色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法
【課題】信頼性の高い色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】互いに対向する一対の電極1,2と、一対の電極1,2を連結し、一対の電極1,2とともに複数のセル空間14を形成する隔壁15と、セル空間14に充填される電解質3とを備え、一対の電極1,2の一方の電極2が、複数のセル空間14の各々に面し且つ光増感色素を担持した酸化物半導体部8と、一対の電極1,2の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板9又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、金属基板9又は樹脂フィルムを含む電極2が、対向する電極1に向かって凸となるように撓む撓み部2aを有することを特徴とする色素増感太陽電池モジュール100。
【解決手段】互いに対向する一対の電極1,2と、一対の電極1,2を連結し、一対の電極1,2とともに複数のセル空間14を形成する隔壁15と、セル空間14に充填される電解質3とを備え、一対の電極1,2の一方の電極2が、複数のセル空間14の各々に面し且つ光増感色素を担持した酸化物半導体部8と、一対の電極1,2の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板9又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、金属基板9又は樹脂フィルムを含む電極2が、対向する電極1に向かって凸となるように撓む撓み部2aを有することを特徴とする色素増感太陽電池モジュール100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素増感太陽電池モジュールが注目されており、色素増感太陽電池モジュールに関して種々の開発が行われている。
【0003】
色素増感太陽電池モジュールは一般に、作用極と、対極と、作用極に担持される光増感色素と、作用極及び対極間の空間を複数のセル空間に仕切る隔壁と、各セル空間に配置される電解質とを備えている。
【0004】
このような色素増感太陽電池モジュールとして、例えば作用極と対極とを、それらの間に、隔壁をなす封止材及び電解質を挟んだ状態で大気圧以下、上記電解質の蒸気圧以下の気圧下で貼り合わせて上記封止材により接着してなるものが知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−99476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の色素増感太陽電池モジュールによれば、一般的には以下の効果が期待される。即ち、作用極と対極との間のセル空間が減圧されているため、作用極と対極とがそれぞれ対向する電極に向かって凸となるように撓む。このため、作用極と対極との間の距離が縮み、極間距離が短くなることにより光電変換効率が向上する。
【0007】
しかし、上述した特許文献1に記載の色素増感太陽電池モジュールは、以下に示す課題を有していた。
【0008】
即ち、上記特許文献1に記載の色素増感太陽電池モジュールには、光電変換効率が時間の経過に伴い大きく低下する、即ち光電変換効率の低下速度が大きくなる、という課題があった。このことは、作用極と対極との間に複数のセル空間が存在する色素増感太陽電池モジュールにおいて特に深刻な問題となる。即ち、特に、複数のセルが直列に接続されている場合には、1つのセルにおける光電変換効率の低下速度の増大という問題が、モジュール全体として使用できなくなることにつながるおそれがあり、色素増感太陽電池モジュールに対する信頼性が損なわれるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題が生じる原因について検討した。その結果、上記特許文献1の色素増感太陽電池モジュールでは、作用極及び対極として、1mm以上の厚さのものが使用されており、このことが、上記課題が生じる原因ではないかと本発明者は考えた。即ち、作用極及び対極の厚さが大きいと、作用極及び対極が撓んだ場合、撓んだ電極において元の形に戻る方向に力が働くスプリングバックという現象が生じる。このため、常に極間距離が遠くなる方向に力が働き、結果として極間距離が離れて電解質が気化してしまったり、極間距離が遠くなる方向の力により、封止等が破壊されて電解質が漏れたりする。こうして、光電変換効率の低下速度が大きくなるのではないかと本発明者は考えた。そこで、本発明者は更に鋭意研究を重ねた結果、対向する一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が所定の厚さの金属基板又は樹脂フィルムである場合に上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極を連結し、前記一対の電極とともに複数のセル空間を形成する隔壁と、前記セル空間に充填される電解質とを備え、前記一対の電極のうちの一方の電極が、前記複数のセル空間の各々に面し且つ光増感色素を担持した酸化物半導体部を有し、前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部を有することを特徴とする色素増感太陽電池モジュールである。
【0012】
この色素増感太陽電池モジュールでは、厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムを、少なくとも2層以上の層のうち最も厚い層として含む電極が、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部を有しているが、この撓み部において、スプリングバックが顕著に生じにくくなる。このため、この色素増感太陽電池モジュールによれば、一対の電極間の距離が遠くなる方向にスプリングバック現象による過大な力がかかりにくくなる。また極間距離が遠くなる方向の力により封止が破壊されて電解質が漏れることも十分に抑制される。さらに上記金属基板又は樹脂フィルムを有する電極は可撓性をも有するため、電位異常などによりセル空間の内圧が上昇しても、その可撓性を有する電極が撓むことが可能となり、可撓性を有する電極によって、隔壁と電極との界面に生じる応力を緩和することができる。その結果、光電変換効率の低下速度を十分に小さくすることができる。従って、本発明によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュールが実現される。
【0013】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記セル空間と前記隔壁と前記一対の電極とによって形成される複数のセルの少なくとも2つのセルが並列に接続されていることが好ましい。
【0014】
この場合、並列に接続されているセルの一部において、光電変換効率の低下速度が大きくなっても、残りのセルにおいて光電変換効率の低下速度が十分に小さければ、色素増感太陽電池モジュール全体として問題なく継続して使用できる。このため、複数のセルの全てが直列に接続される場合に比べて、色素増感太陽電池モジュールの信頼性をより高めることができる。
【0015】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記一対の電極の少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、前記配線部が前記隔壁と重なるように設けられていることが好ましい。
【0016】
この場合、集電配線を含む配線部は発電を生じさせるものではない。その点、集電配線を含む配線部が隔壁と重なるように設けられると、酸化物半導体部の受光面積を増加させることが可能となり、開口率をより増加させることができる。
【0017】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記一対の電極のうち一方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含み、他方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含まず、前記他方の電極が前記複数の酸化物半導体部を有することが好ましい。
【0018】
この場合、他方の電極の可撓性が一方の電極よりも小さくなる。このため、他方の電極が酸化物半導体部を有していても、酸化物半導体部に撓みによるクラック等が生じる心配がなくなる。
【0019】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、金属基板又は前記樹脂フィルム上に、前記複数のセル空間と接触するように設けられる連続した導電部を有することが好ましい。
【0020】
この場合、隣接するセル同士を並列に接続するためにリード線等で接続する必要がなくなる。また前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極は、スプリングバック現象が顕著に生じにくくなっている。このため、隣接するセル同士が並列に接続される場合に、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極において、スプリングバック現象により、並列に接続されたすべてのセルに影響が出て光電変換効率が低下することがより十分に抑制される。
【0021】
また本発明は、一対の電極を準備する準備工程と、前記一対の電極の少なくとも一方に隔壁形成部を固定する隔壁形成部固定工程と、前記一対の電極を、前記隔壁形成部を介して減圧下に貼り合せ、前記一対の電極の間に、前記一対の電極と共に複数のセル空間を形成する隔壁を形成する貼合せ工程とを含み、前記一対の電極のうち一方の電極が前記複数のセル空間の各々に面する複数の酸化物半導体部を有し、前記準備工程と前記隔壁形成部固定工程との間に、前記酸化物半導体部に光増感色素を担持させる色素担持工程を含み、前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、前記貼合せ工程において、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極に、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部が形成されるように前記一対の電極を貼り合せることを特徴とする色素増感太陽電池モジュールの製造方法である。
【0022】
この色素増感太陽電池モジュールの製造方法によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュールを製造することが可能となる。
【0023】
また上記色素増感太陽電池モジュールの製造方法においては、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、前記隔壁が熱可塑性樹脂を含み、前記貼合せ工程において、前記隔壁を、前記配線部に重なるように形成することが好ましい。
【0024】
この場合、開口率をより増加させることができる色素増感太陽電池モジュールを製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の色素増感太陽電池モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法に用いる一対の電極のうちの一方の電極を示す断面図である。
【図3】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法に用いる一対の電極のうちの他方の電極を示す断面図である。
【図4】図3の部分拡大断面図である。
【図5】図2の電極を示す平面図である。
【図6】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】図3の電極を示す平面図である。
【図8】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図9】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法において一対の電極を貼り合せる際に用いる貼合せ装置の一例を示す断面図である。
【図10】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図11】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図12】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図14】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図1は、本発明に係る色素増感太陽電池モジュールの好適な実施形態を示す断面図である。図1に示すように、色素増感太陽電池モジュール100は、作用極1と、作用極1に対向して配置される対極2とを備えている。作用極1は、透明導電電極21と、透明導電電極21の表面上に設けられる複数の多孔質酸化物半導体層8と、複数の多孔質酸化物半導体層8を囲むように配置される格子状の配線部11とを備えている。複数の多孔質酸化物半導体層8は、透明導電膜7上に互いに離間して配置されている。複数の多孔質酸化物半導体層8の各々には光増感色素が担持されている。
【0029】
透明導電電極21は、透明基板6と、透明基板6の対極2側に設けられる1枚の連続した透明導電膜7とを有している。配線部11は、透明導電膜7に接触して設けられる集電配線12と、集電配線12を被覆する配線保護層13とを有している。
【0030】
作用極1と対極2との間には、作用極1及び対極2とともに複数のセル空間14を形成する格子状の隔壁15が設けられている。隔壁15は、作用極1と対極2とを連結しており、集電配線12を含む配線部11と重なるように配置されている。ここで、隔壁15は絶縁性であり、各セル空間14と対極2と作用極1とによって形成される複数のセルは互いに並列に接続されている。そして、隔壁15に形成された複数のセル空間14の各々には電解質3が充填されている。
【0031】
対極2は、金属基板9と、その上に設けられ電解質3と接触する位置に設けられる触媒膜10とで構成されている。金属基板6は、触媒膜10に対し電解質3と反対側に配置されている。ここで、金属基板9の厚さは触媒膜10の厚さより大きくなっている。即ち、金属基板9は、対極2を構成する層の中で最も厚い層である。具体的には、金属基板9は、触媒膜10の厚さより大きく且つ100μm以下の厚さを有している。そして、対極2は、対向する作用極1に向かって凸となるように撓む撓み部2aを有している。撓み部2aは、複数のセル空間14に対応する位置に形成されている。一方、作用極1は撓み部を有していない。
【0032】
この色素増感太陽電池モジュール100では、対極2を構成する金属基板9及び触媒膜10のうち最も厚い層である金属基板9が、100μm以下の厚さを有するため、対極2の撓み部2aにおいて、スプリングバックが顕著に生じにくくなっている。また作用極1は撓み部を有しないため、スプリングバック現象を生じることはほとんどない。このため、この色素増感太陽電池モジュール100によれば、対極2と作用極1との間の距離が遠くなる方向にスプリングバック現象による過大な力がかかりにくくなる。また極間距離が遠くなる方向の力により封止が破壊されて電解質3が漏れることも十分に抑制される。また、上記金属基板9を有する対極2は可撓性をも有するため、電位異常などによりセル空間14の内圧が上昇しても、対極2の撓み部2aが撓むことが可能となり、対極2によって、隔壁15と対極2又は作用極1との界面に生じる応力を緩和することができる。その結果、光電変換効率の低下速度を十分に小さくすることができる。従って、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュール100が実現可能となる。
【0033】
さらに色素増感太陽電池モジュール100では、集電配線12を含む配線部11は発電を生じさせるものではない。その点、本実施形態の色素増感太陽電池モジュール100では、集電配線12を含む配線部11が隔壁15と重なるように設けられているので、多孔質酸化物半導体層8の受光面積を増加させることが可能となり、開口率をより増加させることができる。
【0034】
また色素増感太陽電池モジュール100においては、セル空間14と隔壁15と対極2と作用極1とによって形成される複数のセルが並列に接続されている。このため、並列に接続されているセルの一部において、光電変換効率の低下速度が大きくなっても、残りのセルにおいて光電変換効率の低下速度が十分に小さければ、色素増感太陽電池モジュール100全体として問題なく継続して使用することが可能となる。このため、複数のセルの全てが直列に接続される場合に比べて、色素増感太陽電池モジュール100の信頼性をより高めることができる。
【0035】
さらに色素増感太陽電池モジュール100においては、複数のセル空間14を覆うように設けられる触媒膜10が1枚の連続したものとなっている。一般的には、この場合にスプリングバック現象が生じると、並列に接続された複数のセル空間14の全てにおいて光電変換効率の低下速度が低下するおそれがある。その点、色素増感太陽電池モジュール100においては、触媒10を含む対極2が、厚さ100μm以下の金属基板9を有しており、スプリングバック現象が生じにくくなっている。このため、複数のセル空間14の全てにおいて光電変換効率の低下速度が低下する可能性を十分に低くすることができる。
【0036】
次に、上述した色素増感太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
【0037】
[準備工程]
まず作用極1及び対極2を以下のようにして準備する。
【0038】
(作用極)
まず透明導電電極21を作製する。透明導電電極21は、透明基板6の上に、1枚の連続した透明導電膜7を形成することにより得ることができる(図2)。透明導電膜7の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが用いられる。これらのうちスプレー熱分解法が装置コストの点から好ましい。
【0039】
透明基板6を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などの樹脂フィルムが挙げられる。透明基板6の厚さは、色素増感太陽電池モジュール100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50μm〜10000μmの範囲にすればよい。このとき、透明基板6がガラスで構成されるか、透明基板6が厚さ500μmを超える樹脂フィルムで構成されることが好ましい。この場合、作用極1の可撓性は対極2よりも小さくなる。このため、作用極1が多孔質酸化物半導体層8を有していても、多孔質酸化物半導体層8に撓みによるクラック等が生じる心配がなくなる。
【0040】
透明導電膜7を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜7は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜7が単層で構成される場合、透明導電膜7は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。また透明導電膜7として、複数の層で構成される積層体を用いると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOで構成される層と、FTOで構成される層との積層体を用いることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電膜7が実現できる。透明導電膜7の厚さは例えば0.01μm〜2μmの範囲にすればよい。
【0041】
続いて、複数の多孔質酸化物半導体層8を形成する予定の領域(以下、「多孔質酸化物半導体層形成予定領域」と呼ぶ)を包囲するように配線部11を形成する。配線部11は、複数の多孔質酸化物半導体層形成予定領域の各々を包囲するように集電配線12を形成し、続いて集電配線12を被覆するように配線保護層13を形成することにより得ることができる。
【0042】
集電配線12は、例えば、金属粒子とポリエチレングルコールなどの増粘剤とを配合してペーストとし、そのペーストを、スクリーン印刷法などを用いて多孔質酸化物半導体層8を囲むように塗膜し、加熱して焼成することによって得ることができる。配線保護層13は、例えば、低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料に、必要に応じて増粘剤、結合剤、分散剤、溶剤などを配合してなるペーストを、スクリーン印刷法などにより集電配線12の全体を被覆するように塗布し、加熱し焼成することによって得ることができる。
【0043】
次に、透明導電膜7の表面における複数の多孔質酸化物半導体層形成予定領域に、互いに離間するように多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、上述した酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0044】
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して多孔質酸化物半導体層8を形成し、作用極1を得る。
【0045】
焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は350℃〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0046】
上記酸化物半導体粒子としては、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In3O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タリウム(Ta2O5)、酸化ランタン(La2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ホルミウム(Ho2O3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)又はこれらの2種以上で構成される酸化物半導体粒子が挙げられる。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、即ち光電変換を行う場が広くなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。ここで、多孔質酸化物半導体層8が、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させてなる積層体で構成されることが好ましい。この場合、積層体内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、入射光を積層体の外部へ逃がすことなく効率よく光を電子に変換することができる。多孔質酸化物半導体層8の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層8は、異なる材料からなる複数の半導体層の積層体で構成することもできる。
【0047】
(対極)
一方、対極2は、以下のようにして得ることができる(図3)。
【0048】
即ちまず厚さ100μm以下の金属基板9を準備する(図4)。そして、金属基板9の上に触媒膜10を形成する。触媒膜10の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
【0049】
このとき、金属基板9は、チタン、ニッケル、ステンレス、白金又はこれらの2種以上の合金から構成される。これらは、電解質3の種類に関係なく使用できるが、特にヨウ素に対して耐食性を有することから、電解質3がヨウ素を含むものである場合に特に好適である。これらのうち金属基板9はチタンから構成されることが耐食性、価格及び入手性の点から好ましい。金属基板9の厚さは100μm以下であればよいが、好ましくは5〜35μm、より好ましくは10〜30μmであり、より好ましくは10〜20μmである。
【0050】
触媒膜10は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0051】
[隔壁形成部形成工程]
次に、図5及び図6に示すように、作用極1の配線部11上の部位である格子状の第1部位C1に第1隔壁形成部4Aを形成する。第1隔壁形成部4Aは、例えば熱可塑性樹脂を加熱により溶融させて透明導電膜7に接着させることによって得ることができる。
【0052】
一方、図7及び図8に示すように、対極2のうち触媒膜10の表面上の部位である格子状の第2部位C2に第2隔壁形成部4Bを形成する。第2部位C2は、透明導電電極21における第1部位C1と合致した形状を有する。第2隔壁形成部4Bは、例えば熱可塑性樹脂を加熱により溶融させて触媒膜10に接着させることによって得ることができる。
【0053】
第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを形成する熱可塑性樹脂としては、酸変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール、及びエチレンービニルアルコール共重合体などが好ましく用いられる。この場合、電解質3が第1隔壁形成部4A又は第2隔壁形成部4Bに浸透して漏洩することを、より十分に抑制することができる。なお、酸変性ポリエチレンとは、ポリエチレンに酸をランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合させたもの、またはこれらを金属イオンで中和したものを意味する。一例としては、エチレンメタクリル酸共重合体は、エチレンとメタクリル酸とを共重合させたもので、酸変性ポリエチレンであり、エチレンメタクリル酸共重合体を金属イオンで中和したアイオノマーも酸変性ポリエチレンとなる。
【0054】
ここで、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとの密着性を向上させる観点からは、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを構成する材料は上記酸変性ポリエチレンの群から選ばれる樹脂の組み合わせであることが望ましい。例えば第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂がアイオノマーからなり、第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂が無水マレイン酸変性ポリエチレンからなる組み合わせ、又は、第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂が無水マレイン酸変性ポリエチレンからなり、第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂がアイオノマーからなる組み合わせなどが望ましい。
【0055】
この場合、酸変性ポリエチレンはポリビニルアルコールまたはエチレンービニルアルコール共重合体に比べて比較的低融点であるため、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bの樹脂が比較的低温で溶融接着しやすい。また、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bの樹脂が異種の酸変性ポリエチレンであっても、お互いのモノマーがエチレンであるため相性が良く、後述する封止部形成工程で第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとの間での接着性及び密着性に優れる。
【0056】
より望ましくは、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを構成する材料は上記酸変性ポリエチレンの群から選ばれる同じ樹脂である。例えば第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂と第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂が同じアイオノマーからなる組み合わせ、又は、第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂と第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂が同じ無水マレイン酸変性ポリエチレンからなる組み合わせなどが望ましい。
【0057】
ここで、同じ樹脂とは、ポリエチレンを変性する酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比が同一である樹脂はもちろん、このモル比が異なる樹脂をも含む。例えば酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比率が5%のエチレンメタクリル酸共重合体と、酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比率が10%のエチレンメタクリル酸共重合体とは同じ樹脂となる。この場合、使用する樹脂の融点、メルトフローレート、その他の様々な熱的性質が近いため、同じタイミングでお互いが溶融接着しやすい。そのため、融点やメルトフローレートが大きく異なる樹脂を用いる場合と比較して、溶融加熱時間をコントロールしやすく、後述する封止部形成工程を容易に行うことができる。
【0058】
[色素担持工程]
次に、作用極1の複数の多孔質酸化物半導体層8の各々に光増感色素を担持させる。このためには、作用極1を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層8に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を酸化物半導体多孔膜に吸着させても、光増感色素を複数の多孔質酸化物半導体層8に担持させることが可能である。
【0059】
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0060】
[貼合せ工程]
次に、作用極1と対極2とを減圧下に貼り合わせ、作用極1と対極2との間に、複数の開口を有する隔壁15を形成する。このとき、隔壁15は、各開口の内側に多孔質酸化物半導体層8が配置されるように形成する。
【0061】
ここで、作用極1と対極2とを貼り合せる貼合せ装置について図9を用いて説明する。図9は、貼合せ装置の一例を示す断面図である。図9に示す貼合せ装置50は、作用極1を保持する第1保持部51と、対極2を保持する第2保持部61とを備えている。
【0062】
第1保持部51はベース部52を有し、ベース部52は、第2保持部61と突き合わされる環状の突合せ面52aを有している。突合せ面52aには、当該突合せ面52aに沿って、シール材53を収容する収容溝52bが形成されている。そして、ベース部52には、環状の突合せ面52aの内側に作用極1を収容する収容凹部54が形成されている。収容凹部54の内部には、作用極1を保持するための保持部材55が配設されている。また収容凹部54には、収容凹部54の底部に貫通可能に設けられ保持部材55に固定されるシリンダ56と、収容凹部54に固定され、シリンダ56を介して保持部材55を上下に往復移動させる駆動部57とが設けられている。駆動部57は例えば油圧ポンプで構成される。従って、作用極1を保持部材55上に配置し、駆動部57を駆動させると、シリンダ56が上下に移動し、作用極1の位置を変えることが可能となる。
【0063】
一方、第2保持部61はベース部62を有し、ベース部62は、第1保持部51のベース部52と突き合わされる環状の突合せ面62aを有している。そして、ベース部62には、環状の突合せ面62aの内側に対極2を収容する収容凹部64が形成されている。収容凹部64の底部には、断熱部材65を介してヒータ66が固定されている。ヒータ66は、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとを局所的に加熱可能とするためベース部62の底部と反対側に向かって突出する格子状の加熱面66aと、ヒータ66の加熱面66aに囲まれるように形成された凹部66bとを有している。第2保持部62は、断熱部材65とヒータ66とベース部62とによって形成されコイルばね68を収容するバネ収容部69をヒータ66の凹部66bと反対側に有している。第2保持部61は、対極2に撓み部2aを形成するための撓み部形成部材70を有する。撓み部形成部材70は、ヒータ66の凹部66b及びコイルばね68を貫通する棒状の貫通部71と、貫通部71の一端に設けられ対極2を押圧する板状の押圧部72とで構成されている。収容凹部64の底部には、撓み部形成部材70の移動を規制する規制穴73が形成されている。
【0064】
第1保持部51と第2保持部61とは、第1保持部51の突合せ面52aと第2保持部61の突合せ面62aとが突き合わされることで、収容凹部54及び収容凹部64で構成される密閉空間を形成するようになっている。そして、貼合せ装置50は、上記密閉空間を減圧するための減圧ポンプ(図示せず)を更に備えている。
【0065】
次に、貼合せ装置50を用いて、作用極1と対極2とを貼り合せる方法について説明する。
【0066】
まず図10に示すように、保持部材55の上に、第1隔壁形成部4Aが配線部11の上に形成された作用極1を配置する。
【0067】
続いて、作用極1上であって第1隔壁形成部4Aの内側に電解質3を配置する。電解質3は、作用極1上であって第1隔壁形成部4Aの内側に多孔質酸化物半導体層8を覆うように注入したり、印刷したりすることによって得ることができる。
【0068】
ここで、電解質3が液状である場合は、電解質3を、第1隔壁形成部4Aを超えて第1隔壁形成部4Aの外側に溢れるまで注入することが好ましい。この場合、第1隔壁形成部4Aの内側に電解質3を十分に注入することが可能となる。また第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとを接着して隔壁15を形成するに際し、作用極1と対極2と隔壁15とによって囲まれるセル空間14から空気を十分に排除することができ、光電変換効率を十分に向上させることができる。なお、電解質3が第1隔壁形成部4Aを超えて第1隔壁形成部4Aの外側に溢れるまで注入されることにより第1隔壁形成部4Aの接着部位が電解質3で濡れても、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bはいずれも熱可塑性樹脂であるため、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bの接着に際し、濡れ性の低下による接着力の低下は十分に小さく、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bは強固に接着する。
【0069】
電解質3は通常、電解液で構成され、この電解液は例えばI−/I3−などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI−/I3−のほか、臭素/臭化物イオンなどの対が挙げられる。色素増感太陽電池モジュール100は、酸化還元対としてI−/I3−のような揮発性溶質及び、高温下で揮発しやすいアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルのような有機溶媒を含む電解液を電解質3として用いた場合に特に有効である。この場合、色素増感太陽電池モジュール100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が特に大きくなり、隔壁15と対極2との界面、および隔壁15と作用極1との界面から電解質3が漏洩しやすくなるからである。なお、上記揮発性溶媒にはゲル化剤を加えてもよい。また電解質3は、イオン液体と揮発性成分との混合物からなるイオン液体電解質で構成されてもよい。この場合も、色素増感太陽電池モジュール100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が大きくなるためである。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが好適に用いられる。また揮発性成分としては、上記の有機溶媒や、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、LiI、I2、4−t−ブチルピリジンなどが挙げられる。さらに電解質3としては、上記イオン液体電解質にSiO2、TiO2、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットイオンゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化したイオン液体電解質を用いてもよい。
【0070】
次に、図11に示すように、第2保持部61に含まれる撓み部形成部材70に対極2を固定し、第1保持部51の突合せ面52aと第2収容容器52の突合せ面62aとを突き合わせる。このとき、突合せ面52aの収容溝52bにはシール材53が収容されているため、突合せ面52aと突合せ面62aとを突き合わされることにより、密閉空間が形成される。
【0071】
次に、この密閉空間を減圧ポンプにより減圧する。
【0072】
このとき、密閉空間の圧力は通常、50Pa以上1013hPa未満の範囲であり、50〜800Paとすることが好ましく、300〜800Paとすることがより好ましい。
【0073】
特に、電解質3に含まれる有機溶媒が揮発性溶媒である場合には、密閉空間内の圧力は700〜1000Paであることが好ましく、700〜800Paであることがより好ましい。圧力が上記範囲内にあると、圧力が上記範囲を外れる場合と比較して、電解質3を第1隔壁形成部4Aの内側に形成する際、有機溶媒の揮発がより抑制されるとともに、得られる色素増感太陽電池モジュール100において作用極1、対極2及び隔壁15が互いにより強固に固定され、電解質3の漏洩が起こりにくくなる。
【0074】
また電解質3がイオン液体を含む場合には、イオン液体は揮発しないため、電解質3が揮発性溶媒を含む場合のように電解質3の揮発を考慮して密閉空間の圧力を高くする必要がない。このため、密閉空間内の圧力は50〜700Paであってもよい。
【0075】
さらに電解質3がゲル電解質を含む場合には、ゲル化させる前駆体の主成分が揮発系である場合とイオン液体系である場合とで異なり、前駆体の主成分が揮発系である場合には600〜800Pa,イオン液体系である場合には50〜700Paであることが好ましい。従って電解質3がゲル電解質を含む場合には、密閉空間内の圧力は50〜800Paとすることが好ましい。
【0076】
そして、密閉空間を減圧しながら、図12に示すように、駆動部57を駆動させ、シリンダ56を移動させることにより、保持部材55を、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとが接触するまで移動させる。このとき、ヒータ66の加熱面66aはまだ対極2に接触していない。
【0077】
次に、駆動部57を駆動させ、シリンダ56をさらに移動させることにより、保持部材55をさらに対極2側に移動させる。このとき、保持部材55は、対極2がヒータ66の加熱面66aと接触するまで移動させる。またこのとき、ヒータ66は、コイルばね68の弾性力により作用極1側に押し戻されるため、作用極1側の第1隔壁形成部4Aと対極2側の第2隔壁形成部4Bとを密着させることが可能となる。撓み部形成部材70は、対極2の移動に伴ってヒータ66の凹部66b側に移動させられる。このとき、撓み部形成部材70の貫通部71の先端が規制穴73の底部に達すると、撓み部形成部材70の移動が規制される。このとき、撓み部形成部材70の移動は、押圧部72がヒータ66の加熱面66aよりも作用極1側に突き出した状態となる位置で規制される。このため、対極2がヒータ66の加熱面66aに接触した後も対極2のヒータ66側への移動が続けられると、図13に示すように、対極2には、セル空間14に向かって凸となるように撓む撓み部2aが形成される。
【0078】
この状態で、ヒータ66の加熱面66aにより、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとが重なり合った部分を局所的に加圧しながら加熱し、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとを熱溶融させる。こうして隔壁15が形成される。
【0079】
このとき、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bの加圧は通常、1〜50MPaで行い、好ましくは2〜30MPa、より好ましくは3〜20MPaで行う。
【0080】
また第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを溶融させるときのヒータ66の温度は、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを形成する熱可塑性樹脂の融点以上であればよい。上記温度が熱可塑性樹脂の融点未満では、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを形成する熱可塑性樹脂が溶融しないため、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4B同士を接着させて隔壁15を形成させることができなくなる。
【0081】
但し、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを溶融させるときのヒータ66の温度は、(熱可塑性樹脂の融点+200℃)以下であることが好ましい。上記温度が(熱可塑性樹脂の融点+200℃)を超えると、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bに含まれる熱可塑性樹脂が熱によって分解するおそれがある。
【0082】
次に、減圧ポンプの作動を停止させ、続いて、図14に示すように、第2保持部61を第1保持部51から離間させる。
【0083】
こうして色素増感太陽電池モジュール100が得られ、色素増感太陽電池モジュール100の製造が完了する。
【0084】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、
対極2は、金属基板9と触媒層10とで構成されているが、金属基板9に代えて、樹脂フィルムを用いることもできる。ただし、この場合、樹脂フィルムの厚さは500μm以下とする必要がある。樹脂フィルムの厚さが500μmを超えると、その樹脂フィルムを含む対極においてスプリングバック現象が顕著に生じるようになるためである。
また上記実施形態では、対極2が金属基板9と触媒膜10の2層で構成されているが、対極2は、2層以上で構成されていてもよい。この場合、最も厚い層が、100μm以下の金属基板又は500μm以下の樹脂フィルムとなるようにする。
【0085】
また上記実施形態では、作用極1の透明基板6が厚さ100μm以下の金属基板9又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであってもよい。但し、この場合、作用極1も、対向する対極2に向かって凸となるように撓む撓み部を有する必要がある。
【0086】
また上記実施形態では、隔壁15と配線部11とが重なるように配置されているが、これらは重なるように配置されていなくてもよい。
【0087】
さらに、上記実施形態では、複数のセルの全てが並列に接続されているが、各セルを構成する対極2の撓み部2aとそのセルに隣接するセルの作用極1とが、例えば隔壁15を貫通する導電部材(図示せず)によって電気的に接続され、これにより、複数のセルが直列に接続されていてもよい。
【0088】
さらに上記実施形態では、多孔質酸化物半導体層8が透明導電電極21の表面上に形成されているが、対極2の表面上に形成することも可能である。
【0089】
また上記実施形態では、作用極1に第1隔壁形成部を固定し且つ対極2に第2隔壁形成部を固定しているが、いずれか一方の電極に固定するだけであってもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
はじめに、20cm×20cm×4mm(厚さ)のフッ素ドープ酸化錫透明導電ガラス基板(FTO基板)を準備した。続いて、FTO基板の上に、500℃焼結型銀ペーストを、格子状パターンと格子状パターンの外周の一部から引き出される取り出し用のパターンとが形成するように塗布した。このとき、格子状パターンは、18cm×18cmの領域に3行×5列の格子(長さ6cm、幅1.2cm)が形成されるように酸化チタンペーストを塗布することによって形成した。但し、格子状パターンの外周部の太さは2mmとし、それ以外の部分の太さは1.5mmとした。そして、格子状パターンと取り出し用パターンとからなる銀ペーストを500℃で焼成し、厚さ約10μmの銀からなる集電配線を得た。
【0092】
次に、格子状パターンの各格子内に、集電配線から約1mm離れた位置に矩形状となるように酸化チタンペーストを塗布焼成し、厚さ約20μmの多孔質酸化物半導体層を形成した。
【0093】
次に、集電配線のうち格子状パターンの部分を低融点ガラスフリットで覆い、520℃で焼成して厚さ50μmの配線保護層を形成した。こうして作用極を得た。
【0094】
次に、配線保護層を覆うように厚さ20μmのポリオレフィン系ホットメルト樹脂を貼り付け、溶融接着し、第1隔壁形成部を形成した。このとき、ホットメルト樹脂が多孔質酸化物半導体層に重ならないようにした。
【0095】
続いて、作用極を、光増感色素であるN719色素を0.2mM溶かした脱水エタノール液中に一昼夜浸漬して作用極に光増感色素を担持させた。
【0096】
一方、20cm×20cm×40μm(厚さ)の純金属チタン箔からなる金属基板を用意し、この金属基板の表面をプラズマクリーニングした後、スパッタリング法により、全面に厚さ約30nmの白金触媒膜を形成し、対極を得た。
【0097】
次に、18cm×18cmの領域に3列×5行の格子(長さ6cm、幅1.2cm)が形成された格子状パターンをなすポリオレフィン系ホットメルト樹脂を用意した。但し、格子状パターンの外周部の太さは2mmとし、それ以外の部分の太さは1.5mmとした。次いで、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂を、対極の白金触媒膜上に配置した後、溶融接着した。こうして対極に第2隔壁形成部を形成した。
【0098】
次いで、第1隔壁形成部を設けた作用極と、第2隔壁形成部を設けた対極とを図9の貼合せ装置50を用いて形成した。具体的にはまず保持部材55上に、第1隔壁形成部を設けた作用極を、FTO基板の多孔質酸化物半導体層側の表面が水平になるように配置した。一方、第2隔壁形成部を設けた対極を、微粘着剤を用いて撓み部形成部材70の押圧部72に固定した。
【0099】
そして、第1隔壁形成部の各スリットの内側にある多孔質酸化物半導体層の中央及び上下3点に、電解液をー35℃以下の乾燥空気中でごく少量(0.01ml程度)滴下した。このとき、電解液としては、メトキシアセトニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む揮発系電解質を用いた。
【0100】
そして、第1保持部51の突合せ面52aと第2保持部61の突合せ面62aとを突き合わせて密閉空間を形成した。そしてこの密閉空間を減圧ポンプで800Paまで減圧した後、10秒以内に第1隔壁形成部と第2隔壁形成部とを重ね合わせた。そして、第1隔壁形成部と合致した形状の加熱面66aを有する真鍮製のヒータ66を加熱した。そして、油圧ポンプからなる駆動部57を駆動し、シリンダ56を上昇させることにより保持部材55を上昇させ、ヒータ66の加熱面66aによって、3MPaで第1隔壁形成部及び第2隔壁形成部を加圧しながら160℃で加熱して溶融させて隔壁15を形成した。その後、保持部材55を下降させ、セル空間を冷却し、第1保持部と第2保持部とを離間させた。こうして色素増感型太陽電池モジュールを得た。
【0101】
(実施例2〜3)
対極を構成する金属基板の厚さを表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0102】
(実施例4〜6)
対極を構成する金属基板に代えて、Ti膜をコートした、表1に示す厚さを有するPENからなる樹脂フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0103】
(比較例1〜3)
対極を構成する金属基板の厚さを表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0104】
(比較例4〜6)
対極を構成する金属基板に代えて、Ti膜をコートした、表1に示す厚さを有するPENからなる樹脂フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0105】
[光電変換効率の変化についての評価]
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた色素増感太陽電池モジュールについて、1000h後の光電変換効率を測定し、下記式:
光電変換効率の経時変化=初期の光電変換効率(100%)−1000h後の光電変換効率
に基づいて光電変換効率の経時変化を算出した。結果を表1に示す。なお、光電変換効率の経時変化が5%以下である場合には「合格」とし、5%を超える場合には「不合格」とした。
【表1】
【0106】
表1に示す結果より、実施例1〜6の色素増感太陽電池モジュールによれば、比較例1〜6の色素増感太陽電池モジュールを用いた場合に比べて光電変換効率の経時変化は小さくなっており、光電変換効率の低下速度が十分小さくなることが分かった。
【0107】
よって、本発明によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュールを実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0108】
1…作用極(第1電極)、2…対極(第2電極)、2a…撓み部、3…電解質、8…多孔質酸化物半導体層(酸化物半導体部)、9…金属基板、10…触媒膜(導電部)、11…配線部、12…集電配線、15…隔壁、100…色素増感太陽電池モジュール。
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素増感太陽電池モジュールが注目されており、色素増感太陽電池モジュールに関して種々の開発が行われている。
【0003】
色素増感太陽電池モジュールは一般に、作用極と、対極と、作用極に担持される光増感色素と、作用極及び対極間の空間を複数のセル空間に仕切る隔壁と、各セル空間に配置される電解質とを備えている。
【0004】
このような色素増感太陽電池モジュールとして、例えば作用極と対極とを、それらの間に、隔壁をなす封止材及び電解質を挟んだ状態で大気圧以下、上記電解質の蒸気圧以下の気圧下で貼り合わせて上記封止材により接着してなるものが知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−99476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の色素増感太陽電池モジュールによれば、一般的には以下の効果が期待される。即ち、作用極と対極との間のセル空間が減圧されているため、作用極と対極とがそれぞれ対向する電極に向かって凸となるように撓む。このため、作用極と対極との間の距離が縮み、極間距離が短くなることにより光電変換効率が向上する。
【0007】
しかし、上述した特許文献1に記載の色素増感太陽電池モジュールは、以下に示す課題を有していた。
【0008】
即ち、上記特許文献1に記載の色素増感太陽電池モジュールには、光電変換効率が時間の経過に伴い大きく低下する、即ち光電変換効率の低下速度が大きくなる、という課題があった。このことは、作用極と対極との間に複数のセル空間が存在する色素増感太陽電池モジュールにおいて特に深刻な問題となる。即ち、特に、複数のセルが直列に接続されている場合には、1つのセルにおける光電変換効率の低下速度の増大という問題が、モジュール全体として使用できなくなることにつながるおそれがあり、色素増感太陽電池モジュールに対する信頼性が損なわれるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題が生じる原因について検討した。その結果、上記特許文献1の色素増感太陽電池モジュールでは、作用極及び対極として、1mm以上の厚さのものが使用されており、このことが、上記課題が生じる原因ではないかと本発明者は考えた。即ち、作用極及び対極の厚さが大きいと、作用極及び対極が撓んだ場合、撓んだ電極において元の形に戻る方向に力が働くスプリングバックという現象が生じる。このため、常に極間距離が遠くなる方向に力が働き、結果として極間距離が離れて電解質が気化してしまったり、極間距離が遠くなる方向の力により、封止等が破壊されて電解質が漏れたりする。こうして、光電変換効率の低下速度が大きくなるのではないかと本発明者は考えた。そこで、本発明者は更に鋭意研究を重ねた結果、対向する一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が所定の厚さの金属基板又は樹脂フィルムである場合に上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極を連結し、前記一対の電極とともに複数のセル空間を形成する隔壁と、前記セル空間に充填される電解質とを備え、前記一対の電極のうちの一方の電極が、前記複数のセル空間の各々に面し且つ光増感色素を担持した酸化物半導体部を有し、前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部を有することを特徴とする色素増感太陽電池モジュールである。
【0012】
この色素増感太陽電池モジュールでは、厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムを、少なくとも2層以上の層のうち最も厚い層として含む電極が、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部を有しているが、この撓み部において、スプリングバックが顕著に生じにくくなる。このため、この色素増感太陽電池モジュールによれば、一対の電極間の距離が遠くなる方向にスプリングバック現象による過大な力がかかりにくくなる。また極間距離が遠くなる方向の力により封止が破壊されて電解質が漏れることも十分に抑制される。さらに上記金属基板又は樹脂フィルムを有する電極は可撓性をも有するため、電位異常などによりセル空間の内圧が上昇しても、その可撓性を有する電極が撓むことが可能となり、可撓性を有する電極によって、隔壁と電極との界面に生じる応力を緩和することができる。その結果、光電変換効率の低下速度を十分に小さくすることができる。従って、本発明によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュールが実現される。
【0013】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記セル空間と前記隔壁と前記一対の電極とによって形成される複数のセルの少なくとも2つのセルが並列に接続されていることが好ましい。
【0014】
この場合、並列に接続されているセルの一部において、光電変換効率の低下速度が大きくなっても、残りのセルにおいて光電変換効率の低下速度が十分に小さければ、色素増感太陽電池モジュール全体として問題なく継続して使用できる。このため、複数のセルの全てが直列に接続される場合に比べて、色素増感太陽電池モジュールの信頼性をより高めることができる。
【0015】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記一対の電極の少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、前記配線部が前記隔壁と重なるように設けられていることが好ましい。
【0016】
この場合、集電配線を含む配線部は発電を生じさせるものではない。その点、集電配線を含む配線部が隔壁と重なるように設けられると、酸化物半導体部の受光面積を増加させることが可能となり、開口率をより増加させることができる。
【0017】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記一対の電極のうち一方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含み、他方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含まず、前記他方の電極が前記複数の酸化物半導体部を有することが好ましい。
【0018】
この場合、他方の電極の可撓性が一方の電極よりも小さくなる。このため、他方の電極が酸化物半導体部を有していても、酸化物半導体部に撓みによるクラック等が生じる心配がなくなる。
【0019】
上記色素増感太陽電池モジュールにおいては、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、金属基板又は前記樹脂フィルム上に、前記複数のセル空間と接触するように設けられる連続した導電部を有することが好ましい。
【0020】
この場合、隣接するセル同士を並列に接続するためにリード線等で接続する必要がなくなる。また前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極は、スプリングバック現象が顕著に生じにくくなっている。このため、隣接するセル同士が並列に接続される場合に、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極において、スプリングバック現象により、並列に接続されたすべてのセルに影響が出て光電変換効率が低下することがより十分に抑制される。
【0021】
また本発明は、一対の電極を準備する準備工程と、前記一対の電極の少なくとも一方に隔壁形成部を固定する隔壁形成部固定工程と、前記一対の電極を、前記隔壁形成部を介して減圧下に貼り合せ、前記一対の電極の間に、前記一対の電極と共に複数のセル空間を形成する隔壁を形成する貼合せ工程とを含み、前記一対の電極のうち一方の電極が前記複数のセル空間の各々に面する複数の酸化物半導体部を有し、前記準備工程と前記隔壁形成部固定工程との間に、前記酸化物半導体部に光増感色素を担持させる色素担持工程を含み、前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、前記貼合せ工程において、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極に、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部が形成されるように前記一対の電極を貼り合せることを特徴とする色素増感太陽電池モジュールの製造方法である。
【0022】
この色素増感太陽電池モジュールの製造方法によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュールを製造することが可能となる。
【0023】
また上記色素増感太陽電池モジュールの製造方法においては、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、前記隔壁が熱可塑性樹脂を含み、前記貼合せ工程において、前記隔壁を、前記配線部に重なるように形成することが好ましい。
【0024】
この場合、開口率をより増加させることができる色素増感太陽電池モジュールを製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の色素増感太陽電池モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法に用いる一対の電極のうちの一方の電極を示す断面図である。
【図3】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法に用いる一対の電極のうちの他方の電極を示す断面図である。
【図4】図3の部分拡大断面図である。
【図5】図2の電極を示す平面図である。
【図6】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】図3の電極を示す平面図である。
【図8】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図9】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法において一対の電極を貼り合せる際に用いる貼合せ装置の一例を示す断面図である。
【図10】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図11】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図12】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図14】図1の色素増感太陽電池モジュールの製造方法の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図1は、本発明に係る色素増感太陽電池モジュールの好適な実施形態を示す断面図である。図1に示すように、色素増感太陽電池モジュール100は、作用極1と、作用極1に対向して配置される対極2とを備えている。作用極1は、透明導電電極21と、透明導電電極21の表面上に設けられる複数の多孔質酸化物半導体層8と、複数の多孔質酸化物半導体層8を囲むように配置される格子状の配線部11とを備えている。複数の多孔質酸化物半導体層8は、透明導電膜7上に互いに離間して配置されている。複数の多孔質酸化物半導体層8の各々には光増感色素が担持されている。
【0029】
透明導電電極21は、透明基板6と、透明基板6の対極2側に設けられる1枚の連続した透明導電膜7とを有している。配線部11は、透明導電膜7に接触して設けられる集電配線12と、集電配線12を被覆する配線保護層13とを有している。
【0030】
作用極1と対極2との間には、作用極1及び対極2とともに複数のセル空間14を形成する格子状の隔壁15が設けられている。隔壁15は、作用極1と対極2とを連結しており、集電配線12を含む配線部11と重なるように配置されている。ここで、隔壁15は絶縁性であり、各セル空間14と対極2と作用極1とによって形成される複数のセルは互いに並列に接続されている。そして、隔壁15に形成された複数のセル空間14の各々には電解質3が充填されている。
【0031】
対極2は、金属基板9と、その上に設けられ電解質3と接触する位置に設けられる触媒膜10とで構成されている。金属基板6は、触媒膜10に対し電解質3と反対側に配置されている。ここで、金属基板9の厚さは触媒膜10の厚さより大きくなっている。即ち、金属基板9は、対極2を構成する層の中で最も厚い層である。具体的には、金属基板9は、触媒膜10の厚さより大きく且つ100μm以下の厚さを有している。そして、対極2は、対向する作用極1に向かって凸となるように撓む撓み部2aを有している。撓み部2aは、複数のセル空間14に対応する位置に形成されている。一方、作用極1は撓み部を有していない。
【0032】
この色素増感太陽電池モジュール100では、対極2を構成する金属基板9及び触媒膜10のうち最も厚い層である金属基板9が、100μm以下の厚さを有するため、対極2の撓み部2aにおいて、スプリングバックが顕著に生じにくくなっている。また作用極1は撓み部を有しないため、スプリングバック現象を生じることはほとんどない。このため、この色素増感太陽電池モジュール100によれば、対極2と作用極1との間の距離が遠くなる方向にスプリングバック現象による過大な力がかかりにくくなる。また極間距離が遠くなる方向の力により封止が破壊されて電解質3が漏れることも十分に抑制される。また、上記金属基板9を有する対極2は可撓性をも有するため、電位異常などによりセル空間14の内圧が上昇しても、対極2の撓み部2aが撓むことが可能となり、対極2によって、隔壁15と対極2又は作用極1との界面に生じる応力を緩和することができる。その結果、光電変換効率の低下速度を十分に小さくすることができる。従って、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュール100が実現可能となる。
【0033】
さらに色素増感太陽電池モジュール100では、集電配線12を含む配線部11は発電を生じさせるものではない。その点、本実施形態の色素増感太陽電池モジュール100では、集電配線12を含む配線部11が隔壁15と重なるように設けられているので、多孔質酸化物半導体層8の受光面積を増加させることが可能となり、開口率をより増加させることができる。
【0034】
また色素増感太陽電池モジュール100においては、セル空間14と隔壁15と対極2と作用極1とによって形成される複数のセルが並列に接続されている。このため、並列に接続されているセルの一部において、光電変換効率の低下速度が大きくなっても、残りのセルにおいて光電変換効率の低下速度が十分に小さければ、色素増感太陽電池モジュール100全体として問題なく継続して使用することが可能となる。このため、複数のセルの全てが直列に接続される場合に比べて、色素増感太陽電池モジュール100の信頼性をより高めることができる。
【0035】
さらに色素増感太陽電池モジュール100においては、複数のセル空間14を覆うように設けられる触媒膜10が1枚の連続したものとなっている。一般的には、この場合にスプリングバック現象が生じると、並列に接続された複数のセル空間14の全てにおいて光電変換効率の低下速度が低下するおそれがある。その点、色素増感太陽電池モジュール100においては、触媒10を含む対極2が、厚さ100μm以下の金属基板9を有しており、スプリングバック現象が生じにくくなっている。このため、複数のセル空間14の全てにおいて光電変換効率の低下速度が低下する可能性を十分に低くすることができる。
【0036】
次に、上述した色素増感太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
【0037】
[準備工程]
まず作用極1及び対極2を以下のようにして準備する。
【0038】
(作用極)
まず透明導電電極21を作製する。透明導電電極21は、透明基板6の上に、1枚の連続した透明導電膜7を形成することにより得ることができる(図2)。透明導電膜7の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが用いられる。これらのうちスプレー熱分解法が装置コストの点から好ましい。
【0039】
透明基板6を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などの樹脂フィルムが挙げられる。透明基板6の厚さは、色素増感太陽電池モジュール100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50μm〜10000μmの範囲にすればよい。このとき、透明基板6がガラスで構成されるか、透明基板6が厚さ500μmを超える樹脂フィルムで構成されることが好ましい。この場合、作用極1の可撓性は対極2よりも小さくなる。このため、作用極1が多孔質酸化物半導体層8を有していても、多孔質酸化物半導体層8に撓みによるクラック等が生じる心配がなくなる。
【0040】
透明導電膜7を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜7は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜7が単層で構成される場合、透明導電膜7は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。また透明導電膜7として、複数の層で構成される積層体を用いると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOで構成される層と、FTOで構成される層との積層体を用いることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電膜7が実現できる。透明導電膜7の厚さは例えば0.01μm〜2μmの範囲にすればよい。
【0041】
続いて、複数の多孔質酸化物半導体層8を形成する予定の領域(以下、「多孔質酸化物半導体層形成予定領域」と呼ぶ)を包囲するように配線部11を形成する。配線部11は、複数の多孔質酸化物半導体層形成予定領域の各々を包囲するように集電配線12を形成し、続いて集電配線12を被覆するように配線保護層13を形成することにより得ることができる。
【0042】
集電配線12は、例えば、金属粒子とポリエチレングルコールなどの増粘剤とを配合してペーストとし、そのペーストを、スクリーン印刷法などを用いて多孔質酸化物半導体層8を囲むように塗膜し、加熱して焼成することによって得ることができる。配線保護層13は、例えば、低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料に、必要に応じて増粘剤、結合剤、分散剤、溶剤などを配合してなるペーストを、スクリーン印刷法などにより集電配線12の全体を被覆するように塗布し、加熱し焼成することによって得ることができる。
【0043】
次に、透明導電膜7の表面における複数の多孔質酸化物半導体層形成予定領域に、互いに離間するように多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、上述した酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
【0044】
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して多孔質酸化物半導体層8を形成し、作用極1を得る。
【0045】
焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は350℃〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
【0046】
上記酸化物半導体粒子としては、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In3O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タリウム(Ta2O5)、酸化ランタン(La2O3)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ホルミウム(Ho2O3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)又はこれらの2種以上で構成される酸化物半導体粒子が挙げられる。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、即ち光電変換を行う場が広くなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。ここで、多孔質酸化物半導体層8が、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させてなる積層体で構成されることが好ましい。この場合、積層体内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、入射光を積層体の外部へ逃がすことなく効率よく光を電子に変換することができる。多孔質酸化物半導体層8の厚さは、例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層8は、異なる材料からなる複数の半導体層の積層体で構成することもできる。
【0047】
(対極)
一方、対極2は、以下のようにして得ることができる(図3)。
【0048】
即ちまず厚さ100μm以下の金属基板9を準備する(図4)。そして、金属基板9の上に触媒膜10を形成する。触媒膜10の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
【0049】
このとき、金属基板9は、チタン、ニッケル、ステンレス、白金又はこれらの2種以上の合金から構成される。これらは、電解質3の種類に関係なく使用できるが、特にヨウ素に対して耐食性を有することから、電解質3がヨウ素を含むものである場合に特に好適である。これらのうち金属基板9はチタンから構成されることが耐食性、価格及び入手性の点から好ましい。金属基板9の厚さは100μm以下であればよいが、好ましくは5〜35μm、より好ましくは10〜30μmであり、より好ましくは10〜20μmである。
【0050】
触媒膜10は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0051】
[隔壁形成部形成工程]
次に、図5及び図6に示すように、作用極1の配線部11上の部位である格子状の第1部位C1に第1隔壁形成部4Aを形成する。第1隔壁形成部4Aは、例えば熱可塑性樹脂を加熱により溶融させて透明導電膜7に接着させることによって得ることができる。
【0052】
一方、図7及び図8に示すように、対極2のうち触媒膜10の表面上の部位である格子状の第2部位C2に第2隔壁形成部4Bを形成する。第2部位C2は、透明導電電極21における第1部位C1と合致した形状を有する。第2隔壁形成部4Bは、例えば熱可塑性樹脂を加熱により溶融させて触媒膜10に接着させることによって得ることができる。
【0053】
第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを形成する熱可塑性樹脂としては、酸変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール、及びエチレンービニルアルコール共重合体などが好ましく用いられる。この場合、電解質3が第1隔壁形成部4A又は第2隔壁形成部4Bに浸透して漏洩することを、より十分に抑制することができる。なお、酸変性ポリエチレンとは、ポリエチレンに酸をランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合させたもの、またはこれらを金属イオンで中和したものを意味する。一例としては、エチレンメタクリル酸共重合体は、エチレンとメタクリル酸とを共重合させたもので、酸変性ポリエチレンであり、エチレンメタクリル酸共重合体を金属イオンで中和したアイオノマーも酸変性ポリエチレンとなる。
【0054】
ここで、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとの密着性を向上させる観点からは、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを構成する材料は上記酸変性ポリエチレンの群から選ばれる樹脂の組み合わせであることが望ましい。例えば第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂がアイオノマーからなり、第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂が無水マレイン酸変性ポリエチレンからなる組み合わせ、又は、第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂が無水マレイン酸変性ポリエチレンからなり、第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂がアイオノマーからなる組み合わせなどが望ましい。
【0055】
この場合、酸変性ポリエチレンはポリビニルアルコールまたはエチレンービニルアルコール共重合体に比べて比較的低融点であるため、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bの樹脂が比較的低温で溶融接着しやすい。また、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bの樹脂が異種の酸変性ポリエチレンであっても、お互いのモノマーがエチレンであるため相性が良く、後述する封止部形成工程で第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとの間での接着性及び密着性に優れる。
【0056】
より望ましくは、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを構成する材料は上記酸変性ポリエチレンの群から選ばれる同じ樹脂である。例えば第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂と第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂が同じアイオノマーからなる組み合わせ、又は、第1隔壁形成部4Aを構成する樹脂と第2隔壁形成部4Bを構成する樹脂が同じ無水マレイン酸変性ポリエチレンからなる組み合わせなどが望ましい。
【0057】
ここで、同じ樹脂とは、ポリエチレンを変性する酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比が同一である樹脂はもちろん、このモル比が異なる樹脂をも含む。例えば酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比率が5%のエチレンメタクリル酸共重合体と、酸モノマーのエチレン繰返し単位に対するモル比率が10%のエチレンメタクリル酸共重合体とは同じ樹脂となる。この場合、使用する樹脂の融点、メルトフローレート、その他の様々な熱的性質が近いため、同じタイミングでお互いが溶融接着しやすい。そのため、融点やメルトフローレートが大きく異なる樹脂を用いる場合と比較して、溶融加熱時間をコントロールしやすく、後述する封止部形成工程を容易に行うことができる。
【0058】
[色素担持工程]
次に、作用極1の複数の多孔質酸化物半導体層8の各々に光増感色素を担持させる。このためには、作用極1を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化物半導体層8に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層8に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を酸化物半導体多孔膜に吸着させても、光増感色素を複数の多孔質酸化物半導体層8に担持させることが可能である。
【0059】
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0060】
[貼合せ工程]
次に、作用極1と対極2とを減圧下に貼り合わせ、作用極1と対極2との間に、複数の開口を有する隔壁15を形成する。このとき、隔壁15は、各開口の内側に多孔質酸化物半導体層8が配置されるように形成する。
【0061】
ここで、作用極1と対極2とを貼り合せる貼合せ装置について図9を用いて説明する。図9は、貼合せ装置の一例を示す断面図である。図9に示す貼合せ装置50は、作用極1を保持する第1保持部51と、対極2を保持する第2保持部61とを備えている。
【0062】
第1保持部51はベース部52を有し、ベース部52は、第2保持部61と突き合わされる環状の突合せ面52aを有している。突合せ面52aには、当該突合せ面52aに沿って、シール材53を収容する収容溝52bが形成されている。そして、ベース部52には、環状の突合せ面52aの内側に作用極1を収容する収容凹部54が形成されている。収容凹部54の内部には、作用極1を保持するための保持部材55が配設されている。また収容凹部54には、収容凹部54の底部に貫通可能に設けられ保持部材55に固定されるシリンダ56と、収容凹部54に固定され、シリンダ56を介して保持部材55を上下に往復移動させる駆動部57とが設けられている。駆動部57は例えば油圧ポンプで構成される。従って、作用極1を保持部材55上に配置し、駆動部57を駆動させると、シリンダ56が上下に移動し、作用極1の位置を変えることが可能となる。
【0063】
一方、第2保持部61はベース部62を有し、ベース部62は、第1保持部51のベース部52と突き合わされる環状の突合せ面62aを有している。そして、ベース部62には、環状の突合せ面62aの内側に対極2を収容する収容凹部64が形成されている。収容凹部64の底部には、断熱部材65を介してヒータ66が固定されている。ヒータ66は、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとを局所的に加熱可能とするためベース部62の底部と反対側に向かって突出する格子状の加熱面66aと、ヒータ66の加熱面66aに囲まれるように形成された凹部66bとを有している。第2保持部62は、断熱部材65とヒータ66とベース部62とによって形成されコイルばね68を収容するバネ収容部69をヒータ66の凹部66bと反対側に有している。第2保持部61は、対極2に撓み部2aを形成するための撓み部形成部材70を有する。撓み部形成部材70は、ヒータ66の凹部66b及びコイルばね68を貫通する棒状の貫通部71と、貫通部71の一端に設けられ対極2を押圧する板状の押圧部72とで構成されている。収容凹部64の底部には、撓み部形成部材70の移動を規制する規制穴73が形成されている。
【0064】
第1保持部51と第2保持部61とは、第1保持部51の突合せ面52aと第2保持部61の突合せ面62aとが突き合わされることで、収容凹部54及び収容凹部64で構成される密閉空間を形成するようになっている。そして、貼合せ装置50は、上記密閉空間を減圧するための減圧ポンプ(図示せず)を更に備えている。
【0065】
次に、貼合せ装置50を用いて、作用極1と対極2とを貼り合せる方法について説明する。
【0066】
まず図10に示すように、保持部材55の上に、第1隔壁形成部4Aが配線部11の上に形成された作用極1を配置する。
【0067】
続いて、作用極1上であって第1隔壁形成部4Aの内側に電解質3を配置する。電解質3は、作用極1上であって第1隔壁形成部4Aの内側に多孔質酸化物半導体層8を覆うように注入したり、印刷したりすることによって得ることができる。
【0068】
ここで、電解質3が液状である場合は、電解質3を、第1隔壁形成部4Aを超えて第1隔壁形成部4Aの外側に溢れるまで注入することが好ましい。この場合、第1隔壁形成部4Aの内側に電解質3を十分に注入することが可能となる。また第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとを接着して隔壁15を形成するに際し、作用極1と対極2と隔壁15とによって囲まれるセル空間14から空気を十分に排除することができ、光電変換効率を十分に向上させることができる。なお、電解質3が第1隔壁形成部4Aを超えて第1隔壁形成部4Aの外側に溢れるまで注入されることにより第1隔壁形成部4Aの接着部位が電解質3で濡れても、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bはいずれも熱可塑性樹脂であるため、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bの接着に際し、濡れ性の低下による接着力の低下は十分に小さく、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bは強固に接着する。
【0069】
電解質3は通常、電解液で構成され、この電解液は例えばI−/I3−などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI−/I3−のほか、臭素/臭化物イオンなどの対が挙げられる。色素増感太陽電池モジュール100は、酸化還元対としてI−/I3−のような揮発性溶質及び、高温下で揮発しやすいアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルのような有機溶媒を含む電解液を電解質3として用いた場合に特に有効である。この場合、色素増感太陽電池モジュール100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が特に大きくなり、隔壁15と対極2との界面、および隔壁15と作用極1との界面から電解質3が漏洩しやすくなるからである。なお、上記揮発性溶媒にはゲル化剤を加えてもよい。また電解質3は、イオン液体と揮発性成分との混合物からなるイオン液体電解質で構成されてもよい。この場合も、色素増感太陽電池モジュール100の周囲の環境温度の変化によりセル空間の内圧の変化が大きくなるためである。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが好適に用いられる。また揮発性成分としては、上記の有機溶媒や、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、LiI、I2、4−t−ブチルピリジンなどが挙げられる。さらに電解質3としては、上記イオン液体電解質にSiO2、TiO2、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットイオンゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化したイオン液体電解質を用いてもよい。
【0070】
次に、図11に示すように、第2保持部61に含まれる撓み部形成部材70に対極2を固定し、第1保持部51の突合せ面52aと第2収容容器52の突合せ面62aとを突き合わせる。このとき、突合せ面52aの収容溝52bにはシール材53が収容されているため、突合せ面52aと突合せ面62aとを突き合わされることにより、密閉空間が形成される。
【0071】
次に、この密閉空間を減圧ポンプにより減圧する。
【0072】
このとき、密閉空間の圧力は通常、50Pa以上1013hPa未満の範囲であり、50〜800Paとすることが好ましく、300〜800Paとすることがより好ましい。
【0073】
特に、電解質3に含まれる有機溶媒が揮発性溶媒である場合には、密閉空間内の圧力は700〜1000Paであることが好ましく、700〜800Paであることがより好ましい。圧力が上記範囲内にあると、圧力が上記範囲を外れる場合と比較して、電解質3を第1隔壁形成部4Aの内側に形成する際、有機溶媒の揮発がより抑制されるとともに、得られる色素増感太陽電池モジュール100において作用極1、対極2及び隔壁15が互いにより強固に固定され、電解質3の漏洩が起こりにくくなる。
【0074】
また電解質3がイオン液体を含む場合には、イオン液体は揮発しないため、電解質3が揮発性溶媒を含む場合のように電解質3の揮発を考慮して密閉空間の圧力を高くする必要がない。このため、密閉空間内の圧力は50〜700Paであってもよい。
【0075】
さらに電解質3がゲル電解質を含む場合には、ゲル化させる前駆体の主成分が揮発系である場合とイオン液体系である場合とで異なり、前駆体の主成分が揮発系である場合には600〜800Pa,イオン液体系である場合には50〜700Paであることが好ましい。従って電解質3がゲル電解質を含む場合には、密閉空間内の圧力は50〜800Paとすることが好ましい。
【0076】
そして、密閉空間を減圧しながら、図12に示すように、駆動部57を駆動させ、シリンダ56を移動させることにより、保持部材55を、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとが接触するまで移動させる。このとき、ヒータ66の加熱面66aはまだ対極2に接触していない。
【0077】
次に、駆動部57を駆動させ、シリンダ56をさらに移動させることにより、保持部材55をさらに対極2側に移動させる。このとき、保持部材55は、対極2がヒータ66の加熱面66aと接触するまで移動させる。またこのとき、ヒータ66は、コイルばね68の弾性力により作用極1側に押し戻されるため、作用極1側の第1隔壁形成部4Aと対極2側の第2隔壁形成部4Bとを密着させることが可能となる。撓み部形成部材70は、対極2の移動に伴ってヒータ66の凹部66b側に移動させられる。このとき、撓み部形成部材70の貫通部71の先端が規制穴73の底部に達すると、撓み部形成部材70の移動が規制される。このとき、撓み部形成部材70の移動は、押圧部72がヒータ66の加熱面66aよりも作用極1側に突き出した状態となる位置で規制される。このため、対極2がヒータ66の加熱面66aに接触した後も対極2のヒータ66側への移動が続けられると、図13に示すように、対極2には、セル空間14に向かって凸となるように撓む撓み部2aが形成される。
【0078】
この状態で、ヒータ66の加熱面66aにより、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとが重なり合った部分を局所的に加圧しながら加熱し、第1隔壁形成部4Aと第2隔壁形成部4Bとを熱溶融させる。こうして隔壁15が形成される。
【0079】
このとき、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bの加圧は通常、1〜50MPaで行い、好ましくは2〜30MPa、より好ましくは3〜20MPaで行う。
【0080】
また第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを溶融させるときのヒータ66の温度は、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを形成する熱可塑性樹脂の融点以上であればよい。上記温度が熱可塑性樹脂の融点未満では、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを形成する熱可塑性樹脂が溶融しないため、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4B同士を接着させて隔壁15を形成させることができなくなる。
【0081】
但し、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bを溶融させるときのヒータ66の温度は、(熱可塑性樹脂の融点+200℃)以下であることが好ましい。上記温度が(熱可塑性樹脂の融点+200℃)を超えると、第1隔壁形成部4A及び第2隔壁形成部4Bに含まれる熱可塑性樹脂が熱によって分解するおそれがある。
【0082】
次に、減圧ポンプの作動を停止させ、続いて、図14に示すように、第2保持部61を第1保持部51から離間させる。
【0083】
こうして色素増感太陽電池モジュール100が得られ、色素増感太陽電池モジュール100の製造が完了する。
【0084】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、
対極2は、金属基板9と触媒層10とで構成されているが、金属基板9に代えて、樹脂フィルムを用いることもできる。ただし、この場合、樹脂フィルムの厚さは500μm以下とする必要がある。樹脂フィルムの厚さが500μmを超えると、その樹脂フィルムを含む対極においてスプリングバック現象が顕著に生じるようになるためである。
また上記実施形態では、対極2が金属基板9と触媒膜10の2層で構成されているが、対極2は、2層以上で構成されていてもよい。この場合、最も厚い層が、100μm以下の金属基板又は500μm以下の樹脂フィルムとなるようにする。
【0085】
また上記実施形態では、作用極1の透明基板6が厚さ100μm以下の金属基板9又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであってもよい。但し、この場合、作用極1も、対向する対極2に向かって凸となるように撓む撓み部を有する必要がある。
【0086】
また上記実施形態では、隔壁15と配線部11とが重なるように配置されているが、これらは重なるように配置されていなくてもよい。
【0087】
さらに、上記実施形態では、複数のセルの全てが並列に接続されているが、各セルを構成する対極2の撓み部2aとそのセルに隣接するセルの作用極1とが、例えば隔壁15を貫通する導電部材(図示せず)によって電気的に接続され、これにより、複数のセルが直列に接続されていてもよい。
【0088】
さらに上記実施形態では、多孔質酸化物半導体層8が透明導電電極21の表面上に形成されているが、対極2の表面上に形成することも可能である。
【0089】
また上記実施形態では、作用極1に第1隔壁形成部を固定し且つ対極2に第2隔壁形成部を固定しているが、いずれか一方の電極に固定するだけであってもよい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
はじめに、20cm×20cm×4mm(厚さ)のフッ素ドープ酸化錫透明導電ガラス基板(FTO基板)を準備した。続いて、FTO基板の上に、500℃焼結型銀ペーストを、格子状パターンと格子状パターンの外周の一部から引き出される取り出し用のパターンとが形成するように塗布した。このとき、格子状パターンは、18cm×18cmの領域に3行×5列の格子(長さ6cm、幅1.2cm)が形成されるように酸化チタンペーストを塗布することによって形成した。但し、格子状パターンの外周部の太さは2mmとし、それ以外の部分の太さは1.5mmとした。そして、格子状パターンと取り出し用パターンとからなる銀ペーストを500℃で焼成し、厚さ約10μmの銀からなる集電配線を得た。
【0092】
次に、格子状パターンの各格子内に、集電配線から約1mm離れた位置に矩形状となるように酸化チタンペーストを塗布焼成し、厚さ約20μmの多孔質酸化物半導体層を形成した。
【0093】
次に、集電配線のうち格子状パターンの部分を低融点ガラスフリットで覆い、520℃で焼成して厚さ50μmの配線保護層を形成した。こうして作用極を得た。
【0094】
次に、配線保護層を覆うように厚さ20μmのポリオレフィン系ホットメルト樹脂を貼り付け、溶融接着し、第1隔壁形成部を形成した。このとき、ホットメルト樹脂が多孔質酸化物半導体層に重ならないようにした。
【0095】
続いて、作用極を、光増感色素であるN719色素を0.2mM溶かした脱水エタノール液中に一昼夜浸漬して作用極に光増感色素を担持させた。
【0096】
一方、20cm×20cm×40μm(厚さ)の純金属チタン箔からなる金属基板を用意し、この金属基板の表面をプラズマクリーニングした後、スパッタリング法により、全面に厚さ約30nmの白金触媒膜を形成し、対極を得た。
【0097】
次に、18cm×18cmの領域に3列×5行の格子(長さ6cm、幅1.2cm)が形成された格子状パターンをなすポリオレフィン系ホットメルト樹脂を用意した。但し、格子状パターンの外周部の太さは2mmとし、それ以外の部分の太さは1.5mmとした。次いで、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂を、対極の白金触媒膜上に配置した後、溶融接着した。こうして対極に第2隔壁形成部を形成した。
【0098】
次いで、第1隔壁形成部を設けた作用極と、第2隔壁形成部を設けた対極とを図9の貼合せ装置50を用いて形成した。具体的にはまず保持部材55上に、第1隔壁形成部を設けた作用極を、FTO基板の多孔質酸化物半導体層側の表面が水平になるように配置した。一方、第2隔壁形成部を設けた対極を、微粘着剤を用いて撓み部形成部材70の押圧部72に固定した。
【0099】
そして、第1隔壁形成部の各スリットの内側にある多孔質酸化物半導体層の中央及び上下3点に、電解液をー35℃以下の乾燥空気中でごく少量(0.01ml程度)滴下した。このとき、電解液としては、メトキシアセトニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M、4−tert−ブチルピリジンを0.5M含む揮発系電解質を用いた。
【0100】
そして、第1保持部51の突合せ面52aと第2保持部61の突合せ面62aとを突き合わせて密閉空間を形成した。そしてこの密閉空間を減圧ポンプで800Paまで減圧した後、10秒以内に第1隔壁形成部と第2隔壁形成部とを重ね合わせた。そして、第1隔壁形成部と合致した形状の加熱面66aを有する真鍮製のヒータ66を加熱した。そして、油圧ポンプからなる駆動部57を駆動し、シリンダ56を上昇させることにより保持部材55を上昇させ、ヒータ66の加熱面66aによって、3MPaで第1隔壁形成部及び第2隔壁形成部を加圧しながら160℃で加熱して溶融させて隔壁15を形成した。その後、保持部材55を下降させ、セル空間を冷却し、第1保持部と第2保持部とを離間させた。こうして色素増感型太陽電池モジュールを得た。
【0101】
(実施例2〜3)
対極を構成する金属基板の厚さを表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0102】
(実施例4〜6)
対極を構成する金属基板に代えて、Ti膜をコートした、表1に示す厚さを有するPENからなる樹脂フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0103】
(比較例1〜3)
対極を構成する金属基板の厚さを表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0104】
(比較例4〜6)
対極を構成する金属基板に代えて、Ti膜をコートした、表1に示す厚さを有するPENからなる樹脂フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
【0105】
[光電変換効率の変化についての評価]
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた色素増感太陽電池モジュールについて、1000h後の光電変換効率を測定し、下記式:
光電変換効率の経時変化=初期の光電変換効率(100%)−1000h後の光電変換効率
に基づいて光電変換効率の経時変化を算出した。結果を表1に示す。なお、光電変換効率の経時変化が5%以下である場合には「合格」とし、5%を超える場合には「不合格」とした。
【表1】
【0106】
表1に示す結果より、実施例1〜6の色素増感太陽電池モジュールによれば、比較例1〜6の色素増感太陽電池モジュールを用いた場合に比べて光電変換効率の経時変化は小さくなっており、光電変換効率の低下速度が十分小さくなることが分かった。
【0107】
よって、本発明によれば、信頼性の高い色素増感太陽電池モジュールを実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0108】
1…作用極(第1電極)、2…対極(第2電極)、2a…撓み部、3…電解質、8…多孔質酸化物半導体層(酸化物半導体部)、9…金属基板、10…触媒膜(導電部)、11…配線部、12…集電配線、15…隔壁、100…色素増感太陽電池モジュール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の電極と、
前記一対の電極を連結し、前記一対の電極とともに複数のセル空間を形成する隔壁と、
前記セル空間に充填される電解質とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極が、前記複数のセル空間の各々に面し且つ光増感色素を担持した酸化物半導体部を有し、
前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、
前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部を有することを特徴とする色素増感太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記セル空間と前記隔壁と前記一対の電極とによって形成される複数のセルの少なくとも2つのセルが並列に接続されている、請求項1に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記一対の電極の少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、前記配線部が前記隔壁と重なるように設けられている、請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記一対の電極のうち一方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含み、
他方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含まず、
前記他方の電極が前記複数の酸化物半導体部を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、前記金属基板又は前記樹脂フィルム上に、前記複数のセル空間と接触するように設けられる連続した導電部を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項6】
一対の電極を準備する準備工程と、
前記一対の電極の少なくとも一方に隔壁形成部を固定する隔壁形成部固定工程と、
前記一対の電極を、前記隔壁形成部を介して減圧下に貼り合せ、前記一対の電極の間に、前記一対の電極と共に複数のセル空間を形成する隔壁を形成する貼合せ工程とを含み、
前記一対の電極のうち一方の電極が複数の酸化物半導体部を有し、
前記準備工程と前記隔壁形成部固定工程との間に、前記酸化物半導体部に光増感色素を担持させる色素担持工程を含み、
前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、
前記貼合せ工程において、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極に、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部が形成されるように前記一対の電極を貼り合せることを特徴とする色素増感太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、
前記隔壁が熱可塑性樹脂を含み、
前記貼合せ工程において、前記隔壁を、前記配線部に重なるように形成する、請求項6に記載の色素増感太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項1】
互いに対向する一対の電極と、
前記一対の電極を連結し、前記一対の電極とともに複数のセル空間を形成する隔壁と、
前記セル空間に充填される電解質とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極が、前記複数のセル空間の各々に面し且つ光増感色素を担持した酸化物半導体部を有し、
前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、
前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部を有することを特徴とする色素増感太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記セル空間と前記隔壁と前記一対の電極とによって形成される複数のセルの少なくとも2つのセルが並列に接続されている、請求項1に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記一対の電極の少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、前記配線部が前記隔壁と重なるように設けられている、請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記一対の電極のうち一方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含み、
他方の電極が前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含まず、
前記他方の電極が前記複数の酸化物半導体部を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極が、前記金属基板又は前記樹脂フィルム上に、前記複数のセル空間と接触するように設けられる連続した導電部を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項6】
一対の電極を準備する準備工程と、
前記一対の電極の少なくとも一方に隔壁形成部を固定する隔壁形成部固定工程と、
前記一対の電極を、前記隔壁形成部を介して減圧下に貼り合せ、前記一対の電極の間に、前記一対の電極と共に複数のセル空間を形成する隔壁を形成する貼合せ工程とを含み、
前記一対の電極のうち一方の電極が複数の酸化物半導体部を有し、
前記準備工程と前記隔壁形成部固定工程との間に、前記酸化物半導体部に光増感色素を担持させる色素担持工程を含み、
前記一対の電極の少なくとも一方の電極が少なくとも2層以上からなり、最も厚い層が厚さ100μm以下の金属基板又は厚さ500μm以下の樹脂フィルムであり、
前記貼合せ工程において、前記金属基板又は前記樹脂フィルムを含む電極に、対向する電極に向かって凸となるように撓む撓み部が形成されるように前記一対の電極を貼り合せることを特徴とする色素増感太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極が、集電配線を含む配線部を有し、
前記隔壁が熱可塑性樹脂を含み、
前記貼合せ工程において、前記隔壁を、前記配線部に重なるように形成する、請求項6に記載の色素増感太陽電池モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−222428(P2011−222428A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92686(P2010−92686)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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