説明

花瓶の水で用いるための抗微生物添加剤

本発明は、微生物の増殖を妨害するために、切花の花瓶の水、とりわけ、添加された切花の栄養剤および/または水揚げ刺激剤を含有する花瓶の水に有利に添加され得る抗微生物組成物に関する。本発明の一つの側面は、切花の花瓶の水のための抗微生物添加剤としての、EC 1.1.3オキシドレダクターゼの使用に関する。本発明の別の側面は、切花を花瓶の水に入れる方法であって、一または複数の切花の茎を花瓶の水に浸漬すること、および切花を花瓶の水に浸漬する前、後、または同時に、EC 1.1.3オキシドレダクターゼを含有する抗微生物組成物を花瓶の水に添加することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の増殖を妨害するために、切花の花瓶の水、とりわけ、添加された切花の栄養剤および/または水揚げ刺激剤を含有する花瓶の水に有利に添加され得る抗微生物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
切花の花瓶寿命は、栄養剤および/または水揚げ刺激剤をある種の化学的保存剤と組み合わせて使用することにより延長できることが知られている。かかる栄養剤の例には、炭水化物、たとえばスクロース、フルクトース、グルコース、ラクトースおよびマルトースが含まれる。水揚げ刺激剤の例には、酸味料(acidulants)、たとえばクエン酸、グリコール酸、リンゴ酸および硫酸アルミニウム、陰イオン性および非イオン性界面活性剤が含まれる。現在使用されている化学的保存剤には、殺生物剤、たとえばイソチアゾリノン、ブロノポールおよび第四級アンモニウム塩が含まれる。種々の混合物を含有する幾つかの花コンディショニング組成物が、商業的に入手可能であり、たとえばChrysal(登録商標)である。これらの組成物は、切花の花瓶寿命を数日まで延長するのに有効である。Doi and Reid, Hort. Science 30: 1058-1060 (1995) は、Physan(ベンザルコニウム消毒剤)およびスクロースを含有する花瓶溶液を記載し、これは、小花(florets)の寿命を延長し、更に蕾が開くのを促進した。
【0003】
殺生物剤は、細菌および藻類などの微生物の増殖を阻害するために採用されている。微生物の増殖は、花瓶の水に溶解されている切花の栄養剤および水揚げ刺激剤の有効性に対して望ましくない効果を及ぼし、これにより花の最長寿命に悪影響を及ぼし、加えて、水を濁らせ、嫌なにおいを引き起こす。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、EC 1.1.3.オキシドレダクターゼを花瓶の水に添加することにより、切花の花瓶の水における微生物の増殖を非常に効果的に阻害できることを予想外に発見した。オキシドレダクターゼの抗微生物効果は、花瓶の水が、微生物の増殖を助ける栄養剤を含有する場合、特に顕著である。花瓶の水へのEC 1.1.3.オキシドレダクターゼの添加は、有利には、新鮮な切花がそこに浸漬されるのとほぼ同時に行われる。よって、花瓶の水は、長期間にわたって透明なままであることが保証される。加えて、オキシドレダクターゼの導入は、嫌なにおいの発生を妨害し、切花の花瓶寿命を延長することを助ける。
【0005】
本発明の抗微生物添加剤において使用されるオキシドレダクターゼは、酵素分類(Enzyme Classification)(EC) 1.1.3のオキシドレダクターゼ、すなわち、ヒドロキシメチレン基(>CH−OH)を水素供与体(電子供与体)として、および分子酸素を水素受容体として使用するオキシダーゼから選択される。その例は、グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.3)、ヘキソースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)、ガラクトースオキシダーゼ(EC 1.1.3.9)、およびアルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.3.13)である。これらオキシダーゼは、特定の基質の(たとえば、グルコースオキシダーゼの場合グルコースのδ−グルコノラクトンへの、アルコールデヒドロゲナーゼの場合エタノールのアセトアルデヒドへの)酸化、および同時に起こる酸素の過酸化水素への還元を触媒することができる。
【0006】
理論に縛られることを望まないが、抗菌作用形態は、おそらく、過酸化水素の酸化能力、およびたとえば公知のグリコシルトランスフェラーゼ阻害剤であるδ−グルコノラクトンなどの酸化産物の存在の両方によるものであると本発明者らは信じる。加えて、基質(たとえばヘキソースまたはエタノール)の酸化は、花瓶の水における酸素レベルを低下させ、これにより好気性微生物の増殖を阻害する。
【発明の詳細な説明】
【0007】
従って、本発明の一つの側面は、切花の花瓶の水のための抗微生物添加剤としての、EC 1.1.3オキシドレダクターゼの使用に関する。本発明の特に好ましい態様に従って、EC 1.1.3オキシドレダクターゼは、グルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.3)、ヘキソースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)、ガラクトースオキシダーゼ(EC 1.1.3.9)、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.3.13)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。これらオキシダーゼのそれぞれは、花瓶の水における微生物の増殖を妨害するために効果的に採用することができ、効力は、花瓶の水における酵素基質レベルに依存する。
【0008】
最も好ましくは、抗微生物添加剤で採用されるEC 1.1.3オキシドレダクターゼは、グルコースオキシダーゼである。オキシダーゼの単位は、通常、基質の変換の観点から活性で表現される。グルコースオキシダーゼについて、適切な単位は、SRU(Sarett Unit)であり、1SRUは、pH 5.1のリン酸緩衝液中、30℃での、1分あたりの、0.43μモルのグルコースのグルコン酸またはそのラクトンへの変換に相当する。
【0009】
グルコースオキシダーゼは、好ましくは、1リットルあたり少なくとも1 Sarett Units(SRU)、更に好ましくは1リットルあたり少なくとも5 SRU、最も好ましくは1リットルあたり少なくとも10 SRUの量で花瓶の水に添加される。典型的には、花瓶の水に添加されるグルコースオキシダーゼ活性の量は、1リットルあたり200 SRUを超えない。より好ましくは、グルコースオキシダーゼの量は、1リットルあたり100 SRUを超えない。
【0010】
EC 1.1.3オキシダーゼは、任意の由来であってもよく、好ましくは微生物由来である。適切なグルコースオキシダーゼは、真菌由来、たとえばAspergillus niger由来であり得る。本発明のオキシドレダクターゼの抗微生物効果は、花瓶の水がオキシドレダクターゼにより変換することができる基質を含有するときに顕在化する。これらの基質は、通常、多くの微生物のための栄養剤であるため、オキシドレダクターゼの抗微生物作用は、それが必要な場合、すなわち微生物の増殖が好むような条件の場合に明らかになる。
【0011】
上述のとおり、本発明の抗微生物添加剤は、切花の栄養剤および/または水揚げ刺激剤を更に含有する花瓶の水において微生物の増殖を妨害するために使用された場合、特に効果的である。これらの成分は、微生物がこれらを代謝することができるため、通常、微生物の増殖を刺激する。同時に、これらの同じ成分は、オキシドレダクターゼにより基質として使用されてもよく、これにより、抗微生物作用を発揮する。
【0012】
特に好ましい態様に従って、本発明の抗微生物添加剤は、EC 1.1.3オキシドレダクターゼに加えて、一または複数の切花の栄養剤および/または水揚げ刺激剤を含有する。適切に採用することができる切花の栄養剤の例には、スクロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、およびこれらの組み合わせが含まれる。抗微生物添加剤に有利に組み込むことができる水揚げ刺激剤の例には、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、硫酸アルミニウム、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0013】
本発明の抗微生物添加剤は、好ましくは、殺真菌剤、抗生物質、殺菌剤、酵母阻害剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される殺生物剤を更に含有する。EC 1.1.3オキシドレダクターゼに加えて殺生物剤の使用は、オキシドレダクターゼの抗微生物効果を有意に高めることが見出された。
【0014】
本発明の別の側面は、切花を花瓶の水に入れる方法であって、一または複数の切花の茎を花瓶の水に浸漬すること、および切花を花瓶の水に浸漬する前、後、または同時に、EC 1.1.3オキシドレダクターゼを含有する抗微生物組成物を花瓶の水に添加することを含む方法に関する。
【0015】
本発明に従って採用される抗微生物組成物は、好ましくは、主として水溶性である。より詳細には、抗微生物組成物の少なくとも80 wt.%、より好ましくは少なくとも90 wt.%が、5 g/lの量で添加されたときに、20℃の蒸留水に溶解することが好ましい。
【0016】
抗微生物組成物は、有利には、少なくとも5 g/lのドライ物質含量を有する、錠剤、散剤、パスタ剤、または流体の形態で、花瓶の水に添加される。最も好ましくは、前記組成物は、錠剤または散剤の形態で添加される。
【0017】
好ましくは、本発明に従って採用される抗微生物組成物は、グルコースオキシダーゼをドライ物質1gあたり0.1〜200 SRUの量、最も好ましくはドライ物質1gあたり0.5〜100 SRUの量で含有する。特に好ましい態様によれば、抗微生物組成物は、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される炭水化物のドライ物質を少なくとも5重量%含有する。より好ましくは、炭水化物は、グルコース、スクロース、またはこれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、炭水化物はグルコースである。
【0018】
本発明の別の態様に従って、抗微生物組成物は、一または複数の酸味料(acidulants)を含有する。抗微生物中への酸味料の組み込みは、オキシドレダクターゼの抗微生物作用を高めることが見出された。適切に採用され得る酸味料の典型的な例には、グルコン酸、グルコノ−デルタラクトン、クエン酸、酒石酸、プロピオン酸、グリコール酸、フマル酸、ソルビン酸、リンゴ酸、硫酸アルミニウム、およびこれらの組み合わせが含まれる。特に好ましい態様によれば、本発明の方法で採用される酸味料は、グルコン酸、グルコノ−デルタラクトン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。最も好ましくは、抗微生物組成物は、グルコノ−デルタラクトンを含有する。グルコン酸とは異なり、グルコノ−デルタラクトンは周囲温度で固体であり、これにより、散剤および錠剤などの固体調合物にこの酸味料を組み込みやすい。グルコノ−デルタラクトンは、花瓶の水に添加されると、徐々にグルコン酸に変換し、これにより、花瓶の水のpH低下を引き起こす。
【0019】
有利には、花瓶の水のpHは、本発明の抗微生物組成物を添加した結果、少なくとも1.0 pHユニット、より好ましくは少なくとも1.5 pHユニット、最も好ましくは2.0〜4.0 pHユニット低下する。
【0020】
本発明の方法は、有利には、殺真菌剤、抗生物質、殺菌剤、酵母阻害剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される殺生物剤を含有する抗微生物組成物を採用する。より好ましくは、前記殺生物剤は、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有する第四級アンモニウム化合物、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有するグアニジン化合物、ブロモ−窒素誘導体、イソチアゾリノン、ヒドロキシキノリン、1,3-ジハロ-5,5-ジメチルヒダントイン、クロラムフェニコール、スペクチノマイシン、アルキルパラベン、サリチル酸およびその塩、安息香酸およびその塩、ソルベート、チアベンダゾール1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-クロロスルホンアミド、イソシアヌレート、リゾチーム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。最も好ましくは、殺生物剤は、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有する第四級アンモニウム化合物、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有するグアニジン化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。後者の群に属する殺生物剤は、花瓶の水においてオキシドレダクターゼの抗微生物作用を効果的に高める。
【0021】
典型的には、抗微生物組成物を含有する殺生物剤は、0.5〜1000 mg/lの濃度で殺生物剤をデリバーするように花瓶の水に添加される。最も好ましくは、本発明の方法において、殺生物剤は、1〜200 mg/lの濃度で花瓶の水に添加される。
【0022】
本発明の利点を実現するために、抗微生物組成物は、典型的には、0.1〜40 g/lの量で花瓶の水に添加される。より好ましくは、抗微生物組成物は、0.5〜20 g/l、最も好ましくは1〜15 g/lの量で添加される。
【0023】
本発明の更に別の側面は、ある量の水、および茎が少なくとも部分的に前記水に浸漬された一または複数の花を保持する容器であって、前記水が、グルコースオキシダーゼを1リットルあたり1〜200 SRUの濃度で含有する、容器に関する。好ましくは、グルコースオキシダーゼは、1リットルあたり5〜100 SRUの濃度、最も好ましくは1リットルあたり10〜50 SRUの濃度で水に含有される。別の好ましい態様によれば、花瓶は、殺真菌剤、抗生物質、殺菌剤、酵母阻害剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される殺生物剤を含有する。殺生物剤は、有利には、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有する第四級アンモニウム化合物、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有するグアニジン化合物、ブロモ−窒素誘導体、イソチアゾリノン、ヒドロキシキノリン、1,3-ジハロ-5,5-ジメチルヒダントイン、クロラムフェニコール、スペクチノマイシン、アルキルパラベン、サリチル酸およびその塩、安息香酸およびその塩、ソルベート、チアベンダゾール1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、N-クロロスルホンアミド、イソシアヌレート、リゾチーム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0024】
殺生物剤は、好ましくは、0.5〜1000 mg/l、より好ましくは0.8〜500 mg/l、最も好ましくは1〜200 mg/lの濃度で花瓶の水に含有される。
【0025】
花瓶の水は、有利には、5.5未満のpH、より好ましくは3.0〜5.0、最も好ましくは3.5〜4.8のpHを有する。
【0026】
本発明の抗微生物組成物の種々の成分は、以下で、更に詳細に説明される。その量は、抗微生物組成物の単回投与量単位に関連し、これは、典型的には、1リットルの保存剤溶液(花瓶の水)で使用するためにデザインされる。典型的には、本発明の抗微生物組成物の投与量単位は、0.1〜40 gのドライ物質、より好ましくは0.5〜20 gのドライ物質、最も好ましくは10 gのドライ物質を含有する。
【0027】
投与量単位が、測定される液体の量である場合、単位投与量あたりで与えられる量は、
投与量単位の液体の量に依存して、同様のやり方で1リットルあたりの重量に変換することができる。
【0028】
本発明の抗微生物組成物は、投与量単位あたり1〜200 SRU、好ましくは5〜100 SRU、最も好ましくは10〜50 SRUのグルコースオキシダーゼを好ましくは含有する。
【0029】
本発明の抗微生物組成物におけるオキシドレダクターゼの抗微生物効果は、花瓶の水における対応の基質の存在に依存する。かかる基質は、花瓶に予めある程度存在させてもよいし、本発明の抗微生物組成物を介して提供されてもよいし、あるいは別々に添加されてもよい。酵素基質(アルコールまたは炭水化物、たとえばグルコース)のトータル量は、花瓶の水溶液1リットルあたり100 mg〜50 gとすることができる。好ましくは、酵素基質の量は、0.2〜20 g/lの範囲である。酵素基質は、好ましくは、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される炭水化物であり、グルコースが最も好ましい。
【0030】
有利な態様において、本発明の抗微生物組成物は、投与量単位あたり少なくとも100 mg、より好ましくは0.2〜50 g、最も好ましくは0.2〜20 gの炭水化物を含有し、前記炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。10 g投与量単位の固体の抗微生物組成物において、基質、たとえばグルコースは、9.99 gまでのドライ物質の量で組み込まれ得る。好ましくは、0 g〜9.8 gの基質は、10 gのドライ組成物に組み込まれる。
【0031】
本発明により使用される第四級アンモニウム化合物は、窒素原子に共有結合した4つの有機基を有し、そのうちの少なくとも一つは、少なくとも6つの炭素原子を有するアンモニウム化合物である。これらは、一般に、式R1R2R3R4N+X-により表すことができ、ここで、
−R1は、C6〜C24炭化水素基であり、これは、たとえば一または複数のハロゲン原子で、ヘテロ置換されていてもよく;
−R2は、C1〜C24炭化水素基であり、これは、たとえば一または複数のハロゲン原子で、ヘテロ置換されていてもよく;
−R3およびR4は、C1-C6アルキル基であり;
−あるいは、R1およびR2またはR3およびR4は、窒素原子と一緒に、飽和または部分的に不飽和の環を形成していてもよく、または、R1、R2、R3またはR4は、C2-C6アルキレン、シクロアルキレン、ピペラジン基の形態で、第二の窒素原子に連結し、これによりダイマーまたはポリマーの第四級アンモニウム化合物を形成してもよく;
−Xは、ハロゲン、または有機酸もしくは無機酸の残基である。
【0032】
第四級アンモニウム塩の例は、ベンザルコニウムクロライド(C12〜C18アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)、C12〜C18 アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド、およびジデシルジメチルアンモニウムクロライドである。組み合わせも使用され得る。
【0033】
好ましくは、第四級アンモニウム化合物は、投与量単位あたり2〜500 mg、好ましくは投与量単位あたり5〜250 mg、最も好ましくは投与量単位あたり10〜100 mgのレベルで、本発明の抗微生物組成物に存在する。
【0034】
本発明により使用されるグアニジン化合物は、グアニジン基(-NRa-C(=NRb)-NRc-)を含有する有機化合物であり、ここでRa、RbおよびRcは、水素、またはC1〜C24炭化水素基であり、これは、たとえばハロゲンで、任意にヘテロ置換される。窒素原子上の少なくとも一つの基は、好ましくは、少なくとも6つの炭素原子を含有すべきである。グアニジン化合物の例には、クロルヘキシジン(A-NCH3-C(=NH)-NH-C(=NH)-NH-(CH2)6-NH-C(=NH)-NH-C(=NH)-NCH3-A、ここでAはp-クロロフェニルである、およびとりわけポリ−ヘキサメチレン−ビグアニド(PHMB: [-(CH2)6-NH-C(=NH)-NH-C(=NH)-NH-]n)が含まれる。
【0035】
好ましくは、グアニジン(ビグアニド)化合物は、投与量単位あたり1〜100 mg、より好ましくは投与量単位あたり2〜60 mg、最も好ましくは2.5〜20 mgグアニジン化合物のレベルで、本発明の抗微生物組成物に存在する。
【0036】
好ましい態様において、組成物は、組成物からつくられる溶液(花瓶の水)のpHを3〜5.5、好ましくは3.5〜5.0に調整するのに効果的な量の酸味料を更に含む。すなわち、本発明の組成物の投与量単位が、周囲温度で1リットルの水に添加されると、そこに含有される酸味料は、花瓶の水のpHを上記範囲内に有利に低下させる。
【0037】
所望のpH低下を達成するのに必要な酸味料の量は、本発明の抗微生物組成物の緩衝能力、および花瓶の溶液を構成するために使用される水に依存する。典型的な範囲は、投与量単位あたり10〜1000 mg、好ましくは投与量単位あたり50〜700 mgである。
【0038】
本発明の組成物は、適切には、たとえば投与量単位あたり1〜500 mgの量で、陰イオン性または非イオン性界面活性剤を含有してもよい。本発明の目的のために有用な適切な非イオン性界面活性剤材料には、非イオン性界面活性剤、たとえば一般の脂肪酸 (たとえばパルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸)で部分的にエステル化されたソルビトールから得られるヘキシトール無水物(ヘキシタン(hexitans)およびヘキシド(hexides))が含まれるが、これに限定されない。他の適切な非イオン性界面活性剤には、ポリ(オキシエチレン)基で遊離のヒドロキシル基をエステル化することにより後者の界面活性剤から得られる材料が含まれる。加えて、ポリエトキシ化オクチル−またはノニルフェノールも使用することができる。エトキシ化された直鎖アルコールを含む非イオン性界面活性剤、並びにプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのブロック共重合体を含む非イオン性界面活性剤も使用することができる。加えて、エチレンジアミンのポリオキシアルキレン誘導体のブロック共重合体である非イオン性界面活性剤も使用され得る。適切な陰イオン性界面活性剤には、スルホコハク酸のエステルのアルカリ金属塩、たとえばジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが含まれる。
【0039】
本発明の抗微生物組成物は、適切には、液剤、パスタ剤、散剤、錠剤などの形態をとることができる。典型的には、本発明の組成物の水分含量は、90 wt.%未満であり、より好ましくは水分含量は、50 wt.%未満である。オキシドレダクターゼは、水の存在下における酵素の安定性がしばしば制限されるため、好ましくは、低い水分活性を有する抗微生物組成物で使用される。よって、特に好ましい態様によれば、本発明の組成物は、たとえば散剤または錠剤の場合、10 wt.%未満の水を含有する。
【0040】
本発明の組成物は、有利には、花瓶の水に添加し、その水が長期間にわたって透明なままであることを保証することができる。組成物が、好ましくは、水1リットルあたり少なくとも0.1 gドライ物質、特に1リットルあたり0.2〜50 g、とりわけ1リットルあたり0.5〜20 gの量で20℃の水に分散されると、完全に透明な溶液を産生する。上記要件は、本発明の組成物が、上記量で添加された場合に完全に溶解することを必ずしも意味しない。しかし、溶解しない材料は、たとえば花瓶の底に沈殿物の層を形成するため、花瓶の水の透明の品質に影響を及ぼさない。特に好ましい態様によれば、本発明の組成物は、水に高度に可溶である。
【0041】
本発明の一つの態様によれば、本発明の組成物は、散剤または錠剤である。ドライパウダーの形態である場合、本発明の調合物は、スクリューキャップまたはスナップキャップのボトルなど、密栓する蓋を備えた容器のように、最終用途のためにバルクで適切にパッケージされるか、あるいは好ましくは、単回使用のために必要な量の材料を含有するプラスチック、ホイルまたはペーパーの小袋(sachet)(EP-A 1289854参照)にパッケージされる。有利には、組成物の分散および溶解を促進するために発泡性成分が組み込まれてもよい。典型的には、本発明の組成物の錠剤は、0.1〜20 g、好ましくは0.5〜10 gの重量を有する。
【0042】
別の態様によれば、本発明の抗微生物組成物は、濃縮液体であり、好ましくは、1リットルあたり少なくとも10 gのドライ物質、たとえば900 g/lまで含み、より好ましくは、1リットルあたり25〜800 gのドライ物質を含む。かかる液体が、オキシドレダクターゼおよびオキシドレダクターゼ基質の両方を含有する場合、前記成分の少なくとも一つ、とりわけオキシドレダクターゼは、基質の早まった酸化を妨害するために、好ましくはカプセル化されるか、または別個にパックされる。
【0043】
本発明の抗微生物組成物は、投与量単位の重量および物理的性質にも依存して、約0.5 g/リットル〜約40 g/リットル、好ましくは約2 g/リットル〜20 g/リットルの範囲の濃度で、適切に花瓶に溶解される。切花の典型的なアレンジメントのために、花瓶またはバケット中の水の体積は、約1/2〜4リットルである。よって、本発明の組成物の単位投与量を含む好ましいパッケージは、ドライ物質として計算して、約0.5〜40グラム、とりわけ1〜40グラム、より詳細には2〜20グラムの組成物を含有する小袋(sachet)である。特に好ましい態様によれば、前記小袋は、水に浸漬した際に、水が容易に小袋に入り、抗微生物組成物と直接接触するように、少なくとも部分的に水透過性材料から構成される。かかる小袋を花瓶の水に浸漬することにより、小袋の中味は、浸入する水に溶解し、小袋から花瓶の水に拡散する。あるいは、小袋は、水不透過性材料から構成されてもよく、使用時に開口し、花瓶へ中味をあけてもよい。
【0044】
本発明の組成物は、花瓶の水に採用されるべきレベルにおいて、顕著な抗微生物効果を有するが、植物毒性効果をほとんど示さない。
【0045】
本発明は、以下の例により更に詳説される。
【例】
【0046】
以下のとおり構成される12の花の混合ブーケを、1リットルの溶液を含む花瓶に置いた:
バラ(Rosa)‘Passion’(2茎)
キク(Chrysanthemum santini)‘Noki’(2茎)
キク(Chrysanthemum santini)‘Quinty’(2茎)
ガーベラ(Gerbera)‘Baya’(2茎)
ガーベラ(Gerbera)‘Sardana’(2茎)
キンギョソウ(Antirrhinum)(1茎)
アキノキリンソウ(Solidago)‘Tara’(1茎)
溶液は、水道水または94.66%グルコース、5%クエン酸、0.34%慣用的な殺生物剤を含有する10 g/lの組成物を含有する水性ベース溶液の何れかとした。
【0047】
以下の成分を、ベース溶液に添加するか、または添加しなかった(1リットル溶液あたりの量):
− BZC: 0または30 ppmのベンザルコニウムクロライド
− GOX: 0または100 SRUのグルコースオキシダーゼ
結果は、花の寿命(FL(日))、x日後の水の透明性(WCx、1(不良)〜5(良)の範囲)、および7日後の細菌のコンタミネーション(CFU、1000 CFU/g 茎:10未満はコンタミほとんどなしまたはなし、10-100は適度にコンタミあり、100-1,000はコンタミあり、1,000を超えると重度にコンタミあり)で示す。花を含む花瓶は、20℃で、24時間あたり12時間1000 luxの下に置いた。
【表1】

【0048】
結果は、個々の成分が、各パラメータに対して明らかな効果を有することを示す。グルコースオキシダーゼは、水の透明性に対して強力な効果を有し、一方グルコースオキシダーゼおよびBZCは、細菌のコンタミネーションに対して強力な効果を有する。更に、これらの結果は、グリコースオキシダーゼおよび第四級アンモニウム殺生物剤(BZC)の併用により得られる相乗効果を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切花の花瓶の水のための抗微生物添加剤としての、EC 1.1.3オキシドレダクターゼの使用。
【請求項2】
オキシドレダクターゼがグルコースオキシダーゼである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
切花を花瓶の水に入れる方法であって、一または複数の切花の茎を花瓶の水に浸漬すること、および切花を花瓶の水に浸漬する前、後、または同時に、EC 1.1.3オキシドレダクターゼを含有する抗微生物組成物を花瓶の水に添加することを含む方法。
【請求項4】
抗微生物組成物が、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される炭水化物のドライ物質を少なくとも5重量%含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
オキシドレダクターゼがグルコースオキシダーゼである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
グルコースオキシダーゼが、1リットルあたり1〜200 SRUの量で花瓶の水に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗微生物組成物が、少なくとも5重量%のドライ物質の量でグルコースを含有する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
抗微生物組成物が、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有する第四級アンモニウム化合物、少なくとも一つのC6〜C24炭化水素残基を含有するグアニジン化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される殺生物剤を含有する、請求項3〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
抗微生物組成物が、グルコン酸、グルコノ−デルタラクトン、クエン酸、酒石酸、プロピオン酸、グリコール酸、フマル酸、ソルビン酸、リンゴ酸、硫酸アルミニウム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される酸味料を含有し、花瓶の水への抗微生物組成物の添加が、少なくとも1.0 pHユニットのpH低下を引き起こす、請求項3〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
ある量の水、および茎が少なくとも部分的に前記水に浸漬された一または複数の花を保持する容器であって、前記水が、グルコースオキシダーゼを1リットルあたり1〜200 SRUの濃度で含有する、容器。

【公表番号】特表2011−522788(P2011−522788A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507361(P2011−507361)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050258
【国際公開番号】WO2009/134118
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510287304)
【氏名又は名称原語表記】Enhold B.V.
【住所又は居所原語表記】Gooimeer 7, NL−1411 DD Naarden, the Netherlands
【Fターム(参考)】