説明

色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池

【課題】プラスチック導電性基板からなる色素増感型光電変換素子の半導体層への色素吸着工程において、常温でかつ短時間で十分な吸着を可能とする色素溶液を提供する。
【解決手段】プラスチック導電性基板11上に、色素増感された半導体粒子13からなる光電極層1、電解液層2および対向電極3をこの順で有する色素増感型太陽電池であり、前記色素14を半導体粒子13に吸着する方法において、色素溶液が少なくとも一種類の増感色素14と少なくとも一種の一般式(1)[R,R,R,R+-]で表わされるカチオン系化合物を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池。式(1)において、R,R,R,R4は同じで異なってもよく、水素原子、炭素数1〜40の置換または未置換のアルキル基、アラルキル基、アルキニル基、アリール基、複素環基または芳香族複素環基を表し、その総炭素数は20〜120であり、Xはアニオン基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光電変換効率が高く、耐久性に優れる光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池において、特定のカチオン系化合物を含有した色素吸着溶液、並びにそれを用いたプラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、固体のpn接合型の光電変換素子およびそれを用いた太陽電池が活発に研究されている。固体接合型太陽電池は、シリコン結晶やアモルファスシリコン薄膜、非シリコン系の化合物半導体の多層薄膜を用いている。しかし、これらの光電変換素子およびそれを用いた太陽電池は、高温もしくは真空下で製造するために、製造コストが高く、エネルギーペイバックタイムが長いという欠点がある。近年そのコストダウンが進められており、市場での展開を目指している。しかし、その基板としてはガラスがメインであり、相当な重量となっており、その改良が望まれている。
【0003】
これらの従来の太陽電池を置き換える次世代光電変換素子およびその太陽電池として、プラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子の開発が期待されており、特許文献1では、色素増感された多孔質半導体膜を用いる高効率の光電変換方法が提案されている。色素増感型光電変換素子は、固体接合型光電変換素子における固体(半導体)‐固体(半導体)接合の代りに、固体(半導体)‐液体(電解液)接合を採用する湿式光電変換素子である。色素増感型光電変換素子は、研究レベルではエネルギー変換効率が11%以上という高い値まで達しており、電気エネルギーの供給源として有望となっている。
【0004】
このプラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子は、一般にプラスチック基板を用いた導電性支持体上に、色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層および対向電極からなり、更には劣悪な環境での耐久性を付与すべくハイバリアを有する外装材からなっている。このプラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子は、光エネルギーを電力に変換する際に高効率が要求されており、各研究者の競争が激しくなっている、一方、色素増感型光電変換素子の商品化に当たり、低コスト製造工程が望まれており、現在の大きな商品化ネックとなっている。
【0005】
主な工程としては、プラスチック基板への導電層付与工程(例えばポリエステルへのITO付着工程)、酸化チタンに代表される半導体層塗布工程、色素吸着工程、対向電極作製工程、電解液注入工程、封止工程、集電ライン付与工程、などを挙げることが出来る。これらの中でも、特に色素吸着工程は色素溶解溶液に半導体層を付与した導電性プラスチック基板を浸漬して、一定時間処理して色素を半導体層に吸着させる工程が主流であり、従来は高温度で長時間の処理方法を用いている。その色素吸着工程は、半導体層を付与した基板を色素溶液に浸漬し、高温度で長時間かけて半導体層に色素をさせることが一般的であり、生産には不向きである。
【0006】
更にこの改良として、特許文献2では色素溶液を酸化チタン半導体層の上に色素溶液を接触させて吸着処理を行う方法が提案されている。確かにこの方法では色素吸着時間が大幅に短縮されるが、半導体層への均一な吸着が不十分であったり、過剰な色素が半導体周辺に過剰に存在したり、更には電解液に溶け出したりして、出力特性を阻害することが問題となり色素吸着方法としては更なる改善が望まれている。又特定のアニオン性有機スルホン酸誘導体の存在下に、色素吸着させる技術が特許文献3に開示されている。この技術により光エネルギー変換効率の向上が図られている。しかしながら、その色素吸着過程は40℃で3時間も必要としており、生産性の観点では大幅な改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許4927721号公報
【特許文献2】特開2005−251591号公報
【特許文献3】特開2001−266963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、プラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子の作製工程の改良に関するものであり、特に簡便な色素吸着工程を提案することである。本発明の第2の目的は、色素増感型光電変換素子の作製において、短時間で半導体に十分な色素を吸着することのできる色素溶液を提案することである。本発明の第3の目的は、改良した色素吸着工程を利用した色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池を提供することにある。本発明の第4の目的は、軽量で破損しにくいプラスチック基板からなり、かつ簡便な色素吸着工程を利用して作製した色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
(態様1)
プラスチック導電性基板上に、色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層および対向電極をこの順で有する色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池であり、前記色素を半導体粒子に吸着する方法において、色素溶液が少なくとも一種類の増感色素と少なくとも一種の下記一般式(1)で表わされるカチオン系化合物を含有することを特徴とする色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【0010】
【化1】

(1)
式(1)において、R,R,R,R4は同じで異なってもよく、水素原子、炭素数1〜40の置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基または芳香族複素環基を表し、その総炭素数は20〜120であり、Xはアニオン基である。
【0011】
(態様2)
色素溶液中の増感色素の溶液濃度が、0.01〜10mMであることを特徴とする態様1に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【0012】
(態様3)
色素溶液中のカチオン化合物の添加量は、色素のモル当量に対して0.01モル等量〜100モル等量あることを特徴とする態様1、2に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【0013】
(態様4)
色素溶液の温度が0℃〜50℃であることを特徴とする態様1〜3に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【0014】
(態様5)
増感色素の吸着時間が0.5分〜30分であることを特徴とする態様1〜4に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によって,光電変換素子として改良された半導体層への色素吸着方法を適用することにより、短時間でかつ大幅なコストダウンが可能となる色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明に従った色素増感型光電変換素子の1例の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の詳細について記述するが、本明細書に記載された範囲にのみ限定されるものではなく、その周辺技術や素材についても適用されるものである。本発明では、色素を半導体粒子に吸着する方法において、色素溶液が少なくとも一種類の増感色素と少なくとも一種のカチオン系化合物を含有することを特徴とするものである。
【0018】
(増感色素)
まず本発明で用いられる光電極層の光増感用の増感色素について記載する。増感色素としては、電気化学の分野で色素分子を用いる光電極の分光増感にこれまで用いられてきた各種の有機系、金属錯体系の増感材料が用いられる。また、光電変換の波長領域をできるだけ広くし、かつ、変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよく、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択してもよい。
【0019】
増感色素は色素担持多孔質酸化チタン層2a〜2dの増感色素は、増感作用を示すものであれば特に制限はないが、有機色素(例、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素)および金属錯体色素(例、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)を挙げることができる。金属錯体色素を構成する金属の例は、ルテニウムおよびマグネシウムを挙げることができる。そのほか「機能材料」、2003年6月号、第5〜18ページに記載されている合成色素と天然色素や、「ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(J.Chem.Phys.)」、B.第107巻、第597ページ(2003年)に記載されるクマリンを中心とする有機色素を用いることもできる。多孔質酸化チタン層に吸着する酸官能基を有するものが好ましく、具体的にはカルボキシ基、リン酸基などを有するものが好ましく、この中でも特にカルボキシ基を有するものが好ましい。
【0020】
増感色素の具体例を挙げると、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ビピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素などが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属の錯体の色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、増感色素はこれらに限定されるものではない。増感色素としては、典型的には、これらのうちの一種類のものを用いるが、これらの増感色素を二種類以上混合して用いてもよい。これらは、汎用名として知られており、例えばN3、N719、N749、D102、D131、D150、N205、HRS−1、MK−2、などが代表的な増感色素として挙げられる。
【0021】
(カチオン系化合物)
次に本発明で用いられる一般式(1)で表わされるカチオン系化合物について、以下に記述する。
【0022】
【化2】

(1)
式(1)において、R,R,R,R4は同じで異なってもよく、水素原子、炭素数1〜40の置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基または芳香族複素環基を表し、その総炭素数は20〜120であり、Xはアニオン基である。
【0023】
好ましい炭素数1〜40の置換または未置換のアルキル基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル鎖(好ましくは炭素数1〜30であり、より好ましくは炭素数1〜20であり、炭素数1〜18がもっとも好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、イコサニル基、ドコサニル基、トリアコンタニル基、テトラアコンタニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
また、好ましい炭素数1〜40の置換または未置換のアラルキル基としては、アリール基で置換されている低級アルキル基を意味し、アルキル部が直鎖状または分岐鎖状で、好ましい炭素数が1〜5、より好ましくは1であり、アリール部が好ましい炭素数が6〜10、より好ましくは6〜8である。具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0025】
好ましいアルケニル基は、好ましくは炭素数3〜30であり、より好ましくは炭素数3〜20であり、炭素数3〜12が最も好ましい。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、オレイル基、アリル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、アセチレニル、プロパルギル基、3−ペンチニル基、2−ヘキシルニル、2−デカニルを挙げることが出来る。
【0026】
一般式(1)においてアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等が挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20のフェニル基または炭素数10〜24のナフチル基であり、更に好ましくは炭素数6〜12のフェニル基または炭素数10〜16のナフチル基である。例えばフェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。一般式(1)において、複素環基としては、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0027】
一般式(1)において、芳香族複素環基としては、例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0028】
,R,R,R4は特に好ましくは、水素原子、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、イコサニル基、ドコサニル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また特に好ましいR,R,R,R4のアラルキル基としては、ビニル基、オレイル基、が挙げられ、特に好ましいアルキニル基としては、プロパルギル基が挙げられ、特に好ましいアリル基としては、フェニル基、トリル基、が挙げられる。
【0029】
Xはアニオンであり、好ましくはハロゲンイオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、リン酸イオン等が挙げられる。 Xは、特に好ましくはハロゲンイオンイオンとして塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンであり、硫酸イオン、カルボン酸イオンとしては酢酸イオン、プロピオン酸イオンであり、スルホン酸基としてはメチルスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、リン酸イオンとしてはリン酸イオン、メチルリン酸イオン、が挙げられる。またR,R,R,R4の総炭素数は20〜120であるが、好ましくは20〜80であり、特に好ましくは25〜60である。
【0030】
本発明のカチオン系化合物の具体例を下記に挙げるが、これらに限定されるものではない。
(ジアルキル)
K−1)ジテトラデシルアンモニウム・クロライド
K−2)ジオクタデシルアンモニウム・ブロマイド
K−3)ジドコサニルアンモニウム・アイオダイド
【0031】
(トリアルキル)
K−4)トリオクチルアンモニウム・クロライド
K−5)トリデシルアンモニウム・クロライド
K−6)トリドデシルアンモニウム・ブロマイド
K−7)メチルジテトラデシルアンモニウム・クロライド
K−8)メチルジオクタデシルアンモニウム・クロライド
K−9)メチルジオクタデシルアンモニウム・ブロマイド
K−10)メチルジドコサニルアンモニウム・ブロマイド
K−11)ブチルジオクタデシルアンモニウム・ブロマイド
【0032】
(テトラアルキル)
K−12)テトラヘキシルアンモニウムブロマイド
K−13)ジメチルジデシルアンモニウム・クロライド
K−14)ジメチルジドデシルアンモニウム・ブロマイド
K−15)ジメチルジドデシルアンモニウム・アイオダイド
K−16)ジメチルジヘキサデシルアンモニウム・クロライド
K−17)ジメチルジオクタデシルアンモニウム・クロライド
K−18)ジメチルジオクタデシルアンモニウム・ブロマイド
K−19)ジメチルジオクタデシルアンモニウム・ブロマイド
K−20)ジメチルジオクタデシルアンモニウム・酢酸
K−21)ジメチルジオクタデシルアンモニウム・硝酸
K−22)ジメチルジオクタデシルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸
K−23)メチルシクロヘキシルジオクタデシルアンモニウム・ブロマイド
【0033】
(テトラアルケニル)
K−24)ジエチルジオレイルアンモニウム・クロライド
K−25)ジメチルジオレイルアンモニウム・ブロマイド
(アリール)
K−26)ジヘキサデシルベンジルアンモニウム・クロライド
K−27)ジクタデシルフェニルアンモニウム・クロライド
K−28)ドデシル−2−エチルベンジルメチルアンモニウム・クロライド
K−29)ジデシルナフチルアンモニウム・クロライド
【0034】
(増感色素の半導体層への吸着)
次に本発明である増感色素の半導体層(例えば多孔質酸化チタン層)への吸着方法について記述する。本発明の増感色素と特定のカチオン系化合物は、混合した状態で溶媒に溶解させることが一般的である。更に増感色素単独あるいはカチオン系化合物単独に溶液を作製し、しかる後に混合して増感色素とカチオン系化合物の混合溶液を作製することができる。増感色素およびカチオン化合物を溶解するのに用いる溶媒は、溶解することができかつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのない溶媒であればその制限はない。この時有機溶媒のみからなる場合は、溶媒に存在している水分及び気体を除去するために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。溶媒としては好ましくはアルコール類、ニトリル類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、アミド類、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、芳香族、ニトロメタン、水などの溶媒である。
【0035】
好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、ジメチルスルホキシド、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、などである。
【0036】
これらの中でもさらに好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、トルエン、キシレン、アニソール、を挙げることができる。
【0037】
特に好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、ブトキシエタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、トルエン、を挙げることができる。なお、これらの溶媒は単独でもよいが2種類以上の溶媒を用いた混合溶媒でもよい。
【0038】
色素溶液中における増感色素の濃度は、好ましくは0.01mM〜10mMであり、より好ましくは0.1mM〜10mMであり、更により好ましくは0.5mM〜8mMであり、特に好ましくは0.8mM〜6mMである。また、色素溶液中における本発明のカチオン系化合物の濃度は、好ましくは0.001mM〜20mMであり、より好ましくは0.01mM〜10mMであり、特に好ましくは0.05mM〜5mMである。本発明のカチオン化合物の添加量は、色素のモル当量に対して0.01モル等量〜100モル等量が好ましく、更に0.02モル等量〜50モル等量が好ましく、特には0.05モル等量〜10モル等量が好ましい。色素の全吸着量は、導電性支持体の単位表面積(1m2)当たり0.01mM〜100mMが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g 当たり0.01mM〜1mMの範囲であるのが好ましい。
【0039】
本発明の色素およびカチオン化合物からなる色素溶液に、半導体層を付着したプラスチック基板を浸漬することで、色素を吸着した光電極基板を作製できる。この基板を、増感色素を含む溶液に浸漬する工程は以下が好ましい。浸漬時の色素溶液の好ましい温度は、0℃〜80℃、更に好ましは0℃〜50℃であり、特に好ましくは10℃〜35℃であり一般的な環境温度である。また電極基板の吸着時間は特に制限はないが、好ましく0.3分〜120分であり、より好ましく0.5分〜30分であり、更に好ましくは0.5分〜30分であり、特に好ましくは0.5分〜10分である。
【0040】
なお、色素溶液で半導体微粒子に色素を吸着させたあと、色素溶液を除去するために溶媒を用いて洗浄することが好ましく、その際には前述した溶媒が好ましい洗浄溶媒として推奨される。洗浄は、直接色素を吸着した半導体基板に、溶媒を吹き付けるか、洗い流してもよい。また、洗浄溶媒タンクに該基板を投入して、過剰な色素溶液を洗浄処理してもよい。このようにして得られた色素吸着した半導体を有する基板は、さらに乾燥処理することで所望の色素増感された半導体層を有する基板を得ることが出来る。乾燥条件は特に限定されないが、好ましくは30℃〜150℃で0.5分〜30分が好ましく、40℃〜120℃で0.5分〜15分が好ましく、50℃〜100℃で0.5分〜10分が好ましい。
【0041】
(電解液)
本願発明の電解液は、電解質と溶媒を基本としており、その電解液構成分について下記に説明する。電解質は、ヨウ素(I2 )と金属ヨウ化物もしくは有機ヨウ化物との組み合わせ、臭素(Br2
)と金属臭化物あるいは有機臭化物との組み合わせのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノンなどを挙げることができる。上記金属化合物のカチオンとしてはLi、Na、K、Mg、Ca、Csなど、また上記有機化合物のカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの4級アンモニウム化合物が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、これらを二種類以上混合して用いてもよい。この中でも、I2 とLiI、NaIやイミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物を組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05〜10Mが好ましく、さらに好ましくは0.2〜3Mである。I2 やBr2 の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5Mである。また、4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることも好ましい。
【0042】
上記電解質組成物を構成する溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを二種類以上混合して用いることもできる。さらに、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
【0043】
さらに上記電解質組成物へゲル化剤、ポリマー、架橋モノマーなどを溶解させ、ゲル状電解質として使用してもよい。この時電解質組成物はゲル状電解質の50〜99wt%が好ましく、80〜97wt%がより好ましい。また、上記電解質と可塑剤とをポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去してもよい。また電解液は、無機塩とイミダゾリウム塩(ジメチルイミダゾリウム、メチルプロピルイミダゾリウム、メチルブチルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウムとその塩など)との混合物に、グリコールエーテルと5員環環状エーテルの一方または両方を溶媒とするものも好ましい。以下、この場合の電解液構成成分について説明する。
【0044】
溶媒は沸点が200℃以上であることが好ましい。さらに、非プロトン性極性溶媒であることも好ましく、グリコールエーテルが好ましく、ジアルキルグリコールエーテルがより好ましい。このような溶媒の具体例としては、グリコール類、モノアルキルグリコールエーテル類、ジアルキルグリコールエーテル類がある。これらのグリコールエーテル類は、2種以上併用してもよい。このような溶媒の具体例としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンを挙げることが出来る。
【0045】
本願発明に用いる得る無機塩は、アルカリ金属ハロゲン化物(例、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウムなど)、アルカリ土類金属ハロゲン化物(例、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなど)、アンモニウムハロゲン化物(例、ヨウ化アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウムなど)を用いることが好ましい。ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素を用いることが好ましく、臭素、ヨウ素が特に好ましく、ヨウ素が最も好ましい。ハロゲン化物の添加濃度は、0.01〜3.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがさらに好ましい。
【0046】
チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の無機化合物、アスコルビン酸、ハイドロキノン、フェニドン、硫酸パラメチルアミノフェノール等を更に添加してもよい。電解液は、さらに他の成分を含むことができる。他の成分の例には、ベンゾイミダゾール化合物のほか、(イソ)チオシアン酸イオン、グアニジウムイオンが挙げることができる。ベンゾイミダゾール化合物の具体例としては、N−メチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルベンゾイミダゾール、N−ブチルベンゾイミダゾール、N−ベンジルベンゾイミダゾール、N−(2−エトキシエチル)ベンゾイミダゾール、などがある。
【0047】
電解液中にチオシアン酸イオン(S-−C≡N)またはイソチオシアン酸イオン(N-=C=S)を添加する場合、電解液中のチオシアン酸イオンおよびイソチオシアン酸イオンの合計の濃度は0.01M〜1Mが好ましく、0.02M〜0.5Mがさらに好ましく、0.05M〜0.2Mが最も好ましい。電解液の調製において、イソチオシアン酸イオンは塩として添加することが好ましい。塩の対イオンは、後述するグアニジウムイオンが好ましい。電解液中には必要に応じて、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を添加してもよい。
【0048】
(色素増感型光電変換素子の構造)
図1は、本願発明の色素増感型光電変換素子の構造例を示す断面図である。色素増感型光電変換素子は、光電極層1、電解液層2および対向電極層3をこの順で有する積層構造からなる。本願発明において、電解液層2は、溶媒中に電解質が溶解している電解液からなる。光電極層1は、光電極基板と色素増感多孔質半導体粒子層からなる。光電極基板は、透明基板11と透明導電層12とからなり、色素増感多孔質半導体粒子層は色素14により増感された半導体粒子13からなる。図1に示す色素増感型光電変換素子では、色素増感多孔質半導体層の多孔膜内(空孔)が、電解液層2を構成している電解液により充填されている。対向電極層3は、透明基板31と透明導電層32とからなる。
【0049】
本願発明において、透明導電層(12および32)は、電圧損失が少ない金属により形成できる。金属を用いて透明導電層(12および32)を形成する場合、金属メッシュや格子状構造からなる層を形成すればよい。電解液層2および透明導電層(12および32)の透明性を高くすることができる。このため、本願発明の色素増感型光電変換素子では、光電極層1側から入射する光41と対向電極層3側から入射する光42の双方を利用して、高い光電変換効率で電流5を発電することができる。以下、光電極層、電解液層、そして対向電極層の順序で説明する。
【0050】
(光電極用の透明導電性基板)
本発明の光電極層は、プラスチック性の光電極基板および色素増感多孔質半導体微粒子層からなる。プラスチック光電極基板は、透明、プラスチック基板上に透明導電層を有する。プラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性ならびにガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好ましく選ばれる。この観点から、好ましい材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)などが用いられる。これらのなかでも化学的安定性とコストの点で特に好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)であり、もっとも好ましいものはポリエチレンナフタレート(PEN)である。
【0051】
本願発明の透明導電層としては、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、炭素、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化亜鉛)または複合金属酸化物(例、インジウム‐スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)から形成できる。この中で高い光学的透明性をもつ点で導電性金属酸化物が好ましく、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)、酸化亜鉛、インジウム‐亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。最も好ましいものは、耐熱性と化学安定性に優れる、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)やインジウム‐亜鉛酸化物(IZO)である。
【0052】
透明導電層の表面抵抗値は100Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、30Ω/□以下がさらに好ましく、10Ω/□以下がさらにまた好ましく、5Ω/□以下が最も好ましい。透明基板上に透明電極層を設けた光電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上が最も好ましい。
【0053】
低い表面抵抗値を達成するためには、金属を用いることも好ましいが、透明でないという問題は金属メッシュ構造からなる透明導電性層を形成することにより解決できる。その際にはこの導電層には集電のための補助リードをパターニングなどにより配置させることができ、低抵抗の金属材料(例、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケル)によって形成される。補助リードを含めた表面の抵抗値は好ましくは1Ω/□以下に制御することが好ましい。このような補助リードのパターンは透明基板に蒸着、スパッタリングなどにより形成し、さらにその上に酸化スズ、ITO膜、IZO膜などからなる透明導電層を設けることも好ましい。
【0054】
(半導体微粒子)
本願発明の多孔質半導体微粒子層は、ナノサイズの細孔が内部に網目状に形成されたいわゆるメソポーラスな半導体膜からなっている。多孔質半導体微粒子層を形成する半導体微粒子としては、金属の酸化物及び金属カルコゲニドを使用することができる。金属酸化物及び金属カルコゲニドを構成する金属元素としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉛、アンチモン、ビスマス、カドミウム、鉛などが挙げられる。
【0055】
半導体材料は、n型の無機半導体が好ましい。例えば、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V2O5、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeS、PbSを含む。TiO、ZnO、SnO、WO、Nbが好ましく、チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物およびこれらの複合体がさらに好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。これらの半導体粒子の一次粒子は、平均粒径が2nm〜80nmであることが好ましく、10nm〜60nmがさらに好ましく、2nm〜30nmが最も好ましい。
【0056】
(半導体微粒子層)
本願発明の光電変換素子において、上記の半導体粒子によって作られる多孔質半導体粒子層は、色素によって増感されているので色素を多孔質膜の表面に吸着分子として持っている。本願発明における色素増感多孔質半導体粒子層において、層内を空孔が占める体積分率で示される空孔率は、50%〜85%であることが好ましく、65%〜85%であることがさらに好ましい。
多孔質半導体粒子層は、2種類以上の微粒子群を含むことができる。2種以上の微粒子群は、例えば、粒径分布が異なるものであることができる。粒径分布が異なる2種類以上の微粒子群を含む場合、最も小さい粒子群の平均サイズは20nm以下が好ましい。この超微粒子に対して、光散乱により光吸収を高める目的で、平均粒径が200nmを越える大きな粒子を、質量割合として5質量%〜30質量%の割合で添加することが好ましい。
【0057】
光電極層は、透明導電性基板(透明電極および透明導電層)および色素増感多孔質半導体粒子層からなり、透明導電層は実質的に無機酸化物または金属のみから構成され、色素増感多孔質半導体粒子層は、実質的に半導体と色素のみから構成されていることが好ましい。具体的には、透明電極層および色素増感多孔質半導体層から、無機酸化物、半導体および色素を除いた固形分の質量が、透明導電層および色素増感多孔質半導体粒子層の全質量に占める割合は、3%未満が好ましく、1%未満がさらに好ましい。
【0058】
光電極のプラスチック基板を用いて光電極の半導体膜を作製するに際しては、該基板の耐熱性の範囲内である低温条件下(例、200℃以下、好ましくは150℃以下)で半導体膜を形成する低温製膜技術により作製できる。このような低温製膜は、例えば、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、バインダーフリーコーティング法により行うことができる。ここでバインダーフリーコーティング法とは、バインダー材料を用いないか用いとも極微量である量であり、粒子分散液をコーティングして作製する方法である。
【0059】
(電解液層)
電解液層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。電解液層に前記本願発明の電解液を用いる。光電極層は、その多孔構造中の空孔が電解液により充填されていることが好ましい。具体的に、光電極層が有する空孔が電解液によって充填されている割合は、20体積%以上が好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。電解液層の厚さは、例えば、光電極層と対向電極層との間に設けるスペーサーの大きさによって調整できる。電解液が光電極の外側で単独で存在する部分の厚さは、1μm〜50μmが好ましく、1μm〜30μmがより好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜15μmが最も好ましい。
【0060】
電解液層の光透過率は、測定波長400nmにおいて、電解液層の厚さが30μmである場合に換算して(30μmの光路長において)70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。光透過率は、350nm〜900nmの波長領域全体において、上記の透過率を有することが好ましい。本願発明の電解液層を形成するには、キャスト法、塗布法、浸漬法等により光電極層上に電解液を塗布する方法や、光電極と対向電極を有するセルを作製しその隙間に電解液を注入する方法などが挙げられる。
【0061】
塗布法によって電解液層を形成する場合、溶融塩等を含む電解液に塗布性改良剤(レベリング剤等)等の添加剤を添加して、これをスピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、多層同時塗布方法等の方法により塗布し、その後必要に応じて加熱すればよい。加熱する場合の加熱温度は色素の耐熱温度等により適当に選択すればよいが、通常10℃〜150℃であるのが好ましく、10℃〜100℃であるのが更に好ましい。加熱時間は加熱温度等にもよるが、5分〜72時間程度が好ましい。
【0062】
好ましい態様によれば、光電極層中の空隙を完全に埋める量より多い電解質液を塗布するので、図1に示すように得られる電解液層は光電極層の透明導電層との境界から対向電極層の透明導電層との境界までの間に存在する。ここで、電解液層の厚さ(半導体粒子層を含まない)は0.001μm〜200μmであるのが好ましく、0.1μm〜100μmであるのが更に好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。なお、電解液層の厚さ(実質的に電解液を含む層の厚さ)は0.1μm〜300μmであるのが好ましく、1μm〜130μmであるのが更に好ましく、2μm〜75μmであるのが特に好ましい。
【0063】
酸化還元対を生成させるために電解質組成物にヨウ素等を導入する場合、前述の電解質の溶液に添加する方法や、電解液層を形成した支持体をヨウ素等と共に密閉容器内に置き、電解質中に拡散させる手法等が使用できる。また、対向電極にヨウ素等を塗布又は蒸着し、光電変換素子を組み立てたときに電解液層中に導入することも可能である。なお、電解液層中の水分は10000ppm以下であるのが好ましく、更に好ましくは2000ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下である。
【0064】
(対向電極)
対向電極は光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対向電極は、透明基板および透明導電層からなることが好ましい。透明基板および透明導電層の詳細は、光電極層の透明基板および透明導電層と同様である。対向電極の触媒層は、触媒作用を有する貴金属粒子が好ましい。対向電極の導電性膜上に触媒層を付与することで好ましい触媒層付きの対向電極が作製できる。貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは比較的高い触媒作用を有する金属白金、金属パラジウム及び金属ルテニウムの少なくとも一種類から構成することが好ましい。触媒層の付与方法は特に限定されないが、例えばこれらの金属を蒸着法あるいはスパッタ法で付与してもよく、また該金属微粒子を溶媒に分散させて得られる分散液を、塗布あるいは噴霧などで対向電極も導電性層の上に設置してもよい。分散法で設置する場日は、その分散液に更にバインダーを含有させてもよく、導電性高分子が好ましく用いられる。該導電性高分子としては、導電性を有し、前記貴金属粒子を分散させることができるものであれば特に限定されないが、導電性の高い方が好ましい。
【0065】
このような高導電性高分子としては、例えばPoly(thiophene−2,5−diyl)、Poly(3−butylthiophene−2,5−diyl),
Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl),poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)等のポリチオフェン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、Poly(p−xylenetetrahydrothiophenium
choride),Poly[(2−methoxy−5−(2’ethylhexyloxy))−1,4−phenylenvinylene],Pory[(2−methoxy−5−(3’,7’−dimethyloctyloxy)−1,4−phenylenevinylene)],Poly[2−2’,5’−bis(2’’−ethylhexyloxy)phenyl]−1,4−phenylenevinylene]等のポリフェニレンビニレン類等が使用出来る。これらの中でも特に好ましい導電性高分子は、Poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)/Poly(styrenesulfonate)
(PEDOT/PSS)である。
【0066】
また、触媒層は、導電層への密着性を向上させる観点から、他のバインダーを含むことができる。前記バインダーは有機樹脂であっても良いし、無機物であっても良い。有機樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロースおよび誘導体、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、塩ビ樹脂等の熱硬化性あるいは熱可塑性有機高分子化合物、紫外線(UV)硬化性有機高分子化合物、電子線(EB)硬化性有機高分子化合物、ポリシロキサン等の無機高分子化合物等を、単独もしくは複合して用いることができる。
【0067】
前記無機物としては、シリカゾル、MO・nSiO(M:Li、Na、K)等のケイ酸塩、リン酸塩、珪素酸化物やジルコニウム酸化物やチタン酸化物やアルミニウム酸化物粒子コロイド、珪素やジルコニウムやチタンやアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物、溶融フリット、水ガラス等を単独または複合して用いることが出来る。
【0068】
また、上述したバインダーの他に、触媒層の膜付着強度、導電性などの一層の向上を目的として、必要に応じ、例えばケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、チタン、イットリウム、亜鉛、マグネシウム、インジウム、錫、アンチモン、ガリウム、ルテニウムなどの酸化物または複合酸化物の粒子、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、及び錫ドープ酸化インジウム等の導電性酸化物粒子を含むこともできる。なお、触媒層の厚さは好ましくは100nm〜1μm、より好ましくは50nm〜5μmであり、特に好ましくは30nm〜5μmである。
【0069】
(その他の層)
電極として作用する光電極層及び対向電極層の一方又は両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法が利用できる。本願発明のフィルム型光電池には、上記の基本的層構成に加えて所望に応じさらに各種の層を設けることができる。例えば導電性プラスチック支持体と多孔質半導体層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として設けることができる。下塗り層として好ましいのは金属酸化物であり、たとえばTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5などである。下塗り層は、例えばElectrochim.Acta 40、643‐652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法の他、スパッタ法などにより塗設することができる。下塗り層の好ましい膜厚は5〜100nmである。
【0070】
また、光電極として作用する多孔質光電極と対向電極の一方又は両方の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層、ガスバリアー層などの機能性層を設けてもよい。これらの機能性層は、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法などによって形成することができる。
【0071】
本願発明のフィルム型光電池の全体の厚さは、機械的フレキシブル性と性能安定性を保証する目的から、150μm〜500μm、好ましくは250μm〜450μmが好ましい。本願発明の多層構成のフィルム型光電池には所望に応じ、短絡防止のためのセパレータを含ませることも推奨される。セパレータを形成する材料は電気的に絶縁性の材料であり、その形体はフィルム形体、粒子形体、電解質層と一体化した形体のいずれであってもよいが、フィルム型のセパレータを用いることが好ましい。
【0072】
フィルム形体で用いる場合、フィルムは電解液を透過する多孔質の膜、例えば樹脂フィルム、不織布、紙などの有機材料が用いられる。また、このような多孔質フィルムは表面を親水化処理してできる親水性のフィルムを用いることもできる。このフィルムの厚みは80μm以下であることが必要であり、その空孔率が50%〜85%のものを用いることが必要である。
【0073】
粒子形体で用いる場合は、粒子としては各種の無機材料、有機材料を用いることができる。無機材料としては、シリカ、アルミナ、フッ素系樹脂など、有機材料としてはナイロン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミドなどのビーズが好ましく、更にはビーズがその成分として架橋基を有する成分が含有されていることが好ましく、電解液による膨潤が防止できる。これらの粒子の平均粒径は、10μm〜50μmが好ましく15μm〜30μmがさらに好ましい。セパレータが電解質と一体化する場合は、例えば、ポリマーなどによってゲル化した電解液、電解液中の化合物の架橋反応によって電解液を架橋して粘度を高めた電解液などが用いられる。これらのいわゆる擬固体化された電解液も広義のセパレータに含まれる。
【0074】
(モジュール)
本発明の色素増感型光電変換素子は、更に色素増感太陽電池に組み上げるためには、モジュール化する必要があり、以下に簡単に記述する。一般的には下記が本構成の代表となる。
【0075】
(集電線)
光電極の透明導電膜に集電線を配備し、区分された光電極透明導電膜上に増感色素を吸着した光電極基板と、対向極の導電膜からなる集電線を配備した対向電極とを、集電線上の透明導電膜上に設けられたシール部により接着させてセル部を設け、そのセル部に電解質層を封入したプラスチック基板からなる色素増感太陽電池モジュールが好ましい。
光電極および対向電極の集電線は、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロムのうちから選ばれた少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましい。集電線が透明基板上に格子状に形成され形状でも好ましい。集電線の形成法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法あるいはスクリーン印刷法などが用いられる。
【0076】
(モジュール化)
また集電線で区分された透明導電膜上に半導体微粒子膜を形成しその上に色素を吸着させて光電極を作製する工程と、基板上に導電膜を形成し対向電極を作製する工程と、集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程と、そのセル部に電解質を封入する工程からなる色素増感太陽電池モジュールの作製することが好ましい。なおセル部に電解質を封入する工程を予め実施し、しかる後に集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程を実施してもよい。集電線で集められた発電電力は、リード線に接合して所望とする電気機器類に接続して、発電源として利用するものである。この時、各単位セルのみの利用のみでもよく、2個以上のセルをリード線で結合してモジュール化することが更に好ましい。その際に、各セルを直列、並列でも良く、更には直列と並列を組み合わせてもよい。
【0077】
(外装、バリアー包装体)
更に本発明では、その基板が水蒸気やガスに対してその透過性を低減するように設計されているが、過酷な環境条件により出力の劣化が見られる可能性があり、特に高温度で高湿度での環境条件で耐久性付与が重要である。これらの改良方法としては、基板にガスや水蒸気に対するバリアー特性を有する基板にするか、あるいはバリアー性のある包装体で、本発明の色素増感型光電変換素子を包み込むことで達成できる。以下に、本発明で好ましく用いられるバリアフィルム、特に水蒸気バリアー性について以下に記述する。
【0078】
前述したように、発明の色素増感型光電変換素子は、基板の外部にガスや水蒸気に対するバリアー性を有する層を有することも好ましい。さらに、水蒸気バリアー性のある包装材料で包装あるいは包み込まれていても好ましい。その際に、本発明の色素増感型光電変換素子とハイバリア包装材料に間に空間があってもよく、また接着剤で色素増感型光電変換素子を接着させてもよい。更には、水蒸気やガスを通しにくい液体や固体(例えば、液状またはゲル状のパラフィン、シリコン、リン酸エステル、脂肪族エステルなど)を用いて、色素増感型光電変換素子を包装材料に包装してもよい。
【0079】
本発明で好ましく用いられるバリアー性のある基板あるいは包装材料の好ましい水蒸気透過度は、40℃、相対湿度90%(90%RH)の環境下で0.1g/m/日低下であり、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。また、環境温度が60℃、90%RHでのより過酷な場合でも、バリアー性のある基板あるいは包装材料の水蒸気透過度は、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。またバリアー性のある基板あるいは包装材料の酸素透過率は25℃、0%RHの環境下において、好ましくは約0.001g/m/日以下であり、より好ましくは0.00001g/m/日が好ましい。
【0080】
これらの本発明の色素増感型太陽電池用バリアー性のある基板あるいは包装材料に、水蒸気やガスに対するバイア性付与は、特に限定されないが、太陽電池に必要な光量を妨げないことが必要であるために透過性のあるバリアー性のある基板あるいは包装材料であり、その透過率は好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。上記の特性を有するバリアー性のある基板あるいは包装材料は、その構成や材料において特に限定されることはなく、該特性を有するものであれば特に限定されない。
【0081】
本発明の好ましいバリアフィルムのある基板あるいは包装材料は、プラスチック支持体上に水蒸気やガスの透過性が低いバリアー層を設置したフィルムであることが好ましい。ガスバリアフィルムの例としては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特公昭53−12953、特開昭58−217344)、有機無機ハイブリッドコーティング層を有するもの(特開2000−323273、特開2004−25732)、無機層状化合物を有するもの(特開2001−205743)、無機材料を積層したもの(特開2003−206361、特開2006−263989)、有機層と無機層を交互に積層したもの(特開2007−30387、米国特許6413645、Affinitoら著
Thin Solid Films 1996年 290−291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許2004−46497)などが挙げられる。
【実施例】
【0082】
次に本願発明を実施するための形態を実施例として、表1に示す。
(実施例―1)
(1−1)光電極基板の作製
透明導電膜として、インジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタ処理したポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、フィルム厚み200μm、ITO厚み200nm、シート抵抗15Ω/sq)(基板101)を幅10cm、長さ20cmにカットし、メタノールでITO面を洗浄後、ITO面を表にして、平滑なガラス台の上に真空ポンプを使って固定した。
バインダーフリーの酸化チタンペースト(PECC−C01−06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)ベーカー式アプリケーターを用いて、塗布厚み150μmとなるように塗布した。塗布層を常温で10分間乾燥させた後、150℃の恒温層中でさらに5分間加熱乾燥して、酸化チタン半導体微粒子膜基板を作製した。その後該光電極基板を放冷後室温(25℃)として、幅1.2cm、長さ2.0cmのサイズにカットした。さらに、カットした該基板の短辺(1.2cmの辺)の一方から、3mm内側より、酸化チタン膜を直径6mmの円となるように爪楊枝を用いて不要な酸化チタン層を除去して、光電極基板を作製した(光電極基板101)。
【0083】
(1−2)色素溶液の調製
この光電極基板101を、再度110℃にて10分間加熱乾燥した後、表1に記載の増感色素およびカチオン系化合物を含有した色素溶液に浸漬した。このとき、充分な色素吸着を行うため、色素溶液は、電極一枚当たり、2mL以上を目安とした。色素吸着を終了した後に、表1に記載の各試料にたいして各溶液50mlに酸化チタン電極基板を浸漬し更にそれぞれの液を吹き掛けて洗浄した。この基板を、80℃、5分間暗所下で乾燥させ、増感色素付き光電極基板(試料101〜123)を作製した。
【0084】
【表1】

【0085】
(1−3)電解液の調製
N−メチルベンズイミダゾール0.066g、ヨウ化テトラブチルアンモニウム0.738g、1,3−ブチルメチルイミダゾリウムヨウ化物0.532g、グアニジンチオシアネート0.058gを、5mLのメスフラスコに入れ、プロピレンカーボネートを全量で5mLになるように加えた。超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち、24時間以上暗所に静置して、ヨウ素を含まない電解液(電解液101)を調製した。
【0086】
(1−4)対向電極の作製
インジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタ処理したポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、フィルム厚み200μm、ITO厚み200nm、シート抵抗15Ω/sq)(基板101)に塩化白金酸の水溶液をスプレーで塗布した。乾燥後、150℃で20分間熱分解処理を行い、平均厚みが約5nmの白金膜を形成した。得られた対向電極をこのようにして、光透過率が73%の対極用プラスチック基板(対極基板101)を作製した。サイズは、幅1.5cm、長さ2.5cmとした。
【0087】
(1−5)色素増感型光電変換素子の作製
サーリンフィルム(厚さ25μm、デュポン社製)を、14mm四方に切り取り、さらに中心部を直径9mmにくり抜き、スペーサーフィルムを作製した。色素吸着させた光電極基板、対向電極を、スペーサーフィルムをはさんで導電面が内側になるように対向させて貼り合せ、110℃に加熱したホットプレートの上で1分間熱圧着させた。放冷後、対向電極ガラスにあけた電解液注液用の一方の穴から、電解液を注液した。電解液注液用の穴は、サーリンフィルムを用いて、110℃でカバーガラスを接着させることで封じた。カバーガラスの上から110度に加温した半田ごてにより熱を加えることによって、カバーガラスを接着した。 作製した色素増感変換素子の電極の端子には、集電効率を高めるために、導電アルミテープ(No.5805、スリオンテック社製)を貼って色素増感太陽電池素子を作製した(試料−101〜123)。
【0088】
(1−6)光電変換素子の評価(変換効率)
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC−L11型、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)光源を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mWcm-2(JIS−C−8912のクラスA))に調整した。作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続した。電流電圧特性は、1sunの光照射下、バイアス電圧を、0Vから0.9Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化後、0.05秒後から0.15秒後の値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.9V〜0Vまでステップさせる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を、光電流とした。これにより求められた上記の各種素子の初期エネルギー変換効率(変換効率)を表1に示す。
【0089】
(1−7)結果
本発明に対して、カチオン系化合物を使用していない比較例である試料101、111、116、120は、色素溶液温度を高く設定しかつ吸着時間を十分長くすることで、高い変換効率を得ることが出来ている。しかし、吸着時間を十分長くすることが必要であり、実際の製造には生産性の面で困難である。これに対して、高温(60℃、著しく生産性に劣る)であるが色素吸着時間を短くした比較試料102、112、117、121は、その変換効率が著しく悪化しており、性能不十分であることがわかる。また、この改良として高濃度色素溶液を用いて短時間で色素吸着させた比較試料103も検討したが、色素が溶液中で析出し生産性には向かないものであった。さらに、工程管理の容易な室温での吸着時に、色素濃度を変えて検討した比較試料104、105も不十分な変換効率を有するものであり、不十分な特性であった。これに対して本発明の試料107〜110、113〜115、118,119、122,123は、本発明のカチオン系化合物を色素溶液中で混合し、高濃度色素でかつ短時間での色素吸着時間にもかかわらず、その変換効率は優れたものであり、かつ色素溶液の安定性も十分であり、本発明の優位性を示すものであった。
【0090】
(実施例―2)
実施例1の(1−2)色素溶液の試料-101〜110の調製において、電解液101にヨウ素0.04Mを追加含有させた電解液を電解液102として用いた以外は、実施例1の試料―101〜110とまったく同様にして試料―201〜210を作製した。
(2−7)結果
表1に示すように、本発明に対して、カチオン系化合物を使用していない比較例である試料201は、色素溶液温度を高く設定しかつ吸着時間を十分長くすることで、高い変換効率を得ることが出来ている。しかし、吸着時間を十分長くすることが必要であり、実際の製造には生産性の面で困難である。これに対して、高温であるが色素吸着時間を短くした比較試料202は、その変換効率が著しく悪化しており、性能不十分であることがわかる。また、この改良として高濃度色素溶液を用いて短時間で色素吸着させた比較試料203も検討したが、色素が溶液中で析出し生産性には向かないものであった。さらに、工程管理の容易な室温で吸着時にその色素濃度を変えて検討した比較試料204、205も不十分な変換効率を有するものであり、不十分な特性であった。これに対して本発明の試料207〜210は、本発明のカチオン系化合物を色素溶液中で混合し、高濃度色素でかつ短時間での色素吸着時間にもかかわらず、その変換効率は優れたものであり、かつ色素溶液の安定性も十分であり、本発明の優位性を示すものであった。
【0091】
(実施例―3)
実施例1の(1−2)色素溶液の試料-109の調製において、色素溶液を0.005mMおよび12mMに変更する以外は、実施例1の試料―109とまったく同様にして試料―3091、3092を作製した。
(3−7)結果
表1に示すように、本発明試料109に対して、色素濃度が本発明の範囲外で低濃度である比較試料3091は変換効率が不十分であった。一方色素濃度が本発明の範囲外で高濃度である比較試料3092は変換効率が得られているが、溶液中での色素の析出(不溶解)であり、実用上で採用できなきことが明らかであった。以上から、本発明の試料309が優れた色素増感型光電変換素子であることが認められた。
【0092】
(実施例―4)
実施例1の(1−2)色素溶液の試料-109の調製において、色素吸着時間を0.3分に変更する以外は、実施例1の試料―109とまったく同様にして試料―409を作製した。
(4−7)結果
表1に示すように、本発明試料109に対して、吸着時間が本発明の範囲外である比較試料409は変換効率が不十分であった。以上から、本発明の試料109が優れた色素増感型光電変換素子であることが認められた。
【0093】
(実施例―5)
実施例1の試料-109の調製において、(1−4)対向電極の作製を下記の(5−4)対向電極の作製に変更する以外は、実施例1の試料―109とまったく同様にして本発明の試料-509を作製した。
(5−4)対向電極層の作製
酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、厚み200μm、シート抵抗10Ω/□)を、20cm×100cmにカットした。エタノールで50%を希釈したPEDOT−PSS水分散液(ポリサイエンス社製、1.2wt%)をバーコーターによって塗布した。室温で乾燥後、150℃で10分乾燥させて光透過率が70%の対向電極フィルムを作製した。その後、4.5cm×10cmのサイズにカットした。フィルムの短辺から1cmの部分に、直径1mmの電解液注液用の穴を一箇所あけた(対向電極用の試料フィルム―5)。
【0094】
(5−7)結果
表1に示すように本発明のカチオン系化合物を色素溶液中で混合したときは、高濃度色素でかつ色素吸着時間が短いにもかかわらず、その変換効率は優れたものであり、かつ色素溶液の安定性も十分であり、本発明の優位性を示すものであった。
【0095】
(実施例―6)
実施例1の(1−2)色素溶液の試料-109の調製において、カチオン系化合物を総炭素数の小さい素材であるジメチルジオクチルアンモニウム・ブロマイド(総炭素数18)に変更する以外は、実施例1の試料―109とまったく同様にして試料―609を作製した。
(6−7)結果
表2に示したように、本発明試料109に対して、比較試料609は溶液中での色素の析出(不溶解)であり、実用上で採用できなきことが明らかであった。以上から、本発明の試料109が優れた色素増感型光電変換素子であることが認められた。
【0096】
(実施例−7)
実施例1の試料-109の調製において、得られた試料-109に、更に下記のバリアー包装体に封じ込めて本発明のモジュール試料-709を作製した。
(7−1)バリアー包装体に封じこめたモジュールの作製
実施例1において作製した試料−109を、下記の透湿度が10−4g/日・cm2のバリアー包装体に封じ込めて、包装材封入した色素増感太陽電池素子−709を作製した。
【0097】
(包装材の作製)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の一方の面に厚さ30nmの酸化珪素の蒸着薄膜層を積層し、その蒸着薄膜層の上に塗布量3g/m(乾燥状態)のポリウレタン系接着剤を介して厚15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらにその二軸延伸ナイロンフィルム面に塗布量3g/m(乾燥状態)のポリウレタン系接着剤を介して厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、他方の面にC−(OC24−O−(CF−C−O−CHSi(OCHからなるパーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤をパーフルオロヘキサンで0.5wt%に希釈した塗布液を塗布、乾燥して膜厚3μmの防汚層を積層した積層材料を得た。
【0098】
(包装材封入したモジュールの作製)
前記積層材料を所定寸法にスリットした二枚の積層材料の無延伸ポリプロピレンフィルム面同士を重ね合わせ、三辺をヒートシールし、一辺を開口部とした三方シール袋(包装袋)を作成し、その三方シール袋の開口部からケーブル付きの試料―109を挿入し、ケーブルの一端を袋外に出し、袋内の空気を真空にて吸引後に、加熱密封シールして本発明の包装済みバリアー包装体に封じこめたモジュール試料−709を得た。
【0099】
(6−2)耐久性評価
本発明のバリアー包装体に封じこめたモジュール試料−709を、40℃、相対湿度90%で1000時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明のカチオン系化合物を色素と併用したバリアー包装体に封じこめた本発明のモジュール試料−709は優れた耐久性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本願発明に従う色素増感型光電変換素子では、電解液へのヨウ素添加をしなくても、太陽光エネルギー変換の効率に優れ、耐久性に優れ、低コストでかつ環境循環性に優れ、環境負荷の低い色素増感型光電池が得られる。
【符号の説明】
【0101】

光電極層
11 透明基板
12 透明電極層
13 半導体粒子
14 増感色素
2 電解液層
3 対向電極層
31 透明基板
32 透明導電層
41 光電極層側の入射光
42 対向電極側の入射光
5 電流




【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック導電性基板上に、色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層および対向電極をこの順で有する色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池であり、前記色素を半導体粒子に吸着する方法において、色素溶液が少なくとも一種類の増感色素と少なくとも一種の下記一般式(1)で表わされるカチオン系化合物を含有することを特徴とする色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【化3】

(1)
式(1)において、R,R,R,R4は同じで異なってもよく、水素原子、炭素数1〜40の置換または未置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基または芳香族複素環基を表し、その総炭素数は20〜120であり、Xはアニオン基である。
【請求項2】
色素溶液中の増感色素の溶液濃度が、0.01〜10mMであることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【請求項3】
色素溶液中のカチオン化合物の添加量は、色素のモル当量に対して0.01モル等量〜100モル等量あることを特徴とする請求項1、2に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【請求項4】
色素溶液の温度が0℃〜50℃であることを特徴とする請求項1〜3に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
【請求項5】
色素溶液の吸着時間が0.5分〜30分であることを特徴とする請求項1〜4に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。



【図1】
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【公開番号】特開2012−150907(P2012−150907A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6855(P2011−6855)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(504345953)ペクセル・テクノロジーズ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】