説明

芳香族アリル酸を含むポリマー性薬剤送達システム

本発明は、芳香族アリルアシル基を含むポリマー性送達システムを提供する。ポリマー性送達システムの作製方法、およびこれを用いた哺乳動物の治療方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその内容を本明細書に組み込む、2007年7月11日に出願された米国特許仮出願第60/949,195号に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は薬剤送達システムに関する。特に、本発明は芳香族アリルアシル部分を含むポリマーベースの薬剤送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
医薬は、水溶性の塩の形態で入手できる場合には、比較的容易に医薬製剤に含めることができる。しかしながら、所望の医薬が水性の液体に不溶性であったり、in vivoで速やかに分解したりする場合には問題が生じる。例えば、アルカロイド等の医薬を可溶化することはしばしば困難であり、またタンパク質は体内への投与後の分解が早過ぎることが多い。
【0004】
長年にわたり、この障害を解決するために種々の提案がなされてきた。この障害を解決するための試みの一つは、こうした医薬を溶解性の輸送システムの一部として含めることである。このような輸送システムとして、永続的コンジュゲートに基づくシステムまたはプロドラッグを挙げることができる。特に、ポリマー性輸送システムによって、医薬の溶解性および安定性を改善することができる。
【0005】
タンパク質等の多機能治療薬は、ポリマーを含む永続的コンジュゲートに基づく輸送システムで使用することができる。このようなシステムで使用されるタンパク質は、生物学的活性を維持して治療効果を達成する。タンパク質のポリマー性コンジュゲートの例は米国特許第4,179,337号に記載されている(その開示を参照により本明細書に組み入れる)。
【0006】
一方、プロドラッグは、しばしば親薬剤もしくは活性薬剤の生物学的に不活性または実質的に不活性な形態である。親薬剤の放出速度、すなわち加水分解速度に影響する多くの因子の中で、放出速度は特に、親薬剤をプロドラッグシステムの他の部分につなげる結合によって修飾される。従って、親薬剤を放出するために十分な加水分解が生じる前にプロドラッグが腎臓または網内系(reticular endothelial system)等を通して除去されることを避けるように注意しなければならない。ポリマーを含むプロドラッグは、薬剤の循環半減期を改善することができる。プロドラッグの連結によって、in vivoにおける加水分解を、投与後に十分な量の親薬剤が次第に生成される速度に改変し、それによって小分子薬剤等の治療的部分の薬物動態学的制御の向上を提供することができる。ポリマー性プロドラッグのいくつかの例は、同一出願人による米国特許第6,180,095号および第6,720,306号(これらそれぞれの内容を参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0007】
上記の試みおよび進歩にも関わらず、ポリマー性送達プラットフォームを改良する必要性が残っている。本発明は、この必要性および他の必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様において、下記式(I)の化合物が提供される。
【化1】

【0009】
式中、
Aはキャッピング基または以下のものであり;
【化2】

【0010】
R1は実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
X1およびX'1は独立してO、S、SO、SO2、NR6または結合であり;
ArおよびAr'は独立してアリールまたはヘテロアリール部分であり;
Y1およびY'1は独立してO、S、またはNR6であり;
L1およびL'1は独立して選択された二官能性リンカーであり;
D1およびD'1は独立して水素、OH、脱離基、官能基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分から選択され;
(p)および(p')は独立して0または正の整数、好ましくは0または1であり;
(q1)、(q'1)、(q2)、(q'2)、(q3)、(q'3)、(q4)および(q'4)は独立して0または1であり;
(s)および(s')は独立して0または正の整数であり;
R2、R'2、R3、R'3およびR6は独立して水素、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、シリルエーテル、スルホニル、メルカプト、C1-6アルキルメルカプト、アリールメルカプト、置換アリールメルカプト、置換C1-6アルキルチオ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換およびアリールカルボニルオキシから選択され;そして
R4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4は独立して、R2について使用できるものと同じ部分から選択されるか、またはそれぞれが以下のものであって良く;
【化3】

【0011】
[式中、
R7およびR8は独立して、R2を規定するものと同じ群から選択され;
Y2はO、SまたはNR6であり;
L3は二官能性リンカーであり;
(r)は独立して0または1であり;
(u)は0または正の整数であり;そして
D3は水素、OH、脱離基、官能基、ターゲティング基および生物学的活性部分から選択される。]
ただし、(u)が0である場合に(r)は0ではないことを条件とする。
【0012】
本発明の特定の好ましい態様において、ポリマー性薬剤送達システムはケイ皮酸を含む。
【0013】
いくつかの好ましい態様において、システムの芳香族部分に結合した少なくとも1個の官能基をターゲティング基にコンジュゲートさせる。
【0014】
いくつかの特に好ましい態様において、R1として、約5,000〜約60,000の分子量を有する直鎖型、分岐鎖型またはマルチアーム型のポリ(エチレングリコール)残基が挙げられ;そして(p)は0または1であり;Y1はOである。特定の一態様において、R2-5およびR'2-5は水素、メチルおよびエチルから選択され、それぞれがより好ましくは水素である。
【0015】
本発明のもう一つの態様において、本明細書に記載する化合物の調製方法、および本明細書に記載する化合物を使用した治療方法が提供される。
【0016】
本明細書に記載する芳香族アリル酸に基づくポリマー性輸送システムの1つの利点は、当業者が医薬の負荷量を上げることができることである。
【0017】
本明細書に記載する芳香族部分に基づくポリマー性輸送システムのもう1つの利点は、ポリマー性送達システムの安定性が向上していることである。いかなる理論に拘束されるものでもないが、ポリマーと、官能基、生物学的活性部分およびターゲティング基等の部分との間の共有結合の周囲の疎水的微小環境によって、共有結合を改変し得る塩基性水性媒体または酵素に曝されることから共有結合が保護され、それによって共有結合が安定化する。ポリマー性システムの安定性はまた、ターゲティング基または生物学的活性部分に結合させる前に長期保存することも可能とする。
【0018】
本明細書に記載するポリマー性システムの更なる利点は、第2の薬剤の結合を可能とすることである。芳香環上で置換を容易に配置することができるため、当業者は、治療のための相乗的効果を持たせるために第2の薬剤、または選択的標的送達のためのターゲティング基を結合させることができる。本明細書に記載するポリマー性送達システムによって、ターゲティング医薬が治療部位に到達することが可能である。ポリマー性システムの芳香族部分および二重結合は、化学的官能部分を介してターゲティング部分と置換することができる。
【0019】
芳香族アリルアシル基を含むポリマー性送達システムはまた、治療薬のコンジュゲーション効率を改善することができ、それによって製造コストを低減することができる。本発明の更にもう1つの利点は、高純度で、従って均一な薬物動態学的特性を有する本明細書記載のポリマー性システムを調製できることである。
【0020】
更にもう一つの利点は、第2の薬剤を結合させるために予め必要とされていた複数の段階を回避できることである。例えば、特定の二官能性の基を第2の薬剤に直接結合させることができ、従ってポリマーシステムを活性化する段階を除くことができる。
【0021】
本発明の目的において、用語「残基」は、もう1つの化合物との置換反応に供された後に残存するある化合物の部分、すなわちPEG等を意味するものと理解されるべきである。
【0022】
本発明の目的において、用語「生物学的活性部分」および「生物学的活性部分の残基」は、生物学的活性化合物が置換反応に供された後に残存する、輸送担体部分が結合した生物学的活性化合物の部分を意味するものと理解されるべきである。
【0023】
本発明の目的において、用語「ポリマー残基」または「PEG残基」は、それぞれ他の化合物、部分等との反応の後に残存するポリマーまたはPEGの部分を意味するものと理解されるべきである。
【0024】
本発明の目的において、本明細書で使用する用語「アルキル」は、直鎖、分岐鎖、および環状のアルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素をいう。用語「アルキル」はまた、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、C1-6ヒドロカルボニル(hydrocarbonyl)基を含む。好ましくは、アルキル基は1〜12個の炭素を有する。より好ましくは約1〜7個の炭素、更により好ましくは約1〜4個の炭素の低級アルキルである。アルキル基は、置換されていても、置換されていなくても良い。置換される場合、置換基としては、好ましくはハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0025】
本発明の目的において、本明細書で使用する用語「置換」は、ある官能基または化合物に含まれる1個以上の原子に、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基よりなる群から選択される部分の一つを付加するか、またはこれと置き換えることをいう。
【0026】
本発明の目的において、用語「アルケニル」は、直鎖、分岐鎖、および環状の基を含む、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する基をいう。好ましくは、アルケニル基は約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは約2〜7個の炭素、更により好ましくは約2〜4個の炭素の低級アルケニルである。アルケニル基は、置換されていても、置換されていなくても良い。置換される場合、置換基としては、好ましくはハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0027】
本発明の目的において、用語「アルキニル」は、直鎖、分岐鎖、および環状の基を含む、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する基をいう。好ましくは、アルキニル基は約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは約2〜7個の炭素、更により好ましくは約2〜4個の炭素の低級アルキニルである。アルキニル基は、置換されていても、置換されていなくても良い。置換される場合、置換基としては、好ましくはハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。「アルキニル」の例として、プロパルギル、プロピン、および3-ヘキシンが挙げられる。
【0028】
本発明の目的において、用語「アリール」は、少なくとも1個の芳香環を含む芳香族炭化水素の環系をいう。芳香環は、場合により、他の芳香族炭化水素環または非芳香族炭化水素環に融合するか、あるいは結合することができる。アリール基の例としては、例えばフェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンおよびビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としてはフェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0029】
本発明の目的において、用語「シクロアルキル」は、C3-8の環状炭化水素をいう。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
【0030】
本発明の目的において、用語「シクロアルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有するC3-8の環状炭化水素をいう。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。
【0031】
本発明の目的において、用語「シクロアルキルアルキル」は、C3-8シクロアルキル基で置換されたアルキル基をいう。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
【0032】
本発明の目的において、本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、酸素架橋を通して親分子の部分に結合した、指示された数の炭素原子のアルキル基をいう。アルコキシ基の例としては、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシおよびイソプロポキシが挙げられる。
【0033】
本発明の目的において、「アルキルアリール」基は、アルキル基で置換されたアリール基をいう。
【0034】
本発明の目的において、「アラルキル(aralkyl)」基は、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0035】
本発明の目的において、用語「アルコキシアルキル」基は、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。
【0036】
本発明の目的において、用語「アルキル-チオ-アルキル」は、アルキル-S-アルキルチオエーテル、例えばメチルチオメチルまたはメチルチオエチルをいう。
【0037】
本発明の目的において、本明細書で使用する用語「アミノ」は、1個以上の水素ラジカルを有機ラジカルで置き換えることによってアンモニアから由来する、当分野で公知の窒素含有基をいう。例えば、用語「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」は、それぞれアシルおよびアルキル置換基を有する特定のN-置換有機ラジカルをいう。
【0038】
本発明の目的において、用語「アルキルカルボニル」は、アルキル基で置換されたカルボニル基をいう。
【0039】
本発明の目的において、本明細書で使用する用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素をいう。
【0040】
本発明の目的において、用語「ヘテロシクロアルキル」は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む非芳香族の環系をいう。ヘテロシクロアルキル環は、場合によって他のヘテロシクロアルキル環および/もしくは非芳香族の炭化水素環に融合するか、あるいは結合することができる。好ましいヘテロシクロアルキル基は3〜7個のメンバーを有する。ヘテロシクロアルキル基の例としては、例えばピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、およびピラゾールが挙げられる。好ましいヘテロシクロアルキル基としてはピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、およびピロリジニルが挙げられる。
【0041】
本発明の目的において、用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む芳香族の環系をいう。ヘテロアリール環は、1個以上のヘテロアリール環、芳香族もしくは非芳香族炭化水素環またはヘテロシクロアルキル環に融合するか、あるいは結合することができる。ヘテロアリール基の例としては、例えばピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリンおよびピリミジンが挙げられる。ヘテロアリール基の好ましい例としては、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、およびベンゾピラゾリルが挙げられる。
【0042】
本発明の目的において、用語「ヘテロ原子」は窒素、酸素、および硫黄をいう。
【0043】
いくつかの実施形態において、置換アルキルとしては、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルが挙げられ;置換アルケニルとしては、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルが挙げられ;置換アルキニルとしては、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルが挙げられ;置換シクロアルキルとしては4-クロロシクロヘキシル等の部分が挙げられ;アリールとしてはナフチル等の部分が挙げられ;置換アリールとしては3-ブロモフェニル等の部分が挙げられ;アラルキルとしてはトリル等の部分が挙げられ;ヘテロアルキルとしてはエチルチオフェン等の部分が挙げられ;置換ヘテロアルキルとしては3-メトキシ-チオフェン等の部分が挙げられ;アルコキシとしてはメトキシ等の部分が挙げられ;そしてフェノキシとしては3-ニトロフェノキシ等の部分が挙げられる。ハロは、フルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むものと理解されるべきである。
【0044】
本発明の目的において、「正の整数」は、1と等しいか、またはそれより大きい整数を含み、当業者に理解されるであろうように、当業者による合理性の範囲内であることが理解されるべきであり、すなわち、好ましくは1〜約10、より好ましくは、いくつかの実施形態において1または2である。
【0045】
本発明の目的において、用語「連結した(linked)」は、化学反応の結果としての、1個の基のもう1つの基への共有(好ましくは)または非共有結合を含むものと理解されるべきである。
【0046】
本発明の目的において、用語「結合(bond)」は、原子がなく、「結合」として示されている基に隣接する部分が直接連結していることを意味するものと理解されるべきである。
【0047】
本発明の目的において、薬学的活性化合物は低分子量の分子を含むことを意味するものと理解されるべきである。典型的には、薬学的活性化合物は約1,500ダルトン未満の分子量を有し、場合によってアミン-、ヒドロキシル-またはチオール-含有部分によって誘導体化され、ポリマーとのコンジュゲート形成のための反応部位が提供される。
【0048】
本発明の目的において、用語「有効量」および「十分量」は、当業者に理解されるような所望の効果または治療効果を達成する量を意味する。
【0049】
大まかに言えば、成功的治療(すなわち腫瘍増殖阻害または炎症の阻害)は、本明細書に記載する化合物による処置なしに観察されるものと比較して、所望の応答が得られた場合に生じていると判断されるべきである。例えば、成功的治療(すなわち腫瘍増殖阻害または炎症の阻害)は、例えば癌または炎症と関連する遺伝子の10%以上(すなわち20%、30%、40%)のダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションが得られることによって定義することができる。
【0050】
更に、説明の便宜のために単数形の用語を使用することは、いかなる意味においてもそのように限定することを意図するものではない。従って、例えば、ある酵素を含む組成物についての言及は、その酵素の1個以上の分子をいうものである。また、本発明は、本明細書に開示する特定の配置、プロセス段階、および物質に限定されるものではなく、そのような配置、プロセス段階、および物質がある程度変動し得ることも理解されるべきである。
【0051】
本発明の範囲は請求の範囲およびその等価物によって限定されるものであるから、本明細書で使用する用語は特定の実施形態を記載するためにのみ使用するものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1-7に記載する合成方法を図示する。
【図2】実施例8に記載する合成方法を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
A. 概要
本発明の一態様において、下記式(I)の化合物が提供される。
【化4】

【0054】
式中、
Aはキャッピング基または以下のものであり;
【化5】

【0055】
R1は実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
X1およびX'1は独立してO、S、SO、SO2、NR6または結合であり;
ArおよびAr'は独立してアリールまたはヘテロアリール部分であり;
Y1およびY'1は独立してO、S、またはNR6であり、好ましくはY1およびY'1はOであり;
L1およびL'1は独立して選択された二官能性リンカーであり;
D1およびD'1は独立して水素、OH、脱離基、官能基、ターゲティング基、診断剤、および薬学的に活性な低分子量化合物を含む生物学的活性部分から選択され;
(p)および(p')は独立して0または正の整数、好ましくは約0〜約10(例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)、より好ましくは約0〜約6(例えば0、1、2、3、4、5または6)、最も好ましくは0、1、または2であり;
(q1)、(q'1)、(q2)、(q'2)、(q3)、(q'3)、(q4)および(q'4)は独立して0または1であり;
(s)および(s')は独立して0または正の整数、好ましくは約0〜約6(例えば0、1、2、3、4、5または6)、より好ましくは0、1または2であり;
R2、R'2、R3、R'3およびR6は独立して水素、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、シリルエーテル、スルホニル、メルカプト、C1-6アルキルメルカプト、アリールメルカプト、置換アリールメルカプト、置換C1-6アルキルチオ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換およびアリールカルボニルオキシから選択され;そして
R4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4は独立して、R2について使用できるものと同じ部分から選択されるか、またはそれぞれ以下のものであって良く;
【化6】

【0056】
[式中、
R7およびR8は独立して、R2を規定するものと同じ群から選択され;
Y2はO、SまたはNR6であり;
L3は二官能性リンカーであり;
(r)は0または1であり;
(u)は0または正の整数、好ましくは約0〜約4(例えば0、1、2、3、4、5または6)、より好ましくは0、1または2、更により好ましくは1であり;そして
D3は水素、OH、脱離基、官能基、ターゲティング基および生物学的活性部分から選択される。]
ただし、(u)が0の場合に(r)が0でないことを条件とする。
【0057】
好ましい一態様において、(p)が0の場合に、X1およびX'1は独立してO、S、SOまたはSO2である。
【0058】
別の態様において、本明細書に記載する化合物は、(q1)+(q2)+(q3)+(q4)の合計が0でなく(例えば好ましくは1)、そしてR4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4 のうち少なくとも1個(例えば1、2または3個)は以下のものであるように選択される。
【化7】

【0059】
[式中、D3は脱離基、官能基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択される。]この態様において、脱離基は好ましくはN-ヒドロキシスクシンイミジル、パラ-ニトロフェノキシ、オルト-ニトロフェノキシおよびC1-C6アルキルオキシから選択され、そして官能基は好ましくはマレイミジル、ビニル、およびスルホン残基から選択される。
【0060】
本発明のこれらの態様において、R2、R'2、R3、R'3、R6、R7およびR8に対応する上記部分が置換され得るものとして示されている場合には、置換のために考えられる置換基としては、例えばアシル、アミノ、アミド、アミジン、アラ-アルキル、アリール、アジド、アルキルメルカプト、アリールメルカプト、カルボニル、カルボキシレート、シアノ、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、イミノ、ニトロ、チオカルボニル、チオエステル、チオアセテート、チオホルメート、アルコキシ、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、シリル、スルフヒドリル、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、およびスルホニルを挙げることができる。
【0061】
本発明の目的において、(p)および/または(p')が2と等しいか、またはそれより大きい場合、C(R2)(R3)は同じか、または異なるものである。
【0062】
本発明の目的において、(s)、(s')および(u)が2と等しいか、またはそれより大きい場合、L1、L'1およびL3はそれぞれ同じか、または異なるものである。
【0063】
本発明の特定の態様において、(p)が0である場合、好ましくは十分な数の原子、例えば5個または6個を超える数の原子がX1/X'1および C(=Y1)/C(=Y'1)の間に存在し、放出可能な環状部分は形成しない。例えば、(p)が0である場合、フェニル環に結合したポリマー部分はD1、D'1またはD3に対してオルト位にはないであろう。
【0064】
本発明のもう1つの態様において、生物学的部分としてはアミン含有部分、ヒドロキシル含有部分およびチオール含有部分が挙げられる。
【0065】
更にもう1つの態様において、AはH、NH2、OH、CO2H、C1-6アルコキシ、およびC1-6アルキルから選択することができる。他のいくつかの好ましい実施形態において、Aはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、H、およびOHであり得る。Aはより好ましくはメチルまたはメトキシである。
【0066】
もう1つの好ましい実施形態において、本明細書に記載する化合物は下記式を有する。
【化8】

【0067】
[式中、Aはキャッピング基であるか、または以下のものである。
【化9】

【0068】
より好ましくは、本明細書に記載する化合物は、例えば以下のものであり得る。
【化10】

【0069】
更なる実施形態において、本明細書に記載する化合物は下記式を有する。
【化11】

【0070】
式中、
Raは以下のものであり;
【化12】

【0071】
そしてD1の少なくとも1個はターゲティング基、診断剤または生物学的活性部分である。
【0072】
好ましくは、マルチアーム型ポリマーは少なくとも1個のターゲティング基、および少なくとも1個の生物学的活性部分を含む。1個以上の生物学的活性部分を含むマルチアーム型ポリマーコンジュゲートが考慮される。
【0073】
より好ましい実施形態において、(q1)+(q2)+(q3)+(q4)の合計、または(q'1)+(q'2)+(q'3)+(q'4)の合計は0または1と等しい。本発明の化合物は、例えば以下のものであり得る。
【化13】


【0074】
別の実施形態は、例えば以下のものであり得る。
【化14】

【0075】
いくつかの好ましい実施形態において、R4、R'4、R5およびR'5は独立して水素またはCH3である。いくつかの特に好ましい実施形態において、R4、R'4、R5およびR'5は全て水素またはCH3である。他の特定の実施形態において、R7およびR8として、水素およびCH3が挙げられる。更に別の特定の実施形態において、X1としてOおよびNR6が挙げられ、そしてQ1-4として水素、C1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキル基が挙げられる。
【0076】
より好ましい実施形態において、(r)は0かつ(u)は1である。実例として下記式を有するものを挙げる。
【化15】

【0077】
B. 実質的に非抗原性の水溶性ポリマー
本明細書に記載する化合物で使用するポリマーは、好ましくは水溶性ポリマーであり、そして実質的に非抗原性であり、例えばポリアルキレンオキシド(PAO)である。
【0078】
本発明の一態様において、本明細書に記載する化合物として、直鎖型、末端分岐型またはマルチアーム型のポリアルキレンオキシドが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態において、ポリアルキレンオキシドとして、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0079】
ポリアルキレンオキシドは、約2,000〜約100,000ダルトン、好ましくは約5,000〜約60,000ダルトンの平均分子量を有する。ポリアルキレンオキシドは、より好ましくは約5,000〜約25,000、あるいは約20,000〜約45,000ダルトン(好ましくは1,500ダルトン未満、より好ましくは1,200ダルトン未満の平均分子量を有する低分子量化合物がポリマーにコンジュゲートする場合)であり得る。いくつかの特に好ましい実施形態において、本明細書に記載する化合物として、約12,000〜約20,000ダルトン、または約30,000〜約45,000ダルトンの平均分子量を有するポリアルキレンオキシドが挙げられる。特定の一実施形態において、ポリマー部分は約12,000または40,000ダルトンの分子量を有する。
【0080】
ポリアルキレンオキシドはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含む。より好ましくは、ポリアルキレンオキシドはポリエチレングリコール(PEG)を含む。PEGは一般的に以下の構造で示される:
-O-(CH2CH2O)n-
ここで、(n)はポリマーの重合度を示し、そしてポリマーの分子量に依存する。あるいはまた、本発明のポリエチレングリコール(PEG)残基部分は以下のものから選択され得る:
-X11-(CH2CH2O)n-CH2CH2X11-、
-X11-(CH2CH2O)n-CH2C(=Y11)-X11-、
-X11-C(=Y11)-(CH2)a'-Y12-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y12-(CH2)a'-C(=Y11)-X11-、および
-X11-(CR31R32)a'-Y12-(CH2)b'-O-(CH2CH2O)n-(CH2)b'-Y12-(CR31R32)a'-X11-
式中、
X11はO、S、SO、SO2、NR33または結合であり;
Y11およびY12は独立してO、S、またはNR33であり;
R31-33は独立して、R2について使用できるものと同じ部分であり;
(a’)および(b’)は独立して0または正の整数、好ましくは0-6、より好ましくは1であり;そして
(n)は約10〜約2300の整数である。
【0081】
分岐型またはU-PEG誘導体は、米国特許第5,643,575号、第5,919,455号、第6,113,906号および第6,566,506号(これらそれぞれの開示を参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。こうしたポリマーの非制限的なリストは、以下の構造を有するポリマーシステム(i)-(vii)に対応する。
【化16】


【0082】
式中、
R51-52はポリアルキレンオキシドであり;
Y11およびY51-52は独立してO、SまたはNR33であり;
X21はO、NR6、S、SOまたはSO2であり;
(c')および(t1')は独立して0または正の整数、例えば1、2、3、4および5であり;
(d')は0または1であり;
mPEGはメトキシPEGであり、
ここで、PEGは先に規定したものであり、そのポリマー部分の総分子量は約2,000〜約100,000ダルトンである。R6およびR33は先に規定したものである。
【0083】
更にもう1つの態様において、ポリマーとして、NOF社のドラッグデリバリーシステムカタログ、第8版、2006年4月発行(その開示を参照により本明細書に組み入れる)に記載されたもの等のマルチアームPEG-OHまたは「スター-PEG」製品が挙げられる。また、Shearwater社の2001年のカタログ「生物医学的応用のためのポリエチレングリコールおよび誘導体(Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application)」(その開示を参照により本明細書に組み入れる)も参照のこと。マルチアームポリマーコンジュゲートは、4本以上のポリマーアーム、好ましくは4本または8本のポリマーアームを含む。
【0084】
説明のためであって、制限するものではないが、マルチアームポリエチレングリコール (PEG)残基は以下のものであり得る。
【化17】

【0085】
式中、
(x)は0および正の整数、すなわち約0〜約28であり;そして
(n)は重合度である。
【0086】
本発明の特定の一実施形態において、マルチアームPEGは下記構造を有する。
【化18】

【0087】
[式中、(n)は正の整数である。]本発明の好ましい一実施形態において、ポリマーは約5,000Da〜約60,000Da、好ましくは20,000Da〜45,000Daの総分子量を有する。
【0088】
更にもう一つの特定の実施形態において、マルチアームPEGは下記構造を有する。
【化19】

【0089】
[式中、(n)は正の整数である。]本発明の好ましい一実施形態において、マルチアームポリマーの重合度(n)は約28〜約350であり、約5,000Da〜約60,000Da、好ましくは12,000Da〜45,000Daの総分子量を有するポリマーを提供する。これはポリマー鎖中の反復単位の数を示し、ポリマーの分子量に依存する。
【0090】
ポリマーは、米国特許第5,122,614号または第5,808,096号に記載された活性化技術を使用して、好適に活性化されたポリマーに変換することができる。具体的には、このようなPEGは下記式のものであり得る。
【化20】

【0091】
式中、
(u’)は約4〜約455の整数であり;そして残基の3個までの末端部分がメチルまたは他の低級アルキルでキャッピングされている。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態において、芳香族の基への結合を容易にするために、4本のPEGアームの全てを好適な活性化基に変換することができる。変換前のこうした化合物としては以下のものが挙げられる:
【化21】


【0093】
本明細書に含まれるポリマー物質は、好ましくは室温で水溶性である。このようなポリマーの非制限的な例として、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、そのコポリマーおよびそのブロックコポリマー(ただし、ブロックコポリマーの水溶性が維持されることを条件とする)が挙げられる。
【0094】
更なる実施形態において、またPAOに基づくポリマーの代替物として、1個以上の有効に非抗原性の物質、例えばデキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物に基づくポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキシド、および/またはそのコポリマーを使用することができる。同一出願人による米国特許第6,153,655号(その内容を参照により本明細書に組み入れる)も参照のこと。PEG 等のPAOのためのものとして本明細書に記載するものと同じ型の活性化が用いられることは当業者に理解されるであろう。当業者は更に、前記の例は単なる実例であって、本明細書に記載する品質を有する全てのポリマー物質が考慮されることを認識するであろう。本発明の目的において、「実質的または有効に非抗原性」は、非毒性であり、哺乳動物において明らかな免疫原性応答を誘発しないものとして当分野において理解されている全ての物質を意味する。
【0095】
いくつかの態様において、末端アミン基を有するポリマーを使用して、本明細書に記載する化合物を製造することができる。末端アミンを有するポリマーを高純度で調製する方法は、米国特許出願第11/508,507号および第11/537,172号(これらそれぞれの内容を参照により組み入れる)に記載されている。例えば、アジドを有するポリマーは、トリフェニルホスフィン等のホスフィンベースの還元剤、またはNaBH4等の水素化ホウ素アルカリ金属還元剤と反応する。あるいはまた、脱離基を含むポリマーは、保護されたアミン塩、例えばメチル-tert-ブチルイミドジカーボネートのカリウム塩(KNMeBoc)、またはジ-tert-ブチルイミドジカーボネートのカリウム塩(KNBoc2)と反応し、続いて保護されたアミン基を脱保護する。これらのプロセスで生成する末端アミンを有するポリマーの純度は約95%より高く、好ましくは99%より高い。
【0096】
別の態様において、末端カルボン酸基を有するポリマーを、本明細書に記載するポリマー性送達システムで使用することができる。末端カルボン酸を有するポリマーを高純度で調製する方法は、米国特許出願第11/328,662号(その内容を参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。この方法は、まずポリアルキレンオキシドの第三級アルキルエステルを調製し、続いてそのカルボン酸誘導体に変換することを含む。このプロセスのPAOカルボン酸の調製の第一段階は、ポリアルキレンオキシドカルボン酸のt-ブチルエステル等の中間体の生成を含む。この中間体は、カリウムt-ブトキシド等の塩基の存在下でPAOをt-ブチルハロアセテートと反応させることによって生成する。t-ブチルエステル中間体が一旦生成すれば、ポリアルキレンオキシドのカルボン酸誘導体は92%を超える純度、好ましくは97%を超える純度、より好ましくは99%を超える純度、最も好ましくは99.5%を超える純度で容易に提供することができる。
【0097】
C. 芳香族部分
本明細書に記載する化合物で使用される芳香族部分(Ar)には、多置換の芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素が含まれる。重要な特徴は、Ar/Ar'基が本質的に芳香族であることである。一般的に、π電子は、環状分子の平面の上下双方の「雲」の中で共有されなければならない。更に、π電子の数はヒュッケル則(4n+2)を満たすものでなければならない。当業者は、無数の部分がこの部分の芳香族としての要件を満たし、従ってここで使用するのに好適であることを認識するであろう。
【0098】
本発明の特定の一実施形態において、芳香族部分として、以下のものが挙げられる。
【化22】

【0099】
他の好適な芳香族部分としては、以下のものが挙げられる。
【化23】

【0100】
式中、JはO、S、またはNR11であり;EおよびZはそれぞれ独立してCR12またはNR13であり;そしてR11、R12およびR13は、R2について使用できるものと同じ部分から選択され得る。
【0101】
5員および6員の環の異性体も考慮され、並びにアントラセン(anthracine)およびナフタレン等のベンゾ-およびジベンゾ-環、およびこれらの関連類似体も本発明の範囲内のものと考えられる。
【0102】
更に、芳香族またはヘテロ芳香族部分は、場合によってハロゲン(1個もしくは複数)および/または側鎖で置換されていても良い。本発明のAr部分として好適な構造は全て、芳香族基上の置換基が同じ平面上に並ぶことを可能にし得る。オルト、メタおよびパラ置換された芳香環を使用することができる。
【0103】
D. 二官能性リンカー
二官能性リンカーとしては、アミノ酸、アミノ酸誘導体およびペプチドが挙げられる。アミノ酸は天然および非天然のアミノ酸由来であり得る。天然のアミノ酸の誘導体および類似体、並びに当分野で公知の種々の非天然のアミノ酸(DまたはL)、疎水性または非疎水性のものも、本発明の範囲内のものであると考えられる。非天然アミノ酸の好適な非制限的な例として、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、β-アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-アミノ酪酸、デスモシン、2,2-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン、サルコシン、N-メチル-イソロイシン、6-N-メチル-リシン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、およびオルニチンが挙げられる。いくつかの好ましいアミノ酸残基はグリシン、アラニン、メチオニンおよびサルコシンから選択され、より好ましくはグリシンである。
【0104】
あるいはまた、L1、L1'およびL3は以下から選択することができる。
【0105】
-[C(=O)]v(CR22R23)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t-O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t-NR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tO[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tO[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tO-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tS-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tO-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tS-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tO-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tS-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’NR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t(CR24CR25CR28R29O)t’NR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’NR26[C(=O)]v’-
【化24】

【0106】
式中、
R21-29は独立して水素、C1-6アルキル、C3-12分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
(t)および(t')は独立して0または正の整数、好ましくは約0〜約10(例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)、より好ましくは約0〜約6(例えば0、1、2、3、4、5または6)、更により好ましくは0、1または2であり;そして
(v)および(v')は独立して0または1である。
【0107】
本発明の目的において、(t)または(t')が2と等しいかそれより大きい場合、C(R24)(R25)は同じか、または異なるものである。
【0108】
好ましくは、L1、L1'およびL3は以下から選択することができる。
【0109】
-[C(=O)]r1NH(CH2)2CH=N-NHC(=O)-(CH2)2-、
-[C(=O)]r1NH(CH2)2(CH2CH2O)2(CH2)2NH[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)(CH2CH2O)2NH[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)s1NH(CH2CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)s1S(CH2CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)(CH2CH2O)[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)s1O(CH2CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)(CH2)NH[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)2(CH2)[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)s1(CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NHCH2CH2NH[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)2O[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2)3[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2O)2(CH2)[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)2NH(CH2)2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2O)2NH[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)2O(CH2)2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)2S(CH2)2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2)NH[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2)O[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)3NH[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)3O[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)3[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1CH2NHCH2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]rCH2OCH2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1CH2SCH2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1S(CH2)3[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1(CH2)3[C(=O)]r1’-、
【化25】

【0110】
式中、
(r1)および(r1')は独立して0または1であり;そして
(s1)および(s1')は独立して0または正の整数、好ましくは約0〜約4(例えば0、1、2、3、または4)、より好ましくは0、1または2であり、
ただし、(r1)および(r1')が同時に0ではないことを条件とする。
【0111】
本発明の更に別の態様において、L1、L'1およびL3として以下のものが挙げられる。
【化26】

【0112】
更なる実施形態において、また代替として、L1、L'1およびL3として、上記のものに対応するが、マレイミジルの代わりにビニル、スルホン残基、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼート等を有する構造が挙げられる。これらの二官能性の基は第2の薬剤を直接コンジュゲートさせることが可能であり、従って第2の薬剤とコンジュゲートさせるために官能基を結合する必要がない。
【0113】
E. D1、D'1およびD3
1. 脱離基および官能基
いくつかの態様において、好適な脱離基としては、限定するものではないが、ハロゲン(Br、Cl)、活性化カーボネート、カルボニルイミダゾール、環状イミドチオン、イソシアネート、N-ヒドロキシスクシンイミジル、パラ-ニトロフェノキシ、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、イミダゾール、トシレート、メシレート、トレシレート(tresylate)、ノシレート(nosylate)、C1-C6アルキルオキシ、C1-C6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、オルト-ニトロフェノキシ、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ、1,3,5-トリクロロフェノキシ、および1,3,5-トリフルオロフェノキシ、または当業者に明白であろう他の好適な脱離基が挙げられる。
【0114】
本発明の目的において、脱離基は、所望の標的、すなわち生物学的活性部分、診断剤、ターゲティング部分、二官能性スペーサー、中間体等の上に見られる求核原子と反応できる基として理解されるべきである。従って標的は置換のための基、例えばタンパク質、ペプチド、酵素、天然もしくは化学的に合成された治療分子、例えばドキソルビシン、および一保護(mono-protected)ジアミン等のスペーサー上に見られるOH、NH2またはSH基を含む。
【0115】
いくつかの好ましい実施形態において、ポリマー性輸送システムを生物学的活性部分に連結させるための官能基としては、マレイミジル、ビニル、スルホン残基、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼート等が挙げられ、これを生物学的活性基に更にコンジュゲートさせることができる。
【0116】
本発明の特に好ましい実施形態において、D1、D'1およびD3は、OH、メトキシ、tert-ブトキシ、N-ヒドロキシスクシンイミジルおよびマレイミジルから選択することができる。
【0117】
2. 生物学的活性部分
多種多様の生物学的活性部分を本明細書に記載する活性化ポリマーに結合させることができる。生物学的活性部分としては、薬学的活性化合物、酵素、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体およびペプチドが挙げられる。更に、本発明の活性化ポリマーは更に、アミン-、ヒドロキシル-、またはチオール-含有化合物を含むD1、D'1およびD3等の生物学的活性部分を含み得る。こうした好適な化合物の非制限的な例として、有機化合物、酵素、タンパク質、ポリペプチド、抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体またはオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
【0118】
本発明の目的において、薬学的活性化合物は低分子量の分子を含むことを意味するものと理解されるべきである。典型的には、薬学的活性化合物は約1,500ダルトン未満の分子量を有し、場合によってSH含有部分で誘導体化してポリマーとのコンジュゲート形成のための反応部位を提供する。
【0119】
本発明のいくつかの態様において、生物学的活性部分はアミン-、ヒドロキシル-、またはチオール-含有化合物を含む。こうした好適な化合物の非制限的な例として、有機化合物、酵素、タンパク質、ポリペプチド、抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体またはオリゴヌクレオチド等が挙げられる。有機化合物としては、限定するものではないが、カンプトセシンおよび類似体(例えばSN38およびイリノテカン)等の物質、および関連トポイソメラーゼI阻害剤、タキサン類およびパクリタキセル誘導体、AZT等のヌクレオシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン等のアントラサイクリン化合物;p-アミノアニリンマスタード、メルファラン、Ara-C(シトシンアラビノシド)および関連代謝拮抗化合物、例えばゲムシタビン等が挙げられる。あるいはまた、生物学的活性部分は、心血管作動剤、抗新生物剤、抗感染剤、ナイスタチンおよびアンホテリシンB等の抗真菌剤、抗不安剤、胃腸剤、中枢神経系-活性化剤、鎮痛剤、排卵促進剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗ウレセミック(anti-urecemic)剤、血管拡張剤、および血管収縮剤等を含み得る。具体的には言及していないが、好適なアミン-、ヒドロキシル-またはチオール-含有基を有する他の生物学的活性物質も意図され、本発明の範囲内のものであることが理解されるべきである。
【0120】
本発明のもう1つの態様において、生物学的活性化合物は、治療が望まれる状態のための、動物、例えばヒトを含む哺乳動物の治療における医学的または診断的使用のために好適である。
【0121】
本明細書で含めるのに好適な生物学的活性部分の型に関する唯一の制限は、担体部分と反応して連結し得る利用可能な少なくとも1個のアミン-、ヒドロキシル-、またはチオール-含有部分があること、そして本明細書に記載するポリマー性送達システムにコンジュゲートさせた形態で生物活性を実質的に喪失しないことである。あるいはまた、本発明のポリマー性輸送コンジュゲート化合物に組み込むのに好適な親化合物は、連結した化合物からの加水分解による放出後に活性を有していても良く、または加水分解による放出後には活性を有さないが、更なる化学的プロセス/反応を受けた後に活性を持つものであっても良い。例えば、ポリマー性輸送システムによって血流中に送達される抗癌剤は、癌または腫瘍細胞に侵入するまでは不活性のままであり、癌または腫瘍細胞の化学、例えばその細胞に特有の酵素的反応によって活性化されるものであっても良い。
【0122】
本発明の更なる態様は、場合によって、本明細書に記載するポリマー性送達システムに連結した診断用タグであって、タグが診断またはイメージング目的で選択されるものと共に調製されたコンジュゲート化合物を提供する。従って、好適なタグは、任意の好適な部分、例えばアミノ酸残基を、当分野で標準的な任意の放射性同位体、放射線不透過性標識、磁気共鳴標識、または磁気共鳴イメージングに好適な他の非放射性同位体標識、蛍光型標識、目に見える色を示す標識および/または紫外線、赤外線もしくは電気化学的刺激によって蛍光を発することができる標識に連結させることによって調製され、外科的処置の際の腫瘍組織のイメージング等を可能とする。場合によって、診断用タグをコンジュゲートした治療的部分に組み込み、および/または連結して、動物またはヒトの患者の体内での治療的生物学的活性物質の分布をモニタリングすることが可能となる。
【0123】
本発明の更なる態様において、本発明のタグ付けしたコンジュゲートは、例えば放射性同位体標識を含む任意の好適な標識を用い、当分野で公知の方法によって容易に調製される。単なる例として、これらには、131ヨウ素、125ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または111インジウムが含まれ、in vivoにおける腫瘍細胞への選択的取り込みのためのラジオイムノシンチグラフィー(radioimmunoscintigraphic)剤を提供する。例えば、単なる例として、米国特許第5,328,679号;第5,888,474号;第5,997,844号;および第5,997,845号(参照により本明細書に組み入れる)によって示されるものを含め、ペプチドをTc-99mに連結させるための当分野で公知の多くの方法がある。
【0124】
3. ターゲティング基
いくつかの態様において、本明細書に記載する化合物はターゲティング基を含む。ターゲティング基としては、受容体リガンド、抗体もしくは抗体断片、単鎖抗体、細胞接着ペプチドおよび細胞侵入性(penetrating)ペプチド(CPP)等のターゲティングペプチド、ターゲティング炭水化物分子またはレクチンが挙げられる。ターゲティング基は、本明細書に記載する化合物の標的組織および細胞集団への結合または取り込みを促進する。例えば、ターゲティング基の非制限的な例として、血管内皮細胞増殖因子、FGF2、ソマトスタチンおよびソマトスタチン類似体、トランスフェリン、メラノトロピン、ApoEおよびApoEペプチド、フォン・ヴィルブランド因子(von Willebrand's Factor)およびフォン・ヴィルブランド因子ペプチド;アデノウイルス線維タンパク質およびアデノウイルス線維タンパク質ペプチド;PD1およびPD1ペプチド、EGFおよびEGFペプチド、RGDペプチド、葉酸塩等が挙げられる。他の好適なターゲティング基としてはセレクチン、TAT、ペネトラチン、およびArg9が挙げられる。
【0125】
本発明の更なる態様において、ターゲティング基は、場合によって、当分野で公知の方法により、ビオチン、蛍光化合物、放射性標識化合物で標識することができる。
【0126】
F. ポリマー性送達システムの合成
一般に、本明細書に記載する化合物を調製する方法は、ポリマーを芳香族の酸エステルと反応させてポリマー-芳香族酸を形成することを含む。本発明の一態様において、本明細書に記載する化合物の調製方法は以下を含む:
下記式(II)の化合物:
1−R1−X1−M1 (II)
を、下記式(III)の化合物:
【化27】

【0127】
と、下記式(IV)の化合物を形成させるために十分な条件下で反応させる。
【化28】

【0128】
式中、
A1はキャッピング基またはM1-X'1-であり;
Aはキャッピング基であるか、または以下のものであり;
【化29】

【0129】
R1は実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
M1は脱離基であり;
M2は-OH、-SHまたは-NHR41であり;
D4およびD'4は独立して水素、OH、OR42、官能基および脱離基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択され;
ArおよびAr'は独立してアリールまたはヘテロアリール部分であり;
X1およびX'1は独立してO、S、SO、SO2、NR6または結合であり;
Y1およびY'1は独立してO、S、またはNR6であり;
L1およびL'1は独立して選択された二官能性リンカーであり;
R2、R'2、R3、R'3、R6およびR41は独立して水素、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、シリルエーテル、スルホニル、メルカプト、C1-6アルキルメルカプト、アリールメルカプト、置換アリールメルカプト、置換C1-6アルキルチオ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換およびアリールカルボニルオキシから選択され;
R42はC1-6アルキルであり;
(p)および(p')は独立して0または正の整数、好ましくは約0〜約10、より好ましくは約0〜約4、最も好ましくは0または1であり;
(q1)、(q'1)、(q2)、(q'2)、(q3)、(q'3)、(q4)、(q'4)、(s)および(s')は独立して0または1であり;
R4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4は独立して、R2について使用できるものと同じ部分から選択されるか、またはそれぞれ以下のものであって良く;
【化30】

【0130】
[式中、
R7およびR8は独立して、R2について使用できるものと同じ部分から選択され;
Y2はO、S、NR6であり;
L3は二官能性リンカーであり;
(r)および(u)は0または1であり;そして
(u)は0または正の整数であり;そして
D5は水素、OH、OR42、官能基および脱離基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択される。]
ただし、(u)が0の場合に(r)が0でないことを条件とする。
【0131】
好ましい一態様において、(p)が0の場合にX1およびX'1は独立してO、S、SOまたはSO2である。
【0132】
別の態様において、本明細書に記載する化合物は、(q1)+ (q2)+(q3)+(q4)の合計は0ではなく(例えば好ましくは1)、そしてR4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4のうち少なくとも1個(例えば1、2または3個)は以下のものであるように選択される。
【化31】

【0133】
[式中、D5は脱離基、官能基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択される。]ここで、脱離基は、好ましくはN-ヒドロキシスクシンイミジル、パラ-ニトロフェノキシ、オルト-ニトロフェノキシおよびC1-C6アルキルオキシから選択され、官能基は、好ましくはマレイミジル、ビニル、およびスルホン残基から選択される。
【0134】
本発明の特定の態様において、(p)が0の場合、好ましくは十分な数の原子、例えば5個または6個を超える数の原子がX1/X'1およびC(=Y1)/C(=Y'1)の間に存在し、放出可能な環状部分が形成されない。例えば、(p)が0の場合、フェニル環に結合したポリマー部分はD4、D'4またはD5に対してオルト位ではないであろう。
【0135】
脱離基M1としては、ハロゲン(Br、Cl)、活性化カーボネート、カルボニルイミダゾール、環状イミドチオン、イソシアネート、N-ヒドロキシスクシンイミジル、パラ-ニトロフェノキシ、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、イミダゾール、トシレート、メシレート、トレシレート、ノシレート、C1-C6アルキルオキシ、C1-C6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、オルト-ニトロフェノキシ、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、イミダゾール、ペンタフルオロフェノキシ、1,3,5-トリクロロフェノキシ、および 1,3,5-トリフルオロフェノキシ、または当業者には明白な他の好適な脱離基が挙げられる。
【0136】
得られた式(IV)の化合物を脱保護してポリマー-芳香族酸を形成することができる。ポリマー-芳香族酸は更にアミンまたはヒドロキシル含有化合物で活性化させる。あるいは/更に、二官能性の基を芳香族部分に結合して官能基を提供することができる。官能基は更に生物学的活性部分、または標的部分とコンジュゲートさせることができる。
【0137】
あるいはまた、方法が、ポリマーを脱離基を有する芳香族部分と反応させてポリマー-芳香族酸を形成することを含み得ることも考えられる。
【0138】
二官能性の基のポリマー部分への結合は、好ましくはカップリング剤の存在下で実施する。好適なカップリング剤の非制限的な例としては、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、任意の好適なジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハライド、(Mukaiyama 試薬)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスフィン酸環状無水物(PPACA)およびフェニルジクロロホスフェート等が挙げられ、これらは例えばSigma-Aldrich社等の業者から入手できるか、また公知の技術を使用して合成される。
【0139】
好ましくは、反応は、塩化メチレン、クロロホルム、DMFまたはこれらの混合物等の不活性溶媒中で実施する。反応は、好ましくはジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン等の塩基の存在下で実施して、生成した酸を中和することができる。反応は、約0℃〜約22℃(室温)の温度で実施することができる。
【0140】
本明細書に記載する方法によって調製されるいくつかの特定の実施形態は以下のものを含む。
【化32】







【0141】
式中、
(n)は約10〜約2300の整数であり;
D2はアミン含有部分であり;そして
Abは抗体である。
【0142】
本発明の目的において、「S-Ab」は抗体、例えばモノクローナル抗体、単鎖抗体、およびその活性断片を示すことが理解されるであろう。
【0143】
G. 治療方法
本発明のもう一つの態様は、哺乳動物における種々の医学的状態のための治療方法を提供する。該方法は、こうした治療を必要とする哺乳動物に、有効量の本明細書に記載する化合物を投与することを含む。ポリマー性コンジュゲート化合物は、特に、親化合物で治療されるものと同様の疾患、例えば酵素置換療法、新生物疾患の治療、腫瘍による負担の軽減、新生物の転移の抑制、および哺乳動物における腫瘍/新生物増殖の再発の予防のために有用である。
【0144】
投与されるポリマー性コンジュゲートの量は、それに含まれる親分子の量に依存するであろう。一般的に、治療方法において使用されるポリマー性コンジュゲートの量は、哺乳動物において所望の治療結果を有効に達成する量である。必然的に、種々のポリマー性コンジュゲート化合物の投与量は、親化合物、ポリマーの分子量、in vivoにおける加水分解速度等にある程度依存して変動するであろう。当業者は、選択されたポリマー性輸送コンジュゲートの最適投与量を、臨床経験および治療指示に基づいて決定するであろう。実際の投与量は、技術者には過度の実験をすることなしに明白なものであろう。
【0145】
本発明の化合物は、哺乳動物に投与するための1種以上の好適な医薬組成物に含めることができる。医薬組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル等の形態で、当分野において周知の方法に従って調製することができる。こうした組成物の投与が技術者の必要に応じて経口および/または非経口経路であって良いことも考慮される。例えば、組成物の溶液および/または懸濁液を、当分野で公知の任意の方法、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下注射等によって組成物を注射または浸潤させるための担体ベヒクルとして利用することもできる。こうした投与は、体内(body space)または体腔への注入、並びに吸入および/または鼻内経路によるものであっても良い。しかしながら、本発明の好ましい態様において、ポリマー性コンジュゲートは、それを必要とする哺乳動物に非経口的に投与される。
【0146】
実施例
以下の実施例は本発明の更なる評価を提供するために役立つものであるが、いかなる意味においても本発明の範囲を制限することを意味するものではない。実施例で挙げる太字の数は図1および2に示すものと対応する。実施例を通じて以下のような略号を使用する:DCM(ジクロロメタン)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)、DMF(N,N'-ジメチルホルムアミド)、DSC(ジスクシンイミジルカーボネート)、EDC(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド)、IPA(イソプロパノール)、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)、PEG(ポリエチレングリコール)、SCA-SH(単鎖抗体)、およびTEA(トリエチルアミン)。
【0147】
一般
反応は全て、乾燥窒素雰囲気下で実施した。市販の試薬および無水溶媒は更に精製することなく使用した。NMRスペクトルは指示された重水素を含む溶媒を用いてVarian Mercury 300MHz NMR分光計で記録した。化学シフト(δ)はテトラメチルシラン(TMS)から低磁場側への百万分率(ppm)で報告され、カップリング定数(J値)はヘルツ(Hz)で示す。
【0148】
実施例1. 4-ヒドロキシケイ皮酸メチルエステル(化合物 2a)
4-ヒドロキシケイ皮酸(化合物1a、20.0 g、0.12 mol)および5滴の濃硫酸を500 mLの試薬等級のメタノールに溶解した溶液を4日間55℃で攪拌し、その間TLCによってモニタリングした。次いでロータリーエバポレーター(rotovap)で反応混合液から溶媒を除去し、固形物の残渣を200 mLのエタノールおよび200 mLの水の混合液から再結晶させて、61%の収率で13.3 gの生成物を得た:13C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ 168.18, 157.88, 144.85, 129.95, 126.91, 115.86, 114.87, 51.81。
【0149】
実施例2. mPEG5K トシレート(化合物4)
塩化トルエンスルホニル(21.5 g、113 mmol)を50 mLのDCMに溶解した溶液を、mPEG5K-OH(化合物3、113.0 g、22.6 mmol)およびDMAP(14.1 g、116 mmol)を700mLのDCMに溶解した溶液に室温で5時間かけて添加した。次いでこの反応混合液を500 mLのDCMで希釈し、0.1N HClで2回洗浄した。DCM相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。ロータリーエバポレーターで溶媒を部分的に除去し、粗生成物をエーテルを添加して沈殿させ、真空濾過によって回収し、エーテルで洗浄した。この粗生成物を12% DMF/IPA (v/v)から再結晶させて、90%の収率で105.0 gの生成物を得た:13C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ 144.18, 132.50, 129.31, 127.42, 71.49-68.22 (PEG), 58.36, 21.32。
【0150】
実施例3. mPEG5K ケイ皮酸メチルエステル (化合物5)
mPEG5K トシレート(化合物4、40.0g、7.76 mmol)、4-ヒドロキシケイ皮酸メチルエステル(化合物3、13.0 g、73.0 mol)、および無水炭酸カリウム(10.1 g、73.4 mmol)を400mLの試薬等級のアセトンに入れた混合液を一晩灌流し、続いてロータリーエバポレーターで反応混合液から溶媒を除去した。固形物残渣をDCMに溶解し、0.2N HClで2回洗浄した。DCM相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。ロータリーエバポレーターで溶媒を部分的に除去し、粗生成物をエーテルを添加して沈殿させ、真空濾過によって回収し、エーテルで洗浄した。この粗生成物を12% DMF/IPA (v/v)から再結晶させ、95%の収率で38.2 gの生成物を得た:13C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ 167.18, 160.16, 144.04, 129.28, 126.79, 114.92, 114.58, 71.63-67.25 (PEG), 58.74, 51.30。
【0151】
実施例4. mPEG5K ケイ皮酸(化合物6a)
mPEG5K ケイ皮酸メチルエステル(化合物5a、37.6 g、7.26 mmol)を300mLの水に溶解した水溶液に、水酸化ナトリウム(0.58g、14.5 mmol)を80 mLの水に溶解した水溶液を添加した。この混合液を室温で一晩攪拌し、続いて反応混合液をHClで酸性化し、DCMで抽出した。DCM相を合わせて無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。次いでロータリーエバポレーターで溶媒を部分的に除去し、生成物をエーテルで沈殿させ、回収し、エーテルで洗浄して、97%の収率で36.4 gの生成物を得た:13C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ 168.22, 160.08, 144.42, 129.25, 126.75, 115.11, 114.50, 71.54-67.16 (PEG), 58.65.
実施例5. mPEG5K ケイ皮酸NHS エステル(化合物7a)
mPEG5K ケイ皮酸(化合物6、8.9 g、1.72 mmol)、NHS(0.80 g、6.9 mmol)、DIEA(1.3 g、10.3 mmol)、およびDMAP(50 mg、0.4 mmol)を75 mLの無水DCMに溶解した溶液を氷浴中で0℃に冷却し、続いてEDC HCl(1.66g、8.6 mmol)を添加した。この混合液を一晩で室温まで加温させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を部分的に除去し、生成物をエーテルを添加して沈殿させ、真空濾過によって回収し、エーテルで洗浄した。この粗生成物を12% DMF/IPA (v/v)から再結晶させて、96%の収率で8.6 gの生成物を得た。25℃におけるベンジルアミンとのコンジュゲーション(%):T = 0、93%;T = 4 週間、94%:13C NMR (75.4 MHz, CDCl3) δ 169.06, 161.90, 161.27, 149.31, 130.20, 126.01, 114.84, 108.38, 71.67-67.38 (PEG), 58.81, 25.47。
【0152】
実施例6. 化合物7b
化合物7bは、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシケイ皮酸(化合物1b)から出発して、実施例1および3に記載した反応と同様の手順に従って調製する。
【0153】
実施例7. (L)-アスパラギナーゼとのコンジュゲーション(化合物8a)
PEGリンカー(化合物7a、0.0
84 mmol)を、天然の(L)-アスパラギナーゼ(0.00027 mmol)を3 mLのリン酸ナトリウム緩衝液(0.1 M、pH 7.8)に溶解した溶液に、穏やかに攪拌しながら添加する。溶液を30℃で30分間攪拌する。PEGコンジュゲーションをモニタリングするためにGPCカラム(Zorbax GF-450)を使用する。反応終了時点で(天然の酵素がないことで証明される)、混合液を12 mLの調製用(formulation)緩衝液(0.05 M リン酸ナトリウム、0.85% 塩化ナトリウム、pH 7.3)で希釈し、Centriprep濃縮器 (Amicon)を用いてダイアフィルターにかけて(diafiltered)未反応のPEGを除去する。ダイアフィルターは、等量の濾液および0.1% PMA(0.1M HCl中のポリメタクリル酸)を混合することによって遊離のPEGが検出されなくなるまで必要に応じて4℃で継続する。
【0154】
実施例8. 化合物13
化合物5cを、実施例1および3に記載したものと類似の反応手順を用い、4-ヒドロキシ-3-ニトロケイ皮酸(Synth. Comm. (2004) 34 (18) 3317-3324(その内容を参照により本明細書に組み入れる)に記載された手順を用いて調製する)から調製し、チオ亜硫酸ナトリウムを用いて還元して化合物9を得る。アミンをDCM中のEDCおよびDMAPの存在下で5-マレイミジルペンタン酸(化合物10)とコンジュゲートさせて化合物11を得る。化合物11のメチルエステルをNaOH水溶液を用いて加水分解し、得られたカルボン酸をEDCおよびDMAPの存在下でNHSとカップリングして化合物12を得る。化合物12のアスパラギナーゼとのコンジュゲーション、続いて緩衝水溶液中での抗体(SCA-SH)とのコンジュゲーションによって化合物13を得る。
【0155】
実施例9. ポリマー性送達システムの安定性
本明細書に記載するポリマー性送達システムは、タンパク質等の目的の化合物を含む。従って、目的の化合物にコンジュゲートさせる前のポリマーシステムの安定性が重要である。ポリマーシステムの安定性は、化合物へのコンジュゲーションの割合(%)で示すことができる。
【0156】
ポリマーシステムの活性化形態、すなわちNHSを含む化合物7aを4℃または25℃で保存した。0、1、2、3および4週間保存した後、化合物7aと、反応性アミン基を含有する化合物、すなわちベンジルアミンとの反応性を測定した。化合物7aをDCMまたはクロロホルムに溶解し、続いてベンジルアミンと30分間室温で反応させた。反応溶液を酸で滴定して残存するベンジルアミンの量を決定し、それによってコンジュゲートした化合物7aの量を算出した。コンジュゲーションの割合(%)を表1に示す。
【表1】

【0157】
この結果から、4℃または25℃で4週間保存した後、ほとんど同量の化合物7aがアミン含有化合物にコンジュゲートすることが示された。このデータから、本明細書に記載する活性化形態のポリマーシステムが双方の温度で安定であることが示される。ポリマーシステムのこの特性によって、大量生産および長期保存が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物。
【化1】

[式中、
Aはキャッピング基または以下のものであり;
【化2】

R1は実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
X1およびX'1は独立してO、S、SO、SO2、NR6または結合であり;
ArおよびAr'は独立してアリールまたはヘテロアリール部分であり;
Y1およびY'1は独立してO、S、またはNR6であり;
L1およびL'1は独立して選択された二官能性リンカーであり;
D1およびD'1は独立して水素、OH、脱離基、官能基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択され;
(p)および(p')は独立して0または正の整数であり;
(q1)、(q'1)、(q2)、(q'2)、(q3)、(q'3)、(q4)および(q'4)は独立して0または1であり;
(s)および(s')は独立して0または正の整数であり;
R2、R'2、R3、R'3およびR6は独立して水素、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、シリルエーテル、スルホニル、メルカプト、C1-6アルキルメルカプト、アリールメルカプト、置換アリールメルカプト、置換C1-6アルキルチオ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6 アルキニル、C3-19分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換およびアリールカルボニルオキシよりなる群から選択され、そして
R4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4は独立して、R2を規定するものと同じ群から選択されるか、または以下のものであり;
【化3】

[式中、
R7およびR8は独立してR2を規定するものと同じ群から選択され;
Y2はO、SまたはNR6であり;
L3は二官能性リンカーであり;
(r)は0または1であり;
(u)は0または正の整数であり;そして
D3は水素、OH、脱離基、官能基、ターゲティング基および生物学的活性部分よりなる群から選択される。]
ただし、(u)が0の場合に(r)が0でないことを条件とする。]
【請求項2】
(p)が0の場合にX1およびX'1が独立してO、S、SOまたはSO2である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
(q1)+(q2)+(q3)+(q4)の合計が0でなく、そしてR4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4のうち少なくとも1個が以下のものである、請求項1記載の化合物。
【化4】

[式中、D3は脱離基、官能基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択される。]
【請求項4】
脱離基が、ハロゲン、活性化カーボネート、カルボニルイミダゾール、環状イミドチオン、イソシアネート、N-ヒドロキシスクシンイミジル、パラ-ニトロフェノキシ、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、イミダゾール、トシレート、メシレート、トレシレート(tresylate)、ノシレート(nosylate)、C1-C6アルキルオキシ、C1-C6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、オルト-ニトロフェノキシ、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、イミダゾール、ペンタフルオロフェノキシ、1,3,5-トリクロロフェノキシ、および1,3,5-トリフルオロフェノキシよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
官能基が、マレイミジル、ビニル、スルホン残基、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、およびカルバゼートよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
D1、D'1およびD3 が独立してOH、メトキシ、tert-ブトキシ、N-ヒドロキシスクシンイミジルおよびマレイミジルよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
生物学的活性部分が、アミン含有部分、ヒドロキシル含有部分およびチオール含有部分よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
生物学的活性部分が、薬学的活性化合物、酵素、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体およびペプチドよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
L1、L'1およびL3が独立して以下よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
-[C(=O)]v(CR22R23)t[C(=O)]v'-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t-O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t-NR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tO[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tO[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tO-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tS-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tO-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tS-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tO-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tS-(CR28R29)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)tNR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’NR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t(CR24CR25CR28R29O)t’NR26[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)t’O[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’[C(=O)]v’-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)t’NR26[C(=O)]v’-、
【化5】

[式中、
R21-29は独立して水素、C1-6アルキル、C3-12分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル(aralkyls)、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシよりなる群から選択され;
(t)および(t')は独立して0または正の整数であり;そして
(v)および(v')は独立して0または1である。]
【請求項10】
L1、L'1およびL3が独立して以下よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
-[C(=O)]r1NH(CH2)2CH=N-NHC(=O)-(CH2)2-、
-[C(=O)]r1NH(CH2)2(CH2CH2O)2(CH2)2NH[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)(CH2CH2O)2NH[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)s1NH(CH2CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)s1S(CH2CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)(CH2CH2O)[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)s1O(CH2CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)(CH2)NH[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)2(CH2)[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)s1(CH2)s1’[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1NHCH2CH2NH[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2)2O[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2CH2O)2[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1NH(CH2)3[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2O)2(CH2)[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)2NH(CH2)2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2O)2NH[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1O(CH2)2O(CH2)2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2)2S(CH2)2[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2)NH[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1O(CH2CH2)O[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1O(CH2)3NH[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1O(CH2)3O[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1O(CH2)3[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1CH2NHCH2[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]rCH2OCH2[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1CH2SCH2[C(=O)]r1'-、
-[C(=O)]r1S(CH2)3[C(=O)]r1’-、
-[C(=O)]r1(CH2)3[C(=O)]r1’-、
【化6】

[式中、
(r1)および(r1')は独立して0または1であり;そして
(s1)および(s1')は独立して0または正の整数であり、
ただし、(r1)および(r1')は同時に0ではないことを条件とする。]
【請求項11】
L1、L'1およびL3が独立してアミノ酸、アミノ酸誘導体、およびペプチドよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
L3が以下よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【化7】

【請求項13】
AがH、NH2、OH、CO2H、C1-6アルコキシおよびC1-6アルキルよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
Aがメチルまたはメトキシである、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
ArおよびAr'が独立して以下よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【化8】

[式中、
JはO、S、またはNR11であり;
EおよびZは独立してCR12またはNR13であり;そして
R11、R12およびR13は独立して、R2を規定するものと同じ群から選択される。]
【請求項16】
下記式を有する、請求項1記載の化合物。
【化9】

[式中、Aはキャッピング基または以下のものである。]
【化10】

【請求項17】
下記式を有する、請求項1記載の化合物。
【化11】

【請求項18】
R4、R'4、R5およびR'5が独立して水素またはCH3である、請求項1記載の化合物。
【請求項19】
R1が直鎖型、末端分岐型またはマルチアーム型のポリアルキレンオキシドを含む、請求項1記載の化合物。
【請求項20】
ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールよりなる群から選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
ポリアルキレンオキシドが式-O-(CH2CH2O)n-[式中(n)は約10〜約2,300の整数である。]のポリエチレングリコールである、請求項19記載の化合物
【請求項22】
ポリアルキレンオキシドが約2,000〜約100,000ダルトンの平均分子量を有する、請求項19記載の化合物。
【請求項23】
ポリアルキレンオキシド残基が約5,000〜約60,000ダルトンの平均分子量を有する、請求項19記載の化合物。
【請求項24】
ポリアルキレンオキシドが約5,000〜約25,000ダルトン、または約20,000〜約45,000ダルトンの平均分子量を有する、請求項19記載の化合物。
【請求項25】
以下よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【化12】







[式中、
(n)は約10〜約2300の整数であり;
D2はアミン含有部分であり;そして
Abは抗体である。]
【請求項26】
以下よりなる群から選択される、請求項25記載の化合物。
【化13】

【請求項27】
芳香族アリル酸を有する実質的に非抗原性のポリマーの調製方法であって、
下記式(II)の化合物:
A1−R1−X1−M1 (II)
を、下記式(III)の化合物:
【化14】

と、下記式(IV)の化合物を形成するのに十分な条件下で反応させることを含む、該方法。
【化15】

[式中、
A1はキャッピング基またはM1-X'1-であり;
Aはキャッピング基または以下のものであり;
【化16】

R1は実質的に非抗原性の水溶性ポリマーであり;
M1は脱離基であり;
M2は-OH、-SHまたは-NHR41であり;
D4およびD'4は独立して水素、OH、OR42、官能基および脱離基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択され;
ArおよびAr'は独立してアリールまたはヘテロアリール部分であり;
X1およびX'1は独立してO、S、SO、SO2、NR6または結合であり;
Y1およびY'1は独立してO、S、またはNR6であり;
L1およびL'1は独立して選択された二官能性リンカーであり;
R2、R'2、R3、R'3、R6およびR41は独立して水素、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、シリルエーテル、スルホニル、メルカプト、C1-6アルキルメルカプト、アリールメルカプト、置換アリールメルカプト、置換C1-6アルキルチオ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換およびアリールカルボニルオキシよりなる群から選択され;
R42はC1-6アルキルであり;
(p)および(p')は独立して0または正の整数であり;
(q1)、(q'1)、(q2)、(q'2)、(q3)、(q'3)、(q4)および(q'4)は独立して0または1であり;
(s)および(s')は独立して0または正の整数であり;
R4、R'4、R5、R'5、Q1-4およびQ'1-4は独立して、R2を規定するものと同じ群から選択されるか、または以下のものであり;
【化17】

[式中、
R7およびR8は独立して、R2を規定するものと同じ群から選択され;
Y2はO、S、NR6であり;
L3は二官能性リンカーであり;
(r)は0または1であり;
(u)は0または正の整数であり;そして
D5は水素、OH、OR42、官能基および脱離基、ターゲティング基、診断剤および生物学的活性部分よりなる群から選択される。]
ただし、(u)が0の場合に(r)が0でないことを条件とする。]
【請求項28】
有効量の式(I)の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む、哺乳動物の治療方法であって、D1、D'1、およびD3のうち少なくとも1個が生物学的活性部分である、該方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−533233(P2010−533233A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516260(P2010−516260)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/069743
【国際公開番号】WO2009/009716
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】