説明

芝刈機

【課題】
芝刈り作業時の刈り取った芝の排出性を向上させたコンパクトな芝刈機を提供することである。
【解決手段】
解決手段は、本体の斜め後方に伸びたハンドルを有し、ハンドルを保持してモータ軸の回転に連動した回転刃によって芝の刈込みを行う芝刈機において、本体の後輪の上に緩やかな斜面と急な斜面を有するダストカバを設け、後輪をダストカバの急な斜面の裏面に前輪とのホイールベースが短くなるように回転刃の方向に近づけて取付け、刈った芝がモータと回転刃の間に介在しているファンによって生じたファン風がダストカバの緩やかな傾斜の沿って排出口から本体後方の集草バッグに流れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝の刈込みを行う芝刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、芝の刈込を行う芝刈機としては駆動源として電動機や内燃機関を用いたものが広く使われており、刈込手段としてはロータリ刃やリール刃を備えたものがある。図5は一般的な芝刈機とその使い方を説明するための図である。図5において、芝刈機1は、ハウジング2内部に駆動源としての図示しないモータ7を搭載し、ハウジング2底部ではカッタ8がモータ7によって回転可能に取り付けられている。ハウジング2はモータを収容すると共に、その周囲に車輪13やハンドル3、集草バッグ16が取り付けられている。作業者は本体2の斜め後方上方に延びたハンドル3を把持した状態でセフティロックスイッチ4を押しながらメインスイッチ5を入れることにより、電源コード6を介してモータ7に電力が供給され、モータ軸に連動してカッタ8が回転し、その状態でハンドルを進行方向に押すことで、芝刈機本体が走行し、芝の刈り込みが行えるようになっている(以下、本明細書は、芝刈機本体に対して作業者がいる位置を後方、その反対を前方、前方と後方に渡る進行方向に対して鉛直な方向を左右方向と定義して説明する。また、使用形態において地面30の方向を下方、その反対を上方とする)。
【0003】
芝の刈り込み時において芝刈機1内部では、前方への走行に伴ってハウジング2内に侵入した芝草が、回転するカッタ8により刈り取られ、刈り取られた芝草は、モータ軸7aに取り付けられた集草用ファン14の作り出すファン風bに乗り、ハウジング内に形成された風洞20内を運ばれ、吐出口2aに取り付けた集草用バッグ16内に集められる構成となっている。芝草が集められた集草用バッグ16はハンドル21を持ってハウジング2から取り外すことが可能となっており、芝草を取り出すことができる。
【0004】
このような芝刈機においては、刈り取った芝草をファン風の流れに乗せて回転刃より上方に設けられた集草用バッグに集める必要があり、ファン風を案内するために吐出口に向かって上方に傾斜した傾斜面が設けられている。
【0005】
【特許文献1】実公平1−167832
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような芝刈機において、傾斜面の角度を急にしてしまうと、ファン風が傾斜面に衝突して勢いを損ねてしまうことがあり、そのため刈り取った芝草を滑らかに上方に案内するためには、傾斜面の角度を底面に対してなだらかにする必要があった。しかしながら、緩やかな傾斜面によって急な傾斜面と同じ高さまでファン風を案内しようとすると、傾斜部全体が前後方向に延びることによる本体の大型化、質量が増加するなどの問題や、また、芝刈機の後輪の位置は傾斜部より後方に配置する必要があるため、上記のような構成の場合必然的に後輪の位置が後ろに下がることで、前輪軸と後輪軸間のホイールベースが長くなってしまい、取り回しが不便になるという問題があった。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、芝刈り作業時の刈り取った芝の集草率を向上させたコンパクトな芝刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
【0009】
本発明の一つの特徴によれば、本発明は、本体の吐出部付近に傾斜角度の異なる複数の傾斜面を持つことで達成される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び請求項2の発明によれば、傾斜部は傾斜角度の異なる複数の傾斜面を持っており、傾斜部の急な斜面によって底面部に設けた後輪は回転刃の位置に近づけられるのでホイールベースを短くでき、また、傾斜部の緩やかな斜面によって、刈込まれた芝がスムーズに排出口から集草バッグに送ることが出来るようになり、芝の集草率を向上させたコンパクトな芝刈機を提供できる。
【0011】
請求項3の発明によれば、傾斜部の回転刃側端部の一部が、回転刃に沿った形状となっていることにより、回転刃を避けながら傾斜部全体を芝刈機の進行方向において回転刃の中心に近づけて配置することができるので、芝刈機の全長を短くすることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、ファン風の送風路を形成する本体の外壁と連続的に接続される側において、最も傾斜角度を小さくしたことによって、芝草を載せたファン風が連続的に傾斜面に接続されるとともに、緩やかに上方に案内することができ、集草率を向上することができる。
【0013】
請求項5の発明によれば、傾斜部が湾曲する傾斜面を有することによりファン風を案内する送風路としての機能を損なうことなく緩やかな傾斜面の周囲において急激に傾斜角度が変化することを防ぎながら傾斜角度を接続することが可能となる。
【0014】
請求項6の発明によれば、傾斜部は、芝刈機の本体に対して着脱可能に構成されていることにより、ハウジング及び傾斜部の成型が容易となり、また、芝刈機の組立性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の芝刈機の一実施形態を図1〜4に従い説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る、本体の部分断面側面図、図2はダストカバーの斜視図、図3はダストカバーの断面図、図4はダストカバーとカッタの関係を表す該略図である。
【0017】
芝刈機の基本的な動作については図5を用いて先述したものと同一のため省略する。
【0018】
図1に示す断面図を用いて、芝刈機1の内部構造を説明する。芝刈機1のハウジング2の内部には、上板2bに設けられた円筒状のモータケース2cにモータ7が収容され、モータケース2cには上板2bの上部空間からハウジング内部へ向かうモータ3を冷却する為の送風路が形成されている。モータ7はモータ軸7aが地面と垂直になるよう配置されている。
【0019】
モータ軸3aはハウジング下端付近まで延び、モータ軸3の下方には円盤状のカッタ7が地面と平行に回転可能になるよう取り付けられている。また、同じモータ軸3aにはカッタ7の上に密接して重なるように集草用ファン4が取り付けられている。
【0020】
ハウジング2の進行方向前方側に取り付けられた前輪13aの左右側に挟まれた下端には、芝草がハウジング内部に進入するための開口部が設けられ、カッタ7の回転面より高い位置まで開口されている。ハウジング2の底側には、底面側からみてカッタ8の吐出口2a側を覆うように底板17が取り付けられており、本体1の進行方向側にカッタ8が一部露出するようになっている。前輪13aの左右側を繋ぐ車軸はハウジング2に対して取り付け位置を変更することができるようになっており、ハウジング2に取り付けられたカッタ7の地面からの回転面の高さが変更でき、刈り取る芝の長さを調節することが可能となる。
【0021】
ハウジング2は、内部にモータケース2cの周囲を通過した集草用ファン4からの空気流が通過する空間である風洞20を構成し、集草用バッグ16が接続される吐出部2aへと繋がっている。風洞20から吐出口2aへと接続される通路は、通路の底部が、着脱可能に設けられた傾斜部としてのダストカバー11によって構成され、通路上部は上板2aによって上方向に湾曲する曲線により形成されている。ダストカバー11は上方に向かって傾斜する傾斜面9、10、12を有しており、傾斜はハウジング2の内側に突出して設けられている。また、この傾斜によればハウジング2の外側からみてこの傾斜面付近は凹形状となっており、幅広形状の後輪13bの一部が収容するように設けられている。
【0022】
図2と図3において、ダストカバー11の緩やかな傾斜面9はカッタ8の側部側に回りこむように形成されており、進行方向後方の吐出口9に向かって左右方向に徐々に幅を拡げながら上方に向かっている。傾斜面9は進行方向前方側において、側部側の幅の狭い傾斜開始部でカッタ8より低い高さに位置にて底部と接続され、左右方向の中心付近で接続用の傾斜面12を介して風洞20の底部及び急な傾斜面10bと接続されている。
【0023】
接続用の傾斜面12は、湾曲した面や傾斜角度の異なる複数の面から構成されている。ダストカバー11にはねじやボルトなどによってハウジング2に取り付けるための取付孔22が設けられている。傾斜面の上方には傾斜面の上端から段差により若干下がった先に平坦部18が形成されており、集草用バッグ16の取付部材が接続される。また前方側には底板17の一部を支持する突出部23が設けられている。ダストカバー11は一体成型により容易に成型され、集草用ファン14によって発生したファン風bは緩やかな傾斜面9に沿って上方へと案内される。
【0024】
図4において、ダストカバー11とカッタ8との関係を説明すると、ダストカバー11の緩やかな傾斜面9と底面とを接続する、接続用の傾斜面12の傾斜面端部24はカッタ8に当たらないよう回転半径に沿って、カッタ8の半径方向に一定の間隔を保ちながら形成されており、本実施形態においては円弧形状をしている。カッタ8の回転中心と取付孔の中心点を通る芝刈機の前後方向において、緩やかな傾斜部9及び接続用の傾斜部12の一部は回転刃の最外径より回転中心に近い側にあり、即ち緩やかな傾斜面9及び接続用の傾斜面12の前方側とカッタ8の後方側は、芝刈機の進行方向にオーバーラップして設けられている。
【0025】
ダストカバー11は、風洞20の外壁を集草用ファン14の回転方向に沿って進行した側において、最も傾斜が緩やかな傾斜面9が形成されており、時計回りに回転する集草用ファン14によって送られるファン風bは、風洞20を形成するハウジング2の外壁に案内されて時計回りに回転すると共に、芝刈機1の後方側まで送られた後、緩やかな傾斜面9と接続用の傾斜面12に案内されて拡がるような風を形成しながら吐出部2aを通過し、ファン風に載せた芝草を集草用バッグ16へと運ぶ。
【0026】
このような構成によれば、ファン風bがメインで通過する芝刈機1の側部側の送風路を緩やかな傾斜面9で構成するとともに、カッタ8からの距離が近くなる左右方向の中央部付近を急な斜面12として、緩やかな傾斜面9の最先端部より後方に下げる構成にしたことにより、傾斜面全体をカッタ8に近づけることが可能となり、集草率が高く、コンパクトな芝刈機を提供することができる。
【0027】
また、複数の角度を持った傾斜面を有するダストカバー11が本体2の後輪12の上に設けられていることで、ファン風案内用の傾斜面の傾斜角度を確保しながら、ダストカバー11の傾斜面の裏面に出来るだけ後輪13bと前輪13aとのホイールベースaが短くなるように回転刃8の方向に近づけて取付けることが可能となる。
【0028】
また、芝刈機1の進行方向において、傾斜面とカッタ8が前後にオーバーラップして設けられていることで、本体の進行方向における全長を短くすることが可能となる。
【0029】
また、ダストカバー11のカッタ8側の傾斜面端部24をカッタ8に沿った形状としたことにより、ダストカバー11の傾斜面をカッタ8に近づけて配置することが可能となる。
【0030】
また、ファン風bの送風路としての風洞20を形成する本体ハウジング2の外壁と連続的に接続される側において、最も傾斜角度を小さくしたことによって、芝草を載せたファン風bが連続的に傾斜面に接続されるとともに、緩やかに上方に案内することができ、集草率を向上することができる。
【0031】
また、接続用の傾斜面12が湾曲した傾斜面や複数の傾斜角度を持つ傾斜面からなることにより緩やかな傾斜面9の周囲において急激に傾斜角度が変化することを防ぐと共に、ファン風bを案内する送風路としての機能を果たすことが可能となる。
【0032】
また、ダストカバー11をハウジング2に対して着脱可能に構成したことにより、ダストカバー11及びハウジング2の成型や芝刈機1の組立が容易となる。
【0033】
前記のように構成された芝刈機1で刈った芝はモータ7と回転刃8の間に介在しているファン14によって生じた風bがダストカバー11の緩やかな傾斜9に沿って排出口15から本体2後方の集草バッグ16に流れることで集められる。
【0034】
なお、ダストカバー11のカッタ8側の傾斜面端部24は、実施例では円弧状に構成したが、カッタ8に沿っていれば多角形状によっても同様の効果を得られる。
【0035】
また、ダストカバー11は、作業中に脱落することがない方法であればハウジング2にどのようにして取り付いても良い。また、本実施形態では傾斜面は本体ハウジング2とは別体のダストカバー11によって構成されているが、本体ハウジング2自体に一体で設けられている構成であっても良く、もしくは、傾斜部ごとに別体の部品からダストカバー11が構成されていても、上記実施形態と同様の集草率の向上、芝刈機のコンパクト化が期待できる。
【0036】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本願では手押し式の電動式芝刈機について説明したが、内燃機関を用いてもよく、また自走式のものにおいても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る本体の部分断面側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るダストカバーの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るダストカバーの断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るダストカバーとカッタの関係を表す該略図である。
【図5】一般的な芝刈機とその使い方を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
1 芝刈機 2 ハウジング 2a 吐出口 2b 上板 2c モータケース 3 ハンドル 4 セフティロックスイッチ 5 メインスイッチ 6 電源コード 7 モータ 7a モータ軸 8 回転刃 9 緩やかな斜面 10 急な斜面 11 ダストカバー 12 接続用の斜面 13a 前輪 13b 後輪 14 集草用ファン 16 集草バッグ 17 底板 18 平坦部 19 取付部材 20 風洞 21 ハンドル 22 取付穴 23 突出部 24 傾斜面端部 30 地面 a ホイールベース長 b ファン風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集草用のバッグが接続可能な吐出部を有する本体と、該本体に収容された駆動源と、該駆動源の回転に連動して回転する回転刃及び集草用ファンとを有し、前記集草用ファンは回転刃によって刈り取られた刈草を集草用バッグまで運ぶファン風を作り出し、前記本体の吐出部付近には前記ファン風を上方に案内する傾斜部が設けられている芝刈機において、
前記傾斜部は傾斜角度の異なる複数の傾斜面を持つことを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記傾斜部が、前記回転刃の回転中心と前記吐出部の中心点を通る方向において、前記回転刃の最外径より前記駆動源に近い側にあることを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記傾斜部の前記回転刃側端部の一部が、前記回転刃に沿った形状をしていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記ファン風の送風路を形成する前記本体の外壁と連続的に接続される側において、最も傾斜角度が小さいことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記傾斜部は、湾曲する傾斜面を持つことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記傾斜部は、前記本体に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の芝刈機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate