説明

芳香性天然樹脂を含有する蝋燭組成物

【課題】本発明の目的は、蝋燭に芳香性天然樹脂を含有させることで、通常インセンス(西洋線香)で用いる香りを長時間にわたり安全に簡便にかつマイルドに使用者に与えるものである。
【解決手段】芳香性蝋燭において、芳香性天然樹脂を含有する蝋燭組成物、また香りの幅広い要望にこたえるために芳香性天然樹脂および香料を含有する蝋燭組成物、特に乳香(オリバナム)、エレミ、オポポナックス、安息香(ベンゾイン)、ペルーバルサム、トルーバルサムより選ばれる芳香性天然樹脂を1種又は2種類以上を含有する蝋燭組成物は、煙が少なく長時間にわたり芳香性天然樹脂の香りを長時間にわたり安全、簡便、及び香調を損なわずに使用者に与えることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香りを放出する蝋燭に関する。本発明は、芳香性天然樹脂を蝋燭に含有させることで芳香性天然樹脂の香りを長時間にわたり安全、簡便、及び香調を損なわずに使用者に与えるものである。
【背景技術】
【0002】
香りを楽しむことが一般化している現在、さまざまな芳香製品が使用されている。香料成分を含有した芳香性蝋燭や線香も、燃焼時の独特の香りと炎の光や煙の視覚効果でやすらいだイメージを与え人気を得ている。また自然志向で天然由来の香りが、ナチュラル感と安心感を与え様々な芳香品に応用されている。このような背景を受け、主に中近東を中心に欧州などで昔から用いられてきたインセンス(西洋線香)において、近年、乳香(オリバナム)や没薬(ミル)などの芳香性天然樹脂の香りの需要も増えている。
従来、これらの樹脂は、香料原料として水蒸気蒸留法や溶剤抽出法によって香料として抽出され、各種芳香品に用いられている。しかしながら、香料にすることで抽出過程において香気成分の損失が起こり、香りは芳香性天然樹脂本来のものではなく、また香料の収率が低いため、芳香性天然樹脂に比べ価格は高価になる欠点もある。そのためインセンスとして芳香性天然樹脂そのものを燃焼させて香りを楽しむ方法も知られてきた。しかしながら、これらの芳香性天然樹脂は燃焼時に短時間に強く香りを発散し、小さな炎と、かなりの煤と煙を伴う欠点がある。通常は振り香と呼ばれる方法で、紐の付いた香炉に入れ、振って香りを発散させる。このため日本の家屋様式では、香りも強く、炎や煙で使いづらいものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】香りの百科(日本香料協会編),PAGE65−67,PAGE402−403,PAGE53−55,PAGE63−65,PAGE373−375,PAGE276−277,PAGE376−379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み為されたものであり、芳香性天然樹脂の香りを長時間にわたり安全、簡便、及び香調を損なわずに使用者に与えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明者は、鋭意研究を行った結果、芳香性蝋燭において、芳香性天然樹脂を含有する蝋燭組成物、芳香性天然樹脂および香料を含有する蝋燭組成物、ならびに芳香性天然樹脂を1種又は2種類以上含有する蝋燭組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
すなわち本発明は、芳香性天然樹脂の香りを、煙が少なく長時間にわたり独特の香りを安全、簡便、及び香調を損なわずに使用者に与えるものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる蝋燭の基材成分は、パラフィンワックスなどの炭化水素類、植物油、植物性ワックス、動物性ワックス、及び合成ワックスなどが挙げられる。
【0008】
芳香性天然樹脂は、香りを有する樹液が固まったものを採取したもので、特には限定されないが、香調の面から評価して、好ましくは乳香(オリバナム)、没薬(ミルまたはミルラ)、エレミ、オポポナックス、安息香(ベンゾイン)、ペルーバルサム、トルーバルサムなどが挙げられる。
【0009】
芳香性天然樹脂の大部分は油溶性成分で構成されるため、基材成分に混合し加熱することで、容易に香気成分が基材成分に溶出する。そのため、製造段階において通常80℃前後で基材成分を加熱溶解する工程で、芳香性天然樹脂を加えることで、香料を用いなくともこれらの持つ本来の香りが賦香される。この方法で製造された蝋燭の香りは、天然物に含まれる多種の香気成分より構成されており、従来の調合香料技術では表現できない独特の香りとなる。蝋燭の形態をとることで、芳香性天然樹脂の香りを、煙が少なく長時間にわたり独特の香りを安全、簡便、及び香調を損なわずに使用者に与えることができる。
【0010】
本発明における蝋燭組成物は、基材成分と芳香性天然樹脂を混合加熱溶解し、そのまま冷却固化成型することで得られる。または必要に応じて、濾布や金属メッシュによって濾過後、冷却固化成型してもよい。
【0011】
本発明の蝋燭組成物は、香りの多様性を求めるときには、適宜香料を配合しても良い。
【0012】
本発明の蝋燭に適宜配合しても良い香料としては、植物性香料、香粧品香料に一般的に使用される香料物質及びその溶剤希釈組成物、動物性香料などが挙げられる。例えば、テルペン類、ジテルペン類、テルペン系アルコール等のアルコール類、テルペン系アルデヒド、脂肪族系アルデヒド、芳香族系アルデヒド等のアルデヒド類、テルペン系ケトン、脂環式ケトン、大環状ケトン等のケトン類、フェノール誘導体、芳香族炭化水素、アセタール類、カルボン酸類、脂肪酸エステル、芳香族エステル等のカルボン酸エステル類等を任意に調合して使用する事ができる。香調としては、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ等のシトラス調、ローズ、ジャスミン、ミュゲ等のフローラル調、シナモン、ペッパー等のスパイシー調、サンダルウッド、シダー等のウッディー調、アップル、ラズベリー等のフルーティー調、アルデハイディック・フローラル調、シプレー調、オリエンタル調、マリン調、フゼア調等幅広い香りのタイプを使用することができる。
【0013】
次に実施例、比較例および実験を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0014】
(実施例1)一種類の芳香性天然樹脂を含有する蝋燭
115°パラフィン 70重量部
乳香(オリバナム) 30重量部
合計 100重量部
115°パラフィンを80℃で加熱溶解し、その後、乳香(オリバナム)を加え温度を保ち10分ほど攪拌した。その後、芯を底面の中央付近から垂直に固定した直径30mm、高さ100mmのガラス容器へ流し込み、自然冷却させた。乳香の程よい香りのする蝋燭ができた。
【0015】
(実施例2)一種類の芳香性天然樹脂を含有する蝋燭
115°パラフィン 80重量部
エレミ 20重量部
合計 100重量部
115°パラフィンを80℃で加熱溶解し、その後、予めカッターミル等で粉砕したエレミを加え温度を保ち10分ほど攪拌した。その後、温度を保ちながら50メッシュの金属メッシュにてろ過し、大きな乳香樹脂の塊は除去し、芯を底面の中央付近から垂直に固定した直径30mm、高さ100mmのガラス容器へ流し込み、自然冷却させた。見た目も均一なエレミの程よい香りのする蝋燭ができた。
【0016】
(実施例3)三種類の芳香性天然樹脂を含有する蝋燭
115°パラフィン 60重量部
パーム油 10重量部
乳香(オリバナム) 20重量部
没薬(ミルー) 5重量部
エレミ 5重量部
合計 100重量部
115°パラフィンとパーム油を80℃で加熱溶解し、その後、乳香(オリバナム)、没薬(ミルー)、エレミを加え温度を保ち10分ほど攪拌した。その後、芯を底面の中央付近から垂直に固定した直径30mm、高さ100mmのガラス容器へ流し込み、自然冷却させた。独特の程よい香りのする蝋燭ができた。
【0017】
(実施例4)三種類の粉砕された芳香性天然樹脂を含有する蝋燭
115°パラフィン 60重量部
パーム油 10重量部
乳香(オリバナム) 20重量部
没薬(ミルー) 5重量部
エレミ 5重量部
合計 100重量部
115°パラフィンとパーム油を80℃で加熱溶解し、その後、予めカッターミル等で粉砕した、乳香(オリバナム)、没薬(ミルー)、エレミを加え温度を保ち10分ほど攪拌した。その後、温度を保ちながら50メッシュの金属メッシュにてろ過し、大きな樹脂の塊は除去し、芯を底面の中央付近から垂直に固定した直径30mm、高さ100mmのガラス容器へ流し込み、自然冷却させた。見た目も均一な独特の程よい香りのする蝋燭ができた。
【0018】
(実施例5)芳香性天然樹脂と香料とを含有する蝋燭
115°パラフィン 60重量部
マイクロクリスタリンワックス 10重量部
パーム油 10重量部
乳香(オリバナム) 10重量部
エレミ 8重量部
シトラス系調合香料 2重量部
合計 100重量部
115°パラフィン、マイクロクリスタリンワックスとパーム油を80℃で加熱溶解し、その後、予めカッターミル等で粉砕した、乳香(オリバナム)、エレミを加え温度を保ち10分ほど攪拌した。その後、温度を保ちながら30メッシュ金属メッシュにてろ過し、大きな樹脂の塊は除去し、芯を底面の中央付近から垂直に固定した直径30mm、高さ100mmのガラス容器へ流し込み、自然冷却させた。見た目も均一な独特の程よい香りのする蝋燭ができた。
【0019】
(評価実験)実施例1の蝋燭、比較として乳香から抽出された香料(仏、ビオランド社製)10重量%を加えた蝋燭、及び乳香(オリバナム)5gを、同条件下のそれぞれ別の室内で、蝋燭は芯に点火し、乳香は香炉にて燃やし評価した。2種類の蝋燭及び乳香(オリバナム)を約6分間燃焼させ、火を消してから10分後、および1時間後の室内の香りを評価した。評価は専門パネラー4名にて行った。10分後の評価では、乳香(オリバナム)を直接燃焼した部屋では、香りは強いがやや焦げたような香りが気になった。実施例1の蝋燭は本来の乳香の香りが適度に感じられた。乳香から抽出された香料を加えた蝋燭はやや香りが弱く感じられ、また乳香(オリバナム)を燃焼させた独特の香りのニュアンスが少なかった。一時間後の評価では、乳香(オリバナム)を直接燃焼した部屋にては、香りはかなり弱くなっていた。実施例1の蝋燭は本来の乳香の香りが適度に感じられた。乳香から抽出された香料を加えた蝋燭においては、香りは適度な強さが感じられたが、乳香(オリバナム)を燃焼させた独特の香りのニュアンスが少なかった。実施例2〜5についても同様に評価を行ったが、実施例1と同様に良い評価であった。
【0020】
前記の結果より、本発明は様々な通常インセンス(西洋線香)で用いる芳香性天然樹脂の香りを蝋燭で長時間にわたり安全、簡便、及び香調を損なわずに使用者に与えるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香性天然樹脂を1種又は2種類以上を含有する蝋燭組成物。
【請求項2】
芳香性天然樹脂が、乳香(オリバナム)、没薬(ミルまたはミルラ)、エレミ、オポポナックス、安息香(ベンゾイン)、ペルーバルサム、トルーバルサムからなる群より選ばれる、請求項1記載の蝋燭組成物。


【公開番号】特開2011−202093(P2011−202093A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72466(P2010−72466)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】