芝地用穿孔装置および芝地の穿孔方法
【課題】芝地に対して垂直な通気孔を予め定めた所定の位置に形成することができ、芝生保護マットが用いられた芝地にも使用可能な自走式の芝地用穿孔装置を提供すること。
【解決手段】芝地に突き刺されることにより該芝地を穿孔するタイン42を有する装置本体10を走行させるモータ20と、前記芝地に対して略垂直な方向に進退動する出力軸401を有し、該出力軸401の先端に前記タイン42が固定されたエアシリンダ40と、前記本体10を所定位置まで走行させる度に、一旦前記本体10の走行を停止させ、前記エアシリンダ40の出力軸401を進退動させた後、再び前記本体10を走行させるように前記モータ20および前記エアシリンダ40を制御する制御部12とを備える。
【解決手段】芝地に突き刺されることにより該芝地を穿孔するタイン42を有する装置本体10を走行させるモータ20と、前記芝地に対して略垂直な方向に進退動する出力軸401を有し、該出力軸401の先端に前記タイン42が固定されたエアシリンダ40と、前記本体10を所定位置まで走行させる度に、一旦前記本体10の走行を停止させ、前記エアシリンダ40の出力軸401を進退動させた後、再び前記本体10を走行させるように前記モータ20および前記エアシリンダ40を制御する制御部12とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝地用穿孔装置および芝地の穿孔方法に関し、さらに詳しくは、芝地を走行させながらその芝地に通気孔等を形成する芝地用穿孔装置、およびこのような自走式の芝生穿孔装置を用いた芝地の穿孔方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、芝生が植えられた芝地では、定期的に多数の孔を形成することによって通気性を向上させ、芝生の成長を促すことが行われている(以下、この孔を通気孔と称する。以下の説明において、通気孔には、芝地の透水性を高める目的や芝生の根切りなど、通気性を高める以外の目的で芝地に形成する孔を含むものとする。)。このような通気孔を形成する装置としては、例えば、特許文献1に記載されるものが知られている。特許文献1に記載の芝地用の穿孔装置は、外周面に多数のタイン(種々の形状のものが知られている。例えば、特許文献2参照。)が設けられたドラムを回転させながら装置を走行させることで、タインが芝地に突き刺され、芝地に通気孔が形成されるというものである。
【0003】
ところで、このような芝地の多くは公園やゴルフ場といった場所に形成されるものであるが、近年では、地球温暖化防止や景観向上等のため、駐車場にも芝を植え込み、緑化を図ろうとする試みがなされている。このように駐車場に芝を植え込む場合には、自動車タイヤの踏圧によって芝生が痛んでしまわないようにするため、芝生保護マットが敷設される(例えば、特許文献3参照。)。芝生保護マットは、一般的に、芝が植えられる客土が保持される客土保持部と、その客土保持部に保持された客土よりも高い支持突起とが交互に形成されてなる。つまり、このような芝生保護マットを用いれば、駐車場内に進入した自動車は支持突起によって支えられ、芝生には直接自動車の踏圧が掛からなくなるため、自動車の乗り入れにも耐えうる芝地を形成することができる。
【0004】
しかし、このような芝生保護マットが用いられた芝地を管理するに際し、以下の問題があった。すなわち、芝生保護マットが敷設された芝地に上述のような通気孔を形成しようとする場合、芝生保護マットの支持突起を避け、芝地が形成された客土保持部にのみタインが突き刺さるようにしなければならない。ところが、特許文献1のように複数のタインが設けられたドラムを回転させて芝地を穿孔する装置は、おおよそ等間隔に通気孔を形成することができるものの、予め定めた位置に通気孔を形成することができるものではない。つまり、芝生保護マットの支持突起を避けながら客土保持部にのみタインを突き刺すことは不可能である。したがって、芝生保護マットが敷設された芝地に通気孔を形成する場合、現状では人力でタインを突き刺す装置(例えば、特許文献4参照。)等を使用するしかなく、時間と労力のかかる作業となっていた。
【0005】
また、特許文献1のような、回転するドラムに固定されたタインが芝地に突き刺さる構成である場合、このドラムに固定されたタインは、芝地に対して斜めに突き刺さって、土壌を抉るようにして芝地から抜かれることになるため、通気孔が必要以上に大きくなって芝地が荒れてしまうおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−66103号公報
【特許文献2】特開2007−49923号公報
【特許文献3】特開2008−99564号公報
【特許文献4】特開2006−262738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、芝地に対して垂直な通気孔を予め定めた所定の位置に形成することができ、芝生保護マットが用いられた芝地の場合には、通気孔を形成することができない場所を避けて通気孔を形成することができる自走式の芝地用穿孔装置を提供することにある。また、このような自走式の芝地用穿孔装置を用いた芝地の穿孔方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る芝地用穿孔装置は、芝地に突き刺すことにより該芝地に穿孔するタインを備える装置本体を該芝地面に沿って走行させる走行手段と、該芝地面に対して略垂直方向に前記タインを進退動させるアクチュエータと、前記装置本体を所定位置まで走行させる走行動作と該走行動作後に停止させる停止動作とを繰り返し、前記装置本体の停止中に前記タインを前記芝地面に向けて進退動させるように前記アクチュエータを制御する制御手段とを備えることを要旨とするものである。
【0009】
この場合、前記走行手段は、前記芝地に敷設されるレール上を転動する車輪を有し、該車輪がレール上を転動することにより前記レール上を前記装置本体が走行するように構成すればよい。
【0010】
さらに好ましくは、前記芝地に敷設されるレールには、そのレール方向に沿って複数の位置規制部が設けられており、前記車輪の外周面には、前記装置本体が前記所定位置まで走行する度に、前記レールに形成された一の位置規制部に順次係合される係合部が設けられていればよい。
【0011】
さらに、上記構成に加え、前記制御手段による前記アクチュエータの駆動を周期的に禁止する穿孔禁止手段が設けられていればよい。
【0012】
そしてこの場合、この穿孔禁止手段は、前記レールに設けられた当接部に当接してオン状態となるリミットスイッチを有し、該リミットスイッチがオン状態となることにより前記アクチュエータの駆動が禁止されるようにすればよい。
【0013】
また、前記アクチュエータが複数備えられる場合には、前記制御手段は、前記装置本体の走行方向と直交する方向における前記装置本体の中心軸に対して対称の位置関係にある前記アクチュエータを順次駆動させるように構成されていればよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために本発明に係る芝地の穿孔方法は、芝地に穿孔するタインを装置本体に備えた芝地用穿孔装置を自走で所定位置まで走行させ、その度に前記芝地用穿孔装置の走行を一旦停止させた後、前記タインを芝地に対して略垂直に突き刺して穿孔し、しかる後、前記芝地用穿孔装置を次の所定位置まで走行させるようにしたことを要旨とするものである。
【0015】
この場合、前記芝地用穿孔装置に走行用の車輪を設け、前記芝地用穿孔装置が該車輪の転動によって前記芝地上に敷設されるレール上を走行するようにすればよい。
【0016】
また、前記芝地用穿孔装置は、前記芝地用穿孔装置が前記所定位置まで走行する度に、前記レールのレール方向に沿って設けた一の位置規制部に前記車輪の外周面に設けた一の係合部が順次係合するようにすればよい。
【0017】
さらに、前記芝地用穿孔装置に設けられた穿孔禁止手段によって前記タインの動作を周期的に禁止するようにすればよい。
【0018】
そして、前記芝地用穿孔装置に設けられた穿孔禁止手段によって前記タインによる穿孔動作を周期的に禁止するようにすればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る芝地用穿孔装置によれば、装置を所定の位置まで走行させる度に、アクチュエータの駆動によってタインが芝地に突き刺されるように制御される構成であるため、予め設定した所定位置に通気孔を形成することができる。したがって、上述したような芝生保護マットが設けられた芝地であっても、芝生を保護するための支持突起を避け、客土保持部に形成された芝地に通気孔を自動で形成することができる。また、芝地に対して略垂直に進退動するタインが芝地に突き刺される際には、装置の走行が停止されているため、芝地に対して垂直な通気孔を形成することができ、通気孔の形成作業によって逆に芝地が荒れてしまうなどの不具合の発生が防止される。
【0020】
そして、芝地上に敷設されたレールに案内される車輪を設け、レール上を車輪が転動することによって装置が走行するように構成すれば、装置の踏圧がレールによって分散されるため、芝生に車輪痕が形成されるなど、芝生の損傷が防止される。また、レールによって走行中における装置の上下動が抑制されるため、通気孔の深さを一定にすることができる。さらに、レールに案内される車輪によって装置の走行が安定するため、装置を確実に所定の経路に沿って走行させることができ、容易に所望の範囲に通気孔を形成することができる。また、芝生保護マットを用いた芝地では、芝生を保護するための支持突起による凹凸があるが、このようなレール上を回転する車輪を設けることによって、その凹凸の影響を受けずに装置をスムーズに走行させることができる。
【0021】
この場合、装置が所定位置まで走行した際に、レールに設けた位置規制部に、車輪に形成された係合部が係合するようにすれば、アクチュエータを動作させて通気孔を形成する時における装置の位置ずれが防止され、より精度良く所定の位置に通気孔を形成することができる。
【0022】
また、装置が所定位置まで走行した場合であっても、アクチュエータの駆動、すなわち芝地への穿孔を周期的に禁止する穿孔禁止手段を設けていれば、装置の走行方向に向かって、周期的(等間隔)に通気孔を形成することができない障害物が存在する場合に有効であり、装置の適用範囲が広がる。具体的には、交互に形成された客土保持部および支持突起を囲むように形成された側壁を有する芝生保護ユニット(上記特許文献3参照。)が連結された芝生保護マット上に施工対象となる芝地が形成されている場合、芝生保護ユニット同士の連結部に存在する側壁を避けて通気孔を形成しなければならないため有効である。つまり、走行方向に向かって周期的に存在する側壁上にタインが位置するときに、穿孔禁止手段によってアクチュエータが駆動しないようにすることができるため、タインが側壁に突き刺されることによるタインや側壁の損傷が防止される。
【0023】
この場合、このような穿孔禁止手段をリミットスイッチで構成し、このリミットスイッチが、レールに設けられた当接部に当接することにより周期的にオン状態となるように構成すれば、より簡易な構成で、タインや側壁の損傷を防止することができる。
【0024】
そして、芝地用穿孔装置が複数のアクチュエータを備え、装置構成上、一度に全てのアクチュエータを駆動させることができない場合には、複数回に分けてアクチュエータを駆動させるようにすればよい。ただし、駆動されるアクチュエータの位置関係が、芝地用穿孔装置の走行方向と直交する方向における本体の中心軸に対して対称となるようにすれば、装置の横転等の防止に効果的である。つまり、タインが芝地に突き刺された際に装置の本体が受ける反作用力が、本体の中心軸に対して偏らないようにすることにより、装置が横転してしまうおそれを低減することができる。
【0025】
また、本発明に係る芝地の穿孔方法によれば、装置を所定の位置まで走行させる度に、タインが芝地に突き刺される構成であるため、予め設定した所定位置に通気孔を形成することができる。したがって、芝生保護マットが設けられた芝地であっても、芝生を保護するための支持突起を避け、確実に客土保持部に通気孔を形成することができる。また、芝地に対して垂直に進退動するタインが芝地に突き刺される際には、装置の走行が停止されているため、芝地に対して垂直な通気孔を形成することができ、通気孔の形成によって逆に芝地が荒れてしまうなどの不具合の発生が防止される。
【0026】
そして、芝地上にレールを敷設し、そのレール上を走行用の車輪が設けられた装置を走行させるようにすることにより、装置の踏圧がレールによって分散されるため、芝生に車輪痕が形成されるなど、芝生の損傷が防止される。また、レールによって走行中における装置の上下動が抑制されるため、通気孔の深さを一定にすることができる。さらに、敷設したレールによって装置の走行が安定するため、装置を確実に所定の経路に沿って走行させることができ、容易に所望の範囲に通気孔を形成することができる。また、芝生保護マットを用いた芝地では、芝生を保護するための支持突起による凹凸があるが、このような車輪を案内するレールを設けることによって、その凹凸の影響を受けずに装置を走行させることができる。
【0027】
この場合、装置が所定位置まで走行した際に、車輪に形成された係合部が係合するような位置規制部をレールに設けていれば、通気孔を形成する時における装置の位置ずれが防止され、確実に所定の位置に通気孔を形成することができる。
【0028】
また、装置が所定位置まで走行した場合であっても、タインの動作、すなわち芝地への穿孔を周期的に禁止する穿孔禁止手段を設けていれば、装置の走行方向に向かって周期的(等間隔)に通気孔を形成することができない障害物が存在する場合に有効である。具体的には、交互に形成された客土保持部および支持突起を囲むように形成された側壁を有する芝生保護ユニットが連結された芝生保護マット上に施工対象となる芝地が形成されている場合、芝生保護ユニット同士の連結部に存在する側壁を避けて通気孔を形成しなければならないため有効である。つまり、装置の走行方向に向かって周期的に存在する側壁上にタインが位置するときに、穿孔禁止手段によってタインが動作しないようにできるため、タインが側壁に突き刺されることによるタインや側壁の損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る芝地用穿孔装置を側面から見た概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る芝地用穿孔装置を前面から見た概略図である。
【図3】図1および図2に示した芝地用穿孔装置が備える被検出部の構成を説明するための概略図である。
【図4】図1および図2に示した芝地用穿孔装置が備える駆動輪の構成を説明するための概略図であり、併せて図3に示した被検出部を点線で示している。
【図5】図1および図2に示した芝地用穿孔装置の動作フローを示したフローチャートである。
【図6】図1および図2に示した芝地用穿孔装置の繰り返し動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】側壁を有する芝生保護マットの一例を示した平面図である。
【図8】図7に示した芝生保護マットを構成する芝生保護ユニットの外観斜視図である。
【図9】穿孔禁止スイッチが設けられた芝地用穿孔装置の外観の概略図である。
【図10】レールに設けられた当接部と穿孔禁止スイッチの位置関係を説明するための概略図である。
【図11】図9に示した芝地用穿孔装置の動作フローを示したフローチャートである。
【図12】図9に示した芝地用穿孔装置の繰り返し動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る芝地用穿孔装置について説明する。まず、図1および図2を参照して本発明の一実施形態に係る芝地用穿孔装置1の機械的構成について説明する。図1は、芝地用穿孔装置1を側面から見た概略図であり、一部破断させて内部の構成部品の概略と、電気配線およびエア配管を併せて示している。図2は、芝地用穿孔装置1を前面から見た概略図であり、一部破断させて駆動軸22に固定された構成部品の概略を併せて示している。なお、以下の説明では、図1の矢印で示した芝地用穿孔装置1(本体10)の走行方向側を前とし、その反対を後とする。また、装置の走行方向と直交する方向を幅方向とする。
【0031】
本実施形態に係る芝地用穿孔装置1は、自動で走行する自走式の芝地用穿孔装置であって、装置を走行させる走行手段と、芝地に通気孔を形成するためのアクチュエータである複数(本実施形態では七つ)のエアシリンダ40を備え、走行手段は、駆動源であるモータ20、およびこのモータ20によって回転させられる駆動輪30(本発明における車輪に相当する。)を備える。
【0032】
走行手段が有するモータ20は、本体10の後側に取り付けられた駆動軸22を回転させる装置である。駆動軸22の両端には、本体10を走行させるための駆動輪30が固定されている。本実施形態では、モータ20の本体部201が駆動軸22に対して直交させて取り付けられ、この本体部201がいわゆる直交型のギヤヘッド202を介して駆動軸22と連結されている。
【0033】
図3は、図2におけるA−A線断面の概略を示したものである。図2および図3に示すように、駆動軸22には、一方の駆動輪30が固定された近傍に、花びら状に円周上等間隔に突出した被検出突起241を有する被検出部24が固定されている。すなわち、被検出部24と駆動輪30とは、同速度で回転する。この被検出部24における各被検出突起241の間の角度(隣り合う位置検出突起241の中心と被検出部241の中心とを結んでできる扇形の中心角の角度をいう。図3においてθ1で表す。)は、芝地に形成しようとする通気孔の間隔に応じて設定されている。すなわち、この角度を調節することにより、芝地に形成しようとする通気孔の間隔を適宜調節することができる。
【0034】
そして、被検出部24の径方向外側には、装置の本体10に固定された近接スイッチ26が取り付けられている。近接スイッチ26は、検出方向を被検出部24(被検出突起241)の方向に向けて取り付けられており、駆動軸22の回転によって検出範囲内に入った被検出突起241を検出する。つまり、駆動軸22の回転に伴って回転する被検出突起241の位置を近接スイッチ26によって検出することにより、駆動輪30の回転量、すなわち芝地用穿孔装置1の走行距離を所定の間隔で検出することができる。
【0035】
図4は、駆動輪30を拡大した概略図である。なお、図4では、駆動輪30と被検出部24の位置関係を示すため、駆動輪30と同軸上に配設される上記被検出部24を点線で示している。図示されるように、駆動輪30の外周面には、円周上等間隔に突出した位置規制突起301(本発明における係合部に相当する。)が形成されている。各位置規制突起301の間の角度(隣り合う位置規制突起301の中心と駆動輪30の中心とを結んで形成される扇形の中心角の角度をいう。図4においてθ2で表す。)は、図3で示した被検出部24における各被検出突起241の間の角度θ1と同一である。本実施形態では、被検出突起241と位置規制突起301は同位相で回転し、芝地に形成しようとする通気孔の間隔を踏まえ、θ1およびθ2は共に45度に設定されている。被検出突起241と位置規制突起301は、駆動輪30が回転して、位置規制突起301のうちの一つが最下に位置したとき、近接スイッチ26が被検出突起241のうちの一つを検知するような位置関係となる。例えば、図4では、Pで示す位置規制突起301が最下に位置したとき、Qで示す被検出突起241が近接スイッチ26によって検知される。
【0036】
また、各位置規制突起301の間における駆動輪30の円弧の長さ(隣り合う位置規制突起301の中心と駆動輪30の中心とを結んで形成される扇形の円弧の長さをいう。図4においてL1(太線)で表す。)は、装置の走行方向における芝地に形成しようとする通気孔の間隔と同一である。
【0037】
このような構成の駆動輪30に加え、本体10の前側には、従動軸52の両端に固定された従動輪50が取り付けられている。従動輪50は、モータなどの駆動源によって回転させられる車輪ではなく、駆動輪30の回転によって装置が前進することに伴い従動的に回転する車輪である。
【0038】
エアシリンダ40は、芝地に通気孔を形成するタイン42を進退動させるアクチュエータである。本実施形態では、本体10の前面に7つのエアシリンダ40が設けられている。それぞれのエアシリンダ40は、出力軸401の進退動する方向が地面(芝地)に対して垂直になるように取り付けられている。また、各出力軸401の間隔は、幅方向における形成しようとする通気孔の間隔と同一である。そして、出力軸401の先端には、出力軸401が前進すると芝地に突き刺されるようにタイン42が固定されている。また、各エアシリンダ40には、出力軸401の前進端位置および後退端位置を検出するためのマグネットスイッチ401aおよび401bが取り付けられている。このエアシリンダ40およびタイン42の構成については、特に限定されるものではない。形成しようとする通気孔の大きさや深さ等に応じて、シリンダストロークやタインの形状を適宜選定すればよい。
【0039】
また、本体10には、エアシリンダ40の駆動用の圧縮空気を供給するエアコンプレッサ56が固定されている。このエアコンプレッサ56は、同じく本体10に固定された発電機54から駆動用の電力を得ている。エアコンプレッサ56によって圧縮された空気は、エアタンク57に貯留される。各エアシリンダ40(シリンダに設けられた圧縮空気供給用のポート(出力軸401を前進させる前進用ポート、および出力軸401を後退させる後退用ポート))は、エアバルブ58を介して、エアタンク57とエア配管で接続されている。すなわち、エアバルブ58によるエア流路の切替により、各エアシリンダ40の出力軸401の前進・後退動が自在に制御できる。
【0040】
このような構成部材が本体10に取り付けられてなる芝地用穿孔装置1は、通気孔を形成しようとする施工対象の芝地上に敷設されたレール60上を走行する。駆動輪30は、レール60が敷設された方向に案内されながら回転し、当該方向に装置を進行させる。図1および図4に示すように、レール60には、その長手方向に所定の間隔で位置規制穴601(本発明における位置規制部に相当する。)が形成されている。各位置規制穴601の間隔(図4においてL2で表す。)は、装置の走行方向における形成しようとする通気孔のピッチと同一であり、上述した二つの位置規制突起301の間における駆動輪30の円弧の長さL1と同一である。
【0041】
以下、このような機械的構成を備える芝地用穿孔装置1の動作(このような自走式の芝地用穿孔装置1を用いた芝地の穿孔方法)について、図1〜図4に加え、図5のフローチャートおよび図6のタイムチャートを参照して説明する。
【0042】
芝地用穿孔装置1の各機械的構成部材は、本体10に固定された制御部12(本発明における制御手段に相当する。)によって制御される。なお、制御部12は、上述の発電機54から供給される電力によって駆動する。
【0043】
まず、芝地用穿孔装置1を駆動する前に、施工対象となる芝地に敷設されたレール60上に、芝地用穿孔装置1が所定の位置にセットされる。具体的には、駆動輪30および従動輪50をレール60上に載置すると共に、駆動輪30に形成された位置規制突起301の一つを、レール60に形成された最も手前側に位置する位置規制穴601に係合させる。
【0044】
制御部12の電源が入れられた後(S1)、図示されない運転開始スイッチが押され、スタート信号が入力される(S2)と、制御部12は、装置が運転を開始しても問題ない状態にあるか否か(各構成部材が原位置にあるか否か)を確認する(S3)。具体的には、例えば、駆動輪30の位置規制突起301の一つが位置規制穴601に係合していれば、近接スイッチ26が被検出突起24を検知しているはずなので、近接スイッチ26からの信号の有無を確認する。また、各エアシリンダ40の出力軸401が原位置(後退端)に位置しているかどうかを確認するため、マグネットスイッチ401bからの信号の有無を確認する。いずれかの検知信号が確認できない場合(S3「No」)、装置が始動することはない(S4)。
【0045】
すべての検知信号が確認される(S3「Yes」)と、装置が始動する。まず、制御部12は、モータ20を所定の速度で回転させる(S5)。そして、駆動輪30が所定量回転し、装置が所定距離(1ピッチ)走行すると、位置規制突起301の一つが手前から二番目に位置する位置規制穴601に係合する。この時、近接スイッチ26は、次の被検出突起24を検知し、検知信号を出力する(S6「Yes」)。この検知信号を得た制御部12は、モータ20の回転を停止させる。なお、一定以上の時間が経過しても近接スイッチ26からの信号が得られない場合(S7「Yes」)には、何らかの原因で装置の走行が停止しているということであるから、異常が発生した旨を外部に報知する(S14)。
【0046】
近接スイッチ26が次の被検出突起24を検知した旨の信号を得ると、モータ20の回転の停止と同時に、エアシリンダ40が始動する。すなわち、制御部12がエアバルブ58の流路を切り替えることによって、エアシリンダ40の出力軸401を前進させ、その先端に固定されたタイン42によって芝地に通気孔を形成する。
【0047】
ここで、本実施形態では、一度に全てのエアシリンダ40を駆動させず、エアシリンダ40の駆動タイミングをずらしている。具体的には、まず、最も外側に位置する二つの第一シリンダ群(図2に示すエアシリンダ40a)を進退動させる(S8)。エアシリンダ40aの出力軸401が後退端に位置したことをマグネットスイッチ401bが検出し、エアシリンダ40aの動作が完了した旨の信号を得た後(S9「Yes」)、エアシリンダ40aの内側に位置する二つの第二シリンダ群(図2に示すエアシリンダ40b)を進退動させる(S10)。エアシリンダ40bの出力軸401が後退端に位置したことをマグネットスイッチ401bが検出し、エアシリンダ40bの動作が完了した旨の信号を得た後(S11「Yes」)、残りの三つの第三シリンダ群(図2に示すエアシリンダ40c)を進退動させる(S12)。そして、エアシリンダ40cの出力軸401が後退端に位置したことをマグネットスイッチ401bが検出し、エアシリンダ40cの動作が完了した旨の信号を得た(S13「Yes」)ことをもって、当該ステップでの通気孔の形成が完了した旨の信号を得る。なお、安全のため、S9,S11,S13において、一定時間以上経過してもエアシリンダ40の動作完了信号が得られない場合(S9´,S11´,S13´「Yes」)には、異常が発生した旨を外部に報知する(S14)ように構成している。
【0048】
このように、一度に全てのエアシリンダ40を駆動させない理由は、第一に、一度に全てのエアシリンダ40を駆動させるように制御する場合、大きな空気圧が必要になるためエアコンプレッサ56が大きくなり、装置全体が大型化してしまうから、第二に、一度に全てのタイン42が芝地に突き刺されると、装置に掛かる反作用力が大きくなり、装置が横転してしまう危険性が高まるからである。
【0049】
したがって、各エアシリンダ40を駆動させるタイミングは、芝地用穿孔装置1が備えるエアシリンダの数や、芝地に形成する通気孔の大きさ等に応じて適宜変更可能である。ただし、エアシリンダの駆動タイミングを複数回に分ける場合には、本実施形態のように、タイン42が芝地に突き刺された際の反作用を考慮し、装置の走行方向と直交する方向における本体10の中心軸X(図2参照。)に対して対称となるようにエアシリンダ40を順次進退動させることが好ましい。中心軸Xに対して偏ってエアシリンダ40を駆動させると、装置が中心軸Xに対して偏った反作用力を受け、横転してしまう危険性が高まるからである。
【0050】
また、本実施形態では、各エアシリンダ40を進退動させるに際し、基本的には、マグネットスイッチ401aによって出力軸401が前進端に位置することを確認できてから、出力軸401を後退させるように制御する。しかし、出力軸401を前進させてから、所定時間経過しても出力軸401が前進端に位置したことがマグネットスイッチ401aによって検知されない場合、エラーとはせず、出力軸401を後退させて、次の動作に移行するように制御している。これは、土壌に埋まっている石などによってタイン42の前進が妨げられ、出力軸401が前進端位置まで前進しないことが多いからである。すなわち、出力軸401が前進端に位置することが確認できないことをもってエラーとすれば、自動走行中にエラーが多発し、通気孔の形成作業が円滑に進まないおそれがあるからである。
【0051】
制御部12は、エアシリンダ40cの出力軸401が後退端に位置した旨の信号を得る(S13「Yes」)と、再びモータ20を回転させる(S5)。そして、駆動輪30の位置規制突起301の一つが、手前側から三番目の位置規制穴601に係合する。制御部12は、近接スイッチ26から次の被検出突起24を検知した旨の信号を得て、モータ20の回転を停止させる(S8)。そして、再び上述のようにエアシリンダ40(S8〜S13)を駆動させ、芝地に通気孔を形成する。図6のタイムチャートにも示すように、このような走行動作と停止動作を繰り返し、装置の停止中にタイン42が固定されたエアシリンダ40を駆動させるように制御することで、敷設されたレール60に沿って、所定の間隔で通気孔が形成される。
【0052】
この芝地用穿孔装置1は、従来では自走式の装置を用いることが困難であった芝生保護マットが用いられた芝地に通気孔を形成しようとする場合にも適用することができる。この点について、以下、具体的に説明する。
【0053】
図7に芝生保護マット90の一例を示す。芝生保護マット90は、図8に示すような芝生保護ユニット91が連結されてなる。芝生保護ユニット91は、平面視略方形状に形成され、芝生が植え込まれる客土を保持する客土保持部901と、この客土保持部901と交互に設けられ、客土保持部901に保持される客土の上面(芝が形成される面)よりも突出する芝生保護用の支持突起902と、この客土保持部901および支持突起902を囲むようにして設けられた側壁903とからなる。芝生保護ユニット91では、7×7=49個の客土保持部901と、8×8=64個の支持突起902が、それぞれ等間隔に配置されている。また、側壁903は、芝生保護ユニット91の交換等の際に、客土保持部901に保持された客土がこぼれ落ちないようにするために設けられた部材である。図示されるように、芝生保護ユニット91同士の連結は、側壁903に形成された凹部903aと凸部903bが係合することでなされる。
【0054】
そして、芝生保護マット90が用いられた芝地における通気孔形成作業では、支持突起902を避けて、各客土保持部901の略中央に通気孔を形成することが求められる。すなわち、形成する通気孔のピッチは、各客土保持部901同士の間隔L3に設定される。したがって、客土保持部901同士の間隔L3と一致するように、位置規制突起301の間における駆動輪30の円弧の長さL1、レール60に形成された位置規制穴601の間隔L2が設定される。
【0055】
ところが、この芝生保護マット90は、芝生保護ユニット91同士の境界に側壁903が存在する。図7に示すように、隣り合う芝生保護ユニット91の最も近い客土保持部901同士の間隔は、一の芝生保護ユニット91内における各客土保持部901同士の間隔L3の二倍になり、その中央に側壁903が存在する。つまり、間隔L3でタイン42を突き刺していくと、芝生保護ユニット91同士の境界において、タイン42が側壁903に向けて突き刺され、タイン42や側壁903が損傷してしまうことになる。
【0056】
かかる事態を回避するため、このような芝生保護マット90に適用する芝地用穿孔装置1には、図9に示したその外観図から分かるように、駆動輪30と従動輪50の間に穿孔禁止スイッチ70(本発明における穿孔禁止手段に相当する。)が設けられている。本実施形態では、穿孔禁止スイッチ70として、アクチュエータがレバー式であるリミットスイッチを採用している。
【0057】
一方、レール60には、穿孔禁止スイッチ70のアクチュエータと当接し、穿孔禁止スイッチ70をオン状態とする当接部601aが一定間隔で設けられている。図10は、この当接部601aと穿孔禁止スイッチ70の位置関係を説明するための概略図である。なお、図10では、この当接部601aおよび穿孔禁止スイッチ70と、芝生保護マット90との位置関係を説明するため、芝生保護マット90を簡略化したもの(平面視略方形状の側壁903の大まかな形状のみを描いたもの)を太い一点鎖線で示している。
【0058】
図10(a)に示すように、穿孔禁止スイッチ70は、装置の走行中、ほとんどの位置では当接部601aに当接しないため、オフ状態にある。そして、図10(b)に示すように、出力軸42の先端に設けられたタイン42が、芝生保護ユニット91の側壁903の上を通過するとき、穿孔禁止スイッチ70は、当接部601aと当接してオン状態となる。すなわち、装置の走行方向における当接部601aの間隔と側壁903の間隔は同じであり、穿孔禁止スイッチ70は、この間隔に応じて周期的にオン状態となるような位置に取り付けられている。
【0059】
以下、このような穿孔禁止スイッチ70が設けられた芝地用穿孔装置1の動作(このような芝地用穿孔装置1を用いた芝地の穿孔方法)について、一部上記説明と重複するが、異なる点を中心に、図11のフローチャートおよび図12のタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0060】
まず、芝地用穿孔装置1を駆動する前に、レール60を芝地に敷設する。具体的には、図10に示したように、レール60は、芝生保護マット90と所定の位置関係で敷設される。例えば、所定の長さのレールユニットを組み合わせてレール60を構成する場合には、各レールユニットに、芝生保護マット90(芝生保護ユニット91)と係合する位置決め部を設けておけば、芝生保護マット90に対するレールユニットの位置決めが容易になり、レール60の敷設作業の効率がよく、レール60の位置ずれによる通気孔形成位置の位置ずれが防止される。
【0061】
このようにして芝生保護マット90が用いられた芝地に敷設されたレール60上に、芝地用穿孔装置1が所定の位置にセットされる。すなわち、駆動輪30に形成された位置規制突起301の一つを、レール60に形成された最も手前側に位置する位置規制穴601に係合させて、駆動輪30および従動輪50をレール60上に載置する。
【0062】
制御部12の電源が入れられた後(S1)、図示されない運転開始スイッチが押され、スタート信号が入力される(S2)と、制御部12は、装置が運転を開始しても問題ない状態にあるか否か(原位置にあるか否か)を確認する(S3)。この原位置の確認には、近接スイッチ26がオン状態にあるかどうか、および各エアシリンダ40の出力軸401が後退端に位置しているかどうか等に加えて、穿孔禁止スイッチ70がオン状態にないことを確認する(ただし、タイン42が側壁903の上に位置する状態から装置が始動する場合には、穿孔禁止スイッチ70がオン状態であることを確認する)。いずれかが確認できない場合(S3「No」)、装置が始動することはない(S4)。
【0063】
すべての検知信号が確認される(S3「Yes」)と、装置が始動する。まず、制御部12は、モータ20を所定の速度で回転させる(S5)。そして、駆動輪30は、所定距離回転すると、位置規制突起301の一つが手前から二番目に位置する位置規制穴601に係合する。この時、近接スイッチ26は、次の被検出突起24を検知し、検知信号を出力する(S6「Yes」)。制御部12による制御は、この近接スイッチ26の検知信号を検出した後、穿孔禁止スイッチ70がオフ状態にあるかオン状態にあるかどうかによって異なる。
【0064】
穿孔禁止スイッチ70がオフ状態にある場合(S8「No」)には、タイン42が芝生保護ユニット91の側壁903上ではなく、客土保持部901の上に位置しているということである。したがって、制御部12は、モータ20の回転を停止させ、エアシリンダ40を駆動させる。すなわち、エアシリンダ40の出力軸401を前進させ、その先端に固定されたタイン42によって客土保持部901に形成された芝地に通気孔を形成する。なお、エアシリンダ40の駆動方法、駆動のタイミングについては上述した通りである(S9〜S14)。
【0065】
そして、制御部12は、エアシリンダ40cの出力軸401が後退端に位置した旨の信号を得る(S14「Yes」)と、再びモータ20を回転させ(S5)、次の近接スイッチ26からの信号を待つ。
【0066】
一方、穿孔禁止スイッチ70がレール60の当接部601aに当接し、オン状態にある場合(S8「Yes」)には、タイン42が客土保持部901の上ではなく、芝生保護ユニット91の側壁903上に位置しているということである。したがって、制御部12は、エアシリンダ40を駆動させずに、モータ20を停止させることなくそのまま回転させて装置を走行させる(S5)。このように、穿孔禁止スイッチ70がオン状態にある場合には、そのまま装置を走行させて、側壁903に向けてタイン42が突き刺されることがないように動作する。
【0067】
そして、制御部12は、次の近接スイッチ26からの信号を得るまでモータ20を回転させて、装置を走行させる。近接スイッチ26からの信号を得る(S6「Yes」)と、再び周期的にオン状態となる穿孔禁止スイッチ70からの信号の有無に基づき、モータ20を停止させてエアシリンダ40を駆動させるか、エアシリンダ40を駆動させずにモータ20をそのまま回転させるかを判断することになる(S8)。図12のタイムチャートにも示すように、これを繰り返し、敷設されたレール60に沿って、芝生保護マット90の側壁903が存在する位置を避けながら、客土保持部901の略中央に通気孔が形成される。
【0068】
以上のように構成される芝地用穿孔装置1によれば、次のような作用効果が奏される。すなわち、芝地用穿孔装置1は、所定距離走行する度に、エアシリンダ40が駆動し、タイン42が芝地に突き刺されるように制御部12が制御する構成であるため、所定間隔で芝地に通気孔を形成することができる。また、芝地に対して垂直に保持されたタイン42が芝地に突き刺される際には、一旦装置の走行が停止されるため、芝地に対して垂直な通気孔を形成することができ、通気孔の形成によって逆に芝地が荒れてしまうなどの不具合の発生が防止される。
【0069】
また、芝地用穿孔装置1は、芝地上に敷設されたレール60に案内されて走行する構成であるため、装置の重みが直接芝生に掛からない。つまり、装置の踏圧がレール60によって分散されるため、芝生に車輪痕が形成されるなど、芝生の損傷が防止される。さらに、レール60によって走行中における装置の上下動が抑制されるため、通気孔の深さを一定にすることができる。加えて、レールに案内される駆動輪30および従動輪50によって装置の走行が安定するため、装置が所定の経路から外れて走行してしまうことがない。つまり、確実に所望の範囲に通気孔を形成することができる。
【0070】
また、レール60には、軸方向に並んだ位置規制穴601が形成され、装置が所定位置まで走行すると、駆動輪30に設けられた位置規制突起301がレール60の位置規制穴601に係合するように構成されている。かかる構成によれば、エアシリンダ40を駆動させて通気孔を形成する時における装置の位置ずれが防止され、確実に所定の位置に通気孔を形成することができる。
【0071】
一般的に、通気孔を形成する位置は数mm単位の精度が求められる場合は少ない。しかし、装置が1ピッチ走行する度に少しずつ装置が位置ずれした場合、その小さな位置ずれが積み重なり、ある程度装置が走行すると通気孔の形成位置が大きくずれてしまうことがある。本実施形態のように、装置が1ピッチ走行する度に位置規制突起301を位置規制穴601に係合させるように構成し、両者の係合時にその小さな位置ずれが吸収されるようにすれば、このような小さな位置ずれの積み重なりから生ずる大きな位置ずれの発生を防止することができる。したがって、例えば位置規制突起301を先細のテーパ形状にしたり、位置規制穴601を上方に向かって拡径するテーパ形状にすれば、位置規制突起301と位置規制穴601の係合によって、1ピッチ走行する毎の装置の位置ずれをより確実に吸収することができ、さらに好適である。
【0072】
また、芝地用穿孔装置1は、複数のタイン42を備え、そのタイン42を複数回に分けてエアシリンダ40によって動作させている。そして、同時に駆動されるエアシリンダ40の位置関係が、装置の走行方向と直交する方向における本体10の中心軸Xに対して対称となるようにしているため、タイン42が芝地に突き刺された際に本体10が受ける反作用力は、本体10の中心軸に対して偏ることはない。ゆえに、かかる構成によれば、駆動輪30や従動輪50がレール60から外れてしまったり、装置が横転してしまうおそれを低減することができる。
【0073】
そして、本実施形態に係る芝生用穿孔装置1は、所定間隔で芝地に通気孔を形成することができるため、芝生保護マット90を用いた芝地であっても、芝生を保護するための支持突起902を避け、客土保持部901に通気孔を自動で形成することができる。このように、芝生保護マット90を用いた芝地に芝地用穿孔装置1を適用した場合には、次のような作用効果が奏される。
【0074】
すなわち、芝生保護マット90を用いた芝地では、芝生を保護するための支持突起902による凹凸があるが、芝地に敷設されたレール60上を回転する駆動輪30を設けることによって、その凹凸の影響を受けずに装置を安定して走行させることができる。
【0075】
また、装置が所定距離進行する度、レール60に設けられた位置規制穴601に、駆動輪30に設けられた位置規制突起301が係合することによって、装置の位置ずれが防止されているため、支持突起902を避け、確実に客土保持部901にタイン42が突き刺される。
【0076】
さらに、側壁903が形成された芝生保護ユニット91が複数連結されてなる芝生保護マット90が用いられた芝地を穿孔する場合、タイン42が側壁903上に存在するときに、穿孔禁止スイッチ70(および当接部601a)によって周期的にエアシリンダ70が駆動しないようにすれば、タイン42や芝生保護ユニット91の側壁903の損傷が防止される。なお、このような側壁903に限られず、装置の走行方向に向かって周期的にタイン42を突き刺すことができないような障害物が存在する場合には、穿孔禁止スイッチ70によってタイン42がその障害物に突き刺されることがないように設定することができる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態に係る芝地穿孔装置1は、被検出部24における隣り合う被検出突起241の角度(θ1)が一定であるため、芝地に一定の間隔で通気孔が形成される仕様であるが、隣り合う被検出部241の角度を一定にせず、装置が1ピッチ走行する度に、芝地に形成される通気孔の間隔が変化するように構成してもよい。この場合は、隣り合う被検出突起241の角度と合わせて、被検出突起241と同位相で回転する駆動輪30の位置規制突起301の角度(θ2)も設定すればよい。また、被検出突起241を用いず、直接モータ20の回転量を制御することにより、所定位置で装置を一旦停止させるように構成してもよい。
【0079】
また、装置が所定位置まで走行すると、駆動輪30に設けられた位置規制突起301がレール60の位置規制穴601に係合するように構成されていることを説明したが、上述した装置の位置ずれを防止する効果が得られるのであれば、その形状は適宜変更可能である。例えば、レール60に突起を設け、駆動輪30に凹部を設けた構成としてもよい。また、レール60の位置規制部に係合する係合部を、駆動輪30のみならず、従動輪50に設けることも可能である。
【0080】
さらに、芝地を穿孔するタイン42を進退動させるアクチュエータとして、本実施形態ではエアシリンダ40を用いたことを説明したが、その他のアクチュエータ、例えば油圧シリンダ等を用いることも可能である。また、アクチュエータの動力を、カム機構を介してタイン42の進退動作として出力するように構成することも可能である。
【0081】
また、芝地用穿孔装置1は、レール60に案内されて自動で進行することを説明したが、レール60を用いず、制御部12やモータ20等を無線通信で制御することができるようにして、任意の方向に装置を誘導し、任意の位置で停止、穿孔することができるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 芝地用穿孔装置
10 本体
12 制御部
20 モータ
30 駆動輪
301 位置規制突起
40 エアシリンダ
401 出力軸
42 タイン
60 レール
601 位置規制穴
601a 当接部
70 穿孔禁止スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝地用穿孔装置および芝地の穿孔方法に関し、さらに詳しくは、芝地を走行させながらその芝地に通気孔等を形成する芝地用穿孔装置、およびこのような自走式の芝生穿孔装置を用いた芝地の穿孔方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、芝生が植えられた芝地では、定期的に多数の孔を形成することによって通気性を向上させ、芝生の成長を促すことが行われている(以下、この孔を通気孔と称する。以下の説明において、通気孔には、芝地の透水性を高める目的や芝生の根切りなど、通気性を高める以外の目的で芝地に形成する孔を含むものとする。)。このような通気孔を形成する装置としては、例えば、特許文献1に記載されるものが知られている。特許文献1に記載の芝地用の穿孔装置は、外周面に多数のタイン(種々の形状のものが知られている。例えば、特許文献2参照。)が設けられたドラムを回転させながら装置を走行させることで、タインが芝地に突き刺され、芝地に通気孔が形成されるというものである。
【0003】
ところで、このような芝地の多くは公園やゴルフ場といった場所に形成されるものであるが、近年では、地球温暖化防止や景観向上等のため、駐車場にも芝を植え込み、緑化を図ろうとする試みがなされている。このように駐車場に芝を植え込む場合には、自動車タイヤの踏圧によって芝生が痛んでしまわないようにするため、芝生保護マットが敷設される(例えば、特許文献3参照。)。芝生保護マットは、一般的に、芝が植えられる客土が保持される客土保持部と、その客土保持部に保持された客土よりも高い支持突起とが交互に形成されてなる。つまり、このような芝生保護マットを用いれば、駐車場内に進入した自動車は支持突起によって支えられ、芝生には直接自動車の踏圧が掛からなくなるため、自動車の乗り入れにも耐えうる芝地を形成することができる。
【0004】
しかし、このような芝生保護マットが用いられた芝地を管理するに際し、以下の問題があった。すなわち、芝生保護マットが敷設された芝地に上述のような通気孔を形成しようとする場合、芝生保護マットの支持突起を避け、芝地が形成された客土保持部にのみタインが突き刺さるようにしなければならない。ところが、特許文献1のように複数のタインが設けられたドラムを回転させて芝地を穿孔する装置は、おおよそ等間隔に通気孔を形成することができるものの、予め定めた位置に通気孔を形成することができるものではない。つまり、芝生保護マットの支持突起を避けながら客土保持部にのみタインを突き刺すことは不可能である。したがって、芝生保護マットが敷設された芝地に通気孔を形成する場合、現状では人力でタインを突き刺す装置(例えば、特許文献4参照。)等を使用するしかなく、時間と労力のかかる作業となっていた。
【0005】
また、特許文献1のような、回転するドラムに固定されたタインが芝地に突き刺さる構成である場合、このドラムに固定されたタインは、芝地に対して斜めに突き刺さって、土壌を抉るようにして芝地から抜かれることになるため、通気孔が必要以上に大きくなって芝地が荒れてしまうおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−66103号公報
【特許文献2】特開2007−49923号公報
【特許文献3】特開2008−99564号公報
【特許文献4】特開2006−262738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、芝地に対して垂直な通気孔を予め定めた所定の位置に形成することができ、芝生保護マットが用いられた芝地の場合には、通気孔を形成することができない場所を避けて通気孔を形成することができる自走式の芝地用穿孔装置を提供することにある。また、このような自走式の芝地用穿孔装置を用いた芝地の穿孔方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る芝地用穿孔装置は、芝地に突き刺すことにより該芝地に穿孔するタインを備える装置本体を該芝地面に沿って走行させる走行手段と、該芝地面に対して略垂直方向に前記タインを進退動させるアクチュエータと、前記装置本体を所定位置まで走行させる走行動作と該走行動作後に停止させる停止動作とを繰り返し、前記装置本体の停止中に前記タインを前記芝地面に向けて進退動させるように前記アクチュエータを制御する制御手段とを備えることを要旨とするものである。
【0009】
この場合、前記走行手段は、前記芝地に敷設されるレール上を転動する車輪を有し、該車輪がレール上を転動することにより前記レール上を前記装置本体が走行するように構成すればよい。
【0010】
さらに好ましくは、前記芝地に敷設されるレールには、そのレール方向に沿って複数の位置規制部が設けられており、前記車輪の外周面には、前記装置本体が前記所定位置まで走行する度に、前記レールに形成された一の位置規制部に順次係合される係合部が設けられていればよい。
【0011】
さらに、上記構成に加え、前記制御手段による前記アクチュエータの駆動を周期的に禁止する穿孔禁止手段が設けられていればよい。
【0012】
そしてこの場合、この穿孔禁止手段は、前記レールに設けられた当接部に当接してオン状態となるリミットスイッチを有し、該リミットスイッチがオン状態となることにより前記アクチュエータの駆動が禁止されるようにすればよい。
【0013】
また、前記アクチュエータが複数備えられる場合には、前記制御手段は、前記装置本体の走行方向と直交する方向における前記装置本体の中心軸に対して対称の位置関係にある前記アクチュエータを順次駆動させるように構成されていればよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために本発明に係る芝地の穿孔方法は、芝地に穿孔するタインを装置本体に備えた芝地用穿孔装置を自走で所定位置まで走行させ、その度に前記芝地用穿孔装置の走行を一旦停止させた後、前記タインを芝地に対して略垂直に突き刺して穿孔し、しかる後、前記芝地用穿孔装置を次の所定位置まで走行させるようにしたことを要旨とするものである。
【0015】
この場合、前記芝地用穿孔装置に走行用の車輪を設け、前記芝地用穿孔装置が該車輪の転動によって前記芝地上に敷設されるレール上を走行するようにすればよい。
【0016】
また、前記芝地用穿孔装置は、前記芝地用穿孔装置が前記所定位置まで走行する度に、前記レールのレール方向に沿って設けた一の位置規制部に前記車輪の外周面に設けた一の係合部が順次係合するようにすればよい。
【0017】
さらに、前記芝地用穿孔装置に設けられた穿孔禁止手段によって前記タインの動作を周期的に禁止するようにすればよい。
【0018】
そして、前記芝地用穿孔装置に設けられた穿孔禁止手段によって前記タインによる穿孔動作を周期的に禁止するようにすればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る芝地用穿孔装置によれば、装置を所定の位置まで走行させる度に、アクチュエータの駆動によってタインが芝地に突き刺されるように制御される構成であるため、予め設定した所定位置に通気孔を形成することができる。したがって、上述したような芝生保護マットが設けられた芝地であっても、芝生を保護するための支持突起を避け、客土保持部に形成された芝地に通気孔を自動で形成することができる。また、芝地に対して略垂直に進退動するタインが芝地に突き刺される際には、装置の走行が停止されているため、芝地に対して垂直な通気孔を形成することができ、通気孔の形成作業によって逆に芝地が荒れてしまうなどの不具合の発生が防止される。
【0020】
そして、芝地上に敷設されたレールに案内される車輪を設け、レール上を車輪が転動することによって装置が走行するように構成すれば、装置の踏圧がレールによって分散されるため、芝生に車輪痕が形成されるなど、芝生の損傷が防止される。また、レールによって走行中における装置の上下動が抑制されるため、通気孔の深さを一定にすることができる。さらに、レールに案内される車輪によって装置の走行が安定するため、装置を確実に所定の経路に沿って走行させることができ、容易に所望の範囲に通気孔を形成することができる。また、芝生保護マットを用いた芝地では、芝生を保護するための支持突起による凹凸があるが、このようなレール上を回転する車輪を設けることによって、その凹凸の影響を受けずに装置をスムーズに走行させることができる。
【0021】
この場合、装置が所定位置まで走行した際に、レールに設けた位置規制部に、車輪に形成された係合部が係合するようにすれば、アクチュエータを動作させて通気孔を形成する時における装置の位置ずれが防止され、より精度良く所定の位置に通気孔を形成することができる。
【0022】
また、装置が所定位置まで走行した場合であっても、アクチュエータの駆動、すなわち芝地への穿孔を周期的に禁止する穿孔禁止手段を設けていれば、装置の走行方向に向かって、周期的(等間隔)に通気孔を形成することができない障害物が存在する場合に有効であり、装置の適用範囲が広がる。具体的には、交互に形成された客土保持部および支持突起を囲むように形成された側壁を有する芝生保護ユニット(上記特許文献3参照。)が連結された芝生保護マット上に施工対象となる芝地が形成されている場合、芝生保護ユニット同士の連結部に存在する側壁を避けて通気孔を形成しなければならないため有効である。つまり、走行方向に向かって周期的に存在する側壁上にタインが位置するときに、穿孔禁止手段によってアクチュエータが駆動しないようにすることができるため、タインが側壁に突き刺されることによるタインや側壁の損傷が防止される。
【0023】
この場合、このような穿孔禁止手段をリミットスイッチで構成し、このリミットスイッチが、レールに設けられた当接部に当接することにより周期的にオン状態となるように構成すれば、より簡易な構成で、タインや側壁の損傷を防止することができる。
【0024】
そして、芝地用穿孔装置が複数のアクチュエータを備え、装置構成上、一度に全てのアクチュエータを駆動させることができない場合には、複数回に分けてアクチュエータを駆動させるようにすればよい。ただし、駆動されるアクチュエータの位置関係が、芝地用穿孔装置の走行方向と直交する方向における本体の中心軸に対して対称となるようにすれば、装置の横転等の防止に効果的である。つまり、タインが芝地に突き刺された際に装置の本体が受ける反作用力が、本体の中心軸に対して偏らないようにすることにより、装置が横転してしまうおそれを低減することができる。
【0025】
また、本発明に係る芝地の穿孔方法によれば、装置を所定の位置まで走行させる度に、タインが芝地に突き刺される構成であるため、予め設定した所定位置に通気孔を形成することができる。したがって、芝生保護マットが設けられた芝地であっても、芝生を保護するための支持突起を避け、確実に客土保持部に通気孔を形成することができる。また、芝地に対して垂直に進退動するタインが芝地に突き刺される際には、装置の走行が停止されているため、芝地に対して垂直な通気孔を形成することができ、通気孔の形成によって逆に芝地が荒れてしまうなどの不具合の発生が防止される。
【0026】
そして、芝地上にレールを敷設し、そのレール上を走行用の車輪が設けられた装置を走行させるようにすることにより、装置の踏圧がレールによって分散されるため、芝生に車輪痕が形成されるなど、芝生の損傷が防止される。また、レールによって走行中における装置の上下動が抑制されるため、通気孔の深さを一定にすることができる。さらに、敷設したレールによって装置の走行が安定するため、装置を確実に所定の経路に沿って走行させることができ、容易に所望の範囲に通気孔を形成することができる。また、芝生保護マットを用いた芝地では、芝生を保護するための支持突起による凹凸があるが、このような車輪を案内するレールを設けることによって、その凹凸の影響を受けずに装置を走行させることができる。
【0027】
この場合、装置が所定位置まで走行した際に、車輪に形成された係合部が係合するような位置規制部をレールに設けていれば、通気孔を形成する時における装置の位置ずれが防止され、確実に所定の位置に通気孔を形成することができる。
【0028】
また、装置が所定位置まで走行した場合であっても、タインの動作、すなわち芝地への穿孔を周期的に禁止する穿孔禁止手段を設けていれば、装置の走行方向に向かって周期的(等間隔)に通気孔を形成することができない障害物が存在する場合に有効である。具体的には、交互に形成された客土保持部および支持突起を囲むように形成された側壁を有する芝生保護ユニットが連結された芝生保護マット上に施工対象となる芝地が形成されている場合、芝生保護ユニット同士の連結部に存在する側壁を避けて通気孔を形成しなければならないため有効である。つまり、装置の走行方向に向かって周期的に存在する側壁上にタインが位置するときに、穿孔禁止手段によってタインが動作しないようにできるため、タインが側壁に突き刺されることによるタインや側壁の損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る芝地用穿孔装置を側面から見た概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る芝地用穿孔装置を前面から見た概略図である。
【図3】図1および図2に示した芝地用穿孔装置が備える被検出部の構成を説明するための概略図である。
【図4】図1および図2に示した芝地用穿孔装置が備える駆動輪の構成を説明するための概略図であり、併せて図3に示した被検出部を点線で示している。
【図5】図1および図2に示した芝地用穿孔装置の動作フローを示したフローチャートである。
【図6】図1および図2に示した芝地用穿孔装置の繰り返し動作を説明するためのタイムチャートである。
【図7】側壁を有する芝生保護マットの一例を示した平面図である。
【図8】図7に示した芝生保護マットを構成する芝生保護ユニットの外観斜視図である。
【図9】穿孔禁止スイッチが設けられた芝地用穿孔装置の外観の概略図である。
【図10】レールに設けられた当接部と穿孔禁止スイッチの位置関係を説明するための概略図である。
【図11】図9に示した芝地用穿孔装置の動作フローを示したフローチャートである。
【図12】図9に示した芝地用穿孔装置の繰り返し動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る芝地用穿孔装置について説明する。まず、図1および図2を参照して本発明の一実施形態に係る芝地用穿孔装置1の機械的構成について説明する。図1は、芝地用穿孔装置1を側面から見た概略図であり、一部破断させて内部の構成部品の概略と、電気配線およびエア配管を併せて示している。図2は、芝地用穿孔装置1を前面から見た概略図であり、一部破断させて駆動軸22に固定された構成部品の概略を併せて示している。なお、以下の説明では、図1の矢印で示した芝地用穿孔装置1(本体10)の走行方向側を前とし、その反対を後とする。また、装置の走行方向と直交する方向を幅方向とする。
【0031】
本実施形態に係る芝地用穿孔装置1は、自動で走行する自走式の芝地用穿孔装置であって、装置を走行させる走行手段と、芝地に通気孔を形成するためのアクチュエータである複数(本実施形態では七つ)のエアシリンダ40を備え、走行手段は、駆動源であるモータ20、およびこのモータ20によって回転させられる駆動輪30(本発明における車輪に相当する。)を備える。
【0032】
走行手段が有するモータ20は、本体10の後側に取り付けられた駆動軸22を回転させる装置である。駆動軸22の両端には、本体10を走行させるための駆動輪30が固定されている。本実施形態では、モータ20の本体部201が駆動軸22に対して直交させて取り付けられ、この本体部201がいわゆる直交型のギヤヘッド202を介して駆動軸22と連結されている。
【0033】
図3は、図2におけるA−A線断面の概略を示したものである。図2および図3に示すように、駆動軸22には、一方の駆動輪30が固定された近傍に、花びら状に円周上等間隔に突出した被検出突起241を有する被検出部24が固定されている。すなわち、被検出部24と駆動輪30とは、同速度で回転する。この被検出部24における各被検出突起241の間の角度(隣り合う位置検出突起241の中心と被検出部241の中心とを結んでできる扇形の中心角の角度をいう。図3においてθ1で表す。)は、芝地に形成しようとする通気孔の間隔に応じて設定されている。すなわち、この角度を調節することにより、芝地に形成しようとする通気孔の間隔を適宜調節することができる。
【0034】
そして、被検出部24の径方向外側には、装置の本体10に固定された近接スイッチ26が取り付けられている。近接スイッチ26は、検出方向を被検出部24(被検出突起241)の方向に向けて取り付けられており、駆動軸22の回転によって検出範囲内に入った被検出突起241を検出する。つまり、駆動軸22の回転に伴って回転する被検出突起241の位置を近接スイッチ26によって検出することにより、駆動輪30の回転量、すなわち芝地用穿孔装置1の走行距離を所定の間隔で検出することができる。
【0035】
図4は、駆動輪30を拡大した概略図である。なお、図4では、駆動輪30と被検出部24の位置関係を示すため、駆動輪30と同軸上に配設される上記被検出部24を点線で示している。図示されるように、駆動輪30の外周面には、円周上等間隔に突出した位置規制突起301(本発明における係合部に相当する。)が形成されている。各位置規制突起301の間の角度(隣り合う位置規制突起301の中心と駆動輪30の中心とを結んで形成される扇形の中心角の角度をいう。図4においてθ2で表す。)は、図3で示した被検出部24における各被検出突起241の間の角度θ1と同一である。本実施形態では、被検出突起241と位置規制突起301は同位相で回転し、芝地に形成しようとする通気孔の間隔を踏まえ、θ1およびθ2は共に45度に設定されている。被検出突起241と位置規制突起301は、駆動輪30が回転して、位置規制突起301のうちの一つが最下に位置したとき、近接スイッチ26が被検出突起241のうちの一つを検知するような位置関係となる。例えば、図4では、Pで示す位置規制突起301が最下に位置したとき、Qで示す被検出突起241が近接スイッチ26によって検知される。
【0036】
また、各位置規制突起301の間における駆動輪30の円弧の長さ(隣り合う位置規制突起301の中心と駆動輪30の中心とを結んで形成される扇形の円弧の長さをいう。図4においてL1(太線)で表す。)は、装置の走行方向における芝地に形成しようとする通気孔の間隔と同一である。
【0037】
このような構成の駆動輪30に加え、本体10の前側には、従動軸52の両端に固定された従動輪50が取り付けられている。従動輪50は、モータなどの駆動源によって回転させられる車輪ではなく、駆動輪30の回転によって装置が前進することに伴い従動的に回転する車輪である。
【0038】
エアシリンダ40は、芝地に通気孔を形成するタイン42を進退動させるアクチュエータである。本実施形態では、本体10の前面に7つのエアシリンダ40が設けられている。それぞれのエアシリンダ40は、出力軸401の進退動する方向が地面(芝地)に対して垂直になるように取り付けられている。また、各出力軸401の間隔は、幅方向における形成しようとする通気孔の間隔と同一である。そして、出力軸401の先端には、出力軸401が前進すると芝地に突き刺されるようにタイン42が固定されている。また、各エアシリンダ40には、出力軸401の前進端位置および後退端位置を検出するためのマグネットスイッチ401aおよび401bが取り付けられている。このエアシリンダ40およびタイン42の構成については、特に限定されるものではない。形成しようとする通気孔の大きさや深さ等に応じて、シリンダストロークやタインの形状を適宜選定すればよい。
【0039】
また、本体10には、エアシリンダ40の駆動用の圧縮空気を供給するエアコンプレッサ56が固定されている。このエアコンプレッサ56は、同じく本体10に固定された発電機54から駆動用の電力を得ている。エアコンプレッサ56によって圧縮された空気は、エアタンク57に貯留される。各エアシリンダ40(シリンダに設けられた圧縮空気供給用のポート(出力軸401を前進させる前進用ポート、および出力軸401を後退させる後退用ポート))は、エアバルブ58を介して、エアタンク57とエア配管で接続されている。すなわち、エアバルブ58によるエア流路の切替により、各エアシリンダ40の出力軸401の前進・後退動が自在に制御できる。
【0040】
このような構成部材が本体10に取り付けられてなる芝地用穿孔装置1は、通気孔を形成しようとする施工対象の芝地上に敷設されたレール60上を走行する。駆動輪30は、レール60が敷設された方向に案内されながら回転し、当該方向に装置を進行させる。図1および図4に示すように、レール60には、その長手方向に所定の間隔で位置規制穴601(本発明における位置規制部に相当する。)が形成されている。各位置規制穴601の間隔(図4においてL2で表す。)は、装置の走行方向における形成しようとする通気孔のピッチと同一であり、上述した二つの位置規制突起301の間における駆動輪30の円弧の長さL1と同一である。
【0041】
以下、このような機械的構成を備える芝地用穿孔装置1の動作(このような自走式の芝地用穿孔装置1を用いた芝地の穿孔方法)について、図1〜図4に加え、図5のフローチャートおよび図6のタイムチャートを参照して説明する。
【0042】
芝地用穿孔装置1の各機械的構成部材は、本体10に固定された制御部12(本発明における制御手段に相当する。)によって制御される。なお、制御部12は、上述の発電機54から供給される電力によって駆動する。
【0043】
まず、芝地用穿孔装置1を駆動する前に、施工対象となる芝地に敷設されたレール60上に、芝地用穿孔装置1が所定の位置にセットされる。具体的には、駆動輪30および従動輪50をレール60上に載置すると共に、駆動輪30に形成された位置規制突起301の一つを、レール60に形成された最も手前側に位置する位置規制穴601に係合させる。
【0044】
制御部12の電源が入れられた後(S1)、図示されない運転開始スイッチが押され、スタート信号が入力される(S2)と、制御部12は、装置が運転を開始しても問題ない状態にあるか否か(各構成部材が原位置にあるか否か)を確認する(S3)。具体的には、例えば、駆動輪30の位置規制突起301の一つが位置規制穴601に係合していれば、近接スイッチ26が被検出突起24を検知しているはずなので、近接スイッチ26からの信号の有無を確認する。また、各エアシリンダ40の出力軸401が原位置(後退端)に位置しているかどうかを確認するため、マグネットスイッチ401bからの信号の有無を確認する。いずれかの検知信号が確認できない場合(S3「No」)、装置が始動することはない(S4)。
【0045】
すべての検知信号が確認される(S3「Yes」)と、装置が始動する。まず、制御部12は、モータ20を所定の速度で回転させる(S5)。そして、駆動輪30が所定量回転し、装置が所定距離(1ピッチ)走行すると、位置規制突起301の一つが手前から二番目に位置する位置規制穴601に係合する。この時、近接スイッチ26は、次の被検出突起24を検知し、検知信号を出力する(S6「Yes」)。この検知信号を得た制御部12は、モータ20の回転を停止させる。なお、一定以上の時間が経過しても近接スイッチ26からの信号が得られない場合(S7「Yes」)には、何らかの原因で装置の走行が停止しているということであるから、異常が発生した旨を外部に報知する(S14)。
【0046】
近接スイッチ26が次の被検出突起24を検知した旨の信号を得ると、モータ20の回転の停止と同時に、エアシリンダ40が始動する。すなわち、制御部12がエアバルブ58の流路を切り替えることによって、エアシリンダ40の出力軸401を前進させ、その先端に固定されたタイン42によって芝地に通気孔を形成する。
【0047】
ここで、本実施形態では、一度に全てのエアシリンダ40を駆動させず、エアシリンダ40の駆動タイミングをずらしている。具体的には、まず、最も外側に位置する二つの第一シリンダ群(図2に示すエアシリンダ40a)を進退動させる(S8)。エアシリンダ40aの出力軸401が後退端に位置したことをマグネットスイッチ401bが検出し、エアシリンダ40aの動作が完了した旨の信号を得た後(S9「Yes」)、エアシリンダ40aの内側に位置する二つの第二シリンダ群(図2に示すエアシリンダ40b)を進退動させる(S10)。エアシリンダ40bの出力軸401が後退端に位置したことをマグネットスイッチ401bが検出し、エアシリンダ40bの動作が完了した旨の信号を得た後(S11「Yes」)、残りの三つの第三シリンダ群(図2に示すエアシリンダ40c)を進退動させる(S12)。そして、エアシリンダ40cの出力軸401が後退端に位置したことをマグネットスイッチ401bが検出し、エアシリンダ40cの動作が完了した旨の信号を得た(S13「Yes」)ことをもって、当該ステップでの通気孔の形成が完了した旨の信号を得る。なお、安全のため、S9,S11,S13において、一定時間以上経過してもエアシリンダ40の動作完了信号が得られない場合(S9´,S11´,S13´「Yes」)には、異常が発生した旨を外部に報知する(S14)ように構成している。
【0048】
このように、一度に全てのエアシリンダ40を駆動させない理由は、第一に、一度に全てのエアシリンダ40を駆動させるように制御する場合、大きな空気圧が必要になるためエアコンプレッサ56が大きくなり、装置全体が大型化してしまうから、第二に、一度に全てのタイン42が芝地に突き刺されると、装置に掛かる反作用力が大きくなり、装置が横転してしまう危険性が高まるからである。
【0049】
したがって、各エアシリンダ40を駆動させるタイミングは、芝地用穿孔装置1が備えるエアシリンダの数や、芝地に形成する通気孔の大きさ等に応じて適宜変更可能である。ただし、エアシリンダの駆動タイミングを複数回に分ける場合には、本実施形態のように、タイン42が芝地に突き刺された際の反作用を考慮し、装置の走行方向と直交する方向における本体10の中心軸X(図2参照。)に対して対称となるようにエアシリンダ40を順次進退動させることが好ましい。中心軸Xに対して偏ってエアシリンダ40を駆動させると、装置が中心軸Xに対して偏った反作用力を受け、横転してしまう危険性が高まるからである。
【0050】
また、本実施形態では、各エアシリンダ40を進退動させるに際し、基本的には、マグネットスイッチ401aによって出力軸401が前進端に位置することを確認できてから、出力軸401を後退させるように制御する。しかし、出力軸401を前進させてから、所定時間経過しても出力軸401が前進端に位置したことがマグネットスイッチ401aによって検知されない場合、エラーとはせず、出力軸401を後退させて、次の動作に移行するように制御している。これは、土壌に埋まっている石などによってタイン42の前進が妨げられ、出力軸401が前進端位置まで前進しないことが多いからである。すなわち、出力軸401が前進端に位置することが確認できないことをもってエラーとすれば、自動走行中にエラーが多発し、通気孔の形成作業が円滑に進まないおそれがあるからである。
【0051】
制御部12は、エアシリンダ40cの出力軸401が後退端に位置した旨の信号を得る(S13「Yes」)と、再びモータ20を回転させる(S5)。そして、駆動輪30の位置規制突起301の一つが、手前側から三番目の位置規制穴601に係合する。制御部12は、近接スイッチ26から次の被検出突起24を検知した旨の信号を得て、モータ20の回転を停止させる(S8)。そして、再び上述のようにエアシリンダ40(S8〜S13)を駆動させ、芝地に通気孔を形成する。図6のタイムチャートにも示すように、このような走行動作と停止動作を繰り返し、装置の停止中にタイン42が固定されたエアシリンダ40を駆動させるように制御することで、敷設されたレール60に沿って、所定の間隔で通気孔が形成される。
【0052】
この芝地用穿孔装置1は、従来では自走式の装置を用いることが困難であった芝生保護マットが用いられた芝地に通気孔を形成しようとする場合にも適用することができる。この点について、以下、具体的に説明する。
【0053】
図7に芝生保護マット90の一例を示す。芝生保護マット90は、図8に示すような芝生保護ユニット91が連結されてなる。芝生保護ユニット91は、平面視略方形状に形成され、芝生が植え込まれる客土を保持する客土保持部901と、この客土保持部901と交互に設けられ、客土保持部901に保持される客土の上面(芝が形成される面)よりも突出する芝生保護用の支持突起902と、この客土保持部901および支持突起902を囲むようにして設けられた側壁903とからなる。芝生保護ユニット91では、7×7=49個の客土保持部901と、8×8=64個の支持突起902が、それぞれ等間隔に配置されている。また、側壁903は、芝生保護ユニット91の交換等の際に、客土保持部901に保持された客土がこぼれ落ちないようにするために設けられた部材である。図示されるように、芝生保護ユニット91同士の連結は、側壁903に形成された凹部903aと凸部903bが係合することでなされる。
【0054】
そして、芝生保護マット90が用いられた芝地における通気孔形成作業では、支持突起902を避けて、各客土保持部901の略中央に通気孔を形成することが求められる。すなわち、形成する通気孔のピッチは、各客土保持部901同士の間隔L3に設定される。したがって、客土保持部901同士の間隔L3と一致するように、位置規制突起301の間における駆動輪30の円弧の長さL1、レール60に形成された位置規制穴601の間隔L2が設定される。
【0055】
ところが、この芝生保護マット90は、芝生保護ユニット91同士の境界に側壁903が存在する。図7に示すように、隣り合う芝生保護ユニット91の最も近い客土保持部901同士の間隔は、一の芝生保護ユニット91内における各客土保持部901同士の間隔L3の二倍になり、その中央に側壁903が存在する。つまり、間隔L3でタイン42を突き刺していくと、芝生保護ユニット91同士の境界において、タイン42が側壁903に向けて突き刺され、タイン42や側壁903が損傷してしまうことになる。
【0056】
かかる事態を回避するため、このような芝生保護マット90に適用する芝地用穿孔装置1には、図9に示したその外観図から分かるように、駆動輪30と従動輪50の間に穿孔禁止スイッチ70(本発明における穿孔禁止手段に相当する。)が設けられている。本実施形態では、穿孔禁止スイッチ70として、アクチュエータがレバー式であるリミットスイッチを採用している。
【0057】
一方、レール60には、穿孔禁止スイッチ70のアクチュエータと当接し、穿孔禁止スイッチ70をオン状態とする当接部601aが一定間隔で設けられている。図10は、この当接部601aと穿孔禁止スイッチ70の位置関係を説明するための概略図である。なお、図10では、この当接部601aおよび穿孔禁止スイッチ70と、芝生保護マット90との位置関係を説明するため、芝生保護マット90を簡略化したもの(平面視略方形状の側壁903の大まかな形状のみを描いたもの)を太い一点鎖線で示している。
【0058】
図10(a)に示すように、穿孔禁止スイッチ70は、装置の走行中、ほとんどの位置では当接部601aに当接しないため、オフ状態にある。そして、図10(b)に示すように、出力軸42の先端に設けられたタイン42が、芝生保護ユニット91の側壁903の上を通過するとき、穿孔禁止スイッチ70は、当接部601aと当接してオン状態となる。すなわち、装置の走行方向における当接部601aの間隔と側壁903の間隔は同じであり、穿孔禁止スイッチ70は、この間隔に応じて周期的にオン状態となるような位置に取り付けられている。
【0059】
以下、このような穿孔禁止スイッチ70が設けられた芝地用穿孔装置1の動作(このような芝地用穿孔装置1を用いた芝地の穿孔方法)について、一部上記説明と重複するが、異なる点を中心に、図11のフローチャートおよび図12のタイムチャートを参照しつつ説明する。
【0060】
まず、芝地用穿孔装置1を駆動する前に、レール60を芝地に敷設する。具体的には、図10に示したように、レール60は、芝生保護マット90と所定の位置関係で敷設される。例えば、所定の長さのレールユニットを組み合わせてレール60を構成する場合には、各レールユニットに、芝生保護マット90(芝生保護ユニット91)と係合する位置決め部を設けておけば、芝生保護マット90に対するレールユニットの位置決めが容易になり、レール60の敷設作業の効率がよく、レール60の位置ずれによる通気孔形成位置の位置ずれが防止される。
【0061】
このようにして芝生保護マット90が用いられた芝地に敷設されたレール60上に、芝地用穿孔装置1が所定の位置にセットされる。すなわち、駆動輪30に形成された位置規制突起301の一つを、レール60に形成された最も手前側に位置する位置規制穴601に係合させて、駆動輪30および従動輪50をレール60上に載置する。
【0062】
制御部12の電源が入れられた後(S1)、図示されない運転開始スイッチが押され、スタート信号が入力される(S2)と、制御部12は、装置が運転を開始しても問題ない状態にあるか否か(原位置にあるか否か)を確認する(S3)。この原位置の確認には、近接スイッチ26がオン状態にあるかどうか、および各エアシリンダ40の出力軸401が後退端に位置しているかどうか等に加えて、穿孔禁止スイッチ70がオン状態にないことを確認する(ただし、タイン42が側壁903の上に位置する状態から装置が始動する場合には、穿孔禁止スイッチ70がオン状態であることを確認する)。いずれかが確認できない場合(S3「No」)、装置が始動することはない(S4)。
【0063】
すべての検知信号が確認される(S3「Yes」)と、装置が始動する。まず、制御部12は、モータ20を所定の速度で回転させる(S5)。そして、駆動輪30は、所定距離回転すると、位置規制突起301の一つが手前から二番目に位置する位置規制穴601に係合する。この時、近接スイッチ26は、次の被検出突起24を検知し、検知信号を出力する(S6「Yes」)。制御部12による制御は、この近接スイッチ26の検知信号を検出した後、穿孔禁止スイッチ70がオフ状態にあるかオン状態にあるかどうかによって異なる。
【0064】
穿孔禁止スイッチ70がオフ状態にある場合(S8「No」)には、タイン42が芝生保護ユニット91の側壁903上ではなく、客土保持部901の上に位置しているということである。したがって、制御部12は、モータ20の回転を停止させ、エアシリンダ40を駆動させる。すなわち、エアシリンダ40の出力軸401を前進させ、その先端に固定されたタイン42によって客土保持部901に形成された芝地に通気孔を形成する。なお、エアシリンダ40の駆動方法、駆動のタイミングについては上述した通りである(S9〜S14)。
【0065】
そして、制御部12は、エアシリンダ40cの出力軸401が後退端に位置した旨の信号を得る(S14「Yes」)と、再びモータ20を回転させ(S5)、次の近接スイッチ26からの信号を待つ。
【0066】
一方、穿孔禁止スイッチ70がレール60の当接部601aに当接し、オン状態にある場合(S8「Yes」)には、タイン42が客土保持部901の上ではなく、芝生保護ユニット91の側壁903上に位置しているということである。したがって、制御部12は、エアシリンダ40を駆動させずに、モータ20を停止させることなくそのまま回転させて装置を走行させる(S5)。このように、穿孔禁止スイッチ70がオン状態にある場合には、そのまま装置を走行させて、側壁903に向けてタイン42が突き刺されることがないように動作する。
【0067】
そして、制御部12は、次の近接スイッチ26からの信号を得るまでモータ20を回転させて、装置を走行させる。近接スイッチ26からの信号を得る(S6「Yes」)と、再び周期的にオン状態となる穿孔禁止スイッチ70からの信号の有無に基づき、モータ20を停止させてエアシリンダ40を駆動させるか、エアシリンダ40を駆動させずにモータ20をそのまま回転させるかを判断することになる(S8)。図12のタイムチャートにも示すように、これを繰り返し、敷設されたレール60に沿って、芝生保護マット90の側壁903が存在する位置を避けながら、客土保持部901の略中央に通気孔が形成される。
【0068】
以上のように構成される芝地用穿孔装置1によれば、次のような作用効果が奏される。すなわち、芝地用穿孔装置1は、所定距離走行する度に、エアシリンダ40が駆動し、タイン42が芝地に突き刺されるように制御部12が制御する構成であるため、所定間隔で芝地に通気孔を形成することができる。また、芝地に対して垂直に保持されたタイン42が芝地に突き刺される際には、一旦装置の走行が停止されるため、芝地に対して垂直な通気孔を形成することができ、通気孔の形成によって逆に芝地が荒れてしまうなどの不具合の発生が防止される。
【0069】
また、芝地用穿孔装置1は、芝地上に敷設されたレール60に案内されて走行する構成であるため、装置の重みが直接芝生に掛からない。つまり、装置の踏圧がレール60によって分散されるため、芝生に車輪痕が形成されるなど、芝生の損傷が防止される。さらに、レール60によって走行中における装置の上下動が抑制されるため、通気孔の深さを一定にすることができる。加えて、レールに案内される駆動輪30および従動輪50によって装置の走行が安定するため、装置が所定の経路から外れて走行してしまうことがない。つまり、確実に所望の範囲に通気孔を形成することができる。
【0070】
また、レール60には、軸方向に並んだ位置規制穴601が形成され、装置が所定位置まで走行すると、駆動輪30に設けられた位置規制突起301がレール60の位置規制穴601に係合するように構成されている。かかる構成によれば、エアシリンダ40を駆動させて通気孔を形成する時における装置の位置ずれが防止され、確実に所定の位置に通気孔を形成することができる。
【0071】
一般的に、通気孔を形成する位置は数mm単位の精度が求められる場合は少ない。しかし、装置が1ピッチ走行する度に少しずつ装置が位置ずれした場合、その小さな位置ずれが積み重なり、ある程度装置が走行すると通気孔の形成位置が大きくずれてしまうことがある。本実施形態のように、装置が1ピッチ走行する度に位置規制突起301を位置規制穴601に係合させるように構成し、両者の係合時にその小さな位置ずれが吸収されるようにすれば、このような小さな位置ずれの積み重なりから生ずる大きな位置ずれの発生を防止することができる。したがって、例えば位置規制突起301を先細のテーパ形状にしたり、位置規制穴601を上方に向かって拡径するテーパ形状にすれば、位置規制突起301と位置規制穴601の係合によって、1ピッチ走行する毎の装置の位置ずれをより確実に吸収することができ、さらに好適である。
【0072】
また、芝地用穿孔装置1は、複数のタイン42を備え、そのタイン42を複数回に分けてエアシリンダ40によって動作させている。そして、同時に駆動されるエアシリンダ40の位置関係が、装置の走行方向と直交する方向における本体10の中心軸Xに対して対称となるようにしているため、タイン42が芝地に突き刺された際に本体10が受ける反作用力は、本体10の中心軸に対して偏ることはない。ゆえに、かかる構成によれば、駆動輪30や従動輪50がレール60から外れてしまったり、装置が横転してしまうおそれを低減することができる。
【0073】
そして、本実施形態に係る芝生用穿孔装置1は、所定間隔で芝地に通気孔を形成することができるため、芝生保護マット90を用いた芝地であっても、芝生を保護するための支持突起902を避け、客土保持部901に通気孔を自動で形成することができる。このように、芝生保護マット90を用いた芝地に芝地用穿孔装置1を適用した場合には、次のような作用効果が奏される。
【0074】
すなわち、芝生保護マット90を用いた芝地では、芝生を保護するための支持突起902による凹凸があるが、芝地に敷設されたレール60上を回転する駆動輪30を設けることによって、その凹凸の影響を受けずに装置を安定して走行させることができる。
【0075】
また、装置が所定距離進行する度、レール60に設けられた位置規制穴601に、駆動輪30に設けられた位置規制突起301が係合することによって、装置の位置ずれが防止されているため、支持突起902を避け、確実に客土保持部901にタイン42が突き刺される。
【0076】
さらに、側壁903が形成された芝生保護ユニット91が複数連結されてなる芝生保護マット90が用いられた芝地を穿孔する場合、タイン42が側壁903上に存在するときに、穿孔禁止スイッチ70(および当接部601a)によって周期的にエアシリンダ70が駆動しないようにすれば、タイン42や芝生保護ユニット91の側壁903の損傷が防止される。なお、このような側壁903に限られず、装置の走行方向に向かって周期的にタイン42を突き刺すことができないような障害物が存在する場合には、穿孔禁止スイッチ70によってタイン42がその障害物に突き刺されることがないように設定することができる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態に係る芝地穿孔装置1は、被検出部24における隣り合う被検出突起241の角度(θ1)が一定であるため、芝地に一定の間隔で通気孔が形成される仕様であるが、隣り合う被検出部241の角度を一定にせず、装置が1ピッチ走行する度に、芝地に形成される通気孔の間隔が変化するように構成してもよい。この場合は、隣り合う被検出突起241の角度と合わせて、被検出突起241と同位相で回転する駆動輪30の位置規制突起301の角度(θ2)も設定すればよい。また、被検出突起241を用いず、直接モータ20の回転量を制御することにより、所定位置で装置を一旦停止させるように構成してもよい。
【0079】
また、装置が所定位置まで走行すると、駆動輪30に設けられた位置規制突起301がレール60の位置規制穴601に係合するように構成されていることを説明したが、上述した装置の位置ずれを防止する効果が得られるのであれば、その形状は適宜変更可能である。例えば、レール60に突起を設け、駆動輪30に凹部を設けた構成としてもよい。また、レール60の位置規制部に係合する係合部を、駆動輪30のみならず、従動輪50に設けることも可能である。
【0080】
さらに、芝地を穿孔するタイン42を進退動させるアクチュエータとして、本実施形態ではエアシリンダ40を用いたことを説明したが、その他のアクチュエータ、例えば油圧シリンダ等を用いることも可能である。また、アクチュエータの動力を、カム機構を介してタイン42の進退動作として出力するように構成することも可能である。
【0081】
また、芝地用穿孔装置1は、レール60に案内されて自動で進行することを説明したが、レール60を用いず、制御部12やモータ20等を無線通信で制御することができるようにして、任意の方向に装置を誘導し、任意の位置で停止、穿孔することができるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 芝地用穿孔装置
10 本体
12 制御部
20 モータ
30 駆動輪
301 位置規制突起
40 エアシリンダ
401 出力軸
42 タイン
60 レール
601 位置規制穴
601a 当接部
70 穿孔禁止スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝地に突き刺すことにより該芝地に穿孔するタインを備える装置本体を該芝地面に沿って走行させる走行手段と、該芝地面に対して略垂直方向に前記タインを進退動させるアクチュエータと、前記装置本体を所定位置まで走行させる走行動作と該走行動作後に停止させる停止動作とを繰り返し、前記装置本体の停止中に前記タインを前記芝地面に向けて進退動させるように前記アクチュエータを制御する制御手段とを備えることを特徴とする芝地用穿孔装置。
【請求項2】
前記走行手段は、前記芝地に敷設されるレール上を転動する車輪を有し、該車輪が前記レール上を転動することにより前記レール上を前記装置本体が走行するように構成されていること特徴とする請求項1に記載の芝地用穿孔装置。
【請求項3】
前記芝地に敷設されるレールには、そのレール方向に沿って複数の位置規制部が設けられており、前記車輪の外周面には、前記装置本体が前記所定位置まで走行する度に、前記レールに形成された一の位置規制部に順次係合される係合部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の芝地用穿孔装置。
【請求項4】
前記請求項2または3に記載の芝地用穿孔装置において、さらに、前記制御手段による前記アクチュエータの駆動を周期的に禁止する穿孔禁止手段が設けられていることを特徴とする芝地用穿孔装置。
【請求項5】
前記穿孔禁止手段は、前記レールに設けられた当接部に当接してオン状態となるリミットスイッチを有し、該リミットスイッチがオン状態となることにより前記アクチュエータの駆動が禁止されるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の芝地用穿孔装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の芝地用穿孔装置において、前記アクチュエータが複数備えられる場合に、前記制御手段は、前記装置本体の走行方向と直交する方向における前記装置本体の中心軸に対して対称の位置関係にある前記アクチュエータを順次駆動させることを特徴とする芝地用穿孔装置。
【請求項7】
芝地に穿孔するタインを装置本体に備えた芝地用穿孔装置を自走で所定位置まで走行させ、その度に前記芝地用穿孔装置の走行を一旦停止させた後、前記タインを芝地に対して略垂直に突き刺して穿孔し、しかる後、前記芝地用穿孔装置を次の所定位置まで走行させるようにしたことを特徴とする芝地の穿孔方法。
【請求項8】
前記芝地用穿孔装置に走行用の車輪を設け、前記芝地用穿孔装置が該車輪の転動によって前記芝地上に敷設されるレール上を走行するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の芝地の穿孔方法。
【請求項9】
前記芝地用穿孔装置は、前記芝地用穿孔装置が前記所定位置まで走行する度に、前記レールのレール方向に沿って設けた一の位置規制部に前記車輪の外周面に設けた一の係合部が順次係合するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の芝地の穿孔方法。
【請求項10】
前記芝地用穿孔装置に設けられた穿孔禁止手段によって前記タインによる穿孔動作を周期的に禁止するようにしたことを特徴とする請求項8または9に記載の芝地の穿孔方法。
【請求項1】
芝地に突き刺すことにより該芝地に穿孔するタインを備える装置本体を該芝地面に沿って走行させる走行手段と、該芝地面に対して略垂直方向に前記タインを進退動させるアクチュエータと、前記装置本体を所定位置まで走行させる走行動作と該走行動作後に停止させる停止動作とを繰り返し、前記装置本体の停止中に前記タインを前記芝地面に向けて進退動させるように前記アクチュエータを制御する制御手段とを備えることを特徴とする芝地用穿孔装置。
【請求項2】
前記走行手段は、前記芝地に敷設されるレール上を転動する車輪を有し、該車輪が前記レール上を転動することにより前記レール上を前記装置本体が走行するように構成されていること特徴とする請求項1に記載の芝地用穿孔装置。
【請求項3】
前記芝地に敷設されるレールには、そのレール方向に沿って複数の位置規制部が設けられており、前記車輪の外周面には、前記装置本体が前記所定位置まで走行する度に、前記レールに形成された一の位置規制部に順次係合される係合部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の芝地用穿孔装置。
【請求項4】
前記請求項2または3に記載の芝地用穿孔装置において、さらに、前記制御手段による前記アクチュエータの駆動を周期的に禁止する穿孔禁止手段が設けられていることを特徴とする芝地用穿孔装置。
【請求項5】
前記穿孔禁止手段は、前記レールに設けられた当接部に当接してオン状態となるリミットスイッチを有し、該リミットスイッチがオン状態となることにより前記アクチュエータの駆動が禁止されるようにしたことを特徴とする請求項4に記載の芝地用穿孔装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の芝地用穿孔装置において、前記アクチュエータが複数備えられる場合に、前記制御手段は、前記装置本体の走行方向と直交する方向における前記装置本体の中心軸に対して対称の位置関係にある前記アクチュエータを順次駆動させることを特徴とする芝地用穿孔装置。
【請求項7】
芝地に穿孔するタインを装置本体に備えた芝地用穿孔装置を自走で所定位置まで走行させ、その度に前記芝地用穿孔装置の走行を一旦停止させた後、前記タインを芝地に対して略垂直に突き刺して穿孔し、しかる後、前記芝地用穿孔装置を次の所定位置まで走行させるようにしたことを特徴とする芝地の穿孔方法。
【請求項8】
前記芝地用穿孔装置に走行用の車輪を設け、前記芝地用穿孔装置が該車輪の転動によって前記芝地上に敷設されるレール上を走行するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の芝地の穿孔方法。
【請求項9】
前記芝地用穿孔装置は、前記芝地用穿孔装置が前記所定位置まで走行する度に、前記レールのレール方向に沿って設けた一の位置規制部に前記車輪の外周面に設けた一の係合部が順次係合するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の芝地の穿孔方法。
【請求項10】
前記芝地用穿孔装置に設けられた穿孔禁止手段によって前記タインによる穿孔動作を周期的に禁止するようにしたことを特徴とする請求項8または9に記載の芝地の穿孔方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−213621(P2010−213621A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63715(P2009−63715)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(594001627)ヤハギ緑化株式会社 (3)
【出願人】(000245852)矢作建設工業株式会社 (38)
【出願人】(301071941)株式会社 テクノサポート (4)
【出願人】(504229309)司工機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(594001627)ヤハギ緑化株式会社 (3)
【出願人】(000245852)矢作建設工業株式会社 (38)
【出願人】(301071941)株式会社 テクノサポート (4)
【出願人】(504229309)司工機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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