説明

色素増感型光起電装置

本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された金属酸化物半導体からなる電子受容体物質、酸化還元メディエータ物質、式(I):[X]m-コア]([[Y]p]([デンドロン])nにおいてn、m、p、デンドロン、X及びYが規定されたデンドリマーからなる感光色素とを備える色素増感型光起電装置を提供する。更に本発明は、式(I)のデンドリマーである感光色素及び、色素増感型光起電装置において感光色素として式(T)のデンドリマーである化合物を使用することを提案する。式(T)の新規なデンドリマーもまた提案されている。また、新規なカテコール基化合物を提案している。カテコール基化合物は光起電装置における感光色素として、式(T)のデンドリマーと共に使用してもよい。このように、本発明は感光色素とカテコール化合物を備えた色素増感型光起電装置を提供し、更に色素増感型光起電装置においてカテコール化合物を感光色素として使用することを提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの電極間に、金属酸化物半導体、感光色素、及び酸化還元メディエータ物質からなる電子受容体物質を有する色素増感型光起電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ構造のTiO色素増感太陽電池(DSSCs)は、有望な再生可能なエネルギー源として、過去10年で精力的に調査されている。そのようなDSSCsにおいて、色素増感剤は、高い太陽光−電気エネルギー変換効率のための重要な構成要素の一つである。このように、大電力変換効率を有する光起電増感剤の開発において多大な努力がなされている。これまで、アンカー基を備えた単純なヘテロレプティックRu(II)錯体は、標準的なAM1.5の太陽光において11%以上の電力変換効率を達成している。これらの効率は、例えば、アモルファスシリコン薄膜、テルル化カドミウム、セレン化銅インジウムガリウムなどの他の競合する「低コスト媒体効率」技術のものを上回るが、まだ、標準的な高効率の多結晶シリコン電池又は単結晶シリコン電池(15−22%)、或いは特に新しい高効率のガリウムヒ素(>30%)に基づく化合物半導体技術には匹敵できていない。Ru錯体の他に、メタルフリー有機色素もまたDSSCsにおいて活用されており、AM1.5Gの照射の下で、9%以上の電力交換効率を現時点で達成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの単純構造化されたRu(II)錯体及び有機小分子は、当初は、高い電力変換効率を観測することができるものの、そのような化合物からなる装置は長期の光照射、揮発性電解液の蒸発、又は漏れ及び熱応力の下で、乏しい装置安定性を示すため、商用の屋外デバイスアプリケーションを十分に満たしていない。実際の屋外デバイスアプリケーションでは、高温(例えば、約80℃)での長期の装置安定性は、高い光電交換効率に加えて必須条件である。したがって、高い変換効率を提供するだけでなく、長期的な装置安定性を促進する高性能DSSC増感剤を提供することが引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、特定の樹枝状光電子材料がDSSCsの色素増感剤として使用することができ、良い電力変換効率を備え、且つ装置安定性の向上に適していることを見出している。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、デンドリマーの分岐構造は、分子間相互作用を減少させると共に色素の凝縮を最小限にすることによって装置性能の向上を生じさせると考えられる。さらに、樹枝状増感剤の疎水性は、金属酸化物に対する酸化還元メディエータ物質(例えば、電解液)の浸透を妨げ、これによって、(a)金属酸化物表面からの増感剤の脱着を減少させ又は防止し、(b)金属酸化物伝導帯から酸化還元メディエータ物質への逆電子移動を抑制すると考えられる。樹枝状増感剤は、樹枝状構造の剛性のおかげで優れた熱安定性及び機械的強度を示す。そのうえ、これらの物質は色素増感剤のπ共役長を伸ばす構成要素から合成され、集光能力を向上させてもよい。
【0005】
そこで、一態様によれば、本発明は、
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された(a)金属酸化物半導体からなる電子受容体物質、(b)酸化還元メディエータ物質、(c)式(I)のデンドリマーからなる感光色素とを備える色素増感型光起電装置であって、

[X]m-コア]([[Y]p)([デンドロン])n (I)

式中、
nは、1から6までの整数であり、
mは、1から6までの整数であり、
各pは、0又は1から5までの整数のいずれかであり、
コアは、非ポリマー性有機基、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を有し、前記(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合しており、
各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Y]は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外、且つ(b)前記金属酸化物半導体に結合されたアンカー基であることを特徴とする色素増感型光起電装置を提供する。
【0006】
別の態様によれば、本発明は、化合物が式(I)のデンドリマーであり、

[X]m-コア]([[Y]p)([デンドロン])n (I)

式中、
nは、1から6までの整数であり、
mは、1から6までの整数であり、
各pは、0又は1から5までの整数のいずれかであり、
コアは、非ポリマー性有機基、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を有し、前記(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合しており、
各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Y]は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外であり、且つ(b)金属酸化物半導体へ結合することができるアンカー基である感光色素が使用されている色素増感型光起電装置を提供する。
【0007】
別の態様によれば、本発明は、上に定義された式(I)のデンドリマーからなる感光色素が使用されている色素増感型光起電装置を提供する。
【0008】
別の態様によれば、本発明は、化合物が式(I)のデンドリマーであり、

[X]m-コア]([[Y]p)([デンドロン])n (I)

式中、
nは、1から6までの整数であり、
mは、1から6までの整数であり、
各pは、0又は1から5までの整数のいずれかであり、
コアは、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を有し、前記(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合しており、
各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Y]は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外であり、且つ(b)金属酸化物半導体へ結合することができるアンカー基であることを特徴とする化合物を提供する。
【0009】
さらに、本発明では、その他、非樹枝状の色素増感剤化合物が色素増感型光起電装置で式(I)のデンドリマー増感剤化合物と一緒に使用することができることを見出している。特に、本発明は、式(I)のデンドリマー増感剤と一緒に使用することができるカテコールベースの増感剤の新規なクラスを提供する。
【0010】
そこで、別の態様によれば、本発明は、式(VII)の化合物であり、
【化1】

式中、
R’は、H又はCNであり、
wは、2から5までの整数であり、
R”は、H、非置換又は置換C1−15アルキル、又はデンドロンであり、該デンドロンは、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されることを特徴とする化合物を提供する。
【0011】
本発明は更に、上に定義された式(VII)の化合物からなる感光色素を提供する。
【0012】
本発明は更に、色素増感型光起電装置の感光色素として用いられる、上に定義された式(VII)の化合物を提供する。
【0013】
本発明は更に、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された(a)金属酸化物半導体を含む電子受容体物質、(b)酸化還元メディエータ物質、(c)上述の式(VII)の化合物からなる感光色素とを備える色素増感型光起電装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の色素増感剤化合物A−22の化学構造を示す図である。
【図2】本発明の色素増感剤化合物A−67の化学構造を示す図である。
【図3】本発明の色素増感剤化合物A−68の化学構造を示す図である。
【図4】波長λmax[nm](y軸)に対するDMF中の色素増感剤の濃度[×10−5mol/L]を示すグラフである。プロットは、樹枝状のRu増感剤(最上部の3線)と同様に、単純なRu増感剤N3及びA−29(下部の2線)をも示している。
【図5】Ru増感剤化合物N3、A−29、A−22、A−67及びA−68の重量損失[%](y軸)に対する温度[℃](x軸)を示すグラフである。示された曲線は、化合物の各々について測定されたTGA曲線である。
【図6】電流密度[mA/cm](y軸)に対して、印加されたバイアス電圧[V](x軸)を示すグラフであり、スペクトルミスマッチ機能を含む補正を備えた標準AM1.5G照射の下で、樹枝状のRu増感剤A−22による装置性能を示している。
【図7】吸着色素から色素増感太陽電池(DSSC)における、2つの異なるタイプのTiOへの電子入射経路のエネルギーダイアグラムである。経路(a)は、電子が色素(例えば、Ru(II)錯体)の励起状態からTiOの伝導帯に入射されるグレッツェル型DSSCの2段階電子入射を示している。経路(b)は、色素からTiOへのCT(DTCT)帯の光誘起された電荷移動(CT)励起による、色素の基底状態からTiOの伝導帯への1段階電子入射を示している。
【図8】カテコールDTCT色素増感剤A−78、A−103及びA−115のための合成ルートを概略的に示す図である。
【図9】波長光365nmの照射下で、カテコールA−78、A−103、A−115を吸着したSiO(TLC)及びTiO基板の写真を示す図である。
【図10】基板の浸漬時間[h](x軸)に対するTiO基板上に吸着されたカテコール色素分子の数[N/cm](y軸)を示すグラフである。A−78(24時間に吸着された分子の最低数)、A−103(24時間に吸着された分子の最高数)、及びA−115(24時間に吸着された分子の中間数)の3つの色素について、結果として示している。
【図11】A−115色素溶液の吸光度(左側のy軸)及びTiO基板上に吸着された色素分子の数[N/cm](右側のy軸)に対する、浸漬時間[h](x軸)を示すグラフである。
【図12】MeOH浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、TiO基板へのカテコール色素A−78の吸着によるものであるのに対し、小さなピーク(折り込みグラフ参照)の増加は、N3の同時の脱着によるものである。
【図13】樹枝状のRu色素増感剤(“タイプ1”、例えばA−22、A−67又はA−68)の共吸着、及びTiO基板の上に添加された色素増感剤(“タイプ2”又は“タイプ3”)を示す概略図である。添加される色素増感剤は、単純なRu色素増感剤(“タイプ2”、例えばN3又はA−29)、或いはカテコールDTCT色素増感剤(“タイプ3”、例えばA−78、A−103又はA−115)であってもよい。
【図14】MeOH浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、TiO基板へのカテコール色素A−78の吸着によるものであるのに対し、小さなピーク(折り込みグラフ参照)の増加は、A−29の同時の脱着によるものである。
【図15】MeOH浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、TiO基板へのカテコール色素A−78の吸着によるものである。折り込みグラフは、時間[h](x軸)に対する吸光度550nm(デンドリマーA−22に起因)(y軸)を示すグラフである。A―22の脱着は観察されなかった。
【図16】MeOH浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、TiO基板へのカテコール色素A−78の吸着によるものである。折り込みグラフは、時間[h](x軸)に対する吸光度552nm(デンドリマーA−67に起因)(y軸)を示すグラフである。A―67の脱着は観察されなかった。
【図17】時間[h](x軸)に対するTiO上に吸着されたA−78分子の数[N/cm](y軸)を示すグラフである。最上部の曲線は裸のTiO基板の上への吸着を示しており、中央の曲線はA−67が吸着されたTiO基板の上への吸着を示しており、下部の曲線はA−22が吸着されたTiO基板の上への吸着を示している。
【図18】MeOH浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、TiO基板へのカテコール色素A−115の吸着によるものである。折り込みグラフは、時間[h](x軸)に対する吸光度550nm(デンドリマーA−22に起因)(y軸)を示すグラフであり、A―22の非常にわずかな脱着が観察された。
【図19】MeOH浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、TiO基板へのカテコール色素A−115の吸着によるものである。折り込みグラフは、時間[h](x軸)に対する吸光度552nm(デンドリマーA−67に起因)(y軸)を示すグラフであり、A―67の脱着は観察されなかった。
【図20】時間[h](x軸)に対するTiO上に吸着されたA−115分子の数[N/cm](y軸)を示すグラフである。最上部の曲線は裸のTiO基板の上への吸着を示しており、中央の曲線はA−67が吸着されたTiO基板の上への吸着を示しており、下部の曲線はA−22が吸着されたTiO基板の上への吸着を示している。
【図21】浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、A−22が吸着されたTiO基板の上へのN3色素の吸着によるものである。
【図22】浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、A−67が吸着されたTiO基板の上へのN3色素の吸着によるものである。
【図23】浸漬溶液の吸光度(y軸)に対する波長[nm](x軸)を示すグラフである。経時的な大きなピークの減少は、A−68が吸着されたTiO基板の上へのN3色素の吸着によるものである。
【図24】TiO上に吸着された色素分子の数[×1015/cm](y軸)を示す棒グラフであって、(a)裸のTiO基板の上へ吸着されるA−78(左側の棒)、(b)A−22が吸着されたTiO基板の上へ吸着されるA−78(中央の棒)、(c)A−67が吸着されたTiO基板の上へ吸着されるA−78(右側の棒)を示している。
【図25】TiO上に吸着された色素分子の数[×1015/cm](y軸)を示すバーグラフであって、(a)裸のTiO基板の上へ吸着されるA−115(左側のバー)、(b)A−22が吸着されたTiO基板の上へ吸着されるA−115(中央のバー)、(c)A−67が吸着されたTiO基板の上へ吸着されるA−115(右側のバー)を示している。
【図26】TiO上に吸着された色素分子の数[×1015/cm](y軸)のバーグラフであって、(a)裸のTiO基板の上へ吸着されるN3(左側のバー)、(b)A−22が吸着されたTiO基板の上へ吸着されるN3(左から二番目のバー)、(c)A−67が吸着されたTiO基板の上へ吸着されるN3(右から二番目のバー)、(d)A−68が吸着されたTiO基板の上へ吸着されるN3(右側のバー)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る色素増感型光起電装置は、電子受容体物質、感光色素及び酸化還元メディエータ物質からなっており、これらは全て第1電極と第2電極との間に配置されている。第1及び第2電極は、陽極及び陰極であり、電極の一方又は双方は透明であり、光が侵入可能である。電子受容体物質は、金属酸化物半導体からなる。色素増感型光起電装置は、典型的には、色素増感太陽電池(DSSC)である。
【0016】
電子受容体物質は、任意のn型或いは電子を伝達する金属酸化物半導体であってもよい。電子受容体物質は、典型的には、前記金属酸化物半導体の膜又は層からなる。通常、金属酸化物膜は、一方の電極の表面に配置される。金属酸化物膜が配置されている電極は、典型的には、透明なインジウムスズ酸化物(ITO)、Fドープ酸化スズ、又はFドープインジウムスズ酸化物(F−ITO)作用電極である。金属酸化物半導体は、通常、dブロック金属の酸化物又はfブロック金属の酸化物、或いは第3主族の元素の酸化物である。金属酸化物半導体は、典型的には、通常、dブロック金属の酸化物である。より典型的には、金属酸化物半導体は、チタニアである。チタニアは、メソ多孔性チタニアであってもよい。色素増感太陽電池におけるメソ多孔性チタニア膜の使用は、酸化還元メディエータ物質との良い接触を維持している間、感光色素により、集光性の断面積を増加させる。電子受容体物質は、典型的には、多孔性チタニアからなる。本明細書では、「多孔性チタニア」とは、高密度又は「固体」チタニアとは対照的に、メソ多孔性チタニア又はナノ多孔性チタニアを意味する。メソ多孔性及びナノ多孔性チタニアは、ナノメートルスケールの直径を有する孔を含んでおり、例えば、K.M Coakley等、Chem.Mater.(2004)16、p4533―4542に記載されているように、チタニアナノ結晶とともに焼結することにより合成的に形成することができる。そのようなナノ多孔性チタニアの層は、ドクターブレードコーティング技術、又は他の液体コーティング塗布技術を用いて配置することができる。例えば、スピンコーティング、浸漬被覆、スクリーン印刷及びインクジェット印刷などがあり、これらすべては当業者に周知の技術である。ナノ多孔性チタニア(TiO)の使用は、特に有利であることが示されている。本明細書では、「ナノ結晶」とは、金属酸化物半導体、特に、数nm(例えば、10から50nm)オーダーの精度で多結晶形となるTiOを意味する。金属酸化物半導体は、明確な孔形状又は細孔形状で構造化又は鋳型化されていてもよい。一実施形態では、電子受容体物質は、金属ポストに配置された金属酸化物半導体からなる。金属酸化物半導体は、典型的には、チタニアである。或いは、金属酸化物半導体は、広いバンドギャップ(例えば酸化亜鉛)を有する別の金属酸化物でもあってもよい。
【0017】
酸化還元メディエータ物質は、酸化された増感剤への電子供与によって、その基底状態に酸化された増感剤を戻すことができる適切な任意の物質でよい。したがって、酸化還元メディエータ物質は、任意の適切な電解質、ホール輸送材料、又はイオン輸送材料としてもよい。酸化還元メディエータ物質は、固相、液相又は気相であってもよい。しかしながら、より通常的には、酸化還元メディエータ物質は、固相又は液相である。
【0018】
酸化還元メディエータ物質は、典型的には、電解質である。電解質は、液体電解質、ゲル電解質又は高分子電解質であってもよい。適切な電解質の中には、少なくとも一つの電気化学的な活性塩の混合物からなる酸化還元系と、前記塩のアニオン又はカチオンで酸化還元系を作るように設計された少なくとも一つの分子とが含まれている。電解質の電気化学的な前記活性塩は、典型的には、周囲温度以下の融点を有するか、或いは周囲温度以下の融点を有する相を前述の分子で形成している。このように、電解質は、典型的には、イオン液体電解質である。そのような電解質は、特許文献1(欧州特許第0737358号明細書)に記載されている。或いは、電解質は、準固体電解質(例えば、ゲル)であってもよい。そのような電解質は、特許文献2(欧州特許第1087412号明細書)に記載されている。電解質は、典型的には、酸化還元対としてヨウ化物/三ヨウ化物(I/I)からなる。より典型的には、電解質は、酸化還元対としてヨウ化物/三ヨウ化物(I/I)からなるイオン液体である。
【0019】
一実施形態では、酸化還元メディエータ物質はホール輸送材料である。典型的には、ホール輸送材料は中性である。典型的には、ホール輸送材料は固体状態にある。しかしながら、液体及びガス(特に液体)のホール輸送材料もまた想定される。ホール輸送材料は、任意の適切なp型、又はホールを輸送する半導体物質であってもよい。それは、無機でも有機でもよく、共役高分子又は小分子であってもよい。適切なホール輸送材料は、OLEDs(有機発光ダイオード)において使用されるものを含んでおり、そのようなホール輸送材料は、広範囲に亘って当業者によく知られている。
【0020】
一実施形態では、ホール輸送材料はデンドリマーからなる。デンドリマーは、典型的には、液処理可能である。デンドリマーは、具体的には、感光色素と相補的に設計される一つ以上の表面基からなる。
【0021】
本発明における光起電装置の第1及び第2電極の選択は、構造型に依存してもよい。金属酸化物半導体は、典型的には、インジウムスズ酸化物(ITO)上、より典型的には透明な材料であるFドープITO上に配置される。このように、第1電極は、通常、透明であり、典型的にはITOからなる。より典型的には、第1電極は、FドープITOからなる。しかしながら、例えばPANI(ポリアニリン)又はPEDOTのような透明な導電性高分子もまた使用することもできる。通常、第2電極は、例えば、金、銀、ニッケル、パラジウム又はプラチナのような高い仕事関数の金属からなり、典型的には白金からなる。通常、金属は、必要に応じてスパッタ法又は蒸着によって導電性基板(例えば導電性ガラス)上に配置される。このように、第2電極(又は、対電極)は、より典型的には、プラチナスタッパされた導電性ガラス電極である。高い仕事関数の金属は、標準的な手法と材料を用いた溶液から設けられてもよいし、多孔性、又は電荷交換のために総表面積を増加させるべく構築してもよい。
【0022】
金属酸化物層は、感光色素又は色素増感剤として既知の、少なくとも一つの発色材料によって感作されている。感作の一つの方法は、感光色素が光子を吸収して励起状態を引き起こすものであり、励起状態では金属酸化物半導体(通常、TiO)の伝導帯へ効率的に電子を移動させる。酸化された増感剤は、例えば、電解質におけるヨウ化物/三ヨウ化物酸化還元対のような酸化還元メディエータ物質から、電子供与によって、その後蓄積される。入射された電子は、半導体ネットワークを通って流れ背後電極に到達し、その後、外部負荷を通って対電極に流れる。対電極では、順に、酸化還元メディエータ物質(典型的に電解質)の還元が回路を完成させる。ヨウ化物/三ヨウ化物電解質の場合、三ヨウ化物の還元はヨウ化物を再生し、回路を完成させる。このように、本発明の光起電装置では、光励起状態の色素から酸化物半導体の伝導帯の中への超高速で電子が入射し、その後、色素再生及び対電極への電子伝達によって、電気の効率的な発生に関与している。
【0023】
上記に定義されるように、本発明の装置において用いられる感光色素は、式(I)のデンドリマーである。そのようなデンドリマーは、典型的には硬質な芳香族セグメント及
び大きなアルキル鎖又はアルコキシル鎖からなり、同時に以下の課題に対処する良い対象である。(i)集光能力を向上させること、(ii)色素の凝集を最小限にすること、(iii)金属酸化物半導体(典型的にはTiO)の伝導帯から酸化還元メディエータ物質(典型的には、三ヨウ化物)への逆電子移動を遅らせること、(iv)酸化還元メディエータ物質(例えば、液体イオン電解質)の浸透によって、金属酸化物半導体の表面から色素脱着を防ぐこと、(v)色素の熱安定性を高めることが課題である。確かに、式(I)のデンドリマーは、単純構造化された(又は線型)増感剤に勝る以下の特徴的な利点を有することがわかる。(a)望ましいπ共役長の伸長を促進する単純な構成要素((i)の可能な解決策)、(b)樹枝状構造による分子間相互作用の効果的な還元((ii)の可能な解決策)、(c)通常、末端の大きなアルキル鎖の結果としての高い疎水性((iii)及び(iv)の可能な解決策)、並びに(d)芳香族デンドロンの剛性による優れた熱安定性及び機械的強度((v)の可能な解決策)がある。
【0024】
感光色素は色素体である。それ故に、式(I)のデンドリマーは、少なくとも一つの発色団(すなわち色素体である化学基)を含まなければならない。典型的には、式(I)のデンドリマーのコア基は、発色団である、又は発色団からなる。代わりに、或いはさらに、デンドロン基の一つ以上は、発色団である、又は発色団からなる。分子内に一つ以上の発色団があってもよく、例えば、全てのデンドロン基は、色素体であってもよく、若しくは分子内の全てのデンドロン基の一部が色素体であってもよい。発色団が全て化合物の同じ領域にあってもよく、例えば、全ての発色団が、例えば他の部分(例えば、非色素体であるコア)に分子を備えつつ、単一のデンドロンの上に存在していてもよい。或いは、発色団は全てコアにあってもよい。前記又は各々の発色団の光学特性は、化合物の適切な構造によって操作することができる。例えば、発色団の長さは、異なる光学特性を達成するために操作されることができる。
【0025】
以下の定義が式(I)のデンドリマー化合物を含め、ここで定義された化合物に適用される。
【0026】
本明細書で用いられる「デンドリマー」という用語は、例えば、コア及びコアと結合する多くのデンドロンを有する式(I)の構造のような構造を表す。
【0027】
本明細書で用いられる「少なくとも部分的に共役した」とは、デンドロンの少なくとも一部が表面基は別として、交互の二重結合及び/又は三重結合、及び単結合又は孤立電子対から形成されていることを意味する。好ましくは、全てのデンドリマー又は樹枝状構造は、交互の単結合又は二重結合或いは孤立電子対から形成されている。このような構造は、共役デンドロンと称される。しかしながら、これは、このπ系が完全に非局在化されていることを意味しない。このπ系の非局在化は、その結合の位置化学に依存する。
【0028】
本明細書で用いられる「末端」という用語は、コアから外に結合配列を辿るとき、コアから最も遠い分子の部分(単数又は複数)を意味する。デンドロン中の結合及び部分の配置によって、末端の単位が、デンドロン中のより前の部分より空間的にコアにより近くてもよいことが理解される。本明細書に記載の樹枝状分子構造を終結させる末端アリール及び/又はヘテロアリール基は、例えば下記の一つ以上の表面基によって置換されてもよい。
【0029】
本明細書で用いられるアセチルレニルという用語は、二価のアセチレニル基を意味し、ビニルは、二又は三価のビニル基を意味し、アリール又はヘテロアリールは、一価、二価、三価又は多価のアリール基を意味する。
【0030】
本明細書で用いられる「金属イオン」又は「金属カチオン」という用語は、いずれの配位子も結合せずに、その金属が有する荷電状態を記述するものと解される(酸化状態)。典型的には、金属カチオンを含む本発明のデンドリマーでは、デンドリマーの全体の電荷は中性であり、金属−配位子結合は、関与する金属及び配位子に応じて多かれ少なかれ共有結合の性質を有する。
【0031】
本明細書で用いられるC1−15アルキル基という用語は、例えば、C1−8アルキル基又は部分、或いはC1−4アルキル基又は部分のような1から15個の炭素原子を含む直鎖又は樹枝状アルキル基又は部分である。C1−4アルキル基及び部分の例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル及びt−ブチルが含まれる。疑義を避けるために、1つの基の中に2つのアルキル部分が存在する場合、このアルキル部分は、同じ又は異なっていてもよい。アルキル基が置換されるとき、それは、典型的に、置換又は非置換C1−20アルキル基、(ここで定義されるような)置換又は非置換アリール基、シアノ、アミノ、C1−10アルキルアミノ、ジ(C1−10)アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アミド、アリルアミド、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシ、エステル、アシル、アシルオキシ、C1−20アルコキシ、アリールオキシ、ハロアルキル、スルホン酸、スルフヒドリル(すなわちチオール、−SH)、C1−10アルキルチオ、アリールチオ、スルホニル、リン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル及び環状エーテルから選択された一つ以上(典型的には、1、2、又は3)の置換基を持つ。
【0032】
本明細書で用いられるC2−15アルケニル基又は部分とは、例えば、C2−8アルケニル基又は部分、或いはC2−4アルケニル基又は部分のように、それぞれが2から5個の炭素原子を含む直鎖又は樹枝状アルケニル基又は部分である。疑義をさけるために、1つの基の中に2つ以上のアルケニル部分が存在する場合、このアルケニル部分は、同じ又は異なっていてもよい。
【0033】
本明細書で用いられるハロゲンとは、典型的には塩素、フッ素、臭素又はヨウ素である。なお、ハロゲンは塩素、フッ素又は臭素が好ましい。
【0034】
本明細書で用いられるアミノという用語は、式−NHの基を表す。また、C1−15アルキルアミノという用語は、式−NHR’(式中、R’はC1−15アルキル基、好ましくは前に定義されたC1−15アルキル基である)の基を表す。ジ(C1−15)アルキルアミノという用語は、式−NR’R”(式中、R’及びR”は、同じか異なり、C1−15アルキル基、好ましくは前に定義されたC1−6アルキル基を表す)の基を表す。本明細書では、アミドという用語は、式−C(O)NHの基を表す。
【0035】
本明細書では、アリールという用語は、例えば、フェニル、ナフチル及びフルオレニルのような単環式又は多環式なC6−14アリール基を意味する。アリール基は、非置換であるか、任意の位置で置換されていてもよい。特に断わらない限り、これは0、1、2又は3つの置換基を持つ。アリール基上の適切な置換基は、ハロゲン、C1−15アルキル、C2−15アルケニル、−C(O)R(式中、Rは、水素又はC1−15アルキルである)、−COR(式中、Rは、水素又はC1−15アルキルである)、ヒドロキシ、C1−15アルコキシ、C2−15アルケニルオキシ、C1−15アルキルチオ、C2−15アルケニルチオ、C1−6ハロアルキル、C2−15ハロアルケニル、C1−15ハロアルコキシ、C2−15ハロアルケニルオキシ、アミノ、C1−15アルキルアミノ、ジ(C1−15)アルキルアミノ、C6−14アリールオキシ、−OSR(但し、各Rは、同じか異なり、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルを表す)、−SiR(但し、各Rは、同じか異なり、水素、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルを表す)、C6−14アリールチオ、C6−14アリール及び5員から10員環のヘテロアリールが含まれ、ここでこの置換基は、それ自体非置換であるか、置換されている。置換基がそれ自体置換されているとき、この置換基上の適切な置換基には、C1−15アルキル、C2−15アルケニル、C1−15アルコキシ、C2−15アルケニルオキシ、ヒドロキシ及びハロゲンから選択される1、2、3又は4つの基が含まれる。特に適切なものは、C1−8アルキル、C2−8アルケニル、C1−8アルコキシ及びC2−8アルケニルオキシから選択される1つ又は2つの基である。特に、アリール基がC6−14アリール基又は5員から10員環のヘテロアリール基で置換される場合、これらの置換基は、それ自体が非置換であるか、C1−15アルキル、C2−15アルケニル、C1−15アルコキシ及びC2−15アルケニルオキシから選択される一つ以上の置換基で置換される。アリール基が、C6−14アリール基又は5員から10員環のヘテロアリール基以外の基で置換される場合、この置換基は、それ自体好ましくは非置換である。
【0036】
本明細書では、ヘテロアリール基は典型的には5員から14員環の芳香環であり、例えば、5員から10員環であり、より好ましくは5員又は6員環であり、O、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、1、2又は3個のヘテロ原子を含む。例として、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、トリアジニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、インダゾリル、カルバゾリル、アクリジニル、プリニル、シンノリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、キナゾリニル及びイソキノリニルが含まれる。
【0037】
ヘテロアリール基が単環式ヘテロアリール基のとき、好ましい基としては、チオフェニル、ピロリル、ピリジル、イミダゾリル、トリアジニル及びトリアゾリルを含む。
【0038】
本明細書では、ヘテロアリール基への言及には、ヘテロアリール基がアリール基に縮合されている縮合環系が含まれる。ヘテロアリール基がこのような縮合ヘテロアリール基の場合、好ましい例は、5員から6員環のヘテロアリール基が1つ又は2つのフェニル基に縮合されている縮合環系である。このような縮合環系の例は、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、カルバゾリル、ベンゾトリアゾリル、フェナントリジニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、キナゾリニル及びイソキノリニル部分である。
【0039】
ヘテロアリール基は、非置換であるか、任意の位置で置換されていてもよい。特に断わらない限り、これは0、1、2又は3つの置換基を持つ。ヘテロアリール基上の好ましい置換基には、アリール基に関連して上に挙げたものが含まれる。ヘテロアリール基がC6−14アリール基又は5員から10員環のヘテロアリール基で置換されているとき、これらの置換基は、それ自体非置換であるか、又はC1−15アルキル、C2−15アルケニル、C1−15アルコキシ及びC2−15アルケニルオキシから選択される一つ以上の置換基で置換されている。ヘテロアリール基が、C6−14アリール基又は5員から10員環のヘテロアリール基以外の基で置換される場合、置換基は、それ自体好ましくは非置換である。
【0040】
本明細書では、アルコキシ基は、典型的には酸素原子に結合したアルキル基である。同様に、アルケニルオキシ基及びアリールオキシ基は、典型的には、酸素原子にそれぞれ結合したアルケニル基又はアリール基である。アルキルチオ基は、典型的にはチオ基に結合した前記アルキル基である。同様に、アルケニルチオ基及びアリールチオ基は、典型的には、チオ基に結合したそれぞれアルケニル基又はアリール基である。ハロアルキル又はハロアルコキシ基は、典型的には、一つ以上の前記ハロゲン原子で置換された前記アルキル又はアルコキシ基である。典型的には、これは1、2又は3個の前記ハロゲン原子で置換されている。ハロアルキル及びハロアルコキシ基には、ペルハロアルキル及びペルハロアルコキシ基、例えば、−CX及びOCX(但し、Xはハロゲン原子、例えば、塩素又はフッ素、及び一つ以上のハロゲン原子で置換された、より長いアルキル鎖及び/又はアルコキシ鎖、例えば、C2−6鎖である)が含まれる。
【0041】
ハロアルケニル及びハロアルケニルオキシ基は、類推して、典型的には一つ以上の前記ハロゲン原子で置換されたアルケニル又はアルケニルオキシ基である。典型的には、これは1、2又は3個の前記ハロゲン原子で置換されている。
【0042】
1−15アルキレン基は、二つの水素原子を、脂肪族であっても脂環式であってもよく、飽和していても部分的に不飽和であっても完全に不飽和であってもよい1から15個の炭素原子を有する炭化水素化合物(特に断わらない限り)の同一の炭素原子から取り外す又は二つの異なる炭素原子の各々から一つ取り外すことによって得られる非置換又は置換二座部分である。したがって、「C1−15アルキレン」という用語は、サブクラスC2−15アルケニレン、C2−15アルキニレン、シクロアルキレン等を含む。典型的には、C1−10アルキレン、例えばC1−6アルキレンである。典型的には、C1−4アルキレン、例えばメチレン、エチレン、i−プロピレン、n−プロピレン、t−ブチレン、s−ブチレン又はn−ブチレンである。さらに、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン及びそれらの種々の分枝鎖異性体であってもよい。アルキレン基は、非置換であってもよいし、例えば、アルキルに関して上で規定されたように置換されてもよい。直鎖飽和C1−6アルキレン基の例としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、−CH−(メチレン)、−CHCH−(エチレン)、−CHCHCH−(プロピレン)、及びCHCHCHCH−(ブチレン)のような−(CH−(式中、nは1から6の整数である。)が挙げられる。
【0043】
1−15アルキレンオキシ基は、非置換、又は酸素原子と結合するC1−15アルキレン基
(すなわち、−O−(C1−15アルキレン)−又は(C1−15アルキレン)−O−)からなる置換二座部分である。直鎖飽和C1−6アルキレンオキシ基の例としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、−O−CH−、−O−CHCH−、−O−CHCHCH−、及びO−CHCHCHCH−のような−O−(CH−(式中、nは1から6の整数である。)が含まれる。より大きいアルキレンオキシ基の具体例は、−O−2−エチルヘキシルである。
【0044】
本明細書で用いられる「ヒドロキシ基」という用語は、式−OHの基を表す。当業者によって解されるように、ヒドロキシ基は、酸性のヒドロキシ基(酸性の−OH基)であってもよい。本明細書で用いられる「酸性のヒドロキシ基」又は「酸性の−OH基」という用語は、H(すなわちH)イオン及び溶液のpHが7未満である共役塩基部分−Oを形成するために、水中である程度解離することができる基である。酸性のヒドロキシ基の例としては、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、フェノール又はカテコールの−OH基が含まれる。
【0045】
本明細書で用いられる「カルボキシル」及び「カルボン酸」という用語は、式−C(=O)OH、又はCOOHの基をそれぞれ示す。当業者によって解されるように、カルボン酸基は(例えば、本発明において金属酸化物半導体に結合される又は結合可能な基として用いられる場合)、プロトン化形態及び脱プロトン化形態(例えば−C(=O)OH及びC(=O)O)で存在しうる。
【0046】
本明細書で用いられる「カルボン酸塩」という用語は、カルボン酸塩アニオン、−COO及び対カチオンからなる塩を意味する。典型的には、式−C(=O)O(式中、Zは一価のカチオンである。)の塩である。典型的には、Zは、アルカリ金属カチオン又はカチオン性アルカリ土類金属一水酸化物である。したがって、Zは、例えばNa、K、[CaOH]、又は[MgOH]であってもよい。
【0047】
本明細書で用いられる「ホスホン酸」という用語は、式−P(=O)(OH)の基を示す。当業者に解されるように、ホスホン酸基(例えば、本発明において金属酸化物半導体に結合される又は結合可能な基として用いられる場合)は、プロトン化形態及び脱プロトン化形態(例えば、−P(=O)(OH)、−P(=O)(O及びP(=O)(OH)(O))で存在しうる。
【0048】
本明細書で用いられる「ホスホン酸塩」という用語は、−P(=O)(O又はP(=O)(OH)(O)及び対カチオンからなる塩を意味する。典型的には、式−[P(=O)(OH)(O)]Z、−[P(=O)(O]2Z又は[P(=O)(O]Z2+(式中、Zは一価のカチオンであり、Z2+はジカチオンである。)の塩である。典型的には、Zは、アルカリ金属カチオン又はカチオン性アルカリ土類金属一水酸化物である。したがって、Zは、例えばNa、K、[CaOH]、又は[MgOH]である。典型的に、Z2+は、アルカリ土類金属ジカチオンである。したがって、Z2+は、例えばCa2+又はMg2+である。
【0049】
本明細書で用いられる「スルホン酸」という用語は、式−S(=O)OHの基を表している。当業者に解されるように、スルホン酸基(例えば、本発明において金属酸化物半導体に結合された又は結合可能な基として用いられるとき)は、プロトン化形態及び脱プロトン化形態(例えば、−S(=O)OH及びS(=O))において存在しうる。
【0050】
本明細書で用いられる「スルホン酸塩」という用語は、−S(=O)及び対カチオンからなる塩を意味する。典型的には、式−S(=O)(式中、Zは一価のカチオンである。)の塩である。典型的には、Zは、アルカリ金属カチオン又はカチオン性アルカリ土類金属一水酸化物である。したがって、Zは、例えばNa、K、[CaOH]、又は[MgOH]である。
【0051】
本明細書で用いられる「カテコール基」という用語は、非置換又は置換されたベンゼン−1,2−ジオール部分からなるいずれかの基を意味する。当業者に解されるように、カテコール基(例えば、本発明において金属酸化物半導体に結合される又は結合可能な基として用いられるとき)は、プロトン化形態及び脱プロトン化形態(例えば、−Ph(OH)、−Ph(OH)(O)及びPh(O)において存在しうる。同様に、アリール基又はヘテロアリール基の環炭素原子がヒドロキシ基で置換されたアリール基又はヘテロアリール基のヒドロキシ基は、プロトン化形態及び脱プロトン化形態(すなわち、−Ar−OH及びAr−O)において存在しうる。典型的には、一価のカチオンであり、例えば、アルカリ金属カチオン、通常Na又はKのようなアリール基又はヘテロアリール基の塩は、アニオン−Ar−O及び対カチオンからなる塩を意味する。同様に、カテコール基の塩は、(a)非置換又は置換されたアニオン性部分−Ph(OH)(O)、又は(b)非置換又は置換されたアニオン性部分−Ph(O及び対カチオンを含む基からなる塩を意味する。対カチオンは、典型的には、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンである。したがって、対カチオンは、例えば、Na、K、Ca2+又はMg2+である。
【0052】
本明細書で用いられる「dブロック金属」という用語は、3d、4d及び5d殻の充填に起因しており、周期表においてアルカリ土類金属の後に位置している原子の3連続のうちのいずれか一つを意味する。したがって、本明細書で用いられる「dブロック金属」という用語は、例えば、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd及びHgを含む。それゆえ、本発明の錯体中のdブロック金属は、典型的には、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd及びHgから選択される。
【0053】
典型的には、式(I)のデンドリマーにおいて、nは1、2、3又は4である。より典型的には、nは2である。
【0054】
典型的に、式(I)のデンドリマーにおいて、mは1から4の整数である。より典型的には、mは2、3又は4である。さらにより典型的には、mは2である。
【0055】
上述したように、コアは、非ポリマー性有機基、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を有し、(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合している。
【0056】
コアが非ポリマー性有機基であるとき、コアは発色団(例えば共役基)又は非発光性であってもよい。発色団として包含されうるコアの例には、フルオレン、ナフタレン並びにポルフィリン及びペリレン環のようなアリール及びヘテロアリール基が含まれる。本明細書では、「非ポリマー性」とは、コアはポリマー性基ではないが、二量体、三量体又はオリゴマーの形であってもよく、或いは大環状式であってもよいことを意味する。コアがいくつかの単位からなるオリゴマーの形をしているとき、好ましくは、8つ又はより少ない単位を含む。適切な単位は、単一アリール又はヘテロアリール基(例えば、単一フルオレン単位)である。これが二量体、三量体又はオリゴマーのとき、同じ又は異なっており、一緒に結合しており、任意選択的に置換されている2つ以上のこのようなアリール又はヘテロアリール基からなってもよい。コアが2つ以上のアリール又はヘテロアリール基(すなわち、2つ以上の「(ヘテロ)アリール」基)、各(ヘテロ)アリール基からなるとき、単結合又は適切な連結基によって(ヘテロ)アリール基のもう一方と結合してもよい。適切な連結基は、非置換、或いは置換されたビニル基又はアセチルレニル基を含む。(ヘテロ)アリール基は、このようにして二量体、三量体、オリゴマー又は大環状式を形成するために一緒に結合してもよい。したがって、一実施形態では、コアがシアニン基からなる。他の適切なコアには、ジフルオレン、トリフルオレン及びビフェニル基、並びにフェニル及びチオフェニルなどの単一アリール及び/又はヘテロアリール基のその他の組合せが含まれる。非発光性のコアの例には、テトラフェニルメタンなどのアリールで置換されているアルキル基が含まれる。
【0057】
これらが適切な基の唯一の例であるが、膨大な数の類似した基がコアに提供されるように機能することができるものとして高く評価されている。それらは、少なくとも(n+m)個の連結点を備え、(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合することができる。
【0058】
典型的に、コアは、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンを含む基である。典型的に、この実施形態では、コアは金属カチオン及び結合する配位子を含んでおり、即ち、配位子はコア自体の一部を形成する。それ故に、典型的には、コアは金属原子又は金属イオン及び一つ以上の配位子を含む金属錯体からなる。典型的には、金属原子又は金属イオンは、金属カチオンである。
【0059】
適切な金属には、
ランタニド金属:例えば、セリウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ツリウム、エルビウム及びネオジム、
dブロック金属、特に2行及び3行目にあるもの、即ち、元素39から48及び72から80、例えば、イリジウム、白金、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、スカンジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅、並びに
周期律表の典型金属、例えば、第IA、IIA、IIB、IIIB族金属、例えばリチウム、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム及びインジウム
が含まれる。
【0060】
典型的に、金属は、Ru、Fe、Os、Ir及びZnから選択される。さらにより典型的には、MはRuである。通常、MはRu(II)である。
【0061】
金属は、典型的には、コアの中心に近く、コアは典型的には、色素体である。もし、コアが色素体でないならば、デンドロンの一つ以上は発色団を含まなければならない。それは、隣接した分子のコア発色団から比較的孤立するので、金属イオン発色団は分子のコアに位置させ、濃度消光又は三重項−三重項消滅を最小限に抑えることが好ましい。金属と配位/結合している原子又は基は、コア自体の一部を典型的に形成している。
【0062】
典型的に、コアが金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であるとき、金属原子又は金属イオンは、前記又は各デンドロンの最初の分岐基に直接結合しない。
【0063】
典型的に、コアは金属錯体であり、該金属錯体は金属原子又は金属イオンと、一つ以上の配位子とからなり、前記又は各X基は、金属錯体の配位子に結合され、且つ前記又は各デンドロン、或いは有する場合、前記又は各Y基は、金属錯体の配位子に結合される。より典型的には、コアは金属錯体であり、該金属錯体は金属原子又は金属イオン、第1の配位子及び第2の配位子からなり、前記又は各X基は、第1の配位子に結合され、且つ前記又は各デンドロン、或いは有する場合、前記又は各Y基は、第2の配位子に結合される。
【0064】
好ましい二座配位子で、金属と配位/結合する好ましい配位子は、単座、二座、及び三座配位子を含む。特に、炭素環(炭素供与体として働く)及び/又は複素環(ヘテロ原子供与体として働く、好ましくは窒素供与体)からなる二座配位子に言及することができる。炭素環は、アリール基(例えば、フェニル)から選択されてもよい。複素環は、ヘテロアリール基(例えば、ピリジン)から選択されてもよい。典型的に、配位子は、2つの窒素含有の複素環(例えば、ピリジル環)からなる二座配位子である。例えば、好ましい配位子である2,2’−ビピリジンで示すように、複素環は、単結合によって好ましくは直接結合される。
【0065】
前記又は各デンドロン又はY基、及び前記又は各X基は、そのような二座配位子の炭素環または複素環と結合してもよい。更に、6員環系にとって、デンドロン基、Y基又はX基が複素環と金属との結合に対して、メタ−位或いはパラ−位と結合することが好ましいが、デンドロン基、Y基又はX基は、複素環のいずれかの位置で結合してもよい。典型的に、前記又は各X基は、第1の二座配位子に結合され、且つ前記又は各デンドロン、或いは有する場合、前記又は各Y基は、第2の二座配位子に結合される。
【0066】
一実施形態では、デンドリマーは、式(II)の金属錯体であり、
【化2】

式中、
Mは、金属原子又は金属イオンであり、
A1、A2、A3及びA4の各々は、同一又は異なるものであり、炭素及び窒素から別個に選択され、
B1、B2、B3及びB4の各々は、同一又は異なるものであり、非置換、又は一つ以上の他のアリール又はヘテロアリール環に任意に結合して置換された別個のアリール又はヘテロアリール環であり、
各デンドロン及び各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、分岐基は、3つ以上の基に結合されており、連結基は、2つの基に結合されており、樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Yp1は、B1の還原子に結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
p1は、0又は1から5までの整数であり、
n1は、0、1、又は2であり、
[Yp2は、B2の還原子に結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基に対する単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
p2は、0又は1から5までの整数であり、
n2は、0、1、又は2であり、
(n1+n2)は、0ではなく、
各X及び各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外及びデンドロン以外、且つ(b)金属酸化物半導体に結合するアンカー基であり、
m1は、0又は1から3までの整数であり、
m2は、0又は1から3までの整数であり、
(m1+m2)は、0ではなく、
zは、0、1、2、3或いは4であり、
前記又は各Lは、有する場合、配位子である。
【0067】
Mは、上で述べた適切な金属のいずれかでもよい。典型的に、Mは、dブロック金属である。より典型的には、Mは、Ru、Fe、Os、Ir及びZnから選択される。さらにより典型的には、MはRuである。通常、MはRu(II)である。
【0068】
典型的に、B1、B2、B3及びB4の各々は、6員環のアリール及び、5員又は6員環のヘテロアリール環から別個に選択される。典型的に、6員環のアリール環はフェニルであり、5員又は6員環のヘテロアリール環は窒素含有のヘテロアリール環である。より典型的には、B1、B2、B3及びB4の各々は、ピリジル及びフェニルから別個に選択される。さらにより典型的には、二座配位子は、2−フェニルピリジン及び2,2’−ビピリジンから選択されるB1、B2、B3及びB4からなる。
【0069】
通常、B1及びB2は両方のピリジル環であり、且つ、B1及びB2はビピリジン配位子を一緒に形成する。典型的に、B1及びB2からなる配位子は2,2’−ビピリジン配位子であり、2,2’−ビピリジン配位子の窒素原子はMと結合する。典型的に、それゆえ、A1及びA2は両方ともNである。一実施形態では、B1、B2、B3及びB4の各々は、ピリジル環であり、したがって、二座配位子の両方ともビピリジル配位子である。典型的に、これらの2つの二座配位子は、両方とも2,2’−ビピリジン配位子であり、2,2’−ビピリジン配位子の窒素原子は、Mと結合する。典型的に、それゆえ、A1、A2、A3及びA4の各々は、Nである。
【0070】
典型的に、n1及びn2は両方とも1である。通常、m1及びm1は両方とも1である。
【0071】
典型的に、zは、0、1又は2である。より典型的には、zは2である。
【0072】
典型的に、式(II)の金属錯体の全体の電荷は中性である。典型的に、式(II)の金属錯体は、加えて追加配位子(L)からなり、それは典型的には、B1、B2、B3及びB4からなる二座配位子と異なる構造である。追加配位子Lの存在の数及びそれらの電荷は金属、M及びその酸化状態に依存する。当業者に配慮して、金属の配位領域を完了するために結合している十分な配位子があるように、配位子Lは、金属の配位領域を作る。
【0073】
典型的に、zは2であり、式(II)の金属錯体が2つの追加基(L)から付加的になり、同一又は異なるものであり、その各々は、各Lが単座配位子、又は両方のL配位子が二座配位子を一緒に形成する金属の中心と結合される。通常、各Lは、単座配位子である。より典型的には、各Lは、単座配位子であり、単アニオン性配位子である。典型的に、MはRu(II)である。
【0074】
典型的に、それゆえ、Mは、Ru(II)及び、追加で2つのL基(両方ともRu(II)と結合される)からなる式(II)の金属錯体である。各Lは、同一又は異なるものであり、単座配位子、又は両方のL基が二座配位子を一緒に形成する。一実施形態では、両方のL基がイソチオシアネート配位子である。
【0075】
一実施形態では、デンドリマーは、式(III)の金属錯体であり、
【化3】

式中、
、m1、X、m2、Y、p1、Y、p2、デンドロン、n1、デンドロン及びn2は、式(II)の金属錯体のために上に定義した通りであり、
L1及びL2の各々は、同一又は異なるものであり、単座配位子、又はL1及びL2が二座配位子を一緒に形成する。
【0076】
通常、各L1及びL2の各々は、単座配位子であり、単アニオン性配位子である。一実施形態では、L1及びL2は、両方ともイソチオシアネート配位子である。
【0077】
上で述べたように、各デンドロン、デンドロン又はデンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、分岐基は、3つ以上の基に結合されており、連結基は、2つの基に結合されており、樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換される。ここで、分岐基は、3つ以上の基に結合するとされており、後者は、分岐基又は連結基、或いは樹枝状分子構造を終結させるアリール及び/又はヘテロアリール環になることがある。ここで、連結基は、2つの基に結合するとされており、後者は、分岐基又は連結基、或いは樹枝状分子構造を終結させるアリール及び/又はヘテロアリール環になることがある。
【0078】
分岐基は、アリール及びヘテロアリール基から選択される。これらの基は、少なくとも三価であり、故に3つ以上の基に結合することが可能である基を形成するという理由で選択される。分岐基が結合される基の1つは、前の世代の分岐基又は連結基、或いはデンドリマーのコア又はY基である。その他の2つ以上の基は、次世代の連結基及び/又は分岐基、或いは樹枝状分子構造を終結させるアリール及び/又はヘテロアリール基である。
【0079】
分岐基がアリール基であるとき、適切な基は、フェニル、ナフタレン、アントラセン及び、適切な場合、置換された変形を含む。典型的に、分岐基がアリール基のとき、それはフェニル環である。より典型的には、分岐基は、環の1、3及び5位で結合したフェニル環である。したがって、典型的に、分岐基は次の式の基である。
【化4】

【0080】
ここで、アスタリスク“*”は、前の世代の分岐基又は連結基、或いはデンドリマーのコア又はY基との連結点を示している。その他のアスタリスク“*”の2つは、次世代の連結基及び/又は分岐基、或いは樹枝状分子構造を終結させるアリール及び/又はヘテロアリール基との連結点をそれぞれ示している。
【0081】
分岐基がヘテロアリール基のとき、適切な基は、ピリジン、カルバゾリル、トリアゾール、トリアジン及び、適切な場合、置換された変形を含む。典型的に、ヘテロアリール基は、非置換又は置換されたカルバゾリル、トリアゾール及びトリアジンから選択される。カルバゾリル及びトリアジニルは好ましい。カルバゾリルは特に好ましい。
【0082】
したがって、典型的に、分岐基は次の式の基である。
【化5】

ここで、窒素原子でのアスタリスク“*”は、前の世代の分岐基又は連結基、或いはデンドリマーのコア又はY基との連結点を示している。その他のアスタリスク“*”の2つは、次世代の連結基及び/又は分岐基、或いは樹枝状分子構造を終結させるアリール及び/又はヘテロアリール基との連結点をそれぞれ示している。
【0083】
通常、分岐基は、(a)アリール基、及び(b)ピリジル以外のヘテロアリール基から選択される。したがって、典型的に、分岐基は、(a)アリール基、及び(b)6員環のヘテロアリール環からなるヘテロアリール基以外のヘテロアリール基から選択される。但し、6員環のヘテロアリール環は、一つだけの環窒素原子を含む。さらにより典型的には、分岐基は、アリール基、カルバゾリル基及びトリアジニル基から選択される。さらにより典型的には、分岐基は、カルバゾリル基及びトリアジニル基から選択される。さらにより典型的には、分岐基は、(a)アリール基、及び(b)5員環のヘテロアリール環からなるヘテロアリール基から選択される。さらにより典型的には、分岐基は、(a)アリール基、及び(b)5員環の窒素含有ヘテロアリール環からなるヘテロアリール基から選択される。さらにより典型的には、分岐基は、アリール基及びカルバゾリル基から選択される。
【0084】
一実施形態では、分岐基は、(a)アリール基、及び(b)どの環窒素原子も含んでいないヘテロアリール基から選択される。
【0085】
分岐基は、非置換又は置換されている。適切な置換基には、可溶化基として以下に記載されるもの、及び架橋しやすい基として以下に記載されるものも含まれる。分岐基は、可溶化基によって置換されていないことが好ましい。好ましい分岐基は、結合した可溶化基を有しないフェニル基である。
【0086】
デンドロンの連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択される。連結基は、2つの基を結合することが可能な二価の部分を形成することができるという理由で選ばれる。連結基が結合される基は、他の連結基、分岐基及び/又は樹枝状分子構造を終結させるアリール基及び/又はヘテロアリール基を含む。
【0087】
連結基がアリール基のとき、適切な基は、C6−14アリール基、例えば、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フルオレニル及び、適切な場合、置換された変形を含む。通常、連結基はアリール基であるとき、それはフェニル又はフルオレニル基である。連結基がフェニル環のとき、環の1位及び4位で結合されることが好ましい。連結基がフルオレニル環のとき、環の2位及び7位で結合されることが好ましい。連結基がヘテロアリール基のとき、適切な基は、ピリジン、オキサジアゾール、チオフェン及び、適切な場合、置換された変形を含む。好ましいヘテロアリール連結基は、チオフェン及びピリジンを含む。
【0088】
連結基は、非置換又は置換されている。適切な置換基には、表面基に対して以下に記載されるもの、及び架橋しやすい基として以下に記載されるものも含まれる。連結基がアリールのとき、それは非置換フェニル、或いは非置換又は9位で1つ又は2つの表面基で置換されたフルオレニルであることが好ましい。フルオレニル基に対して好ましい置換基は、C1−15アルキル、C1−15アルコキシ、C1−15ハロアルキル、C6−14アリールから選択される1つ又は2つ、好ましくは2つの置換基を含む。或いは、フルオレニル基の9位の2つの置換基は、5員から7員環、例えばカルボシクリル環を一緒に完成することができる。好ましくは、連結基がアリール基のとき、それは非置換フェニル、或いは非置換又は置換フルオレニルである。
【0089】
連結基として上に記載された2つ以上の部分は、より大きな連結基を形成するために、一緒になって結合することができる。例えば、1つのフェニル環及び追加のフェニル環が結合して、それ自体が2つの分岐基の間、或いは1つの分岐基と樹枝状分子構造を終結させるアリール又はヘテロアリール環との間の連結基とすることができるビフェニル基を形成することができる。
【0090】
樹枝状分子構造は、その末端点でアリール及び/又はヘテロアリール基で終結する。典型的なそのようなアリール及び/又はヘテロアリール基は、以下の通りである。典型的なアリール基は、C6−14アリール基、例えば、フェニル、フルオレニル及びナフチルから選択される基を含む。典型的には、フェニル又はフルオレニルであり、より典型的にはフェニルである。典型的なヘテロアリール基は、環の中に酸素、硫黄及び窒素から選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含む5から10員環のヘテロアリール基を含む。例となるヘテロアリール基には、ピリジル、チオフェニル、ベンズアミダゾリル、カルバゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンゾチオフェニル、フタラジニル、キナゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリニル、オキサゾリニル、オキサジアゾリニル、トリアゾリル、トリアジニル、チアジアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、フェナントリジル、フリル及びベンゾチオフェニルから選択される基が含まれる。好ましくは、これらアリール及び/又はヘテロアリール基は、下記に定義された一つ以上の表面基によって置換される。
【0091】
典型的に、各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基及びアセチルレニル基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換される。
【0092】
典型的に、各デンドロン、デンドロン、又はデンドロンは、式(IV)の基であり、

-Z-[Z-[Z-[Z-[Z]]]]] (IV)

式中、
は、アリール及びヘテロアリールから選択される分岐基であり、
aは、2から5までの整数であり、
は、式−(L−Bの基であり、
但し、eは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、分岐基、又はbが0であるとき、末端基であり、分岐基又
は末端基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、
bは、0又は2から5までの整数であり、
は、式−(L−Bの基であり、
但し、fは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、分岐基、又はcが0であるとき、末端基であり、分岐基又
は末端基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、
cは、0又は2から5までの整数であり、
は、式−(L−Bの基であり、
但し、gは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、分岐基、又はdが0であるとき、末端基であり、分岐基又
は末端基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、
dは、0又は2から5までの整数であり、
は、式−(L−Tの基であり、
但し、hは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、アリール基及びヘテロアリール基から選択される末端基で
あり、
但し、末端基として現れたとき、B、B、B或いはT基は、非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換される。
【0093】
好ましいZ基及び、B、B及びBが分岐基であるとき、好ましいB、B及びB基は、典型的な、通常の又は好ましいものとして上に言及するこれらの分岐基である。同様に、T及び、B、B及びBが分岐基であるとき、B、B及びBは、通常、上に言及する好ましいアリール及び/又はヘテロアリール基である。好ましいL、L、L及びL基は、典型的な、通常の又は好ましいものとして上に言及する連結基と同じである。
【0094】
典型的に、e、f、g及びhは、各別個の0又は1である。典型的に、e、f、g及びhは、0である。典型的に、aは2である。典型的に、dは0又は2である。典型的に、cは0又は2である。典型的に、bは0又は2である。
【0095】
より典型的に、dは0である。より典型的に、d及びcは両方とも0である。さらにより典型的に、b、c及びdは全て0である。
【0096】
通常、各デンドロン、デンドロン又はデンドロンの分岐基は、フェニル及びカルバゾール基から選択され、そこで、末端基は、フェニル、フルオレニル及びカルバゾール基、より好ましくは、フェニル及びカルバゾール基から選択される。典型的に、各デンドロン、デンドロン、又はデンドロンの連結基は、有する場合、ビニル基、アセチレニル基、フルオレニル基、チエニル基、或いはフェニレン基から選択される。
【0097】
式(I)及び式(II)のデンドリマーにおいて、−[Y]−、−[Yp1−、及び−[Yp2−は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基に対する単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択される。
【0098】
各連結基Y、Y及びYは、2つの基と結合することができる二価の部分である。
【0099】
p1及びp2と同様に、pは、0又は1から5までの整数である。したがって、5つまでの連結基、Y、YまたはYは、より大きな連結基−[Y]−、−[Yp1−、又は−[Yp2−を形成するために一緒に結合することができる。例えば、フェニル環及び追加のフェニル環は、ビフェニル基を形成するために結合することができる。又は、2つのビニル基は、ビビニル基を形成するために結合することができる。連結基Y、YまたはYは、非置換又は置換されている。適切な置換基には、アルキル基に対して上に記載されるものを含む。Y、又はY及びYの各々は、C2−15アルケニレン基であってもよい。より典型的に、Y、又はY及びYの各々は、ビニル基である。
【0100】
典型的に、式(I)のデンドリマーにおいて、pは、0又は1である。より典型的に、各pは1である。さらにより典型的に、各pは1であり、Yはビニル基である。
【0101】
同様に、式(II)のデンドリマーにおいて、p1及びp2は、典型的に0又は1である。より典型的に、p1及びp2は、両方とも1である。さらにより典型的に、p1及びp2は両方とも1であり、Y及びYは各ビニル基である。
【0102】
典型的に、各[Y]−[デンドロン]、[Yp1−[デンドロン]、又は[Yp2−[デンドロン]は、式(VIII)又は式(XI)の基である。式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なるものであり、後述の通り、水素又は表面基から選択される。
【化6】

【0103】
典型的には、R、R及びRは、H及び−O−2−エチルヘキシルから各選択される。より典型的には、(a)Rは−O−2−エチルヘキシルであり、且つ、R及びRは共にHであり、(b)R及びRは共に−O−2−エチルヘキシルであり、且つ、RはHであり、或いは(c)R、R及びRは、それぞれ−O−2−エチルヘキシルのいずれかである。
【0104】
本明細書で用いられる「金属酸化物半導体と連結できる基」という用語は、連結できる任意の基を意味する。任意の適切な手段によって、金属酸化物半導体、例えば、基が属する分子(通常、式(I)のデンドリマー)が持つ又は連結に基づいて金属酸化物半導体の中のチタニアである。同様に、「金属酸化物半導体と連結される基」という用語は、連結される任意の基を意味する。任意の適切な手段によって、基が属する分子(通常、式(I)のデンドリマー)が持つ又は連結に基づいて金属酸化物半導体の中の金属酸化物半導体である。
【0105】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、金属酸化物半導体への基の連結は、基と金属酸化物半導体との間の化学結合(例えば、一つ以上の共有結合、イオン結合、水素結合又は他の非共有結合)の形成を通じて、基と金属酸化物半導体との間の物理的相互作用(例えば、2つの間の静電引力による)を通じて、或いは、2つの間の機械的相互作用(例えば、機械的な連動による)を通じてもよいと考えられる。基は、金属酸化物半導体の表面に属する基への分子の吸着、又は、金属酸化物半導体の中への分子の吸収を促進する。典型的に、化学結合は、金属酸化物半導体と基との間に形成され、それによって、基が金属酸化物半導体に属している分子(通常、式(I)のデンドリマー)を結合する。典型的に基が属する分子は、それによって、金属酸化物半導体の表面で固定される。
【0106】
典型的に、金属酸化物半導体と連結できる、或いは金属酸化物半導体と連結されるアンカー基(X、X又はX)は、−OH基からなる基である。他の適切なアンカー基(X、X又はX)は、シアノ基及びπ導電性特性を備えたキレート基(例えば、オキシメス(oxymes)、ジオキシメス(dioxymes)、ヒドロキシキノリン、サリチル酸塩及びα−ケトエノラート)からなる基を含む。
【0107】
金属酸化物半導体と連結できる基、又は金属酸化物半導体と連結される基のとき、X、X又はXは、−OH基からなる基であり、−OH基は、通常、酸性の−OH基である。したがって、−OH基は、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、フェノール又はカテコール基内の−OH基であってもよい。
【0108】
当業者によって解されるように、酸性の−OH基は、脱プロトン化体での−Oであってもよいし、同様にプロトン化体での−OHであってもよい。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、−OH基の酸素原子又は脱プロトン化されたヒドロキシ基、チタニアと結合する−Oであると考えられている。その結果、ヒドロキシ基の酸素原子とチタニアとの間で結合が形成される。したがって、例えば、チタニアと結合するとき、ヒドロキシ基は、−O−[チタニア]共有結合(例えば、O−Ti共有結合、又はイオン結合)を形成してもよい。
【0109】
金属酸化物半導体と連結できる基、又は金属酸化物半導体、X、X又はXと連結される基は、ヒドロキシ基の塩からなる基である。「ヒドロキシ基の塩」及び「−OH基の塩」という用語は、ここでは、アニオン−O及び対カチオンからなる塩を意味する。典型的に、塩は、式−O(式中、Zは一価のカチオンである)である。典型的に、Zは、アルカリ金属カチオン又はカチオン性アルカリ土類金属一水酸化物である。したがって、Zは、例えばNa、K、[CaOH]、又は[MgOH]である。
【0110】
典型的に、それ故に、X、X又はXは、−OH基からなる基又は−OH基の塩からなる基である。通常、−OH基は、酸性の−OH基である。
【0111】
より典型的に、X、X又はXは、カルボン酸基又はカルボン酸基の塩、ホスホン酸基又はホスホン酸基の塩、スルホン酸基又はスルホン酸基の塩、或いは、アリール基又はヘテロアリール基(ただし、アリール又はヘテロアリールの環炭素原子は、ヒドロキシ基、或いはアリール又はヘテロアリール基の塩で置換される)からなる基である。通常、X、X又はXは、カルボン酸基又はその塩、カテコール基又はその塩、フェノール基又はその塩、或いはホスホン酸基又はその塩である。より典型的に、X、X又はXは、カルボン酸基、カテコール基、フェノール基又はホスホン酸基である。さらにより典型的に、X、X又はXは、カルボン酸基である。
【0112】
好ましくは存在し、末端アリール及び/又はヘテロアリール基と連結するデンドリマーのための適切な表面基は、分岐及び非分岐アルキル、特にt−ブチル、分岐及び非分岐アルコキシ、例えば、2−エチルヘキシルオキシ、ヒドロキシ、アルキルシラン、カルボキシ、カルボアルコキシ及びビニル基を含む。別の非分岐アルキル表面基は、n−プロピル部分である。この場合、末端アリール及び/又はヘテロアリール基は、好ましくは、2つの表面基、例えば、2つのn−プロピル基を持つ。
【0113】
典型的に、それ故に、一つ以上の末端アリール基及び/又はヘテロアリール基は、1、2、3又は4つの表面基で置換される。より典型的に、一つ以上の末端アリール基及び/又はヘテロアリール基は、1つ又は2つの表面基で置換される。より典型的には、一つ以上の末端アリール基及び/又はヘテロアリール基は、1つの表面基で置換される。
【0114】
有利な点として、一つ以上の表面基の存在は、デンドリマーの疎水性を増やすことができる。これは、伝導性の金属酸化物の表面の上へ光起電装置(通常、液体電解質)の酸化還元メディエータ物質の侵入をさらに減少又は抑制することができる。そして、それは順々に、金属酸化物の表面からの色素脱着を減少又は抑制する。大きな疎水性の表面基の使用は、金属酸化物伝導帯から酸化還元メディエータ物質までの逆電子移動をさらに減少又は抑制することができる。したがって、装置の性能又は安定は、適切な表面基の使用によってさらに改善される。
【0115】
典型的に、前記又は表面基の各々は、同一又は異なっていてもよく、含硫又はシリコンを含む基、スルホニル基、ポリエーテル基、環状エーテル基、C1−15アルキル(好ましくはt−ブチル又はn−プロピル基、より好ましくはt−ブチル)基、C2−15アルケニル基、アミノ基、モノ−,ジ−又はトリ−(C1−15)アルキルアミノ基、−COOR基(ただし、Rは、水素又はC1−15アルキルである)、−OR基(ただし、Rは、水素、アリール又はC1−15アルキル或いはC2−15アルケニル(好ましくは、−O−エチルヘキシル)である)、−OSR基(ただし、Rは、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、−SR基(ただし、Rは、アリール、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、−SiR基(ただし、Rは、同一又は異なるものであり、水素、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、−SR’基(ただし、R’は、アリール、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、アリール基、或いはヘテロアリール基から別個に選択される。
【0116】
表面基は、疎水性のデンドリマー表面を得るために選択されることができる。上述のように、疎水性のデンドリマー表面は、デンドリマーを過ぎて、チタニア電子受容体物質の上へ浸透する酸化還元メディエータ物質を防ぐのに役立つ。有利な点として、これは順々に(a)金属酸化物伝導帯から電解質までの逆電子移動の遅延、(b)酸化還元メディエータ物質の侵入によってチタニアの表面からの色素脱着の防止である。よって、当然のことながら、表面基は、少なくとも2つの炭素原子、例えば、C−C15アルキル又はOR(ただし、Rはアリール又はC−C15アルキル又はアルケニル)を含む基である。
【0117】
より好ましくは、表面基は、例えばtert−ブチル又は−O−2−エチルヘキシルのような4つ以上の炭素を含む。他の実施形態では、末端アリール又はヘテロアリール基の少なくとも一つの表面基は、合計少なくとも4つ以上の炭素原子を含む。例えば、末端アリール又はヘテロアリール基は、2つのn−プロピル基を持ってもよい。よって、この末端アリール又はヘテロアリール基の表面基は、6つの炭素原子を含む。
【0118】
加えて、表面基は、伝導性の金属酸化物に連結された後、個々のデンドリマーが一緒に架橋することができるように選ばれることができる。有利に、これは、光起電装置の安定性を増加する。したがって、一実施形態において、前記又は表面基の各々、又は少なくとも一つ以上の存在している表面基は、照射と同時に又は化学反応によって架橋可能な架橋基である。或いは、前記又は表面基の各々、又は少なくとも一つ以上の存在している表面基は、架橋できる基から離れるために移動することができる保護する基からなる。
【0119】
当業者に解されるように、異なる表面基は、異なるデンドロン又はデンドロンの異なる末端基の上で存在してもよい。
【0120】
それ故に、表面基は、デンドリマーが溶液処理に適している溶媒で溶解できるように選択されることができる。確かに、デンドリマーが処理可能な溶液、即ち、デンドリマーが溶媒で溶解できるような表面基であることが好ましい。
【0121】
一実施形態では、デンドリマーは、次式(V)の通りであり、
【化7】

式中、
(a)Rは−O−2−エチルヘキシルであり、且つ、R及びRは共にHであり、
(b)R及びRは共に−O−2−エチルヘキシルであり、且つ、RはHであり、或いは、
(c)R、R及びRは、それぞれ−O−2−エチルヘキシル
である。
【0122】
他の実施形態では、デンドリマーは、次式(X)の通りである。
【化8】

【0123】
さらに、発明では、式(I)の感光色素からなる光起電装置の変換効率が一つ以上の追加の感光色素の導入によってさらに改良されたことを見出している。通常、樹枝状色素より小さいそのような追加の色素は、伝導性の金属酸化物の上に樹枝状色素で共吸着されることができ、その結果、装置性能をさらに向上させることができる。
【0124】
それに応じて、一実施形態では、本発明の色素増感型光起電装置は、伝導性の金属酸化物に結合される第2の感光色素からなり、第2の感光色素は、式(I)のデンドリマー以外である。
【0125】
第2の感光色素は、デンドリマーでない全ての適切な感光色素であってもよい。そのような色素は、当業者に周知であり、遷移金属錯体を含む。特に、ルテニウム錯体、しかし同様に、鉄及びオスミウム錯体は、一つ以上の複素環式配位子からなる。そのような配位子は、二座、三座又は多座ピリジル含有の配位子を含む。この種類の色素増感剤は、とりわけ、特許文献3(欧州特許第1622178号明細書)、特許文献4(欧州特許第0333641号明細書)、特許文献5(欧州特許第0525070号明細書)、特許文献6(欧州特許第0613466号明細書)及び特許文献7(欧州特許第0758337号明細書)で記載されている。
【0126】
一実施形態では、第2の感光色素は、非置換又はベンゼン−1,2−ジオールで置換される。通常、ベンゼン−1,2−ジオール又はカテコールは、環で共役した基の3、4、5及び6の環の位置の一つ以上で置換される。光起電装置の中の色素感光剤として使用されるとき、そのような化合物は、色素の基底状態から金属酸化物半導体の伝導帯までの「一段階」電子入射ができる。酸化物がチタニアであるとき、この処理は、「色素からTiOへの電荷移動」(DTCT)として知られている。
【0127】
典型的に、それ故に、第2の感光色素は、ベンゼン−1,2−ジオールが非置換、又は3,4,5,或いは6位が式(VI)の基で置換されているベンゼン−1,2−ジオールであり、

−G−[J]j−R” (VI)

式中、Gは、非置換又は置換C2−6アルケニレン、或いは非置換又は置換C1−6アルキルであり、jは0又は1から6までの整数であり、各jは、同一又は異なるものであり、非置換又は置換ヘテロアリーレン基、或いは、非置換又は置換アリーレン基であって、R”はH、C1−15アルキル、N(R”’)又はデンドロンであり、各R”’は、同一又は異なるものであり、H又はC1−6アルキル(ただし、デンドロンはここに定義した通り)である。したがって、デンドロンは、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、分岐基は、3つ以上の基に結合されており、連結基は、2つの基に結合されており、樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換される。
【0128】
より典型的に、この実施形態では、第2の感光色素は、ベンゼン−1,2−ジオールが非置換、又は3,4,5,或いは6位が式(VI)の基で置換されているベンゼン−1,2−ジオールであり、

−G−[J]j−R” (VI)

式中、Gは、非置換、又は置換C2−6アルケニレンであり、jは、1から6までの整数であり、各jは、同一又は異なるものであり、非置換又は置換ヘテロアリーレン基、或いは、非置換又は置換アリーレン基であって、R”は、H、C1−15アルキル、又はデンドロン(ただし、デンドロンはここに定義した通り)である。
【0129】
典型的に、各Jは、同一又は異なるものであり、5又は6員環の非置換又は置換ヘテロアリーレン基、或いは5又は6員環の非置換又は置換アリーレン基(典型的に、6員環の非置換又は置換アリーレン基)である。典型的に、jは1から5までの整数である。より典型的に、jは1から4までの整数である。さらにより典型的に、jは1から3までの整数である。典型的に、Gは、置換C2−6アルケニレンである。より典型的に、Gは、シアノ基で置換されたC2−6アルケニレンである。さらにより典型的には、Gは、2−シアノエチレン基である。典型的にR”はHである。
【0130】
したがって、一実施形態では、第2の感光色素は、式(VII)の化合物であり、
【化9】

式中、R’は、H又はCNであり、wは、1から6までの整数であり、R”は、H、C1−15アルキル、又はデンドロン(ただし、デンドロンはここに定義された通り)である。したがって、デンドロンは、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、分岐基は、3つ以上の基に結合されており、連結基は、2つの基に結合されており、樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換される。典型的に、R’はCNである。典型的に、wは1から5までの整数であり、より典型的に、1から4までの整数であり、さらにより典型的に、1から3までの整数である。典型的に、R”はHである。一実施形態では、wは2から5までの整数であり、より典型的に、2から4までの整数であり、さらにより典型的に、2から3までの整数である。
【0131】
より典型的に、第2の感光色素は、以下の化合物のうちいずれか一つである。
【化10】

【0132】
別の実施形態では、第2の感光色素は、Ru(II)錯体であり、典型的には、ヘテロレプティックRu(II)錯体である。ヘテロレプティックRu(II)錯体は、太陽電池での色素増感剤として有用であることが知られている。通常、ヘテロレプティックRu(II)錯体は、一つ以上の2,2’ビピリジル配位子からなる。この種類の錯体は、とりわけ、特許文献3(欧州特許第1622178号明細書)、特許文献4(欧州特許第0333641号明細書)、特許文献5(欧州特許第0525070号明細書)、特許文献6(欧州特許第0613466号明細書)及び特許文献7(欧州特許第0758337号明細書)で記載されている。第2の感光色素として使用されるヘテロレプティックRu(II)錯体の例として、以下の化合物を含む。
【化11】

【0133】
一実施形態では、発明の色素増感型光起電装置は、式(I)の樹枝状の感光色素及び第2の感光色素からなり、さらに第3の感光色素からなる。第2及び第3の感光色素は、式(I)のデンドリマー以外である。第2及び第3の感光色素は、同一又は異なるものである。典型的に、各々は、Ruからなる感光色素、及びカテコール基からなる感光色素から独立して選択される。したがって、式(I)の樹枝状の感光色素からなる装置は、さらに一つ以上のRu含有の色素、及び/又はカテコール基からなる一つ以上の色素からなる。典型的に、第2の感光色素は、Ru(II)錯体であり、例えば、上に記載されるように、ヘテロレプティックRu(II)錯体である。そして、第3の感光色素は、上に記載されるように、非置換又は置換ベンゼン−1,2−ジオール(すなわち、カテコール)化合物である。
【0134】
式(I)のデンドリマー化合物のいくつかは新規である。したがって、発明は、式(I)のデンドリマーである化合物をさらに備える。

[X]m-コア]([[Y]p)([デンドロン])n (I)

式中、
nは、1から6までの整数であり、
mは、1から6までの整数であり、
各pは、0又は1から5までの整数のいずれかであり、
コアは、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を備え、前記(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合しており、
各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Y]は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外であり、且つ(b)金属酸化物半導体へ結合することができるアンカー基である。
【0135】
発明のデンドリマーは、収束又は分岐ルートで製造されることができるが、収束ルートが好ましい。デンドリマーの生成のための収束又は分岐ルートは、当技術分野で周知であり、例えば、特許文献8〜14(国際公開第99/21935号パンフレット、国際公開第01/59030号パンフレット、国際公開第02/067343号パンフレット、国際公開第2004/020448号パンフレット、国際公開第2004/020504号パンフレット、国際公開第2004/020547号パンフレット、及び国際公開第2004/101707号パンフレット)に記載される。そのような方法は、式(I)のデンドリマーを合成するために当業者によって直ちに使用することができる。
【0136】
コアが金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基である特定のデンドリマーに関しては、デンドロンは適切な配位子と結合することができる。配位子は、樹枝状の金属酸化物を形成するために、その後、金属と結合されることができる。任意に、他の非樹枝状配位子は、その後、錯体と結合されることができる。或いは、適切に反応性官能基を備えた配位子は、金属に錯体化することができ、その後、適切に官能化されたデンドロンで反応した。この後者の方法では、全ての配位子が反応性官能基を持つ必要があるとは限らない。また、したがって、この方法は、金属と錯体化する配位子の全てでなく、いくらかへのデンドロンの連結を許可する。発明の第1世代デンドリマーの実例の収束合成法は、スキームで示される。
【0137】
例1から3及び8には、本発明のデンドリマーを準備する例となる方法を記載する。これらの方法は、しかしながら、発明内の他のデンドリマーを準備するために直ちに修正されることができる。当技術分野で当業者は、例えば、異なる表面基、又は異なる連結基を有するデンドリマーを作るために、適切な出発物質を直ちに準備することができる。反応物の単純な変化は、コアの異なる点で連結されるデンドリマー、又はデンドリマーの遠心端で存在する異なる表面基をもたらすことができる。
【0138】
本発明は、式(I)のデンドリマー増感剤とともに使用されることができるカテコールに基づいた増感剤の新しい種類をさらに備える。それに応じて、本発明は、式(VII)の化合物を備える。
【化12】

式中、R’は、H又はCNであり、典型的にCNであり、wは、2から5までの整数であり、R”は、H、C1−15アルキル、又はデンドロン(ただし、デンドロンはここに定義した通り)である。したがって、デンドロンは、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、分岐基は、3つ以上の基に結合されており、連結基は、2つの基に結合されており、樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、それぞれの末端アリール基及び/又はヘテロアリール基は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換される。
【0139】
そのようなカテコール化合物は、以下の例でここに記載されている処理によって、当技術分野で当業者に周知のどんな適切な処理にも使用して合成することができる。例となる合成は、図8に示され、例6((i)から(iii))に記載される。
【0140】
典型的に、式(VII)発明の化合物は、次の化合物のうちの任意の一つである。
【化13】

【0141】
本発明の色素増感型光起電装置は、従来の処理によって製造されてもよい。
【0142】
本発明の色素増感型光起電装置を生産する処理は、(i)電子受容体物質の層を上に又は超えて形成すること、(ii)感光色素の上に又は超えて置くこと、(iii)酸化還元メディエータ物質の層を上に又は超えて形成すること、感光色素及び電子受容体層、及び(iv)第2電極を上に又は超えて形成すること、酸化還元メディエータ物質からなる。典型的に、インジウムスズ酸化物(ITO)は、FドープITOである。電子受容体層は、必要に応じて、蒸発、視射角蒸着(GLAD)、真空スパッタリング、スピンコーティング、ドクターブレード法、又は溶液処理技術によって置かれてもよい。ドクターブレード法は、物質のスラリーが動翼の刃を用いている基板の上に広げられる金属酸化物材料の層を製造するよく知られている処理である。典型的に、電子受容体層を形成することは、層の蒸着を伴い、その後に蒸着層の乾燥が続く。より典型的に、電子受容体層を形成する段階は、層の蒸着を伴い、その後に蒸着層の乾燥及びアニーリングが続く。典型的に、アニーリングは、400℃から500℃までの温度で実施される。典型的に、金属酸化物は、チタニアである。第1電極及び/又は第2電極の材料は、スパッタリング、蒸着、又は液体前駆体溶液のスピンコーティングによって置かれてもよい。色素、すなわち、式(I)のデンドリマーは、溶液処理によって置かれてもよい。スピンコーティング、印刷、浸漬被膜及び浸水のような従来の溶液処理技術は、色素を置くために使用することができる。液体電解質の場合、電池は、適切な間隔材料を使って隙間を残している間、第1基板の上に、基板上で高い仕事関数の金属からなる第2電極に置くことによって作られる。電池は、そのとき、電解質で満たされる。固体の正孔輸送材料の場合、これらは溶液処理技術、又はチタニア/色素組成の上に蒸着したことによって付け加えられることができる。陽極は、そのとき、多孔質又は多孔質でない、或いは電荷交換の処理を向上させるために構造化された高い仕事関数の金属層を作る適切な熱処理の前に、通常、蒸発によって又は液体前駆体からの蒸着によって正孔輸送層の上に置かれる。
【0143】
本発明は、以下の例でさらに記載される。
【実施例】
【0144】
例1から3:デンドリマーA−22(例1)、A−67(例2)、及びA−68(例3)の合成
【化14】

スキーム1 Ru増感剤A−22、A−67及びA−68の合成
【0145】
(i)DiPy−G1−MEHの合成
【化15】

スキーム2 DiPy−G1−MEHの合成
【0146】
カリウムtert−ブトキシド(0.62g、5.5mmol)をTHF(30mL)中に化合物1(1.00g、2.2mmol)及びG1−MEH−CHO(2.53g、4.9mmol)の溶液に添加した。化合物1は、次の文献にしたがって準備された。(1)A.P.Smithその他、Organic Syntheses、(2004)10、107、(2)L.Viauその他、Tetrahedron Lett、(2004)45、125。化合物2は、次の文献にしたがって準備された。S.−C.Loその他、Adv.Func.Mater.(2005)15、1451。反応混合物は、室温で3時間撹拌された。水(20mL)の添加の後、THFを減圧下で除去した。水の残留をジクロロメタン(200mL)で抽出した。集めた有機層をブライン(100mL)及び水(200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。粗生成物は、2.36g(収率=92%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:3)上のカラムクロマトグラフィー(不活性化された)によって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)8.71(d、2H、J=4.0Hz)、8.62(s、2H)、7.69(s、6H)、7.61(d、8H、J=8.0Hz)、7.58(d、2H、J=16.0Hz、transビニレン)、7.25(d、2H、J=16.0Hz、transビニレン)、7.02(d、8H、J=12.0Hz)、3.92(d、8H、J=4.0Hz)、1.80から0.92(m、60H)。EI/MS C82100の計算値:1177.68m/z、実測値:1177.76m/z。
【0147】
(ii)DiPy−G1−DEHの合成
【化16】

スキーム3 DiPy−G1−DEHの合成
【0148】
化合物3
この化合物は、D.Stewartその他、J.Mater.Chem.(1998)8、47に記載された方法の改良されたものによって準備された。粘性のある液体(収率=70%)。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)7.81(d、1H、J=8.0Hz)、7.68(s、1H)、6.99(d、1H、J=8.0Hz)、4.02から3.95(m、4H)、1.84から0.89(m、30H)。EI/MS C2239BOの計算値:378.35m/z、実測値(+Na(23m/z)):401.28m/z。
【0149】
G1−DEH−CHO
THF(30mL)中のPd(PPhの脱気混合物(92mg、0.08mmol)及び化合物2(1.6g、6mmol)を化合物3(5.0g、13.2mmol)及び炭酸カリウム(2N、15mL)の飽和水溶液に添加した。混合物を12時間還流した後、塩化アンモニウムの飽和溶液へ注いで、ジエチルエーテル(100mL)で3回抽出した。合わせた抽出物をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、残存油は、3.74g(収率=81%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:10)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)10.15(s、1H)、7.98(m、3H)、7.21から7.17(m、4H)、6.98(d、2H、J=8.0Hz)、3.97から3.93(m、8H)、1.81から0.89(m、60H)。EI/MS C5178の計算値:771.76m/z、実測値(+Na(23m/z)):793.57m/z。
【0150】
DiPy−G1−DEH
この化合物は、G1−DEH−CHO(2.0g、2.6mmol)、化合物1(0.53g、1.2mmol)及びカリウムtert−ブトキシド(0.33g、2.9mmol)を利用するDiPy−G1−MEHのために記載された手順にしたがって準備された。粗生成物は、1.70g(収率=87%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:10)上のカラムクロマトグラフィー(不活性化された)によって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)8.71(d、2H、J=4.0Hz)、8.64(s、2H)、7.68(s、6H)、7.60(d、2H、J=16.0Hz、transビニレン)、7.45(dd、2H、J=4.0Hz)、7.26(d、2H、J=16.0Hz、transビニレン)、7.22から7.19(m、8H)、6.99(d、4H、J=8.0Hz)、4.0から3.94(m、16H)、1.84から0.90(m、120H)。MALDI−TOF/MS C114164の計算値:1690.53m/z、実測値:1690.23m/z。
【0151】
(iii)DiPy−G1−TEHの合成
【化17】

スキーム4 DiPy−G1−TEHの合成
【0152】
化合物4
この化合物は、H.Leeその他、Tetrahydron Lett.(2004)45、1019に記載された方法の改良されたものによって準備された。粘性のある液体(収率=63%)。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)7.40(s、2H)、3.99から3.95(m、6H)、1.78から0.89(m、45H)。EI/MS C3055BOの計算値:506.57m/z、実測値(+Na(23m/z)):529.40m/z。
【0153】
G1−DEH−CHO
この化合物は、化合物2(0.95g、3.6mmol)、化合物4(4.0g、7.9mmol)及びPd(PPh(0.05g、0.05mmol)を利用するG1−DEH−CHOのために記載された手順にしたがって準備された。粗生成物は、2.86g(収率=78%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:20)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)10.16(s、1H)、7.99(s、2H)、7.95(s、1H)、6.81(s、4H)、3.95から3.88(m、12H)、1.81から0.89(m、90H)。EI/MS C67110の計算値:1027.59m/z、実測値(+Na(23m/z)):1049.82m/z。
【0154】
DiPy−G1−DEH
この化合物は、G1−TEH−CHO(2.7g、2.6mmol)、化合物1(0.54g、1.2mmol)及びカリウムtert−ブトキシド(0.33g、2.9mmol)を利用するDiPy−G1−MEHのために記載された手順にしたがって準備された。粗生成物は、2.45g(収率=95%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:10)上のカラムクロマトグラフィー(不活性化された)によって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)8.71(d、2H、J=4.0Hz)、8.65(s、2H)、7.69(s、6H)、7.66(s、2H)、7.61(d、2H、J=16.0Hz、transビニレン)、7.26(d、2H、J=16.0Hz、transビニレン)、6.82(s、8H)、3.99から3.87(m、24H)、1.84から0.89(m、180H)。MALDI−TOF/MS C14622812の計算値:2203.38m/z、実測値:2203.61m/z。
【0155】
(iv)Ru錯体の合成
【化18】

スキーム5 Ru錯体A−22の合成
【0156】
A−22、A−67及びA−68のための基本手順:
{RuCl(p−シメン)}(50mg、0.08mmol)及びDiPy−G1−MEH(276mg、0.16mmol)を蒸留されたDMF中で溶解した。反応混合物を窒素下において80℃で4時間加熱した。その次に、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボキシアルデヒド(Dcbpy)(40mg、0.16mmol)を添加し、異性化を回避する縮小された光の下において150から160℃でさらに4時間還流した(2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボキシアルデヒドは、N.Garelliその他、J.Org.Chem.(1992)、57、3046に記載された方法に従って準備された。)。その後、過剰のNHNCS(310mg、4.1mmol)を混合物に添加し、150℃でさらに4時間加熱した。反応混合物を室温で冷却し、溶媒を真空下で回転式蒸発器によって除去した。水(20mL)をフラスコに加え、不溶性の固体を吸引ろ過によって焼結ガラスのるつぼに集めて、蒸留水で洗浄した。粗錯体をメタノール(5mL)中にテトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)の溶液の上で溶解した。濃縮液をセファデックスLH−20カラム上に荷電し、メタノールで溶出した。メインバンドを集め、濃縮した。必要な錯体を0.01M HNOの添加で分離した。
【0157】
A−22(例1)のための特徴づけるデータ:
暗い黒い固体(収率=63.0%)
H−NMR(400MHz、DMSO−d)δ(ppm)9.44(d、1H、J=4.0Hz)、9.17(d、1H、J=4.0Hz)、9.08(s、1H)、8.99(s、1H)、8.93(s、1H)、8.84(s、1H)、8.28(d、1H)、8.08(d、1H)、8.07(s、1H)、8.03(s、1H)、7.92から7.32(m、20H)、7.02(dd、8H、J=8.0、20.0Hz)、3.88(dd、8H、J=8.0、16.0Hz)、1.74から0.86(m、60H)。MALDI−TOF/MS C96108RuSの計算値:1639.12m/z、実測値:1638.7m/z。
【0158】
A−67(例2)のための特徴づけるデータ:
暗い黒い固体(収率=54.0%)
H−NMR(500MHz、DMSO−d、373K)δ(ppm)9.55(d、1H)、9.28(d、1H)、9.17(s、1H)、8.95(s、1H)、8.90(s、1H)、8.80(s、1H)、8.28(d、1H)、8.15(d、1H)、8.07(s、1H)、8.03(s、1H)、7.90から7.20(m、20H)、7.02(dd、4H、J=10.0、20.0Hz)、3.88(dd、16H)、1.74から0.86(m、120H)。MALDI−TOF/MS C12817212RuSの計算値:2151.97m/z、実測値:2151.10m/z。
【0159】
A−68(例3)のための特徴づけるデータ:
暗い黒い固体(収率=30.1%)
H−NMR(500MHz、DMSO−d、373K)δ(ppm)9.55(d、1H)、9.25(d、1H)、9.05(s、1H)、8.95(s、1H)、8.90(s、1H)、8.80(s、1H)、8.28(d、1H)、8.13(d、1H)、8.05(s、1H)、8.03(s、1H)、7.80から7.38(m、12H)、7.02(s、4H)、6.95(s、4H)、3.95から3.83(m、24H)、1.74から0.87(m、180H)。MALDI−TOF/MS C16023616RuSの計算値:2664.82m/z、実測値:2664.60m/z。
【0160】
例4:樹枝状Ru増感剤A−22、A−67、及びA−68の基本的性質
樹枝状Ru増感剤A−22、A−67、及びA−68の基本的な光学的及び物理的性質は、単純なRu増感剤N3及びA−29との比較によって特徴づけられた。これは、樹枝状構造の汎用性を調べて、色素増感太陽電池(DSSC)装置でそれらの性能を予測するためにされた。N3及びA−29の構造は以下の通りである。
【化19】

【0161】
N3は既知のRu増感剤である。A−29は、樹枝状構造に対して非樹枝状構造の特性の調査のために準備された。A−29のビピリジル配位子の共役長は、樹枝状化合物の各々のビピリジル配位子のそれと同じである。
【0162】
樹枝状増感剤A−22、A−67、及びA−68が高い変換効率及び良い安定性の両方を備えた高い性能のDSSC増感剤の要件を達成することがわかった。
【0163】
(i)集光能力
集光効率は、色素のモル吸光係数によって管理される。紫外線光(250から450nm)の領域では、樹枝状Ru増感剤A−22、A−67、及びA−68は、単純なRu増感剤N3及びA−29より高いモル吸光係数をそれぞれ示した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これは、樹枝状増感剤中の4つの追加のフェノキシル発色団によると考えられる。加えて、可視光(450から700nm)の領域では、樹枝状Ru増感剤の最も低いMLCT帯のモル吸光係数は、単純なRu増感剤のそれより高い。得られたデータは、下記の表1に示される。データは、樹枝状増感剤が単純なRu増感剤より多くの光を吸収することを示す。
【表1】

【0164】
(ii)色素の凝集を最小限にすること
励起状態の分子間消光につながることができるときから、Ru増感剤の色素凝集は、大抵、減少した光子から電流へのDSSCの変換効率につながる。全てのルテニウム増感剤のMLCT帯の最大ピークは、色素濃度の増加として赤方偏移することがわかった。それは、最も恐らく色素(色素凝集)の分子間相互作用によるものである(図4参照)。図4に示すように、色素濃度の増加に起因する最大ピークの赤方偏移の程度は、Ru増感剤の増加のかさばり(すなわち、増加する順に、N3→A−29→A−22→A−67→A−68)につれて減少する。これは、樹枝状Ru増感剤が単純なRu増感剤(N3及びA−29)より分子凝集に影響されにくいことを示す。
【0165】
(iii)液体イオン電解質の浸透によってTiOの表面から色素脱着を防ぐこと
色素脱着されたTiO基板の疎水性は、裸のTiOを備えた三ヨウ化物の相互作用を妨げることにとって重要であると思われる。それは、順々に、TiO伝導帯から三ヨウ化物までの逆電子移動を遅らせて、TiO表面から色素の脱着を防ぐ。それらの多くの末端のかさ高いアルキル鎖に起因して、樹枝状Ru増感剤A−22、A−67、及びA−68は、単純なRu増感剤N3及びA−29より良い疎水性を示すことが接触角度測定によってわかった(表2参照)。
【表2】

【0166】
(iv)色素の熱安定性を高めること
それらが非常に厳しい環境に曝されるので、DSSC増感剤は、長期の装置安定性のために高い熱安定性を必要とする。熱重量分析(TGA)によれば、樹枝状Ru増感剤A−22、A−67、及びA−68は、それらの強く硬質な芳香族の樹枝状配位子構造に起因して、単純なRu増感剤N3及びA−29より高い熱安定性を示す(図5及び表3参照)。図5は、N3、A−29、A−22、A−67及びA−68の各々のTGA曲線を示す。
【表3】

【0167】
例5:樹枝状Ru増感剤の装置性能
ここで使用されるTiO膜は、ダイソル株式会社(オーストラリア ニューサウスウェールズ州クインビヤン)から購入された。それらは、20nmアナターゼ型TiO粒子の11から12μm厚膜、及びフッ素ドープ酸化スズ(FTO)の15オーム/スクエア膜でコーティングを施したガラス基板上の10重量パーセント400nm散乱分子からなる。膜の表面積は、約80m/gである。購入されるとき、陰極の膜は、長さ11mmで幅8mmだった。この面積は、FTOでの直列抵抗損失の影響を最小限にするために、かみそり刃で一部の膜を除去することによって、長さ11mmで幅約2mmまで縮小された。改良された膜の正確な幅は、ノギスで測定された。改良した後、膜は、空気中において450℃で30分間焼成された。プラチナバックコンタクトもまた、ダイソル株式会社から購入された。それらは、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)の15オーム/スクエア膜でコーティングを施したガラス基板上のスクリーン印刷されたプラチナ膜からなる。A−22は、ジメチルホルムアミド(DMF):ジメチルスルホキシド(DMSO)=1:1とする0.3mM溶液に導入された。色素は、光電陰極を色素溶液中に少なくとも18時間浸すことによって導入された。もし、光電陰極が焼成に続いてすぐに使われるならば、基板は約100℃に冷却され、膜の上への水の吸着を防ぐために色素溶液中にすぐに浸された。もし、すぐに使用されないのであれば、陰極は、膜上のどんな水も除去するために色素溶液中に浸される前に、100℃を超える温度で10分間加熱された。色素溶液からの除去で、感作された光電陰極は、A−22電池のためにアセトニトリル及びDMFのいずれかですすがれた。電池は、25μmのデュポン社サーリン膜から切断されたガスケットを備えたPt電極基板に光電陰極基板を密閉することによって構築された。ガスケットは、溶融サーリンが多孔質の光電陰極に浸透するのを防ぐために、電池の活性化領域よりわずかに大きく切断された。また、チャンネルは、電解質の充満を許すためにガスケットに残された。電解質は、Pt堆積より前に基板で開けられる1mm直径の穴を通じて充満された。電池は、0.5M LiI、0.04M I及び0.5M 4−tert−ブチルピリジンの電解質で、ガスケット中のチャンネル又は予め穴開けされた穴のいずれかを通って充填された。電池は、ホットメルトグルーを用いて密閉される。最後に、電池は、低温のインジウム及び銀はんだを備えたTCO基板の各々に銅線のはんだ付けをすることによって接触させる。樹枝状Ru増感剤(A−22)のうちの一つの装置性能は、図6及び表4に要約される。A−22は、再生可能な方法で比較的高い変換効率を示す。
【表4】

【0168】
例6:最適化研究:TiO基板上へのRu増感剤の吸着
研究は、装置で使用するTiO基板上への樹枝状Ru増感剤A−22、A−67及びA−68の吸着のための最良の条件を見つけるために行われた。それらの研究では、様々な浸漬溶液条件が浸漬溶媒組成、浸漬溶液温度及び純溶媒のように研究された。これらのパラメータを研究する信頼性のある方法は、以下のように確立された。3mLの色素溶液(×10mol/L)は、パイレックス(登録商標)の丸底フラスコに投入された。適切に切断されたTiO基板は、フラスコに投入された。フラスコ注入口は、栓及びテフロン(登録商標)テープによってきつく密閉された。24時間浸漬した後に、溶液は、TiO基板上への吸着色素の濃度が計算されることができるように、紫外/可視吸光分光法によって測定された。
【0169】
(i)浸漬溶液温度
室温から50℃に下がっている浸漬溶液温度を増加させることがTiO上の吸着色素の濃度を大いに高めないことがわかった。それゆえ、80℃の高い浸漬溶液温度で、TiO基板上の吸着されたA−67分子の濃度は、わずかに減少した。この結果は、溶液に浸漬したTiO基板からの色素脱着処理が高温環境で加速されることを示す。結果は、下記の表5に要約される。
【表5】

【0170】
要約すれば、熱エネルギーによって引き起こされた吸着及び脱着処理の競合による浸漬溶媒の温度がTiO基板上の色素吸着を高めないことがわかった。
【0171】
(ii)浸漬溶液の純度
浸漬溶媒中の水分は、TiO上の色素吸着に影響することができる。DMF中の水分がどのくらいTiO上の色素吸着の濃度に影響するか調べるために、吸着されたA−67分子の濃度は、非蒸留されたDMF溶媒及び工業用のDMFから蒸留された乾燥したDMF溶媒の両方を使用して室温で測定された。結果は、DMFの純度がTiO基板上に吸着されたA−67色素の量への効果が乏しいことを示す下記の表6に要約される。
【表6】

【0172】
(iii)浸漬溶液の組成
浸漬溶媒の極性、及び浸漬溶媒中の色素分子の溶解度がTiO基板上への色素吸着の濃度に強く影響することが知られている。樹枝状Ru増感剤のための最適な浸漬溶液の組合せを見つけるために、TiO基板上に吸着された色素の量は、様々な浸漬溶媒の組合せを使用して室温で測定された。
【0173】
テストされる溶媒のうち、それは、DMF(A−22のための良い溶媒):MeCN(TiO上の良い吸着溶媒)(1:1)は、TiO上の高いA−22吸着のための最良の浸漬溶媒組成であることがわかった(表7参照)。
【表7】

【0174】
テストされる溶媒のうち、それは、DMF(A−67のための良い溶媒):MeCN(TiO上の良い吸着溶媒)(9:1)は、TiO上の高いA−67吸着のための最良の浸漬溶媒組成であることがわかった(表8参照)。
【表8】

【0175】
テストされる溶媒のうち、それは、DMF(A−68のための良い溶媒):MeCN(TiO上の良い吸着溶媒)(9:1)は、TiO上の高いA−68吸着のための最良の浸漬溶媒組成であることがわかった(表9参照)。
【表9】

【0176】
しかしながら、全体として、浸漬溶媒の極性及び色素吸着との間に強い関係はなかった。
【0177】
要約すれば、混合された溶媒系、特に、DMF及びアセトニトリル(MeCN)混合物がTiO上の樹枝状色素の吸着を効果的に高めることができたことがわかった。DMFは、樹枝状Ru増感剤A−22、A−67及びA−68のための良い溶媒であり、また、MeCNは、TiO基板上の高い色素吸着のための共溶媒であることが知られている。しかしながら、Ru増感剤A−22、A−67及びA−68は、アセトニトリル中で乏しい溶解度を有する。したがって、TiO上の高い色素吸着のために適切に二つの溶媒を混合することが必要である。TiO上に吸着された樹枝状色素の量は、色素分子間の立体障害物のために、モル体積増加(A−22→A−67→A−68)につれて減少するために吸着された。
【0178】
例7:樹枝状Ru色素増感剤及び追加の色素増感剤からなるハイブリッドDSSCs
一般に、DSSC’sは、電子入射経路から色素までのTiOの伝導帯によって、2つのタイプに分類されることができる(図7参照)。1つは、色素(例えば、Ru(II)錯体)の励起状態からTiOの伝導帯まで電子が入射されるグレッツェル型DSSCである(2段階電子入射)。他方は、色素からTiOへのCT(DTCT)帯の光誘起された電荷移動(CT)励起によってTiOの伝導帯へ色素の基底状態からの1段階電子入射である。
【0179】
A−22、A−67及びA−68のような樹枝状Ru増感剤を有するDSSC’sの変換効率は、追加の光子から電流への変換源(TiO基板上の樹枝状Ru色素増感剤より小さい増感剤)の共吸着によって改良されることができる。Ruデンドリマーで共吸着される増感剤は、単純なRu増感剤であり、例えば、N3又はA29、又は或いはDTCT色素である。DTCT色素は、π共役カテコール分子を含む。そのような分子は、色素の基底状態からTiOの伝導帯への「1段階」電子入射を生じさせる直接の色素からTiOへの電荷移動によって、光起電増感剤として使用することができる。DTCT色素の新しい種類であるA−78、A−103及びA−115は、それゆえ、設計されて準備される。A−78、A−103及びA−115の構造は、以下の通りである。
【化20】

【化21】

【0180】
以下に記載される共吸着実験結果によれば、樹枝状Ru増感剤、例えば、A−22、A−67及びA−68が、A−78、A−103又はA−115のような小さな増感剤を備えたTiOの上への共吸着のための適切な対象であることが証明された。一方、単純なRu増感剤は、A−78、A−103又はA−115のようなDTCT色素を備えた共吸着のための対象として良くない。これは、単純なRu色素がDTCT色素の共吸着の間、TiOからの脱着の影響を受けやすいからである。
【0181】
(i)A−78の合成
【化22】

スキーム6 A−78の合成
【0182】
化合物6
化合物5(1g、3.1mmol)及び、t−ブタノール及びTHF混合物(10mL:2mL)中の2−チオフェンアセトニトリル(アルドリッチ、0.39g、3.1mmol)の撹拌溶液に、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)溶液(0.34mL、0.3mmol)は、ゆっくり加えられた。(化合物5は、C.C.Liその他、J.Org.Chem.(2003)68、8500中に記載された方法に従って準備した。)2時間後、混合物は水に注がれ、ジクロロメタン(200mL)で抽出される。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、粗生成物は、1.0g(収率=75%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:3)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)7.62(s、1H)、7.50(d、2H、J=8.0Hz)、7.45(d、2H、J=8.0Hz)、7.41から7.24(m、10H)、7.05(t、1H)、6.95(d、1H、J=8.0Hz)、5.25(s、2H)、5.24(s、2H)。EI/MS C2721NOSの計算値:423.53m/z、実測値(+NH(18m/z)):441.16m/z。
【0183】
A−78
化合物6(0.8g、1.9mmol)は、氷酢酸(5mL)及び濃HCl(5mL)に溶解され、120℃、N下で撹拌された。2時間後、反応混合物は、水(100mL)に注がれ、ジクロロメタン(200mL)で抽出される。有機層を水(100mL)で3回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、粗生成物は、0.25g(収率=55%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:3)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、DMSO−d)δ(ppm)7.60(s、1H、J=4.0Hz)、7.55(s、1H)、7.48(s、1H)、7.34(d、1H、J=4.0Hz)、7.14(d、1H、J=8.0Hz)、6.85(t、1H)、6.83(d、1H、J=8.0Hz)。EI/MS C13NOSの計算値:243.28m/z、実測値(+Na(23m/z)):266.02m/z。
【0184】
(ii)A−103の合成
【化23】

スキーム7 A−103の合成
【0185】
化合物7
THF(25mL)中のPd(PPh(217g、0.18mmol)、及び2−(5−ブロモチオフェン−2−イル)アセトニトリル(1.86g、9mmol)の脱気された混合物は、2−チエニルボロン酸(アルドリッチ、2.0g、15.6mmol)及び炭酸カリウムの飽和水溶液(2N、15mL)に加えられた。(2−(5−ブロモチオフェン−2−イル)アセトニトリルは、N.S.Choその他、Macromolecules、(2004)、37、5265中に記載された方法に従って準備された。)混合物を12時間還流した後、塩化アンモニウムの飽和溶液へ注いで、ジエチルエーテル(100mL)で3回抽出した。合わせた抽出物をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、残存油は、0.71g(収率=38%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:5)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)7.24(d、1H、J=4Hz)、7.15(d、1H、J=4Hz)、7.05から7.02(m、2H)、6.97(d、1H、J=4Hz)、3.90(s、2H)。
【0186】
A−103
化合物5(0.78g、2.4mmol)及び、t−ブタノール及びTHF混合物(10mL:2mL)中の化合物7(0.5g、2.4mmol)の撹拌溶液に、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)溶液(0.24mL、0.2mmol)は、ゆっくり加えられた。2時間後、混合物は水に注がれ、ジクロロメタン(200mL)で抽出される。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、粗生成物は、化合物8の1.0g(収率=83%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:5)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。
【0187】
化合物8(0.8g、1.6mmol)は、氷酢酸(10mL)及び濃HCl(5mL)に溶解され、120℃、N下で撹拌された。2時間後、反応混合物は、水(100mL)に注がれ、ジクロロメタン(200mL)で抽出される。有機層を水(100mL)で3回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、粗生成物は、A−103の0.32g(収率=62%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:3)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、メタノール−d)δ(ppm)7.53(s、1H)、7.41から7.07(m、6H)、7.09(m、1H)、6.85(dd、1H、J=4,8Hz)。EI/MS C1711NOの計算値:325.40m/z、実測値(+Na(23m/z)):348.01m/z。
A−103の合成は、図8に概略的に示される。
【0188】
(iii)A−115の合成
【化24】

スキーム8 A−115の合成
【0189】
化合物9
THF(40mL)中のPd(PPh(0.23g、0.2mmol)、及び2−(5−ブロモチオフェン−2−イル)アセトニトリル(2.0g、9.9mmol)の脱気された混合物は、2,2’−ビチオフェン−5−イルボロン酸(3.5mg、16.9mmol)及び炭酸カリウムの飽和水溶液(2N、20mL)に加えられた。(2,2’−ビチオフェン−5−イルボロン酸は、M.Melucciその他、J.Org.Chem.(2002)、67、8877中に記載された方法に従って準備された。)混合物を12時間還流した後、塩化アンモニウムの飽和溶液へ注いで、ジエチルエーテル(100mL)で3回抽出した。合わせた抽出物をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、残存油は、0.80g(収率=28%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:5)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)7.24(d、1H、J=4Hz)、7.18(d、1H、J=4Hz)、7.08(d、1H、J=4Hz)、7.06から7.03(m、3H)、6.98(d、1H、J=4Hz)、3.91(s、2H)。
【0190】
A−115
化合物5(0.78g、2.4mmol)及び、t−ブタノール及びTHF混合物(10mL:2mL)中の化合物9(0.70g、2.4mmol)の撹拌溶液に、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)溶液(0.24mL、0.2mmol)は、ゆっくり加えられた。2時間後、混合物は水に注がれ、ジクロロメタン(200mL)で抽出される。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、粗生成物は、化合物10の0.6g(収率=42%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:5)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。
【0191】
化合物10(0.15g、0.3mmol)は、氷酢酸(15mL)及び濃HCl(5mL)に溶解され、120℃、N下で撹拌された。2時間後、反応混合物は、水(100mL)に注がれ、ジクロロメタン(200mL)で抽出される。有機層を水(100mL)で3回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を回転式蒸発器によって除去した後、粗生成物は、A−115の0.09g(収率=86%)を備えるために、シリカゲルカラム(酢酸エチル:石油エーテル=1:1)上のカラムクロマトグラフィーによって精製された。H−NMR(400MHz、アセトン−d)δ(ppm)8.70(s、1H、−OH)、8.60(s、1H、−OH)、7.68(s、1H)、7.50(m、3H)、7.35から7.24(m、6H)、7.12(t、1H)、6.90(d、1H、J=4Hz)。EI/MS C2113NOの計算値:407.53m/z、実測値:406.20m/z。
A−115の合成は、図8に概略的に示される。
【0192】
(iv)A−78、A−103及びA−115の特性の要約
新たに設計されたπ共役カテコール分子、A−78、A−103及びA−115は、TiOナノ粒子及びTiO基板の両方の上に良い色素吸着を示す。
【0193】
カテコール色素の溶液(MeOHに、5×10−5mol/L)の色は、TiOナノ粒子(およそ5nm、アナターゼ)が加えられたとき、より濃く及びより暗くなった。それは、カテコール分子がTiOナノ粒子で電荷移動(CT)錯体を形成することを示す。
【0194】
カテコール分子の吸着最大値及びカットオフピークは、チオフェン部分の増加(A−78→A−103→A−115)の数として赤方偏移する。これは、色素の集光性効率がカテコール分子増加のπ共役長につれて増加することを示す。吸着されたカテコール分子を備えたTiO基板の色は、π共役長の増加につれてより暗くなる。これは、色素−TiO基板錯体のCT帯の赤方偏移のためである。
【0195】
A−78、A−103及びA−115の直接の色素からTiOへの電荷移動(CTDT)は、色素吸着されたTiO基板のための蛍光消光の観察によって確認された。カテコール分子もまた、カテコールを備えた電荷移動錯体を形成しないSiO(TLC)板上に吸着された。色素吸着されたTiO基板とは違って、色素吸着されたSiO板は、顕著な変色を示さなかった。これは、SiOとカテコール色素分子との間のCT錯体構造の欠如が原因だった。
【0196】
基板が紫外線光で照射されるとき、TiO基板で色素分子のCT錯体の存在は、さらに明白である。色素吸着されたSiO基板は、波長光365nmの照度下で、強い蛍光を示すのに対して、色素吸着されたTiO基板は、励起子が色素の基底状態からTiOの伝導帯へ直接移動されるDTCT錯体の構造による強い蛍光消光を示す。これは、図9で説明される。
【0197】
図10は、A−78、A−103及びA−115のために、基板の浸漬時間に対するTiO基板上に吸着された色素分子の数を示す。焼結されたTiO基板は、室温で24時間浸漬された。基板の面積は、0.88cm(0.8cm×1.1cm)である。TiO基板上に吸着することができるカテコール色素の量(色素分子の数)は、カテコール分子の酸性度及び分子サイズと関連しているように思われる。テストされたカテコール分子のうち、A−103は、BuOH/アセトニトリル中の単純なRu増感剤N3(N/cm=109.2×1015)よりさらに高い最大吸着数(N/cm=117.3×1015)を有する。
【0198】
図10に示すように、基板の浸漬時間に対するTiO基板上に吸着されたA−78及びA−103色素分子の数の傾きは、9時間後に平坦域レベルに達するのに対して、A−115のための傾きは、その時にまだ急勾配である。それゆえ、A−115分子が24時間浸漬した後もTiO基板上に連続して吸着されることができることが観察された。N/cm(24時間)=105.3×1015であるのに対して、N/cm(48時間)=113.6×1015であり、8%の増加は24時間から48時間まで観察された。これは、図11に示すことができ、室温で48時間、A−115溶液中にTiO基板を浸漬した後、焼結されたTiO基板上に吸着されたA−115分子の数の増加と同様に、MeOH(5×1015mol/L)中のA−115の溶液の416nmで吸光度の減少も示す。使用される基板の面積は、0.88cm(0.8cm×1.1cm)だった。
【0199】
(v)TiO基板上への光起電増感剤の共吸着
集光性、及び樹枝状のA系に基づく光起電装置の光子から電流への変換効率は、これらの小さい色素がTiOナノ粒子の表面上に加えて吸着されることができるので、かさ高い樹枝状Ru色素吸着されたTiO基板上への小さいサイズのカテコール色素(例えば、A−78、A−103及びA−115)又は、Ru色素(例えば、N3、A−29)の共吸着によって改良されることができる。順に、集光性効率を増加させ、酸化還元メディエータ(例えば、イオン電解質)分子を備えたTiOナノ粒子の接触を防ぐ(図13)。
【0200】
A系色素吸着されたTiO基板上へのカテコール色素の効率的な共吸着については、A系色素がTiO基板から脱着されてはならない。
【0201】
(a)N3及びA−29吸着されたTiO基板上へのカテコール色素A−78の共吸着
N3及びA−29分子がTiO基板上へのA−78の共吸着の間、TiO基板から脱着されるので、N3及びA−29吸着されたTiO基板が共吸着に適していないことがわかった。これは、図12及び14で観察されることができる。図12は、室温で24時間、N3吸着されたTiO基板の浸漬後、MeOH(5×10mol/L)中のA−78の吸光変化を示す。図14は、室温で24時間、A−29吸着されたTiO基板の浸漬後、MeOH(5×10mol/L)中のA−78の吸光変化を示す。
【0202】
(b)デンドリマー(A−22及びA−67)吸着されたTiO基板上へのカテコール色素A−78の共吸着
N3及びA−29吸着されたTiO基板の場合と異なり、A−22及びA−67分子は、A−22及びA−67吸着されたTiO基板の共吸着の間、TiO基板から脱着されなかった。A−22又はA−67分子が吸着されるとき、これは、TiOの表面でMeOH分子の減少された浸透及び接触によるかもしれない。結果は、図15及び16に示される。図15は、室温で24時間、A−22吸着されたTiO基板の浸漬後、MeOH(5×10mol/L)中のA−78の吸光変化を示す。図16は、室温で24時間、A−67吸着されたTiO基板の浸漬後、MeOH(5×10mol/L)中のA−78の吸光変化を示す。
【0203】
A−22吸着されたTiO基板上、及びA−67吸着されたTiO基板上へ吸着されたA−78分子の量(N/cm)は、それぞれ34.4×1015及び40.7×1015である。これらの値は、裸のTiO基板上へ吸着されたA−78分子の量より低い(N/cm、88.5×1015)(それぞれ、約61%及び54%の減少)。これは、図17に示されており、室温で24時間、基板を浸漬する間、以下のTiO基板上に吸着されたA−78分子の数の変化を示す。:裸のTiO基板、A−22吸着された基板、及びA−67吸着された基板(全て0.88cm(0.8cm×1.1cm)の面積を備える。)しかしながら、これらの結果は、A−78色素の追加量(約39%及び46%)がRu色素を失わずに、樹枝状Ru色素吸着されたTiO基板上に吸着されることができ、またDTCT処理によって追加の光子から電子への変換が期待できることを示す。
【0204】
(c)デンドリマー(A−22及びA−67)吸着されたTiO基板上へのカテコール色素A−115の共吸着
カテコール色素テストの最も高い光子から電流への変換効率を有することが期待されるA−115色素は、より多くの最適化された光起電装置を準備するためにA−22吸着されたTiO基板、及びA−67吸着されたTiO基板上に吸着された。A−22及びA−67吸着されたTiO基板は、使用され、最も良い浸漬溶液によって準備された。A−22吸着されたTiO基板は、DMF:MeCN=1:1(N/cm=75.1×1015)、A−67吸着されたTiO基板は、DMF:MeCN=9:1(N/cm=69.0×1015)である。A−22吸着されたTiO基板上へのA−78分子の共吸着の場合と異なり、A−22分子は、A−22吸着されたTiO基板上へのA−115分子の共吸着の間、TiOから極めてわずかに脱着された。これは、A−115分子の吸着力がA−78それより強いからかもしれない。これらの結果は、図18に示され、室温で24時間、A−22吸着されたTiO基板の浸漬後、MeOH(5×10−5mol/L)中のA−115の吸光変化を示す。A−67分子は、しかしながら、A−67吸着されたTiO基板上へのA−115の共吸着の間、TiO基板から脱着されなかった(図19)。
【0205】
A−22吸着されたTiO基板上、及びA−67吸着されたTiO基板上へ吸着されたA−115分子の量(N/cm)は、それぞれ24.7×1015及び51.5×1015である。これらの値は、裸のTiO基板上へ吸着されたA−115分子の量より低い(N/cm、105.3×1015)(それぞれ、約76%及び51%の減少)。これは、図20に示されており、室温で24時間、基板を浸漬する間、以下のTiO基板上に吸着されたA−115分子の数の変化を示す。:裸のTiO基板、A−22吸着された基板、及びA−67吸着された基板(全て0.88cm(0.8cm×1.1cm)の面積を備える。)しかしながら、これらの結果は、A−115色素の追加量(それぞれ約24%及び49%)がRu色素をほとんど失わずに、樹枝状Ru色素吸着されたTiO基板上に吸着されることができ、またDTCT処理によって追加の光子から電子への変換が期待できることを示す。
【0206】
(d)樹枝状A系色素吸着されたTiO基板上への小さなRu色素の共吸着
グレッツェル型Ru増感剤は、大抵、DTCT増感剤(例えば、カテコール分子)より良い光子から電流への変換効率を示す。もし、小さいサイズのRu増感剤が我々のA系色素吸着されたTiO基板上に加えて吸着されるならば、樹枝状A系に基づく光起電装置の変換効率は、改良することができるかもしれない。
【0207】
高い変換効率を備えた既知のRu増感剤(N3)は、A−22、A−67及びA−68吸着されたTiO基板上へ共吸着された。A−22、A−67及びA−68吸着されたTiO基板は、純粋なDMF浸漬溶液を用いて準備された。A−22吸着されたTiO基板はDMF(N/cm=63.5×1015)、A−67吸着されたTiO基板はDMF(N/cm=62.8×1015)、A−68吸着されたTiO基板はDMF(N/cm=44.4×1015)を用いた。樹枝状Ru色素吸着された基板上へのカテコール分子の共吸着のように、樹枝状Ru色素(A−22、A−67及びA−68)は、A−22、A−67及びA−68吸着されたTiO基板上へのN3分子の共吸着の間、TiO基板から脱着されなかった。これは、A−22、A−67及びA−68の樹枝状配位子のπ−π遷移帯である340nmでの吸光帯の変化によって確認された。A−22、A−67及びA−68は、340nmでのπ−π遷移帯の非常に高いモル係数を有する。結果は、図21から図23で示される。図21から図23は、それぞれ、室温で24時間、A−22吸着されたTiO基板、A−67吸着されたTiO基板、及びA−68吸着されたTiO基板の浸漬後、MeCN:BuOH(1:1)(1×10mol/L)中のN3の吸光変化を示す。A−22、A−67及びA−68吸着されたTiO上に吸着されたN3の数(N/cm)は、それぞれ、39.6×1015、29.6×1015、39.2×1015である。これらの値は、裸のTiO上へ吸着されたN3の量より低い(N/cm=109.2×1015)(それぞれ、約64%、73%及び64%の減少)。しかしながら、これらの結果は、N3色素の追加量(それぞれ、約36%、27%及び36%)がRu色素をほとんど失わずに、樹枝状Ru色素吸着されたTiO基板上に吸着されることができ、またN3によって追加の光子から電子への変換が期待できることを示す。
【0208】
要約すれば、樹枝状の疎水性Ru増感剤A−22、A−67及びA−68がTiO基板からほとんど脱着しないでカテコール色素(A−78及びA−115)及び小さいサイズのRu増感剤(N3)で効果的に共吸着されるのに対して、より少ない疎水性の非樹枝状Ru増感剤N3及びA−29は、共吸着処理の間、TiO基板から脱着された。カテコール色素(A−78及びA−115)及び、樹枝状の疎水性Ru増感剤を備えた小さいサイズのRu増感剤は、図24から図26に要約される。図24は、MeOH(5×10mol/L)中のA−78溶液を用いる裸のTiO基板、A−22吸着されたTiO基板、A−67吸着されたTiO基板上へ吸着されるA−78分子の数の比較を示す。図25は、MeOH(5×10mol/L)中のA−115溶液を用いる裸のTiO基板、A−22吸着されたTiO基板、A−67吸着されたTiO基板上へ吸着されるA−115分子の数の比較を示す。図26は、MeOH:BuOH(1:1)(1×10mol/L)中のN3溶液を用いる裸のTiO基板、A−22吸着されたTiO基板、A−67吸着されたTiO基板上へ吸着されるN3分子の数の比較を示す。TiO基板上のRu色素で共吸着されたA−78及びA−115がTiOで単独のA−78又はA−115より高い変換効率を有するであろうことが期待できる。N3及び樹枝状色素の合計の共吸着された量は、「N3のみの」TiO基板上のN3色素の量より小さい。しかしながら、A−22、A−67及びA−68のMLCTのモル吸光係数が、それぞれ、N3のそれより1.46、1.55及び1.63倍大きいので、共吸着されたTiO基板がN3のみで吸着された基板よりMLCTの高い変換効率を有するだろうことが期待できる。
【0209】
例8:デンドリマーL01の合成
【化25】

【0210】
(i)段階1 CarbFl−PhCHOの準備
乾燥した25mLシュレンク管に、1,3−ジブロモ−5−(ジトメトキシメチル)ベンゼン(150mg;0.484mmol)、3,5−ビス(3,6−ビス(9,9−ジ−n−プロピルフルオレン−2−イル)カルバゾール(J.Mater.、Chem.、(2008)、18、2121を参照することによって準備された。706mg;1.06mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(41.3mg;0.04mmol)、トリ(tert−ブチル)ホスホニウムテトラフルオロホウ酸(46.7mg;0.16mmol)、無水炭酸カリウム(398mg;2.88mmol)及び18−クラウン−6−エーテル(29mg;0.11mmol)を添加した。この混合物は、真空下で脱気された後に、アルゴンで再封入され、その後、キシレンがアルゴン流れ下で添加された。結果として生じる溶液は、3ポンプ/フィルサイクルで脱気された後、130℃で熱せされて、一晩撹拌される。反応は、室温で冷却された後、反応混合物はセリットを通して濾過された。溶液は回転式蒸発器によって除去された後、粗生成物はカラムクロマトグラフィーによって精製され、軽ガソリン中の1:9酢酸エチルで溶出された。第1留分は集められ、且つ溶媒は除去された。残留は、ヨウ素(100mg;0.4mmol)を備えたアセトン(30mL)中に溶解された。混合物は、アセトンが除去される前に、室温で3時間撹拌された。粗生成物がジクロロメタン(20mL)中に溶解された後、5%w/w含水チオ硫酸ナトリウム(10mL)、水(10mL)及びブライン(10mL)で洗浄され、無水硫酸マグネシウム上で乾燥され、その後、黄色固体(498mg;72%)としてCarbFl−PhCHOを残すために濃縮された。H−NMR(500MHz、CDCl)δ10.32(s、1H、CHO)、8.55(s、4H、Cbz)、8.37(s、2H、Ph)、8.29(s、1H、Ph)、7.86(d、J=8.5、4H、Cbz)、7.83(d、J=7.7、4H、Fl)、7.76(d、J=7.8、4H、Fl)、7.73(d、J=8.3、4H、Cbz)、7.73(s、4H、Fl)、7.41から7.33(m、12H、Fl)、2.12から2.01(m、16H、Pr)、0.84から0.75(m、8H、Pr)、0.73から0.70(m、12H、Pr)。MS(MALDI−TOF)実測値1428.54、計算値1428.78。
【化26】

【0211】
(ii)段階2 DiPy−Sty−CarbFlの準備
THF(4mL)中のCarbFl−PhCHOの混合物(260mg;0.18mmol)、1(35mg;0.091mmol)は、THF(1mL)中のカリウムtert−ブトキシドの溶液を低下的に添加された。結果として生じる茶色の溶液は、室温で3時間撹拌された。このとき、反応が水(10mL)で急冷された後、反応混合物は、回転式蒸発器によって濃縮された。薄茶色の懸濁液は濾過された。次に、沈殿物は、水(25mL)で洗浄され、粗生成物が微晶質の黄色粉末(218mg;80%)のようなDiPy−Sty−CarbFlを提供するために、ジクロロメタン/ヘキサン混合物の蒸発を遅らせることによって再結晶された。MS(MALDI−TOF)実測値3005.6、計算値3005.6。νmax3056(芳香族C−H);2935、2928、2868(アルキルC−H);1587(Cbz C−N)1465、1446(芳香族C=C);960(trans−アルケンC−H)。λmax(nm、logε)324、5.57;273、5.24。
【化27】

【0212】
(iii)段階3 デンドリマーL01の準備
凝縮器が取り付けられ、乾燥して光排除された10mlフラスコは、N,N−ジメチルホルムアミド(3mL)、Ru(II)(p−シメン)Cl二量体(5.1mg;0.008mmol)及びDiPy−Sty−CarbFl(50mg;0.016mmol)が添加された。系は、4時間撹拌して80℃で加熱される前に、アルゴンで除去された。このとき、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸(4.1mg;0.016mmol)が添加された後、反応は、150℃で4時間加熱された。チオシアン酸アンモニウム(31.6mg;0.42mmol)は添加され、反応がさらに4時間撹拌された。このとき、結果として生じる紫色の溶液は室温で冷却された後、水(10mL)が添加される前に、反応溶媒の嵩は回転式蒸発器によって除去された。粗生成物は、ジクロロメタンで膨潤し、ジクロロメタンで溶出されるセファデックスLH−20ビーズの上のサイズ排除クロマトグラフィーによって精製された。主な紫色の帯は、暗い紫色の粉末の37mgを与えるために集められた。H−NMR(400MHz、CDCl)δ(ppm)、8.44(s、8H);8.14(s、2H);8.01(s、4H);7.79から7.10(m、br、56H)、1.93から1.89(m、32H);0.7から0.2(m、80H)。λmax(nm、logε)549、4.02;324、5.58、273、5.22。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0213】
【特許文献1】欧州特許第0737358号明細書
【特許文献2】欧州特許第1087412号明細書
【特許文献3】欧州特許第1622178号明細書
【特許文献4】欧州特許第0333641号明細書
【特許文献5】欧州特許第0525070号明細書
【特許文献6】欧州特許第0613466号明細書
【特許文献7】欧州特許第0758337号明細書
【特許文献8】国際公開第99/21935号公報
【特許文献9】国際公開第01/59030号公報
【特許文献10】国際公開第02/067343号公報
【特許文献11】国際公開第2004/020448号公報
【特許文献12】国際公開第2004/020504号公報
【特許文献13】国際公開第2004/020547号公報
【特許文献14】国際公開第2004/101707号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された(a)金属酸化物半導体からなる電子受容体物質、(b)酸化還元メディエータ物質、(c)式(I)のデンドリマーからなる感光色素とを備える色素増感型光起電装置であって、

[X]m-コア]([[Y]p)([デンドロン])n (I)

式中、
nは、1から6までの整数であり、
mは、1から6までの整数であり、
各pは、0又は1から5までの整数のいずれかであり、
コアは、非ポリマー性有機基、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を有し、前記(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合しており、
各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Y]は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外、且つ(b)前記金属酸化物半導体に結合されたアンカー基であることを特徴とする色素増感型光起電装置。
【請求項2】
前記コアは、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項3】
前記コアは金属錯体であり、該金属錯体は金属原子又は金属イオンと、一つ以上の配位子とからなり、前記又は各X基は、前記金属錯体の配位子に結合され、且つ前記又は各デンドロン、或いは有する場合、前記又は各Y基は、前記金属錯体の配位子に結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項4】
前記コアは金属錯体であり、該金属錯体は金属原子又は金属イオン、第1の配位子及び第2の配位子からなり、前記又は各X基は、前記第1の配位子に結合され、且つ前記又は各デンドロン、或いは有する場合、前記又は各Y基は、前記第2の配位子に結合されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項5】
前記デンドリマーは、式(II)の金属錯体であり、
【化1】

式中、
Mは、金属原子又は金属イオンであり、
A1、A2、A3及びA4の各々は、同一又は異なるものであり、炭素及び窒素から別個に選択され、
各B1、B2、B3及びB4は、同一又は異なるものであり、非置換、又は一つ以上の他のアリール又はヘテロアリール環に任意に結合して置換された別個のアリール又はヘテロアリール環であり、
各デンドロン及び各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Yp1は、B1の還原子に結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
p1は、0又は1から5までの整数であり、
n1は、0、1、又は2であり、
[Yp2は、B2の還原子に結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基に対する単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
p2は、0又は1から5までの整数であり、
n2は、0、1、又は2であり、
(n1+n2)は、0ではなく、
各X及び各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外及びデンドロン以外、且つ(b)前記金属酸化物半導体に結合するアンカー基であり、
m1は、0又は1から3までの整数であり、
m2は、0又は1から3までの整数であり、
(m1+m2)は、0ではなく、
zは、0、1、2、3或いは4であり、
前記又は各Lは、有する場合、配位子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項6】
前記MはRu(II)であり、zは2であり、各Lのいずれかは、同一又は異なるものであり、単座配位子又は、二座配位子の双方のL基であることを特徴とする請求項5に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項7】
前記デンドリマーは、式(III)の金属錯体であり、
【化2】

式中、
、m1、X、m2、Y、p1、Y、p2、デンドロン、n1、デンドロン及びn2は、請求項5において定義した通りであり、
L1及びL2の各々は、同一又は異なるものであり、単座配位子、又はL1及びL2が二座配位子を一緒に形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項8】
各L1及びL2の各々は、単座配位子であり、単アニオン性配位子であることを特徴とする請求項7に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項9】
前記各デンドロン、デンドロン、又はデンドロンは、式(IV)の基であり、

-Z-[Z-[Z-[Z-[Z]]]]] (IV)

式中、
は、アリール及びヘテロアリールから選択される分岐基であり、
aは、2から5までの整数であり、
は、式−(L)e−Bの基であり、
但し、eは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、分岐基、又はbが0であるとき、末端基であり、分岐基又
は末端基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、
bは、0又は2から5までの整数であり、
は、式−(L−Bの基であり、
但し、fは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、分岐基、又はcが0であるとき、末端基であり、分岐基又
は末端基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、
cは、0又は2から5までの整数であり、
は、式−(L−Bの基であり、
但し、gは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、分岐基、又はdが0であるとき、末端基であり、分岐基又
は末端基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、
dは、0又は2から5までの整数であり、
は、式−(L−Tの基であり、
但し、hは、0又は1から5までの整数であり、
各Lは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリー
ル基、ビニル基、アセチルレニル基、及びC1−15アルキレンオ
キシ基から選択される連結基であり、
は、アリール基及びヘテロアリール基から選択される末端基で
あり、
但し、末端基として現れたとき、前記B、B、B或いはT基は、非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項10】
前記各デンドロン、デンドロン、又はデンドロンの前記分岐基の各々は、同一又は異なるものであり、フェニル基及びカルバゾール基から別個に選択され、前記末端基の各々は、同一又は異なるものであり、フェニル基及びカルバゾール基から選択されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項11】
前記各デンドロン、デンドロン、又はデンドロンの前記連結基は、有する場合、ビニル基、アセチレニル基、フルオレニル基、チエニル基、或いはフェニレン基から選択されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項12】
前記表面基の各々は、同一又は異なっていてもよく、さらに反応可能なアルケン、(メタ)アクリレート基、含硫又はシリコンを含む基、スルホニル基、ポリエーテル基、環状エーテル基、C1−15アルキル(好ましくは、t−ブチル)基、C2−15アルケニル基、アミノ基、モノ−,ジ−又はトリ−(C1−15)アルキルアミノ基、−COOR基(ただし、Rは、水素又はC1−15アルキルである)、−OR基(ただし、Rは、水素、アリール又はC1−15アルキル或いはC2−15アルケニル(好ましくは、−O−エチルヘキシル)である)、−OSR基(ただし、Rは、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、−SR基(ただし、Rは、アリール、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、−SiR基(ただし、Rは、同一又は異なるものであり、水素、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、−SR’基(ただし、R’は、アリール、C1−15アルキル又はC2−15アルケニルである)、アリール基、或いはヘテロアリール基から別個に選択されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項13】
前記デンドリマーは、次式(V)の通りであり、
【化3】

式中、
(a)Rは−O−2−エチルヘキシルであり、且つ、R及びRは共にHであり、
(b)R及びRは共に−O−2−エチルヘキシルであり、且つ、RはHであり、或いは、
(c)R、R及びRは、それぞれ−O−2−エチルヘキシル
であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項14】
前記金属酸化物半導体に結合される第2の感光色素をさらに備え、前記第2の感光色素は、前記式(I)のデンドリマー以外であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項15】
前記第2の感光色素は、前記ベンゼン−1,2−ジオールが非置換、又は3,4,5,或いは6位が式(VI)の基で置換されているベンゼン−1,2−ジオールであり、

−G−[J]j−R” (VI)

式中、
Gは、非置換、又は置換C2−15アルケニルであり、
jは、1から5までの整数であり、
各jは、同一又は異なるものであり、非置換又は置換ヘテロアリーレン基、或いは、非置換又は置換アリーレン基であって、
R”は、H、C1−15アルキル、又はデンドロンであり、該デンドロンは、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されることを特徴とする請求項14に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項16】
前記第2の感光色素は、式(VII)の化合物であり、
【化4】

式中、
R’は、H又はCNであり、
wは、1から5までの整数であり、
R”は、H、C1−15アルキル、又はデンドロンであり、該デンドロンは、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されることを特徴とする請求項14又は15に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項17】
前記第2の感光色素は、ヘテロレプティックRu(II)錯体であることを特徴とする請求項14に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項18】
前記第2の感光色素は、以下の化合物のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項14又は17に記載の色素増感型光起電装置。
【化5】

【請求項19】
前記金属酸化物半導体に結合された第3の感光色素をさらに備え、前記第3の感光色素は、請求項17又は18において定義された通りの化合物であることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項20】
前記金属酸化物半導体は、チタニアであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項21】
化合物は、式(I)のデンドリマーであり、

[X]m-コア]([[Y]p)([デンドロン])n (I)

式中、
nは、1から6までの整数であり、
mは、1から6までの整数であり、
各pは、0又は1から5までの整数のいずれかであり、
コアは、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を有し、前記(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合しており、
各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Y]は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外であり、且つ(b)金属酸化物半導体へ結合することができるアンカー基である化合物を含む色素増感型光起電装置。
【請求項22】
化合物は、式(I)のデンドリマーであり、

[X]m-コア]([[Y]p)([デンドロン])n (I)

式中、
nは、1から6までの整数であり、
mは、1から6までの整数であり、
各pは、0又は1から5までの整数のいずれかであり、
コアは、非ポリマー性有機基、金属原子又は金属イオン、或いは金属原子又は金属イオンからなる基であり、コアは、少なくとも(n+m)個の連結点を有し、前記(n+m)個の連結点の各々が一つのX、Y、或いはデンドロン基に結合しており、
各デンドロンは、同一又は異なるものであり、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基の各々は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されており、
[Y]は、コアに結合された連結基であり、デンドロンの最初の分岐基への単結合で終結しており、各Yは、同一又は異なるものであり、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基、C1−15アルキレン基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、
各Xは、同一又は異なるものであり、(a)デンドロン以外であり、且つ(b)金属酸化物半導体へ結合することができるアンカー基である感光色素を使用した色素増感型光起電装置。
【請求項23】
前記各アンカー基、X又はX及びXは、同一又は異なるものであり、且つ、酸性の−OH基からなる基、又は酸性の−OH基の塩からなる基であることを特徴とする請求項1乃至12、請求項14乃至22のいずれか1項に記載の色素増感型光起電装置。
【請求項24】
前記各アンカー基、X又はX及びXは、同一又は異なるものであり、且つ、
(a)カルボン酸基又はカルボン酸基の塩、
(b)ホスホン酸基又はホスホン酸基の塩、或いは、
(c)アリール基又はヘテロアリール基(ただし、前記アリール基又はヘテロアリール基の環炭素原子が−OH基又は前記アリール基又はヘテロアリール基の塩で置換されている)
からなる基であることを特徴とする請求項1乃至12、請求項14乃至20、請求項23のいずれか1項に記載の感光色素を使用した色素増感型光起電装置。
【請求項25】
前記各アンカー基、X又はX及びXは、同一又は異なるものであり、且つ、カルボン酸基、カテコール基、フェノール基、及びホスホン酸基から選択されることを特徴とする請求項1乃至12、請求項14乃至20、請求項23、請求項24のいずれか1項に記載の感光色素を使用した色素増感型光起電装置。
【請求項26】
請求項1乃至25に記載のデンドリマーを含む感光色素を使用した色素増感型光起電装置。
【請求項27】
式(VII)の化合物であり、
【化6】

式中、
R’は、H又はCNであり、
wは、2から5までの整数であり、
R”は、H、C1−15アルキル、又はデンドロンであり、該デンドロンは、少なくとも一つの分岐基及び任意の少なくとも一つの連結基からなる少なくとも部分的に共役している樹枝状分子構造を示し、前記分岐基は、アリール基及びヘテロアリール基から選択され、前記連結基は、アリール基、ヘテロアリール基、ビニル基、アセチルレニル基及びC1−15アルキレンオキシ基から選択され、前記分岐基は、3つ以上の基に結合されており、前記連結基は、2つの基に結合されており、前記樹枝分子構造は、その末端点で末端アリール基及び/又はヘテロアリール基で終結しており、それぞれの前記末端アリール基及び/又はヘテロアリール基は、別個に非置換又は1、2、3或いは4つの表面基で置換されることを特徴とする化合物を使用した色素増感型光起電装置。
【請求項28】
以下の化合物のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項27に記載の化合物を使用した色素増感型光起電装置。
【化7】

【請求項29】
請求項27又は28に記載の式(VII)の化合物からなる感光色素。
【請求項30】
色素増感型光起電装置の感光色素として用いられる請求項27又は28に記載の式(VII)の化合物を使用した色素増感型光起電装置。
【請求項31】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された(a)金属酸化物半導体を含む電子受容体物質、(b)酸化還元メディエータ物質、(c)請求項27又は28に記載の式(VII)の化合物からなる感光色素
とを備える色素増感型光起電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2011−501862(P2011−501862A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529453(P2010−529453)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003545
【国際公開番号】WO2009/050492
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510107460)アイシス イノベーション リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ISISINNOVATION LIMITED
【Fターム(参考)】