説明

色素吸着装置およびこれに用いる液溜治具、並びに光電変換素子の製造方法

【課題】色素の利用効率を向上できる色素吸着装置およびこれに用いる液溜治具、並びに光電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】色素吸着装置は、色素溶液供給部と、色素溶液吸着部とを有し、色素溶液吸着部は、光電変換素子用の光電極基材を載置するベース体と、光電極基材の表面に液溜空間を形成するカバー体とを有する液溜治具を有し、カバー体は、ベース体に載置された光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえる弾性部材を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、色素吸着装置およびこれに用いる液溜治具、並びに光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型太陽電池(DSSC)などの光電変換装置は、電解質を利用できること、原料および製造コストが安価であること、色素利用のため装飾性を有することなどの特徴があり、近年、活発な研究がなされている。一般的に、光電変換装置は、導電層が形成された基板と、半導体微粒子層(TiO2層など)と色素とを組み合わせた色素増感半導体層と、ヨウ素などの電荷輸送剤と、対極とから構成されている。
【0003】
半導体微粒子層としては、一般的に、導電層を付けた基板にナノサイズのTiO2粒子をペースト状に塗布し、これを450℃程度で焼結したものを用いる。TiO2層は、多数のナノサイズの空孔を有し、この空孔の内面にルテニウム錯体色素などの色素が吸着されている。色素吸着プロセスとしては、浸漬法、滴下法などによる色素吸着プロセスが用いられている。例えば、特許文献1では、滴下法による色素吸着プロセスが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−347136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、色素溶液量の削減を目的とした色素吸着プロセスの開発が、活発に進められている。
【0006】
本技術の目的は、色素の利用効率を向上できる色素吸着装置およびこれに用いる液溜治具、並びに光電変換素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本技術は、色素溶液供給部と、色素溶液吸着部と
を有し、色素溶液吸着部は、光電変換素子用の光電極基材を載置するベース体と、光電極基材の表面に液溜空間を形成するカバー体とを有する液溜治具を有し、カバー体は、ベース体に載置された光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえる弾性部材を有する色素吸着装置である。
【0008】
本技術は、光電変換素子用の光電極基材を載置するベース体と、ベース体に載置された光電極基材の表面に配されて、光電極基材の色素吸着領域の表面に液溜空間を形成するカバー体と、を備え、カバー体は、ベース体に載置された光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえる弾性部材を有する液溜治具である。
【0009】
本技術は、光電変換素子用の光電極基材をベース体に載置し、光電極基材の表面に、光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえるカバー体を配置して液溜空間を形成し、液溜空間に色素溶液を供給し、光電変換素子の製造方法である。
【0010】
本技術では、液溜治具により、色素吸着領域の表面に液溜空間が形成される。この液溜空間に色素溶液が供給される。色素溶液が、色素吸着領域の表面に形成された液溜空間に保持されることにより、色素の利用効率を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、色素の利用効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換装置の構成例を示す断面図である。図1Bは、図1Aに示したB−B線に沿った断面図である。
【図2】図2Aは、透明導電性基材を省略した光電変換装置の構成例を示す平面図である。図2Bは、図2Aに示したX−X線に沿った断面図である。図2Cは、図2Aに示したY−Y線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図2Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【図4】図4Aは、構造物の変形例の断面図である。図4Bは、構造物の変形例の断面図である。
【図5】図5Aは、液溜治具の構成例を示す平面図である。図5Bは、液溜治具の構成例を示す断面図である。図5Cは、液溜治具の構成例を示す断面図である。
【図6】図6は、被色素吸着体が固定された液溜治具の液溜空間に色素溶液を溜めた状態を示す断面図である。
【図7】図7Aは、液溜治具に被色素吸着体を固定した状態を示す平面図である。図7Bは、図22Aに示すQ−Q線に沿った断面図である。図7Cは、構造物が設けられていない場合のパッキンの密着状態を示す断面図である。
【図8】図8は、色素吸着装置の概要を示す模式図である。
【図9】図9は、ラックの構成例を示す略線図である。
【図10】図10は、色素吸着装置の工程図である。
【図11】図11Aは、押さえ板の構成例を示す平面図である。図11Bは、押さえ板、ベース板の断面図である。
【図12】図12Aは、液溜治具に被色素吸着体を固定した状態を示す平面図である。図12Bは、図12Aに示すQ−Q線に沿った断面図である。図12Cは、図12Aに示す線Lに沿った断面図である。
【図13】図13Aは、液溜治具の構成例を示す断面図である。図13Bは、液溜治具の構成例を示す平面図である。図13Cは、液溜治具の構成例を示す断面図である。
【図14】図14Aは、液溜治具の構成例を示す平面図である。図14Bは、液溜治具の構成例を示す平面図である。
【図15】図14は、液溜治具の構成例を示す斜視図である。
【図16】図16Aは、液溜治具の構成例を示す斜視図である。図16Bは、液溜治具の構成例を示す斜視図である。図16Cは、被色素吸着体を固定した状態の液溜治具を斜め上方から観察した場合の分解斜視図である。
【図17】図17Aは、液溜治具の構成例を示す断面図である。図17Bは、液溜治具の構成例を示す断面図である。図17Cは、液溜治具の構成例を示す斜視図である。
【図18】図18Aは、押さえ板およびベース板の固定方法の第1の例を示す断面図である。図18Bは、押さえ板およびベース板の固定方法の第2の例を示す断面図である。図18Cは、押さえ板およびベース板の固定方法の第3の例を示す断面図である。図18Dは、押さえ板およびベース板の固定方法の第3の例を示す断面図である。図18Eは、押さえ板およびベース板の固定方法の第4の例を示す断面図である。
【図19】図19Aは、色素溶液の注入方式、回収方式の第1の例を説明するための模式図である。図19Bは、色素溶液の注入方式、回収方式の第2の例を説明するための模式図である。図19Cは、色素溶液の注入方式の変形例を説明するための模式図である。
【図20】図20Aは、色素溶液の回収方式説明するための略線図である。図20Bは、色素溶液の回収方式を説明するための略線図である。
【図21】図21Aは、ラックの構成例を示す略線図である。図21Bは、色素溶液の回収方式を示す略線図である。
【図22】図22は、色素溶液回収タンクの構成例を示す略線図である。
【図23】図23は、リンス液の注入方式を示す模式図である。
【図24】図24は、リンス液注入ポジション、リンス液回収ポジション、乾燥ポジションの構成例を示す略線図である。
【図25】図25Aは、透明導電性基材を省略した光電変換装置の構成例を示す平面図である。図25Bは、図25Aに示したX−X線に沿った断面図である。図25Cは、図25Aに示したY−Y線に沿った断面図である。図25Dは、図25Aに示したZ−Z線に沿った断面図である。
【図26】図26は、図25Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【図27】図27Aは、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。図27Bは、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。図27Cは、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。
【図28】図28Aは、透明導電性基材を省略した光電変換装置の構成例を示す平面図である。図28Bは、図28Aに示したX−X線に沿った断面図である。図28Cは、図28Aに示したY−Y線に沿った断面図である。図28Dは、図28Aに示したZ−Z線に沿った断面図である。
【図29】図29は、図28Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【図30】図30は、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。
【図31】図31は、不透明構造物の効果を説明するための平面図である。
【図32】図32Aは、透明導電性基材を省略した光電変換装置の構成例を示す平面図である。図32Bは、図32Aに示した線Lに沿った断面図である。
【図33】図33は、図32Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【図34】図34は、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。
【図35】図35Aは、透明導電性基材を省略した光電変換装置の構成例を示す平面図である。図35Bは、図35Aに示した線Lに沿った断面図である。
【図36】図36は、図35Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【図37】図37は、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。
【図38】図38Aは、透明導電性基材を省略した光電変換装置の構成例を示す平面図である。図38Bは、図38Aに示した線Lに沿った断面図である。
【図39】図39は、図38Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【図40】図40は、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。
【図41】図41Aは、透明導電性基材を省略した光電変換装置の構成例を示す平面図である。図41Bは、図41Aに示した線Lに沿った断面図である。
【図42】図42は、図41Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【図43】図43は、パッキンの構成例、配置例を示す断面図である。
【図44】実施例および比較例で作製した被色素吸着体の構成例を示す平面図である。
【図45】実施例1および比較例1の測定結果を示すグラフである。
【図46】実施例1および比較例1の測定結果を示すグラフである。
【図47】実施例2−1、実施例2−2および比較例2の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施形態について図面を参照して説明する。説明は、以下の順序で行う。なお、実施形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1.第1の実施形態
(複数の集電体部間の凹部に埋設された構造物を備えた光電変換装置の一例)
2.第2の実施形態
(複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物および外側構造物を備えた光電変換装置の一例)
3.第3の実施形態
(複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物、外側構造物および不透明構造物を備えた光電変換装置の一例)
4.第4の実施形態(複数の集電体部間の凹部に埋設された構造物を備えた光電変換装置の他の例)
5.第5の実施形態
(複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物および外側構造物を備えた光電変換装置の他の例)
6.第6の実施形態
(複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物、外側構造物および不透明構造物を備えた光電変換装置の他の第1の例)
7.第7の実施形態(複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物および外側構造物と、不透明構造物とを備えた光電変換装置の他の第2の例)
8.他の実施形態(変形例)
【0014】
1.第1の実施形態
(光電変換装置の構成)
本技術の第1の実施形態による光電変換装置の構成例について説明する。図1Aは、本技術の第1の実施形態に係る光電変換装置の構成例を示す断面図である。図1Bは、図1Aに示したB−B線に沿った断面図である。図1Aおよび図1Bに示すように、この光電変換装置は、透明導電性基材1と、透明導電性基材2と、色素が担持された多孔質半導体層3と、電解質層4と、対極5と、封止材6と、構造物41と、集電体部46と、集電体端子7を備える。
【0015】
透明導電性基材1と透明導電性基材2とが対向配置されている。透明導電性基材1は、透明導電性基材2と対向する一主面を有し、この一主面に多孔質半導体層3が形成されている。透明導電性基材2は、透明導電性基材1と対向する一主面を有し、この一主面に対極5が形成されている。対向する多孔質半導体層3と対極5との間に電解質層4が介在されている。透明導電性基材1は、多孔質半導体層3が形成された一主面とは反対側の他主面を有し、例えばこの他主面が太陽光などの光Lを受光する受光面となる。
【0016】
透明導電性基材1と透明導電性基材2との対向面の周縁部に封止材6が設けられている。多孔質半導体層3と対極5との間隔は、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜40μmである。電解質層4は、多孔質半導体層3が形成された透明導電性基材1と、対極5が形成された透明導電性基材2と、封止材6とによって囲まれた空間に封入されている。
【0017】
図2Aは、透明導電性基材を省略した平面図である。図2Bは、図2Aに示すX−X線に沿った断面図である。図2Cは、図2Aに示すY−Y線に沿った断面図である。図3は、図2Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【0018】
図2Aおよび図3に示すように、透明導電性基材1上では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成された領域R1と、集電体端子7が形成された領域R3と、領域R1と領域R3と間の領域R2とが設定されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2aの内側に、構造物41が形成されている。
【0019】
図2Bに示すように、領域R1では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成されていない領域に、集電体配線である、中央で分断されたストライプ状の複数の集電体43が形成されている。集電体43と、集電体43の表面を覆う保護層45とで、中央で分断されたストライプ状の複数の集電体部46が形成されている。
【0020】
中央で分断された、ストライプ状の複数の集電体43は、周縁の上辺側のものと、周縁の下辺側のものとに分けられる。周縁の上辺側の複数の集電体43は、中央から周縁の上辺に向かって延設されると共に、列状に並設されており、周縁の上辺に沿って設けられた短冊状の集電体端子7に連接され、複数の集電体46と、短冊状の集電体端子7とで、櫛状の形状が形成されている。周縁の下辺側の集電体43は、中央から周縁の下辺に向かって延設されると共に、列状に並設されており、周縁の下辺に沿って設けられた短冊状の集電体端子7に連接され、複数の集電体46と、短冊状の集電体端子7とで、櫛状の形状が形成されている。
【0021】
図2Cに示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、集電体部46と同じ高さの構造物41が、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。これにより、領域R1と領域R3の間の領域R2には、並設された複数の集電体部の一部と、並設された複数の集電体部の一部の間に埋設された構造物41により、頂部に平坦面を有する突出部が形成されている。さらに構造物41は、色素が吸着された多孔質半導体層3の外側において、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された構造物41と、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた構造物41とにより、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部が形成されている。この矩形枠状の突出部は、色素が吸着された多孔質半導体層3を囲んで設けられている。
【0022】
なお、図2A〜図2Cおよび図3に示す構造物41の構成例は、集電体部46と同じ高さのものであるが、構造物41の構成例は、これに限定されるものではない。例えば、構造物41の高さは、集電体部46の高さとほぼ同じであってもよい。また、例えば、図4Aに示すように、構造物41は、透明導電性基材1を基準にした、集電体部46の高さより低いものであってもよく、図4Bに示すように、構造物41は、透明導電性基材1を基準にした、集電体部46の高さより高いものであってもよい。この場合、構造物41と集電体部46との高さの差dは、例えば、100μm以下であることが好ましい。100μm以下であれば、後述の色素吸着工程において、液溜空間を形成する際に、突出部に対して密着されるパッキン側で突出部の凹凸を吸収できるため、パッキンとの良好な密着性を保持できるからである。
【0023】
以下、この光電変換装置を構成する透明導電性基材1、2、多孔質半導体層3、増感色素、対極5、および電解質層4、構造物41、封止材6、集電体43について順次説明する。
【0024】
(透明導電性基材)
透明導電性基材1は、基材11と、この基材11の一主面上に形成された透明導電層12とを備え、この透明導電層12上に多孔質半導体層3が形成される。透明導電性基材2は、基材21と、この基材21の一主面上に形成された透明導電層22とを備え、この透明導電層22上に対極5が形成される。
【0025】
基材11、21としては、透明性を有するものであればよく、種々の基材を用いることができる。透明性を有する基材としては、太陽光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ないものが好ましく、例えば、ガラス基材、樹脂基材などを用いることができるが、これに限定されるものではない。ガラス基材の材料としては、例えば、石英、青板、BK7、鉛ガラスなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。樹脂基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン(PP)、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニルなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。基材11、12としては、例えば、フィルム、シート、基板などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
なお、基材21としては、透明性を有するものに特に限定されるものではなく、不透明性のものを用いることができ、例えば、不透明性を有する無機基材またはプラスチック基材等の種々の基材を用いることができる。その他、SUS基材等の金属基材等の不透明な基材を用いることも可能である。
【0027】
透明導電層12、22は、太陽光の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ないことが好ましい。透明導電層12、22の材料としては、例えば、導電性の良好な金属酸化物、炭素を用いることが好ましい。金属酸化物としては、例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープSnO2(FTO)、アンチモンドープSnO2(ATO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)、アルミニウム−亜鉛複合酸化物(AZO)、およびガリウム−亜鉛複合酸化物(GZO)からなる群より選択される1種以上を用いることができる。透明導電層22と多孔質半導体層3との間に、結着の促進、電子伝達の改善、または逆電子過程の防止などを目的とした層をさらに設けるようにしてもよい。
【0028】
(多孔質半導体層)
多孔質半導体層3は、金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層であることが好ましい。金属酸化物半導体微粒子は、チタン、亜鉛、スズおよびニオブの少なくとも1種を含む金属酸化物を含むことが好ましい。このような金属酸化物を含むことで、吸着させる色素と金属酸化物間にて適切なエネルギーバンドを形成し、その後、光照射により色素にて発生した電子が金属酸化物に円滑に伝達し、その後のヨウ素の酸化還元による発電に寄与することができるからである。具体的には、金属酸化物半導体微粒子の材料としては、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、および酸化バナジウムなどなる群より選ばれる1種以上を用いることができるが、これらの限定されるものではない。多孔質半導体層表面が増感色素によって増感されるためには、多孔質半導体層3の電導帯が増感色素の光励起順位から電子を受け取りやすい位置に存在することが好ましい。この観点からすると、上述した金属酸化物半導体微粒子の材料の中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、および酸化ニオブからなる群より選ばれる1種以上が特に好ましい。さらに、価格や環境衛生性などの観点から、酸化チタンが最も好ましい。金属酸化物半導体微粒子は、アナターゼ型またはブリュッカイト型の結晶構造を有する酸化チタンを含むことが特に好ましい。このような酸化チタンを含むことで、吸着させる色素と金属酸化物間にて適切なエネルギーバンドを形成し、その後、光照射により色素にて発生した電子が金属酸化物に円滑に伝達し、その後のヨウ素の酸化還元による発電に寄与することができるからである。金属酸化物半導体微粒子の平均一次粒子径は、5nm以上500nm以下であることが好ましい。5nm未満であると、結晶性が極端に劣化し、アナターゼ構造を維持できなくアモルファス構造となる傾向がある。一方、500nmを超えると、比表面積が著しく低下し、多孔質半導体層3に吸着させる発電に寄与する色素の総量が減少する傾向がある。ここで、平均一次粒子径は、一次粒子が分散できる溶媒系を用いて、所望な分散剤を添加して一次粒子まで分散処理した希薄溶液を用いて、光散乱法により測定する方法より求めたものである。
【0029】
(増感色素)
光電変換用の増感色素としては、増感作用を示すものであれば特に限定はないが、通常、可視光領域付近の光を吸収できる物質、例えば、ビピリジン錯体、テルピリジン錯体、メロシアニン色素、ポルフィリン、およびフタロシアニンなどが用いられる。
【0030】
単独で用いる増感色素としては、例えば、ビピリジン錯体の1種であるシス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)二テトラブチルアンモニウム錯体(通称N719)が、増感色素としての性能に優れており、一般的に用いられている。その他、ビピリジン錯体の1種であるシス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(通称:N3)や、テルピリジン錯体の1種であるトリス(イソチオシアナト)(2,2’:6’,2”−テルピリジル−4,4’,4”−トリカルボン酸)ルテニウム(II)三テトラブチルアンモニウム錯体(通称ブラックダイ)が一般的に用いられる。
【0031】
特にN3やブラックダイを用いる場合には、共吸着剤もよく用いられる。共吸着剤は多孔質半導体層3上で色素分子が会合するのを防止するために添加される分子であり、代表的な共吸着剤としては、例えば、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸塩、および1−デクリルホスホン酸などが挙げられる。これらの分子の構造的特徴としては、多孔質半導体層3を構成する酸化チタンに吸着されやすい官能基として、カルボキシル基やホスホノ基などをもつこと、および、色素分子間に介在して色素分子間の干渉を防止するために、σ結合で形成されていることなどが挙げられる。
【0032】
その他の増感色素としては、例えば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、オキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素など、およびその誘導体が挙げられるが光を吸収し多孔質半導体層3の伝導帯に励起電子を注入できる増感色素であればこれらに限定されない。これらの増感色素はその構造中に連結基を1個以上有する場合は、多孔質半導体層表面に連結することができ、光励起された増感色素の励起電子を多孔質半導体層3の電導帯に迅速に伝えることができるので望ましい。
【0033】
多孔質半導体層3の膜厚は、0.5μm以上200μm以下であることが好ましい。膜厚が0.5μm未満であると、有効な変換効率が得られなくなる傾向がある。一方、膜厚が200μmを超えると、成膜時に割れや剥がれが生じるなど作製が困難になる傾向がある。また、多孔質半導体層3の電解質層側の表面と、透明導電層12の多孔質半導体層側の表面との距離が増えるために、発生電荷が透明導電層12に有効に伝えられなくなるので、良好な変換効率が得られにくくなる傾向がある。
【0034】
(対極)
対極5は、光電変換装置(光電変換セル)の正極として機能するものである。対極5に用いる導電性の材料としては、例えば、金属、金属酸化物、または炭素などが挙げられるが、これに限定されるものではない。金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウムなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。金属酸化物としては、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)、酸化スズ(フッ素などがドープされた物を含む)、酸化亜鉛などを用いることができるが、これに限定されるものではない。対極5の膜厚は、特に制限はないが、5nm以上100μm以下であることが好ましい。
【0035】
(電解質層)
電解質層4は、電解質、媒体、および添加物から構成されることが好ましい。電解質は、I2とヨウ化物(例としてLiI、NaI、KI、CsI、MgI2、CaI2、CuI、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど)の混合物、Br2と臭化物(例としてLiBrなど)の混合物、この中でもI2とヨウ化物の組み合わせとしてLiI、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなどを混合した電解質が好ましいがこの組み合わせに限定されるものではない。
【0036】
媒体に対する電解質の濃度は、0.05〜10Mが好ましく、0.05〜5Mがより好ましく、0.2〜3Mがさらに好ましい。I2やBr2の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、0.001〜0.5Mがより好ましく、0.001〜0.3Mがさらに好ましい。また、光電変換装置の開放電圧を向上させる目的で、4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることもできる。
【0037】
電解質層4に用いられる媒体は、良好なイオン電導性を発現できる化合物であることが好ましい。溶液状の媒体としては、例えば、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジメチルスルホキシド、スルホランなど非プロトン極性物質などを用いることができる。
【0038】
また、固体状(ゲル状を含む)の媒体を用いる目的で、ポリマーを含ませることもできる。この場合、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーを前記溶液状媒体中に添加することで、エチレン性不飽和基を有した多官能性モノマーを前記溶液状媒体中で重合させて媒体を固体状にする。
【0039】
電解質層4としてはこの他、CuI、CuSCN媒体を必要としない電解質および、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)9,9’−スピロビフルオレンのような正孔輸送材料を用いることができる。
【0040】
(集電体、集電体端子)
集電体43および集電体端子7は、透明導電層よりも電気抵抗の低い材料によって形成される。集電体43および集電体端子7を構成する材料として、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、白金(Pt)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、又は、これらの金属の化合物や合金、半田などを挙げることができる。そして、これらの材料から成る導電性ペーストをスクリーン印刷法やディスペンサーなどを用いて塗布することで形成することが好ましい。必要に応じて、集電体43の全部又は一部を、導電性接着剤、導電ゴム、異方性導電接着剤などにより形成してもよい。
【0041】
(保護層)
保護層45は、電解液などを構成する電解質(例えばヨウ素)に対して耐腐食性を有する材料から構成すればよく、保護層45を設けることで、集電体43が電解質層4と接することが無くなり、逆電子移動反応や集電体の腐食を防ぐことができる。集電体45を構成する材料として、金属酸化物、TiN、WNなどの金属窒化物、低融点ガラスフリットなどのガラス、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂などの各種樹脂を挙げることができる。
【0042】
(封止材)
封止材6の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、ガラスフリットなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
(構造物)
構造物41は、例えば、色素が吸着された多孔質半導体層3と封止材6の外周との間に設けられ、1層で構成してもよく、また、2層以上であってもよい。構造物41を構成する層としては、例えば、集電体43、多孔質半導体層3および保護層43の少なくとも何れかと同様であってもよい。構造物41を構成する層の材料としては、上述した集電体43の材料、多孔質半導体層3および保護層43の材料の少なくとも何れかと同様のものを用いてもよい。コストの点から、集電体43の材料よりは、多孔質半導体層3の材料を用いることが好ましい。
【0044】
[光電変換装置の製造方法]
次に、本技術の第1の実施形態に係る光電変換装置の製造方法の一例について説明する。
【0045】
(透明導電性基材の形成)
まず、板状やフィルム状の基材11を準備する。次に、スパッタリング法などの薄膜作製技術により、透明導電層12を基材11上に形成する。これにより、透明導電性基材1が得られる。
【0046】
(集電体の形成)
次に、透明導電層上に、例えば、銀などから成る集電体43を形成する。例えば、集電体43は、集電体43の材料をペースト状にして、スクリーン印刷法などで塗布することにより、図2Aに示す形状で形成し、その後、必要に応じて乾燥、焼成を行う。構造物41が、集電体43を含む場合には、集電体45の形成と同時に、構造物41としての集電体43を、図2Aに示す形状で形成してもよい。
【0047】
(保護層の形成)
次に、集電体43を電解液から遮断し、保護するために、集電体43の表面に保護層45を形成する。これにより、集電体部46が形成される。具体的には、例えば、保護層45を形成するためのエポキシ系樹脂などをスクリーン印刷法などで塗布することにより、集電体43の表面に保護層45を形成する。例えば、エポキシ系樹脂を用いた場合、エポキシ系樹脂が十分にレベリングした後、UVスポット照射機を使用して、エポキシ系樹脂を完全に硬化させる。構造物41が、保護層45を含む場合には、保護層45の形成と同時に、図2Aに示す形状で、構造物41としての保護層45を形成してもよい。
【0048】
(多孔質半導体層の形成)
次に、透明導電性基材1の透明導電層12上に多孔質半導体層3を形成する。以下、多孔質半導体層3の形成工程の詳細について説明する。
【0049】
まず、金属酸化物半導体微粒子を溶剤中に分散させて、多孔質半導体層形成用組成物であるペーストを調製する。必要に応じて、結着剤(バインダー)を溶媒中さらに分散させるようにしもよい。ペースト作製の際には、必要に応じて、水熱合成から得られた単分散コロイド粒子を利用してもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどの炭素数が4以下の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジメチルエチルアミンなどのアミン類などが単独または2種以上混合して用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。分散方法としては、例えば、公知の方法を用いることができ、具体的には例えば、攪拌処理、超音波分散処理、ビーズ分散処理、混錬処理、ホモジナイザー処理などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0050】
次に、調製された分散液を透明導電層12上に塗布または印刷した後、乾燥させることにより、溶媒を揮発させる。これにより、多孔質半導体層3が透明導電層12上に、図2Aに示す形状で形成される。乾燥条件は特に限定されるものではなく、自然乾燥であっても、乾燥温度や乾燥時間などを調整する人工的乾燥であってもよい。人工的に乾燥させる場合には、乾燥温度や乾燥時間は、基材11の耐熱性を配慮し、基材11を変質させない範囲で設定することが好ましい。塗布または印刷の方法としては、簡便で量産性に適した方法を用いることが好ましい。塗布方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。また、印刷方法としては、例えば、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0051】
構造物41が、多孔質半導体層3を含む場合には、上記の多孔質半導体層3の形成と同時に、上記多孔質半導体層3の形成と同様にして、構造物41としての多孔質半導体層3を図2Aに示す形状で形成してもよい。
【0052】
(焼成)
次に、上述のようにして作製した多孔質半導体層3を焼成し、多孔質半導体層3における金属酸化物半導体微粒子間の電子的な接続を向上させる。焼成温度は、好ましくは40〜1000℃であり、より好ましくは40〜600℃程度であるのが、特にこの温度範囲に限定されるものではない。また、焼成時間は、好ましくは30秒間〜10時間程度であるが、特にこの時間範囲に制限されるものではない。
【0053】
(色素担持)
次に、増感色素を溶媒に溶解させて、溶液を調製する。増感色素を溶解させるために必要に応じて、加熱、溶解助剤の添加および不溶分のろ過を行ってもよい。溶媒としては、増感色素を溶解可能であり、かつ、多孔質半導体層3に色素吸着の仲立ちを行えるものであることが好ましく、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、炭酸ジエチル、炭酸プロピレンなどの炭酸エステル系溶剤、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレンなどの炭水化物系位溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチルイミダゾリノン、Nメチルピロリドン、水などを単独または2種以上混合して用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
次に、例えば、多孔質半導体層3に対して、金属酸化物微粒子に増感色素を担持させる。このとき、後述の液溜治具を用いて行う、多孔質半導体層3の表面に形成された液溜空間に、色素溶液を溜めることで、多孔質半導体層3に色素を吸着させる液溜法により、金属酸化物微粒子に増感色素を担持させてもよい。
【0055】
(液溜治具)
図5A〜図5Cを参照して、液溜法に使用する液溜治具の一例について説明する。図5Aは、液溜法に使用する液溜治具の構成部材の一例を示す略線図である。図5Bは、図5Aに示すZ−Z線に沿った断面図である。図5Cは、液溜治具の構成部材の一例を示す略線図である。図5A〜図5Cに示すように、液溜治具は、ベース板64と、ベース板64と組み合わされる押さえ板63とを有する。押さえ板63は、例えば、ベース板64の平面外形に対応した矩形枠状であり、基体61と、基体61のベース板64に合わされる側の面に設けられたパッキン62とから構成されている。
【0056】
基材載置部71に、被色素吸着体Wの基材11を配置する。例えば、被色素吸着体Wは、透明導電性基材1上に多孔質半導体層3、集電体43、保護層45、集電体端子7および構造物41が形成された、表面を有する導電性基材と上記表面に形成された多孔質半導体層を含む光電極基材である。
【0057】
図6に示すように、押さえ板63を、被色素吸着体Wを介して、ベース板64に組み合わせ、矩形枠状のパッキン62を被色素吸着体Wに密着させる。これにより、多孔質半導体層3を囲む液溜空間を形成し、この液溜空間に色素溶液72を溜めて、多孔質半導体層3に色素を吸着させる。
【0058】
このとき、図7Aに示すように、矩形枠状のパッキン62は、矩形枠状の頂部に平坦面を有する突出部に合わされる。矩形枠状の頂部に平坦面を有する突出部は、上述したように、並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された構造物41と、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた構造物41とにより形成されたものである。これにより、図7Bに示すように、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好になるため、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。よって、不要な箇所への色素付着や透明導電性基材1の裏面の色素汚れを防止することで、色素利用効率を向上できる。一方、色素担持工程で一般的に用いられている浸漬法では、被色素吸着体W全体を色素溶液に浸漬させて吸着させているため、基材11の裏面などの不要な箇所にも色素が付着してしまい色素利用効率が下がる。そのうえ、不要な箇所に付着した色素を洗浄するためのクリーニング工程が必要となる。また、後工程で、封止材6を形成する領域にも、色素が付着してしまう。これにより、シール性が悪化してしまい、電解質の漏れなどで、セルの信頼性低下や不良原因となってしまう。
【0059】
なお、構造物41を設けないようにしてもよく、この場合、図7Cに示すように、パッキン62に、色素吸着領域の周縁部の凹凸、例えば、並設された複数の集電体部46が配置された領域の凹凸に倣うように、凹凸形状を設けてもよい。これにより、例えば、パッキン62の凸部と並設された複数の46間の凹部が嵌合することにより、パッキン62と、並設された複数の46間の凹部の間に隙間がなくなり、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。このとき、パッキン62は、封止材6の形成領域と、色素が吸着される領域および封止材6が形成される領域の間の領域との少なくとも一部を覆っていればよい。
【0060】
(電解質の充填)
次に、透明導電性基材2の透明導電層22の周縁部に、封止材6としての紫外線硬化型接着剤をディスペンサにより形成した後、この紫外線硬化型接着剤を介して、透明導電性基材1を貼り合わせる。この際、多孔質半導体層3および対極5が、所定間隔、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの間隔を置いて対向配置する。これにより、透明導電性基材1と透明導電性基材2と封止材6とにより、電解質層4が充填される空間が形成される。次に、この空間に例えば透明導電性基材2に予め形成された注入口から電解質を注入し、空間内に電解質層4を充填する。その後、この注入口を塞ぐ。これにより、目的とする光電変換装置が製造される。
【0061】
(色素吸着装置を用いて製造する例)
本技術の第1の実施形態による光電変換装置は、色素吸着装置を用いて製造してもよい。以下では、色素吸着装置を用いて光電変換装置を製造する例について説明する。
【0062】
(色素吸着装置)
図8は、色素吸着装置の概要を説明するための模式図である。この色素吸着装置では、例えば、被色素吸着体Wを、基板投入ロボット101により取り出して、搬送手段111に送る。被色素吸着体Wは、前工程により、透明導電性基材1上に多孔質半導体層3、集電体43、保護層45、集電体端子7および構造物41が形成されたものである。なお、前工程としては、上述した透明導電性基材の形成、集電体の形成、保護層の形成、多孔質半導体層の形成、焼成が行われる。例えば、被色素吸着体Wは、図2Aにおいて、封止材6を省略した構成を有する。また、被色素吸着体Wは、並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された構造物41と、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた構造物41とにより形成された、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部を有する。
【0063】
被色素吸着体Wは、前工程後、図9に示すように、多段式のラック90の棚91に、複数個載置し、ラック90と共に搬送する。このラック90では、例えば、雰囲気制御可能なものとしてもよいし、ICタグなどを取り付けて、基板情報管理などがされていてもよい。
【0064】
搬送手段111では、被色素吸着体Wは、図8中の太線矢印に示す方向に沿った、以下の搬送経路で搬送する。搬送手段111は、例えば、ベルトコンベアなどである。
【0065】
搬送経路:基板セットポジションP1→治具クランプポジションP2→色素注入ポジションP3→色素吸着ポジションP4→色素溶液回収ポジションP5→1回目のリンス液注入ポジションP6→1回目のリンス液回収ポジションP7→2回目のリンス液注入ポジションP8→2回目のリンス液回収ポジションP9→3回目のリンス液注入ポジションP10→3回目のリンス液回収ポジションP11→乾燥ポジションP12→吸着量検査ポジションP13→治具アンクランプポジションP14→後工程
【0066】
搬送経路において、P1〜P14の各ポジションでは、被色素吸着体Wに対して、液溜治具固定、色素吸着、色素溶液の回収、リンス液注入、リンス液回収などの各工程を行う。その後、透明導電性基材1および透明導電性基材2の貼り合わせ、電解液注液などの後工程を行う。
【0067】
図10の工程図を参照しながら、色素吸着装置について、より詳細に説明する。なお、図10中の実線矢印は、被色素吸着体Wの移動経路を示す。鎖線矢印は、色素溶液やリンス液など溶液成分の移動経路を示し、鎖線矢印に示すように、溶液成分が移動し、色素溶液、リンス液の回収、再利用が行われる。
【0068】
前工程後、まず、被色素吸着体Wを、基板セットポジションP1、治具クランプポジションP2の順に搬送する。ステップS11において、ラック90に収納されている被色素吸着体Wを、基板投入ロボット101により、取り出した後、基板セットポジションP1に配置した液溜治具に被色素吸着体Wを配置する。その後、液溜治具に配置した被色素吸着体Wを治具クランプ固定ポジションP2に搬送する。ステップ12において、治具クランプ固定ポジションP2では、クランプにより被色素吸着体Wを液溜治具に固定する。
【0069】
(液溜治具)
液溜治具の一例について説明する。図11Aは、液溜治具の押さえ板の平面図である。図11Bは、押さえ板およびベース板の断面図である。図11Aおよび図11Bに示すように、液溜治具は、ベース板64と、ベース板64と組み合わされる押さえ板63とを有する。押さえ板63は、例えば、ベース板64の平面外形に対応した矩形状であり、基体61と、基体61のベース板64に合わされる側の面に設けられたパッキン62とから構成されている。押さえ板63は、例えば、剛性を確保するために適したSUS板と溶液接触部の腐食を防止するためのテフロン板(テフロンは登録商標)との2層で構成してもよい。パッキン62は、例えば、シリコンゴムなどの弾性材料で構成されている。基体63には、4つの矩形状の開口部67が設けられ、開口部67の周縁部に、開口部67の外周に沿って、矩形枠状のパッキン62が設けられている。なお、開口部67は、例えば、2、3または5つ以上設けるようにしてもよい。この開口部67は、例えば、ベース板64に被色素吸着体Wが載置され、被色素吸着体W上に押さえ板63配された状態において、色素が吸着される多孔質半導体層3の形成領域に対応する位置に設けられている。ベース板64に被色素吸着体Wが載置され、被色素吸着体W上に押さえ板63配された状態において、開口部67によって、液溜空間が形成されていてもよい。基体63の内部には、真空引きのための排気路69が設けられている。また、排気路69に連接された複数の吸引孔69aが、パッキン62の間に設けられている。排気路69に連接された排気弁70による排気により、排気路に連接された排気孔69aに吸引力が生じ、これにより、押さえ板63とベース板64とが固定される。
【0070】
ベース板64は、被色素吸着体Wの基材11を載置する凹状の基材載置部71を備える。基材載置部71の底面には、支柱通過孔68が設けられている。この支柱通過孔68は、液溜治具に被色素吸着体Wがセットされているかを確認するため、並びに、被色素吸着体Wを液溜治具から取り外す際の、被色素吸着体Wを押し上げるための支柱を通すために設けられている。
【0071】
図12Aに、被色素吸着体Wを液溜治具に固定した状態を示す。図12Bに、図12Aに示すQ−Q線に沿った断面図を示す。図12Cに図12Aに示す線Lに沿った断面図を示す。後述する色素吸着工程では、図12A〜図12Cに示す、被色素吸着体Wを液溜治具に固定した状態で、被色素吸着体Wを囲んで形成される液溜治具の液溜空間に色素吸着溶液を溜める。これにより、色素を多孔質半導体層3に吸着する。
【0072】
このとき、矩形枠状のパッキン62は、色素が吸着される多孔質半導体層3が形成されている領域R1と、集電体端子7が形成されている領域R3との間の領域R2に配置される。そして、図12Bおよび図12Cに示すように、構造物41による、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部に、矩形枠状のパッキン62の面が合わさる。これにより、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好になる。
【0073】
液溜治具の構成は、例えば、図13Aに示すように、押さえ板63の一辺をベース板64の一辺に軸支し、矢印方向に開閉自在にベース板64に取り付けるようにしてもよい。図13Bは、図13Aに示す液溜治具において、押さえ板をベース板に組み合わせた状態を示す。図13Bに示すように、ベース板64上に、透明導電性基材1上に田の字状に多孔質半導体層3が形成された被色素吸着体Wが配置され、押さえ板63は、被色素吸着体Wを介してベース板64に組み合わされた状態で、ベース板64の一辺に設けられたクランプ69で固定されている。なお、図示は省略するが、ベース64には、色素溶液などの溶液を排液するための排液溝が設けられていてもよい。排気溝は、色素溶液が保持される液溜空間の外周付近に設けられていてもよい。また、図13Cにおいて、矢印rに示すように、基材載置部71の周部に、被色素吸着体Wの透明導電性基材1の位置だし用のテーパ形状を設けてもよい。
【0074】
また、例えば、図14Aに示すように、図13Bに示す、透明導電性基材1上に、田の字状に配置された多孔質半導体層3は、ベース板64の長手または短手方向に対して、斜めに配置されていてもよい。図14Bに示すように、透明導電性基材1に対して、一つの平面矩形状の多孔質半導体層3を設けられたものを、液溜治具に配置してもよい。
【0075】
また、液溜治具の構成は、例えば、図15に示すように、押さえ板63を、被色素吸着体Wを介して、ベース板64に組み合わせた後、ベース板の一の対向する2辺のそれぞれの中央および両端部と、他の対向する2辺のそれぞれの中央とにも設けられたクランプ69で固定するようにしてもよい。
【0076】
(液溜治具の他の例)
液溜治具の他の例について説明する。液溜治具の他の例は、液溜治具の押さえ板63を蓋状にしたものである。図16および図16Bは、液溜治具の他の例の分解斜視図である。図16Aは、液溜治具を斜め上方から観察した場合の分解斜視図である。図16Bは、液溜治具を斜め下方から観察した場合の分解斜視図である。図16Cは、被色素吸着体を固定した状態の液溜治具を斜め上方から観察した場合の分解斜視図である。
【0077】
図16Aおよび図16Bに示すように、液溜治具は、蓋状の押さえ板63と、被色素吸着体Wの透明導電性基材1を載置するベース板64とを備える。ベース板64は、透明導電性基材1を載置する凹状の基材載置部71を備え、その底面には、4つの矩形状の開口部67を有する。基板載置部71には、多孔質半導体層3が形成された透明導電性基材1が載置される。蓋状の押さえ板63は、凹状の基材載置部71を覆うことが可能な蓋状部材である。基材載置部71に被色素吸着体Wを配置後、蓋状の押さえ板63で覆うことにより、密閉された液溜空間などの密閉空間を形成できる。これにより、色素溶液の溶剤の揮発を抑制、外部の水分の進入を抑制などが可能になる。蓋状の押さえ板63は、リンス液、色素溶液などの溶液を注入するための注入孔81と、リンス液、色素溶液などの溶液を排液するための排液孔82とを有する。排液孔82は、パッキン62が被色素吸着体Wを介して密着されることにより形成される液溜空間の周部に対応した位置に設けられていることが好ましい。また、蓋状の押さえ板63には、排気ノズル83が設けられている。なお、注入孔81および排液孔82を一つの孔で構成し、一つの孔で注液および排液を行うようにしてもよい。注入孔81を2つ以上設けてもよい。排液孔82を2つ以上設けてもよい。
【0078】
図17A〜図17Cに示すように、ベース板64に、被色素吸着体Wを載置した状態で、蓋状の押さえ板63を、被色素吸着体Wを介してベース板64に組み合わせ、蓋状の押さえ板63をベース板64に組み合わせた状態で、排気ノズル83からの真空引きにより、ベース板64と蓋状の押さえ板63とを固定することにより、液溜治具に被色素吸着体Wが固定される。クランプを設け、ベース板64と蓋状の押さえ板63とを固定するようにしてもよい。
【0079】
なお、図17A〜図17Cに示す例では、真空引きにより、蓋状の押さえ板63とベース板64とを固定したが、押さえ板63とベース板64との固定方法は、これに限定されるものではない。例えば、図18A〜図18Dに示す第1の固定例〜第4の固定例のように、押さえ板63とベース板との間に被色素吸着体Wを挟持するようにして、押さえ板63とベース板64とを固定してもよい。
【0080】
(第1の固定例)
図18Aは、押さえ板63とベース板64との第1の固定例を示す断面図である。ベース板64に被色素吸着体Wが配置され、押さえ板63により、パッキン62を介して、被色素吸着体Wが、ベース板64に押さえられる。押さえ板63のベース板64に合わされる側には、マグネット81aが設けられ、ベース板64の押さえ板に合わされる側には、マグネット81bが設けられている。このマグネットの磁力により、押さえ板63とベース板64とが、被色素吸着体Wを介して合わさった状態で固定される。
【0081】
(第2の固定例)
図18Bは、押さえ板63とベース板64との第2の固定例を示す断面図である。ベース板64に被色素吸着体Wが配置され、押さえ板63により、パッキン62を介して、被色素吸着体Wがベース板64に押さえられる。押さえ板63とベース板64との、両端のそれぞれには、ネジ孔82が設けられている。押さえ板63とベース板64とが被色素吸着体Wを介して合わさった状態で、ネジ孔82にネジ83が挿入され、ネジ締めが行われる。これにより、押さえ板63とベース板64とが、被色素吸着体Wを介して合わさった状態で固定される。
【0082】
(第3の固定例)
図18Cおよび図18Dは、押さえ板63とベース板64との第3の固定例を示す断面図である。ベース板64に被色素吸着体Wが配置され、押さえ板63により、パッキン62を介して、被色素吸着体Wがベース板64に押さえられる。押さえ板63およびベース板64は、両端部に設けられたバネなどの弾性体84により、図18Cに示す固定状態と、図18Dに示す固定解除状態との2つの状態を有する。図18Cに示す固定状態では、弾性体84の弾性力により、押さえ板63とベース板64とが被色素吸着体Wを介して合わさった状態で固定される。
【0083】
(第4の固定例)
図18Eは、押さえ板63とベース板64との第4の固定例を示す断面図である。ベース板64に被色素吸着体Wが配置され、押さえ板63によりパッキン62を介して、被色素吸着体Wがベース板63に押さえられる。押さえ板63およびベース板64は、両端部に設けられたシリンダ85により、ベース板64が上下に昇降し、ベース板64が下に降りた、押さえ板63とベース板64とが被色素吸着体Wを介して合わさった状態で固定される。
【0084】
次に、液溜治具に固定した被色素吸着体Wを、色素注入ポジションP3に搬送する。ステップS13において、色素注入ポジションP3では、液溜治具に色素溶液を注液する。これにより、多孔質半導体層3を囲む、液溜治具の液溜空間に色素溶液71が溜まる。その後、液溜治具に固定された被色素吸着体Wを、色素吸着ポジションP4に搬送し、ステップS14において、所定時間、色素の吸着を行う。色素吸着ポジションP4では、多孔質半導体層3に色素溶液71が浸透していき、多孔質半導体層3に対する色素の吸着が進行していく。
【0085】
次に、液溜治具に固定された被色素吸着体Wを、色素溶液回収ポジションP5に搬送する。ステップS15において、色素溶液回収ポジションP5では、液溜治具に残存した余剰な色素溶液を回収する。
【0086】
ここで、上述した色素注入ポジションP3および色素溶液回収ポジションP5の色素溶液注入および回収方式について説明する。図19Aは、色素溶液注入方式と、色素溶液回収方式の第1の構成例を示す模式図である。図19Bは、色素溶液注入方式と、色素溶液回収方式の第2の構成例を示す模式図である。図19Cは、色素溶液注入方式の変形例を示す模式図である。図20Aおよび図20Bは、排液の方式の例を示す模式図である。
【0087】
図19Aの例では、色素注入ポジションP3において、ノズル161から色素溶液を液溜治具に注入する。色素溶液回収ポジションP5において、ノズル162から色素溶液を液溜治具から吸い上げ回収する。このとき、図19Aに示すように、液溜治具を傾けると、液溜治具の一部に色素溶液が溜まり、色素溶液の回収が容易になる。
【0088】
図19Bの例では、色素注入ポジションP3において、ノズル161から色素溶液を液溜治具に注入する。色素溶液回収ポジションP5において、図19Bに示すように、液溜治具を傾けることにより、色素溶液を排液する。このとき、例えば、液溜治具を斜めに傾けて、図20Aに示すように、ベース板64の角部Lに設けられた、図20Bに示す溶液回収溝172に色素溶液を溜め、この排液溝にノズルを入れて吸引することで、排液するようにすると、排液の際にノズルと被色素吸着体Wの基材11との接触を防止できる。なお、回収溝172に代えて、孔状の回収孔として、この回収孔から排液してもよい。
【0089】
なお、図19Cに示すように、色素溶液を注入の際に、液溜治具を回転しながら、色素溶液を注入することにより、色素溶液を液溜治具の全体に行き渡らすようにしてもよい。これにより、色素溶液が少量でも、色素を多孔質半導体層3に均一に吸着できる。また、色素溶液の注入箇所を一箇所に固定しても、液溜治具を回転させることで、複数基板への処理が可能になる。なお、色素溶液を注入の際に、液溜治具を傾斜、振動および回転の少なくとも何れかを動作を行うようにしてもよい。
【0090】
色素注入ポジションP3から色素溶液回収ポジションP5への搬送では、例えば、図21Aに示すように、多段式のラック131の上下方向に間隔を設けて配置された複数個の棚132上に、液溜治具に配置された被色素吸着体Wを複数個配置して搬送してもよい。棚132は、傾斜機構として、液溜治具の両端部を、両端辺に沿って支持する部材である。例えば、色素溶液回収の際に、棚132は、両端辺の一端が矢印に示す方向に上昇し、棚132に支持された液溜治具が傾斜された状態になるようにしてもよい。傾斜された液溜治具の下端部に移動可能な吸引ノズル133を配置してもよい。この吸引ノズル133により、傾斜された液溜治具の下端部に溜まった色素溶液を回収するようにしてもよい。
【0091】
回収された色素溶液は、色素溶液回収部103において、成分調整した後、再利用する。色素溶液回収部103は、例えば、図22に示す回収タンクである。この回収タンクは、例えば、防爆仕様の恒温ジャケット式であり、攪拌部141と、濃度測定部142と、色素溶液入口143、色素溶液出口144とを備える。回収された色素溶液を濃度測定部により、濃度を測定し、適宜、色素、添加剤、流量制御をするための溶剤などが投入し、攪拌部141により、攪拌することにより、所定濃度に色素溶液が調整される。その後、色素溶液出口144から色素注入ポジションに送り、再利用する。
【0092】
次に、ステップS16において、1回目のリンス液注入ポジションP6に搬送し、1回目のリンス液注入ポジションP6では、液溜治具にリンス液を注入する。ステップS17において、1回目のリンス液回収ポジションP7に搬送し、1回目のリンス液回収ポジションP7では、液溜治具に注入したリンス液を回収する。1回目のリンス液注入では、例えば、矢印aに示すように、1回目のリンス液注入ポジションP6より後に搬送される2回目のリンス液回収ポジションP9で回収されたリンス液を用いてもよい。これは、1回目のリンスでは、ある程度色素が混入したリンス液を使用しても特に支障が生じないからである。
【0093】
次に、ステップS18において、2回目のリンス液注入ポジションP8に搬送し、2回目のリンス液注入ポジションP8では、液溜治具にリンス液を注入する。ステップS19において、2回目のリンス液回収ポジションP9に搬送し、2回目のリンス液回収ポジションP9では、液溜治具に注入したリンス液を回収する。2回目のリンス液注入では、例えば、矢印bに示すように、2回目のリンス液注入ポジションP8より後に搬送される、3回目のリンス液回収ポジションP11で回収されたリンス液を用いてもよい。これは、2回目のリンスでは、ある程度色素が混入したリンス液を使用しても特に支障が生じないからである。回収されたリンス液を、リンス液回収より前に行われるリンスで再使用して、リンスを複数回行うことにより、リンス液量を減少できる。
【0094】
次に、ステップS20において、3回目のリンス液注入ポジションP10に搬送し、3回目のリンス液注入ポジションP10では、液溜治具にリンス液を注入する。ステップS21において、3回目のリンス液回収ポジションP11に搬送し、3回目のリンス液回収ポジションP11では、液溜治具に注入したリンス液を回収する。3回目のリンス液注入では、リンス液注入部106から、リンス液が注入される。3回目のリンス液注入ポジションでは、ステップS17において、1回目のリンス液回収ポジションP7で回収したリンス液に対して、溶剤を追加などして再調製して再生したリンス液を使用してもよい。
【0095】
1回目のリンス回収ポジションP7で回収されたリンス液は、例えば、別に設けられたリンス液および色素溶液回収タンクなどの回収部105に回収する。その後、ステップS15−1において、回収色素溶液成分調整部103では、成分濃度の測定後、ステップS15−2において、必要に応じて、色素、添加剤、溶剤などの色素溶液成分を添加することにより、色素溶液の成分の調整を行った後、再利用されてもよい。
【0096】
リンス液注入ポジションでは、上述した色素溶液の注入方式と同様の方式を採用してもよい。また、リンス液注入ポジションでは、図23の模式図に示すように、ノズル211から、色素溶液を被色素吸着体Wにかけ流す、かけ流しの方式を採用してもよい。かけ流しの方式では、被色素吸着体Wが斜め下方向を向くように、液溜治具を保持しつつ、多孔質半導体層の上部から下部に向かって色素溶液が流れるようにする。かけ流しの方式では、一度の操作でリンスの注入および回収処理が可能になる、液溜治具の洗浄も兼ねられるなどの利点がある。
【0097】
各リンス液回収ポジションでは、例えば、図24に示すように、ノズル211から、搬送される被色素吸着体Wに注入されるリンス液が、回収槽213に回収される。
【0098】
次に、液溜治具に固定された被色素吸着体Wを、乾燥ポジションP12に搬送する。ステップS22において、乾燥ポジションP12では、被色素吸着体Wの乾燥工程を行う。被色素吸着体Wの乾燥工程は、例えば、図24に示すように、搬送中の被色素吸着体Wに対してエアフロー217などにより行う。
【0099】
次に、液溜治具に固定された被色素吸着Wを、吸着量検査ポジションP13に搬送する。ステップS23〜S24において、乾燥ポジションP13では、液溜治具から被色素吸着体Wを取り出し、多孔質半導体層に吸着した色素の吸着量の検査工程を行う。この検査工程において、所定の色素吸着量より少ない場合には、不良品と判定し、被色素吸着体Wを搬送経路から外し、所定の色素吸着量より多い場合には、良品と判定する。
【0100】
次に、良品と判定された被色素吸着体Wを、治具アンクランプポジションP14に搬送し、治具アンクランプポジションP14では、液溜治具のクランプ固定を解除する。次に、ステップS25において、搬送経路から、基板取り出しロボット102により、被色素吸着体Wを取り出し、ラックの所定位置に色素が吸着された被色素吸着体Wを配置する。このラックとしては、上述した前工程後に用いたラック90を使用してもよい。その後、この色素が吸着された被色素吸着体Wに対して、その後、例えば、電解質の充填、対向基板の貼り合わせなどの後工程を行い、光電変換装置を得る。一方、被色素吸着体Wが取り出された液溜治具は、治具クリーニングポジションP15に搬送する。ステップS26において、治具クリーニングポジションP15では、液溜治具に付着した色素汚れなどを洗浄する。洗浄した液溜治具は、ステップS11において、再び使用できる。
【0101】
[光電変換装置の動作]
次に、本技術の第1の実施形態に係る光電変換装置の動作について説明する。
光電変換装置は、透明導電性基材1の受光面に光Lが入射すると、対極5を正極、透明導電層12を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。
【0102】
基材11および透明導電層12を透過してきた光子を増感色素が吸収すると、増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。励起状態の電子は、増感色素と多孔質半導体層3との間の電気的結合を介して、多孔質半導体層3の伝導帯に引き出され、多孔質半導体層3を通って透明導電層12に到達する。
【0103】
一方、電子を失った増感色素は、電解質層4中の還元剤、例えばI-から下記の反応によって電子を受け取り、電解質層4中に酸化剤、例えばI3-(I2とI-との結合体)を生成させる。
2I-→I2+2e-
2+I-→I3-
【0104】
生成した酸化剤、例えばI3-は拡散によって対極5に到達し、例えば下記の反応(上記の反応の逆反応)によって対極6から電子を受け取り、もとの還元剤、例えばI-に還元される。
3-→I2+I-
2+2e-→2I-
【0105】
透明導電層12から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対極5に戻る。このようにして、増感色素にも電解質層4にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0106】
2.第2の実施形態
本技術の第2の実施形態による光電変換装置について説明する。図25Aは、透明導電性基材を省略した平面図である。図25Bは、図25Aに示すX−X線に沿った断面図である。図25Cは、図25Aに示すY−Y線に沿った断面図である。図25Dは、図25Aに示すZ−Z線沿った断面図である。図26は、図25Aに示す領域Rを拡大した平面図である。
【0107】
図25Aおよび図26に示すように、透明導電性基材1上では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成された領域R1と、集電体端子7が形成された領域R3と、領域R1と領域R3と間の領域R2とが設定されている。領域R2では、封止材6が形成された領域R2aの内側に、構造物41aおよび構造物41bが設けられている。
【0108】
図25Bに示すように、領域R1では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成されていない領域に、中央で分断されたストライプ状の複数の集電体部46が形成されている。
【0109】
図25Cおよび図26に示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、集電体部46と同じ高さの内側構造物41aが、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。これにより、領域R1と領域R3の間の領域R2には、並設された複数の集電体部の一部と、並設された複数の集電体部の一部の間に埋設された内側構造物41aにより、頂部に平坦面を有する突出部が形成されている。さらに内側構造物41aは、色素が吸着された多孔質半導体層3の外側において、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物41aと、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた内側構造物41aとにより、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部が形成されている。この矩形枠状の突出部は、色素が吸着された多孔質半導体層3を囲んで設けられている。
【0110】
図25Dおよび図26に示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、集電体部46と同じ高さの外側構造物41bが、内側構造物41aの外側に設けられると共に、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。これにより、領域R1と領域R3の間の領域R2には、並設された複数の集電体部の一部と、並設された複数の集電体部の一部の間に埋設された外側構造物41bにより、頂部に平坦面を有する突出部が形成されている。この突出部は、内側構造物41aによる内側の突出部の外側に形成されている。
【0111】
さらに外側構造物41bは、内側構造物41aの外側に、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された外側構造物41bと、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた外側構造物41bとにより、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部が形成されている。この矩形枠状の突出部は、内側構造物41aによる内側の矩形枠状の突出部の外側に、内側の矩形枠状の突出部を囲んで形成されている。すなわち、色素が吸着された多孔質半導体層3は、内側の矩形枠状の突出部と、外側の矩形枠状の突出部とによって2重に囲まれている。
【0112】
(光電変換装置の製造方法)
上述の光電変換装置は、第1の実施形態と同様に製造できる。色素担持工程では、第1の実施形態と同様、液溜法を用いることができる。例えば、第1の実施形態と同様の図5A〜図5Cに示す液溜治具を用いることができる。図27Aに示すように、内側構造物41a、外側構造物41bにより形成された、色素が吸着された多孔質半導体層3を2重に囲む矩形枠状の突出部の両方に、液溜治具の矩形枠状のパッキン62を密着させて、多孔質半導体層3を囲む液溜空間を形成する。その後、液溜空間に色素溶液を溜めて、多孔質半導体層3に色素を吸着させる。このとき、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好な状態になるため、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。これにより、不要な箇所への色素付着や透明導電性基材1の裏面の色素汚れを防止することで、色素利用効率を向上できる。多孔質半導体層3の外周領域にある、後工程で封止材6を形成する領域が、汚れてしまうことを抑制できる。なお、図27Bに示すように、パッキン62の形状を、内側構造物41aと、外側構造物41bとの間の凹部に嵌合する凹凸を形成してもよい。図27Cに示すように、パッキン62を2層構造として、表層に、内側構造物41aと、外側構造物41bとの間の凹部に嵌合する凹凸を形成してもよい。
【0113】
3.第3の実施形態
本技術の第3の実施形態による光電変換装置について説明する。図28Aは、透明導電性基材を省略した平面図である。図28Bは、図28Aに示すX−X線に沿った断面図である。図28Cは、図28Aに示すY−Y線に沿った断面図である。図28Dは、図28Aに示すZ−Z線に沿った断面図である。図29は、図28Aに示す領域Rを拡大した
【0114】
図28Aおよび図29に示すように、透明導電性基材1上では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成された領域R1と、集電体端子7が形成された領域R3と、領域R1と領域R3と間の領域R2が設定されている。領域R2では、封止材6が形成された領域R2aの内側に、構造物41が設けられている。
【0115】
図28Bに示すように、領域R1では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成されていない領域に、中央で分断されたストライプ状の複数の集電体部46が形成されている。
【0116】
図28Cおよび図29に示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、集電体部46と同じ高さの内側構造物41aが、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。これにより、領域R1と領域R3の間の領域R2には、並設された複数の集電体部の一部と、並設された複数の集電体部の一部の間に埋設された内側構造物41aにより、頂部に平坦面を有する突出部が形成されている。さらに内側構造物41aは、色素が吸着された多孔質半導体層3の外側において、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物41aと、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた内側構造物41aとにより、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部が形成されている。この矩形枠状の突出部は、色素が吸着された多孔質半導体層3を囲んで設けられている。
【0117】
図28Dおよび図29に示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、集電体部46と同じ高さの外側構造物41bが、内側構造物41aの外側に設けられると共に、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。これにより、領域R1と領域R3の間の領域R2には、並設された複数の集電体部の一部と、並設された複数の集電体部の一部の間に埋設された外側構造物41bにより、頂部に平坦面を有する突出部が形成されている。この突出部は、内側構造物41aによる内側の突出部の外側に形成されている。
【0118】
さらに外側構造物41bは、内側構造物41aの外側に、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された外側構造物41bと、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた外側構造物41bとにより、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部が形成されている。この矩形枠状の突出部は、内側構造物41aによる内側の矩形枠状の突出部の外側に、内側の矩形枠状の突出部を囲んで形成されている。すなわち、色素が吸着された多孔質半導体層3は、内側の矩形枠状の突出部と、外側の矩形枠状の突出部とによって2重に囲まれている。
【0119】
図28Aおよび図29に示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、不透明構造物41cが、内側構造物41aと外側構造物41bとの間に設けられると共に、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。さらに不透明構造物41cは、内側構造物41aと外側構造物41bとの間に、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。不透明構造物41cを構成する材料としては、不透明であり色素で着色される材料を用いることができる。具体的には、例えば、多孔質半導体層3に用いられる酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズや、集電体材料に用いられる銀(Ag)、アルミニウム(Al)などを用いることができる。この不透明構造物41cは、1層または2層以上で構成してもよい。不透明構造物41cを構成する層としては、多孔質半導体層3と同様であってもよい。
【0120】
(光電変換装置の製造方法)
上述の光電変換装置は、第1の実施形態と同様に製造できる。色素担持工程では、第1の実施形態と同様、液溜法を用いることができる。例えば、第1の実施形態と同様の図5A〜図5Dに示す液溜治具を用いることができる。図30に示すように、内側構造物41a、外側構造物41bにより形成された、色素が吸着された多孔質半導体層3を2重に囲む矩形枠状の突出部の両方に、液溜治具の矩形枠状のパッキン62を密着させて、多孔質半導体層3を囲む液溜空間を形成する。その後、液溜空間に色素溶液を溜めて、多孔質半導体層3に色素を吸着させる。このとき、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好な状態になるため、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。これにより、不要な箇所への色素付着や透明導電性基材1の裏面の色素汚れを防止することで、色素利用効率を向上できる。多孔質半導体層3の外周領域にある、後工程で封止材6を形成する領域が、汚れてしまうことを抑制できる。また、第3実施形態では、不透明構造物41cを備えることで、図31に示すように、色素溶液が漏れた場合には、多孔質半導体層3で構成された不透明構造物41cにより、色素130が付着するため、透明導電性基材1の周縁部の色素汚れを可視化できる。これにより、色素溶液の漏れの発見が容易となり、液漏れ箇所の検査が可能になる。その結果、セル特性および信頼性低下を防止できる。また、液漏れ原因となった液溜治具の特定が可能になる。
【0121】
4.第4の実施形態
本技術の第4の実施形態による光電変換装置について説明する。図32Aは、透明導電性基材を省略した平面図である。図32Bは、図32Aに示す線Lに沿った断面図である。図33Aは、図32Aの領域Rを拡大した平面図である。図33Bは、図33Aに示す線X−Xに沿った断面図である。
【0122】
図32Aおよび図32B、並びに図33Aおよび図33Bに示すように、透明導電性基材1上では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成された領域R1と、集電体端子7が形成された領域R3とが設定され、領域R1と領域R3と間の領域R2とが設定されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2a中に、集電体43および集電体43の表面を被覆する保護層45で構成された構造物41が形成されている。以上のこと以外は、第1の実施形態と同様である。なお、構造物41を構成する集電体43を多孔質半導体層3に代えてもよい。
【0123】
(光電変換装置の製造方法)
上述の光電変換装置は、第1の実施形態と同様に製造できる。色素担持工程では、第1の実施形態と同様、液溜法を用いることができる。例えば、第1の実施形態と同様の図5A〜図5Cに示す液溜治具を用いることができる。図34に示すように、構造物41により形成された、色素が吸着された多孔質半導体層3を囲む矩形枠状の突出部に、液溜治具の矩形枠状のパッキン62を密着させて、多孔質半導体層3を囲む液溜空間を形成する。その後、液溜空間に色素溶液を溜めて、多孔質半導体層3に色素を吸着させる。このとき、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好な状態になるため、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。これにより、不要な箇所への色素付着や透明導電性基材1の裏面の色素汚れを防止することで、色素利用効率を向上できる。多孔質半導体層3の外周領域にある、後工程で封止材6を形成する領域R2aが、汚れてしまうことを抑制できる。
【0124】
5.第5の実施形態
本技術の第5の実施形態による光電変換装置について説明する。図35Aは、透明導電性基材を省略した平面図である。図35Bは、図35Aに示す線Lに沿った断面図である。図36Aは、図35Aの領域Rを拡大した平面図である。図36Bは、図36Aに示すX1−X1線に沿った断面図である。図36Cは、図36Aに示すX2−X2線に沿った断面図である。
【0125】
図35Aおよび図35B、並びに図36A、図36Bおよび図36Cに示すように、透明導電性基材1上では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成された領域R1と、集電体端子7が形成された領域R3とが設定され、領域R1と領域R3と間の領域R2とが設定されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2a中に、集電体43および集電体43の表面を被覆する保護層45で構成された内側構造物41aが形成されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2a中に、集電体43および集電体43の表面を被覆する保護層45で構成された外側構造物41bが形成されている。以上のこと以外は、第2の実施形態と同様である。なお、構造物41を構成する集電体43を多孔質半導体層3に代えてもよい。
【0126】
(光電変換装置の製造方法)
上述の光電変換装置は、第1の実施形態と同様に製造できる。色素担持工程では、第1の実施形態と同様、液溜法を用いることができる。例えば、第1の実施形態と同様の図5A〜図5Cに示す液溜治具を用いることができる。図37に示すように、内側構造物41a、外側構造物41bにより形成された、色素が吸着された多孔質半導体層3を2重に囲む矩形枠状の突出部の両方に、液溜治具の矩形枠状のパッキン62を密着させて、多孔質半導体層3を囲む液溜空間を形成する。その後、液溜空間に色素溶液を溜めて、多孔質半導体層3に色素を吸着させる。このとき、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好な状態になるため、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。これにより、不要な箇所への色素付着や透明導電性基材1の裏面の色素汚れを防止することで、色素利用効率を向上できる。多孔質半導体層3の外周領域にある、後工程で封止材6を形成する領域が、汚れてしまうことを抑制できる。
【0127】
6.第6の実施形態
本技術の第6の実施形態による光電変換装置について説明する。図38Aは、透明導電性基材を省略した平面図である。図38Bは、図38Aに示す線Lに沿った断面図である。図39Aは、図38Aの領域Rを拡大した平面図である。図39Bは、図39Aに示すX1−X1線に沿った断面図である。図39Cは、図39Aに示すX2−X2線に沿った断面図である。
【0128】
図38Aおよび図38B、並びに図39A、図39Bおよび図39Cに示すように、透明導電性基材1上では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成された領域R1と、集電体端子7が形成された領域R3とが設定され、領域R1と領域R3と間の領域R2とが設定されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2a中に、多孔質半導体層3および多孔質半導体層3の表面を被覆する保護層45で構成された内側構造物41aが形成されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2a中に、多孔質半導体層3および多孔質半導体層3の表面を被覆する保護層45で構成された構造物41bが形成されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2a中に、多孔質半導体層3で構成された不透明構造物41cが形成されている。以上のこと以外は、第3の実施形態と同様である。なお、構造物41a、構造物41bを構成する多孔質半導体層3を集電体43に代えてもよい。
【0129】
(光電変換装置の製造方法)
上述の光電変換装置は、第1の実施形態と同様に製造できる。色素担持工程では、第1の実施形態と同様、液溜法を用いることができる。例えば、第1の実施形態と同様の図5A〜図5Cに示す液溜治具を用いることができる。図40に示すように、内側構造物41a、外側構造物41bにより形成された、色素が吸着された多孔質半導体層3を2重に囲む矩形枠状の突出部の両方に、液溜治具の矩形枠状のパッキン62を密着させて、多孔質半導体層3を囲む液溜空間を形成する。その後、液溜空間に色素溶液を溜めて、多孔質半導体層3に色素を吸着させる。このとき、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好な状態になるため、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。これにより、不要な箇所への色素付着や透明導電性基材1の裏面の色素汚れを防止することで、色素利用効率を向上できる。多孔質半導体層3の外周領域にある、後工程で封止材6を形成する領域が、汚れてしまうことを抑制できる。また、第6の実施形態では、不透明構造物41cを備えることで、色素溶液が漏れた場合には、多孔質半導体層3で構成された不透明構造物41cに、色素が付着するため、透明導電性基材1の周縁部の色素汚れを可視化できる。これにより、色素溶液の漏れの発見が容易となり、液漏れ箇所の検査が可能になる。その結果、セル特性および信頼性低下を防止できる。また、液漏れ原因となった液溜治具の特定が可能になる。
【0130】
7.第7の実施形態
本技術の第7の実施形態による光電変換装置について説明する。図41Aは、透明導電性基材を省略した平面図である。図41Bは、図41Aに示す線Lに沿った断面図である。図42Aは、図41Aの領域Rを拡大した平面図である。図42Bは、図42Aに示す線Lに沿った断面図である。
【0131】
図41Aおよび図42Aに示すように、透明導電性基材1上では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成された領域R1と、集電体端子7が形成された領域R3と、領域R1と領域R3と間の領域R2が設定されている。領域R2において、封止材6が形成された領域R2a中に、構造物41が設けられている。
【0132】
図41Bに示すように、領域R1では、色素が吸着された多孔質半導体層3が形成されていない領域に、中央で分断されたストライプ状の複数の集電体部46が形成されている。
【0133】
図41Cに示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、集電体部46と同じ高さの内側構造物41aが、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。これにより、領域R1と領域R3の間の領域R2には、並設された複数の集電体部の一部と、並設された複数の集電体部の一部の間に埋設された内側構造物41aにより、頂部に平坦面を有する突出部が形成されている。さらに内側構造物41aは、色素が吸着された多孔質半導体層3の外側において、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。並設された複数の集電体部46と、並設された複数の集電体部間の凹部に埋設された内側構造物41aと、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられた内側構造物41aとにより、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部が形成されている。この矩形枠状の突出部は、色素が吸着された多孔質半導体層3を囲んで設けられている。
【0134】
図41Aおよび図42Aに示すように、領域R1と領域R3との間の領域R2では、不透明構造物41cが、内側構造物41aの外側に設けられると共に、並設された複数の集電体部間45の凹部に埋設されている。さらに不透明構造物41cは、内側構造物41aの外側に、周縁の右辺および左辺のそれぞれに沿って設けられている。この不透明構造物41cは、多孔質半導体層3で構成してもよい。
【0135】
(光電変換装置の製造方法)
上述の光電変換装置は、第1の実施形態と同様に製造できる。色素担持工程では、第1の実施形態と同様、液溜法を用いることができる。例えば、第1の実施形態と同様の図5A〜図5Cに示す液溜治具を用いることができる。図43に示すように、内側構造物41aにより形成された、色素が吸着された多孔質半導体層3を囲む矩形枠状の突出部の両方に、液溜治具の矩形枠状のパッキン62を密着させて、多孔質半導体層3を囲む液溜空間を形成する。その後、液溜空間に色素溶液を溜めて、多孔質半導体層3に色素を吸着させる。このとき、矩形枠状の突出部とパッキン62との密着性が良好な状態になるため、液溜治具の液溜空間に溜められた色素溶液の液漏れを抑制できる。これにより、不要な箇所への色素付着や透明導電性基材1の裏面の色素汚れを防止することで、色素利用効率を向上できる。多孔質半導体層3の外周領域にある、後工程で封止材6を形成する領域が、汚れてしまうことを抑制できる。また、第7の実施形態では、不透明構造物41を備えることで、色素溶液が漏れた場合には、多孔質半導体層3で構成された不透明構造物41cにより、色素が付着するため、透明導電性基材1の周縁部の色素汚れを可視化できる。これにより、色素溶液の漏れの発見が容易となり、液漏れ箇所の検査が可能になる。その結果、セル特性および信頼性低下を防止できる。また、液漏れ原因となった液溜治具の特定が可能になる。
【実施例】
【0136】
本技術の具体的な実施例について説明する。本技術は、これに限定されるものではない。
【0137】
<実施例1>
透明導電性基材1として、FTO基板を用い、多孔質半導体層3として、多孔質酸化チタン層を作製し、多孔質酸化チタン層に吸着する色素として、ルテニウム系色素を用い、光電変換装置を作製した。
【0138】
(被色素吸着体の作製)
まず、図44に示す被色素吸着体Wを作製した。透明導電性基材1としては、基材11としてのガラス基板に、FTO層からなる透明導電層12が形成されたものを用いた。
【0139】
次に、透明導電層12上に、多孔質半導体層3としての多孔質酸化チタン層を形成した。具体的には、TiO2ペーストを調製し、このペーストを透明導電層12上に塗布し、図44に示す形状の多孔質半導体層3を得た。そして、多孔質酸化チタン層を510℃で30分間、電気炉中で焼成し、放冷した。次に、透明導電層12上に、Agからなる集電体43および集電体端子7を形成した。具体的には、透明導電層12上に銀ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、図44に示す形状を有する集電体43、集電体端子7を得た。そして、塗布した銀ペーストが十分に乾燥した後、510℃で30分間、電気炉中で焼成した。次に、集電体3を電解液から遮蔽し、保護するために、保護層44を形成した。具体的には、保護層を形成するためにエポキシ系樹脂をスクリーン印刷法で塗布し、図44に示す形状を有する保護層45を形成した。エポキシ液樹脂が十分にレベリングした後、UVスポット照射機を使用して、エポキシ系樹脂を完全に硬化させた。なお、上記の銀ペーストの塗布において、構造物41を設ける領域にも銀ペーストを塗布し、その後の乾燥、焼成も上記と同様に行った。また、上記のエポキシ系樹脂の塗布において、構造物41を設ける領域にも、エポキシ系樹脂を塗布し、その後のエポキシ系樹脂の硬化も上記と同様に行い、銀の表面がエポキシ系樹脂で覆われた、図44に示す形状の構造物41を形成した。
【0140】
(液溜法による色素吸着)
多孔質半導体層3としてのTiO2層に対して、液溜法により色素を吸着した。すなわち、被色素吸着体Wを、図5に示す液溜治具にセットした後、ルテニウム系色素を溶解したジメチルスルホキシドからなる色素溶液(10mM)を注入し、これにより、図6に示すように、液溜空間に色素溶液を溜めた。このとき、矩形枠状のパッキン63を、構造物41により形成された矩形枠状の突出部に密着させた。その後、所定時間保持した。なお、このときの色素溶液の使用量は5mlであった。
【0141】
(リンス処理)
次に、液溜治具内の色素溶液を排液した後、被色素吸着体Wを液溜治具に配置および固定した状態で、リンス処理を行った。具体的には、液溜治具に対して、リンス液の注入および排液を3回繰り返した。その後、色素が吸着された多孔質半導体層3を、エアブローにより乾燥した。リンス液としては、アセトニトリルを用いた。
【0142】
一方、基材21として、ガラス板を使用し、その基材21上に、対極5としてPt層を形成した。具体的には、ガラス板上にスパッタリングでPt層を形成した。
【0143】
次に、基材21の所定の位置に、YAGレーザを照射して、注入口を設けた。その後、図1に示す形状で、封止材6を形成した。次に、電解液を準備した。この電解液は以下のように調製した。メトキシプロピオニトリル3.0gに、ヨウ化ナトリウム0.045g、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド1.11g、ヨウ素0.11g、4−tert−ブチルピリジン0.081gを溶解させ、これにより電解液を調製した。次に、基材21に設けた注入口から電解液を注入した後、所定時間保持し、完全に電解液を透明導電性基材1と、Pt層が形成された基材21との間に浸透させた。その後、注入口の周辺の電解液を完全に除去し、注入口を紫外線硬化型樹脂で封止した。以上により、光電変換装置を作製した。
【0144】
<比較例1>
実施例1と同様にして、図44に示す被色素吸着体Wを作製した。
【0145】
(浸漬法による色素吸着)
多孔質半導体層3としての、多孔質酸化チタン層に対して、浸漬法により色素を吸着した。すなわち、被色吸着体W全体を、ルテニウム系色素を溶解したtert-ブタノール/アセトニトリル混合溶液(0.2mM)に、24時間程度浸漬させることにより、多孔質半導体層3に色素を吸着させた。なお、このときの色素溶液の使用量は500mlであった。
【0146】
次に、多孔質半導体層3をアセトニトリルでリンスした後、乾燥した。その後、封止部材の形成領域を、ジメチルスルホキシドを用いて付着した色素を除去し、再度アセトニトリルでリンス、乾燥した。その後の工程は、実施例1と同様にした。以上により、光電変換装置を作製した。
【0147】
実施例1、比較例1について、以下の評価を行った。
【0148】
(色素吸着時間評価)
吸着時間に対する色素吸着量を測定する色素吸着時間評価を行った。色素吸着量は、可視・紫外分光法により測定した。吸着時間に対する色素吸着量をプロットしたグラフを図45に示す。
【0149】
(85℃信頼性評価)
温度85℃の環境下における、規格化したEff(%)の経過時間に対する変化率を測定する85℃信頼性評価を行った。測定結果を図46に示す。なお、実施例1および比較例1について、それぞれ、2サンプルについて、評価を行った。
【0150】
図45に示すように、実施例1では、液溜法により色素吸着時間を、比較例1の浸漬法より短縮化できた。図46に示すように、実施例1では、比較例1と同等のセル特性、信頼性を得られることが確認できた。
【0151】
<実施例2−1>
実施例1と同様にして、図44に示す被色素吸着体Wを作製した。
【0152】
(液溜法による色素吸着)
多孔質半導体層3としての多孔質酸化チタン層に対して、液溜法により色素を吸着した。すなわち、被色素吸着体Wを、図5に示す液溜治具に配置および固定した後、ルテニウム系色素を溶解したジメチルスルホキシドからなる色素溶液(10mM)を注入し、これにより、図6に示すように、液溜空間に色素溶液を溜めた。このとき、矩形枠状のパッキン63を、構造物41により形成された矩形枠状の突出部に密着させた。その後、所定時間(20分程度)保持した。なお、このときの色素溶液の使用量は5mlであった。
【0153】
(リンス処理)
次に、液溜治具内の色素溶液を排液した後、被色素吸着体Wを液溜治具に配置および固定した状態で、リンス処理を行った。具体的には、液溜治具に対して、リンス液の注入および排液を3回繰り返した。その後、色素が吸着された多孔質半導体層3を、エアブローにより乾燥した。リンス液は、実施例1と同様のものを用いた。
【0154】
その後の工程は、実施例1と同様にして、光電変換装置を得た。
【0155】
<実施例2−2>
リンス工程を、液溜治具から被色素吸着体を取り外した状態で行った。以上のこと以外は、実施例2−1と同様にして光電変換装置を得た。
【0156】
<比較例2>
【0157】
実施例2−1と同様にして、図44に示す被色素吸着体Wを作製した。
【0158】
(浸漬法による色素吸着)
多孔質半導体層3としての、多孔質酸化チタン層に対して、浸漬法により色素を吸着した。すなわち、被色吸着体W全体を、ルテニウム系色素を溶解したtert-ブタノール/アセトニトリル混合溶液(0.2mM)に、40時間程度浸漬させることにより、多孔質半導体層3に色素を吸着させた。なお、このときの色素溶液の使用量は500mlであった。
【0159】
次に、多孔質半導体層3をアセトニトリルでリンスした後、乾燥した。このとき、封止部材の形成領域には、洗浄処理を施さなかった。その後の工程は、実施例1と同様にした。以上により、光電変換装置を作製した。
【0160】
(85℃信頼性試験)
実施例2−1〜実施例2−2および比較例2について、温度85℃の環境下における、規格化したEff(%)の経過時間に対する変化率を測定する85℃信頼性評価を行った。測定結果を図47に示す。なお、図47において、線dは実施例2−1についての測定結果を示すグラフであり、線eは実施例2−2についての測定結果を示すグラフであり、線fは比較例2についての測定結果を示すグラフである。
【0161】
実施例2−1では、色素吸着工程、リンス工程の両方において、液溜治具を使用しているため、封止部材の形成領域に色素付着がなく、線dに示すように、温度85℃環境下における信頼性が良好であった。実施例2−2では、リンス工程において、液溜治具を使用していないため、封止部材の形成領域に色素付着が生じ、線eに示すように、温度85℃環境下における信頼性が悪化した。一方、比較例2では、色素吸着工程、リンス工程において、液溜治具を使用していないため、封止部材の形成領域に色素付着が多量に生じ、電解液の漏れが原因となり、線fに示すように、温度85℃環境下における信頼性が非常に悪化した。
【0162】
9.他の実施形態
本技術は、上述した本技術の実施形態に限定されるものでは無く、本技術の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0163】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0164】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0165】
頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部において、平坦面はほぼ平坦な面であってもよい。ここで、ほぼ平坦な面とは、凹部の深さまたは凸部の高さが100μm以下であることをいう。
【0166】
図25Aに示す例では、多孔質半導体層3を、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部により、2重に囲む例について説明したが、多孔質半導体層3を、頂部に平坦面を有する矩形枠状の突出部により、3重以上で囲むようにしてもよい。
【0167】
また、複数の集電体部46は、中央で分断されていないストライプ状のものであってもよく、格子状のものであってもよい。
【0168】
また、上述の実施形態に係る光電変換装置(セル)を複数組み合わせてモジュールを形成するようにしてもよい。複数の光電変換装置は、電気的に直列および/または並列に接続され、例えば直列に組み合わせた場合には高い起電圧を得ることができる。
【0169】
また、本技術は以下の構成をとることもできる。
[1]
色素溶液供給部と、
色素溶液吸着部と
を有し、
上記色素溶液吸着部は、光電変換素子用の光電極基材を載置するベース体と、上記光電極基材の表面に液溜空間を形成するカバー体とを有する液溜治具を有し、
上記カバー体は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえる弾性部材を有する色素吸着装置。
[2]
上記液溜空間に溜められた色素溶液を回収する色素溶液回収部をさらに備える請求項[1]に記載の色素吸着装置。
[3]
上記色素溶液回収部により回収された上記色素溶液を調整し、調整した上記色素溶液を上記色素溶液供給部に供給する色素溶液調整部をさらに備える[2]に記載の色素吸着装置。
[4]
上記液溜空間を上記光電極基材の表面に形成している上記液溜治具に対して、傾斜、揺動、振動、および回転の少なくとも1種の駆動を行う駆動部をさらに備える[1]〜[3]の何れかに記載の色素吸着装置。
[5]
上記液溜空間にリンス液を供給するリンス液供給部と、
上記液溜空間に溜められた上記リンス液を回収するリンス液回収部と
を備え、
上記リンス液供給部および上記リンス液回収部は、リンス液の供給および回収からなるリンス処理工程を、同一の光電極基材に対してn(n:自然数)回以上行う[1]〜[4]の何れかに記載の色素吸着装置。
[6]
上記リンス液供給部および上記リンス液回収部は、n回目のリンス処理工程では、n+1回目以降のリンス処理で回収されたリンス液を用いてリンス処理を行う[5]に記載の色素吸着装置。
[7]
上記リンス工程後上記光電極基材を上記液溜治具から取り外す光電極基材取り外し部と、
上記光電極基材を取り外した液溜治具を洗浄する液溜治具洗浄部と
をさらに備え
上記液溜治具洗浄部により洗浄された液溜治具に対して再度光電極基材が載置される[1]〜[6]の何れかに記載の色素吸着装置。
[8]
上記光電極基材は、
表面を有する導電性基材と、
上記表面に形成された多孔質半導体層と
を備え、
上記色素吸着領域は、色素を吸着させる多孔質半導体層の形成領域である[1]〜[7]の何れかに記載の色素吸着装置。
[9]
上記多孔質半導体層から該多孔質半導体層の周縁部の少なくとも一部まで延在された1または2以上の集電体部をさらに備え、
上記周縁部の少なくとも一部には、上記集電体部により凹凸形状が形成され、
上記弾性部材は、上記集電体部の凹凸形状に倣う凹凸形状を有する[1]〜[8]の何れかに記載の色素吸着装置。
[10]
上記周縁部は、上記光電極基材の封止部形成領域を含み、
上記弾性部材は、上記ベース体に載置された光電極基材の封止部形成領域と、上記色素吸着領域および上記封止部形成領域の間の領域との少なくとも一部を覆う[1]〜[9]の何れかにに記載の色素吸着装置。
[11]
上記周縁部には凹凸部が設けられ、
上記弾性部材は、上記凹凸部に倣う凹凸形状を有する[1]〜[10]の何れかに記載の色素吸着装置。
[12]
上記ベース体は、光電変換素子用の光電極基材を配置するための凹部を有し、
上記凹部は、孔部または開口部が設けられた底面を有する[1]〜[11]の何れかに記載の色素吸着装置。
[13]
上記カバー体は、開口部を有する枠状体であり、
上記開口部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、上記色素吸着領域に対応する位置に設けられている[1]〜[12]の何れかに記載の色素吸着装置。
[14]
上記開口部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、上記液溜空間を形成する[13]に記載の色素吸着装置。
[15]
上記枠状体は、上記開口部を複数有し、
上記複数の開口部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、複数の上記色素吸着領域に対応する位置に設けられている[13]に記載の色素吸着装置。
[16]
上記カバー体は、上記光電極基材を覆う蓋部であり、
上記蓋部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、上記液溜空間を形成し、
上記液溜空間は、密閉空間である[1]〜[15]の何れかに記載の色素吸着装置。
[17]
上記蓋部は、
色素溶液またはリンス液を上記液溜空間に供給するための供給孔部と、
上記液溜空間に供給された色素溶液またはリンス液を回収するための回収孔部と
を有している[16]に記載の色素吸着装置。
[18]
上記蓋部は、色素溶液またはリンス液を上記液溜空間に供給するための供給孔部を有し、
上記ベース体は、上記液溜空間に供給された色素溶液またはリンス液を回収するための回収溝部または回収孔部を有している[16]に記載の色素吸着装置。
[19]
上記カバー体により上記光電極基材の表面を押さえて、上記カバー体と上記ベースとの間に上記光電極基材を挟持する挟持部をさらに備え、
上記挟持部は、真空チャック機構、クランプ機構、ネジ機構、スプリング機構、およびマグネット機構の少なくとも1種である[1]〜[18]の何れかに記載の色素吸着装置。
[20]
光電変換素子用の光電極基材を載置するベース体と、
上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に配されて、該光電極基材の色素吸着領域の表面に液溜空間を形成するカバー体と、
を備え、
上記カバー体は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえる弾性部材を有する液溜治具。
[21]
光電変換素子用の光電極基材をベース体に載置し、
上記光電極基材の表面に、上記光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえるカバー体を配置して液溜空間を形成し、
上記液溜空間に色素溶液を供給し、色素を吸着させる光電変換素子の製造方法。
【符号の説明】
【0170】
1、2 透明導電性基材
3 多孔質半導体層
4 電解質層
5 対極
6 封止材
11、21 基材
12、22 透明導電層
41 構造物
41a 内側構造物
41b 外側構造物
41c 不透明構造物
43 集電体
45 保護層
61 基体
62 パッキン
63 押さえ板
64 ベース板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素溶液供給部と、
色素溶液吸着部と
を有し、
上記色素溶液吸着部は、光電変換素子用の光電極基材を載置するベース体と、上記光電極基材の表面に液溜空間を形成するカバー体とを有する液溜治具を有し、
上記カバー体は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえる弾性部材を有する色素吸着装置。
【請求項2】
上記液溜空間に溜められた色素溶液を回収する色素溶液回収部をさらに備える請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項3】
上記色素溶液回収部により回収された上記色素溶液を調整し、調整した上記色素溶液を上記色素溶液供給部に供給する色素溶液調整部をさらに備える請求項2に記載の色素吸着装置。
【請求項4】
上記液溜空間を上記光電極基材の表面に形成している上記液溜治具に対して、傾斜、揺動、振動、および回転の少なくとも1種の駆動を行う駆動部をさらに備える請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項5】
上記液溜空間にリンス液を供給するリンス液供給部と、
上記液溜空間に溜められた上記リンス液を回収するリンス液回収部と
を備え、
上記リンス液供給部および上記リンス液回収部は、リンス液の供給および回収からなるリンス処理工程を、同一の光電極基材に対してn(n:自然数)回以上行う請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項6】
上記リンス液供給部および上記リンス液回収部は、n回目のリンス処理工程では、n+1回目以降のリンス処理で回収されたリンス液を用いてリンス処理を行う請求項5に記載の色素吸着装置。
【請求項7】
上記リンス工程後上記光電極基材を上記液溜治具から取り外す光電極基材取り外し部と、
上記光電極基材を取り外した液溜治具を洗浄する液溜治具洗浄部と
をさらに備え
上記液溜治具洗浄部により洗浄された液溜治具に対して再度光電極基材が載置される請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項8】
上記光電極基材は、
表面を有する導電性基材と、
上記表面に形成された多孔質半導体層と
を備え、
上記色素吸着領域は、色素を吸着させる多孔質半導体層の形成領域である請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項9】
上記多孔質半導体層から該多孔質半導体層の周縁部の少なくとも一部まで延在された1または2以上の集電体部をさらに備え、
上記周縁部の少なくとも一部には、上記集電体部により凹凸形状が形成され、
上記弾性部材は、上記集電体部の凹凸形状に倣う凹凸形状を有する請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項10】
上記周縁部は、上記光電極基材の封止部形成領域を含み、
上記弾性部材は、上記ベース体に載置された光電極基材の封止部形成領域と、上記色素吸着領域および上記封止部形成領域の間の領域との少なくとも一部を覆う請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項11】
上記周縁部には凹凸部が設けられ、
上記弾性部材は、上記凹凸部に倣う凹凸形状を有する請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項12】
上記ベース体は、光電変換素子用の光電極基材を配置するための凹部を有し、
上記凹部は、孔部または開口部が設けられた底面を有する請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項13】
上記カバー体は、開口部を有する枠状体であり、
上記開口部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、上記色素吸着領域に対応する位置に設けられている請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項14】
上記開口部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、上記液溜空間を形成する請求項13に記載の色素吸着装置。
【請求項15】
上記枠状体は、上記開口部を複数有し、
上記複数の開口部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、複数の上記色素吸着領域に対応する位置に設けられている請求項13に記載の色素吸着装置。
【請求項16】
上記カバー体は、上記光電極基材を覆う蓋部であり、
上記蓋部は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に上記カバー体を配した状態において、上記液溜空間を形成し、
上記液溜空間は、密閉空間である請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項17】
上記蓋部は、
色素溶液またはリンス液を上記液溜空間に供給するための供給孔部と、
上記液溜空間に供給された色素溶液またはリンス液を回収するための回収孔部と
を有している請求項16に記載の色素吸着装置。
【請求項18】
上記蓋部は、色素溶液またはリンス液を上記液溜空間に供給するための供給孔部を有し、
上記ベース体は、上記液溜空間に供給された色素溶液またはリンス液を回収するための回収溝部または回収孔部を有している請求項16に記載の色素吸着装置。
【請求項19】
上記カバー体により上記光電極基材の表面を押さえて、上記カバー体と上記ベースとの間に上記光電極基材を挟持する挟持部をさらに備え、
上記挟持部は、真空チャック機構、クランプ機構、ネジ機構、スプリング機構、およびマグネット機構の少なくとも1種である請求項1に記載の色素吸着装置。
【請求項20】
光電変換素子用の光電極基材を載置するベース体と、
上記ベース体に載置された上記光電極基材の表面に配されて、該光電極基材の色素吸着領域の表面に液溜空間を形成するカバー体と、
を備え、
上記カバー体は、上記ベース体に載置された上記光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえる弾性部材を有する液溜治具。
【請求項21】
光電変換素子用の光電極基材をベース体に載置し、
上記光電極基材の表面に、上記光電極基材の色素吸着領域の周縁部を押さえるカバー体を配置して液溜空間を形成し、
上記液溜空間に色素溶液を供給し、色素を吸着させる光電変換素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate


【公開番号】特開2013−8596(P2013−8596A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141150(P2011−141150)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】