説明

艶消し剤を含有する成形材料

本発明は、a)熱可塑性プラスチックからなるマトリックス50〜99.9質量%、およびb)マトリックス中に分布する(メタ)アクリレートコポリマーの形の艶消し剤0.1〜50質量%を含有する成形材料であって、この艶消し剤が次のモノマー:
b1)メチルメタクリレート50〜95質量%
b2)C〜C−アルキルアクリレート5〜50質量%
b3)エチレン系不飽和ラジカル重合性基を2つ以上有する架橋するモノマーおよび/またはグラフト架橋剤0.01〜<0.5質量%
b4)その他の、1種以上の架橋しないエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー0〜20質量%
から製造されている(メタ)アクリレートコポリマーであり、
この際、成分b1)およびb2)および場合によりb3)および/またはb4)は合計して100質量%であり、かつこの艶消し剤はガラス転移温度Tmg少なくとも20℃を有することを特徴とする、成形材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は艶消し剤を含有する成形材料に関する。更に、本発明はこの成形材料から製造された成形体並びにその使用に関する。
【0002】
技術水準
EP0342283A1は、架橋したアクリレートゴムからなるコア並びにマトリックスと相容性である外側シェルを有する多層艶消し剤を含有する、熱可塑性マトリックスポリマーからなる熱可塑性ポリマー組成物を記載している。
【0003】
EP0342283A1に記載されている艶消し剤は、比較的軟質のコアを有し、このコアは表面から突出する粒子からなる艶消し構造が非常に軟質であり、特に良好な耐摩耗性を有さないという結果をもたらす。更に、マトリックスへの結合のために必要なシェル上への重合という付加的な工程を加えるという欠点を有し、この工程は大きなラテックス粒子が存在する場合に特に困難であり、しばしば不所望な新たな粒子の形成に導く。このコア粒子自体、この出願においてはUS4186120による多工程の膨潤法により製造される。この際、モノマーは水相によりラテックス粒子中に拡散し、その最初の体積の何倍にも膨潤する。引き続き、油溶性の開始剤をその中に拡散させ、重合を開始する。この方法の欠点は、粒子の重要な拡大のために、粒子中に拡散しなければならない多量のモノマーを必要とすることである。この工程は非常にゆっくりであり、一般に完全ではなく、こうして残留するモノマーが後続の重合において著しい凝集体の量に導く。
【0004】
EP0528196A1は、
b1)場合により分枝しているか、または環式のC〜C−アルキルメタクリレート50〜99.5質量%(Bに対して)
b2)2個以上のエチレン系不飽和ラジカル重合性基を有する架橋するモノマー0.5〜10質量%、および
b3)場合によりその他のエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー
から構成された熱弾性ポリマーからなる艶消し剤を含有していてよい艶消しフィルムを記載している。例えば、ポリメチルメタクリレートからなる耐衝撃性改良マトリックスに、メチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートの同量部からなり、グリコールジメタクリレート5%で架橋されている艶消し剤20質量%までが添加混合されている。例えば、EP0528196A1により製造されたフィルムに関しては、DIN4768による表面粗さにおいて、粗度R=0.3μm、R=1.7μmおよびRmax=2.2μmが記載されている。
【0005】
EP0528196A1により製造した成形材料は、引き続き行われる熱可塑性加工において比較的悪い熱安定性が観察される。
【0006】
課題および解決
艶消し成形体、特にフィルムを製造するために好適である成形材料に対する要望がある。
【0007】
EP0342283A1およびEP0528196A1から出発して、絹様の艶消し表面および心地よい触覚により優れている艶消し成形体、特に艶消しフィルムを製造することのできる成形材料を製造することが課題として認識された。更に、この艶消し剤は比較的簡単に構成されており、かつ容易に製造可能であるべきである。相応する成形材料およびこれから製造された成形体の耐摩耗性は全く損なわれないかまたは少なくとも実質的にに損なわれない。
【0008】
この課題は、
a)熱可塑性プラスチックからなるマトリックス50〜99.9質量%、および
b)マトリックス中に分布する(メタ)アクリレートコポリマーの形の艶消し剤0.1〜50質量%を含有する成形材料であって、この艶消し剤が次のモノマー:
b1)メチルメタクリレート50〜95質量%
b2)C〜C−アルキルアクリレート5〜50質量%
b3)エチレン系不飽和ラジカル重合性基を2つ以上有する、架橋するモノマーおよび/またはグラフト架橋剤0.01〜<0.5質量%
b4)その他の、1種以上の架橋しないエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー0〜20質量%
から製造されている(メタ)アクリレートコポリマーであり、
この際、成分b1)およびb2)および場合によりb3)および/またはb4)は合計して100質量%であり、かつこの艶消し剤はガラス転移温度Tmg少なくとも20℃を有することを特徴とする、成形材料により解決する。
【0009】
本発明による成形材料は(メタ)アクリレートベースの比較的僅かに架橋した艶消し剤を含有する。この艶消し剤は有利に調節なしに製造され、こうしてその分子量はすでに未架橋の状態で比較的高い。電子顕微鏡の画像は艶消し剤がポリマーマトリックス中でもはやその最初の球状の形態を有さず、長い楕円を有することを示す。その際、この艶消し剤は少なくとも部分的に熱可塑性のマトリックス中に溶けているかまたはマトリックス中で膨潤しているように見える。公知技術の比較的強く架橋しその球状の形態がポリマーマトリックス中でほぼ保持され、こうして粗な艶消し効果に作用する艶消し剤とは異なり、本発明による成形材料を用いて、非常に微細な絹様の艶消し表面構造を有する成形体が得られる。更に、機械的な特性、例えば引っ張り強さまたは引き裂き伝ぱ抵抗が改善される。表面の触覚は試験者から著しく心地よいと感じられた。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、
a)熱可塑性プラスチックからなるマトリックス50〜99.9%、有利に75〜95%、特に有利に80〜90質量%および
b)マトリックス中に分布する(メタ)アクリレートコポリマーの形の艶消し剤0.1〜50質量%、有利に5〜25質量%、特に10〜20質量%
を含有する、成形材料に関する。
【0011】
マトリックスa)
マトリックスa)はポリメチルメタクリレート、耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル酸エステル/スチレン/アクリロニトリル−グラフトコポリマー(ASA)、スチレン−アクリル−ニトリル(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリブチレンテレフタレート−プラスチック(PBT)、ポリ塩化ビニル−プラスチック(PVC)、ポリオレフィン−プラスチック、シクロオレフィンコポリマー(COC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)または種々の熱可塑性プラスチックの混合物(ブレンド)からなっていてよい。
【0012】
ポリメチルメタクリレートもしくは耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレート−プラスチックが有利である。
【0013】
ポリメチルメタクリレート−プラスチック
ポリメチルメタクリレート−プラスチックとは、メチルメタクリレート少なくとも80質量%および場合によりその他のメチルメタクリレートと共重合性のモノマー20質量%までからなるホモポリマーまたはコポリマーであると理解される。特に、ポリメチルメタクリレート−プラスチックは、ラジカル重合したメチルメタクリレート−単位80〜100、有利に90〜99.5質量%からおよびその他のラジカル重合性コモノマー、例えばC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、特にメチルアクリレート、エチルアクリレートまたはブチルアクリレート0〜20、有利に0.5〜10質量%からなる。マトリックスの平均分子量M(質量平均)は90000g/モル〜200000g/モル、特に100000g/モル〜150000g/モル(Mの測定はゲル浸透クロマトグラフィーにより、ポリメチルメタクリレートを較正スタンダードとして使用)の範囲に相当するのが有利である。分子量Mの測定は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーまたは光拡散法により行うことができる(例えば、H. F. Mark等著、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 第2版、第10巻、第1頁以降、J. Wiley, 1989参照)。
【0014】
メチルメタクリレート90〜99.5質量%およびメチルアクリレート0.5〜10質量%からなるコポリマーが有利である。ビカー軟化温度VET(ISO306−B50)は少なくとも90、有利に95〜112℃の範囲にあってよい。
【0015】
ポリメチルメタクリレートのための耐衝撃性改良剤
マトリックスa)は耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレートであってよく、これは2層または3層シェルに構成された耐衝撃性改良剤を含有する。
【0016】
ポリメタクリレート−プラスチックのための耐衝撃性改良剤はすでに長期にわたって公知である。耐衝撃性改良ポリメタクリレート成形材料の製造および構成は、例えばEP−A0113924、EP−A0522351、EP−A0465049およびEP−A0683028に記載されている。
【0017】
ポリメタクリレート−マトリックス
耐衝撃性の成形材料は、70〜99質量%までマトリックスからなり、このマトリックスは80〜100、有利に90〜98質量%までがラジカル重合したメチルメタクリレート−単位、および場合により0〜20、有利に2〜10質量%までがその他のラジカル重合性コモノマー、例えばC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、特にメチルアクリレート、エチルアクリレートまたはブチルアクリレートからなる。マトリックスの平均分子量M(質量平均)は90000g/モル〜200000g/モル、特に100000g/モル〜150000g/モルの範囲にあるのが有利である。
【0018】
耐衝撃性改良剤
ポリメタクリレート−マトリックス中には、架橋したポリマー粒子からなるエラストマー相である、耐衝撃性改良剤が1〜30質量%、有利に2〜20質量%、特に有利に3〜15、殊に有利に5〜12質量%含有されている。耐衝撃性改良剤は公知法で粒状重合または乳化重合により得られる。
【0019】
最も簡単な場合には、粒状重合により得られる50〜500μm、有利に80〜120μmの範囲に平均粒度を有する、架橋した粒子である。これは一般にメチルメタクリレート少なくとも40、有利に50〜70質量%、ブチルアクリレート20〜40、有利に25〜35質量%並びに架橋するモノマー、例えば多官能性(メタ)アクリレート例えばアリルメタクリレート0.1〜2質量%、有利に0.5〜1質量%および場合によりその他のモノマー、例えばC〜C−アルキルメタクリレート、例えばエチルアクリレートまたはブチルメタクリレート、有利にメチルアクリレート、または他のビニル系重合性モノマー例えばスチレン0〜10、有利に0.5〜5質量%からなる。
【0020】
有利な耐衝撃性改良剤は、二層の、特に有利には三層のコア−シェル−構造を有し、乳化重合により得ることのできるポリマー粒子である(例えば、EP−A0113924、EP−A0522351、EP−A0465049およびEP−A0683028参照)。この乳化重合体の典型的な粒度は100〜500nm、有利に200〜400nmの範囲にある。
【0021】
1つのコアおよび2つのシェルを有する三層のもしくは三相の構造は、次のように製造することができる。最も内側の(硬質)シェルは、例えば実質的にメチルメタクリレート、僅かな量のコモノマー、例えばエチルアクリレートおよび架橋剤成分、例えばアリルメタクリレートからなってよい。中間の(軟質)シェルは、例えばブチルアクリレートおよび場合によりスチレンから構成されていてよく、他方外側(硬質)シェルは実質的にほとんどマトリックスポリマーに相当し、これによりマトリックスへの相容性および良好な結合に作用する。耐衝撃性改良剤のポリブチルアクリレート含量は耐衝撃作用のために重要であり、有利に20〜40質量%、特に有利に25〜35質量%の範囲にある。
【0022】
耐衝撃性改良したポリメタクリレート成形材料
押出機中で耐衝撃性改良剤およびマトリックス−ポリマーを溶融物の形で混合し耐衝撃性改良ポリメタクリレート成形材料にすることができる。取り出した材料を一般に先ず顆粒に切断する。これを押出または射出成形により成形体、例えばプレートまたは射出成形部品に加工することができる。
【0023】
技術水準のノッチ付衝撃強さおよび流動性
市販の耐衝撃性改良ポリメタクリレート成形材料からの成形体は、ISO 179/1eAによるCharpyのノッチ付衝撃強さKSZを3.0KJ/m〜5.0KJ/mの範囲に有する。
【0024】
市販の耐衝撃性改良ポリメタクリレート成形材料はISO1133により流動性MVR(230℃/3.8kg)を0.4〜8.1cm/10分の範囲に有する。耐衝撃性改良ポリメタクリレート成形材料の流動性は特に射出成形処理のためにできるだけ高いのがよい。最適な耐衝撃性改良ポリメタクリレート成形材料の流動性に関して、MVR−値(230℃/3.8kg、ISO1133)は最大約10.0cm/10分の範囲に達する。
【0025】
EP0528196A1による二相の耐衝撃性改良剤
特にフィルム製造のために、しかしながらこれに限定されることはないが、原則的にEP0528196A1から公知のマトリックスa)を使用するのが有利であり、このマトリックスは、
a1)70℃を越えるガラス転移温度Tmgを有し、
a11)メチルメタクリレート80〜100質量%(1aに対して)、および
a12)その他の、2種以上のエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー0〜20質量%
から構成された凝集性の硬質相10〜95質量%、および
a2)−10℃未満のガラス転移温度Tmgを有し、
a21)C〜C10−アルキルアクリレート50〜99.5質量%(a2)に対して)、
a22)エチレン系不飽和ラジカル重合性基2つ以上を有する、架橋するモノマー0.5〜5質量%、および
a23)場合により、その他のエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー
から構成される、硬質相中に分布する靭性の相90〜5質量%
からなる二相の耐衝撃性改良ポリマーであり、その際硬質相a1)の少なくとも15質量%が靭性の相a2)と共有結合している。
【0026】
二相の耐衝撃性改良剤は水中で2工程の乳化重合により、例えばDE−A3842796に記載されているように、製造することができる。第1の工程においては、靭性の相a2)を製造し、この靭性の相は少なくとも50%まで、有利には80質量%より多くが低分子量アルキルアクリレートから構成されていて、これによりこの相のガラス転移温度Tmgは−10℃未満となる。架橋するモノマーa22)としてはジオールの(メタ)アクリルエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレートまたは1,4−ブタンジオールジメタクリレート、2つのビニル−またはアリル基を有する芳香族化合物、例えばジビニルベンゼン、またはその他の2つのエチレン系不飽和、ラジカル重合性基を有する架橋剤、例えばグラフト架橋剤としてアリルメタクリレート、を使用する。3つ以上の不飽和ラジカル重合性基、例えばアリル基または(メタ)アクリル基を有する架橋剤としては、例えばトリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレートおよび−トリメタクリレート並びにペンタエリトリット−テトラアクリレートおよび−テトラメタクリレートを挙げることができる。このための、その他の例はUS4513118中に記載されている。
【0027】
a23)に記載したエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマーは、前に記載されていない場合にも、例えばアクリル−もしくはメタクリル酸並びにこれらの炭素原子1〜20個を有するアルキルエステルであってよく、この際アルキル基は線状、分枝状または環式であってよい。更に、a23)はアルキルアクリレートa21)と共重合可能である、その他のラジカル重合性脂肪族コモノマーを包含してよい。しかしながら、芳香族コモノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエンの記載するに値するような量は、これが特に屋外暴露において、成形材料Aの不所望な特性に導くので回避するべきである。
【0028】
第1の工程において靭性の相が生じた際に、粒度およびその不均一性の調節に正確に注意をしなければならない。その際、靭性相の粒度は、実質的に乳化剤の濃度に依存する。粒度を種ラテックスの使用により制御することができるのが有利である。平均粒度(質量平均)130nm未満、有利に70nm未満、を有し、かつ粒度の不均一性U800.5未満(U80は、超遠心分離により測定される粒度分布の積分により測定される。以下のことが該当する:U80=[(r90−r10)/r50]−1、この際、r10、r50、r90=平均積分粒子半径、ここでは粒子半径の10、50、90%がこの値未満に存在すること、粒子半径の90、50、10%がこの値を越えて存在することが該当する)、有利に0.2未満を有する粒子は、水相に対して0.15〜1.0質量%の乳化剤濃度で達せられる。このことは特にアニオン乳化剤、例えば特に有利にアルコキシル化および硫酸化パラフィンに関して該当する。重合開始剤としては、例えば水相に対してアルカリ−またはアンモニウムペルオキソ二硫酸塩0.01〜0.5質量%を使用し、重合は温度20〜100℃で開始する。レドックス−系が有利であり、例えば有機ヒドロペルオキシド0.01〜0.05質量%およびナトリウムヒドロキシメチルスルフィネート0.05〜0.15質量%からなる組合せを、温度20〜80℃で使用するのが有利である。
【0029】
靭性相a2)と少なくとも15質量%まで共有結合する硬質相a1)はガラス転移温度少なくとも70℃を有し、全てメチルメタクリレートから構成されていてよい。コモノマーa12)としてはその他のエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー1種以上20質量%までを硬質相中に含有していてよく、この際アルキル(メタ)アクリレート、有利に炭素原子1〜4個を有するアルキルアクリレート、を前記のガラス転移温度を下回らないような量で使用する。
【0030】
硬質相a1)の重合は、2工程で、同様に常用の助剤、例えば靭性相a2)の重合のためにも使用する助剤の使用下にエマルジョン中で経過する。
【0031】
有利な実施形においては、硬質相は低分子量のおよび/または重合して組み込まれたUV−吸収剤を、Aに対して0.1〜10質量%、有利に0.5〜5質量%の量で硬質相中のコモノマー成分a12)の構成分として含有する。重合可能なUV−吸収剤の例は、例えば特にUS4576870に記載されており、2−(2′−ヒドロキシフェニル)−5−メタクリルアミドベンゾトリアゾールまたは2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシベンゾフェノンを挙げることができる。低分子量UV−吸収剤は、例えば2−ヒドロキシベンゾフェノンまたは2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールまたはサリチル酸フェニルエステルであってよい。一般に、低分子量UV−吸収剤は2×10(g/モル)より低い分子量を示す。特に有利であるのは、加工温度で低い揮発性を有し、ポリマーAの硬質相a1)との均質な混和性を有するUV−吸収剤が特に有利である。
【0032】
艶消し剤b)
艶消し剤b)は(メタ)アクリレートコポリマーであり、これは次のモノマーから製造される:
b1)メチルメタクリレート50〜95、有利に50〜90質量%、
b2)C〜C−アルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートおよび/またはヘキシルアクリレート5〜50、有利に10〜50質量%、
b3)エチレン系不飽和ラジカル重合性基2つ以上を有する、架橋するモノマーおよび/またはグラフト架橋剤0.01〜<0.5、有利に0.05〜0.49、特に有利に0.1〜0.4質量%、
架橋するモノマーb3)は、例えばジオールの(メタ)アクリルエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレートまたは1,4−ブタンジオールジメタクリレート、2つのビニル−またはアリル基を有する芳香族化合物、例えばジビニルベンゼン、またはその他の2つのエチレン系不飽和、ラジカル重合性基を有する架橋剤、例えばグラフト架橋剤としてアリルメタクリレート、を使用する。3つ以上の不飽和ラジカル重合性基、例えばアリル基または(メタ)アクリル基を有する架橋剤としては、例えばトリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパン−トリアクリレートおよび−トリメタクリレート並びにペンタエリトリット−テトラアクリレートおよび−テトラメタクリレートである。
b4)1種以上のその他の架橋しない、エチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー、例えばC〜C−アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレートまたはn−ブチルメタクリレート、またはその他のビニル系重合性モノマー、例えばスチレン0〜20、有利に0〜5質量%。しかしながら、その他のモノマーb4)を2質量%未満または全く含有しないのが特に有利である。
【0033】
成分b1)およびb2)および場合によりb3)および/またはb4)を合計して100質量%になる。
【0034】
艶消し剤は、有利には平均分子量M(質量平均)少なくとも200000、有利に少なくとも250000(g/モル)を有してよい。分子量Mの測定は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーにより、または光拡散法により行うことができる(例えば、H. F. Mark等著、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 第2版、第10巻、第1頁以降、J. Wiley, 1989参照)。架橋剤の含量の上昇は分子量を強く上昇させる。未架橋の状態での分子量がなお容易にかつ非常に正確に測定できるのに対して、架橋度が上昇する際に正確な測定は困難さを増す。分子量が著しく高い場合には、多くの場合概略的に推測することができるに過ぎない。分子量は多くの線状分子鎖の相互の架橋の際にほぼ制限されることなく上昇し、最終的にはもはや正確には把握することはできない。しかしながら、分子量が所定の値、少なくとも200000、有利には少なくとも250000(g/モル)を越えているかどうかを確認することは常に可能である。このことは、例えば付加的な溶解試験または抽出試験およびこれに続く成分の分析、例えばゲル浸透クロマトグラフィーにより確認することができる。
【0035】
艶消し剤は少なくとも20℃のガラス転移温度Tmgを示す。ガラス転移温度とは、本明細書においては特にISO11357−2、第3.3.3項による中心点温度Tmgであると理解される。この測定は可塑剤添加なしに、残留モノマー含量(REMO)100ppm未満、加熱速度10℃/分で、窒素雰囲気下に行う。
【0036】
艶消し剤b)は、特に
メチルメタクリレート50〜90、有利に60〜80質量%、
エチルアクリレートおよび/またはブチルアクリレート10〜50、有利に20〜40質量%、
エチレン系不飽和ラジカル重合性基2つ以上を有する、架橋するモノマーおよび/またはグラフト架橋剤、特にエチレングリコールジメタクリレート0.01〜<5質量%、有利に0.1〜0.4質量%
からなるコポリマーであってよい。
【0037】
艶消し剤の製造
艶消し剤b)は例えば乳化重合により製造され、マトリックスa)中に混和する前に、平均粒度を100nm〜10μm、有利に1〜5μmの範囲に有する。粒度および粒度分布を調べるためには、レーザー減衰法により実施することができる。ここでは、L.O.T.GmbH社のGalay−CISを使用することができ、この際粒度並びに粒度分布を測定するための測定法は利用者ガイドブックに記載されている。V50の平均粒度は、質量平均の中央値から得られ、この際粒子の50質量%がこの値より小さいかまたは同じであり、この粒子の50質量%がこの値より大きいかまたは同じである。粒度並びに粒度分布を測定するための他の方法は、超遠心分離による分析である。この方法においては、粒度および粒度分布はストークスの方程式およびミー散乱則を用いて、遠心力の影響下での粒子の沈降から知ることができる(例えば、H. F. Mark等著、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 第2版、第17巻、J. Wiley, New York 1989参照)。
【0038】
先ず、分散体を公知法でバッチ法または供給法で水性乳化重合することにより、半連続的にまたは連続的に獲得する(DE19503099A1を参照)。粒度を種ラテックスの使用により制御することができる。乳化剤の存在下でモノマーのラジカル重合は、ラジカル形成を熱的またはレドックス工程を介して行うことのできる、ラジカル形成性水溶性重合開始剤により実施する。分子量調節剤を添加するのが有利である。
【0039】
艶消し剤b)を、分散液から沈降法、凍結凝集法、噴霧乾燥により水を分離することにより、または二軸スクリュー押出機中で脱水することにより獲得する。
【0040】
EP−A0683028は熱可塑性プラスチック溶融物および水相からなる二相の液状混合物の逆転二軸スクリュー押出機中での脱水法を記載している。この際、プラスチックラテックスの凝集を、プラスチックの熱可塑性範囲の温度において凝集帯域中での剪断作用下に、直接押出機中で実施することができる。この際、この溶融物を部分的に充填したスクリュー溝に搬送し、これらのスクリュー溝の少なくとも1つに、位置的に狭く限定した急な圧力勾配形成下に、凝集性の溶融物ケーキを集積する。こうして、水は重力の作用により溶融物ケーキの境界の前方に、溶融物ケーキが凝集性の水相との接触に留まらないように下方に流れる。この方法の使用下に、開始時水分含量55質量%のエマルジョンポリマーの水分含量は僅かに水分8質量%まで低下する。引き続き、揮発性部分の残留量を、ベント式押出機中で前方および後方ベント帯域により十分に分離することができる。造粒ノズルで取り出される顆粒は、最終的に僅かに約0.06質量%の残留水分を有するに過ぎない。
【0041】
DE19718597C1は熱可塑性プラスチック相および水相からなる二相の液体混合物の、第1の押出機中での二相の液体混合物の凝集、脱水帯域を有する逆転二軸スクリュー押出機中での凝集体の脱水、および脱気による揮発性成分の分離による脱水法を記載しており、この際第1の押出機として一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機を使用し、この際二軸スクリュー押出機は共回転スクリューを有する。押出された水中の低い残留ポリマー含量を約0.35質量%の範囲で得ることができる。
【0042】
成形材料
本発明による成形材料は、公知の方法でマトリックスa)および艶消し剤b)を溶融状態で、例えば押出機、有利には二軸スクリュー押出機中で混合し、押出物を取り出し、冷却し、引き続き造粒することにより得られる。
【0043】
本発明による成形材料は特にこれから製造した規格に適した試験体が、DIN4768による粗度R=0.1〜0.5μm、特に0.2〜0.4μm、R=0.5〜5.0、特に1.0〜3.0、例えば2.0〜2.5μmおよびRmax=0.5〜5.0、特に1.0〜4.0、例えば2.0〜3.5μmの範囲を有することにより優れている。
【0044】
成形体
本発明による成形材料からは、成形体は、公知法により、押出または射出成形により製造することができる。
【0045】
成形体は、例えばフィルム、平板、波形板、マルチウェブサンドイッチパネル(Stegmehrfachplatte)、管、ロッド、または任意に成型した射出成形部品に関する。
【0046】
成形体の使用
この成形材料から製造したフィルムは、その他の場合によりプリントされたフィルム材料とのコラミネーション、例えばインサート成形法におけるプラスチック材料での裏面射出成形(Hinterspritzen)、プラスチックフォーム、例えばポリウレタンフォームでの裏面フォーミング、押出ラミネーションまたは任意の支持体のラミネーション、例えば自動車または航空機の内装品のために使用することができる。
【0047】

略語:
MMA=メチルメタクリレート、
EA=エチルアクリレート
EGDMA=エチレングリコールジメタクリレート(架橋剤)
APS=過硫酸アンモニウム(開始剤)
Emulg.=C15−パラフィンスルホネートのナトリウム塩
50=超遠心分離により得られた平均粒子半径
Saatlatex=イソブチルメタクリレート、MMAおよびエチレングリコールジメタクリレート(47.5:47.5:5.0)からなり、固体含量20質量%および粒子半径r50約0.2μmを有する種ラテックス。製造はEP0528196A1中に記載されている(記載した例においてはポリマーBの分散液I)。
【0048】
Matrix=熱可塑性マトリックスおよびその中に分散した靭性の相からなる耐衝撃性成形材料。製造はEP0528196A1中に記載されている(記載した例中のポリマーA)。
【0049】
分散液の製造
80℃で(容器の内部温度の制御)、撹拌下に脱イオン水を重合容器中に予め装入し、記載した量の種ラテックスと並びに水中に溶かしたAPSと混合する。5分後に、記載した組成でモノマーエマルジョンの供給を開始し、かつ10分間実施する。次いで、次の10分間中断する(間隔供給)。引き続き、残りのエマルジョンを最初の供給間隔におけると同様の一定の供給速度で4時間以内に反応器中に配量する。供給終了の120分後に、35℃に冷却し、DIN100過篩布を介して濾過する。
【0050】
【表1】

【0051】
特性
懸濁液を凍結凝集し、かつ乾燥する。引き続き、凝集体を耐衝撃性の成形材料と50%の濃度に配合する。この配合物を、艶消し剤15質量%を含有するように、もう一回相応する量と混合し(顆粒の乾燥混合)、層厚約70μmのフィルムを押出成形する。
【0052】
下の表中には、フィルムに関して測定した粗さ深さ測定の他に、曇り度も示した。層厚70μmの試験体における曇り度は、主に表面散乱に起因するので、この曇り度は表面粗さの良好なインジケーターである。
【0053】
【表2】

【0054】
粗さ深さ測定も曇り度測定も艶消し剤中でのコ−アクリレート含量の明らかな効果を証明している。ほぼ同じに維持されている粒子の半径および成形材料中への同じ使用量において、コ−アクリレート成分含量の上昇と共に粗さは明らかに上昇する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱可塑性プラスチックからなるマトリックス50〜99.9質量%、および
b)マトリックス中に分布する(メタ)アクリレートコポリマーの形の艶消し剤0.1〜50質量%を含有する成形材料において、この艶消し剤が次のモノマー:
b1)メチルメタクリレート50〜95質量%
b2)C〜C−アルキルアクリレート5〜50質量%
b3)エチレン系不飽和ラジカル重合性基を2つ以上有する、架橋するモノマーおよび/またはグラフト架橋剤0.01〜<0.5質量%
b4)その他の、1種以上の架橋しないエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー0〜20質量%
から製造されている(メタ)アクリレートコポリマーであり、
この際、成分b1)およびb2)および場合によりb3)および/またはb4)は合計して100質量%であり、かつこの艶消し剤はガラス転移温度Tmg少なくとも20℃を有することを特徴とする、成形材料。
【請求項2】
マトリックスa)がポリメチルメタクリレート、耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル酸エステル/スチレン/アクリロニトリル−グラフトコポリマー(ASA)、スチレン−アクリル−ニトリル(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリブチレンテレフタレート−プラスチック(PBT)、ポリ塩化ビニル−プラスチック(PVC)、ポリオレフィン−プラスチック、シクロオレフィンコポリマー(COC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)または種々の熱可塑性プラスチックの混合物(ブレンド)からなる、請求項1記載の成形材料。
【請求項3】
マトリックスa)が、2層または3層シェルに構成されている耐衝撃性改良剤を含有する、耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレートである、請求項1または2記載の成形材料。
【請求項4】
マトリックスa)が、
a1)70℃を越えるガラス転移温度Tmgを有し、
a11)メチルメタクリレート80〜100質量%(1aに対して)、および
a12)その他の、1種以上のエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー0〜20質量%
から構成された凝集性の硬質相10〜95質量%、および
a2)−10℃未満のガラス転移温度Tmgを有し、
a21)C〜C10−アルキルアクリレート50〜99.5質量%(a2)に対して)、
a22)エチレン系不飽和ラジカル重合性基2つ以上を有する、架橋するモノマー0.5〜5質量%、および
a23)場合により、その他のエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー
から構成された、前記硬質相中有に分布する靭性の相90〜5質量%
からなる耐衝撃性改良ポリマーであり、その際硬質相a1)の少なくとも15質量%が靭性の相a2)と共有結合している、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項5】
艶消し剤b)が、
メチルメタクリレート50〜90質量%、
エチルアクリレートおよび/またはブチルアクリレート10〜50質量%
エチレン系不飽和ラジカル重合性基2つ以上を有する、架橋するモノマーおよび/またはグラフト架橋剤0.01〜5質量%
からなるコポリマーである、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項6】
架橋するモノマーとしてエチレングリコールジメタクリレートを使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項7】
艶消し剤b)が乳化重合により製造されていて、マトリックス中に混和する前に平均粒子半径を100nm〜10μmの範囲に有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項8】
この成形材料から製造した試験体がDIN4768による粗度をR=0.1〜0.5μm、R=0.5〜5.0μmおよびRmax=0.5〜5.0μmの範囲に有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の成形材料を製造する方法において、公知法で、マトリックスおよび艶消し剤を溶融状態で、押出機中で混和し、押出物を取出し、冷却し、かつ引き続き造粒する、成形材料の製法。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載の成形材料から公知法で押出成形または射出成形することにより製造可能な成形体。
【請求項11】
フィルム、平板、波形板、マルチウェブサンドイッチパネル、管、ロッド、または任意に成型した射出成形部品である、請求項10記載の成形体。
【請求項12】
他の、場合によりプリントされたフィルム材料とのコラミネーション、プラスチック材料での裏面射出成形、プラスチックフォームでの裏面フォーミング、押出ラミネーションまたは任意の支持体のラミネーションのための、請求項1から8までのいずれか1項記載の成形材料から製造されたフィルムの使用。

【公表番号】特表2007−513221(P2007−513221A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540194(P2006−540194)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010299
【国際公開番号】WO2005/052038
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH 
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】