説明

花留めと花器セット

【課題】従来、生花を花器へ固定する際に使用される花留めは、樹脂製や金属製であった
が、花留めの構造からして、生花を任意の位置へ固定することは難しく、金属製の花留めは花留め自身がサビたり人の手や生花の茎をキズつける恐れがあった。
生花を花器へ生ける際、任意の位置や角度に生花の茎を固定可能とし、人の手や生花の茎をキズつけることのない安全な花留めを提供することを課題とする。
【解決手段】花留めの材料にポリカーボネート樹脂を使った柔軟な線条部材を立体的網目 構造とし、線条部材が生花の茎を複数の接点において支えることにより、生花を花器の任
意の位置や角度に固定することを可能とする。ポリカーボネート樹脂製の線条部材は柔軟
であることに加え、とがった部分も無いため、人の手や生花の茎をキズつけることなく、安全に花留めとして使用可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生花を花器へ生ける際に、生花の茎を固定する為の花留めと花留めを使用した花器セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の花留めの形状は、例えば実用新案文献1に示すように合成樹脂製のネット形状で花留めを構成している。あるいは特許文献2のように、金属の線条束に切欠き面をつけ、花器へ生花を生ける際には切欠き面についたエッジで生花の茎を押さえ込む手法をとって
いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3036755号公報
【特許文献2】特開2003−135232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実用新案文献1によれば、網目構造をもった合成樹脂製ネットの形状か
らして、ネットの大きさは限定的なものであり、合成樹脂製ネットを設置しようとする花器の大きさは限定されてしまう。
花器が小さく、合成樹脂製ネットの大きさと合致しないとき、無理に合成樹脂製ネット
を花器へ押し込もうとすれば、ネットは柔軟性に乏しく破損することも考えられる。
【0005】
また、合成樹脂製ネットヘ生花の茎を挿す際には、合成樹脂製ネットは柔軟性に乏しく
、穴の数や大きさも決まっている為、生花の茎は2ヶ所の穴で固定されることになり、任
意の位置や傾きに固定できない。さらに、生花の茎を垂直に固定する際に、合成樹脂製ネットの1つの穴へ上から生花の茎を挿しても、生花の茎を固定すべきおさえがない為、思い通りに固定できない。
【0006】
また、特許文献2によれば、金属を材料とした線条部材を生花の茎を固定する花留めと
して提案しているが、金属の線条部材は切欠き面を持ち、切欠き面につけられたエッジは
線条部材を花器へ設置する際には花器や人の手をキズつける恐れがある。そして、生花の
茎を線条部材へ固定する為に挿す際には、切り欠き面につけられたエッジを利用して生花
の茎を押さえつける為、生花の茎をキズつける恐れがある。
【0007】
また、花器へ金属製の線条部材を固定する際や生花を線条部材へ固定する際の柔軟性は
不十分であり、花器に水を入れて使用する際にはサビの恐れもある。
更に、金属製の線条部材からなる花留めを使用して透明な花器へ生花を生ける際、金属
製の線条部材の色は照射される光や光の色によって変化することはなく、線条部材の色は限定される。
【0008】
そこで、本発明は、優れた柔軟性をもった線条部材を作製し、生花の大小、花器の大小、浅い深いにかかわらず、線条部材は花器の任意の位置へ固定されることが可能になり、生花の茎を挿す際には茎にキズをつけることなく、位置や角度、深さを思いのままに固定できる花留めを提供することを目的とする。
【0009】
加えて、花留めを形成する線条部材として使用する樹脂を選定することによって、機能
性と見た目の美しさを両立しつつ、安全性も併せ持つ花留めと花留めを使用した花器セットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1について、本発明は、線条部材の材料となるポリカーボネート樹脂で柔軟性を持つ線条部材を互いに立体的に絡み合わせて固化し、すき間に花を挿入可能としたことを特徴とするものである。
請求項2について、請求項1記載の花留めは、光を透過できる透明な線条部材であることを特徴とすることである。
【0011】
請求項3について、樹脂適合性試験(図11、12)を実施した結果、適合する樹脂の種類はポリカーボネート樹脂であり、線条部材の太さは0.5mmから3mmの範囲とすることを特徴とすることである。
請求項4について、線条部材の端部は球状またはうずまき状となっていることを特徴とすることである。
請求項5について、線条部材の材料として使用する、ポリカーボネート樹脂を着色した
り、金箔、銀箔などを混練し、見た目の美しさをもつことを特徴とすることである。
【0012】
請求項6について、花留めと花器セットは、透明な板の下に発光素子を内蔵した花器の
置き台と請求項1記載の花留めを使用した透明な花器を組み合わせることを特徴とするこ
とである。
請求項7について、請求項6記載の花器セットに使用される置き台に内蔵された発光素子は、複数の色に変化することを特徴とすることである。
請求項8について、請求項1記載の花留めは、収縮させた状態で花器の内部に挿入し、復元力によって花器の途中で固定されることにより任意の位置や角度へ生花を固定可能とすることを特徴とすることである。
【発明の効果】
【0013】
第一発明によれば、線条部材の材料となる樹脂の柔軟性を利用して、花器の大小、浅い
深いに関係なく任意の位置へ立体的網目構造をもつ花留めを、使用する花器の内壁へ固定
可能とした。
【0014】
また、生花を花器へ固定する際、立体的網目構造をもった線条部材は、生花の大小、茎の長短、太さに関係なく、生花の茎を花器へ固定する際、任意の位置や傾きに固定することを可能とした。
【0015】
第二発明によれば、樹脂適合性試験を実施し(図11)、1.機能性2.強度3.柔軟性4.生産性の試験項目を検証した結果、線条部材の材料にポリカーボネート樹脂製の花留めが総合的に良好であるとの結論を得た。また、線条部材の太さは、0.5mmから3mmの範囲が良好であるとの結論を得た。
【0016】
ポリカーボネート樹脂を線条部材の材料として採用することにより、強度、柔軟性、耐久性は従来の樹脂製花留めに比べはるかに向上し、ポリカーボネート樹脂の特長である高い透明性や光透過性は見た目も美しい。
例えば、ポリカーボネート樹脂製の花留めは、LEDライトを照射することにより、魅
力的な光を放ち、LEDライトの光の色に反応し、見た目も美しい。
【0017】
線条部材は樹脂製であることから、長期間にわたる水の入った花器への使用においても
サビることはない。
さらに、線条部材は柔軟な樹脂製であることに加え、線条部材作製時の樹脂加工工程に
おいてエッジやシャープな突起部分は発生しないことから、人の手や生花の茎をキズつけ
ることはなく安全である。
【0018】
更に、ポリカーボネート樹脂製の線条部材は柔軟性を確保するとともに、線条部材の太さは0.5から3mmの範囲で作製することから、プラスチック用ニッパやはさみを使用し必要量を容易に調製することが可能となった。
ポリカーボネート樹脂の透明性は、樹脂自体を着色したり金箔、銀箔を樹脂に混練することにより更に見た目は美しくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】花留めを透明な花器へ固定した斜視図である。
【図2】花留めを透明な花器へ固定した上面図である。
【図3】花留めを使用して実際に生花を透明な花器の任意の位置へ固定した斜視図である。
【図4】本発明の花留め単体の正面図である。
【図5】生花の茎を固定している花留めの状態を示す断面図である。
【図6】花留めの装飾性を強調して透明な浅い花器へ使用した斜視図である。
【図7】小さな生花を透明な大きな花器へ生けた図である。
【図8】材料に金箔を混練した花留めの図である。
【図9】線条部材の製造工程を示した図である。
【図10】発光素子を内蔵した置き台と花器のセット図である。
【図11】線条部材を使った樹脂適合性試験の評価表である。
【図12】ポリカーボネート樹脂の太さ適正試験の結果表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
花留めの実施形態を図1から図10に示す。
図4は、本発明の花留め単体の正面図である。
花留め2は、柔軟な線条部材6が互いに絡み合い立体網目構造を構成している。
また、花留めを構成する線条部材は、不規則な波状の形態をもつことを特徴とする。
【0021】
図9は、線条部材6が作られる製造工程を示す。
加熱されたノズル17から押し出された溶融樹脂24は、例えばボール型の器18に流れ込み、ボール型の器18の中で互いに絡み合いながら固化し網目構造を構成する花留め2ができる。
【0022】
図1は、筒状の透明な花器1へ花留め2を挿入した図面である。
筒状の透明な花器1の中へ押し込まれた花留め2は、深さのある筒状の花器1の内側の花器の上下の中間部15へ、樹脂の柔軟性を持った花留め2と筒状の透明な花器1とのすべては記載していない複数の接点3において、押し込まれた際に発生する弾性力によって支えられ、固定されている。具体的には、花留めを収縮させ花器内部に挿入し、復元力によって花留めが花器の途中で固定される。
【0023】
図2は、筒状の透明な花器1の中へ押し込まれた花留め2の固定状態を上面から見た図面である。
花留め2を筒状の透明な花器1の内側へ押し込む為、花留め2は筒状の透明な花器1の大きさに合わせて圧縮され、縮められた分だけ外へ広がろうとする力を蓄えている為、筒状の透明な花器1の中心部から外周方向へ向かう力が働いている。
外周方向へ向かう力は、筒状の透明な花器1と花留め2とのすべては記載していない複数の接点3において作用し、花留め2は筒状の透明な花器1の任意の位置へ固定される。
【0024】
図3は、透明な花器1の任意の位置へ固定された花留め2を実際に使用して、生花の茎4を花留め2へ固定した図面である。
生花の茎4は花留め2を構成する柔軟な線条部材6の複数の空隙12を抜けて、花留め2と生花の茎4とのすべては記載していない複数の接点5において支えられ、任意の位置に固定される。また、複数の空隙12を選択することや柔軟な線条部材6が生花の茎4をよけることによって、生花の茎4は垂直もしくは任意の角度をもった傾きにて自由にかつ確実に保持されることが可能となる。
【0025】
次に図5は、筒状の透明な花器の断面26と生花の茎の断面25、線条部材の断面7の状態を示す。
線条部材の断面7は、筒状の透明な花器26へ押し込まれる際、縮められた分だけ外周方向へ広がろうとする力を蓄えている為、線条部材の断面7は、筒状の透明な花器26とすべては記載していない複数の接点3において支えられ固定されている。
また、筒状の透明な花器26へ挿入された生花の茎の断面25は線条部材の断面7との複数の接点5において支えられ固定されている。
【0026】
図3と図5より、線条部材の断面7は、ほぼ円形状をなしており外周面も滑らかであることから、花留め2を花器1へ押し込む際や、生花の茎4を花留め2へ挿し固定する際に、人の手や花器1、生花の茎4をキズつけることはない。また、線条部材の端部は球状またはうずまき状となっていることを特徴とする。
【0027】
図6は、花留め2の見た目の美しさを強調して使用した図面で、透明で見えるように書いてある。
花留め2の材料であるポリカーボネート樹脂は、高い透明性や光透過性を備えており、
花留め自身の見た目の美しさを強調して使用することが可能である。浅い花器8に花留
め2を使用して小さな茎の短い生花11を固定する場合、既存する花留めは見た目の美しいものは少なく、花器からはみ出して使用することはほとんど無かった。しかし、花留め2は花留め自身が見た目も美しく、浅い花器8から盛り上げて使用することが可能である。
【0028】
従来、皿状の浅い花器8に生花の茎9を垂直に固定することは困難であった。しかし、花留め2を浅い花器8から盛り上げて使用することにより、小さな生花の茎9を支えるべき花留め2と小さな生花の茎9との接点5は増加し支点を増やすことができる為、安定して小さな生花の茎9を固定することができる。小さな生花の茎9を浅い花器8に対して垂直に固定することも可能となった。
【0029】
図7に示すように、花留め2は大きな深い透明な花器10へ茎の短い生花11を生ける際、これまで不可能であった固定方法も可能にした。従来の花留めは、例えば剣山のように花器の底部へ設置するものが多く、大きな深い透明な花器10へ茎の短い生花11を生ける際には茎の短い生花11は水中へ沈んでしまうこともあった。また、生花を花器のふちへ寄せて花器と生花の茎とを接触させてかろうじて固定するが、不安定なものであった。
【0030】
しかし、花留め2を使用することによって、花留め2は大きな深い透明な花器10との複数の接点3において保持される為、大きな深い透明な花器10の内側の上層部16へ固定されることが可能となった。
そして茎の短い生花11は、大きな深い透明な花器10の内側の上層部16へ固定された花留め2を利用することにより、大きな深い透明な花器10の内側の上層部16において、花留め2と茎の短い生花の茎9との複数の接点5において固定されることが可能となった。
【0031】
図8に示すように、材料のポリカーボネート樹脂に着色したり、金属箔や樹脂チップを混練し線条部材とした見た目の美しい花留めを作製することも可能である。
【0032】
図10は、発光素子21を内蔵した置き台19を使用して、透明な花留め2を固定した花器22を飾った断面図である。
花留め2は、透明な花器22の内側の上層部16に複数の接点3において固定されている。花器の置き台19に内蔵された発光素子21から照射された光は透明な板20および透明な花器22を透過し、透明な花器22の内側の上層部16に固定された透明な花留め2に到達する。
【0033】
花留め2は、透明なポリカーボネート樹脂製であることから、ポリカーボネート樹脂の特徴の一つであるレンズ機能を持ち、発光素子21から照射され花留め2に到達した光は花留め2内部を透過し透明な花器22の内側の上層部16から盛り上がった花留め23までも照らすことから、花器の置き台19と発光素子21、透明な花留め2を固定した花器22のセットは生花がない場合にもきれいな光り輝く飾り物として利用できる。例えば、花器の置き台19に内蔵された発光素子21から照射される光の色が青色の時、発光素子21から照射された青い光は、透明な板20を透過し、透明な花器22の内側の上層部16へ固定された透明な花留め2を鮮やかな青色に染め、光はさらに花器から盛り上がった花留め23をも青色に染める。発光素子21から照射される光の色は、青色に限らず赤色や黄色や緑色など任意に選べる。
【0034】
また、発光素子21が複数存在し、複数の発光素子21はそれぞれ固有の光を発光し、異なる色が順次変わって点滅していく際には、発光素子21から発光された光は、透明な板20を透過してさらに透明な花器の底27を透過して花留め23に光の照射が行われる。これにより、さらに華やかな光り輝く飾り物とすることができる。
【0035】
花留めを作製する為、材料となる樹脂の種類を選定する樹脂適合性試験を実施し、試験の結果を図11に示す。選定基準として試験評価表の試験項目にある花留めとしての機能性および生産性を特に重視し、総合評価点をもとに選定する事とした。
その結果、樹脂の種類はポリカーボネート樹脂が最も好ましい結果が得られた。
【0036】
さらに、ポリカーボネ―ト樹脂を使用して線条部材を作製する際、線条部材の適正な太さを決定するために、図12のポリカーボネート樹脂太さ適正試験を実施した。
太さを決定するにあたり、サイズの異なる花器へ太さ0.3mmから4mmまでの線条部材を使用し、その機能性を比較した。同時に、引張強度、荷重負荷試験も実施し線条部材の強度も比較検討した。
その結果、ポリカーボネート樹脂を使用した線条部材の太さは、0.5mmから3mmの範囲が好ましいという結果が得られた。
【符号の説明】
【0037】
1.花器
2.花留め
3.花器と花留めの接点
4.生花の茎
5.花留めと生花の茎の接点
6.線条部材
7.線条部材の断面
8.浅い花器
9.小さな生花の茎
10.大きな深い花器
11.茎の短い生花
12.空隙
13.金箔を混練した線条部材
14.金箔
15. 花器の内側の中央部
16. 花器の内側の上層部
17. ノズル
18. ボール型の器
19. 花器の置き台
20. 透明な板
21. 発光素子
22. 透明な花留めを固定した花器
23. 花器から盛り上がった花留め
24. 溶融樹脂
25. 生花の茎の断面
26. 花器の断面
27.花器の底



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂で柔軟性をもつ線条部材を、互いに立体的に絡み合わせて固化し、すき間に花を挿入可能としたことを特徴とする花留め。
【請求項2】
光を透過できる透明な前記線条部材からなる前記請求項1記載の花留め。
【請求項3】
前記線条部材の太さは、0.5mmから3mmの範囲からなる請求項1または請求項2記載の花留め。
【請求項4】
線条部材の端部は球状またはうずまき状となっていることを特徴とする請求項1,請求項2または請求項3記載の花留め。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂に着色することや金属箔や樹脂チップを混練した請求項1または請求項2,請求項3,請求項4記載の花留め。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の花留めと前記花留めを組み込んだ透明な花器と前記透明な花器を置く置き台からなる花器セット。
【請求項7】
前記置き台には、それぞれ固有の色を発光する複数の発光素子が設けられている請求項6記載の花器セット。
【請求項8】
前記花留めを収縮させた状態で前記花器の内部に挿入し、復元力によって前記花留めが前記花器の途中で固定されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の花器セット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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