説明

花粉回収方法及び花粉回収システム

【課題】花粉の回収において花粉の外部への飛散を防止するとともに、花粉の回収効率の向上及び回収作業の作業性向上を図る。
【解決手段】花粉症の原因となる植物から花粉を回収する花粉回収方法であって、採取した開花前の雄花を有する枝葉Bを、その切り口部B1が外部に露出するように袋詰めする袋詰め工程と、枝葉Bの切り口部B1を水に浸すことによって、枝葉Bを育成して雄花を開花させる育成工程と、開花した雄花から花粉を収集する花粉収集工程と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症の原因となる植物から花粉を回収する花粉回収方法、及び当該花粉回収方法を行うための花粉回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スギ、ヒノキ、マツ、ブタクサ、ヨモギ等の花粉により引き起こされるアレルギー反応(花粉症)を抑制する食品組成物として、特許文献1に示すように、多糖修飾によって抗原構造が被覆された花粉アレルゲンタンパク質を有効成分とし、経口免疫寛容によるアレルギー抑制効果を有する食品組成物が考えられている。
【0003】
そして、前記花粉アレルゲンタンパク質を生成するにあたり、花粉を大量に必要とすることから、花粉を効率よく回収する方法が必要である。
【0004】
例えば、従来のスギ花粉の回収方法としては、山林に自生しているスギにおいて、雄花が開花した時期に、当該スギの枝葉を揺さぶることによって雄花から花粉を飛散させ、その飛散した花粉を吸引装置によって吸引し、吸引された花粉をフィルタ上に捕集することによって回収することが行われている。
【0005】
しかしながら、上記吸引装置を用いた回収方法では、以下のような問題点がある。
(1)花粉を雄花から外部に飛散させた後、その飛散している花粉を回収しているので、作業者が大量の花粉に晒されてしまい、作業者本人が花粉症の症状を引き起こしてしまうという問題がある。
(2)また、飛散させた花粉全てを吸引して回収することは不可能に近く、飛散した花粉が近隣に飛んでしまい、作業者以外の者にも花粉症の症状を引き起こしてしまう可能性がある。
(3)さらに、上述したとおり、飛散させた花粉全てを吸引することは不可能に近く、また、枝葉を揺さぶるだけでは、雄花から十分に花粉を飛散させることができず、作業対効果の観点から花粉の回収効率が極めて悪いという問題がある。
(4)その上、スギの枝葉一本一本を揺さぶりながら吸引するという作業は極めて煩雑で作業性が悪いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−340658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、花粉の回収において花粉の外部への飛散を防止するとともに、花粉の回収効率の向上及び回収作業の作業性の向上を図ることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る花粉回収方法は、花粉症の原因となる植物から花粉を回収する花粉回収方法であって、採取した開花前の雄花を有する枝葉を、その切り口部が外部に露出するように袋詰めする袋詰め工程と、前記枝葉の切り口部を水に浸すことによって、前記枝葉を育成して雄花を開花させる育成工程と、開花した雄花から花粉を収集する花粉収集工程と、を具備することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、開花前の雄花を有する枝葉を袋詰めした後に雄花を育成するという全く新しい方式を採用することによって、雄花が開花した場合に外部への花粉の飛散を防止することができる。また、雄花が開花した時点で、雄花が既に袋に収容されているので、雄花から出る花粉をほぼ全て袋内に留めることができ、花粉の回収効率及び回収作業の作業性を向上させることができる。このとき、紙袋のような通気性のある袋を使用することにより、葉より蒸発する水分を通過させるため、カビの発生を防ぐことができる。
【0010】
なお、「花粉症の原因となる植物」としては、スギ、ヒノキ、ハンノキ、クヌギ、ケヤキ、マツ、カシ、タデ、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イラクサ等を挙げることができる。
【0011】
前記袋詰め工程において、枝葉の先端部から袋を被せて切り口部上側において袋の開口部を絞ることによって袋詰めするものであり、その絞り部分において、袋と枝葉との間に撥水性部材を介在させていることが望ましい。これならば、切り口部を水に浸したときに枝葉をつたって水が上部に行くことがなく、袋内に花粉が堆積している場合であっても、その花粉が濡れることを防止することができる。これによって、カビが生えやすいという性質を持つ花粉をカビから防ぐことができる。
【0012】
各枝葉の切り口部を確実に水に浸らせて、雄花の育成のばらつきを抑制する等、雄花の育成を効率よく行うためには、前記育成工程において、袋詰めされた枝葉の切り口部を吸水スポンジに挿入することにより、前記切り口部を水に浸すものであることが望ましい。これは袋詰めされた枝葉の切り口部の長さを確保できない場合に特に好ましい。
【0013】
雄花を開花し易い温度に調整することによって、花粉の生成を促し、花粉の回収時間を短縮するためには、前記育成工程において、環境温度を雄花の開花温度、具体的には雄花が開花する季節の平均温度以上に調整することが望ましい。たとえば枝葉がスギである場合には、20℃〜30℃に温度調節することが望ましい。
【0014】
上述したとおり花粉はカビが生えやすいことから、花粉育成工程以後における花粉のカビを防止するためには、前記育成工程と前記花粉収集工程との間に、袋詰めされた枝葉を袋ごと乾燥させる乾燥工程をさらに備えることが望ましい。
【0015】
花粉収集工程の具体的な実施の態様としては、前記花粉収集工程が、袋詰めされた枝葉を振動させることによって、花粉を袋内で飛散させる花粉飛散工程と、それによって袋内に生じた粉末を篩にかけることによって花粉を分離させる花粉分離工程と、を備えることが考えられる。これならば、花粉を袋内で飛散させているので、花粉の外部への飛散を可及的に抑制することができる。また、花粉飛散工程によって袋の中には、花粉以外に葉又は枝の表皮等の塵を含む粉末が堆積することになるが、篩にかけることによって花粉のみを選別することができる。
【0016】
雄花に単純に振動を与えるだけでは、雄花の中心部にある花粉を飛散させることができない。したがって、雄花に含まれている花粉のほぼ全てを回収できるようにするためには、前記花粉収集工程が、袋詰めされた枝葉から雄花を分離させる雄花分離工程と、分離された雄花を粉砕する粉砕工程と、粉砕された雄花を篩にかけて花粉を分離させる花粉分離工程と、を備えることが望ましい。
【0017】
雄花分離工程において花粉の飛散を防止するとともに作業性を一層向上させるためには、前記雄花分離工程が、作業空間を有する作業用ケース内に袋詰めされた枝葉を収容し、当該作業用ケースに形成された左右開口を気密に覆い、前記作業空間内に設けられる手袋部内に手を入れることによって、前記密閉空間内で袋から枝葉を取り出し、当該枝葉から雄花を分離させて、作業用ケース下方に設けられた収容容器内に集めるものであることが望ましい。
【0018】
また、上記の花粉回収方法を好適に実施するための花粉回収システムは、袋詰めされた開花前の雄花を有する枝葉を育成して雄花を開花させる育成床を有する雄花育成設備と、前記袋詰めされた枝葉を収容し、外部から当該枝葉を処理可能な密閉空間を有する枝葉処理設備と、前記枝葉処理設備によって分離された雄花を粉砕する粉砕機及び当該粉砕機によって得られた粉末から花粉を分離する篩機を有する花粉分離設備とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、花粉の回収において花粉の外部への飛散を防止するとともに、花粉の回収効率の向上及び回収作業の作業性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る花粉回収システムの構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態の雄花育成設備を模式的に示す斜視図である。
【図3】雄花育成設備の育成床を示す斜視図である。
【図4】枝葉を挿し込んだ状態の雄花育成設備の育成床の断面図である。
【図5】花粉回収システムの枝葉処理設備の枝葉処理装置を模式的に示す斜視図である。
【図6】花粉回収システムの花粉乾燥設備を模式的に示す構成図である。
【図7】花粉回収方法の各工程の流れを示す図である。
【図8】袋詰め工程において袋詰めされた状態の枝葉を示す図である。
【図9】変形実施形態に係る雄花育成設備の育成床の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明に係る花粉回収システム及び花粉回収方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
<システム構成>
本実施形態に係る花粉回収システム100は、スギに代表される花粉(以下単に「花粉」という。)を回収するシステムであって、図1に示すように、枝打ちされた枝葉Bの雄花を育成する雄花育成設備2と、当該雄花育成設備2により育成された枝葉Bを処理する枝葉処理設備3と、当該枝葉処理設備3により得られた粉末(花粉、雄花を含む)から花粉を分離する花粉分離設備4と、分離された花粉を強制乾燥する花粉乾燥設備5と、を具備する。以下、各設備2〜5について説明する。
【0023】
<雄花育成設備2>
雄花育成設備2は、図2に示すように、袋詰めされた開花前の雄花を有する枝葉Bを育成して雄花を開花させるための設備であり、ビニールハウス等のハウス21と、当該ハウス21内に配置され、袋詰めされた開花前の雄花を有する枝葉Bを育成して雄花を開花させる育成床22と、前記ハウス21内の温度を所定温度に調節する温調機構23と、を備える。
【0024】
育成床22は、図3及び図4に示すように、上部が開口する有底箱形状をなすトレイ221と、当該トレイ221内に収容され、袋詰めされた枝葉Bの切り口部B1が挿入される吸水スポンジ222と、前記トレイ221の開口部に縦横に架け渡されて設けられる複数の横架材223と、当該横架材223上に載置され、前記吸水スポンジ222に挿し込まれた枝葉Bの転倒を防止する転倒防止部材224と、を有する。なお、後述するが、図8に示すように、採取された開花前の雄花を有する枝葉Bは、その切り口部B1が外部に露出するように紙袋6により袋詰めされている。
【0025】
本実施形態のトレイ221は、平面視において概略矩形形状をなすものであるが、これに限られない。また、吸水スポンジ222は、取り扱いの容易性から複数(図3においては9個)の吸水スポンジ222を1つのトレイ221内に収容するように構成しているが、前記トレイ221の収容部と略同一又はそれによりも若干小さいものを1つ用いても良い。なお、吸水スポンジ222には、複数束(例えば9束)の枝葉Bが挿し込まれる。
【0026】
転倒防止部材224は、吸水スポンジ222に挿し込まれた枝葉Bを側方から支持するものであり、例えば矩形状等の網目を有する網状部材から構成している。この網目部材をトレイ221に設けた状態において、枝葉Bは、網目部材の網目内を通って吸水スポンジ222に挿し込まれる。
【0027】
なお、このとき、転倒防止部材224をトレイ221の開口部に載置した場合には、転倒防止部材224が撓んでしまい、枝葉Bを支えることができない場合があるが、横架材223を設けて転倒防止部材224の撓みを防止することによって確実に枝葉Bを支えることができるように構成している。このように構成することにより、紙袋6が水に接触して内部の花粉を濡らしてしまい、花粉にカビが生じてしまうことを防止することができる。
【0028】
温調機構23は、図2に示すように、加温機234と、ハウス21内の温度を測定する温度センサ231と、ハウス21に設けられ、ハウス21内外の空気を交換するための換気扇232と、前記温度センサ231からの測定温度に基づいて前記換気扇232を制御する制御部233とを備えている。なお、本実施形態では、換気扇232を用いているが、エアコンを用いて温度調節を行うものであっても良い。
【0029】
<枝葉処理設備3>
枝葉処理設備3は、袋詰めされた枝葉Bを収容し、外部から当該枝葉Bを処理可能な密閉空間を有する設備であり、具体的には図5に示すように、天板311上面に吸引口311Hを有する吸引作業台31と、密閉空間を有し、当該密閉空間内に収容された枝葉Bを処理可能な枝葉処理装置32と、を備えている。
【0030】
吸引作業台31は、略水平な天板311と、当該天板311に形成された吸引口311Hに連通し、当該吸引口311Hから外部の空気を吸引する吸引機構312と、を備えている。この吸引作業台31上に袋詰めされた枝葉Bを載置し、その袋詰めされた枝葉Bを叩く等によって、枝葉Bに振動を与えて袋内に花粉を飛散させる。このとき、例えば袋が破れてしまう等によって花粉が袋外に出た場合であっても、上記吸引機構312により、花粉を吸引することができ、花粉の外部への飛散を抑制することができるとともに、作業者への負担を軽減することができる。
【0031】
枝葉処理装置32は、袋詰めされた枝葉Bを処理するための作業空間を有する作業用ケース321と、当該作業用ケース321の側面に左右に形成された開口を気密的に覆い、前記作業空間内に設けられる手袋部322、前記作業用ケース321の下方に作業空間に連通して設けられる収容容器323と、有し、作業用ケース321及び収容容器323は内部に気密空間を形成するものである。この枝葉処理装置32を用いることによって、枝葉処理装置32外に花粉を飛散させることなく、袋からの枝葉Bの取り出し作業及び当該枝葉Bからの雄花分離作業を行うことができる。
【0032】
<花粉分離設備4>
花粉分離設備4は、枝葉処理設備3によって分離された雄花を粉砕する粉砕機と、当該粉砕機によって得られた粉末等から花粉を分離する篩機と、を有する。
【0033】
粉砕機は、収容容器323内に集められた雄花を所定サイズ(例えば数mm程度)の粉末に粉砕するものであり、粉砕機本体に着脱自在に取り付けられ、底板に回転自在に軸支された粉砕刃を有する容器と、前記粉砕機本体内に設けられ、前記粉砕刃を回転駆動する駆動部とを有するものである。
【0034】
篩機は、粉末から花粉のみを篩分ける目開き寸法40μm〜80μmの篩網を有する振動篩機であり、本実施形態では超音波振動式のものである。
【0035】
<花粉乾燥設備5>
花粉乾燥設備5は、図6に示すように、前記篩機によって篩分けされた花粉を紙袋に収納した状態で乾燥させる設備であり、花粉が収納された紙袋8が載置される棚部511を有する乾燥用ケース51と、圧縮機52と、当該圧縮機52からの圧縮空気を乾燥させて前記乾燥用ケース51に供給する乾燥機53とを有する。乾燥用ケース51は、前面に開閉扉が設けられ、閉塞時において内部を密閉するものである。
【0036】
次に、このように構成した花粉回収システム100を用いた花粉回収方法について図7を参照して説明する。
【0037】
<枝打ち工程>
まず、枝打ちロボット等を用いて開花前の雄花を有する枝を伐採する。そして伐採された枝を枯れる前、具体的には伐採後24時間以内に移送し、花粉回収システム100近傍に設けたパレット(不図示)内の水につけて保存する。
【0038】
<袋詰め工程>
次に、伐採された枝のうち、開花前の雄花を有する枝葉Bを所定長さ(例えば30cm程度)に切り、枝葉Bの長さを調整する。そして、図8に示すように、長さ調節された複数本の枝葉Bを、その切り口部B1がほぼ揃うように纏め、切り口部B1上側を撥水性部材であるポリエステル又はポリプロピレン等の不織布7を巻き付ける。その後、角底袋又は平袋等の紙袋6を枝葉Bの先端部から被せて、撥水性部材7上において紙袋6の開口部を紐等を用いて絞ることによって袋詰めする。つまり、紙袋6の絞り部分において、紙袋6と枝葉Bとの間に撥水性部材7が介在して設けられることになる。これにより、吸水スポンジ222に枝葉Bを挿し込んだときに、吸水スポンジ222からの水が撥水性部材7よりも上に伝わることがなく、花粉が濡れることを好適に防止することができる。
【0039】
<育成工程>
上記袋詰め工程において、袋詰めされた枝葉Bを、雄花育成設備2の育成床22に植設する。具体的には、袋詰めされた枝葉Bの切り口部B1を吸水スポンジ222に挿し入れる。その後、ハウス21内を20度〜30度内の所定温度で温調しながら、所定期間(例えば2週間)水耕栽培することによって、雄花が開花する。その後、袋詰めされた枝葉Bを雄花育成設備2から回収して、水切りするとともに乾燥させる。
【0040】
<花粉収集工程>
本実施形態の花粉収集工程は、花粉飛散工程と、第1花粉分離工程と、雄花粉砕工程と、第2花粉分離工程と、花粉乾燥工程とからなる。
【0041】
<<花粉飛散工程>>
前記育成工程により開花した雄花を有する枝葉Bを吸引作業台31上に載置し、紙袋6を外部から棒などを用いて叩くことによって、雄花から花粉を紙袋内において飛散させる。なお、この花粉飛散工程は、枝葉処理装置32内で行うようにしても良い。
【0042】
<<雄花分離工程>>
そして、袋詰めされた枝葉Bを枝葉処理装置32の作業用ケース321内に収容し、手袋部322から手を挿入して、作業用ケース321内に収容された袋から枝葉B及び袋内に堆積した花粉を取り出す。そして、枝葉Bから雄花を分離させる。このとき花粉及び雄花は、作業用ケース321の下方に落ちて収容容器323内に集められる。
【0043】
<<第1花粉分離工程>>
収容容器323内に集められた雄花及び花粉を篩機にかけて、雄花と花粉とを分離する。
【0044】
<<粉砕工程>>
次に、花粉が除去された雄花を粉砕機の容器内に入れて、雄花を所定サイズ(例えば数mm程度)の粉末に粉砕する。これによって、雄花の中心部にある花粉を回収可能にすることができる。
【0045】
<<第2花粉分離工程>>
上記粉砕工程によって得られた粉末を篩機にかけて花粉のみを分離する。
【0046】
<花粉乾燥工程>
上記第1花粉分離工程及び第2花粉分離工程によって得られた花粉を紙袋内に収納し、花粉乾燥設備5の乾燥用ケース51内に収容する。そして、開閉扉を閉じた後に、乾燥した空気を供給することによって花粉を乾燥させる。このように乾燥された花粉は、冷蔵庫内において、周囲にシリカゲル等の乾燥剤を加えた状態で保管される。
【0047】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る花粉回収方法によれば、開花前の雄花を有する枝葉Bを袋詰めした後に雄花を育成するという全く新しい方式を採用することによって、雄花が開花した場合に外部への花粉の飛散を防止することができる。また、雄花が開花した時点で、雄花が既に袋に収容されているので、雄花から出る花粉をほぼ全て袋内に留めることができ、花粉の回収効率及び回収作業の作業性を向上させることができる。
【0048】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0049】
例えば、前記実施形態では、スギ花粉を回収するものであったが、その他、ヒノキ花粉、ハンノキ花粉、クヌギ花粉、ケヤキ花粉、マツ花粉、カシ花粉、タデ花粉、ブタクサ花粉、ヨモギ花粉、カナムグラ花粉、イラクサ花粉等、花粉症の原因となる植物の花粉を回収するシステムにも適用できる。
【0050】
また、前記実施形態の花粉回収システム100は、吸引機能付き作業台を有するものであったが、枝葉処理装置32のみから構成しても良い。このとき、花粉飛散工程を枝葉処理装置32内で行うようにする。
【0051】
さらに、前記実施形態の花粉収集工程は、花粉飛散工程、第1花粉分離工程、雄花粉砕工程、第2花粉分離工程及び花粉乾燥工程からなるものであったが、その他、花粉飛散工程及び第1花粉分離工程からなるものであっても良いし、雄花粉砕工程、第2花粉分離工程及び花粉乾燥工程からなるものであっても良い。その上、花粉飛散工程、雄花粉砕工程、第2花粉分離工程及び花粉乾燥工程からなるものであっても良い。
【0052】
その上、前記実施形態の育成床は、袋詰めされた枝葉の切り口部の長さが短い場合でも確実に切り欠き部を水に浸らせるべく、トレイ内に吸水スポンジを設けて構成されているが、吸水スポンジを設けなくても良い。この場合、図9に示すように、吸水スポンジの代わりに枝葉の切り口部が挿入される複数の孔を有する受け台225をトレイ内部に配置し、転倒防止部材224と受け台225によって枝葉を2点で支持するように構成しても良い。
【0053】
加えて、前記実施形態では、葉より蒸発する水分を通過させてカビの発生を防ぐために、袋として紙袋を用いているが、その他、通気性のある袋であれば特に限定されない。
【0054】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・花粉回収システム
B ・・・枝葉
B1 ・・・切り口部
2 ・・・雄花育成設備
22 ・・・育成床
222・・・吸水スポンジ
3 ・・・枝葉処理設備
32 ・・・枝葉処理装置
321・・・作業用ケース
322・・・手袋部
323・・・収容容器
4 ・・・花粉分離設備
5 ・・・花粉乾燥設備
6 ・・・袋
7 ・・・撥水性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花粉症の原因となる植物から花粉を回収する花粉回収方法であって、
採取された開花前の雄花を有する枝葉を、その切り口部が外部に露出するように袋詰めする袋詰め工程と、
前記枝葉の切り口部を水に浸すことによって、前記枝葉を育成して雄花を開花させる育成工程と、
開花した雄花から花粉を収集する花粉収集工程と、を具備する花粉回収方法。
【請求項2】
前記袋詰め工程において、枝葉の先端部から袋を被せて切り口部上側において袋の開口部を絞ることによって袋詰めするものであり、その絞り部分において、袋と枝葉との間に撥水性部材を介在させている請求項1記載の花粉回収方法。
【請求項3】
前記育成工程において、袋詰めされた枝葉の切り口部を吸水スポンジに挿入することにより、前記切り口部を水に浸すものである請求項1又は2記載の花粉回収方法。
【請求項4】
前記育成工程において、環境温度を雄花の開花温度に温度調節する請求項1、2又は3記載の花粉回収方法。
【請求項5】
前記育成工程と前記花粉収集工程との間に、袋詰めされた枝葉を袋ごと乾燥させる乾燥工程をさらに備える請求項1、2、3又は4記載の花粉回収方法。
【請求項6】
前記花粉収集工程が、袋詰めされた枝葉を振動させることによって、花粉を袋内で飛散させる花粉飛散工程と、それによって袋内に生じた粉末を篩にかけることによって花粉を分離させる花粉分離工程と、を備える請求項1、2、3、4又は5記載の花粉回収方法。
【請求項7】
前記花粉収集工程が、
袋詰めされた枝葉から雄花を分離させる雄花分離工程と、
分離された雄花を粉砕する粉砕工程と、
粉砕された雄花を篩にかけて花粉を分離させる花粉分離工程と、を備える請求項1、2、3、4、5又は6記載の花粉回収方法。
【請求項8】
前記雄花分離工程が、作業空間を有する作業用ケース内に袋詰めされた枝葉を収容し、当該作業用ケースに形成された左右開口を気密に覆い、前記作業空間内に設けられる手袋部内に手を入れることによって、前記密閉空間内で袋から枝葉を取り出し、当該枝葉から雄花を分離させて、作業用ケース下方に設けられた収容容器内に集めるものである請求項7記載の花粉回収方法。
【請求項9】
袋詰めされた開花前の雄花を有する枝葉を育成して雄花を開花させる育成床を有する雄花育成設備と、
前記袋詰めされた枝葉を収容し、外部から当該枝葉を処理可能な密閉空間を有する枝葉処理設備と、
前記枝葉処理設備によって分離された雄花を粉砕する粉砕機及び当該粉砕機によって得られた粉末から花粉を分離する篩機を有する花粉分離設備と、を具備する花粉回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−263842(P2010−263842A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118398(P2009−118398)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000252252)和興フィルタテクノロジー株式会社 (41)
【出願人】(509138165)プロテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】