
実施例5:Xx.2及びXx.1.1を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームXx.2由来標的Xx.3及びXx.4のそれぞれを切断できるI-CreI変異体を、実施例3及び4で同定した。このような変異体の対のサブセット(Xx.3を切断するものとXx.4を切断するもの)を、酵母において同時発現させた。同時発現の際に、3つの活性な分子種、すなわち2つのホモダイマーと1つのヘテロダイマーとが存在するはずである。形成されるはずであるヘテロダイマーがXx.1及びXx.2標的を切断できたかを、図24Aに示すようにしてアッセイした。
【0196】
A) 材料及び方法
a) カナマイシン耐性ベクターにおける変異体のクローニング:
酵母において2つのI-CreI変異体を同時発現させるために、Xx.3配列を切断する変異体を、カナマイシン耐性酵母発現ベクター(pCLS1107, 図14)にサブクローニングした。
変異体を、ロイシンベクター(pCLS0542)及びカナマイシンベクター(pCLS1107)に共通のプライマー(Gal10F及びGal10R)を用いるPCR反応により増幅させた。約25ngのPCRフラグメント、並びにDraIII及びNgoMIVでの消化により直線化した25ngのベクターDNA (pCLS1107)を用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換した。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列を、酵母におけるインビボ相同組換えにより作製する。
【0197】
b) 変異体同時発現
Xx.4標的を切断する変異体を発現する酵母株を、pCLS1107発現ベクター中の、Xx.3標的を切断する変異体をコードするDNAで形質転換した。形質転換体を、-L Glu + G418培地で選択した。
【0198】
c) メガヌクレアーゼ同時発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング:
実験手順は、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いた以外は、実施例1に記載されるとおりである。
【0199】
B) 結果:
表XIXに、標的Xx.2及びXx.1に対して酵母における同時発現により試験された合計の活性なヘテロダイマーの数をまとめる。
【0200】
【表19】
【0201】
全ての場合において、標的.2についての切断活性を有するヘテロダイマーを同定した(図15a、15b及び24B)。試験した全てのヘテロダイマーは、Xc.2に対して活性であったが、75%及び45%がXa.2及びXb.2標的をそれぞれ切断できた。一方、Xa.1、Xb.1及びXc.1標的でそれぞれ見出される中央の4ヌクレオチド配列TTGA、GAAA及びACACは、I-CreI C1221パリンドローム標的に挿入されたときにI-CreI切断活性に影響しなかったが、Xa.2及びXc.2に対する活性ヘテロダイマーの一部のフラクション(sub-fraction)のみがそれぞれXa.1及びXc.1標的を切断でき、Xb.1標的についての切断者は見出されなかった(図15a、15b及び24B)。中央の配列の影響は、その特定のトポロジーにより説明されている。構造分析は、標的のこのDNA領域が、約50°の曲率の最大DNA曲げの領域であることを示し、この曲率は塩基のねじれ及び切れやすいリン酸基の近傍からの飛び出し(unstacking)をもたらす(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003329, 253〜269)。しかし、4つの中央位置での特定の配列がなぜ切断活性に適合し、いくつかの他のものが適合しないかを説明する精密な機構は、これから説明されなければならない。
【0202】
Xa.1標的についての機能的組み合わせの例を、表XX及びXXIに示す。一般的な規則として、Xx.1配列を切断する機能的ヘテロダイマーは、2つの発現されたタンパク質がホモダイマーとして強いシグナルを発したときに、常に得られた。さらに、多くの変異体がXc.1に対してまだ非常に活性であるが、Xa.1標的を切断可能な変異体は弱い活性を示した。
【0203】
【表20】
【0204】
【表21】
【0205】
実施例6:メガヌクレアーゼの切断活性の最適化
A) 材料及び方法
活性の改良
修復ミスの多いPCRを用いて、4つの選択した変異体のプールにおいてランダム突然変異を導入した。ライブラリーを、Mn2+、又はJBS dNTP-MutagenesisキットのJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されているようなdNTP誘導体である8-オキソ-dGTP及びdPTPを用いる2工程プロセスのいずれかを用いるPCRにより作製した。用いたプライマーは:preATGCreFor (5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc-3', 配列番号227)及びICreIpostRev (5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc-3', 配列番号228)である。活性の改良の第1回目において、新しいライブラリーをインビボにて酵母に、ガラクトース誘導性プロモーター、選択マーカーとしてKanR及び2ミクロン複製起点を有する直線化したカナマイシンベクター(pCLS1107, 図14)中でクローニングした。活性の改良の第2回目において、LEU2遺伝子をマーカーとして有する2ミクロンベースの複製ベクターを用いる。陽性の結果のクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確かめた。
【0206】
B) 結果
標的.2及び標的.1の間の切断活性の低下(図24B)は、メガヌクレアーゼの作製のプロセス中に導入された4つの中央のヌクレオチドgtacのほうへの偏りの結果であり得るので、弱い活性は、代償性変異(compensatory mutations)により続いて改善され得ると仮定された。図25は、タンパク質活性を改善するために用いたストラテジの一般的な作業の流れを示す。切断活性の最適化のプロセスは、2工程で行う。まず、標的配列Xa.1についての機能的ヘテロダイマーの同定の後に、Xa.4標的に対するスクリーニングにより最初に同定された2〜4モノマーのプールに(変異体.4)、修復ミスの多いPCRにより突然変異を誘発し、その対応物(例えばXa.3標的に対するスクリーニングにより同定される変異体)は修飾しないままにする。突然変異誘発したライブラリーを、次いで、酵母に形質転換し、スクリーニングを、標的Xa.1及び非突然変異誘発変異体(この場合、Xa.3に対して活性)を含む酵母株との交配により行う。約2300個のクローンを通常、試験する。なぜなら、この数のクローンは、活性が改良された変異体を見出すのに充分だからである。増強された活性を与える組み合わせが一旦同定されると、同じ手順を繰り返して、Xa.3標的と相互作用する変異体(変異体.3)を最適化する。修復ミスの多いPCRの後に、ライブラリーを、該標的及び前に同定された改良された変異体を含む酵母との交配により、Xa.1標的に対してスクリーニングする。この手順の最後に、両方のモノマーが、1つの標的配列に対する規定されたタンパク質の組み合わせについて最適化されたタンパク質ヘテロダイマーが得られる。最後に、改良された変異型は、図26Aに示すような交雑実験により確認される(モノマー改良の後に得られる標的Xa.1に対するヘテロダイマーのサブセットの酵母における切断活性の例)。Xa.4を切断する5つの改良された変異体及びXa.3を切断する6つの改良された変異体を、それぞれXa.3及びXa.4を切断する2つ及び8つの改良された変異体との組み合わせで、Xa.1標的に対して試験した。修復ミスの多いPCRに用いた元来の変異体は、対照として実験に組み込んだ。Xa.3又はXa.4のみを切断する変異体を含む酵母クローンの交配の後に得られる白色のコロニーにより示されるように、ホモダイマーを単独で用いて、標的Xa.1に対する活性は検出できなかった。対照的に、両方の種の変異体を含む酵母クローン同士で交配を行ったときに、強い切断活性が視覚化でき、このことは、切断活性がヘテロダイマー形成に起因することを示す。さらに、最も強い活性は、1つのモノマー活性のみを改良したヘテロダイマーを用いて達成される活性に比較して、両方のモノマーを最適化したときに達成される。
【0207】
最強の切断活性を示す6つの組み合わせを選択し、ORFを配列決定した。興味深いことに、6つの最も活性なヘテロダイマーは、Xa.3を切断する3つの独立した変異体と、Xa.4を切断する2つの異なる変異体との異なる6つの異なる組み合わせに起因した。図26Bは、改良プロセスに用いた元来のタンパク質の配列(I1〜I4)と、それらのそれぞれの最適化されたタンパク質(M1〜M5)とを示す。図26BのI5及びI6配列は、同時発現アッセイによりXc.1標的に対して最良の活性を示す2つのモノマーのタンパク質配列である。この標的の切断は非常に効率的であったので、さらなる活性の改善は必要なかった。
【0208】
最良の切断者のタンパク質配列分析は、変異プロセスにより影響される特定のタンパク質ドメインを明らかにしない。元来の配列に比較して、修復ミスの多いPCR は、Xa.3標的を切断する活性変異体のORFの19位、69位及び87位に変異を、及びXa.4標的を切断する変異体のコード配列の32位、85位及び109位に変異を導入した。33位及び38位も、M2及びM5タンパク質のタンパク質配列中に復帰していた。興味深いことに、19位のアミノ酸は、Xa.3標的に対する活性を有する全てのタンパク質において変異されていた。この位置は、触媒部位の一部分であり(Chevalierら, Biochemistry, 2004, 43, 14015〜14026)、近接するAsp20とともに、金属カチオン結合に参加する。これは、触媒機構の改良に直接つながり得る唯一の変異である。32位及び69位の変異は、タンパク質-DNA界面に影響し、85位及び87位の変異は、疎水性コアに影響する。他の変異は、コアタンパク質に主に影響し、このことは、普及された立体配置の変更の機構は、活性の改良に重要であることを示す。この長い範囲の影響は、例えば、変異体の結合活性を改良でき、その切断活性を増加させ得るだろう。
【0209】
これらの結果は、ランダム突然変異誘発に関連するコンビナトリアルアプローチが、特定のDNA基質についてのカスタム設計されたエンドヌクレアーゼの迅速で効率的な製造を可能にすることを示す。
【0210】
実施例7:ヘテロダイマーメガヌクレアーゼは、哺乳動物細胞において機能的である
A) 材料及び方法
哺乳動物細胞アッセイ
CHO細胞を、供給業者(QIAGEN)のプロトコルに従って、Polyfect (登録商標)トランスフェクション試薬を用いてトランスフェクションした。トランスフェクションの72時間後に、培養培地を除去し、150μlの溶解/曝露(revelation)バッファーを、β-ガラクトシダーゼ液体アッセイのために加えた(1リットルのバッファーは、100 mlの溶解バッファー(Tris-HCl 10 mM pH7.5, NaCl 150 mM, Triton X100 0.1%, BSA 0.1 mg/ml, プロテアーゼ阻害剤)、10 mlのMg 100×バッファー(MgCl2 100 mM, β-メルカプトエタノール35%)、110 ml ONPG (8 mg/ml)及び780 mlのリン酸ナトリウム0.1 M pH7.5を含む)。37℃のでインキュベーションの後に、ODを42 0nmにて測定した。プロセスの全体を、自動化Velocity11 BioCelプラットフォームにて行う。
【0211】
B) 結果
酵母で活性なハイブリッドメガヌクレアーゼを、CHO細胞を、標的ベクター及びメガヌクレアーゼ発現ベクターで一過性同時トランスフェクションすることにより哺乳動物細胞においてにおいて試験した。この目的のために、変異体及びそれらの対応する標的(Xa.1及びXc.1)のサブセットを、実施例1に記載されるようにして適切なベクターにクローニングし、メガヌクレアーゼ誘導組換え効率を、以前に記載されるような(国際PCT出願WO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., Epub 2006年11月27日)、機能的β-ガラクトシダーゼ遺伝子の復帰をモニターする標準的定量ONPGアッセイにより測定した。図27は、酵母において同定される最も活性なハイブリッドタンパク質についてのCHO-K1細胞における切断活性を示す。全ての標的プラスミドは、内部コントロールとして、18 bpの最小I-SceI部位を有する。よって、全ての変異体は、同じ実験条件下でI-SceI活性に対して比較できる。この18 bpのI-SceI部位は、I-SceIタンパク質により弱く切断され、CHO細胞におけるシグナルの飽和を避けるために選択された。活性がヘテロダイマー形成に依存することを示すそれらのバックグラウンドレベルの活性
【化1】
により判断されたところによると、単独タンパク質が発現されたときに、切断活性は検出できなかった。さらに、当初のコンビナトリアル変異体の同時発現(I1、I3)は、非常に弱い活性であり、これは、バックグラウンドレベルから実質的に区別可能ではなかった。切断活性は、タンパク質パートナーの一方が改良されるとすぐに増加する。最後に、Xa.1標的についての最も効率的な切断活性は、2つの改良されたタンパク質の同時発現により達成され、Xc.1標的について同定された変異体の活性と類似の活性レベルに到達する。これらの結果は、当初のコンビナトリアル変異体の同時発現が、活性の改良を必要とすることなくXc.1標的の効率的な切断を導くが、Xa.1に指向される変異体の活性が乏しいという酵母において得られるデータを確認する。しかし、Xa.1標的についての高い活性は、代償的変異の導入の後に生じることができた。モノマーがそれら自体で発現する場合、図27に示すように、毒性も切断も検出できず、このことは、Xa及びXcに指向して設計された変異体がI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの元来の特異性又は少なくとも細胞生存に匹敵する特異性を維持することを示す。
【0212】
実施例8:個別に変異された標的切断パターンの分析
I-CreI標的の個別の位置での縮重性は、wtI-CreIにより切断可能な変異型DNA標的を回復できるインビトロ部位選択を用いて、以前にアッセイされている(Argastら, J. Mol. Biol., 1998, 280, 345〜353)。このことは、その部位におけるほとんどのヌクレオチドの位置が、結合又は切断を損失することなく変異できることを示す。しかし、網羅的な研究は行われていない。I-CreI ホーミングエンドヌクレアーゼを用いて、Xa.1標的に対する改良された変異体を比較するために、Xa.3、Xa.4及びパリンドロームI-CreI標的C1221についての個別の変異を有する全ての可能な標的を作製した。全ての変異体を作製するために用いたタンパク質骨格は、75位にDからNへの変異を有する。この変異は、ライブラリーにおける68位及び70位での塩基性残基の置き換えに起因するエネルギーのひずみを減少させるために導入した。D75N変異が、タンパク質の基本的な折り畳み特性及び活性に影響することなく、過剰発現されたI-CreIタンパク質の毒性を減少させたことが、以前に示されている(Arnouldら, J.Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。野生型I-CreI (wt I-CreI)、最初のタンパク質骨格I-CreI(N75)及びコンビナトリアル変異体の塩基対認識の縮重の程度は、個別の部位突然変異を有するそれらのそれぞれのパリンドローム標的(C1221、Xa.3及びXa.4)に対する酵母でのそれらの切断活性を測定することによりアッセイした。
【0213】
I-CreI D75 (wt)及びI-CreI N75
図28Aに示すように、野生型タンパク質(I-CreI-D75)は、そのパリンドローム標的上の多くの個別の変異に適合できる(各ヌクレオチドのフォントサイズは切断効率に比例する)。±11位、±8位、±2位及び±1位は、最も寛容な位置である。なぜなら、これらの位置の4つのヌクレオチドはいずれも、切断効率に影響しないからである。対照的に、±9位及び±3位は、ほとんど変化を受け入れない。比較として、変異体を作製するために用いたI-CreI骨格(I-CreI-N75)は、異なるパターンを明らかにし、その標的での点突然変異にはあまり寛容でないようである。最も厳密な違いは、±1位、±3位、±10位及び±11位である。標的の切断を可能にする塩基は、±1T、±9A及び±10Aのみであるのに対して、±11位でのG及びAは、I-CreI(N75)タンパク質による標的の切断を阻害する。wt I-CreI及びI-CreI(N75)の両方について、それぞれ±7位及び±6位のC又はA及びT又はCは、最大の切断効率を可能にする。wt I-CreI及びI-CreI(N75)は全体として、単独の変異を有するそれぞれ26個及び14個の標的を切断する。このデータに基づいて、かつ各半分の標的が全体的な切断効率に対して独立した影響を有することができると仮定するならば、wt I-CreIは、個別の変異を有する1156個(34x34)の非パリンドローム標的のうち、最大で676個(26x26)を切断できるはずであり、一方、I-CreN75は196個(14x14)しか切断できないはずである。おそらく、この研究で観察されたI-Cre(N75)の制限されたパターンは、このI-CreI変異型の毒性がないことを説明できるだろう。以前の研究で示唆されたように(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269; Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1353〜1664)、個別のヌクレオチド多形性の寛容性は、I-CreI(D75)が標的の規定された集団を認識することを可能にし、進化の間にイントロンの繰り返しの水平移動を促進する。
【0214】
Xa.3及びXa.4標的を切断するコンビナトリアル変異体
図28Bは、Xa.3及びXa.4標的を切断する最良のコンビナトリアル変異体を用いて得られた結果を示す。Xa.4標的を切断する変異体は、Xa.3標的を切断する変異体よりも、それらのそれぞれの標的における個別の変異についてより許容性がある。コンビナトリアルXa.4変異体は、24個のパリンドローム標的を切断でき、そのうち20個は強く切断される。Xa.4変異体により許容される単独塩基置換のパターンは、それ自体の標的に対するwt I-CreIのパターンと非常によく似ている。対照的に、Xa.3標的に対するカスタム設計の変異型は、個別の変異に関して最高の厳密さを有することが明らかになる。なぜなら、3つのパリンドローム標的しか高く切断可能でないからである。この変異体は、34個のパリンドローム標的のうち、8個(そのうち4個は効率的に切断される)しか切断できない。G及びTを許容できる±5位を除いて、それが選択された標的に対してのみ効率的な切断が達成される。試験した変異体はいずれも、wt I-CreI天然タンパク質よりも大きい縮重性を示さなかったので、これらのデータは、変異体を作製するために用いたコンビナトリアルアプローチが、その標的に対するタンパク質特異性の単純な弛緩の代わりに、基質特異性の変更をもたらしたことの証拠を提供する。さらに、コンビナトリアル変異体は、親の配列及び元来のI-CreI標的配列に対しても確認され、試験したタンパク質はいずれもこれらの標的を切断しない。まとめると、Xa.1標的を切断するように設計されたヘテロダイマーは、個別の変異を有する1156個の非パリンドローム標的のうち、最大で192個(8x24)を切断できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】ヒトXPC遺伝子、及びメガヌクレアーゼが誘発する組換えによる機能的遺伝子の復帰のための2つの異なるストラテジを表す。
【図2】本発明の原理を示す。
【図3】I-CreIと、そのDNA標的であるC1221 (配列番号25)との塩基特異的相互作用マップを示す。
【図4】コンビナトリアルアプローチの原理を示す。
【図5】I-CreI N75骨格タンパク質をコードするcDNA、並びにUlib4及びUlib5ライブラリー構築に用いた縮重プライマーの配列を示す。
【0216】
【図6】28位、30位、33位、38位及び/又は40位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。
【図7】44位、68位及び/又は70位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。
【図8】その標的に結合したI-CreIホモダイマーに対する、タンパク質及びDNA標的における変異の局在化を表す。
【図9】標的のXa系列、及び近い誘導体を示す。
【図10】pCLS1055プラスミドベクターマップを表す。
【0217】
【図11】pCLS10542プラスミドベクターマップを表す。
【図12】Xa.3標的の切断を示す。
【図13】Xa.4標的の切断を示す。
【図14】pCLS1107ベクターマップを表す。
【図15】Xa.1及びXa.2標的の切断を示す。
【0218】
【図16】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図17】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図18】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図19】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図20】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【0219】
【図21】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図22】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図23】ヒトXPC遺伝子において同定された、C1221から導かれる3つの標的: Xa.1、Xb.1及びXc.1 (配列番号24, 8, 12)を表す。
【図24】カスタム設計のホーミングエンドヌクレアーゼの作製及びスクリーニングのためのストラテジを示す。
【図25】カスタム設計ホーミングエンドヌクレアーゼの活性改良のストラテジを示す。
【0220】
【図26】Xb.1標的を切断する改良されたヘテロダイマーのスクリーニング及び特徴決定を示す。
【図27】哺乳動物細胞におけるヘテロダイマー活性を示す。
【図28】コンビナトリアルホモダイマー変異体のプロファイリングを表す。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素乾皮症遺伝子(XP遺伝子)からのDNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターにより改変された細胞、動物又は植物、並びに該メガヌクレアーゼ変異型及びその誘導生成物のインビボ及びエクスビボ(遺伝子細胞治療)でのゲノム療法及びゲノム工学のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
色素乾皮症(XP)は、紫外線A (UV)の光線への露出に対する過敏症、太陽光線に露出された領域での皮膚がんの発生についての高い素因、及びある場合においては神経障害により特徴付けられる希な常染色体上の劣性遺伝子の疾患である(Hengge, U.R.及びW. Bardenheuer, Am. J. Med. Genet. C. Semin. Med. Genet., 2004, 131: 93〜100; Magnaldo, T.及びA. Sarasin, Cells Tissues Organs, 2004, 177: 189〜198; Cleaver, J. E., Nat. Rev. Cancer, 2005, 5: 564〜573; Hengge U.R., Clin. Dermatol., 2005, 23: 107〜114)。XP患者の細胞は、UVにより誘発されるDNA損傷を除去する能力が低下している(Cordonnier, A.M.及びR.P. Fuchs, Mutat. Res., 1999, 435, 111〜119)。このような異常は、真核生物の間で保存された応用のきく機構であり、損傷されたヌクレオチドの切り出し及び再合成により損傷されたDNAを修正することを含む核酸切り出し修復(Nucleotide Excision Repair;NER)プロセスにおける欠陥に起因する。このプロセスにおける欠陥は、DNAにおけるUV損傷の持続を導き、UVに曝露された皮膚領域での突然変異誘発及び腫瘍の発生をもたらす。3つの主要な種類の皮膚癌、扁平上皮癌、基底細胞癌及び悪性黒色腫は、小児期にすでに発現する。XP患者は、細胞融合実験により7つの相補群(XP-A〜XP-G)に割り当てられ、各相補群は、独特なNER遺伝子における変異によることがわかった。ヒト遺伝子、及びコードされるタンパク質は、しばしは、相補群にちなんで命名された。例えば、XP-C相補群で変異しているXPC遺伝子(図1A)は、DNA損傷結合タンパク質をコードする。
【0003】
現在までに、XP患者が利用可能な治療は、太陽への露出に対する(及び長波長UVを作り出すある種の一般的な電灯に対する)防御、又は出現した皮膚がんを除去する外科手術の反復でしかなかった。このような癌性の領域を、患者の体の露出されていない部分からの皮膚で置き換える自己移植の試みが、何度か行われている。しかし、移植された細胞が太陽に感受性であるので、患者にとっての利益は最善でも数年に限られ、患者の大多数が転移により成人に到達する前に死亡する。皮膚の移植は局所的に行うことができるが、免疫寛容の点で移植片の一般的な制限がある。
【0004】
よって、遺伝子及び細胞療法は、この種の疾患についての大きい希望である。皮膚の系統からの細胞はインビトロにおいて容易に操作できるので、腫瘍部位にそれらを移植して戻す前に、親の細胞を操作し、それらの遺伝子欠損を修正する可能性が考えられる。他のXP相補群に比較して、XP-Cは、修正遺伝子移動(corrective gene transfer)について最良の候補であるようである。欧州及び北アメリカでは、XP-Cは、半数を超えるXP患者に関連し、XPC発現は遍在しているけれども、XP-C患者は、他のXP群に見られる神経の問題を有しないままである。XP患者の組織療法を目的とする予備研究では、種々の相補群(XP-A、XP-B、XP-C、XP-D)からのXP繊維芽細胞、及びXP遺伝子がクローニングされたXP-C初代ケラチノサイトのインビトロでのレトロウイルスによる形質導入が、完全なDNA修復能力の回復をもたらすことが示されている(Arnaudeau-Begardら, Hum. Gene Ther., 2003, 14, 983〜996; Armeliniら, Cancer Gene Ther., 2005, 12, 389〜396)。さらに、皮膚の系統からの細胞は容易に操作でき、次いで、機能的な皮膚を再構築するために用い得る(Arnaudeau-Begardら, Hum. Gene Ther., 2003, 14, 983〜996; Armeliniら, Cancer Gene Ther., 2005, 12, 389〜396)。つまり、長期の組織療法の合理的で有望な代替法は、患者に再構成された皮膚を移植して戻す前の、ケラチノサイトのXP-C遺伝子座のエクスビボ遺伝子修正にある。
【0005】
相同組換えは、所定の遺伝子座を正確に工学的に改変する(engineer)ための最適な様式である。相同遺伝子標的化(targeting)ストラテジは、内因性遺伝子のノックアウト(Capecchi, M. R., Science, 1989, 244: 1288〜1292; Smithies O., Nat. Med., 2001, 7: 1083〜1086)、又は染色体における外因性配列のノックインに用いられている。これは、遺伝子の修正、及び原則として、XPのような単一遺伝子疾患につながる変異の修正のためにも用い得る。しかし、この使用は、方法の効率が低いので(トランスフェクションされた細胞の10-6〜10-9)、実際には困難である。最近10年間で、この収率を向上させるためにいくつかの方法が開発されている。例えば、キメラ形成法(chimeraplasty) (De Semirら J. Gene Med., 2003, 5: 625〜639)、及び小フラグメント相同置換(Small Fragment Homologous Replacement) (Gonczら., Gene Ther, 2001, 8: 961〜965; Brusciaら, Gene Ther., 2002, 9: 683〜685; Sangiuoloら, BMC Med. Genet., 2002, 3: 8〜; De Semir及びAran, Oligonucleotides, 2003, 13: 261〜269; 米国特許第6,010,908号)が、CFTR変異の修正を行うために試験的に用いられており、種々のレベルの成功を示している。
組換えの効率を向上させる別のストラテジは、メガヌクレアーゼを用いて、標的遺伝子座にDNA二本鎖切断(double-strand break)をもたらすことである。メガヌクレアーゼは、定義によると、長い配列(12〜45 bp)を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼである。これらは、生体細胞内の独特な部位を切断でき、そのことにより、切断部位の近傍における遺伝子標的化を1000倍以上に向上させ得る(Puchtaら, Nucleic Acids Res., 1993, 21: 5034〜5040; Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14, 8096〜8106; Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 1968〜1973; Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996, 93, 5055〜5060; Sargentら, Mol. Cell. Biol., 1997, 17, 267〜277; Donohoら, Mol. Cell. Biol, 1998, 18, 4070〜4078; Elliottら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 93〜101; Cohen-Tannoudjiら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 1444〜1448)。最近では、I-SceIを用いて、インビボでのマウス肝細胞における標的組換えが刺激された。組換えは、肝細胞の1%までで観察できた(Goubleら, J. Gene Med., 2006, 8, 616〜622)。
【0006】
しかし、この技術の使用は、天然のメガヌクレアーゼのレパートリーにより制限される。例えば、ヒトXP遺伝子には、既知の天然メガヌクレアーゼの切断部位が存在しない。よって、仕立てられた特異性を有するメガヌクレアーゼを作製することが精力的に行われており、いくつかの研究室は、天然のメガヌクレアーゼの特異性を変更するか、又は人工的エンドヌクレアーゼを作製することを試みている。
【0007】
最近、Cys2-His2型ジンクフィンガータンパク質(ZFP)の、IIS型FokIエンドヌクレアーゼの触媒ドメインとの融合を用いて、機能的配列特異的人工エンドヌクレアーゼが作製された(Smithら, Nucleic Acids Res., 1999, 27: 674〜681; Bibikovaら, Science, 2003, 300: 764; Porteus M.H.及びD. Baltimore, Science, 2003, 300: 763)。ZFPの結合特異性は比較的容易に操作でき、多くの(g/a)nn(g/a)nn(g/a)nn配列に結合できる新規な人工ZFPのレパートリーは、現在、利用可能である(Paboら, Annu. Rev. Biochem., 2001, 70, 313〜340; Segal, D.J.及びC.F. Barbas, Curr. Opin. Biotechnol., 2001, 12, 632〜637; Isalanら, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 656〜660)。この最後のストラテジは、インビトロでのIL2RG遺伝子の工学的改変を、最近、可能にした(Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651)。にもかかわらず、非常に狭い特異性が保存されることは、ゲノム工学への応用のために主要な問題点であり、現在、ZFPが、治療への応用についての非常に厳しい要件を満たすかどうか不明である。
【0008】
ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、数百のタンパク質を含む天然メガヌクレアーゼの広範にわたるファミリーである(Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。これらのタンパク質は、「ホーミング」とよばれるプロセスにより伝播する可動性の遺伝要素によりコードされる。該エンドヌクレアーゼは、可動性の要素が存在しない同族の対立遺伝子を切断し、このことにより、受容側の遺伝子座において可動性DNAを重複させる相同組換え事象を刺激する(Kostrikenら, Cell; 1983, 35, 167〜174; Jacquier, A.及びB. Dujon, Cell, 1985, 41, 383〜394)。それらの天然の機能、並びに効率及び特異性の点でのそれらの希な切断特性に鑑みて、HEは、ゲノム工学のための新規なエンドヌクレアーゼを導くための理想的な骨格を提供する。最近10年間で、4つのHEファミリーのうちで最大のLAGLIDADGファミリーを特徴付けるデータが蓄積されている(Chevalier及びStoddard, 既出)。LAGLIDADGは、ファミリー全体で実際に保存され、かつタンパク質中で1又は(より頻繁には) 2つのコピーが見出される唯一の配列のことである。単一モチーフを有するタンパク質、例えばI-CreIは、ホモダイマーを形成し、パリンドローム又は偽パリンドロームDNA配列を切断するが、より大きい重複モチーフタンパク質、例えばI-SceIはモノマーであり、非パリンドローム標的を切断する。7つの異なるLAGLIDADGタンパク質が結晶化されており、これらは、コア構造が非常に著しく保存されているが、1次配列のレベルでの類似性がないことと対照的である(Juricaら, Mol. Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316 ; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269; Moureら, J. Mol. Biol, 2003, 334, 685〜695; Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9, 764〜770; Ichiyanagiら, J. Mol. Biol., 2000, 300, 889〜901; Duanら, Cell, 1997, 89, 555〜564; Bolducら, Genes Dev., 2003, 17, 2875〜2888; Silvaら, J. Mol. Biol., 1999, 286, 1123〜1136)。このコア構造において、2つのモノマー、又は重複したLAGLIDAGタンパク質中の2つのドメインが寄与するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインともよばれる2つの特徴的なαββαββα折り畳みは、2回回転対称により互いに面している。DNA結合は、逆平行βシートに折り畳まれ、かつDNAヘリックス主溝上のサドルを形成する各ドメインからの4つのβ鎖に依存する(図2)。その天然の標的に結合したI-CreI構造の分析により、各モノマーにおいて、8つの残基(Y33、Q38、N30、K28、Q26、Q44、R68及びR70)が、±3、4、5、6、7、9及び10位の7つの塩基と直接相互作用を確立していることが示されている(Juricaら, 1998, 既出; 図3)。さらに、いくつかの残基は、7つの塩基と水媒介接触を確立している。例えば、S40及びN30は、+8位及び-8位の塩基対とである(Chevalierら, 2003, 既出)。触媒コアは、中央にあり、対称のモノマー/ドメインの両方の寄与がある。このコア構造に加えて、他のドメインも見出され得る。例えばインテインであるPI-SceIは、タンパク質スプライシングドメインと、さらなるDNA結合ドメインを有する(Moureら, 2002, 既出; Grindlら, Nucleic Acids Res., 1998, 26, 1857〜1862)。
【0009】
ホーミングエンドヌクレアーゼから、新しい特異性を有する新規なエンドヌクレアーゼを導くために2つのアプローチが用いられている:
- タンパク質変異型
Seligmanらは、I-CreIαββαββα折り畳みの具体的な個別の残基を置換するために、合理的なアプローチを用いた(Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342, 31〜41; Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1653〜64)。実質的な切断は、わずかなI-CreI変異型(Y33C、Y33H、Y33R、Y33L、Y33S、Y33T、S32K、S32R)について、かつ±10位で改変された標的についてのみ観察された。
【0010】
同様の様式で、Gimbleらは、PI-SceIのさらなるDNA結合ドメインを改変した(J. Mol. Biol., 2003, 334, 993〜1008)。彼らは、結合特異性が変更されたタンパク質変異型を得たが、特異性は変更されず、変異型のほとんどは、野生型標的配列についての親和性のほとんどを維持した。
これらの研究において用いられた半合理的なアプローチは、特異性が変更されたエンドヌクレアーゼの同定を許容する。しかし、予測される特異性を有するエンドヌクレアーゼの直接的な産生は可能にならない。
【0011】
- ハイブリッド又はキメラ単鎖タンパク質
新しいメガヌクレアーゼは、異なるモノマーのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインを交換することにより得ることができた(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619号及びWO 2004/031346号)。異なるメガヌクレアーゼからの2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインがスペーサーにより連結されているこれらの単鎖キメラメガヌクレアーゼは、2つの半分の(half)親のDNA標的配列の融合に相当するハイブリッド標的を切断可能である。
【0012】
キメラ及び単鎖人工HEの構築は、コンビナトリアルアプローチを用いて新規な(非パリンドローム)標的配列を切断する新規なメガヌクレアーゼを得ることができることを示唆した。異なるモノマー又はコアドメインを、単独のタンパク質に融合させて、新規な特異性を達成することができた。これらの結果は、I-CreIダイマーの2つのDNA結合ドメインが、独立して行動することを意味する。それぞれのDNA結合ドメインは、DNA標的部位の異なる半分に結合する(図2A)。最近、2工程ストラテジを用いて、天然のHE、例えばI-CreIの特異性を仕立てることが行われた(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355: 443〜458)。第1工程では、残基Q44、R68及びR70に突然変異を誘発し、±3〜5位で特異性が変更された(5NNN DNA標的)一連の変異型を、スクリーニングにより同定した。第2工程において、2つの異なる変異型を組み合わせ、それぞれの変異型DNA標的配列の異なる半分の融合から得られるキメラ標的を切断できる機能的ヘテロダイマーエンドヌクレアーゼに組み立てた。
【0013】
一連の新規なメガヌクレアーゼを作製すること、及び2つの異なるモノマー/コアドメインを組み立てることによりこれらを組み合わせることができることは、標的にされ得るDNA配列の数を著しく豊富にするが(図4A)、全ての可能な配列は、まだ満たされていない。
【0014】
より多数の配列に到達するために、組み合わせ得るより小さい独立したサブドメインを同定できることは、非常に価値があるだろう(図2B)。
しかし、コンビナトリアルアプローチは、モノマー間に用いるよりも単独モノマー又はドメイン内で用いることがさらにより困難である。なぜなら、結合界面の構造が非常に緻密であり、実質的に全ての塩基特異的相互作用を担う2つの異なるββヘアピンが別々のサブドメインを構成せずに、単独の折り畳みの一部分であるからである。例えば、I-CreIのDNA結合領域の内部では、gtcトリプレットには、第1ヘアピンからの1つの残基(Q44)、及び第2ヘアピンからの2つの残基が結合する(R68及びR70; Chevalierら, 2003, 既出、の図1Bを参照)。
【0015】
酵母ハイスループットスクリーニング法により支援される半合理的設計により、本発明者らは、±8〜10位の特異性が変更された(10NNN DNA標的)、28位、30位、33位、38位及び40位での数千のI-CreI変異型を同定及び単離することが可能になった。これらの新しいタンパク質は、I-CreIの元来の標的部位の±10、±9、±8のヌクレオチドで縮重した64個の標的(10NNN DNA標的)の1つを切断するように設計された(図3)。さらに、構造レベルでの明確なモジュール性がないにもかかわらず、I-CreI部位の±8〜10位に結合する残基28〜40、及び±3〜5位に結合する残基44〜77は、2つの分離可能な機能的サブドメインを形成し、I-CreIホーミングエンドヌクレアーゼハーフサイトの別個の部分に結合できることが明らかになった(図3及び図4B)。異なるモノマーからの2つのサブドメイン又は同じモノマー内のコアドメインを組み立てることにより、本発明者らは、それぞれの親のモノマー/コアドメインの±3〜5位及び±8〜10位のヌクレオチドを有するパリンドロームキメラ標的(図4B)を切断できる、機能的ホーミングエンドヌクレアーゼ(ホモダイマー)変異型を工学的に作製した。さらに、より大きいコンビナトリアルアプローチは、4つの異なるサブドメインを組み立てることにより(図4C:右上、中左及び右、左下)、非パリンドロームキメラ標的を切断できる(右下)新しいヘテロダイマー分子を形成することが可能になる。異なるサブドメインは、別々に改変でき、興味のある遺伝子からの標的を切断できる1つのメガヌクレアーゼ変異型(ヘテロダイマー又は単鎖分子)に組み立てることができる。工学的に作製された変異型は、二本鎖切断により誘発される組換えにより遺伝子修正のために用いることができる(図1B及び1C)。
【0016】
4つのサブドメインを組み合わせる能力により、標的にされ得るDNA配列の数が著しく増加する(図4C)。しかし、このコンビナトリアルアプローチを用いて到達できる配列の範囲を完全に認識するのは、まだ困難である。最もわかりにくい因子の1つは、I-CreI標的部位の4つの中心ヌクレオチドの影響である(パリンドロームI-CreI部位C1221のgtac, 図3)。塩基対±1及び±2がタンパク質と全く接触を示さないが、これらの位置が、特に塩基対±1について、内容の情報を欠くわけではないことが示されており(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)、さらなる基質特異性の供給源であり得る(Argastら, J. Mol. Biol., 1998, 280, 345〜353; Juricaら, Mol. Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。無作為に突然変異を誘発した切断可能なI-CreI標的のインビトロ選択(Argastら, 既出)は、タンパク質結合及び切断活性におけるこれらの4つの塩基対の重要性を明らかにした。活性部位で見出される規則正しい水分子のネットワークが、DNA標的の位置決定に重要であることが示唆されている(Chevalierら,Biochemistry, 2004, 43, 14015〜14026)。さらに、I-CreI結合の際にこの領域に出現する広範な構造変化は、4つの中心ヌクレオチドが、おそらく配列に依存する構造の選択により基質特異性に寄与し得ることを示唆する(Chevalierら, 2003, 既出)。
【0017】
つまり、gtacである4つの中心ヌクレオチドを含むパリンドローム配列を切断するホモダイマーとして10NNN及び5NNN DNA標的に対して同定される変異体が、4つの中心ヌクレオチドが変更された標的を切断する新しいエンドヌクレアーゼの設計を可能にするかは、明確でなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者らは、I-CreI変異型により切断され得るXP遺伝子中の数百のDNA標的を同定した。図4に記載されるコンビナトリアルストラテジを用いて、I-CreIタンパク質のDNA結合ドメインを広く再設計し、そのことにより、完全に工学的に改変された特異性を有する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製し、I-CreI C1221の22 bpのパリンドローム部位とは、±1〜2位の中心ヌクレオチドを含む17ヌクレオチドが異なる(Xa.1, 図3、9及び23)か、又は4つの中心ヌクレオチドの2つ(-1位及び-2位)を含む11ヌクレオチドが異なる(Xc.1, 図23)、XPC遺伝子からの2つのDNA標的(Xa.1及びXc.1)を切断した。
【0019】
組み合わせた変異型は、それぞれヌクレオチド10NNN及び5NNNに対して当初は同定され、標的の4つの中心ヌクレオチドの工学的に作製されたメガヌクレアーゼの活性に対する強い影響が観察されたが、標的の別の塩基対についての特異性における完全な変更を有する機能的メガヌクレアーゼを選択した。さらに、工学的に作製されたタンパク質の活性は、I-CreIタンパク質の活性に比較して、2回連続のランダム突然変異誘発及びスクリーニングにより著しく改良できた。最後に、DNA結合ドメインの広範な再設計は、特異性のレベルを犠牲にしては行われず、新規なエンドヌクレアーゼは、切断可能な同族標的の非常に狭い範囲の数を維持している。
【0020】
XP遺伝子からのDNA標的配列を切断できるこれらのI-CreI変異型は、色素乾皮症に関連する変異の修復のために用いることができる。他の可能な応用は、XP遺伝子の遺伝子座でのゲノム工学を含む。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、色素乾皮症(XP)遺伝子からのDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型に関する。
【0022】
本発明による変異型の切断活性は、公知のインビトロ又はインビボの切断アッセイ、例えば国際PCT出願WO 2004/067736又はArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355: 443〜458に記載されるものにより測定し得る。例えば、本発明の変異型の切断活性は、レポーターベクターを用いて、酵母又は哺乳動物細胞における直列反復配列組換えアッセイにより測定し得る。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクター内にクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮された(truncated)非機能的コピー(直列反復配列)と、ゲノムDNA標的配列とを介在配列内に有する。変異型の発現により、ゲノムDNA標的配列を切断できる機能的エンドヌクレアーゼが得られる。この切断は、直列反復配列間の相同組換えを誘導し、その発現が適切なアッセイにより監視できる機能的レポーター遺伝子をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
定義
- ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表す。例えば、QはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
【0024】
- ヌクレオチドは、以下のように表す:1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについては、rはg又はaを表し(プリンヌクレオチド)、kはg、又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はcを表し(ピリミジンヌクレオチド)、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0025】
- 「I-CreI」により、配列表の配列番号217に相当する配列SWISSPROT P05725、又はpdbアクセッションコード1g9yを有する野生型I-CreIを意図する。
- 「I-CreI変異型」又は「変異型」により、I-CreIの少なくとも1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換により得られるタンパク質を意図する。
【0026】
- 「機能的I-CreI変異型」により、DNA標的、好ましくはI-CreIにより切断されないDNA標的を切断できるI-CreI変異型を意図する。例えば、このような変異型は、DNA標的配列と接触する位置、又は該DNA標的と直接若しくは間接的に相互作用する位置にアミノ酸の変更を有する。
【0027】
- 「新規な特異性を有するI-CreI変異型」により、親のメガヌクレアーゼのものと異なる切断される標的のパターンを有する変異型を意図する。等価であり同様に用いられる用語「新規な特異性」、「改変された特異性」、「新規な切断特異性」、「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことをいう。
【0028】
- 「I-CreI部位」により、I-CreIにより切断される22〜24 bpの二本鎖DNA配列を意図する。I-CreI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-CreIホーミング部位と、C1221ともよばれる派生パリンドローム配列、例えば配列5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号25)を含む(図3及び9)。
【0029】
- 「ドメイン」又は「コアドメイン」は、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。上記のドメインは、DNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれた4つのベータ鎖(β1、β2、β3、β4)を含む。このドメインは、別のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインと会合でき(associate)、これはDNA標的の他方の半分と相互作用して、該DNA標的を切断できる機能的エンドヌクレアーゼを形成する。例えば、ダイマーホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。
【0030】
- 「サブドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの独特な部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。2つの異なるサブドメインは、独立して行動し、一方のサブドメインにおける変異は、他方のサブドメインの結合及び切断特性を変更しない。よって、2つのサブドメインは、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの独特な部分に結合する。
【0031】
- 「ベータヘアピン」により、ループ又はターンにより連結されているLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行ベータシートの2つの連続するベータ鎖(β1β2又はβ3β4)を意図する。
【0032】
- 「単鎖メガヌクレアーゼ」、「単鎖キメラメガヌクレアーゼ」、「単鎖メガヌクレアーゼ誘導体」、「単鎖キメラメガヌクレアーゼ誘導体」又は「単鎖誘導体」により、ペプチドスペーサにより連結された2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼドメイン又はコアドメインを含むメガヌクレアーゼを意図する。単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの親のメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含むキメラDNA標的を切断できる。
【0033】
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」;「興味のある部位」;「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」は、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼにより認識され切断される20〜24 bpの二本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)、又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、エンドヌクレアーゼにより二本鎖切断(切断)が導入されるDNAの独特な位置、好ましくはゲノム上の位置のことをいう。DNA標的は、C1221について上記したように、二本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'から3'の配列により定義される。DNA標的の切断は、センス及びアンチセンス鎖についてそれぞれ+2位及び-2位のヌクレオチドに生じる。特に記載しない限り、I-Cre Iメガヌクレアーゼ変異型によるDNA標的の切断が生じる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に相当する。
【0034】
- 「DNA標的ハーフサイト」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフサイト」は、各LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
【0035】
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合体を意図する。さらに、該標的の少なくとも1つの半分は、少なくとも2つの別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組み合わせ(組み合わさったDNA標的)を含み得る。
【0036】
-「XP遺伝子」により、哺乳動物の色素乾皮症相補群(XP-A、XP-B、XP-C、XP-D、XP-E、XP-F)の1つの遺伝子を意図する。例えば、ヒトXP遺伝子は、NCBIデータベースにおいて、記載するアクセッション番号:XPA: 遺伝子ID:7507, アクセッションNC_000009, 領域: 相補(97516747..97539194); XPB: 遺伝子ID:2071, アクセッションNC_000002, 領域: 相補(127731096..127767982); XPC: 遺伝子ID:7508, アクセッションNC_000003, 領域: 相補(14161651..14195087); XPD: 遺伝子ID:2068, アクセッションNC_000019, 領域: 相補(50546686..50565669); XPE: 遺伝子ID:1642, アクセッションNC_000011, 領域: 相補(60823502..60857125); XPF: 遺伝子ID:2072, アクセッションNC_000016, 領域: 13921524..13949705; XPG: 遺伝子ID:2073, アクセッションNC_000013, 領域: 102296421..102326346の下で入手可能である。
【0037】
- 「XP遺伝子からの DNA標的配列」、「ゲノムDNA標的配列」、「ゲノムDNA切断配列」、「ゲノムDNA標的」又は「ゲノム標的」により、メガヌクレアーゼ変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼ誘導体により認識され切断される哺乳動物のXP遺伝子の20〜24 bpの配列を意図する。
【0038】
- 「ベクター」により、それに連結されている別の核酸を移動させ得る核酸分子を意図する。
【0039】
- 「相同な」により、配列間で相同組換えを導くのに充分な別の配列との同一性、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、及びより好ましくは99%の同一性を有する配列を意図する。
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列され得る各配列の位置を比較することにより決定できる。比較される配列における位置が同じ塩基により占められる場合、該分子はその位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一又はマッチするヌクレオチドの数の関数である。GCG配列分析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部分として入手可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムが、2つの配列間の同一性を計算するために用いられ得る。
【0040】
- 「個体」は、哺乳動物、及びその他の脊椎動物(例えば鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語「哺乳動物」及び「哺乳類」は、本明細書で用いる場合、その子に授乳し、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))又は産卵する(後獣類(metatharian)又は無胎盤哺乳類(nonplacental mammals))単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含むいずれの脊椎動物のことをいう。哺乳動物の種の例は、ヒト、及びその他の霊長類(例えばサル、チンパンジー)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)及び反芻類(例えばウシ、ブタ、ウマ)を含む。
【0041】
- 変異により、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列中の1又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、付加を意図する。該変異は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。これは、ゲノム配列の構造、又はコードされたmRNAの構造/安定性にも影響し得る。
【0042】
本発明によると、変異の位置は、I-CreIアミノ酸配列である配列番号217を参照にして示される。
【0043】
上記の変異型の好ましい実施形態において、I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン内の上記の置換は、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある。
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記の置換は、I-CreIの28位〜40位、及び44位〜70位に位置するサブドメイン内にあり、好ましくは28位、30位、32位、33位、38位、44位、68位及び/又は70位にある。
【0044】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、該変異型は、75位のアスパラギン酸の、非荷電アミノ酸、好ましくはアスパラギン(D75N)又はバリン(D75V)による置換を含む。
【0045】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、該変異型は、DNA標的配列に接触するか、又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用するさらなる位置に、1又は複数の置換を含む。I-CreIの相互作用する残基は、当該技術において公知である。変異される残基は、DNAバックボーン又はヌクレオチド塩基と、直接又は水分子を介して相互作用し得る。
【0046】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、該変異型は、XP遺伝子のDNA標的配列に指向された変異型の結合及び/又は切断の特性を改良する1又は複数のさらなる変異を含む。変異されるさらなる残基は、I-CreI配列全体にあり得る。これらの変異は、19、24、42、69、80、85、87、87、109、133及び161位での置換であり得る。これらの変異は、活性部位(19位)、タンパク質-DNA界面(例えば69位)、疎水性コア(例えば85、87又は109位)、又はC末端部分(例えば161位)に影響し得る。
【0047】
上記の変異型のさらに別の好ましい実施形態において、上記の置換は、当初のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、W、L及びVからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えである。
【0048】
本発明による変異型は、パリンドローム又は偽パリンドロームのDNA標的配列を切断できるホモダイマーであり得る。或いは、上記の変異型は、I-CreIの26位〜40位と44位〜77位、好ましくは28位〜40位と44位〜70位に異なる変異を有する第1モノマーと第2モノマーの会合により得られるヘテロダイマーであり、該ヘテロダイマーは、XP遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できる。
【0049】
上記の変異型により切断されるDNA標的配列は、XP遺伝子のエキソン又はイントロン内にあり得る。好ましくは、これは、変異の近傍、好ましくは変異から500 bp以内、又は変異の上流、好ましくは上記のXP遺伝子の全ての変異の上流に位置する。
【0050】
上記の変異型の別の好ましい実施形態において、上記のDNA標的配列は、ヒトXP遺伝子からである(XPA〜XPG遺伝子)。
各ヒトXP遺伝子からのDNA標的は、表IX〜XV及び図16〜22に示す。
例えば、配列番号1〜24の配列は、XPC遺伝子からのDNA標的である。配列番号1〜23は、エキソンの1つの内部又はその近くに位置し、これらの配列は、XP遺伝子の全てのエキソンをカバーする(表XI及び図18)。標的配列である配列番号24 (Xa.1)は、変異の上流にある第3イントロン内に位置する(図1A)。標的配列である配列番号12 (Xc.1)は、欠失1132AA及び挿入insVAL580の近傍のエキソン9内に位置する(図1A)。
【0051】
各DNA標的を切断するヘテロダイマー変異型は、表I〜VIII及び図16〜22に示す。
各変異型の配列は、記載する位置でのアミノ酸残基により定義される。例えば、表Iの第1のヘテロダイマー変異型は、28位、33位、38位、40位、44位、68位、70位及び75位にそれぞれK、S、R、D、K、R、G及びNを有する第1モノマーと、28位、30位、38位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれR、D、R、K、A、S、N及びIを有する第2モノマーとからなる。位置は、I-CreI配列SWISSPROT P05725、配列番号217、又はpdbアクセッションコード1g9yを参照にして示される。I-CreIは、19位、24位、26位、28位、30位、32位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、69位、70位、75位、77位、80位、85位、87位、109位、133位及び161位にそれぞれG、I、Q、K、N、S、Y、Q、S、A、Q、R、D、R、D、I、E、H、F、I、A及びSを有する。変異型は、表に記載されるアミノ酸残基を有するI-CreI配列からなることができる。この場合、記載されていない位置は変異されておらず、よって、野生型I-CreI配列に相当する。或いは、変異型は、表に記載されるようなアミノ酸残基を有するI-CreI配列を含み得る。後者の場合、記載されていない位置は、上記で定義されるような変異を含み得るか、又は変異されなくてよい。例えば、変異型は、配列番号26によりコードされるI-CreI骨格タンパク質から導かれることができ、該I-CreI骨格タンパク質(配列番号218)は、2位にアラニンの挿入、A42T、D75N、W110E及びR111Qの置換、並びに3つのさらなるアミノ酸(A、A及びD)をC末端に有する。さらに、野生型I-CreI又はI-CreI骨格タンパク質に由来する上記の変異型は、上記で定義されるようにさらなる変異を有し得る。
【0052】
各ヘテロダイマー変異型により切断される標的は、表の最後の列に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
さらに、本発明の変異型は、配列のNH2末端及び/又はCOOH末端に挿入された1又は複数の残基を含み得る。例えば、タグ(エピトープ又はポリヒスチジン配列)を、NH2末端及び/又はCOOH末端に導入する。該タグは、該変異型の検出及び/又は精製に有用である。
【0062】
本発明の主題は、上記で定義されるI-CreI変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼでもある。単鎖キメラメガヌクレアーゼは、2つのI-CreIモノマー、2つのI-CreI コアドメイン(I-CreIの6位〜94位)又はこれらの両方の組み合わせを含む融合タンパク質である。好ましくは、2つのモノマー/コアドメイン又はこれらの両方の組み合わせは、ペプチドリンカーにより連結される。
【0063】
本発明の主題は、上記で定義される変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。該ポリヌクレオチドは、ホモダイマー若しくはヘテロダイマー変異型の1つのモノマー、又は単鎖キメラメガヌクレアーゼの2つのドメイン/モノマーをコードし得る。
【0064】
本発明の主題は、本発明による変異型又は単鎖メガヌクレアーゼを発現するための組換えベクターでもある。該組換えベクターは、上記で定義されるような変異型又は単鎖メガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む。好ましい実施形態において、上記のベクターは、それぞれがヘテロダイマー変異型のモノマーの1つをコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む。
【0065】
本発明において用い得るベクターは、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、又は染色体の、非染色体の、半合成の若しくは合成のDNAからなり得る直鎖若しくは環状DNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自己複製が可能なベクター(エピソームベクター)及び/又はそれらが連結された核酸の発現が可能になるベクター(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られ、市販で入手可能である。
【0066】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病又は水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版, B. N. Fieldsら編, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0067】
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;S. cerevisiaeについてTRP1;E. coliにおいてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
【0068】
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型/単鎖メガヌクレアーゼをコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下に位置して、該変異型の産生又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、該コードポリヌクレオチドに機能可能に連結するプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、上記の変異型がヘテロダイマーである場合、各モノマーをコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。適切なプロモーターは、組織特異的及び/又は誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターの例は、重金属のレベルの増加により誘導される真核メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核lacZプロモーター、及び温度の増加により誘導される真核熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、骨格筋クレアチンキナーゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、α-抗トリプシンプロテアーゼ、ヒト界面活性(SP) A及びBタンパク質、β-カゼイン及び酸性ホエータンパク質遺伝子である。
【0069】
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、該ベクターは、上記で定義されるゲノムDNA標的切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列を含む標的化構築物(targeting construct)を含む。
或いは、I-CreI変異型をコードするベクター、及び標的化構築物を含むベクターは、異なるベクターである。
どちらの場合においても、標的化構築物は、以下で定義される変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列に挟まれた、導入される配列を含む。
【0070】
より好ましくは、上記の標的化DNA構築物は、以下のものを含む:
a) 上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列と、
b) a)の配列により挟まれている導入される配列。
【0071】
好ましくは、少なくとも50 bp、好ましくは100 bpより多い、より好ましくは200 bpより多い相同配列が用いられる。実際に、有するDNA相同性は、切断部位の上流及び下流に隣接する領域に位置し、導入されるDNA配列は、2つのアームの間に位置するべきである。導入される配列は、好ましくは、ゲノム療法の目的のための、興味のある遺伝子の変異を修復する配列(遺伝子修正又は機能的遺伝子の回復)である。或いは、特定の配列を改変するか、興味のある内因性遺伝子を減弱又は活性化させるか、興味のある内因性遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は欠失させるか、興味のある部位に変異を導入するか、又は外因性遺伝子若しくはその一部分を導入するために用いられる配列を含む、ある特定の様式で染色体DNAを変更させるために用いられるいずれのその他の配列であり得る。このような染色体DNAの変更は、ゲノム工学(動物モデル)に用いられる。
【0072】
XP遺伝子を修正するために、遺伝子の切断が、変異の近傍、好ましくは変異から500 bp以内で生じる(図1B)。標的化構築物は、切断を修復するための、標的部位に接する相同配列の少なくとも200 bpを有するXP遺伝子フラグメント(最小修復マトリクス)を含み、変異を修復するための、XP遺伝子の正しい配列を含む(図1B)。よって、遺伝子修正のための標的化構築物は、最小修復マトリクスを含むか、又はこれからなる。これは、200 pb〜6000 pb、好ましくは1000 pb〜2000 pbである。
【0073】
例えば、各変異型(表I〜VIII)により切断される標的、及び各変異型を用いて切断を修復するための最小マトリクスを、表IX〜XV及び図16〜22に示す。
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】
【表13】
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】
例えば、図1Aに示されるような、色素乾皮症(XP)で見出されるXPC遺伝子における変異のいくつかを修復するために、以下の変異型/標的化構築物の組み合わせを用い得る:
- ARG579TER (エキソン4; 未熟な停止コドン):
* 変異型: 28Q,33S,38R,40K,44Q,68Y,70S,75N,77Y (第1モノマー)/ 28T,33T,38Q,40R,44T,68E,70S,75R,77R (第2モノマー)、並びに
DNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも9887位〜10086位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
* 変異型30D,33R,38T,44N,68R,70S,75Q,77R (第1モノマー)/ 28R,33A,38Y,40Q,44D,68Y,70S,75S,77R (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも10173位〜10372位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0082】
- エキソン6: 置換PRO218HIS:
* 変異型: 28K,33N,38Q,40Q,44R,68Y,70S,75E,77I (第1モノマー)/ 28K,33T,38A,40Q,44K,68Q,70S,75N,77R (第2モノマー)、並びに
DNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも13051位〜13250位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0083】
- エキソン9: 欠失DEL1132AA又は挿入insVAL580:
* 変異型: 28K,30N,38Q,44Q,68R,70S,75R,77T,80K (第1モノマー)/ 28T,33T,38Q,40R,44T,68Y,70S,75R,77V (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも19580位〜19779位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
* 変異型: 28K,30N,38Q,44A,68Y,70S,75Y,77K (第1モノマー)/ 28K,33R,38E,40R,44T,68R,70S,75Y,77T,133V (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも20303位〜20502位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0084】
* 変異型: 28K,33R,38Q,40A,44Q,68R,70N,75N (第1モノマー)/ 28K,33R,38A,40Q,44Q,68R,70S,75N,77K (第2モノマー)、又は33H,75N (第1モノマー)及び33R,38A,40Q,44K,70N,75N (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも20349位〜20548位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
* 変異型: 30N,33H,38Q,44K,68A,70S,75N,77I (第1モノマー)/ 28K,33N,38Q,40Q,44R,68Y,70S,75E,77V (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも20389位〜20588位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0085】
- エキソン14: 置換LYS822GLN:
* 変異型: 28Q,33S,38R,40K, 42T,44K,70S,75N,77Y (第1モノマー)/ 28R,33A,38Y,40Q,44A,68R,70S,75E,77R (第2モノマー)、並びにDNA二本鎖切断の効率的な修復のためのXPC遺伝子の少なくとも30416位〜30615位と、変異の効率的な修復のための、メガヌクレアーゼ切断部位及び変異部位の間の全ての配列とを含む標的化構築物。
【0086】
或いは、機能的遺伝子を復帰させるために(図1C)、遺伝子の切断は、変異の上流、例えば9119位で生じる(標的配列番号24)。好ましくは、上記の変異は、遺伝子の配列の第1の既知の変異であるので、遺伝子の下流の変異は全て、同時に修正できる。標的化構築物は、フレーム内で融合された切断部位の下流のエキソン(cDNAにおけるような)と、3'での転写を停止するポリアデニル化部位とを含む。導入される配列(エキソンノックイン構築物)は、切断部位を取り囲むイントロン又はエキソンの配列に挟まれていることにより、工学的に作製された遺伝子(エキソンノックイン遺伝子)の、機能的タンパク質をコードし得るmRNAへの転写を可能にする(図1C)。例えば、エキソンで切断が起こる場合、エキソンノックイン構築物は、上記で定義される最小修復マトリクスからの切断部位の上流及び下流にある配列で挟まれる。
【0087】
本発明の主題は、上記で定義されるような少なくとも1つの変異型、1つの単鎖キメラエンドヌクレアーゼ、及び/又は上記の変異型/単鎖分子をコードする少なくとも1つの発現ベクターを含むことを特徴とする組成物でもある。
該組成物の好ましい実施形態において、これは、上記で定義されるような、上記の変異型のゲノムDNA切断部位と相同性を有する配列により挟まれた、XP遺伝子中の変異を修復する配列を含む標的化DNA構築物を含む。変異を修復する配列は、上記で定義されるような正しい配列の遺伝子のフラグメント又はエキソンノックイン構築物である。
【0088】
好ましくは、上記の標的化DNA構築物は、組換えベクターに含まれるか、これは、本発明による変異型/単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに含まれる。
【0089】
2つのベクターが用いられる場合、本発明の主題は、色素乾皮症における同時、別個又は連続的な使用のための併用製剤としての、上記で定義されるようなI-CreI変異型又は単鎖キメラメガヌクレアーゼ発現ベクターと、上記で定義されるような標的化構築物を含むベクターとを含有する製品でもある。
【0090】
本発明の主題は、上記で定義されるような少なくとも1つのメガヌクレアーゼ変異型/単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は1つの発現ベクターの、必要とする個体において色素乾皮症を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用でもあり、該医薬品は、該個体に任意の手段により投与される。
【0091】
この場合、メガヌクレアーゼ(変異型/単鎖誘導体)の使用は、少なくとも、(a) 個体の体組織において、該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含む興味のある部位での二本鎖切断を、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより誘導し、(b) 個体に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと(2) 標的化DNAと染色体DNAとの間の組換えにより興味のある部位を修復するDNAとを含む標的化DNAを導入する工程を含む。標的化DNAは、個体に、標的化DNAを興味のある部位に導入するのに適する条件下で導入される。
【0092】
本発明によると、上記の二本鎖切断は、該メガヌクレアーゼの個体への投与により全体として(in toto)、又は個体から回収して、改変の後に個体に戻される体細胞(皮膚細胞)へのメガヌクレアーゼの導入によりエクスビボで、誘発される。
【0093】
本発明の主題は、必要とする個体における色素乾皮症を予防、改善又は治癒する方法でもあり、該方法は、該個体に、上記で定義される組成物を任意の手段により投与する工程を少なくとも含む。
【0094】
メガヌクレアーゼ(変異型/単鎖誘導体)は、ポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物として用い得る。これは、個体の体細胞に、単独で又は少なくとも適切なビヒクル若しくはキャリア及び/又は標的化DNAと組み合わせて、具体的な細胞の型に適切な、当該技術において公知の任意の簡便な手段により導入される。
【0095】
本発明による使用の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(ポリペプチド)は、以下のものと組み合わされる:
- リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI);このような場合、上記の組み合わされたものは投与され、標的体細胞に導入される。
- 膜輸送性ペプチド(membrane translocating peptides) (Bonetta, 2002, The Scientist, 16, 38; Fordら, Gene Ther, 2001, 8, 1〜4 ; Wadia及びDowdy, 2002, Curr Opin Biotechnol, 13, 52〜56);この場合、変異型/単鎖誘導体の配列は、膜輸送性ペプチドの配列と融合される(融合タンパク質)。
【0096】
本発明による使用の別の有利な実施形態によると、メガヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド)及び/又は標的化DNAは、ベクターに挿入される。標的化DNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、種々の方法により(例えば注射、直接摂取、弾丸衝撃、リポソーム)細胞に導入できる。メガヌクレアーゼは、発現ベクターを用いて細胞で安定的に又は一過性で発現できる。真核細胞での発現法は、当該技術において公知である(Current Protocols in Human Genetics: 第12章"Vectors For Gene Therapy"及び第13章"Delivery Systems for Gene Therapy"を参照)。任意に、核局在化シグナルを組換えタンパク質に組み込んで、それが核内で発現されることを確実にすることが好ましい。
【0097】
細胞内に一旦入ると、メガヌクレアーゼと、存在するならば、標的化DNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターとは、細胞に取り込まれるか、又は細胞により、細胞質から核の作用部位に移される。
【0098】
治療の目的のために、メガヌクレアーゼと医薬的に許容される賦形剤とを、治療有効量で投与する。このような組み合わせは、投与される量が生理的に著しい場合、「治療有効量」で投与されるという。薬剤は、その存在が、受容者の生理機能に検出可能な変化をもたらす場合、生理的に著しい。この関係において、薬剤は、その存在は、標的にされた疾患の1又は複数の症状の重篤度を低下させ、欠損若しくは異常のゲノム修正をもたらす場合、生理的に著しい。
【0099】
本発明による使用のある実施形態において、メガヌクレアーゼは、実質的に非免疫原性であり、すなわち不都合な免疫学的応答をほとんど又は全く生じない。この種類の有害な免疫学的応答を緩和するか又は消去するための種々の方法を、本発明にしたがって用い得る。好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、N-ホルミルメチオニンを実質的に有さない。望ましくない免疫学的応答を回避する別の方法は、メガヌクレアーゼを、ポリエチレングリコール(「PEG」)又はポリプロピレングリコール(「PPG」) (好ましくは平均分子量(MW)500〜20,000ダルトン)とコンジュゲートさせることである。例えばDavisら(US 4,179,337)により記載されるようなPEG又はPPGとのコンジュゲートは、抗ウイルス活性を有する非免疫原性の、生理的に活性な、水溶性のエンドヌクレアーゼコンジュゲートを与え得る。ポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーを用いる類似の方法は、Saiferら(US 5,006,333)に記載される。
【0100】
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターで改変された原核又は真核の宿主細胞にも関する。
【0101】
本発明は、その細胞の全て又は一部分が、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターで改変されたことを特徴とする、非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことである。
【0102】
本発明の主題は、さらに、上記で定義されるメガヌクレアーゼ(変異型又は単鎖誘導体)、好ましくは発現ベクターに含まれる1又は2つのポリヌクレオチドの、非治療目的でのゲノム工学(動物モデルの作製:ノックイン又はノックアウト)のための使用である。
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、興味のある遺伝子に二本鎖切断を誘導し、それによりDNA組換え事象、DNA欠損又は細胞死を誘導するためである。
【0103】
本発明によると、上記の二本鎖切断は、特定の配列を修復するか、特定の配列を改変するか、変異された遺伝子の代わりに機能的遺伝子を復帰させるか、興味のある内因性遺伝子を減弱又は活性化するか、興味のある部位に変異を導入するか、外因性遺伝子又はその一部分を導入するか、内因性遺伝子又はその一部分を不活性化又は欠失させるか、染色体腕を転位させるか、又はDNAを修復されないままにして分解させるためである。
【0104】
上記の使用の別の有利な実施形態によると、上記の変異型、ポリヌクレオチド、ベクターは、上記で定義される標的化DNA構築物と組み合わされる。
【0105】
本発明によるメガヌクレアーゼ(変異型/単鎖誘導体)の使用の第1の実施形態において、これは、少なくとも以下の工程を含む:1) 該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含むゲノム遺伝子座に、二本鎖切断を、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより導入し、2) 標的にされる遺伝子座と相同性を有する配列に挟まれた、導入される配列を含む標的化DNA構築物を提供する。上記のメガヌクレアーゼ変異型は、細胞に直接、又は該メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含み、かつ用いられる細胞内でのその発現に適する発現ベクターにより提供され得る。このストラテジを用いて、標的部位にDNA配列を導入して、例えば薬剤試験に用い得るノックイン若しくはノックアウト動物モデル又は株化細胞を作製する。
【0106】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ変異型の、他のメガヌクレアーゼを作製するための骨格としての使用でもある。例えば、新規な第3世代のホーミングエンドヌクレアーゼを作製する目的のために、3回目の突然変異誘発と、選択/スクリーニングを変異型に対して行うことができる。
【0107】
本発明に従うI-CreI変異型の異なる使用、及び該I-CreI変異型を用いる方法は、該変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ、上記で定義される変異型又は単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物若しくは非ヒトトランスジェニック哺乳動物の使用も含む。
【0108】
本発明によるI-CreI 変異型は、少なくとも以下の工程を含む、興味のある遺伝子、例えば哺乳動物遺伝子からのゲノムDNA標的配列を切断できるI-CreI変異型を工学的に作製する方法により得ることができる:
(a) I-CreIの26位〜40位、好ましくはI-CreIの28位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1系列を構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位、好ましくはI-CreIの44位〜70位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2系列を構築し、
【0109】
(c) (i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) (i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
【0110】
(e) (i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) (i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
【0111】
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、かつ(iv) +3位〜+5位のトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
【0112】
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
【0113】
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせてヘテロダイマーを形成し、
(j) 哺乳動物遺伝子に位置する前記ゲノムDNA標的を切断可能な工程(i)からのヘテロダイマーを選択及び/又はスクリーニングする。
【0114】
工程(a)、(b)、(g)、(h)及び(i)は、変異体の結合及び/又は切断特性を改良するために、さらなる変異の導入をさらに含み得る。さらなる変異は、DNA標的配列に接触するか又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用する他の位置に導入され得る。このさらなる工程は、国際PCT出願WO 2004/067736に記載されるようにして、変異型のライブラリーを作製することにより行い得る。
【0115】
本発明のI-CreI変異型を工学的に作製する方法は、有利には、変異型全体又は変異型の一部分、特に変異型のC末端の半分(80位〜163位)に、ランダム変異と導入して、興味のある遺伝子からのDNA標的に対する変異体の結合及び/又は切断特性を改良することを含む。この突然変異誘発は、当該技術において公知であり市販で入手可能な標準的な突然変異誘発法に従って、変異型のプールに対してランダム突然変異誘発ライブラリーを作製することにより行い得る。好ましくは、突然変異誘発は、工程(i)で形成されるか又は工程(j)で得られるヘテロダイマーの1つのモノマーの配列全体に対して、有利にはモノマーのプールに対して、好ましくは工程(i)又は(j)のヘテロダイマーの両方のモノマーに対して行われる。
【0116】
好ましくは、図25に記載されるプロセスに従って、2回目の選択/スクリーニングを行う。1回目では、ヘテロダイマーの一方のモノマーに突然変異を誘発し(図25のモノマー4)、他方のモノマーと同時発現させて(図25のモノマー3)、ヘテロダイマーを形成し、改良されたモノマー4を、興味のある遺伝子からの標的に対して選択する。2回目では、他方のモノマー(モノマー3)に突然変異を誘発し、改良されたモノマー4と同時発現させて、ヘテロダイマーを形成し、興味のある遺伝子からの標的に対して選択して、改良された活性を有するメガヌクレアーゼを得る。
【0117】
工程(g)及び(h)における変異の組み合わせは、2つのサブドメインのそれぞれを含む重複フラグメントを、公知の重複PCR法に従って、増幅することにより行い得る。
【0118】
工程(g)からの1つの変異型と、工程(h)からの1つの変異型との同時発現により、工程(i)において変異型の組み合わせを行って、ヘテロダイマーの形成を可能にする。例えば、宿主細胞は、上記の変異型をコードする1又は2つの組換え発現ベクターにより改変され得る。細胞は、次いで、変異型の発現を可能にする条件下で培養され、それによりヘテロダイマーが宿主細胞内で形成される。
【0119】
工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)における選択及び/又はスクリーニングは、国際PCT出願WO 2004/067736又はArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355(3): 443〜58に記載されるようなインビトロ又はインビボでの切断アッセイを用いることにより行うことができる。
【0120】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)は、上記の変異型により作製される変異DNA標的配列中の二本鎖切断が、上記のDNA二本鎖切断の組換え媒介修復により、陽性の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は陰性の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を導く条件下で、インビボにおいて行われる。
【0121】
本発明で定義される変異型によりコードされるポリヌクレオチド配列は、当業者に知られる任意の方法により作製できる。例えば、これらは、cDNA鋳型から、特定のプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。好ましくは、該cDNAのコドンは、所望の発現系での上記のタンパク質の発現に好ましいように選択される。
【0122】
上記のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、公知の組換えDNA及び遺伝子工学の方法により得て、宿主細胞に導入できる。
【0123】
本発明の変異型は、上記で定義されるポリペプチドを発現することにより産生される。好ましくは、上記のポリペプチドは、1又は2つの発現ベクターで改変された宿主細胞内で、該ポリペプチドの発現又は同時発現に適する条件下で発現又は同時発現され、変異型は、宿主細胞培養から回収される。
【0124】
興味のある遺伝子からのDNA標的を切断できる単鎖キメラメガヌクレアーゼは、本発明による変異型から、当該技術において公知の方法により導かれる(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619号及びWO 2004/031346号)。このような方法のいずれも、本発明において定義される変異型に由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼを構築するために用い得る。
【0125】
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型及びそれらの使用について説明する実施例及び添付の図面に言及する以下の記載から明らかになる他の特徴もさらに含む。添付の図面において:
- 図1は、ヒトXPC遺伝子、及びメガヌクレアーゼが誘発する組換えによる機能的遺伝子の復帰のための2つの異なるストラテジを表す。A. XPC遺伝子CDSジャンクションを示す。XP-C相補群で見出される変異は、矢印により強調する。Xa.1配列(9119位、配列番号24)は、イントロン(intronic)配列で見出される。Xc.1配列(20438位、配列番号12)は、エキソン9で見出される。B. 遺伝子修正。変異は、既知の遺伝子内で生じる。メガヌクレアーゼによる切断及び修復マトリクスによる組換えの際に、有害な変異が修正される。C. エキソン配列ノックイン。変異は、既知の遺伝子内で生じる。変異されたmRNA転写産物を、遺伝子の下に強調する。修復マトリクス内で、切断部位の下流に位置するエキソンは、ポリアデニル化部位とフレーム内で融合されて(cDNA内でのように)、3'で転写を停止する。イントロン及びエキソンの配列は、相同領域として用い得る。エキソン配列ノックインは、機能的なタンパク質をコードし得るmRNAに転写される、工学的に作製された遺伝子をもたらす。
【0126】
- 図2は、本発明の原理を示す。A: その標的に結合したI-CreIの構造。実験データは、2つの独立したサブドメイン(四角)は、DNA結合ドメイン内で同定できたことを示す。コアドメインの各サブドメインは、DNA標的の異なる半分に結合する。B. 半分のDNA標的の明確な部分にそれぞれが結合するより小さい独立したサブドメイン(四角)を同定したいと考えるだろう。しかし、この仮定を支持する構造的又は実験的データはない。
【0127】
- 図3は、I-CreIと、そのDNA標的であるC1221 (配列番号25)との塩基特異的相互作用マップを示す(Chevalier及びStoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜74 ; Chevalierら J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜69)。本発明者らは、領域-10〜-8及び+8〜+10、又は-5〜-3及び+3〜+5で改変されたDNA標的に結合できる新規なI-CreI由来エンドヌクレアーゼを同定している。これらのDNA領域を、灰色の箱で示す。
【0128】
- 図4は、コンビナトリアルアプローチの原理を示す。A. 2つのDNA結合サブドメインの分離性を鑑みて(左上)、I-CreI標的配列に由来する異なる配列に結合する異なるI-CreIモノマーを組み合わせて(右上及び左下)、非パリンドロームキメラ標的を切断するヘテロダイマー又は単鎖の融合分子を得ることができる(右下)。B. より小さい独立したサブユニット、すなわち単独モノマー又はαββαββα折り畳み内のサブユニットの同定(右上及び左下)は、同じモノマー内の変異の組み合わせにより、新規なキメラ分子の設計を可能にするだろう(右下)。このような分子は、パリンドロームキメラ標的を切断するだろう(右下)。C. 上記の2つの工程の組み合わせにより、4つの異なるサブドメインを伴う(右上、中左及び右、左下)より大きいコンビナトリアルアプローチを可能にし、これは新しい分子に組み合わせることができる(右下)。つまり、各サブドメインについての少数の新しい切断者(cleavers)の同定により、非常に多数の新規なエンドヌクレアーゼの設計が可能になる。
【0129】
- 図5は、I-CreI N75骨格タンパク質をコードするcDNA、並びにUlib4及びUlib5ライブラリー構築に用いた縮重プライマーの配列を示す。A. 骨格(配列番号26)は、2位へのアラニンコドンの挿入、A42T、D75N、W110E及びR111Qコドン置換並びに3'末端での3つの追加のコドン(AAD)を含むI-CreI ORF (配列番号218)をコードする。B. プライマー(配列番号27、28、29)。
【0130】
- 図6は、28位、30位、33位、38位及び/又は40位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。スクリーニング後に得られ、28位、30位、33位、38位、40位、70位及び75位の残基により定義される141個のI-CreI変異型のそれぞれについて、酵母において、±8〜10位のヌクレオチド置換により、I-CreIにより切断されるC1221パリンドローム標的に由来する64個の標的を用いて、切断を監視した。標的は、-10位、-9位及び-8位のヌクレオチドに相当する3文字で表す。例えばGGGは、tcgggacgtcgtacgacgtcccga標的(配列番号30)に相当する。値は、フィルタの走査の後に適切なソフトウェアにより評価された切断強度に相当する。各タンパク質について、切断が観察されたか(黒い箱)又は切断が観察されなかったか(0)を、64個の標的のそれぞれについて示す。全ての変異型は、75位で変異している:D75N。
【0131】
- 図7は、44位、68位及び/又は70位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。スクリーニング後に得られ、44位、68位及び70位の残基により定義される(最初の3つの列)292個のI-CreI変異型のそれぞれについて、酵母において、±3〜5位のヌクレオチド置換による、I-CreIにより切断されるC1221パリンドローム標的に由来する64個の標的を用いて、切断を監視した。標的は、-5位、-4位及び-3位のヌクレオチドに相当する3文字により表す。各タンパク質について、切断が観察されたか(1)又は切断が観察されなかったか(0)を、64個の標的のそれぞれについて示す。全ての変異型は、75位で変異している:D75N。
【0132】
- 図8は、その標的に結合したI-CreIホモダイマーに対する、タンパク質及びDNA標的における変異の局在化を表す。2組の変異(残基44、68及び70; 残基28、30、33、38及び40)は、左側のモノマー上に黒色で示す。2組の変異は、空間的に明確に区別される。しかし、別個のサブドメインの構造的証拠はない。DNA標的部位の同族の領域(領域-5〜-3; 領域-10〜-8)は、一方のハーフサイトに灰色で示す。
【0133】
- 図9は、標的のXa系列、及び近い誘導体を示す。C1221 (配列番号25)は、I-CreIパリンドローム標的配列の1つである。10TGC_P、10AGG_P、5CCT_P及び5TTT (配列番号31、32、33、34)は、I-CreI変異型により切断されることが見出された近い誘導体である。これらは、箱で囲んだモチーフによりC1221から異なっている。C1221、10TGC_P、10AGG_P、5CCT_P及び5TTTは、24 bp配列として最初に記載されたが、構造データは、22 bpのみがタンパク質/DNA相互作用に関係していることを示唆する。しかし、±12位は、括弧内に示す。Xa.1 (配列番号24)は、9119位にてヒトXPC遺伝子に位置するDNA配列である。Xa.2標的(配列番号35)において、標的の中ほどにあるTTGA配列は、C1221で見出される塩基であるGTACに置換されている。Xa.3 (配列番号36)は、Xa.2の左側部分に由来するパリンドローム配列であり、Xa.4 (配列番号37)は、Xa.2の右側部分に由来するパリンドローム配列である。10TGC_P、10AGG_P、5CCT_P及び5TTTからの箱で囲んだモチーフは、標的のXa系列で見出される。
【0134】
- 図10は、pCLS1055プラスミドベクターマップを表す。
- 図11は、pCLS10542プラスミドベクターマップを表す。
- 図12は、Xa.3標的の切断を示す。この図は、I-CreI K28, N30, S33, R38, S40, S70 N75 (KNSRSSN)及びI-CreI A28, N30, S33, R38, K40, S70 N75 (ANSRKSN)変異体の、Xa.1、Xa.2、Xa.3及びXa.4標的(配列番号24、35、36、37)を用いた2次スクリーニングを示す。
- 図13は、Xa.4標的の切断を示す。この図は、表XVIに記載されるもののうちのコンビナトリアル変異体の系列の、Xa.1、Xa.2、Xa.3及びXa.4標的(配列番号24、35、36、37)を用いた2次スクリーニングを示す。
【0135】
- 図14は、pCLS1107ベクターマップを表す。
- 図15は、Xa.1及びXa.2標的の切断を示す。Xa.4を切断するI-CreI N75変異体の系列を、KNSRSS (a)又はANSRKS (b)と同時発現させる。切断は、Xa.1、Xa.2、Xa.3及びXa.4標的(配列番号24、35、36、37)を用いて試験する。Xa.1を切断する変異体を丸で囲む。
【0136】
- 図16〜22は、ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。標的配列に最も近いエキソン、及びエキソンジャンクションを示し(第1及び2列)、DNA標的の配列を、その位置とともに(第4列)示す(第3列)。標的部位での切断を修復するための最小修復マトリクスを、その最初のヌクレオチド(始点、第7列)及び最後のヌクレオチド(終点、第8列)により示す。各変異型の配列は、記載する位置でのそのアミノ酸残基により定義する。例えば、図16の最初のヘテロダイマー変異型は、K、S、R、D、K、R、G及びNを28位、33位、38位、40位、44位、68位、70位及び75位にそれぞれ有する第1モノマーと、R、D、R、K、A、S、N及びIを28位、30位、38位、44位、68位、70位、75位及び77位にそれぞれ有する第2モノマーとからなる。位置は、I-CreI配列SWISSPROT P05725又はpdbアクセッションコード1g9yを参照して示す。I-CreIは、I、Q、K、N、S、Y、Q、S、A、Q、R、R、D、I、E及びAを24位、26位、28位、30位、32位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び133位にそれぞれ有する。記載していない位置は、変異され得るか又はされ得ない。後者の場合、記載していない位置は、野生型I-CreI配列に相当する。
【0137】
- 図23は、ヒトXPC遺伝子において同定された、C1221から導かれる3つの標的: Xa.1、Xb.1及びXc.1 (配列番号24, 8, 12)を表す。それぞれの当初の標的を、I-CreI切断についてより好ましいXx.2標的(配列番号35、219、222)、次いで2つのパリンドローム標的Xx.3 (配列番号36、220、223)及びXx.4 (配列番号37、221、224)に変換させた。星印は、遺伝子中で見出される、可能性のある標的を表す。黒の四角又は垂直の線は、XPCエキソンを表す。
【0138】
- 図24は、カスタム設計のホーミングエンドヌクレアーゼの作製及びスクリーニングのためのストラテジを示す。A. 1次スクリーニングの一般的なストラテジ。局所的に特異性を変更した適切なI-CreI誘導体を、データベースで同定する。次いで、コンビナトリアルアプローチを用いて、これらの変異体を、インビボクローニングにより組み立てる。活性なコンビナトリアル変異体を、Xx.3又はXx.4標的のいずれかに対して、酵母スクリーニングアッセイを用いてホモダイマーとして同定する。ヘテロダイマーは、ともに非パリンドローム標的であるXx.2及びXx.1に対する同時発現によりスクリーニングした。B. ヘテロダイマースクリーニングの例。それぞれの新しいエンドヌクレアーゼを、ともの非パリンドロームであり、±2位及び±1位で異なる標的Xx.2及びXx.1に対してスクリーニングする。スクリーニングは、以前に記載されたようにして行う(国際PCT出願WO 2004/067736; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。青色の着色は、切断を示す。
【0139】
- 図25は、カスタム設計ホーミングエンドヌクレアーゼの活性改良のストラテジを示す。Xx.4に対して活性な4つのモノマーのプールを、修復ミスの多い(error-prone) PCRにより突然変異誘発し、その対の片方(Xx.3に対して活性なモノマー)を用いて、標的Xx.1を含む酵母発現株を作製する。突然変異誘発ライブラリーを、第2酵母株に形質転換し、インビボクローニングによりクローニングする。ヘテロダイマー活性のスクリーニングを、2つの酵母株を交配させることにより行う。同じ手順を、次いで、Xx.3標的に対して活性なI-CreI変異型に対して繰り返す。
【0140】
- 図26は、Xb.1標的を切断する改良されたヘテロダイマーのスクリーニング及び特徴決定を示す。A. 当初のものから改良されたバージョンへのヘテロダイマーの最終的なスクリーニング。I-SceIホーミングエンドヌクレアーゼの2つの形を、対照として用いる:I-SceI*、活性が乏しいI-SceI変異型;I-SceI、強い活性を有する元来のI-SceI ORF。φ:空のベクターで形質転換された酵母。当初:改良の前の代表的な変異体活性。Xa.3又はXa.4のいずれかに対して活性な改良された変異体を含む酵母株を、改良された変異体及びXa.1標的を含む酵母株と交配させた。B. 最も活性が高いI-CreI変異型のタンパク質配列。I: 活性の改良前のタンパク質配列。M: 修復ミスの多いPCRによるランダム突然変異誘発後のタンパク質配列。
【0141】
- 図27は、哺乳動物細胞におけるヘテロダイマー活性を示す。ヘテロダイマー活性は、材料及び方法の部分に記載するように、同時発現アッセイにより定量した。φ:空のベクターでトランスフェクションしたCHO。I-SceI:I-SceI発現ベクターでトランスフェクションしたCHO。I:活性の改良前の変異体。M:活性の改良後の変異体。全ての標的ベクターは、切断効率が低い余分の最適以下18bp I-SceI部位を有する。これは、対照実験として用いる。I-SceI活性は、全ての標的ベクターを用いて得られた平均を表す。
【0142】
- 図28は、コンビナトリアルホモダイマー変異体のプロファイリングを表す。A. I-CreI C1221パリンドローム標的のハーフサイトは、各箱の下部の線上に記載する。それぞれの位置において耐性があった個別のヌクレオチドの変化を示す。文字のサイズは、酵素I-CreI D75N及び野生型の活性に比例する。B. Xa.3及びXa.4パリンドローム標的のハーフサイトを、下部の線上に記載する。それぞれの位置において耐性があった個別のヌクレオチドの変化を、変異体.3及び変異体.4についてそれぞれ示す。文字のサイズは、変異体の活性に比例する。
【0143】
実施例1:±8位〜±10位での特異性が改変されたI-CreI変異型の工学的作製
メガヌクレアーゼ変異型の製造方法、及び特異性が変更された変異型をスクリーニングするために用いる哺乳動物又は酵母細胞での切断誘発組換えに基づくアッセイは、国際PCT出願WO 2004/067736、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458、Epinatら, N.A.R., 2003, 31, 2952〜2962及びChamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178に記載される。これらのアッセイは、標準的な方法で監視できる機能的LacZレポーター遺伝子をもたらす。
【0144】
A) 材料及び方法
a) Ulib4、Ulib5及びLib4ライブラリーの構築
I-CreI wt及びI-CreI D75Nのオープンリーディングフレームを、以前に記載されたようにして合成した(Epinatら, N.A.R., 2003, 31, 2952〜2962)。変異D75Nを、コドン75をaacで置換することにより導入した。3つのコンビナトリアルライブラリー(Ulib4、Ulib5及びLib4)は、I-CreI D75Nタンパク質から、1つのDNA標的ハーフサイトの±8位〜±10位の塩基との相互作用におそらく関わる残基の3つの異なる組み合わせを置き換えることにより導いた。メガヌクレアーゼライブラリーの多様性は、選択された位置のそれぞれにおいてユニーク縮重コドン(10〜12の異なるアミノ酸をコードする)を有する縮重プライマーを用いるPCRにより作製した。
【0145】
N30位、Y33位及びQ38位(Ulib4ライブラリー)又はK28位、N30位及びQ38位(Ulib5ライブラリー)での3つのコドンを、12の異なるアミノ酸:A,D,E,G,H,K,N,P,Q,R,S,Tをコードする縮重コドンVVK (18コドン)により置き換えた。その結果、これらのタンパク質ライブラリーの最大(理論的)多様性は、123、すなわち1728であった。しかし、核酸の点では、多様性は183、すなわち5832であった。所望の変異の組み合わせを有するフラグメントは、縮重プライマー対(Ulib456for及びUlib4rev; Ulib456for及びUlib5rev、図5B)と、DNA鋳型としてD75Nオープンリーディングフレーム(ORF)(図5A)とを用いるPCRにより得た。対応するPCR産物を、LEU2栄養要求性マーカー遺伝子を有する酵母複製発現ベクターpCLS0542 (Epinatら, 既出)中のI-CreI N75 ORFにクローニングして戻した。この2ミクロンに基づく複製ベクターにおいて、I-CreI変異型は、ガラクトース誘導プロモーターの制御下にある。
【0146】
BIOMETHODESから入手したLib4において、まず、70位のアルギニンをセリンで置き換えた(R70S)。次いで、28位、33位、38位及び40位を無作為化した。通常のアミノ酸(K28、Y33、Q38及びS40)を、10アミノ酸(A,D,E,K,N,Q,R,S,T,Y)のうちの1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で10000の理論的複雑さ(complexity)を有する。
【0147】
b) 標的クローンの構築
C1221の24 bpのパリンドローム(tcaaaacgtcgtacgacgttttga, (配列番号25)は、ほぼパリンドロームの天然I-CreI標的(tcaaaacgtcgtgagacagtttgg, 配列番号38)のハーフサイトの繰り返しである。C1221は、インビトロ及びエクスビボにおいて、酵母及び哺乳動物細胞の両方において、I-CreI天然標的と同様に効率よく切断される。
64個のパリンドローム標的を、C1221から以下のようにして導いた:64対のオリゴヌクレオチド((ggcatacaagtttcnnnacgtcgtacgacgtnnngacaatcgtctgtca (配列番号39)及び逆相補配列)をSigmaから入手し、アニールし、同じ向きでpGEM-T Easy (PROMEGA)にクローニングした。次いで、400 bpのPvuIIフラグメントを切り出し、酵母ベクターpFL39-ADH-LACURAZ (pCLS0042ともよばれる)、及び哺乳動物ベクターpcDNA3誘導体(pcDNA3.1-LAACZ)にクローニングし(ともに以前に記載されている(Epinatら, 2003, 既出))、64個の酵母レポーターベクター(標的プラスミド)を得た。
【0148】
或いは、一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製した二本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いて、酵母及び哺乳動物レポーターベクターにクローニングした。
【0149】
c) 酵母株
メガヌクレアーゼ発現変異型のライブラリーを、leu2変異体1倍体酵母株FYC2-6A: アルファ, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200に形質転換した。由来するDNA 1μgあたり106の独立した形質転換体を日常的に与える伝統的な化学/熱ショックプロトコル(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)を、形質転換に用いた。個別の形質転換体(Leu+)クローンを、96ウェルマイクロプレートで個別に採取した。13824個のコロニーを、コロニーピッカー(QpixII, GENETIX)を用いて採取し、144枚のマイクロタイタープレートで成長させた。
【0150】
64個の標的プラスミドを、同じプロトコルを用いて、1倍体酵母株FYBL2-7B: a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202に形質転換して、64個の試験株を得た。
【0151】
d) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
メガヌクレアーゼ発現クローンを、64個の標的株のそれぞれと交配させ、2倍体を、Arnouldら, 2006, 既出の図2に示すスクリーニングアッセイを用いて、ベータ-ガラクトシダーゼ活性について試験した。I-CreI変異型クローン、及び酵母レポーター株をグリセロール(20%)中に貯蔵し、新しいマイクロプレートで複製させた。交配は、コロニーグリッダー(QpixII, GENETIX)を用いて行った。変異体を、高格子密度(gridding density)(約20スポット/cm2)を用いて、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上にグリッドした。第2のグリッドプロセスを、同じフィルタ上で行って、各変異型について64個の異なるレポーター保持酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを、固形寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして交配させた。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、ガラクトース(2%)を炭素源として(及び同時発現実験についてG418を含む)含有する合成培地に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する2倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5 Mリン酸ナトリウムバッファー, pH 7.0、0.1 % SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7 mM β-メルカプトエタノール、1%アガロース中に0.02% X-Galを含む固形アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性を監視した。2日間のインキュベーションの後に、陽性のクローンを走査により同定した。クローンのβ-ガラクトシダーゼ活性を、適切なソフトウェアを用いて定量した。少なくとも1つの標的に対して活性を示すクローンを単離した(第1スクリーニング)。次いで、スポット密度を4スポット/cm2に減らし、各陽性クローンを、4重で64個のレポーター株に対して試験し、このことにより、完全なプロファイルを作製した(2次スクリーニング)。
【0152】
e) 配列
酵母における1次及び/又は2次スクリーニングの間に同定した陽性クローンのオープンリーディングフレーム(ORF)を、PROLIGOからのプライマー:PCR-Gal10-F (gcaactttagtgctgacacatacagg, 配列番号40)及びPCR-Gal10-R (acaaccttgattgcagacttgacc, 配列番号41)、又は5'ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc 3' (配列番号225)及び5'ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc 3' (配列番号226)を用いて、酵母コロニー上でPCRにより増幅した。簡単に、酵母コロニーを採取し、100μlのLGlu液体培地に再懸濁し、一晩培養する。遠心分離の後に、酵母ペレットを10μlの滅菌水に再懸濁し、1.5μlの各特異的プライマー(100 pmol/μl)を含有する50μlの最終容量でPCR反応を行なうのに用いる。PCR条件は、94℃にて10分間の変性を1サイクル、94℃にて30秒間の変性、55℃にて1分間のアニーリング、72℃にて1.5分間の伸長を35サイクル、及び5分間の最終伸長であった。得られたPCR産物を、次いで、配列決定した。
【0153】
f) 1次ヒットの再クローニング
1次スクリーニングの間に同定された陽性クローンのオープンリーディングフレーム(ORF)を、Gatewayプロトコル(Invitrogen)を用いて再クローニングした。ORFを、e)に記載するようにして、酵母コロニー上でPCRにより増幅した。PCR産物を、次いで、(i) ガラクトース誘導プロモーター、選択可能なマーカーとしてLEU2又はKanR、及び2ミクロン複製起点を保持する酵母ゲートウェイ発現ベクター、(ii) NOVAGENからのpET 24d(+)ベクター、及び(iii) INVITROGENからのCHOゲートウェイ発現ベクターpcDNA6.2にクローニングした。得られたクローンは、配列決定(MILLEGEN)により確認した。
【0154】
B) 結果
I-CreIは、22 bpの偽パリンドローム標的を切断するダイマーホーミングエンドヌクレアーゼである。その天然の標的に結合したI-CreI構造の分析により、各モノマーにおいて、8残基が7塩基と直接の相互作用を確立していることが示された(Juricaら, 1998, 既出)。これらの構造データによると、±8〜10位のヌクレオチドの塩基が、I-CreIのアミノ酸N30、Y33及びQ38と特異的な接触を確立している(図3)。つまり、30位、33位及び38位に変異を有する新規なタンパク質は、I-CreIにより切断されるパリンドローム標的の±8位、±9位及び±10位の置換から得られる64個の標的との新規な切断プロファイルを示すことができた。さらに、変異は、DNA塩基との直接接触に関与する残基の数及び位置を変更させるだろう。より具体的には、30位でも33位でも38位でもないが、折り畳まれたタンパク質の非常に近傍にある位置は、同じ塩基対との相互作用に関与し得るだろう。
【0155】
網羅的なタンパク質ライブラリー対標的ライブラリーのアプローチは、DNA結合界面のこの部分を局所的に改変するために行われた。まず、I-CreI骨格をD75からNに変異させた。D75N変異は、タンパク質構造に影響しなかったが、過剰発現実験においてI-CreIの毒性を減少させた。
【0156】
次いで、Ulib4ライブラリーを構築した。残基30、33及び38を無作為化し、通常のアミノ酸(N30、Y33及びQ38)を、12アミノ酸(A,D,E,G,H,K,N,P,Q,R,S,T)の1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で1728の複雑さを有する(核酸の点で5832)。
【0157】
次いで、2つの他のライブラリー、Ulib5及びLib4を構築した。Ulib5において、残基28、30及び38を無作為化し、通常のアミノ酸(K28、N30及びQ38)を、12アミノ酸(ADEGHKNPQRST)の1つで置き換えた。得られたライブラリーはタンパク質の点で1728の複雑さを有する(核酸の点で5832)。Lib4において、70位のアルギニンを、まず、セリンに置き換えた。次いで、28位、33位、38位及び40位を無作為化し、通常のアミノ酸(K28、Y33、Q38及びS40)を10アミノ酸(A,D,E,K,N,Q,R,S,T,Y)の1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で10000の複雑さを有する。
【0158】
1次スクリーニング実験において、Ulib4からの20000クローン、Ulib5からの10000クローン、及びLib4からの20000クローンを、64個の試験株のそれぞれ1つずつと交配させ、2倍体をベータ-ガラクトシダーゼ活性について試験した。64個の標的のうちの少なくとも1つとの切断活性を示す全てのクローンを、64個の標的に対する2回目のスクリーニングにおいて、4重で試験し、各切断プロファイルを確立した。次いで、メガヌクレアーゼORFを各株からPCRにより増幅し、配列決定し、141個の異なるメガヌクレアーゼ変異型を同定した。
【0159】
141個の確認されたクローンは、非常に多様なパターンを示した。これらの新しいプロファイルのいくつかは、野生型骨格といくらかの類似性を示したが、他のほとんどのものは全く異なっていた。結果を図6にまとめる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、それらの標的配列におけるいくらかの縮重に、通常、合わせることができ、I-CreI N75骨格タンパク質自体は、±10位〜±8位のaaa、aac、aag及びaatに相当する一連の4つの標的を切断する。強い切断活性がaaa、aag及びaatを用いて観察されるが、AACはわずかしか切断されない(そして、ときどき切断が観察されない)。類似のパターンが、I-CreI K28 N30 D33 Q38 S40 R70 N75、I-CreI K28 N30 Y33 Q38 S40 R70 N75のような他のタンパク質で見られる。I-CreI R28 N30 N33 Q38 D40 S70 N75及びI-CreI K28 N30 N33 Q38 S40 R70 N75のようないくつかのタンパク質では、aacは全く切断されない。
【0160】
しかし、多くのタンパク質は非常に異なるパターンを示す。いくつかの変異型では、独特の配列の切断が観察される。例えば、タンパク質I-CreI K28 R30 G33 T38 S40 R70 N75は「ggg」標的に対して活性であり、これは野生型タンパク質によっては切断されず、I-CreI Q28 N30 Y33 Q38 R40 S70 N75はAATを切断し、これはI-CreI N75により切断される標的の1つである。他のタンパク質は、一連の異なる標的を効率的に切断する。例えば、I-CreI N28 N30 S33 R38 K40 S70 N75は、ggg、tgg及びtgtを切断し、CreI K28 N30 H33 Q38 S40 R70 N75は、aag、aat、gac、gag、gat、gga、ggc、ggg及びggtを切断する。切断される配列の数は、1〜10の範囲である。まとめると、I-CreIにより切断されない34個の標的と、I-CreIにより切断される3個の標的(aag、aat及びaac、図6)とを含む37個の新規な標的が変異型により切断された。
【0161】
実施例2:XPC遺伝子からの標的を切断する新規なメガヌクレアーゼを工学的に作製するためのストラテジ
I-CreIの44位、68位及び/又は70位に少なくとも1つの置換を有し、かつ±3〜5位に変動を有する変異I-CreI部位を切断できるI-CreI変異型の第1系列は、以前に同定されている(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。変異型の切断パターンを、図7に示す。
【0162】
I-CreIの28位、30位、33位又は28位、33位、38位及び40位に少なくとも1つの置換を有し、かつ±8〜10位に変動を有する変異I-CreI部位を切断できるI-CreI変異型の第2系列は、実施例1に記載するようにして同定した。変異型の切断パターンは、図6に示す。
【0163】
一方では、28位、30位、33位、38位及び40位、他方で44位、68位及び70位は、同じDNA結合折り畳み上にあり、これらが独立して挙動することは構造的に証明されていない。しかし、2組の変異は、DNA標的の異なる領域の周りに位置するこの折り畳み(図8)の2つの空間的に異なる領域上に明らかに存在する。これらのデータは、I-CreIが、組み合わせることにより新規なキメラ標的を切断できる2つの独立した機能的サブユニットを含むことを示唆する。キメラ標的は、各サブドメインにより結合される±3〜5位及び±8〜10位のヌクレオチドを含む。
【0164】
この仮定は、興味のある遺伝子、XPC遺伝子中に位置する標的を用いることにより証明された。I-CreI変異型により切断される標的は、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221の24 bp誘導体である。しかし、そのDNA標的に結合したI-CreIの構造は、これらの標的の2つの外の塩基対(-12位及び12位)が、結合及び切断に対して影響を有さないことを示唆し(Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalier, B.S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774; Chevalierら, 2003, J. Mol. Biol., 329, 253〜269)、この研究においては、-11位〜11位のみを考慮した。その結果、XPC遺伝子において同定される一連の標的は、24 bpではなく22 bpとして定義された。
【0165】
Xa.1、Xb.1及びXc.1は、ヒトXPC遺伝子(図1A、9及び23)のそれぞれ9119位、13521位及び20438位に位置する22 bp (非パリンドローム)標的である。Xa.1、Xb.1又はXc.1を切断するメガヌクレアーゼは、切断部位の近傍の変異(図1B)を修正するため得に用い得る。遺伝子修正の効率は、DSBへの距離が増加する場合に減少するので(Elliottら, Mol Cell Biol, 1998, 18, 93〜101)、このストラテジは、切断部位の500 bp内に位置する変異に最も効果的であろう。例えば、Xc.1を切断するメガヌクレアーゼは、エキソン9 における変異を修正するために用い得る(欠失DEL1132AA又は挿入insVAL580、図1A)。或いは、同じメガヌクレアーゼを用いて、XPC遺伝子座にて機能的XPC遺伝子を復帰させるエキソン配列をノックインし得る(図1C)。このストラテジは、切断部位の下流のいずれの変異についても用い得る。
【0166】
Xa.1は、部分的に、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される(図6及び7)、10TGC_P、10AGG_P、5TTT_P及び5CCT_P標的のパッチワークである(図9及び23)。つまり、Xa.1は、これらの以前に同定されたメガヌクレアーゼに起因するコンビナトリアル変異体により切断できる。
【0167】
Xb.1は、部分的に、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される(図6及び7)、10GGG_P、10TGT_P、5GGG_P及び5TAC_P標的のパッチワークである(図23)。つまり、Xb.1は、これらの以前に同定されたメガヌクレアーゼに起因するコンビナトリアル変異体により切断できる。
【0168】
Xc.1は、部分的に、以前に同定されたメガヌクレアーゼにより切断される(図6及び7)、10GAG_P、10GTA_P及び5TCT_P標的(図23)、及びI-CreIにより切断されるC1221の配列である5GTC_Pのパッチワークである。つまり、Xc.1は、これらの以前に同定されたメガヌクレアーゼに起因するコンビナトリアル変異体により切断できる。
【0169】
よって、これらの仮定を証明するために、同定された標的(Xx.1)の左半分(Xx.3)及び右半分(Xx.4)の配列に相当する2つのパリンドローム標的を作製した(図9及び23)。これらの2つの派生パリンドローム標的は、-2位〜+2位にて、C1221パリンドロームI-CreI標的からのGTAC配列を維持する(図9及び23)。Xx.3及びXx.4はパリンドロームであるので、これらは、ホモダイマータンパク質により切断されるはずである。第1工程において、図24Aに示すように、ホモダイマーとしてのXx.3及びXx.4配列を切断できるタンパク質を設計した(実施例3及び4)。第2工程において、図24Aに示すように、実施例3及び4で得られたタンパク質を同時発現させて、いくつかのヘテロダイマーについて(実施例5)、Xx.2及びXx.1を切断するヘテロダイマーを得た。
【0170】
実施例3:Xx.3を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異型がパリンドロームの形のXx.2標的の左部分に由来するXx.3 DNA標的配列を切断できることを示す(図9及び23)。この実施例に記載される標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらは、最初の11ヌクレオチド、続いて接尾辞_Pによってのみ記載される。例えば、標的Xa.3は、ctgccttttgt_Pとも表される。
【0171】
Xa.3は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±11位にて5TTT_Pに、そして±1位、±2位、±8位、±9位、±10位及び±11位にて10TGC_Pに類似する。
Xb.3は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±11位にて5GGG_Pに、そして±1位、±2位、±8位、±9位、±10位及び±11位にて10GGG_Pに類似する。
Xc.3は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±7位及び±11位においてC1221に、そして±1位、±2位、±7位、±8位、±9位、±10位及び±11位において10GAG_Pに類似する。
【0172】
野生型I-CreIは、±11位、±7位及び±6位でのヌクレオチド置換に寛容であることが知られている(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269; Juricaら, Mol. Cell., 1998, 2, 469〜476)。つまり、±6位及び±7位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないことが仮定された。
【0173】
5TTT_P及び5GGG_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する44位、68位及び70位、又はI-CreI S70に対する44位、68位、75位及び77位での突然変異誘発により、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載されるように、以前に得られている(図7)。10TGC_P、10GGG_P及び10TGA_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する28位、30位、38位又は30位、33位、38位、I-CreI S70 N75に対する28位、33位、38位及び40位及び70位、又はI-CreI D75若しくはN75に対する28、30、32、33、38及び40位から選択される2つの位置での突然変異誘発により得られた(実施例1及び図6)。つまり、このような変異体の対を組み合わせることにより、Xx.3標的の切断が可能になるだろう。
【0174】
タンパク質のいくつかの組は、ともに70位で変異されている。しかし、2つの分離可能な機能的サブドメインがI-CreIに存在することが仮定されていた。このことは、この位置が標的の塩基10〜8における特異性にほとんど影響しないことを意味する。
よって、組み合わせた変異体がXa.3及びXb.3標的を切断できるかを確かめるために、標的の5NNN領域(5TTT_P及び5GGG_P標的)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位及び/又は75位での変異を、図24Aに示すように、標的の10NNN領域(10TGC_P及び10GGG_P標的)を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38及び/又は40変異と組み合わせた。
【0175】
±3〜5位にてC1221と同一であるXc.3は、10GAG_P標的を切断する以前に同定された変異体(変異の組み合わせなし)により切断されるはずである。
【0176】
A) 材料及び方法
a) 標的ベクターの構築:
C1221由来標的を、次のようにしてクローニングした。ゲートウェイクローニング配列に接する標的配列に相当するオリゴヌクレオチドを、Proligoに注文した(例として: 5' tggcatacaagtttctgccttttgtacaaaaggcagacaatcgtctgtca 3' (Xa.3標的について配列番号42)。一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製した二本鎖標的DNAを、GatewayRプロトコル(INVITROGEN)を用いて、酵母レポーターベクター(pCLS1055, 図10)にクローニングした。酵母レポーターベクターで、S. cerevisiae FYBL2-7B株(MATアルファ, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を形質転換した。
【0177】
b) コンビナトリアル変異体の構築:
10TGC_P、10GGG_P、5TTT_P又は5GGG_Pを切断するI-CreI変異体を、10TGC_P、10GGG_P及び5TTT_P、5GGG_P標的についてそれぞれ実施例1及び図6、並びにArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458及び図7に記載するようにして同定した。両方の系列からの変異を含むI-CreI由来コード配列を作製するために、I-CreIコード配列の5'末端(アミノ酸1〜43位)又は3'末端(39〜167位)を増幅する別々の重複PCR反応を行った。5'及び3'末端の両方について、PCR増幅を、ベクター(pCLS0542, 図11)に特異的なプライマー:Gal10F又はGal10R、及びアミノ酸39〜43のI-CreIコード配列に特異的なプライマー(assF 5'-ctannnttgaccttt-3' (配列番号43)又はassR 5'-aaaggtcaannntag-3' (配列番号44)) (ここで、nnnは残基40をコードする)を用いて行う。得られたPCR産物は、互いに15bpの相同性、及びLEU2遺伝子をマーカーとして含む2ミクロンベースの複製ベクターであるpCLS0542、及びカナマイシン耐性遺伝子を含むpCLS1107と約100〜200 bpの相同性を有する。
【0178】
つまり、酵母においてインビボ相同組換えにより無傷のコード配列を作製するために、2つの重複PCRフラグメントのそれぞれを約25 ng、及びNcoI及びEagIでの消化により直線化したpCLS0542ベクターDNA 25 ng、又はDraIII及びNgoMIVでの消化により直線化したpCLS1107ベクターDNA 25ngを用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz, R.D.及びR.A. Woods, Methods Enzymol, 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。コンビナトリアル変異体は、有利には、ライブラリーとして作製され得る。PCR反応物を、等モル量でプールし、直線化したプラスミドとともに酵母を形質転換した。形質転換体を、ロイシン欠乏合成培地(pCLS0542)又はG418含有リッチ培地(pCLS1107)のいずれかで選択した。コロニーを、コロニーピッカー(QpixII, Genetix)を用いて採取し、96ウェルマイクロタイタープレートで成長させた。
【0179】
c) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング:
実験手順は、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いた以外は、実施例1に記載されるとおりである。
【0180】
c) 変異体の配列決定
プラスミドを発現する変異体を回収するために、酵母DNAを、標準プロトコルを用いて抽出し、これを用いてE. coliを形質転換した。次いで、変異体ORFの配列決定を、MILLEGEN SAにより、プラスミド上で行った。代わりに、酵母での1次スクリーニングの間に同定された陽性クローンのORFを、コロニーからの酵母DNA抽出物に対して、PROLIGOからのプライマー5'ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc 3' (配列番号225)及び5'ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc 3' (配列番号226)を用いてPCRにより増幅し(Akadaら, Biotechniques, 2000, 28(4): 668〜70, 672, 674)、配列決定をMILLEGENにより、PCR産物に対して直接行った。PCR産物を、(i) ガラクトース誘導プロモーター、選択マーカーとしてLEU2又はKanR、及び2ミクロン複製起点を有する酵母ゲートウェイ発現ベクター、(ii) INVITROGENからのCHOゲートウェイ発現ベクターpCDNA6.2のいずれかにクローニングした。得られたクローンを、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0181】
B) 結果
10TGC_P (ctgcacgtcgt_P)標的を切断するI-CreI N75変異体、及び5TTT_P (caaaactttgt_P)標的を切断するI-CreI N75 (Q44, R68, R70)変異体を組み合わせて、Xa.3標的(ctgccttttgt_P)に対してスクリーニングされたコンビナトリアル変異体を得た。
10GGG_P標的を切断するI-CreI N75変異体、及び5GGG_P標的を切断するI-CreI N75変異体を組み合わせて、Xb.3標的に対してスクリーニングされたコンビナトリアル変異体を得た。
各ライブラリーの多様性の少なくとも2倍をスクリーニングした。同定された活性な変異体の数と、試験した組み合わせの数との間に、相関関係は観察されなかった。
【0182】
Xc.3標的配列は、±5位、±4位及び±3位に野生型配列GTCを含んでいた。よって、コンビナトリアルアプローチは、この標的に対して特異的な変異型を作製するために必要ではなかった。塩基±10、±9及び±8に対する基質特異性が変更された、以前に同定されたI-CreI変異型は、Xc.3 DNA標的に対して直接スクリーニングされた。
【0183】
【表16】
【0184】
8つのコンビナトリアル変異体が、Xa.3標的を切断することが見出された(表XVI)。Xa.3標的を切断する変異体の2つは、以下の配列を有する:
- I-CreI K28, N30, S33, R38, S40とI-CreI S70,N75との組み合わせにより得られたI-CreI K28, N30, S33, R38, S40, S70及びN75 (KNSRSSNという)、及び
- I-CreI K28, N30, S33, R38, K40とI-CreI S70, N75との組み合わせにより得られたI-CreI A28, N30, S33, R38, K40, S70及びN75 (ANSRKSNという)。
【0185】
30個のコンビナトリアル変異体が、Xb.3標的を切断することが見出された(表XVI)。
試験した10GAG_P標的を切断する変異体のうち、21個がXc.3標的を切断することが見出された(表XVI)。
これらの結果は、2次スクリーニング(図12)により確認され、推定アミノ酸1次構造は、配列決定により確認された。
【0186】
実施例4:Xx.4を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異型がパリンドローム形のXx.2標的の右側部分に由来するXx.4 DNA標的配列を切断できることを示す(図9及び23)。この実施例に記載する全ての標的配列は、22 bpパリンドローム配列である。よって、これらは、最初の11ヌクレオチド、続いて接尾辞_Pのよってのみ表される。例えば、Xa.4はtaggatcctgt_P (配列番号37)とよばれる。
【0187】
Xa.4は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位において5CCT_Pに類似し、±1位、±2位、±7位、±8位、±9位及び±10位において10AGG_Pに類似する。±6位及び±11位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないであろうと仮定された。
Xb.4は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±6位及び±11位において5TAC_Pに類似し、±1位、±2位、±6位、±8位、±9位、±10位及び±11位において10TGT_Pに類似する。±7位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないであろうと仮定された。
Xc.4は、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±7位及び±11位において5TCT_Pに類似し、±1位、±2位、±7位、±8位、±9位、±10位及び±11位において10GTA_Pに類似する。±6位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響がないであろうと仮定された。
【0188】
5CCT_P、5TAC_P及び5TCT_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する44位、68位及び70位、又はI-CreI S70に対する44位、68位、75位及び77位での突然変異誘発により、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載されるように、以前に得られている(図7)。10AGG_P、10TGT_P及び10GTA_P標的を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する28位、30位、38位若しくは30位、33位、38位、I-CreI S70 N75に対する28位、33位、38位及び40位及び70位、又はI-CreI D75若しくはN75に対する28位、30位、32位、33位、38位及び40位から選択される2つの位置での突然変異誘発により得られた(実施例1及び図6)。つまり、変異体のこのような対を組み合わせることにより、Xx.4標的の切断が可能になる。
【0189】
タンパク質のいくつかの組は、ともに70位で変異されている。しかし、I-CreIが2つの分離可能なサブドメインを含むと仮定されていた。このことは、この位置が標的の塩基10〜8における特異性にほとんど影響しないことを意味する。
よって、組み合わせた変異体がXx.4標的を切断できるかを確かめるために、5CCT_P、5TAC_P及び5TCT_P標的を切断するタンパク質からの44位、68位、70位及び/又は75位での変異を、図24Aに示すように、10AGG_P、10TGT_P及び10GTA_P標的を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38及び/又は40変異と組み合わせた。
【0190】
A) 材料及び方法
実施例3を参照されたい。
【0191】
B) 結果
I-CreI組み合わせ変異体を、44位、68位及び70位での変異を、I-CreI N75骨格の28、30、33、38及び40変異と会合させることにより構築した。組み合わせた変異体を、Xx.4 DNA標的に対してスクリーニングした。各ライブラリーの多様性の少なくとも2倍をスクリーニングした。同定された活性な変異体の数と、試験した組み合わせの数との間に、相関関係は観察されなかった。ハイブリッド変異体の2パーセントは、Xb.4 DNA標的について機能的であるとみられるが、55%ほど多くがXa.4に対して活性であった。2次スクリーニング及び配列決定の後に、Xa.4、Xb.4及びXc.4標的についてそれぞれ、104、8及び4個の異なる切断者が同定された(表XVII)。
【0192】
【表17】
【0193】
10AGG_P (caggacgtcgt_P; 配列番号32)標的を切断するI-CreI N75変異体(28位、30位、33位、38位及び40位のアミノ酸を示す)と、5CCT_P (caaaaccctgt_P; 配列番号34)標的を切断するI-CreI N75変異体(44位、68位及び70位のアミノ酸を示す)を、表XVIIIに列挙する。104個の陽性のうち39個を、図13及び表XVIIIに示す。
【0194】
【表18】
【0195】
実施例5:Xx.2及びXx.1.1を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームXx.2由来標的Xx.3及びXx.4のそれぞれを切断できるI-CreI変異体を、実施例3及び4で同定した。このような変異体の対のサブセット(Xx.3を切断するものとXx.4を切断するもの)を、酵母において同時発現させた。同時発現の際に、3つの活性な分子種、すなわち2つのホモダイマーと1つのヘテロダイマーとが存在するはずである。形成されるはずであるヘテロダイマーがXx.1及びXx.2標的を切断できたかを、図24Aに示すようにしてアッセイした。
【0196】
A) 材料及び方法
a) カナマイシン耐性ベクターにおける変異体のクローニング:
酵母において2つのI-CreI変異体を同時発現させるために、Xx.3配列を切断する変異体を、カナマイシン耐性酵母発現ベクター(pCLS1107, 図14)にサブクローニングした。
変異体を、ロイシンベクター(pCLS0542)及びカナマイシンベクター(pCLS1107)に共通のプライマー(Gal10F及びGal10R)を用いるPCR反応により増幅させた。約25ngのPCRフラグメント、並びにDraIII及びNgoMIVでの消化により直線化した25ngのベクターDNA (pCLS1107)を用いて、酵母Saccharomyces cerevisiae FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換した。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列を、酵母におけるインビボ相同組換えにより作製する。
【0197】
b) 変異体同時発現
Xx.4標的を切断する変異体を発現する酵母株を、pCLS1107発現ベクター中の、Xx.3標的を切断する変異体をコードするDNAで形質転換した。形質転換体を、-L Glu + G418培地で選択した。
【0198】
c) メガヌクレアーゼ同時発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング:
実験手順は、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いた以外は、実施例1に記載されるとおりである。
【0199】
B) 結果:
表XIXに、標的Xx.2及びXx.1に対して酵母における同時発現により試験された合計の活性なヘテロダイマーの数をまとめる。
【0200】
【表19】
【0201】
全ての場合において、標的.2についての切断活性を有するヘテロダイマーを同定した(図15a、15b及び24B)。試験した全てのヘテロダイマーは、Xc.2に対して活性であったが、75%及び45%がXa.2及びXb.2標的をそれぞれ切断できた。一方、Xa.1、Xb.1及びXc.1標的でそれぞれ見出される中央の4ヌクレオチド配列TTGA、GAAA及びACACは、I-CreI C1221パリンドローム標的に挿入されたときにI-CreI切断活性に影響しなかったが、Xa.2及びXc.2に対する活性ヘテロダイマーの一部のフラクション(sub-fraction)のみがそれぞれXa.1及びXc.1標的を切断でき、Xb.1標的についての切断者は見出されなかった(図15a、15b及び24B)。中央の配列の影響は、その特定のトポロジーにより説明されている。構造分析は、標的のこのDNA領域が、約50°の曲率の最大DNA曲げの領域であることを示し、この曲率は塩基のねじれ及び切れやすいリン酸基の近傍からの飛び出し(unstacking)をもたらす(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003329, 253〜269)。しかし、4つの中央位置での特定の配列がなぜ切断活性に適合し、いくつかの他のものが適合しないかを説明する精密な機構は、これから説明されなければならない。
【0202】
Xa.1標的についての機能的組み合わせの例を、表XX及びXXIに示す。一般的な規則として、Xx.1配列を切断する機能的ヘテロダイマーは、2つの発現されたタンパク質がホモダイマーとして強いシグナルを発したときに、常に得られた。さらに、多くの変異体がXc.1に対してまだ非常に活性であるが、Xa.1標的を切断可能な変異体は弱い活性を示した。
【0203】
【表20】
【0204】
【表21】
【0205】
実施例6:メガヌクレアーゼの切断活性の最適化
A) 材料及び方法
活性の改良
修復ミスの多いPCRを用いて、4つの選択した変異体のプールにおいてランダム突然変異を導入した。ライブラリーを、Mn2+、又はJBS dNTP-MutagenesisキットのJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されているようなdNTP誘導体である8-オキソ-dGTP及びdPTPを用いる2工程プロセスのいずれかを用いるPCRにより作製した。用いたプライマーは:preATGCreFor (5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggccttgccacc-3', 配列番号227)及びICreIpostRev (5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgagttatcagtcggccgc-3', 配列番号228)である。活性の改良の第1回目において、新しいライブラリーをインビボにて酵母に、ガラクトース誘導性プロモーター、選択マーカーとしてKanR及び2ミクロン複製起点を有する直線化したカナマイシンベクター(pCLS1107, 図14)中でクローニングした。活性の改良の第2回目において、LEU2遺伝子をマーカーとして有する2ミクロンベースの複製ベクターを用いる。陽性の結果のクローンを、配列決定(MILLEGEN)により確かめた。
【0206】
B) 結果
標的.2及び標的.1の間の切断活性の低下(図24B)は、メガヌクレアーゼの作製のプロセス中に導入された4つの中央のヌクレオチドgtacのほうへの偏りの結果であり得るので、弱い活性は、代償性変異(compensatory mutations)により続いて改善され得ると仮定された。図25は、タンパク質活性を改善するために用いたストラテジの一般的な作業の流れを示す。切断活性の最適化のプロセスは、2工程で行う。まず、標的配列Xa.1についての機能的ヘテロダイマーの同定の後に、Xa.4標的に対するスクリーニングにより最初に同定された2〜4モノマーのプールに(変異体.4)、修復ミスの多いPCRにより突然変異を誘発し、その対応物(例えばXa.3標的に対するスクリーニングにより同定される変異体)は修飾しないままにする。突然変異誘発したライブラリーを、次いで、酵母に形質転換し、スクリーニングを、標的Xa.1及び非突然変異誘発変異体(この場合、Xa.3に対して活性)を含む酵母株との交配により行う。約2300個のクローンを通常、試験する。なぜなら、この数のクローンは、活性が改良された変異体を見出すのに充分だからである。増強された活性を与える組み合わせが一旦同定されると、同じ手順を繰り返して、Xa.3標的と相互作用する変異体(変異体.3)を最適化する。修復ミスの多いPCRの後に、ライブラリーを、該標的及び前に同定された改良された変異体を含む酵母との交配により、Xa.1標的に対してスクリーニングする。この手順の最後に、両方のモノマーが、1つの標的配列に対する規定されたタンパク質の組み合わせについて最適化されたタンパク質ヘテロダイマーが得られる。最後に、改良された変異型は、図26Aに示すような交雑実験により確認される(モノマー改良の後に得られる標的Xa.1に対するヘテロダイマーのサブセットの酵母における切断活性の例)。Xa.4を切断する5つの改良された変異体及びXa.3を切断する6つの改良された変異体を、それぞれXa.3及びXa.4を切断する2つ及び8つの改良された変異体との組み合わせで、Xa.1標的に対して試験した。修復ミスの多いPCRに用いた元来の変異体は、対照として実験に組み込んだ。Xa.3又はXa.4のみを切断する変異体を含む酵母クローンの交配の後に得られる白色のコロニーにより示されるように、ホモダイマーを単独で用いて、標的Xa.1に対する活性は検出できなかった。対照的に、両方の種の変異体を含む酵母クローン同士で交配を行ったときに、強い切断活性が視覚化でき、このことは、切断活性がヘテロダイマー形成に起因することを示す。さらに、最も強い活性は、1つのモノマー活性のみを改良したヘテロダイマーを用いて達成される活性に比較して、両方のモノマーを最適化したときに達成される。
【0207】
最強の切断活性を示す6つの組み合わせを選択し、ORFを配列決定した。興味深いことに、6つの最も活性なヘテロダイマーは、Xa.3を切断する3つの独立した変異体と、Xa.4を切断する2つの異なる変異体との異なる6つの異なる組み合わせに起因した。図26Bは、改良プロセスに用いた元来のタンパク質の配列(I1〜I4)と、それらのそれぞれの最適化されたタンパク質(M1〜M5)とを示す。図26BのI5及びI6配列は、同時発現アッセイによりXc.1標的に対して最良の活性を示す2つのモノマーのタンパク質配列である。この標的の切断は非常に効率的であったので、さらなる活性の改善は必要なかった。
【0208】
最良の切断者のタンパク質配列分析は、変異プロセスにより影響される特定のタンパク質ドメインを明らかにしない。元来の配列に比較して、修復ミスの多いPCR は、Xa.3標的を切断する活性変異体のORFの19位、69位及び87位に変異を、及びXa.4標的を切断する変異体のコード配列の32位、85位及び109位に変異を導入した。33位及び38位も、M2及びM5タンパク質のタンパク質配列中に復帰していた。興味深いことに、19位のアミノ酸は、Xa.3標的に対する活性を有する全てのタンパク質において変異されていた。この位置は、触媒部位の一部分であり(Chevalierら, Biochemistry, 2004, 43, 14015〜14026)、近接するAsp20とともに、金属カチオン結合に参加する。これは、触媒機構の改良に直接つながり得る唯一の変異である。32位及び69位の変異は、タンパク質-DNA界面に影響し、85位及び87位の変異は、疎水性コアに影響する。他の変異は、コアタンパク質に主に影響し、このことは、普及された立体配置の変更の機構は、活性の改良に重要であることを示す。この長い範囲の影響は、例えば、変異体の結合活性を改良でき、その切断活性を増加させ得るだろう。
【0209】
これらの結果は、ランダム突然変異誘発に関連するコンビナトリアルアプローチが、特定のDNA基質についてのカスタム設計されたエンドヌクレアーゼの迅速で効率的な製造を可能にすることを示す。
【0210】
実施例7:ヘテロダイマーメガヌクレアーゼは、哺乳動物細胞において機能的である
A) 材料及び方法
哺乳動物細胞アッセイ
CHO細胞を、供給業者(QIAGEN)のプロトコルに従って、Polyfect (登録商標)トランスフェクション試薬を用いてトランスフェクションした。トランスフェクションの72時間後に、培養培地を除去し、150μlの溶解/曝露(revelation)バッファーを、β-ガラクトシダーゼ液体アッセイのために加えた(1リットルのバッファーは、100 mlの溶解バッファー(Tris-HCl 10 mM pH7.5, NaCl 150 mM, Triton X100 0.1%, BSA 0.1 mg/ml, プロテアーゼ阻害剤)、10 mlのMg 100×バッファー(MgCl2 100 mM, β-メルカプトエタノール35%)、110 ml ONPG (8 mg/ml)及び780 mlのリン酸ナトリウム0.1 M pH7.5を含む)。37℃のでインキュベーションの後に、ODを42 0nmにて測定した。プロセスの全体を、自動化Velocity11 BioCelプラットフォームにて行う。
【0211】
B) 結果
酵母で活性なハイブリッドメガヌクレアーゼを、CHO細胞を、標的ベクター及びメガヌクレアーゼ発現ベクターで一過性同時トランスフェクションすることにより哺乳動物細胞においてにおいて試験した。この目的のために、変異体及びそれらの対応する標的(Xa.1及びXc.1)のサブセットを、実施例1に記載されるようにして適切なベクターにクローニングし、メガヌクレアーゼ誘導組換え効率を、以前に記載されるような(国際PCT出願WO 2006/097853; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., Epub 2006年11月27日)、機能的β-ガラクトシダーゼ遺伝子の復帰をモニターする標準的定量ONPGアッセイにより測定した。図27は、酵母において同定される最も活性なハイブリッドタンパク質についてのCHO-K1細胞における切断活性を示す。全ての標的プラスミドは、内部コントロールとして、18 bpの最小I-SceI部位を有する。よって、全ての変異体は、同じ実験条件下でI-SceI活性に対して比較できる。この18 bpのI-SceI部位は、I-SceIタンパク質により弱く切断され、CHO細胞におけるシグナルの飽和を避けるために選択された。活性がヘテロダイマー形成に依存することを示すそれらのバックグラウンドレベルの活性
【化1】
により判断されたところによると、単独タンパク質が発現されたときに、切断活性は検出できなかった。さらに、当初のコンビナトリアル変異体の同時発現(I1、I3)は、非常に弱い活性であり、これは、バックグラウンドレベルから実質的に区別可能ではなかった。切断活性は、タンパク質パートナーの一方が改良されるとすぐに増加する。最後に、Xa.1標的についての最も効率的な切断活性は、2つの改良されたタンパク質の同時発現により達成され、Xc.1標的について同定された変異体の活性と類似の活性レベルに到達する。これらの結果は、当初のコンビナトリアル変異体の同時発現が、活性の改良を必要とすることなくXc.1標的の効率的な切断を導くが、Xa.1に指向される変異体の活性が乏しいという酵母において得られるデータを確認する。しかし、Xa.1標的についての高い活性は、代償的変異の導入の後に生じることができた。モノマーがそれら自体で発現する場合、図27に示すように、毒性も切断も検出できず、このことは、Xa及びXcに指向して設計された変異体がI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの元来の特異性又は少なくとも細胞生存に匹敵する特異性を維持することを示す。
【0212】
実施例8:個別に変異された標的切断パターンの分析
I-CreI標的の個別の位置での縮重性は、wtI-CreIにより切断可能な変異型DNA標的を回復できるインビトロ部位選択を用いて、以前にアッセイされている(Argastら, J. Mol. Biol., 1998, 280, 345〜353)。このことは、その部位におけるほとんどのヌクレオチドの位置が、結合又は切断を損失することなく変異できることを示す。しかし、網羅的な研究は行われていない。I-CreI ホーミングエンドヌクレアーゼを用いて、Xa.1標的に対する改良された変異体を比較するために、Xa.3、Xa.4及びパリンドロームI-CreI標的C1221についての個別の変異を有する全ての可能な標的を作製した。全ての変異体を作製するために用いたタンパク質骨格は、75位にDからNへの変異を有する。この変異は、ライブラリーにおける68位及び70位での塩基性残基の置き換えに起因するエネルギーのひずみを減少させるために導入した。D75N変異が、タンパク質の基本的な折り畳み特性及び活性に影響することなく、過剰発現されたI-CreIタンパク質の毒性を減少させたことが、以前に示されている(Arnouldら, J.Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。野生型I-CreI (wt I-CreI)、最初のタンパク質骨格I-CreI(N75)及びコンビナトリアル変異体の塩基対認識の縮重の程度は、個別の部位突然変異を有するそれらのそれぞれのパリンドローム標的(C1221、Xa.3及びXa.4)に対する酵母でのそれらの切断活性を測定することによりアッセイした。
【0213】
I-CreI D75 (wt)及びI-CreI N75
図28Aに示すように、野生型タンパク質(I-CreI-D75)は、そのパリンドローム標的上の多くの個別の変異に適合できる(各ヌクレオチドのフォントサイズは切断効率に比例する)。±11位、±8位、±2位及び±1位は、最も寛容な位置である。なぜなら、これらの位置の4つのヌクレオチドはいずれも、切断効率に影響しないからである。対照的に、±9位及び±3位は、ほとんど変化を受け入れない。比較として、変異体を作製するために用いたI-CreI骨格(I-CreI-N75)は、異なるパターンを明らかにし、その標的での点突然変異にはあまり寛容でないようである。最も厳密な違いは、±1位、±3位、±10位及び±11位である。標的の切断を可能にする塩基は、±1T、±9A及び±10Aのみであるのに対して、±11位でのG及びAは、I-CreI(N75)タンパク質による標的の切断を阻害する。wt I-CreI及びI-CreI(N75)の両方について、それぞれ±7位及び±6位のC又はA及びT又はCは、最大の切断効率を可能にする。wt I-CreI及びI-CreI(N75)は全体として、単独の変異を有するそれぞれ26個及び14個の標的を切断する。このデータに基づいて、かつ各半分の標的が全体的な切断効率に対して独立した影響を有することができると仮定するならば、wt I-CreIは、個別の変異を有する1156個(34x34)の非パリンドローム標的のうち、最大で676個(26x26)を切断できるはずであり、一方、I-CreN75は196個(14x14)しか切断できないはずである。おそらく、この研究で観察されたI-Cre(N75)の制限されたパターンは、このI-CreI変異型の毒性がないことを説明できるだろう。以前の研究で示唆されたように(Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269; Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1353〜1664)、個別のヌクレオチド多形性の寛容性は、I-CreI(D75)が標的の規定された集団を認識することを可能にし、進化の間にイントロンの繰り返しの水平移動を促進する。
【0214】
Xa.3及びXa.4標的を切断するコンビナトリアル変異体
図28Bは、Xa.3及びXa.4標的を切断する最良のコンビナトリアル変異体を用いて得られた結果を示す。Xa.4標的を切断する変異体は、Xa.3標的を切断する変異体よりも、それらのそれぞれの標的における個別の変異についてより許容性がある。コンビナトリアルXa.4変異体は、24個のパリンドローム標的を切断でき、そのうち20個は強く切断される。Xa.4変異体により許容される単独塩基置換のパターンは、それ自体の標的に対するwt I-CreIのパターンと非常によく似ている。対照的に、Xa.3標的に対するカスタム設計の変異型は、個別の変異に関して最高の厳密さを有することが明らかになる。なぜなら、3つのパリンドローム標的しか高く切断可能でないからである。この変異体は、34個のパリンドローム標的のうち、8個(そのうち4個は効率的に切断される)しか切断できない。G及びTを許容できる±5位を除いて、それが選択された標的に対してのみ効率的な切断が達成される。試験した変異体はいずれも、wt I-CreI天然タンパク質よりも大きい縮重性を示さなかったので、これらのデータは、変異体を作製するために用いたコンビナトリアルアプローチが、その標的に対するタンパク質特異性の単純な弛緩の代わりに、基質特異性の変更をもたらしたことの証拠を提供する。さらに、コンビナトリアル変異体は、親の配列及び元来のI-CreI標的配列に対しても確認され、試験したタンパク質はいずれもこれらの標的を切断しない。まとめると、Xa.1標的を切断するように設計されたヘテロダイマーは、個別の変異を有する1156個の非パリンドローム標的のうち、最大で192個(8x24)を切断できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】ヒトXPC遺伝子、及びメガヌクレアーゼが誘発する組換えによる機能的遺伝子の復帰のための2つの異なるストラテジを表す。
【図2】本発明の原理を示す。
【図3】I-CreIと、そのDNA標的であるC1221 (配列番号25)との塩基特異的相互作用マップを示す。
【図4】コンビナトリアルアプローチの原理を示す。
【図5】I-CreI N75骨格タンパク質をコードするcDNA、並びにUlib4及びUlib5ライブラリー構築に用いた縮重プライマーの配列を示す。
【0216】
【図6】28位、30位、33位、38位及び/又は40位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。
【図7】44位、68位及び/又は70位でのI-CreI変異型の切断パターンを表す。
【図8】その標的に結合したI-CreIホモダイマーに対する、タンパク質及びDNA標的における変異の局在化を表す。
【図9】標的のXa系列、及び近い誘導体を示す。
【図10】pCLS1055プラスミドベクターマップを表す。
【0217】
【図11】pCLS10542プラスミドベクターマップを表す。
【図12】Xa.3標的の切断を示す。
【図13】Xa.4標的の切断を示す。
【図14】pCLS1107ベクターマップを表す。
【図15】Xa.1及びXa.2標的の切断を示す。
【0218】
【図16】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図17】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図18】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図19】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図20】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【0219】
【図21】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図22】ヒトXP遺伝子(XPA〜XPG遺伝子)の各エキソンで見出されるDNA標的配列、及び該DNA標的を切断できる対応するI-CreI変異型を示す。
【図23】ヒトXPC遺伝子において同定された、C1221から導かれる3つの標的: Xa.1、Xb.1及びXc.1 (配列番号24, 8, 12)を表す。
【図24】カスタム設計のホーミングエンドヌクレアーゼの作製及びスクリーニングのためのストラテジを示す。
【図25】カスタム設計ホーミングエンドヌクレアーゼの活性改良のストラテジを示す。
【0220】
【図26】Xb.1標的を切断する改良されたヘテロダイマーのスクリーニング及び特徴決定を示す。
【図27】哺乳動物細胞におけるヘテロダイマー活性を示す。
【図28】コンビナトリアルホモダイマー変異体のプロファイリングを表す。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
I-CreIの26位〜40位と44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、色素乾皮症遺伝子からのDNA標的配列を切断可能であり、かつ少なくとも以下の:
(a) I-CreIの26位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1系列を構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2系列を構築し、
(c) (i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、色素乾皮症遺伝子に存在するゲノムDNA標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) (i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(e) (i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) (i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、かつ(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせてヘテロダイマーを形成し、
(j) 色素乾皮症遺伝子からの前記DNA標的配列を切断可能な工程(i)からのヘテロダイマーを選択及び/又はスクリーニングする
工程を含む方法により得ることができることを特徴とする、I-CreI変異型。
【請求項2】
I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン中の前記置換が、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項3】
I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン中の前記置換が、44位〜70位にある請求項1又は2に記載の変異型。
【請求項4】
I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン中の前記置換が、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項5】
I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン中の前記置換が、28位〜40位にある請求項1又は4に記載の変異型。
【請求項6】
前記置換が、当初のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、W、L及びVからなる群より選択されるアミノ酸での置換である請求項1〜5のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項7】
I-CreIの19位、24位、42位、69位、80位、85位、87位、109位、133位及び161位に1又は複数の置換を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項8】
75位のアスパラギン酸の非荷電アミノ酸への置換を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項9】
前記非荷電アミノ酸が、アスパラギン又はバリン残基である請求項8に記載の変異型。
【請求項10】
請求項1で定義される工程a)〜j)と、さらに、工程(i)で形成されたか又は工程(j)で得られたヘテロダイマーの少なくとも1つのモノマーに対するランダム突然変異誘発の工程と、色素乾皮症遺伝子からの前記DNA標的に対する活性が改良されたヘテロダイマーの選択及び/又はスクリーニングの工程とを含む方法により得ることができる請求項1〜9のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項11】
色素乾皮症遺伝子からのパリンドローム又は偽パリンドロームDNA標的配列を切断可能なホモダイマーである請求項1〜10のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項12】
I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に異なる変異を有する第1及び第2モノマーの会合により得られ、色素乾皮症遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できるヘテロダイマーである請求項1〜10のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項13】
前記DNA標的配列が、ヒト色素乾皮症遺伝子からである請求項1〜12のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項14】
前記DNA標的が、配列番号45〜57の配列からなる群より選択されるヒトXPA遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項15】
前記DNA標的が、配列番号58〜86の配列からなる群より選択されるヒトXPB遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項16】
前記DNA標的が、配列番号1〜24の配列からなる群より選択されるヒトXPC遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項17】
前記DNA標的が、配列番号87〜119の配列からなる群より選択されるヒトXPD遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項18】
前記DNA標的が、配列番号120〜166の配列からなる群より選択されるヒトXPE遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項19】
前記DNA標的が、配列番号167〜188の配列からなる群より選択されるヒトXPF遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項20】
前記DNA標的が、配列番号189〜216の配列からなる群より選択されるヒトXPG遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項21】
第1及び第2のモノマーが、表XXII:
【表1】
に示されるI-CreIの24位、26位、28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項14に記載の変異型。
【請求項22】
第1及び第2のモノマーが、表XXIII:
【表2】
に示されるI-CreIの24位、26位、28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項15に記載の変異型。
【請求項23】
第1及び第2のモノマーが、表XXIV:
【表3】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び/又は133位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項16に記載の変異型。
【請求項24】
第1及び第2のモノマーが、表XXV:
【表4】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項17に記載の変異型。
【請求項25】
第1及び第2のモノマーが、表XXVI:
【表5】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び/又は133位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項18に記載の変異型。
【請求項26】
第1及び第2のモノマーが、表XXVII:
【表6】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項19に記載の変異型。
【請求項27】
第1及び第2のモノマーが、表XXVIII:
【表7】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び/又は133位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項20に記載の変異型。
【請求項28】
第1モノマーが、28K30N33S38R40S70S75N、28A30N33S38R40K70S75N、19A28A30N33S38R40K70S75N、19A28A30N33Y38R40K70S75N87L及び19A28A30N33S38R40K69G70S75Nからなる群より選択されるI-CreIの19位、28位、30位、33位、38位、40位、69位、70位、75位及び/又は87位のアミノ酸を有し、第2モノマーが、28E30N33Y38R40K44K68S70S75N、28K30G33Y38R40S44K68R70E75N、28E30N33Y38R40K44K68R70E75N85R109T、28E30N33Y38R40K44K68R70E75N85R109T161F、28E30N32R33Y38Q40K44K68R70E75N85R109T、28S30N33Y38R40K44K68S70S75N、28S30N33Y38R40K44K68R70D75N、28S30N33Y38R40K44K68A70S75N、28K30G33Y38H40S44K68R70E75N、28K30G33Y38H40S44K68A70G75N、28K30G33Y38R40S44K68R70E75N、28K30G33Y38R40S44K68T70H75N、28K30G33Y38R40S44K68S70S75N及び28K30G33Y38R40S44K68T70S75Nからなる群より選択されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、85位、109位及び/又は161位のアミノ酸を有する請求項12、13又は16に記載の変異型。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項の1又は2つのI-CreI変異型の2つのモノマー又はコアドメイン、或いは両方の組み合わせを含む単鎖キメラメガヌクレアーゼ。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の変異型、又は請求項29の単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメント。
【請求項31】
少なくとも1つの請求項30のポリヌクレオチドフラグメントを含む発現ベクター。
【請求項32】
それぞれが請求項12及び21〜28のいずれか1項で定義されるヘテロダイマー変異型のモノマーの1つをコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む、請求項31に記載の発現ベクター。
【請求項33】
請求項1及び11〜20のいずれか1項で定義される変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含む標的化構築物を含むベクター。
【請求項34】
請求項1及び11〜20のいずれか1項で定義される変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含む標的化構築物を含む請求項31又は32に記載のベクター。
【請求項35】
導入される前記配列が、色素乾皮症遺伝子中の変異を修復する配列である請求項33又は34に記載のベクター。
【請求項36】
前記変異を修復する配列が、前記色素乾皮症遺伝子の正しい配列である請求項35に記載のベクター。
【請求項37】
前記変異を修復する配列が、変異型のゲノム切断部位の下流に、フレーム内で融合された前記色素乾皮症遺伝子のエキソンと、3'の転写を停止するポリアデニル化部位とを含む請求項35に記載のベクター。
【請求項38】
前記標的化構築物が、XPA遺伝子のエキソン1〜6における切断を修復でき、かつ34位〜233位、201位〜400位、3493位〜3692位、7627位〜7826位、9994位〜10193位、10151位〜10350位、12513位〜12712位、12531位〜12730位、21679位〜21878位、21844位〜22043位、21955位〜22154位、22228位〜22427位及び22234位〜22433位からなる群より選択されるXPA遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項39】
前記標的化構築物が、XPB遺伝子のエキソン1〜15における切断を修復でき、-40位〜159位、357位〜556位、1335位〜1534位、1336位〜1535位、1457位〜1656位、3624位〜3823位、4108位〜4307位、5015位〜5214位、5148位〜5347位、5284位〜5483位、5420位〜5619位、7377位〜7576位、13517位〜13716位、13552位〜13751位、13633位〜13832位、14697位〜14896位、14760位〜14959位、14881位〜15080位、21139位〜21338位、21207位〜21406位、22796位〜22995位、32378位〜32577位、33003位〜33202位、34481位〜34680位、34869位〜35068位、34891位〜35090位、36584位〜36783位、36634位〜36833位及び36639位〜36838位からなる群より選択されるXPB遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項40】
前記標的化構築物が、XPC遺伝子のエキソン1〜16における切断を修復でき、かつ105位〜304位、5704位〜5903位、7973位〜8172位、9887位〜10086位、10173位〜10372位、11263位〜11462位、13051位〜13250位、13432位〜13631位、18619位〜18818位、19580位〜19779位、20303位〜20502位、20349位〜20548位、20389位〜20588位、21985位〜22184位、21990位〜22189位、22028位〜22227位、22102位〜22301位、26017位〜26216位、29566位〜29765位、29726位〜29925位、30416位〜30615位、31166位〜31365位及び32317位〜32516位からなる群より選択されるXPC遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項41】
前記標的化構築物が、XPD遺伝子のエキソン1〜23における切断を修復でき、かつ-87位〜112位、812位〜1011位、1319位〜1518位、1324位〜1523位、1426位〜1625位、1717位〜1916位、1867位〜2066位、5473位〜5672位、5585位〜5784位、5637位〜5836位、5920位〜6119位、6050位〜6249位、6290位〜6489位、6392位〜6591位、6472位〜6671位、6581位〜6780位、8830位〜9029位、8943位〜9142位、12661位〜12860位、12991位〜13190位、13084位〜13283位、14614位〜14813位、14817位〜15016位、15528位〜15727位、15878位〜16077位、15936位〜16135位、17023位〜17222位、17350位〜17549位、17365位〜17564位、17572位〜17771位、18347位〜18546位、18370位〜18569位及び18641位〜18840位からなる群より選択されるXPD遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項42】
前記標的化構築物が、XPE遺伝子のエキソン1〜27における切断を修復でき、10位〜209位、1295位〜1494位、2899位〜3098位、3488位〜3687位、3616位〜3815位、6093位〜6292位、6194位〜6393位、7034位〜7233位、7653位〜7852位、8753位〜8952位、9781位〜9980位、9966位〜10165位、10511位〜10710位、10665位〜10864位、11534位〜11733位、16439位〜16638位、16667位〜16866位、18268位〜18647位、18757位〜18956位、18863位〜19062位、19179位〜19378位、19266位〜19465位、19596位〜19795位、20714位〜20913位、20938位〜21137位、21099位〜21298位、22568位〜22767位、22732位〜22931位、23173位〜23372位、23181位〜23380位、23954位〜24153位、24000位〜24199位、29205位〜29404位、29651位〜29850位、30280位〜30479位、30355位〜30554位、30661位〜30860位、30685位〜30884位、32150位〜32349位、32753位〜32592位、32770位〜32969位、32811位〜33010位、32836位〜33035位、32841位〜33040位、33230位〜33429位、33369位〜33568位及び33512位〜33711位からなる群より選択されるXPE遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項43】
前記標的化構築物が、XPF遺伝子のエキソン1〜21における切断を修復でき、かつ244位〜443位、1731位〜1930位、6429位〜6628位、6486位〜6685位、7918位〜8117位、10500位〜10699位、10676位〜10875位、11885位〜12084位、11886位〜12085位、12176位〜12375位、14073位〜14272位、14110位〜14309位、15336位〜15535位、15431位〜15630位、15574位〜15773位、17673位〜17872位、17677位〜17876位、24486位、24685位、27496位〜27695位、27822位〜28021位、27827位〜28026位及び27963位〜28162位からなる群より選択されるXPF遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項44】
前記標的化構築物が、XPG遺伝子のエキソン1〜15における切断を修復でき、158位〜357位、5956位〜6155位、7961位〜7890位、8044位〜8243位、9977位〜10176位、12201位〜12400位、12289位〜12488位、15230位〜15429位、15803位〜16002位、16041位〜16240位、16146位〜16345位、16174位〜16373位、16174位〜16373位、16394位〜16593位、16553位〜16732位、16887位〜17086位、19487位〜19686位、19727位〜19926位、19782位〜19981位、20207位〜20406位、20500位〜20699位、21890位〜22089位、22117位〜22316位、25876位〜26075位、26450位〜26649位、26832位〜27031位、27258位〜27457位、29180位〜29379位及び29456位〜29655位からなる群より選択されるXPG遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項45】
前記変異を修復する配列が、請求項38〜44のいずれか1項で定義される配列で挟まれている請求項33、34及び37のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項46】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項29に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項32及び34〜45のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発現ベクターを含む組成物。
【請求項47】
請求項34〜45のいずれか1項で定義されるような、前記変異型のゲノムDNA標的切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列に挟まれた、XP遺伝子における変異を修復する配列を含む標的化DNA構築物を含む請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記標的化DNA構築物が、組換えベクターに含まれている請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
色素乾皮症における同時、別個又は連続的な使用のための併用製剤としての、請求項31又は32に記載のベクターと、請求項32〜44のいずれか1項に記載の標的化構築物を含むベクターとを含む製品。
【請求項50】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項29に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項31、32及び34〜45のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、必要とする個体において色素乾皮症に関連する疾患を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項51】
請求項30に記載のポリヌクレオチド、又は請求項31〜45のいずれか1項に記載のベクターにより改変された宿主細胞。
【請求項52】
請求項30又は32で定義される1又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項53】
請求項30又は32で定義される1又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含むトランスジェニック植物。
【請求項54】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項29に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、請求項31〜45のいずれか1項に記載の1つのベクターの、非治療目的のゲノム工学のための使用。
【請求項55】
前記変異型、単鎖キメラメガヌクレアーゼ、ベクターが、請求項33〜45のいずれか1項で定義される標的化DNA構築物と組み合わされている請求項54に記載の使用。
【請求項1】
I-CreIの26位〜40位と44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの2つの機能的サブドメインのそれぞれに1つずつ、少なくとも2つの置換を有し、色素乾皮症遺伝子からのDNA標的配列を切断可能であり、かつ少なくとも以下の:
(a) I-CreIの26位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1系列を構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメインにおいて少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2系列を構築し、
(c) (i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、色素乾皮症遺伝子に存在するゲノムDNA標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) (i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(e) (i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(a)の第1系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) (i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられている変異I-CreI部位を切断可能な、工程(b)の第2系列からの変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、かつ(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の28位〜40位及び44位〜70位の変異を、単独の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、(c)の前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、かつ(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、前記ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモダイマーI-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせてヘテロダイマーを形成し、
(j) 色素乾皮症遺伝子からの前記DNA標的配列を切断可能な工程(i)からのヘテロダイマーを選択及び/又はスクリーニングする
工程を含む方法により得ることができることを特徴とする、I-CreI変異型。
【請求項2】
I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン中の前記置換が、44位、68位、70位、75位及び/又は77位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項3】
I-CreIの44位〜77位に位置するサブドメイン中の前記置換が、44位〜70位にある請求項1又は2に記載の変異型。
【請求項4】
I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン中の前記置換が、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位にある請求項1に記載の変異型。
【請求項5】
I-CreIの26位〜40位に位置するサブドメイン中の前記置換が、28位〜40位にある請求項1又は4に記載の変異型。
【請求項6】
前記置換が、当初のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、W、L及びVからなる群より選択されるアミノ酸での置換である請求項1〜5のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項7】
I-CreIの19位、24位、42位、69位、80位、85位、87位、109位、133位及び161位に1又は複数の置換を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項8】
75位のアスパラギン酸の非荷電アミノ酸への置換を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項9】
前記非荷電アミノ酸が、アスパラギン又はバリン残基である請求項8に記載の変異型。
【請求項10】
請求項1で定義される工程a)〜j)と、さらに、工程(i)で形成されたか又は工程(j)で得られたヘテロダイマーの少なくとも1つのモノマーに対するランダム突然変異誘発の工程と、色素乾皮症遺伝子からの前記DNA標的に対する活性が改良されたヘテロダイマーの選択及び/又はスクリーニングの工程とを含む方法により得ることができる請求項1〜9のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項11】
色素乾皮症遺伝子からのパリンドローム又は偽パリンドロームDNA標的配列を切断可能なホモダイマーである請求項1〜10のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項12】
I-CreIの26位〜40位及び44位〜77位に異なる変異を有する第1及び第2モノマーの会合により得られ、色素乾皮症遺伝子からの非パリンドロームDNA標的配列を切断できるヘテロダイマーである請求項1〜10のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項13】
前記DNA標的配列が、ヒト色素乾皮症遺伝子からである請求項1〜12のいずれか1項に記載の変異型。
【請求項14】
前記DNA標的が、配列番号45〜57の配列からなる群より選択されるヒトXPA遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項15】
前記DNA標的が、配列番号58〜86の配列からなる群より選択されるヒトXPB遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項16】
前記DNA標的が、配列番号1〜24の配列からなる群より選択されるヒトXPC遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項17】
前記DNA標的が、配列番号87〜119の配列からなる群より選択されるヒトXPD遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項18】
前記DNA標的が、配列番号120〜166の配列からなる群より選択されるヒトXPE遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項19】
前記DNA標的が、配列番号167〜188の配列からなる群より選択されるヒトXPF遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項20】
前記DNA標的が、配列番号189〜216の配列からなる群より選択されるヒトXPG遺伝子からの配列である請求項12又は13に記載の変異型。
【請求項21】
第1及び第2のモノマーが、表XXII:
【表1】
に示されるI-CreIの24位、26位、28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項14に記載の変異型。
【請求項22】
第1及び第2のモノマーが、表XXIII:
【表2】
に示されるI-CreIの24位、26位、28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項15に記載の変異型。
【請求項23】
第1及び第2のモノマーが、表XXIV:
【表3】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び/又は133位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項16に記載の変異型。
【請求項24】
第1及び第2のモノマーが、表XXV:
【表4】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項17に記載の変異型。
【請求項25】
第1及び第2のモノマーが、表XXVI:
【表5】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び/又は133位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項18に記載の変異型。
【請求項26】
第1及び第2のモノマーが、表XXVII:
【表6】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、77位及び/又は80位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項19に記載の変異型。
【請求項27】
第1及び第2のモノマーが、表XXVIII:
【表7】
に示されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、42位、44位、68位、70位、75位、77位、80位及び/又は133位のアミノ酸を有するヘテロダイマーである請求項20に記載の変異型。
【請求項28】
第1モノマーが、28K30N33S38R40S70S75N、28A30N33S38R40K70S75N、19A28A30N33S38R40K70S75N、19A28A30N33Y38R40K70S75N87L及び19A28A30N33S38R40K69G70S75Nからなる群より選択されるI-CreIの19位、28位、30位、33位、38位、40位、69位、70位、75位及び/又は87位のアミノ酸を有し、第2モノマーが、28E30N33Y38R40K44K68S70S75N、28K30G33Y38R40S44K68R70E75N、28E30N33Y38R40K44K68R70E75N85R109T、28E30N33Y38R40K44K68R70E75N85R109T161F、28E30N32R33Y38Q40K44K68R70E75N85R109T、28S30N33Y38R40K44K68S70S75N、28S30N33Y38R40K44K68R70D75N、28S30N33Y38R40K44K68A70S75N、28K30G33Y38H40S44K68R70E75N、28K30G33Y38H40S44K68A70G75N、28K30G33Y38R40S44K68R70E75N、28K30G33Y38R40S44K68T70H75N、28K30G33Y38R40S44K68S70S75N及び28K30G33Y38R40S44K68T70S75Nからなる群より選択されるI-CreIの28位、30位、33位、38位、40位、44位、68位、70位、75位、85位、109位及び/又は161位のアミノ酸を有する請求項12、13又は16に記載の変異型。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項の1又は2つのI-CreI変異型の2つのモノマー又はコアドメイン、或いは両方の組み合わせを含む単鎖キメラメガヌクレアーゼ。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の変異型、又は請求項29の単鎖キメラメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメント。
【請求項31】
少なくとも1つの請求項30のポリヌクレオチドフラグメントを含む発現ベクター。
【請求項32】
それぞれが請求項12及び21〜28のいずれか1項で定義されるヘテロダイマー変異型のモノマーの1つをコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む、請求項31に記載の発現ベクター。
【請求項33】
請求項1及び11〜20のいずれか1項で定義される変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含む標的化構築物を含むベクター。
【請求項34】
請求項1及び11〜20のいずれか1項で定義される変異型のゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列で挟まれた、導入される配列を含む標的化構築物を含む請求項31又は32に記載のベクター。
【請求項35】
導入される前記配列が、色素乾皮症遺伝子中の変異を修復する配列である請求項33又は34に記載のベクター。
【請求項36】
前記変異を修復する配列が、前記色素乾皮症遺伝子の正しい配列である請求項35に記載のベクター。
【請求項37】
前記変異を修復する配列が、変異型のゲノム切断部位の下流に、フレーム内で融合された前記色素乾皮症遺伝子のエキソンと、3'の転写を停止するポリアデニル化部位とを含む請求項35に記載のベクター。
【請求項38】
前記標的化構築物が、XPA遺伝子のエキソン1〜6における切断を修復でき、かつ34位〜233位、201位〜400位、3493位〜3692位、7627位〜7826位、9994位〜10193位、10151位〜10350位、12513位〜12712位、12531位〜12730位、21679位〜21878位、21844位〜22043位、21955位〜22154位、22228位〜22427位及び22234位〜22433位からなる群より選択されるXPA遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項39】
前記標的化構築物が、XPB遺伝子のエキソン1〜15における切断を修復でき、-40位〜159位、357位〜556位、1335位〜1534位、1336位〜1535位、1457位〜1656位、3624位〜3823位、4108位〜4307位、5015位〜5214位、5148位〜5347位、5284位〜5483位、5420位〜5619位、7377位〜7576位、13517位〜13716位、13552位〜13751位、13633位〜13832位、14697位〜14896位、14760位〜14959位、14881位〜15080位、21139位〜21338位、21207位〜21406位、22796位〜22995位、32378位〜32577位、33003位〜33202位、34481位〜34680位、34869位〜35068位、34891位〜35090位、36584位〜36783位、36634位〜36833位及び36639位〜36838位からなる群より選択されるXPB遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項40】
前記標的化構築物が、XPC遺伝子のエキソン1〜16における切断を修復でき、かつ105位〜304位、5704位〜5903位、7973位〜8172位、9887位〜10086位、10173位〜10372位、11263位〜11462位、13051位〜13250位、13432位〜13631位、18619位〜18818位、19580位〜19779位、20303位〜20502位、20349位〜20548位、20389位〜20588位、21985位〜22184位、21990位〜22189位、22028位〜22227位、22102位〜22301位、26017位〜26216位、29566位〜29765位、29726位〜29925位、30416位〜30615位、31166位〜31365位及び32317位〜32516位からなる群より選択されるXPC遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項41】
前記標的化構築物が、XPD遺伝子のエキソン1〜23における切断を修復でき、かつ-87位〜112位、812位〜1011位、1319位〜1518位、1324位〜1523位、1426位〜1625位、1717位〜1916位、1867位〜2066位、5473位〜5672位、5585位〜5784位、5637位〜5836位、5920位〜6119位、6050位〜6249位、6290位〜6489位、6392位〜6591位、6472位〜6671位、6581位〜6780位、8830位〜9029位、8943位〜9142位、12661位〜12860位、12991位〜13190位、13084位〜13283位、14614位〜14813位、14817位〜15016位、15528位〜15727位、15878位〜16077位、15936位〜16135位、17023位〜17222位、17350位〜17549位、17365位〜17564位、17572位〜17771位、18347位〜18546位、18370位〜18569位及び18641位〜18840位からなる群より選択されるXPD遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項42】
前記標的化構築物が、XPE遺伝子のエキソン1〜27における切断を修復でき、10位〜209位、1295位〜1494位、2899位〜3098位、3488位〜3687位、3616位〜3815位、6093位〜6292位、6194位〜6393位、7034位〜7233位、7653位〜7852位、8753位〜8952位、9781位〜9980位、9966位〜10165位、10511位〜10710位、10665位〜10864位、11534位〜11733位、16439位〜16638位、16667位〜16866位、18268位〜18647位、18757位〜18956位、18863位〜19062位、19179位〜19378位、19266位〜19465位、19596位〜19795位、20714位〜20913位、20938位〜21137位、21099位〜21298位、22568位〜22767位、22732位〜22931位、23173位〜23372位、23181位〜23380位、23954位〜24153位、24000位〜24199位、29205位〜29404位、29651位〜29850位、30280位〜30479位、30355位〜30554位、30661位〜30860位、30685位〜30884位、32150位〜32349位、32753位〜32592位、32770位〜32969位、32811位〜33010位、32836位〜33035位、32841位〜33040位、33230位〜33429位、33369位〜33568位及び33512位〜33711位からなる群より選択されるXPE遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項43】
前記標的化構築物が、XPF遺伝子のエキソン1〜21における切断を修復でき、かつ244位〜443位、1731位〜1930位、6429位〜6628位、6486位〜6685位、7918位〜8117位、10500位〜10699位、10676位〜10875位、11885位〜12084位、11886位〜12085位、12176位〜12375位、14073位〜14272位、14110位〜14309位、15336位〜15535位、15431位〜15630位、15574位〜15773位、17673位〜17872位、17677位〜17876位、24486位、24685位、27496位〜27695位、27822位〜28021位、27827位〜28026位及び27963位〜28162位からなる群より選択されるXPF遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項44】
前記標的化構築物が、XPG遺伝子のエキソン1〜15における切断を修復でき、158位〜357位、5956位〜6155位、7961位〜7890位、8044位〜8243位、9977位〜10176位、12201位〜12400位、12289位〜12488位、15230位〜15429位、15803位〜16002位、16041位〜16240位、16146位〜16345位、16174位〜16373位、16174位〜16373位、16394位〜16593位、16553位〜16732位、16887位〜17086位、19487位〜19686位、19727位〜19926位、19782位〜19981位、20207位〜20406位、20500位〜20699位、21890位〜22089位、22117位〜22316位、25876位〜26075位、26450位〜26649位、26832位〜27031位、27258位〜27457位、29180位〜29379位及び29456位〜29655位からなる群より選択されるXPG遺伝子の配列を含む請求項33〜36のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項45】
前記変異を修復する配列が、請求項38〜44のいずれか1項で定義される配列で挟まれている請求項33、34及び37のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項46】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項29に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項32及び34〜45のいずれか1項に記載の少なくとも1つの発現ベクターを含む組成物。
【請求項47】
請求項34〜45のいずれか1項で定義されるような、前記変異型のゲノムDNA標的切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列に挟まれた、XP遺伝子における変異を修復する配列を含む標的化DNA構築物を含む請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記標的化DNA構築物が、組換えベクターに含まれている請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
色素乾皮症における同時、別個又は連続的な使用のための併用製剤としての、請求項31又は32に記載のベクターと、請求項32〜44のいずれか1項に記載の標的化構築物を含むベクターとを含む製品。
【請求項50】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項29に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、及び/又は請求項31、32及び34〜45のいずれか1項に記載の1つの発現ベクターの、必要とする個体において色素乾皮症に関連する疾患を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項51】
請求項30に記載のポリヌクレオチド、又は請求項31〜45のいずれか1項に記載のベクターにより改変された宿主細胞。
【請求項52】
請求項30又は32で定義される1又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項53】
請求項30又は32で定義される1又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含むトランスジェニック植物。
【請求項54】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異型、請求項29に記載の1つの単鎖キメラメガヌクレアーゼ、請求項31〜45のいずれか1項に記載の1つのベクターの、非治療目的のゲノム工学のための使用。
【請求項55】
前記変異型、単鎖キメラメガヌクレアーゼ、ベクターが、請求項33〜45のいずれか1項で定義される標的化DNA構築物と組み合わされている請求項54に記載の使用。
【図2】
【図3】
【図4A−B】
【図4C】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7.1】
【図7.2】
【図7.3】
【図7.4】
【図7.5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図3】
【図4A−B】
【図4C】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7.1】
【図7.2】
【図7.3】
【図7.4】
【図7.5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2009−526521(P2009−526521A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553854(P2008−553854)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000924
【国際公開番号】WO2007/093918
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508245231)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】102,avenue Gaston Roussel,93230 ROMAINVILLE,France
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000924
【国際公開番号】WO2007/093918
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508245231)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】102,avenue Gaston Roussel,93230 ROMAINVILLE,France
【Fターム(参考)】
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