説明

色素増感太陽電池

【課題】高温環境下で使用されても、優れた耐久性を有することが可能な色素増感太陽電池を提供すること。
【解決手段】導電性基板17を有する第1基材10と、第1基材10に対向する第2基材20と、第1基材10及び第2基材20を連結する封止部40と、第1基材10及び第2基材20の間に配置される電解質30とを備え、封止部40が、第1基材10と第2基材20とを接続し、樹脂を含む樹脂部82と、樹脂部82の内部に設けられる絶縁性のスペーサ81とを有するスペーサ構造体80を含む、色素増感太陽電池100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素増感太陽電池が注目されており、色素増感太陽電池に関して種々の開発が行われている。
【0003】
このような色素増感太陽電池として、下記特許文献1に記載のものが知られている。下記特許文献1には、作用極と対極との間に設けられる封止部がスペーサによって作用極側の封止部と対極側の封止部とに分離された色素増感太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−194075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の色素増感太陽電池は、以下の課題を有していた。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の色素増感太陽電池は、高温環境下で使用されると、光電変換特性が経時的に低下する場合があった。
【0007】
したがって、高温環境下で使用されても、優れた耐久性を有することが可能な色素増感太陽電池が求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温環境下で使用されても、優れた耐久性を有することが可能な色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記のように特許文献1に記載の色素増感太陽電池において光電変換効率が低下し易い原因について検討した。まず上述した特許文献1に記載の色素増感太陽電池では、封止部がスペーサによって作用極側の封止部と対極側の封止部とに分離されている。このため、本発明者は、封止部の厚さが不十分となり、作用極及び対極の各々に対する封止部の接着力が不十分になるとともに、スペーサに対する封止部の接着力も不十分となるのではないかと考えた。さらに、特許文献1に記載の色素増感太陽電池では、作用極とスペーサとの間の界面が、電解質と外部とを結ぶように形成され、対極とスペーサとの間の界面も電解質と外部とを結ぶように形成されている。そして、上述したようにスペーサに対する封止部の接着力が不十分であると考えられる。このことから、高温環境下で電解質が揮発して作用極と対極とに大きな応力が加えられることで封止部がスペーサから剥離すると、スペーサと封止部との界面を通って電解質が漏洩しやすくなるのではないかと本発明者は考えた。また色素増感太陽電池には、絶縁性の基材と作用極とが封止部で連結され且つそれらの間に電解質が配置されているタイプの色素増感太陽電池も知られており、このような色素増感太陽電池においても、特許文献1のように封止部がスペーサによって作用極側の封止部と絶縁性基材側の封止部とに分離されていると、上記と同様の課題が生じるものと本発明者は考えた。そこで、本発明者は、封止部の厚さを十分に確保しながら、スペーサと電極又は基材との界面が電解質と外部とを結ぶように形成しないようにすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、導電性基板を有する第1基材と、前記第1基材に対向する第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材を連結する封止部と、前記第1基材及び前記第2基材の間に配置される電解質とを備え、前記封止部が、前記第1基材と前記第2基材とを接続し、樹脂を含む樹脂部と、前記樹脂部の内部に設けられる絶縁性のスペーサとを有するスペーサ構造体を含む、色素増感太陽電池である。
【0011】
この色素増感太陽電池によれば、封止部が第1基材と第2基材とを連結している。このため、第1基材に対する封止部の接着力が十分に確保されると共に、第2基材に対する封止部の接着力も十分に確保される。このため、第1基材からの封止部の剥離、および、第2基材からの封止部の剥離が十分に抑制される。従って、第1基材と封止部との界面、第2基材と封止部との界面を通る電解質の漏洩が十分に抑制される。また本発明の色素増感太陽電池では、スペーサが封止部の内部に設けられている。このため、熱応力により、スペーサにそれを左右に動かすような力が働いても、封止部によりスペーサの移動がブロックされるので、スペーサが左右に移動して封止部から剥離することが十分に抑制される。また電解質が封止部を通過する場合、その電解質は、スペーサと封止部との界面でトラップされ、そのまま外部へと漏出することが十分に阻止される。このように、本発明の色素増感太陽電池によれば、第1基材と封止部との界面、第2基材と封止部との界面を通る電解質の漏洩を十分に抑制できるとともに、スペーサと封止部との界面を通る電解質の漏洩をも十分に抑制できる。従って、本発明の色素増感太陽電池によれば、優れた耐久性を有することが可能となる。
【0012】
上記色素増感太陽電池は、前記封止部の内側に設けられ、前記第1基材と前記第2基材とを接続する接続部を更に備え、前記接続部が、前記第1基材と前記第2基材とを接続し、樹脂を含む樹脂部と、前記樹脂部の内部に設けられる絶縁性のスペーサとを有するスペーサ構造体を含むことが好ましい。
【0013】
この色素増感太陽電池によれば、周囲の環境温度が上昇すると、第1基材と第2基材と封止部とによって包囲される空間の内圧が上昇する。このとき、第2基材と第1基材とが、樹脂を含む接続部によって接続されている。このため、第1及び第2基材間の距離の増大が接続部によって十分に抑制される。従って、封止部と第1基材との間の界面、封止部と第2基材との間の界面に過大な応力が加わることがより十分に抑制され、それらの界面を通じて水分等が第1基材と第2基材と封止部とによって包囲される空間内に入って電解質に接触することが十分に抑制される。従って、本発明の色素増感太陽電池によれば、より優れた耐久性を有することが可能となる。
【0014】
上記色素増感太陽電池においては、前記第1基材が、前記導電性基板の表面上に設けられる配線部をさらに有する第1電極で構成され、前記配線部が、前記導電性基板上に設けられる集電配線と、前記集電配線を覆って前記電解質から保護し、樹脂を含む配線保護層とを有し、前記第2基材が第2電極で構成され、前記接続部が、前記配線保護層と前記第2基材とを接続していてもよい。
【0015】
この場合、色素増感太陽電池が高温環境下で使用されると、配線保護層、及び、接続部の樹脂部はいずれも樹脂を含むため、軟化する。このため、第1基材と第2基材とが接近するような応力が色素増感太陽電池に加わると、配線保護層、及び、接続部の樹脂部が潰れ、第1基材と第2基材との間の距離が縮小する。この場合でも、接続部は、樹脂部の内部に絶縁性のスペーサを有しているため、高温環境下で使用されても、第1基材に含まれる集電配線と第2基材との短絡を十分に防止することができる。このため、本発明の色素増感太陽電池によれば、高温環境下で使用されても、第1基材と第2基材との間の短絡を防止できる。
【0016】
上記色素増感太陽電池は、前記第1基材及び前記第2基材のうち一方の基材が可撓性基材である場合に特に有用である。
【0017】
第1基材及び第2基材のうち一方の基材が可撓性基材であることは、極間距離を縮められるため光電変換効率向上の点で好ましいが、色素増感太陽電池が高温環境下で使用される場合、第1基材と第2基材との間の距離が増大しやすくなり、光電変換特性が低下しやすい。その点、本発明の色素増感太陽電池は、第2基材と第1基材とを接続部を介して接続し、第1基材と第2基材との間の距離の増大を十分に抑制することができるため、有用である。
【0018】
上記色素増感太陽電池においては、前記接続部の前記スペーサが前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方から離間していることが好ましい。また上記色素増感太陽電池においては、前記封止部の前記スペーサが前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方から離間していることが好ましい。
【0019】
この場合、スペーサが第1基材又は第2基材に接触している場合に比べて樹脂部と第1基材又は第2基材との接触面積がより増加する。そのため、第1基材又は第2基材と、接続部又は封止部との接着力がより向上する。このため、第1基材又は第2基材からの接続部又は封止部の剥離がより十分に抑制され、第1基材と第2基材との間の距離の増大をより十分に抑制することができる。
【0020】
なお、本発明において、「可撓性基材」とは、20℃の環境下で50mm×200mmのシート状基材の長辺側の両縁部(それぞれ幅5mm)を張力1Nで水平に固定し、基材の中央に20g重の荷重をかけた際の基材の撓みの最大変形率が20%を超えるものを言うものとする。ここで、最大変形率とは、下記式:
最大変形率(%)=100×(最大変位量/シート状基材の厚さ)
に基づいて算出される値を言う。従って、例えば厚さ0.04mmのシート状基材が上記のようにして荷重をかけることにより撓み、最大変形量が0.01mmとなった場合、最大変形率は25%となり、このシート状基材は可撓性基材となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高温環境下で使用されても、優れた耐久性を有することが可能な色素増感太陽電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の色素増感太陽電池の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の作用極に樹脂封止部を固定した状態を示す切断面端面図である。
【図3】図1の対極に樹脂封止部を固定した状態を示す切断面端面図である。
【図4】図1の第1連結部を示す切断面端面図である。
【図5】図1のスペーサ構造体を示す断面図である。
【図6】図1の色素増感太陽電池を製造する工程における電解質配置工程を示す切断面端面図である。
【図7】図1の色素増感太陽電池を製造する工程における重ね合わせ工程を示す切断面端面図である。
【図8】本発明の色素増感太陽電池の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の色素増感太陽電池のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る色素増感太陽電池の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る色素増感太陽電池の第1実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る色素増感太陽電池の第1実施形態を示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、色素増感太陽電池100は、作用極10と、作用極10に対向するように配置される対極20とを備えている。ここで、作用極10は可撓性を有していない非可撓性電極となっており、対極20は可撓性を有する可撓性電極となっている。作用極10と対極20との間には、作用極10及び対極20を連結する封止部40が設けられている。そして、作用極10と対極20と封止部40とによって包囲されるセル空間内には電解質30が充填されている。
【0026】
作用極10は、透明基板11及び透明基板11の対極20側に設けられる透明導電膜12を有する透明な導電性基板17と、導電性基板17の表面17a上に設けられる多孔質酸化物半導体層13と、導電性基板17の表面17a上で多孔質酸化物半導体層13の周囲に設けられる配線部14とを備えている。作用極10のうちの多孔質酸化物半導体層13には光増感色素が担持されている。
【0027】
配線部14は、導電性基板17の表面17a上に設けられる集電配線15と、集電配線15を覆って電解質30から保護し、樹脂を含む配線保護層16とを有している。ここで、導電性基板17の表面17aからの配線部14の高さは、導電性基板17の表面17aからの多孔質酸化物半導体層13の高さよりも大きくなっている。
【0028】
対極20は、対極基板21と、対極基板21のうち作用極10側に設けられて対極20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22とを備えている。
【0029】
そして、対極20と配線部14とは、接続部50によって接続されている。接続部50は、配線保護層16に連結される第1連結部60と、第1連結部60と対極20の触媒層22とを連結する第2連結部70とで構成されている。第1連結部60は、絶縁性のスペーサ61と、スペーサ61の全体を包囲し、樹脂を含む樹脂部62とを有するスペーサ構造体で構成されている。このようにスペーサ61の全体が樹脂部62で包囲され、第1連結部60と対極20との間に第2連結部70が設けられているため、スペーサ61は対極20から離間している。樹脂部62は、第2連結部70を介して対極20に接続されている。
【0030】
封止部40は、作用極10に固定される樹脂封止部40aと、対極20に固定される樹脂封止部40bと、樹脂封止部40aと樹脂封止部40bとを接続するスペーサ構造体80とを有している。スペーサ構造体80は、樹脂を含む樹脂部82と、樹脂部82の内部に設けられる絶縁性のスペーサ81とを有している。別言すると、スペーサ構造体80においては、スペーサ81は、スペーサ構造体80の内周面と外周面との間に配置されている。なお、接続部50は封止部40の内側に設けられている。
【0031】
上述した色素増感太陽電池100によれば、封止部40が作用極10と対極20とを連結している。このため、作用極10に対する封止部40の接着力が十分に確保されると共に、対極20に対する封止部40の接着力も十分に確保される。このため、作用極10からの封止部40の剥離、および、対極20からの封止部40の剥離が十分に抑制される。従って、作用極10と封止部40との界面、対極20と封止部40との界面を通る電解質30の漏洩が十分に抑制される。また色素増感太陽電池100では、スペーサ81が封止部40の内部に設けられている。このため、熱応力により、スペーサ81にそれを左右に動かすような力が働いても、封止部40によりスペーサ81の移動がブロックされるので、スペーサ81が左右に移動して封止部40から剥離することが十分に抑制される。また電解質30が封止部40を通過する場合、その電解質30は、スペーサ81と封止部40との界面でトラップされ、そのまま外部へと漏出することが十分に阻止される。このように、色素増感太陽電池100によれば、作用極10と封止部40との界面、対極20と封止部40との界面を通る電解質30の漏洩を十分に抑制できるとともに、スペーサ81と封止部40との界面を通る電解質30の漏洩をも十分に抑制できる。従って、色素増感太陽電池100によれば、優れた耐久性を有することが可能となる。
【0032】
また色素増感太陽電池100では、周囲の環境温度が上昇すると、電解質30が膨張してセル空間の内圧が上昇する。このとき、対極20と、配線部14の配線保護層16とが、樹脂を含む接続部50によって接続されている。このため、電解質30が膨張しても、作用極10及び対極20同士間の距離の増大が接続部50によって十分に抑制される。従って、封止部40と作用極10との間の界面、封止部40と対極20との間の界面に過大な応力が加わることが十分に抑制され、それらの界面を通じて水分等が作用極10と対極20と封止部40とによって包囲される空間内に入って電解質30に接触することが十分に抑制される。従って、色素増感太陽電池100によれば、色素増感太陽電池100が接続部50を有しない場合に比べて、高温環境下で使用されても、より優れた耐久性を有することが可能となる。
【0033】
また色素増感太陽電池100では、絶縁性のスペーサ81が封止部40の内部に設けられている。このため、色素増感太陽電池100が高温環境下で使用されると、スペーサ構造体80の樹脂部82は樹脂を含むため、軟化する。このため、作用極10と対極20とが接近するような応力が色素増感太陽電池100に加わると、スペーサ構造体80の樹脂部82が潰れ、作用極10と対極20との間の距離が縮小する。この場合でも、スペーサ構造体80は、樹脂部82の内部に絶縁性のスペーサ81を有しているため、高温環境下で使用されても、作用極10と対極20との短絡を十分に防止することができる。
【0034】
また、色素増感太陽電池100では、絶縁性のスペーサ61が接続部50の内部に設けられている。このため、色素増感太陽電池100が高温環境下で使用されると、配線保護層16、及び、接続部50の樹脂部62はいずれも樹脂を含むため、軟化する。このため、作用極10と対極20とが接近するような応力が色素増感太陽電池100に加わると、配線保護層16、及び、接続部50の樹脂部62が潰れ、作用極10と対極20との間の距離が縮小する。このとき、スペーサ61が設けられていないと、対極20が集電配線15と接触し、作用極10と対極20との間で短絡が生じるおそれがある。この点、接続部50は、樹脂部62の内部に絶縁性のスペーサを有しているため、色素増感太陽電池100が高温環境下で使用されても、色素増感太陽電池100が接続部50を有しない場合に比べて、作用極10に含まれる集電配線15と対極20との接触がより十分に防止され、作用極10と対極20との短絡をより十分に防止することができる。
【0035】
さらにまた色素増感太陽電池100では、作用極10が非可撓性電極となっている。このため、作用極10が可撓性電極である場合に比べて作用極10の多孔質酸化物半導体層13にクラックが生じにくくなる。このため、色素増感太陽電池100の性能低下がより十分に抑制される。
【0036】
次に、作用極10、光増感色素、対極20、電解質30、封止部40及び接続部50について詳細に説明する。
【0037】
(作用極)
透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板11の厚さは、作用極10が可撓性を有しない程度の厚さであり、例えば50〜10000μmの範囲にすればよい。
【0038】
透明導電膜12を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜12が単層で構成される場合、透明導電膜12は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。透明導電膜12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0039】
多孔質酸化物半導体層13は、多孔質酸化物半導体で構成される。多孔質酸化物半導体は、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)又はこれらの2種以上で構成される酸化物半導体粒子で構成される。これら酸化物半導体粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。
【0040】
集電配線15を構成する材料は、透明導電膜12より低い抵抗を有する金属を含むものであればよい。このような金属としては、例えば銀が用いられる。
【0041】
配線保護層16は、集電配線15を覆って電解質30から集電配線15を保護するものであり、樹脂を含む。
【0042】
樹脂としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
【0043】
(光増感色素)
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0044】
(対極)
対極基板21は、チタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、SUS等の耐食性の金属材料又はこれらの2種以上の合金から構成される。なお、対極基板21としては、PETやPENなどの樹脂にITO、FTO等の導電性酸化物からなる導電膜を形成したものを用いることもできる。
【0045】
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
【0046】
対極20に可撓性を付与するためには、対極基板21を上記金属材料で構成する場合にはその厚さを例えば5〜35μm、好ましくは5〜30μmとし、対極基板21として上記樹脂に導電膜を形成したものを用いる場合には、樹脂の材質によって異なるため一概には言えないが、その厚さを例えば5〜300μmとすればよい。
【0047】
(電解質)
電解質30は、例えばI/Iなどの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/Iのほか、臭素/臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。また電解質30は、有機溶媒に変えて、イオン液体を用いて良い。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。また、電解質30は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
【0048】
また電解質30には添加剤を加えてもよい。添加剤としては、LiI、4−t−ブチルピリジン、1−メチルベンゾイミダゾール、1−ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0049】
さらに電解質30としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0050】
(接続部)
接続部50の第1連結部60に含まれる樹脂部62は樹脂を含んでいる。樹脂としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。上記樹脂は、配線保護層16との密着性を向上させる観点からは、配線保護層16に含まれる樹脂と同一であることが好ましい。
【0051】
第1連結部60に含まれるスペーサ61としては、樹脂部62よりも高い融点を有する絶縁性材料が用いられる。絶縁性材料としては、例えば樹脂材料や無機材料が挙げられる。
【0052】
上記樹脂材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂などが挙げられる。また樹脂材料としては、配線保護層16に使用される樹脂と同様の樹脂を用いることもできる。
【0053】
上記無機材料としては、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットやアルミナなどの無機絶縁材料が挙げられる。低融点ガラスフリットとしては、150〜550℃の軟化点を有するものを用いることができる。
【0054】
樹脂部62に含まれる樹脂が変性ポリオレフィン樹脂で構成され、第1連結部60に含まれるスペーサ61を構成する絶縁性材料が変性ポリオレフィン樹脂で構成されることが好ましい。この場合、色素増感太陽電池100の耐久性をより向上させることができる。
【0055】
第2連結部70は樹脂を含むものである。このような樹脂としては、配線保護層16に使用される樹脂と同様の樹脂を用いることもできる。上記樹脂は、第1連結部60の樹脂部62との密着性を向上させる観点からは、樹脂部62に含まれる樹脂と同一であることが好ましい。
【0056】
(封止部)
樹脂封止部40a及び樹脂封止部40bは、例えば樹脂を含む。このような樹脂としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。なお、封止部40は上記樹脂のみで構成されてもよいし、上記樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
【0057】
スペーサ構造体80に含まれる樹脂部82としては、接続部50の樹脂部62に含まれる樹脂と同様のものを用いることができる。
【0058】
絶縁性のスペーサ81としては、樹脂部82よりも高い融点を有する絶縁材料が用いられる。このような絶縁材料としては、スペーサ61と同様の絶縁材料を用いることができる。
【0059】
次に、色素増感太陽電池100の製造方法について図2〜図6を参照しながら説明する。図2は、図1の作用極に樹脂封止部を固定した状態を示す切断面端面図、図3は、図1の対極に樹脂封止部を固定した状態を示す切断面端面図、図4は、図1の第1連結部を示す切断面端面図、図5は、図1のスペーサ構造体を示す断面図、図6は、図1の色素増感太陽電池を製造する工程における電解質配置工程を示す切断面端面図、図7は、図1の色素増感太陽電池を製造する工程における重ね合わせ工程を示す切断面端面図である。
【0060】
[準備工程]
(作用極)
まず作用極10を準備する。作用極10は、例えば以下のようにして作製される。まず透明基板11上に透明導電膜12を形成した後、透明導電膜12の上に多孔質酸化物半導体層13を形成する。次いで、導電性基板17の表面17a上であって多孔質酸化物半導体層13の周囲に配線部14を形成する。配線部14は、導電性基板17の表面17a上に集電配線15を形成した後、集電配線15を配線保護層16で覆えばよい。こうして作用極10が得られる。
【0061】
透明導電膜12を透明基板11上に形成する方法としては、例えばスパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが挙げられる。
【0062】
多孔質酸化物半導体層13は、例えば上述した酸化物半導体粒子を焼結させることにより得ることができる。
【0063】
集電配線15は、例えば、金属粒子とポリエチレングルコールなどの増粘剤とを配合してペーストとし、そのペーストを、スクリーン印刷法などを用いて多孔質酸化物半導体層13の周囲に塗膜し、加熱して焼成することによって得ることができる。また、導電性基板17が導電ガラスなどの場合には、上述のペーストに低融点ガラスフリットを混合させることで、集電配線15は導電性基板17と強固に接着される。
【0064】
配線保護層16は、例えば、上述した配線保護層16を構成する樹脂を集電配線15の上に載せ、加熱溶融することによって得ることができる。
【0065】
(光増感色素)
次に、光増感色素を作用極10の多孔質酸化物半導体層13に担持させるために、通常は、透明導電膜12上に多孔質酸化物半導体層13を形成した作用極10を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を多孔質酸化物半導体層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化物半導体層13に吸着させる。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を多孔質酸化物半導体層13に吸着させても、光増感色素を多孔質酸化物半導体層13に担持させることが可能である。
【0066】
次に、図2に示すように、作用極10の上に、例えば環状のホットメルト接着剤からなる樹脂封止部40aを配置し、作用極10に溶融圧着させる。このとき、ホットメルト系接着剤としては、樹脂封止部40aを構成する材料と同様の材料を用いる。
【0067】
(対極)
一方、対極20を次のようにして準備する。まず、例えばチタン、白金、ニッケル又はこれらの2種以上の合金からなる厚さ5〜35μmの可撓性を有する対極基板21を準備する。あるいは、対極基板21として樹脂に導電膜を形成したものを用いる場合には、厚さ5〜300μmのものを準備する。そして、対極基板21の上に触媒層22を形成する。触媒層22の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。こうして、可撓性を有する対極20を準備する。
【0068】
次に、対極20の触媒層22側の表面のうち、配線部14に対向させる予定の位置に、第2連結部70を構成する樹脂を配置して加熱溶融する。こうして対極20の触媒層22側の表面のうち配線部14に対向させる予定の位置に第2連結部70が形成される(図3参照)。
【0069】
続いて、対極20の上に、例えば環状のホットメルト接着剤からなる樹脂封止部40bを配置し、対極20に溶融圧着させる(図3参照)。このとき、ホットメルト系接着剤としては、樹脂封止部40bを構成する材料と同様の材料を用いる。
【0070】
(第1連結部)
他方、図4に示すように、配線部14と同様のパターン形状を有する第1連結部60を準備する。第1連結部60は、配線部14と同様のパターン形状を有する2枚の樹脂シートの間にスペーサ61を挟んで樹脂シートを加熱溶融することで得ることができる。このとき、樹脂シートは、第1連結部60の樹脂部62となる。
【0071】
(スペーサ構造体)
また図5に示すように、環状のスペーサ構造体80を準備する。スペーサ構造体80は、2枚の環状の樹脂シートの間にスペーサ81を挟んで樹脂シートを加熱溶融することで得ることができる。このとき、樹脂シートは、スペーサ構造体80の樹脂部82となる。
【0072】
次に、第1連結部60と配線部14とを重ね合わせ、第1連結部60と配線部14とを溶融圧着するとともに、環状のスペーサ構造体80を樹脂封止部40aに重ね合わせ、スペーサ構造体80と樹脂封止部40aとを溶融圧着させる。
【0073】
[電解質配置工程]
次に、図6に示すように、作用極10上であって樹脂封止部40a及びスペーサ構造体80の内側に電解質30を配置する。電解質30は、作用極10上であって樹脂封止部40a及びスペーサ構造体80の内側に注入したり、印刷したりすることによって得ることができる。
【0074】
[重ね合わせ工程]
次に、図7に示すように、樹脂封止部40bを固定した対極20の第2連結部70と第1連結部60とを重ね合わせる。このとき、スペーサ構造体80と、対極20に固定した樹脂封止部40bとを重ね合わせる。
【0075】
[溶融圧着工程]
次に、スペーサ構造体80と樹脂封止部40bとを溶融圧着させるとともに、第1連結部60と対極20に設けた第2連結部70とを溶融圧着させる。すると、作用極10と対極20との間に封止部40が得られる。同時に、第2連結部70と第1連結部60とが接続され、接続部50が得られる。
【0076】
以上のようにして、色素増感太陽電池100が得られ、色素増感太陽電池100の製造が完了する。
【0077】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る色素増感太陽電池の第2実施形態について図8を参照しながら詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。図8は、本発明に係る色素増感太陽電池の第2実施形態を示す断面図である。
【0078】
図8に示すように、本実施形態の色素増感太陽電池200は、対極20に代えて絶縁性基板240を用いている点、各多孔質酸化物半導体層13ごとに1つの透明導電膜12が設けられ、隣り合う2つの透明導電膜12の間に溝が形成され、隣り合う2つの透明導電膜12同士が絶縁されている点、各多孔質酸化物半導体層13の上に絶縁性多孔質層230が積層され、絶縁性多孔質層230の上に対極220が積層されている点、対極220が、対応する透明導電膜12の隣りの透明導電膜12に接続されている点、絶縁性基板240と作用極10との間に電解質30が充填されている点、接続部50の代わりに、第1連結部60、第2連結部70および接着部260からなる接続部250が用いられている点で第1実施形態の色素増感太陽電池100と相違する。なお、本実施形態では、絶縁性基板240によって第2基材が構成されている。
【0079】
上述した色素増感太陽電池200によれば、封止部40が作用極10と絶縁性基板240とを連結している。このため、作用極10に対する封止部40の接着力が十分に確保されると共に、絶縁性基板240に対する封止部40の接着力も十分に確保される。このため、作用極10からの封止部40の剥離、および、絶縁性基板240からの封止部40の剥離が十分に抑制される。従って、作用極10と封止部40との界面、絶縁性基板240と封止部40との界面を通る電解質30の漏洩が十分に抑制される。また色素増感太陽電池200では、スペーサ81が封止部40の内部に設けられている。このため、熱応力により、スペーサ81にそれを左右に動かすような力が働いても、封止部40によりスペーサ81の移動がブロックされるので、スペーサ81が左右に移動して封止部40から剥離することが十分に抑制される。また電解質30が封止部40を通過する場合、その電解質30は、スペーサ81と封止部40との界面でトラップされ、そのまま外部へと漏出することが十分に阻止される。このように、色素増感太陽電池200によれば、作用極10と封止部40との界面、絶縁性基板240と封止部40との界面を通る電解質30の漏洩を十分に抑制できるとともに、スペーサ81と封止部40との界面を通る電解質30の漏洩をも十分に抑制できる。従って、色素増感太陽電池200によれば、優れた耐久性を有することが可能となる。
【0080】
また色素増感太陽電池200によれば、周囲の環境温度が上昇すると、作用極10と絶縁性基板240と封止部40とによって包囲される空間の内圧が上昇する。このとき、絶縁性基板240と作用極10とが、樹脂を含む接続部250によって接続されている。このため、作用極10と絶縁性基板240との間の距離の増大が接続部250によって十分に抑制される。従って、封止部40と作用極10との間の界面、封止部40と絶縁性基板240との間の界面に過大な応力が加わることが十分に抑制され、それらの界面を通じて水分等が作用極10と絶縁性基板240と封止部40とによって包囲される空間内に入って電解質30に接触することが十分に抑制される。従って、色素増感太陽電池200によれば、色素増感太陽電池200が接続部250を有しない場合に比べて、より優れた耐久性を有することが可能となる。
【0081】
以下、対極220、絶縁性多孔質層230、絶縁性基板240および絶縁性接着部260について詳細に説明する。
【0082】
対極220は、スズ添加酸化インジウム(ITO)、フッ素添加スズ(FTO)等の導電性酸化物からなる膜や、金、白金、炭素系材料などの導電性材料からなる膜で構成される。対極220の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば3〜200μmとすればよい。
【0083】
絶縁性多孔質層230は、電解質30が含浸されるものであり、絶縁性及び多孔性を有していれば特に限定されるものではない。絶縁性多孔質層230は、例えば酸化ケイ素やアルミナなどの絶縁体の多孔質焼結体で構成される。絶縁性多孔質層230の厚さも、特に制限されるものではないが、例えば3〜50μmとすればよい、
【0084】
絶縁性基板240は、絶縁性を有する基板であれば特に制限されるものではない。このような絶縁性基板240を構成する材料としては、例えばソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融石英ガラス及び結晶石英ガラスなどが挙げられる。絶縁性基板240の厚さも、特に制限されるものではないが、例えば0.1〜10mmとすればよい。
【0085】
絶縁性接着部260は、絶縁性を有する接着材料で構成されていればよく、このような材料としては、第2連結部70と同様の樹脂を用いることができる。
【0086】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1及び第2実施形態では、接続部50が第1連結部60と第2連結部70とで構成されているが、接続部50は、第1連結部60のみで構成されてもよい。すなわち、第2連結部70は省略することが可能である。この場合、スペーサ構造体60は対極20に接触する。ここで、スペーサ61は対極20に接触していても離間していてもよいが、スペーサ61は対極20から離間していることが好ましい。この場合、スペーサ61が対極20に接触している場合に比べて樹脂部62と対極20との接触面積がより増加する。そのため、対極20と接続部50との接着力がより向上する。このため、対極20からの接続部50の剥離がより十分に抑制され、作用極10と対極20との間の距離の増大をより十分に抑制することができる。
【0087】
また上記第1および第2実施形態では、封止部40が樹脂封止部40a、スペーサ構造体80および樹脂封止部40bとで構成されているが、樹脂封止部40a,40bは必ずしも必要なものではなく、樹脂封止部40a,40bのうち少なくとも一方は省略が可能である。すなわち封止部40は、スペーサ構造体80と、樹脂封止部40a又は樹脂封止部40bとで構成されるか、スペーサ構造体80のみで構成されてもよい。封止部40が、スペーサ構造体80と樹脂封止部40aとで構成される場合、スペーサ構造体80は対極20に接触する。ここで、スペーサ81は対極20に接触していても離間していてもよいが、スペーサ81は対極20から離間していることが好ましい。この場合、スペーサ81が対極20に接触している場合に比べて樹脂部82と対極20との接触面積がより増加する。そのため、対極20と封止部40との接着力がより向上する。このため、対極20からの封止部40の剥離がより十分に抑制され、作用極10と対極20との間の距離の増大をより十分に抑制することができる。封止部40が、スペーサ構造体80と樹脂封止部40bとで構成される場合、スペーサ構造体80は作用極10に接触する。この場合、スペーサ81は作用極10に接触していても離間していてもよいが、スペーサ81は作用極10から離間していることが好ましい。この場合、スペーサ81が作用極10に接触している場合に比べて樹脂部82と作用極10との接触面積がより増加する。そのため、作用極10と封止部40との接着力がより向上する。このため、作用極10からの封止部40の剥離がより十分に抑制され、作用極10と対極20との間の距離の増大をより十分に抑制することができる。封止部40が、スペーサ構造体80のみで構成される場合、スペーサ構造体80は作用極10および対極20に接触する。この場合、スペーサ81は作用極10および対極20の少なくとも一方に接触していても作用極10および対極20の両方から離間していてもよいが、スペーサ81は作用極10および対極20の少なくとも一方から離間していることが好ましい。この場合、スペーサ81が作用極10又は対極20に接触している場合に比べて樹脂部82と作用極10又は対極20との接触面積がより増加する。そのため、作用極10又は対極20と封止部40との接着力がより向上する。このため、作用極10又は対極20からの封止部40の剥離がより十分に抑制され、作用極10と対極20との間の距離の増大をより十分に抑制することができる。
【0088】
また上記第1実施形態では、導電性基板17の表面17aからの配線部14の高さが導電性基板17の表面17aからの多孔質酸化物半導体層13の高さよりも大きくなっているが、導電性基板17の表面17aからの配線部14の高さは導電性基板17の表面17aからの多孔質酸化物半導体層13の高さ以下であってもよい。
【0089】
また上記第1実施形態では、対極20が可撓性電極で、作用極10が非可撓性電極となっているが、作用極10が可撓性電極であってもよい。あるいは、対極20が非可撓性電極で、作用極10が可撓性電極であってもよい。
【0090】
また上記第2実施形態では、絶縁性基板240と作用極10との間に電解質30が充填されており、対極220と絶縁性基板240との間のみならず、対極220と作用極10との間にも充填されているが、電解質30は、絶縁性基板240と作用極10との間に充填されていなくてもよい。例えば電解質30は、絶縁性多孔質層230中に含浸されているだけでもよい。
【0091】
さらに上記第1実施形態においては、図9に示す色素増感太陽電池300のように、接続部50は省略されてもよい。また第2実施形態においても、接続部250は省略されてもよい。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
まず厚さ4mm×35cm×35cmのガラスからなる透明基板を用意した。そして、この透明基板の上に30cm×30cmのFTO膜を形成し、FTO基板を用意した。このとき、FTO膜の寸法は、800nm×6cm×20cmとした。そして、FTO膜の表面上に、スクリーン印刷法により酸化チタンナノ粒子のペースト(Solaronix社製、Ti nanoxide T/sp)を塗布し、FTO基板を熱循環オーブンに収容し、500℃で3時間焼成し、FTO膜上に厚さ10μm×1cm×28cmの多孔質酸化物半導体層を25本形成した。続いて、FTO膜上に、各多孔質酸化物半導体層を包囲するように、銀ペースト(福田金属社製)をスクリーン印刷法にて塗布し、520℃で1時間焼成を行い、銀配線を形成した。次に、銀配線の上に、アイオノマーであるハイミラン(三井・デュポンポリケミカル社製)からなり、銀配線と同様のパターン形状を有する厚さ40μmの樹脂シートを配置し、加熱溶融させて、配線保護層を形成し、配線部を得た。このとき、FTO膜からの配線部の高さは35μmとなるようにした。こうして作用極を得た。こうして得られた作用極は非可撓性電極であった。
【0094】
次に、この作用極を、光増感色素であるN719色素を0.2mM溶かした脱水エタノール液中に一昼夜浸漬し、作用極の多孔質酸化物半導体層に光増感色素を担持させた。
【0095】
そして、作用極の多孔質酸化物半導体層全体を包囲するように、ホットメルト接着剤として、幅2mm、厚さ50μmのアイオノマーであるハイミランからなる環状の接着剤を配置して180℃で35分間溶融圧着した。こうして作用極に、多孔質酸化物半導体層を包囲するように環状の樹脂封止部を固定した。
【0096】
次に、対極基板として、30cm×30cm×35μmのTi箔を用意した。そして、Ti箔の上にスパッタリング法により厚さ5nmの白金層を形成した。こうして対極を得た。こうして得られた対極は可撓性電極であった。
【0097】
そして、対極のうち白金層側の表面のうち配線部に対向させる予定の位置に、アイオノマーであるハイミランからなり、銀配線と同様のパターン形状を有する厚さ50μmの樹脂シートを配置して180℃で35分間溶融圧着し、第2連結部を形成した。
【0098】
続いて、白金層の上に、幅2mm、厚さ50μmのアイオノマーであるハイミランからなる環状の接着剤を配置して180℃で35分間溶融圧着した。こうして対極の周縁部に環状の樹脂封止部を固定した。
【0099】
次に、配線部と同様のパターン形状を有するハイミランからなる厚さ40μmの樹脂シート2枚、及び、配線部と同様のパターン形状を有し、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ50μmのスペーサ1枚を準備した。そして、2枚の樹脂シートの間にスペーサを挟んで樹脂シートを加熱溶融することで第1連結部を得た。このとき、スペーサはその全体が樹脂部で覆われていた。続いて、第1連結部を、作用極上に設けた配線部と重ね合わせ、溶融圧着させた。
【0100】
次に、作用極に固定した環状の樹脂封止部と同様の形状を有し、ハイミランからなる厚さ40μmの樹脂シート2枚と、作用極に固定した環状の樹脂封止部と同様の形状を有し、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ50μmのスペーサ1枚とを準備した。そして、2枚の樹脂シートの間にスペーサを挟んで樹脂シートを加熱溶融することで環状のスペーサ構造体を得た。このとき、スペーサはその全体が樹脂部で覆われていた。こうして得られた環状のスペーサ構造体を、作用極に固定した環状の樹脂封止部に溶融圧着させた。
【0101】
次に、作用極に固定した環状の樹脂封止部の内側に、ヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、4−tert−ブチルピリジン0.5Mをアセトニトリル中に溶解させたアセトニトリル系電解質を配置した。
【0102】
次に、樹脂封止部を固定した対極の第2連結部と第1連結部とを重ね合わせるとともに、環状のスペーサ構造体と、対極に固定した樹脂封止部とを重ね合わせた。
【0103】
次に、環状のスペーサ構造体と対極に固定した樹脂封止部とを3MPa、150℃の条件で溶融圧着させるとともに、第1連結部と対極に設けた第2連結部とを3MPa、150℃の条件で溶融圧着させた。こうして、作用極と対極との間に、厚さ100μmの封止部を得た。同時に、第2連結部と第1連結部とが接続され、配線保護層と対極とを接続する接続部が得られた。こうして色素増感太陽電池を得た。
【0104】
(実施例2)
配線保護層、第1連結部の樹脂部、第2連結部、封止部の樹脂部、及び、封止部の樹脂封止部を、表1に示すように、アイオノマーであるハイミランから、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMMA)であるニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0105】
(実施例3)
配線保護層、第1連結部の樹脂部、第2連結部、封止部の樹脂部、及び、封止部の樹脂封止部を、表1に示すように、アイオノマーであるハイミランから、無水マレイン酸変性ポリエチレンであるバイネル(デュポン社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0106】
(実施例4)
透明基板を、厚さ4mm×30cm×30cmのガラスから、厚さ0.3mm×35cm×35cmのポリエチレンナフタレートに変更することで、作用極を可撓性電極としたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0107】
(実施例5)
対極の白金層側の表面のうち配線部に対向させる予定の位置に第2連結部を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0108】
(実施例6)
第1連結部のスペーサおよび封止部のスペーサを、表1に示すように、PETから、無水マレイン酸変性ポリエチレンであるバイネル(デュポン社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0109】
(実施例7)
第1連結部のスペーサおよび封止部のスペーサを、表1に示すように、PETから、無水マレイン酸変性ポリエチレンであるバイネル(デュポン社製)に変更したこと以外は実施例2と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0110】
(実施例8)
FTO基板上の配線部と対極との間に、第1連結部及び第2連結部を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0111】
(比較例1)
第1連結部を、作用極上に設けた配線部に溶融圧着させず、配線保護層と、対極に固定した第2連結部とを直接溶融圧着させるとともに、封止部のスペーサ構造体を、作用極に固定した環状の樹脂封止部に溶融圧着させず、作用極に固定した樹脂封止部と対極に固定した樹脂封止部とを直接溶融圧着させたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0112】
(比較例2)
第1連結部を、作用極上に設けた配線部に溶融圧着させず、配線保護層と、対極に固定した第2連結部とを直接溶融圧着させるとともに、封止部のスペーサ構造体を、作用極に固定した環状の樹脂封止部に溶融圧着させず、作用極に固定した樹脂封止部と対極に固定した樹脂封止部とを直接溶融圧着させたこと以外は実施例2と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0113】
(比較例3)
第1連結部を、作用極上に設けた配線部に溶融圧着させず、配線保護層と、対極に固定した第2連結部とを直接溶融圧着させるとともに、封止部のスペーサ構造体を、作用極に固定した環状の樹脂封止部に溶融圧着させず、作用極に固定した樹脂封止部と対極に固定した樹脂封止部とを直接溶融圧着させたこと以外は実施例3と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0114】
(比較例4)
FTO基板上の配線部と対極との間に、第1連結部及び第2連結部を設けず、封止部のスペーサ構造体を、作用極に固定した環状の樹脂封止部に溶融圧着させず、作用極に固定した樹脂封止部と対極に固定した樹脂封止部とを直接溶融圧着させたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0115】
(比較例5)
FTO基板上の配線部と対極との間に、第1連結部及び第2連結部を設けず、封止部のスペーサ構造体を、作用極に固定した環状の樹脂封止部に溶融圧着させず、作用極に固定した樹脂封止部と対極に固定した樹脂封止部とを直接溶融圧着させたこと以外は実施例2と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0116】
(比較例6)
FTO基板上の配線部と対極との間に、第1連結部及び第2連結部を設けず、封止部のスペーサ構造体を、作用極に固定した環状の樹脂封止部に溶融圧着させず、作用極に固定した樹脂封止部と対極に固定した樹脂封止部とを直接溶融圧着させたこと以外は実施例3と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0117】
[特性評価]
実施例1〜8及び比較例1〜6で得られた色素増感太陽電池について、高温環境下での耐久性、及び、作用極と対極との間の短絡の有無を調べた。
【0118】
(高温環境下での耐久性)
高温環境下での耐久性は、実施例1〜8及び比較例1〜6で得られた色素増感太陽電池について、高温環境下に置くことによる光電変換効率の減少率を算出することで調べた。光電変換効率の減少率は以下のようにして算出した。まず実施例1〜8及び比較例1〜6で得られた色素増感太陽電池を、85℃の恒温槽に1000時間入れた。そして、恒温槽に入れる前の色素増感太陽電池の光電変換効率と、恒温槽に入れて1000時間後に取り出した色素増感太陽電池の光電変換効率とから、下記式:
光電変換効率の減少率(%)=(η−η)/η)×100
(上記式中、ηは恒温槽に入れる前の色素増感太陽電池の光電変換効率を表し、ηは、恒温槽に入れて1000時間後に取り出した色素増感太陽電池の光電変換効率を表す)
に基づいて光電変換効率の減少率を算出した。結果を表1に示す。
【0119】
(高温環境下での作用極と対極との間の短絡の有無)
高温環境下での作用極と対極との間の短絡については、以下のようにして調べた。まず各実施例及び比較例ごとに色素増感太陽電池を3個ずつ作製した。そして、これらの色素増感太陽電池を85℃の恒温槽に入れ、1000時間後に取り出した色素増感太陽電池について短絡の有無を、光を照射せずに対極と作用極との間の抵抗を測定することによって調べた。このとき、作用極と対極との間の抵抗が10Ω以下であれば、短絡していると判断した。結果を表1に示す。表1において、3個とも短絡が見られなかった場合には「無」と表示し、1個でも短絡が見られた場合には「あり」と表示した。
【0120】
【表1】

【0121】
表1に示す結果より、実施例1〜8の色素増感太陽電池は、比較例1〜6の色素増感太陽電池に比べて、光電変換効率の減少率が極めて小さいことが分かった。
【0122】
また実施例1〜8及び比較例4〜6の色素増感太陽電池においては、作用極と対極との間の短絡が見られなかったが、比較例1〜3の色素増感太陽電池においては、作用極と対極との間で短絡が見られた。
【0123】
このことから、本発明の色素増感太陽電池によれば、高温環境下で使用されても、優れた耐久性を有することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0124】
10…作用極(第1電極、第1基材)
17…導電性基板
20…対極(第2電極、第2基材)
30…電解質
40…封止部
50…接続部
60…第1連結部又はスペーサ構造体
61…スペーサ
62…樹脂部
80…スペーサ構造体
81…スペーサ
82…樹脂部
100、200、300…色素増感太陽電池
220…対極
240…絶縁性基板(第2基材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板を有する第1基材と、
前記第1基材に対向する第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材を連結する封止部と、
前記第1基材及び前記第2基材の間に配置される電解質とを備え、
前記封止部が、前記第1基材と前記第2基材とを接続し、樹脂を含む樹脂部と、前記樹脂部の内部に設けられる絶縁性のスペーサとを有するスペーサ構造体を含む、色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記封止部の内側に設けられ、前記第1基材と前記第2基材とを接続する接続部を更に備え、
前記接続部が、前記第1基材と前記第2基材とを接続し、樹脂を含む樹脂部と、前記樹脂部の内部に設けられる絶縁性のスペーサとを有するスペーサ構造体を含む、請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記第1基材が、前記導電性基板の表面上に設けられる配線部をさらに有する第1電極で構成され、
前記配線部が、前記導電性基板上に設けられる集電配線と、前記集電配線を覆って前記電解質から保護し、樹脂を含む配線保護層とを有し、
前記第2基材が第2電極で構成され、
前記接続部が、前記配線保護層と前記第2基材とを接続している、請求項2に記載の色素増感太陽電池。
【請求項4】
前記第1基材及び前記第2基材のうち一方の基材が可撓性基材である請求項3に記載の色素増感太陽電池。
【請求項5】
前記接続部の前記スペーサが前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方から離間している、請求項2〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
【請求項6】
前記封止部の前記スペーサが前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方から離間している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−84596(P2013−84596A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216687(P2012−216687)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】