説明

芳香族アミノ化合物の製造方法

【課題】 本発明は、医薬、農薬中間体として有用な芳香族アミノ化合物を高収率かつ、工業的に有利に製造する方法を提供することである。
【解決手段】式(1)で表されるアニリン誘導体と式(2)で表されるアクリル酸誘導体と無水塩化アルミニウムとを溶媒の存在または不存在下に反応させることにより、式(3)で表される芳香族アミノ化合物が、工業的な規模で、高収率かつ工業的有利に製造できる
【化1】


(式中、R1 はカルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基及びアシル基を表し、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬中間体として有用な芳香族アミノ化合物の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、農薬中間体として有用な式(3)


(式中、R1 はカルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基及びアシル基を表し、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で表される芳香族アミノ化合物の製造方法については、例えば,(A)R1が水素であるアニリンとR2がメチル基であるアクリル酸メチルに少量の酢酸を加え、還流条件下で8時間反応させるという方法(特許文献1)や(B)アニリンとアクリル酸メチル、トリエチルアミンをオートクレーブ中110〜120℃で5時間加圧反応させる方法(特許文献2)および(C)R1がメトキシカルボニル基であるアントラニル酸メチルとアクリル酸メチルを塩化スズ存在下、還流条件下で42時間反応させるという方法(非特許文献1)が報告されている。
【0003】
しかし、上記(A)〜(C)の方法を本発明における式(1)で示される化合物から式(3)で示される化合物を工業的に製造する方法として適用しようとした場合、反応時間が長い、収率が低い、加圧下での反応を必要とするといった問題点があるため、工業的に有利に製造する方法の開発が求められていた。
【0004】
【特許文献1】米国公開特許2004年116353号公報
【0005】
【特許文献2】特公昭49−14739号公報
【0006】
【非特許文献1】JCS.Perkin Trans.1,1972,1803−1808
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、医薬、農薬中間体として有用な特定の構造を有する芳香族アミノ化合物を高収率で、かつ工業的有利に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究検討の結果、
式(1)

(式中、R1 は前記と同じ意味を表す。)で示されるアニリン誘導体と
式(2)

(式中、R2は、前記と同じ意味を表す。)で示されるアクリル酸誘導体と無水塩化アルミニウムとを溶媒の存在または不存在下に反応させることにより、式(3)

(式中、R1、R2は、前記と同じ意味を表す。)で示される芳香族アミノ化合物が、工業的な規模で、高収率かつ工業的有利に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明における式(1)及び(3)で示されるアニリン誘導体及び芳香族アミノ化合物の置換基R の具体例としては、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセチル基、2−エチルカルボニル基、3−プロピルカルボニル基、4−ブチルカルボニル基、5−ペンチルカルボニル基、6−ヘキシルカルボニル基等の炭素数2〜7の直鎖状又は分枝鎖状アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0010】
また、式(2)及び(3)において、R2 で示されるアクリル酸誘導体及び芳香族アミノ化合物の置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いられる無水塩化アルミニウムの使用量は、通常、式(1)で表されるアニリン誘導体1.0モルに対し0.01モル〜0.2モル、好ましくは0.02〜0.10モル、さらに好ましくは0.05〜0.08モルである。
【0012】
本発明において用いられる式(2)で表されるアクリル酸誘導体の使用量としては、通常、式(1)で表されるアニリン誘導体1.00モルに対し0.90モル〜2.00モル、好ましくは1.00モル〜1.30モルである。
【0013】
本発明において必要に応じて用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類が挙げられ、その中でもヘプタン、トルエン、クロロベンゼンが好ましく、さらにはトルエンがより好ましく、その使用量は、一般式(1)で表わされるアニリン誘導体に対して通常、0.1〜5重量倍、好ましくは0.5〜3重量倍である。
【0014】
本発明の製造方法における反応温度は、通常、40〜120℃であり、好ましくは55〜70℃である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、目的とする芳香族アミノ化合物を高収率で、工業的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
100mlの硝子製反応容器に、アントラニル酸メチル5.00g(33.1mmol)、無水塩化アルミニウム0.25g(1.88mmol)、アクリル酸メチル2.85g(33.1mmol)を加え、撹拌しながら昇温し、昇温後107−108℃にて8時間攪拌した。冷却後トルエン30.0g、水30.0gを加え水洗後水層を除去した。再度、水30.0g加え水洗、水層除去後、トルエン層を減圧濃縮し、LC純度85.4%のN―(2−カルボキシエチル)―アントラニル酸ジメチルエステルを7.38g(収率94.0%)を得た。
【実施例2】
【0018】
1000mlの硝子製反応容器に、アントラニル酸メチル150.0g(992mmol)、無水塩化アルミニウム7.54g(56.5mmol)を加え撹拌しながら昇温した。52℃に達した後、アクリル酸メチル106.79g(1240mmol)を52〜62℃の範囲で0.5時間で滴下した後、60〜67℃で5時間攪拌した。そこで無水塩化アルミニウム1.59g(11.9mmol)をさらに加え、60−62℃で4.5時間攪拌した(合計反応時間9.5時間)。冷却後、実施例1と同様の方法で後処理を行い、LC純度88.3%のN―(2−カルボキシエチル)―アントラニル酸ジメチルエステルを221.92g(収率94.3%)を得た。
【0019】
(比較例1)
25mlの硝子製反応容器にアントラニル酸メチル1.66g(11.0mmol)、アクリル酸メチル1.03g(12.0mmol)、酢酸0.10g(1.7mmol)を加え、攪拌しながら昇温した。110℃にて8時間攪拌したが、目的物の生成率は5.8%であった。
【0020】
(比較例2)
100mlの硝子製反応容器に、アントラニル酸メチル25.00g(165mmol)、四塩化スズ2.50g(9.6mmol)、のアクリル酸メチル14.2g(165mmol)を加え、撹拌しながら昇温した。101−113℃にて18時間攪拌した後、さらにアクリル酸メチルを4.70g(54.6mmol)加え106℃―107℃で6時間攪拌した。さらに四塩化スズを2.50g(9.6mmol)加えた後、107−108℃で19時間攪拌した。(合計反応時間43時間)冷却後、実施例1と同様の方法で後処理を行い、LC純度72.5%のN―(2−カルボキシエチル)―アントラニル酸ジメチルエステルを29.56g(収率75.3%)で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、R1 は、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基及びアシル基を表す。)で示されるアニリン誘導体と式(2)




(R2は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるアクリル酸誘導体と無水塩化アルミニウムとを溶媒の存在または不存在下に反応させることを特徴とする、式(3)

(式中、R1、R2は、前記と同じ意味を表す。)で示される芳香族アミノ化合物の製造方法。
【請求項2】
式(1)で示される化合物がアントラニル酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の芳香族アミノ化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−56782(P2006−56782A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236916(P2004−236916)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】