説明

芳香性組成物

【課題】
本発明によれば、安息香酸, 安息香酸塩類などの各種化学合成品系の防腐剤を用いなくとも、細菌、カビ、酵母等によって品質が劣化しない、香りの良い芳香性組成物を提供する。
【解決手段】
本発明は、特別の香気を持つ天然精油と、強い抗菌活性を有する香料とを組み合わせることにより、全体として香りをまろやかにし、芳香性組成物の防腐剤として使用可能とし、それらを用いた芳香性組成物を得ることである。更にダマスコン、ムスク類、シス−3−ヘキセン−1−オール、ピネンから選ばれる少なくとも1種以上を更に含むことを特徴とする芳香性組成物(但し、洗浄剤組成物を除く)であり、更に詳しくはシンナミックアルデヒドを0.005〜0.5%含有することを特徴とする芳香性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬事法指定の防腐剤を含有しない芳香性組成物に関するものである。更に詳しくは、特定の香料を使用した、薬事法指定の防腐剤を含有しない芳香性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、芳香剤、芳香消臭剤等の芳香性組成物は、製造から使用開始まで比較的長期間倉庫や店頭などで保存される場合が多く、また使用開始後も少量ずつ使用されるため、製造から全量使用し終わるまで長期間品質が安定している必要がある。従って芳香性組成物の腐敗に伴う変質の防止は、その商品価値を損なわないためにきわめて重要である。
【0003】
その為、従来芳香性組成物には品質の劣化防止の目的で各種の化学合成品系の防腐剤が用いられている。このような化学合成品系の防腐剤としては、安息香酸及びその塩、イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、フェノキシエタノール、ソルビン酸及びその塩、デヒドロ酢酸及びその塩、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、感光素などが挙げられる。中でもパラオキシ安息香酸エステルやフェノキシエタノールは化粧料用防腐剤としても汎用されている。(非特許文献1)
【0004】
一般にこれらの化学合成品系の防腐剤は、規定量の添加ではカビ、酵母の発生を防止するには未だ充分ではなく、カビや酵母の発生を充分防止することができるようにするため添加量を多くしたり、顕著な効果を示すものを使用したりすると、例えば、ゲル化不良(例えば、ゲル状芳香性組成物)、溶解性低下による成分の析出(例えば、水溶性のゲル状あるいは液状の芳香性組成物)等が生じる場合もある。また、芳香性組成物は水まわりや外気と接触しやすい場所(例えば、トイレ、車中等)等で使用されることが多く、カビや酵母が発生しやすい環境であるため、規定量添加しても腐敗を生ずることもある。
【0005】
また、天然物、特に植物由来からの抽出物を有効成分とする食品用保存料や、化粧料用防腐剤の開発が進められている。例えば、アルニカ、アロエ、ウイキョウ、エイジツ、オウバク、オウレン、オトギリソウ、カミツレ、クジン、ゲンノショウコ、サルビア、サンザシ、サンショウ、シコン、シソ、シャクヤク、シラカバ、スイカズラ、スギナ、セイヨウキズタ、セイヨウノコギリソウ、セージ、タイム、チャ、チョウジ、トウキ、ドクダミ、ニンニク、ハマメリス、ビワ、ホップ、ムクロジ、メリッサ、ユーカリ、ラベンダー、レモン、ローズマリー等から水や有機溶媒により抽出したものなどが挙げられる。(特許文献1)
【0006】
しかし、上記の植物抽出物は安全性の点ではクリアするものの、ある特定の菌のみにしか効果が得られなかったり、また抗菌性が比較的弱かったりなど、化学合成品系の防腐剤と同等の防腐効果は得られない。また植物抽出物の中には特異な臭気を有するものが多く、2種類以上の植物抽出物の併用や、植物抽出物と化学合成品系の防腐剤とを併用することにより強い防腐効果を発揮することができても、芳香性組成物へ配合した場合にその臭気などの点より商品価値が低下するため、有効な抗菌活性を示す量を配合することができないなどの問題があった。
【0007】
また、商品に香りを付与するために使用される調合香料を構成する多数の香料の中に、強い抗菌活性を有する数種の香料が存在することが知られており、シンナミックアルデヒドも強い抗菌活性を持つ香料であることが知られている。(非特許文献1)
しかし、強い抗菌活性を有する香料は、非常に強い、芳香性組成物にそぐわない香りを有しており、芳香性組成物に防腐剤として効力が発揮される有効濃度を配合すると、香りの嗜好性が低下して商品にならないという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−241217号公報
【非特許文献1】Jon J.KABARA,香料系防腐剤 抗菌剤としての精油と香料物質,香粧品・医薬品 防腐・殺菌剤の科学(189−220),フレグランスジャーナル社1990年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、各種化学合成品系の防腐剤を用いず、強い抗菌活性を有する香料を防腐剤として効力が発揮される濃度配合すると、臭気が強すぎて、実際に使用できる芳香性組成物を得ることが困難な点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、特別の香気を持つ天然精油と、シンナミックアルデヒドを組み合わせることにより、全体として香りがまろやかになり、シンナミックアルデヒドが防腐剤として効果のある濃度を使用しても香りがまろやかな芳香性組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、カモミールオイル、ダバナオイル、ガルバナムオイル、バイオレットリーフオイルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の精油とシンナミックアルデヒドを含有し、薬事法指定の防腐剤を含まないことを特徴とする芳香性組成物であり、更にダマスコン、ムスク類、シス−3−ヘキセン−1−オール、ピネンから選ばれる少なくとも1種以上を更に含むことを特徴とする芳香性組成物であり、更に詳しくはシンナミックアルデヒドの含有量が0.005〜0.5%であることを特徴とする芳香性組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の芳香性組成物は、安息香酸、安息香酸塩類、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、感光素、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル(別名トリクロサン)、パラオキシ安息香酸エステル及びそのナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、亜鉛・アンモニア・銀複合置換型ゼオライト、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロラミンT、クロルキシレノール、クロルフェネシン、クロルヘキシジン、1,3―ジメチロール―5,5―ジメチルヒダントイン、臭化アルキルイソキノリニウム、チアントール、チモール、トリクロロカルバニリド、パラクロルフェノール、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液、N,N―メチレンビス[N―(3―ヒドロキシメチル―2,5―ジオキソ―4―イミダゾリジニル)ウレア]、ヨウ化パラジメチルアミノスチリルヘプチルメチルチアゾリウムなど薬事法(平13厚労告158・一部改正)に挙げられる防腐剤を用いなくとも、細菌、カビ、酵母等によって品質が劣化しないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に使用するカモミールオイルは、Matricaria chamomilla L.もしくはAnthemis nobilis L.の乾燥した花を水蒸気蒸留して得られる。ダバナオイルはArtemisia pallensの乾燥した全草を水蒸気蒸留して得られる。ガルバナムオイルはセリ科のFerula galbanifluaおよび近縁植物の浸出物を水蒸気蒸留して得られる。バイオレットリーフオイルはViola odorate L.の新鮮な葉を石油エーテルなどで抽出して得られるコンクリートをアルコールで再び抽出して得られる。これら精油類の芳香性組成物への添加量は重要であり、当該芳香性組成物の細菌、カビ、酵母等による品質の劣化のみならず、芳香性組成物として必要な香りの強度有し、且つ、香りの違和感のない添加量を考慮する必要がある。即ち、本発明に使用する精油であるカモミールオイル、ダバナオイル、ガルバナムオイル、バイオレットリーフオイルの最適添加量は、当該芳香性組成物中に含有されるシンナミックアルデヒドの0.0001〜3倍量が適当であり、より好ましくは、0.001〜2.5倍量である。前記範囲を外れると芳香性組成物の香りに違和感が生じる。
【0014】
本発明の芳香性組成物に含有されるシンナミックアルデヒドの量は芳香性組成物に対して0.005〜0.5%であり、より好ましくは0.006〜0.1%である。本発明のシンナミックアルデヒドの割合は重要であり、前記下限範囲をはずれると十分な防腐効果は得られず、上限範囲を超えると芳香性組成物の香りに違和感が生じる。
【0015】
本発明の芳香性組成物に含有されるダマスコン、ムスク類、シス−3−ヘキセン−1−オール、ピネンの量は、特に制限されるものではなく、防腐効果が減弱せず、且つ、芳香性組成物の香りに違和感を生じさせない程度に使用することができ、ダマスコンは調合香料中に2〜10%含有、あるいは芳香性組成物中に0.002〜1%添加、ムスク類は調合香料中に10〜30%含有、あるいは芳香性組成物中に0.02〜2%添加、シス−3−ヘキセン−1−オールは調合香料中に1〜5%含有、あるいは芳香性組成物中に0.002〜0.6%添加、ピネンは調合香料中に0.5〜10%含有、あるいは芳香性組成物中に0.02〜1%添加することが好ましい。
【0016】
本発明の芳香性組成物に含有されるムスク類としては、ガラクソリド、トナリド、ファントリド、トラセオリド、ムスクケトン、シクロペンタデカノリド、ムスコン、アンブレットリド、シクロヘキサデカノリド、シクロペンタデカノン、エチレンブラシレート等が挙げられるが、特に好ましいものはガラクソリドである。また、ムスク類の量は、特に制限されるものではなく、防腐効果が下減弱せず、且つ芳香性組成物の香りに違和感を生じさせない程度に使用することができる。
【0017】
本発明の芳香性組成物は上記した必須構成成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において通常の芳香性組成物に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、ワックス、脂肪酸石けん、金属石けん、炭化水素、級脂肪酸、高級アルコール、多価アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、水溶性高分子、天然多糖類、動物性タンパク(ゼラチン等)、染料、顔料、消臭剤、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、消泡剤、エキス、チンキ、生薬、香料、溶剤、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することが出来る。
【0018】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
〔配合例1〕
カモミールオイル:シンナミックアルデヒドを70:30の割合で配合した香料1を作成した。
【0020】
〔配合例2〕
ダバナオイル:シンナミックアルデヒドを70:30の割合で配合した香料2を作成した。
【0021】
〔配合例3〕
ガルバナムオイル:シンナミックアルデヒドを70:30の割合で配合した香料3を作成した。
【0022】
〔配合例4〕
バイオレットリーフオイル:シンナミックアルデヒドを70:30の割合で配合した香料4を作成した。
【0023】
〔配合例5〕
ラベンダーオイル:シンナミックアルデヒドを70:30の割合で配合した香料5を作成した。
【0024】
〔配合例6〕
カモミールオイル:チモールを70:30の割合で配合した香料6を作成した。
【0025】
〔配合例7〕
カモミールオイル:ユゲノールを70:30の割合で配合した香料7を作成した。
【0026】
〔配合例8〕
カモミールオイル:シンナミックアルデヒド:α−ダマスコン:α−ピネンを63:30:2:5の割合で配合した香料8を作成した。
【0027】
〔配合例9〕
カモミールオイル:シンナミックアルデヒド:シス−3−ヘキセン−1−オール:ガラクソリドを61:30:1:8の割合で配合した香料9を作成した。
【0028】
〔配合例10〕
ラベンダーオイル:シンナミックアルデヒド:α−ダマスコン:α−ピネンを63:30:2:5の割合で配合した香料10を作成した。
【0029】
〔試験例1〕
香料1〜香料10の調合香料を用いて枯草菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌に対する生育阻害試験を行った。
【0030】
試験に用いた微生物は以下の通りである。
学 名 和 名 IFO番号 ATCC番号
Bacillus subtilis 枯草菌 3134 6633
Escherichia coli 大腸菌 3972 8739
Staphylococcus aureus 黄色ブドウ球菌 12732 6538P
Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌 13275 9027
【0031】
使用培地は、Meueller-Hinton Broth Medium " Becton Dickinson and Company "(以下、MH)22gを精製水1000mlに溶かし、121℃、10分間加圧滅菌したものを用いた。
【0032】
検体の調製は、調合香料とTween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を同容量混合攪拌後、液体培地にて0.5%(V/V)となるように希釈したあと、2倍希釈列を作成する。パラオキシ安息香酸類はジメチルスルホキシド(以下、DMSO)に溶解して、検体液とし同様に行った。
【0033】
菌液の調製は、各菌を1×107CFU/mlに調製した。
【0034】
培養試験の方法は、検体100μl、菌液5μlをマイクロプレート上に取り、攪拌後密閉して37℃ 16〜18時間培養を行い、最小発育阻止濃度(MIC)判定を行った。
試験結果を表1に示す
【0035】
微量液体希釈法による調合香料とパラベン類のMIC%(W/V)
【表1】

【0036】
表1の結果から香料1〜10は芳香性組成物の防腐剤として通常用いられる、パラベン類と比較して、枯草菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌に対して同等の生育阻害効果を示すことがわかる。
【0037】
〔試験例2〕
香料1〜10の調合香料を用いてカンジダ、クロカビに対する生育阻害試験を行った。
【0038】
試験に用いた微生物は以下の通りである
学 名 和 名 IFO番号 ATCC番号
Candida albicans カンジダ 1594 10231
Aspergillus niger クロカビ 9455 16404
【0039】
使用培地は、RPMI-1640 Medium " SIGMA "(以下、RPMI-1640 )10.4gと3-[N-morpholino] propanesulfonic acid “SIGMA” (以下MOPS)34.53gを精製水に溶かし、0.1N NaOHにてpHを7に調整し全量を1000mlとした後、フィルターにて滅菌したものを用いた。
【0040】
検体の調製は、調合香料とTween80を同容量混合攪拌後、液体培地にて0.5%(V/V)となるように希釈したあと、2倍希釈列を作成する。パラオキシ安息香酸類はDMSOに溶解して、検体液とし同様に行った。
【0041】
菌液の調製は、カンジダは2.5×103CFU/ml、クロカビは2.0×104CFU/mlに各々調製した。
【0042】
試験の方法は、検体と菌液各50μl、マイクロプレート上に取り、攪拌後密閉して37℃ 46〜50時間培養を行い、最小発育阻止濃度判定を行った。結果を表2に示す。
【0043】
微量液体希釈法のよる調合香料とパラベン類のMIC%(W/V)
【表2】

【0044】
表2の結果から香料1〜10は芳香性組成物の防腐剤として通常用いられる、パラベン類と比較して、カンジダ、クロカビに対して同等の生育阻害効果を示すことがわかる。
【0045】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、記載のない限り、配合割合は全て質量部を示す。
【0046】
〔実施例1〕
ジェランガム 0.8
イオン交換水 92.6
1% 塩化カルシウム水溶液 5.0
香料1 1.0
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.1
ポリビニルアルコール 0.5
合計 100.0
(製法)
予め、香料とポリオキシエチレンアルキルエーテル混和しておく。次に適量のイオン交換水にてポリビニルアルコールを溶解しておき、その中に、上記の香料1とポリオキシエチレンアルキルエーテルの混液を加え、ホモジナイザー等の高速乳化器にて乳化(以下、乳化物という。)させておく。次に残余のイオン交換水にジェランガムを添加し、水浴中にて90℃、1時間程度攪拌溶解させる。ジェランガムが溶解したことを確認後、1%塩化カルシウムを少量ずつ滴下し、滴下が終了したら、水浴の温度を70℃程度に下がるまで攪拌状態のまま放置する。70℃程度に温度が下がったら、先に調整した乳化物を少しずつ添加し、均一状態になったら、容器等へ移して室温まで冷却し、固化させ水性ゲル芳香剤1を得た。
【0047】
〔実施例2〕
ゼラチン 5.0
イオン交換水 97.6
香料2 1.0
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.1
ポリビニルアルコール 0.5
合計 100.0
(製法)
ゼラチンをイオン交換水に添加して、80℃で30分程度攪拌溶解する以外は、処方例1と同様の操作により調整し、水性ゲル芳香剤2を得た。
【0048】
〔実施例3〕
香料3 1.0
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 1.5
ポリオキシエチレン(60)硬化ひまし油 0.5
エタノール 2.0
3−メチル−3−メトキシブタノール 0.8
イオン交換水 94.2
合計 100.0
(製法)
イオン交換水以外の原料を配合、混合(必要に応じ、50℃程度に加温)し、均一になったら、イオン交換水を添加して、更に混合し調整し、水性液体芳香剤1を得た。
【0049】
〔実施例4〕
香料1の代わりに香料8を使用して、実施例1に従い、水性ゲル芳香剤3を得た。
【0050】
〔比較例1〕
香料1の代わりに香料5を使用して、実施例1に従い、水性ゲル芳香剤4を得た。
【0051】
〔比較例2〕
香料1の代わりに香料6を使用して、実施例1に従い、水性ゲル芳香剤5を得た。
【0052】
〔比較例3〕
香料1の代わりに防腐剤としてメチルパラベンを使用して、実施例1に従い水性ゲル芳香剤6を得た。
【0053】
〔比較例4〕
香料1の代わりにイオン交換水を使用して、実施例1に従い水性ゲル芳香剤7を得た。
【0054】
〔比較例5〕
香料3の代わりにイオン交換水を使用して、実施例3に従い、水性液体芳香
剤2を得た。
【0055】
〔比較例6〕
香料1の代わりに香料10を使用して、実施例1に従い水性ゲル芳香剤8を得た。
【0056】
〔比較例7〕
香料1の代わりにシンナミックアルデヒドを使用して、実施例1に従い水性ゲル芳香剤9を得た。
【0057】
〔試験例3〕
実施例1〜4ならびに比較例1〜7の実使用環境における品質劣化試験を行った。
【0058】
〔品質劣化試験方法〕
直径50mm、高さ30mmの広口プラスチック容器に、水性ゲル芳香剤ならびに液体水性芳香剤を各30g作成し、実使用を想定して小川香料舞浜研究所内の事務室内に30分間静置した(空中浮遊菌の接触)。静置後、蓋を締めて密閉し、蓋をしない状態で3日間放置し、空間に浮遊する細菌類と接触させた後、蓋をして27℃±1.0℃で7日間放置し、カビ、細菌の発生(菌集落)を目視にて確認した。
【0059】
〔判定〕
判定は、目視によるカビ、細菌の発生の有無によって行った。結果を以下に示す。
【0060】
実使用後の品質劣化試験結果
実施例1 カビ、細菌の発生は認められない。
実施例2 カビ、細菌の発生は認められない。
実施例3 カビ、細菌の発生は認められない。
実施例4 カビ、細菌の発生は認められない。
比較例1 カビ、細菌の発生は認められない。
比較例2 カビ、細菌の発生は認められない。
比較例3 カビ、細菌の発生は認められない。
比較例4 カビの発生が認められた。
比較例5 カビの発生が認められた。
比較例6 カビ、細菌の発生は認められない。
比較例7 カビ、細菌の発生は認められない。
【0061】
〔試験例4〕
実施例1、4、比較例1、2、7の瓶香および香りの良さについて、一般パネル(n=9)による官能評価を行った。
【0062】
香りの良さについての評価は、実使用を想定した評価ボックス内での評価とした。間口980mm、奥行950mm、高さ2,100mmの評価ボックス内に直径50mm、高さ30mmの広口プラスチック容器に入れた検体を静置し、15分間放置して実施した。
【0063】
香りの評価基準は下記の通りとした。
3:全く違和感無くかげる香り。
2:違和感無くかげる香り。
1:違和感がありよくない香り。
0:非常に違和感がありよくない香り。
結果を以下に示す。
【0064】
香りの評価
瓶香 ブース評価
実施例1 2.16 2.74
実施例4 2.34 2.81
比較例1 1.78 2.23
比較例2 1.06 1.22
比較例7 0.82 0.57
【0065】
表4の結果から、本発明の実施例1および4は、非常に違和感の無いかぎやすい香りであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、安息香酸, 安息香酸塩類などの各種化学合成品系の防腐剤を用いなくとも、細菌、カビ、酵母等によって品質が劣化しない、香りの良い芳香性組成物を提供できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カモミールオイル、ダバナオイル、ガルバナムオイル、バイオレットリーフオイルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の精油とシンナミックアルデヒドを含有し、薬事法指定の防腐剤を含まないことを特徴とする芳香性組成物。
【請求項2】
更に、ダマスコン、ムスク類、シス−3−ヘキセン−1−オール、ピネンから選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の芳香性組成物。
【請求項3】
防腐剤が安息香酸、安息香酸塩類、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、感光素、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル(別名トリクロサン)、パラオキシ安息香酸エステル及びそのナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、亜鉛・アンモニア・銀複合置換型ゼオライト、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロラミンT、クロルキシレノール、クロルフェネシン、クロルヘキシジン、1,3―ジメチロール―5,5―ジメチルヒダントイン、臭化アルキルイソキノリニウム、チアントール、チモール、トリクロロカルバニリド、パラクロルフェノール、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液、N,N―メチレンビス[N―(3―ヒドロキシメチル―2,5―ジオキソ―4―イミダゾリジニル)ウレア]、ヨウ化パラジメチルアミノスチリルヘプチルメチルチアゾリウムである請求項1記載の芳香性組成物。
【請求項4】
シンナミックアルデヒドの含有量が0.005〜0.5%であることを特徴とする請求項1又は2記載の芳香性組成物。


【公開番号】特開2008−154805(P2008−154805A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347193(P2006−347193)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】