説明

芳香族アルキル化プロセス

芳香族化合物のアルキル化のプロセスにおいて、芳香族化合物と、アルキル化剤と、水素、不活性ガスまたはその混合物と、蒸気とは、形状選択性ゼオライト触媒と、反応器内で接触させられる。水素、不活性ガスまたはその混合物は約200℃の温度の反応器に導入され、アルキル化剤は約480℃の温度の反応器に導入され、芳香族化合物は約200℃から約480℃の温度の反応器に導入してもよく、蒸気は約200℃から約480℃の温度の反応器に導入してもよい。このプロセスは、アルミノケイ酸塩ゼオライト、例えばリンで修飾されたZSM−5の形状選択性触媒を用いたトルエンラエチル化に適用可能であり、パラ−キシレン(p−キシレン)が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、ゼオライト触媒、例えば、形状選択性触媒となるように修飾されたアルミノケイ酸塩ゼオライトを用いた、水素および蒸気の存在下での、芳香族化合物のアルキル化、例えば、トルエンメチル化のためのプロセスに関し、前記プロセスはアルキル化剤および水素のある導入順序での、ある温度範囲での導入に関する。
【背景技術】
【0002】
トルエンメチル化(TM)は、下記に示されるように、トルエンのメタノールとの触媒反応であり、キシレン類が生成される。
【化1】


トルエン O−キシレン M−キシレン P−キシレン
【0003】
トルエンメチル化は、等モル反応であり、すなわち、1モルのトルエンが1モルのメタノールと反応する。トルエンのメチル化に加えて、多くの競合する副反応が起こり得る。メタノールはそれ自体と反応してオレフィン類を形成する可能性がある。トルエンは、過アルキル化され、C9+芳香族類を形成し得る。これらの副反応を減少させるために、トルエン:メタノールのモル比は1超:1、または2:1から20:1の範囲とすることができる。
【0004】
結合されて異なる環およびかご構造を形成し、結晶フレームワークとなるアルミニウム置換SiO四面体ユニットから構成された結晶固体であるゼオライト類は、トルエンメチル化のための触媒として使用することができる。ゼオライトの物理的構造は非常に多孔性であり、大きな内および外表面積を有する。ゼオライト類は立体および電子効果のために形状選択性触媒(shape−selective catalysis)となり得る。形状選択性はゼオライトを修飾する、例えば、ゼオライト細孔開口径を狭くする、ゼオライトの外面を不活性化する、またはゼオライト酸性度を変化させることにより得ることができる。ゼオライト上へのある化合物または元素、例えば、鉄、亜鉛、リン、希土類金属酸化物類などを含む化合物の堆積により、より形状選択性とすることができる。
【化2】

【0005】
トルエンのメチル化によるp−キシレンの合成では、トルエンの変換およびp−キシレンの選択性、すなわち、キシレン異性体中のp−キシレンの濃度は、商業的に重要である。パラキシレン(PX)は、PETの製造のための中間体であるテレフタレート類の製造において有用である多くの適用において大量化学中間体として特に重要である。あるプロセスで少なくとも85%または少なくとも90%の濃度でp−キシレンを生成することは好都合であろう。
【0006】
米国特許第4,152,364号は、リン化合物で修飾または処理されたゼオライトの触媒の存在下でのトルエンのメチル化によるパラキシレンの選択的生成のためのプロセスを開示する。トルエンのメチル化は、トルエンをメタノールと、約250℃と約750℃の間、好ましくは約400℃と約700℃の間の温度で接触させることによる。トルエンおよびメタノールを別々に、または異なる温度で反応器に導入する開示はない。
【0007】
米国特許第4,250,345号は、リン化合物で修飾または処理されたゼオライトの触媒の存在下でのトルエンのメチル化によるパラキシレンの選択的生成のためのプロセスを開示する。トルエンのメチル化は、トルエンをメタノールと、約250℃と約750℃の間、好ましくは約500℃と約700℃の間の温度で接触させることによる。トルエンおよびメタノールを別々に、または異なる温度で反応器に導入する開示はない。
【0008】
米国特許第7,084,318号は、リン処理ZSM−5触媒を用いた、200℃以上の温度で5hr−1超の液空間速度(LHSV)でトルエン、メタノールおよび水素を導入し、これらの条件で30分から20時間動作させ、その後、LHSVを減少させ、温度を500℃−700℃まで増加させる開始手順を有する、キシレン生成物を調製する方法を開示する。トルエンおよびメタノールを別々に、または異なる温度で反応器に導入する開示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,152,364号明細書
【特許文献2】米国特許第4,250,345号明細書
【特許文献3】米国特許第7,084,318号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
混合キシレン生成物ストリーム中のp−キシレン濃度を増加させ、触媒非活性化を減少させ、トルエン変換を維持してストリーム上での時間を増加させるプロセスは好都合であろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
a)下記ステップ:
1)水素、不活性ガスまたはその混合物を約200℃から約400℃未満の反応器温度の反応器に導入するステップ、および
2)アルキル化剤を約400℃超から約700℃の反応器温度の反応器に導入するステップ
において、芳香族化合物と、アルキル化剤と、水素、不活性ガスまたはその混合物と、水とを形状選択性ゼオライト触媒と、反応器内で接触させる工程と、
b)アルキル化された芳香族を反応器から引き出す工程と、
を含む、芳香族のアルキル化の方法である。
【0012】
芳香族化合物と、アルキル化剤と、水素、不活性ガスまたはその混合物と、水とを形状選択性ゼオライト触媒と、反応器内で接触させる工程は、
1)反応器を約200℃から約400℃未満の温度まで加熱するステップ、
2)水素、不活性ガスまたはその混合物を約200℃から約400℃未満の反応器温度の反応器に導入するステップ、
3)反応器を約400℃超から約700℃の温度まで加熱するステップ、および
4)アルキル化剤を約400℃超から約700℃の反応器温度の反応器に導入するステップ、
を含んでもよく、
ここで、芳香族化合物は、反応器にステップ2)、ステップ3)またはステップ4)で導入され、水は反応器にステップ2)、ステップ3)またはステップ4)で導入される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1−7に対するストリーム上での時間対%トルエン変換のグラフを示し、水素、蒸気、トルエンおよびメタノールはそれぞれ、200℃または480℃の反応器温度の反応器に導入される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
トルエンメチル化はゼオライトまたはゼオライト型触媒、特に、ZSM−5型ゼオライト触媒上で起こることが知られている。一般に、オルト(o)−、メタ(m)−およびパラ(p)−キシレン類の熱力学的平衡混合物は、トルエンのメチル化から形成される。o−、m−、およびp−キシレン類の熱力学的平衡組成は、約500℃の反応温度で、それぞれ約25、50および25モル%となる可能性がある。しかしながら、そのようなトルエンメチル化は、広範囲の温度にわたって起こり得る。
【0015】
高純度グレード(99+%)p−キシレンが、そのテレフタル酸への酸化プロセスにとって望ましい。よって、平衡を超えてp−キシレンの濃度が増加することが望ましい。
【0016】
ゼオライトは結晶水和アルミノケイ酸塩であり、これは他の金属類、例えば、ナトリウム、カルシウム、バリウム、およびカリウムを含んでもよく、イオン交換特性を有する(エンカルタ(Encarta、登録商標)ワールドイングリッシュ辞典(World English Dictionary)[北米編](商標)&(P)2001マイクロソフト社(Microsoft Corporation))。ゼオライト類の例はZSM−5、ZSM−11、ZSM−5/ZSM−11中間体、ZSM−12、ZSM−21、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−38、ZSM−48、ZSM−50、MCM−22、ゼオライトL、ゼオライトβおよびモルデナイトであり、これらは当技術分野において知られている。本発明は、形状選択性触媒とするゼオライトの修飾を組み込む。
【0017】
ZSM−5ゼオライトは10員酸素環を有する交差二次元細孔構造(intersecting two−dimensional pore structure)を含む多孔性材料である。そのような10員酸素環細孔構造を有するゼオライト類はしばしば、中細孔ゼオライト類として分類される。本明細書では、「ZSM−5型」という表現は、ZSM−5ゼオライト類と等構造的(isostructurally)に同じであるそれらのゼオライト類を意味する。さらに、「ZSM−5」および「ZSM−5型」という表現はまた、本明細書では、互いに包含するように同じ意味で使用してもよいが、限られた意味で解釈されるべきではない。
【0018】
ZSM−5ゼオライト触媒およびそれらの調製は、米国特許第3,702,886(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。本発明では、ZSM−5ゼオライト触媒は、修飾前に200以上の、より特定的には約250から約500のシリカ/アルミナモル比を有するものを含み得る。開始ZSM−5は、NHまたはH形態であってもよく、微量の他のカチオンを含んでもよい。ZSM−5型ゼオライトのリン含有化合物による修飾は、触媒に形状選択性を与えることが示されており、トルエンメチル化において使用した場合、未修飾触媒に比べ、熱力学的平衡値よりも著しく多い量のp−キシレンが得られる。そのような修飾は、p−キシレンに対し、80%を超える選択性を提供することが示されている。
【0019】
本発明の触媒は形状選択性ゼオライト触媒(shape−selective zeolite catalysis)である。形状選択性ゼオライト触媒の1つの例は、リン含有化合物、例えば限定はされないが、ホスホン、ホスフィン、リンおよびリン酸、そのような酸の塩およびエステルならびにハロゲン化リンを用いた処理により修飾されたゼオライトである。特に、リン酸(HPO)およびリン酸水素アンモニウム((NHHPO)を、リン含有化合物として使用してもよく、形状選択性を有するトルエンメチル化のための触媒が提供されp−キシレン選択性の増加が提供される。そのような修飾触媒はリン(P)を、約0.01から約0.15gP/gゼオライト、より特定的には約0.02から約0.13gP/gゼオライト、より特定的には約0.07gP/gゼオライトから約0.12gP/gゼオライト、さらにより特定的には約0.09gP/gゼオライトから約0.11gP/gゼオライトの量で含んでもよい。リン処理後、リン処理ゼオライトは、乾燥させてもよい。ゼオライトの1つの例はZSM−5型である。
【0020】
P修飾ZSM−5触媒を、芳香族炭化水素とアルキル化剤の適当な供給物と、アルキル化反応条件下で接触させ、芳香族アルキル化を実施してもよい。触媒の1つの特定の適用は、トルエン/メタノール供給物を用いるトルエンメチル化における使用である。
【0021】
本発明のプロセスはまた、ガス供給物を有してもよい。供給ガスは水素または不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスの例は、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素および希ガス類(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドン)である。供給ガスは、水素、不活性ガスまたはそれらの混合物であってもよい。
【0022】
本明細書では、「アルキル化供給物」いう表現は、芳香族化合物およびアルキル化剤を含むことを意味する。本明細書では、「メチル化供給物」という表現は、トルエンおよびメタノールの供給物を含むことを意味する。
【0023】
いずれの供給ガスにも加えて、蒸気の形態とすることができる水もまた、反応器に導入してもよい。アルキル化反応のために使用される水または蒸気は、アルキル化反応の開始中の反応器へのアルキル化供給物との共供給物として、水素または不活性ガスと共に、またはなしで導入してもよく、あるいは、最初の開始後に導入してもよい。いずれにせよ、液体の水を添加してもよく、共供給ガス(もしあれば)およびアルキル化供給物と混合する前に蒸発させてもよい。水共供給の使用は、2006年6月13日に発行され、「トルエンメチル化プロセス」と題する米国特許第7,060,864号、および2007年3月6日に、一部継続出願として、「メタノール選択性の増加したトルエンメチル化プロセス」と題して発行された米国特許第7,186,872号に記載されており、これらはどちらも参照により本明細書に組み込まれる。蒸気は、反応器を加熱するために使用されてもよく、その間、約1から約16時間の間、触媒は蒸気加熱される。
【0024】
トルエンメチル化または他の芳香族アルキル化のための反応器圧は変動し得るが、典型的には、約10から約1000psigの範囲である。反応器温度は変動し得るが、典型的には、約400から約700℃の範囲である。供給物を反応器に導入した時点で、触媒床温度を、選択された反応温度に調節してもよく、所望の変換が実施される。温度は、徐々に、約1℃/分から約10℃/分の速度で増加させ、所望の最終反応器温度を提供してもよい。実施例で使用されるように、反応器温度は反応器の触媒床の入口で測定される温度を示す。
【0025】
反応は、一般に芳香族アルキル化反応を実施するために使用される様々な異なる反応器内で実施してもよい。単一または複数の、連続または並列の反応器が芳香族アルキル化を実施するのに好適である。アルキル化剤、水素、水および/または芳香族は、複数の反応器を連続して使用する場合、第2のおよびその後の反応器に入る生成物ストリームに添加してもよい。
【0026】
本発明の芳香族アルキル化プロセスは、水素、不活性ガスまたはその混合物を反応温度よりも低い温度の反応器または反応ゾーンに導入する工程を含む。1つの実施形態では、水素は、反応温度よりも低い温度まで加熱された反応器または反応ゾーンに導入される。別の実施形態では、水素は、反応温度よりも低い温度まで加熱されながら、反応器または反応ゾーンに導入される。反応温度よりも低い温度は、約200℃から約400℃未満の温度としてもよい。温度は、約200℃から約250℃の範囲としてもよい。温度の1つの具体例は約200℃である。任意で必要に応じて、液体の水または蒸気のいずれかとしての水および/または芳香族、例えばトルエンはまた、反応温度よりも低い温度の反応器または反応ゾーンに導入してもよい。水素および水を互いに混合し、または、どちらかもしくは両方を芳香族と混合し、その後、反応器または反応ゾーンに導入してもよく、あるいは水素、水および芳香族を別々に、反応器または反応ゾーンに導入してもよい。温度が反応温度より低い場合、有意の量のアルキル化剤は反応器または反応ゾーンに導入されない。本発明との関連では、「有意の量のアルキル化剤がない」とは、1重量%超を意味する。
【0027】
本発明の芳香族アルキル化プロセスはまた、アルキル化剤を、反応温度の範囲内の温度の反応器または反応ゾーンに導入する工程を含む。1つの実施形態では、アルキル化剤は、約400℃超から約700℃の温度まで加熱された反応器または反応ゾーンに導入される。温度は約400℃から約500℃の範囲としてもよい。温度の1つの具体例は約480℃である。任意で必要に応じて、液体の水または蒸気のいずれかとしての水、および/または芳香族、例えばトルエンはまた、反応温度の範囲内の温度の反応器または反応ゾーンに導入してもよい。芳香族およびアルキル化剤を、互いに混合し、または、どちらかもしくは両方を水と混合し、その後、反応器または反応ゾーンに導入してもよく、あるいはアルキル化剤、水および芳香族を別々に、反応器または反応ゾーンに導入してもよい。
【0028】
本発明の芳香族アルキル化プロセスでは、水素、不活性ガスまたはその混合物は、反応温度よりも低い温度、例えば、約200℃から約400℃未満の反応器または反応ゾーンに導入され、その後、アルキル化剤が反応温度の範囲内、例えば、約400o℃超から約700℃の温度の反応器または反応ゾーンに導入される。反応器または反応ゾーンに導入される液体の水または蒸気のいずれかとしての水、および芳香族は、反応温度よりも低い温度または反応温度範囲内の温度とすることができ、水素、不活性ガスまたはその混合物が導入される前または後にアルキル化剤が導入される前後、もしくは、水素、不活性ガスまたはその混合物とアルキル化剤の導入の間に反応器に導入することができる。本発明の1つの実施形態では、アルキル化剤、液体の水または蒸気のいずれかとしての水、および芳香族は、反応温度の範囲内、例えば、約400℃超から約700℃の温度の反応器または反応ゾーンに導入される。本発明の別の実施形態では、水素および液体の水または蒸気のいずれかとしての水は、反応温度よりも低い温度、例えば、約200℃から約400℃未満の反応器または反応ゾーンに導入され、アルキル化剤および芳香族は反応温度範囲内、例えば、約400℃超から約700℃の温度の反応器または反応ゾーンに導入される。本発明の別の実施形態では、水素、芳香族および液体の水または蒸気のいずれかとしての水は、反応温度よりも低い温度、例えば、約200℃から約400℃未満の反応器または反応ゾーンに導入される。
【0029】
本発明について一般的に記載してきたが、下記実施例は、本発明の特定の実施形態として提供され、本発明の実施および利点を証明するものである。実施例は、例証として与えられ、本発明、明細書または特許請求の範囲をいかなる意味においても制限しようとするものではないことが理解される。
【0030】
本明細書では、触媒活性は、供給されたトルエンのモルに対する変換されたトルエンの%モルとして表すことができ、下記式により規定することができる。
モル%トルエン変換=[(T−T)/T×100 (1)
式中、Tは供給されたトルエンのモル数であり、Tは未反応のトルエンのモル数である。
【0031】
本明細書では、混合キシレン類に対する選択性は下記のように表すことができる。
モル%混合キシレン選択性=[Xtx/(T−T)]×100 (2)
式中、Xtxは生成物中の混合(o−、m−またはp−)キシレン類のモル数である。
【0032】
本明細書では、p−キシレンに対する選択性は下記のように表すことができる。
モル%p−キシレン選択性=(X/Xtx)×100 (3)
式中、Xは、p−キシレンのモル数である。
【0033】
本明細書では、パラキシレン収率は下記のように表すことができる。
モル%p−キシレン収率=(モル%トルエン変換)×
(モル%混合キシレン選択性)×(モル%p−キシレン選択性)×10−4 (4)
【0034】
本明細書では、メタノール変換は下記のように表すことができる。
モル%メタノール変換=[(M−M)/M]×100 (5)
式中、Mは供給されたメタノールのモル数であり、Mは未反応メタノールのモル数である。
【0035】
本明細書では、トルエンメチル化に対するメタノール選択性は下記のように表すことができる。
モル%メタノール選択性=[Xtx/(M−M)]×100 (6)
式中、Xtxは、混合(o−、m−またはp−)キシレン類のモル数であり、Mは供給されたメタノールのモル数であり、Mは、未反応メタノールのモル数である。
【実施例】
【0036】
[触媒調製]
約275のSiO/Alモル比を有するNH−ZSM−5ゼオライト粉末を、HPO水溶液で処理し、その後、約530℃の温度でか焼させた。リン処理ZSM−5ゼオライトを粉砕して微粉末とし、その後、バインダとしてのアルミナと組み合わせ、その後、押出成形し、1/16インチ直径の円筒形状の押出成形品とした。結合ゼオライト押出成形品をその後、か焼または、530℃の温度まで加熱し、触媒の総重量により約20wt%のアルミナバインダと約7.4wt%のリンを含む触媒Aを形成させた。
【0037】
触媒Aを全ての実施例で使用し、本発明を実証した。トルエンのメタノールとの、共供給蒸気および水素の存在下での反応の実施において、各実施例では、約5.4mlの触媒分量(触媒サイズ:20−40メッシュ)をSS−316管型(OD3/4インチ、ID)反応器に入れた。触媒を、触媒床温度(約5℃/分)を200℃まで水素流(50cc/分)下、少なくとも1時間徐々に上昇させることにより乾燥させた。その後、触媒を、水蒸気(2.2mmole/分)をHのキャリアガス(459cc/分)と共に200℃で一晩中導入することにより蒸気加熱した。実施例1−7では、触媒を蒸気加熱した後、トルエン、メタノール、水および水素を、反応器に異なる条件(温度および導入順)で導入し、触媒性能、特にp−キシレン生成物の生成が得られる触媒非活性化を達成した。トルエン、メタノール、水および水素を、反応器に、200℃の予熱器を介して供給し、よって、水、メタノールおよびトルエンを、反応ゾーンに入る前に気化させ、混合した。
【0038】
<比較例1>
上記のように、触媒を200℃で一晩中蒸気加熱させ、その後、トルエン、メタノール、水、および水素を200℃の反応器に、下記で示される速度で導入した。反応器温度をその後、上昇させ、触媒床入口温度を485℃に調節し、テストラン中、一定に維持した。反応器ストリームを分析し、変換、選択性およびp−キシレン収率を計算し、表1に示した。
触媒分量5.40ml(4.19g)
200℃で一晩中蒸気加熱させた触媒
供給物導入:
200℃で、H 420cc/分、HO 0.029g/分、予め混合させたトルエンおよびメタノール(3.0モル比)0.16−0.17g/分
反応器入口圧 20psig
【0039】
【表1】

【0040】
<比較例2>
前に記載したように、触媒を200℃で一晩中、蒸気および水素の存在下、蒸気加熱させた。触媒を蒸気加熱した後、水素および水の流れを中断し、反応器温度を約480℃まで増加させ、その時点で、水素、水、および予め混合したトルエンとメタノールを、下記で示される速度で反応器に導入した。触媒床入口温度を485℃に調節し、テストラン中、一定に維持した。反応器ストリームを分析し、変換、選択性およびp−キシレン収率を計算し、表2に示した。
触媒分量5.40ml(4.19g)
200℃で一晩中蒸気加熱させた触媒
供給物導入:
200℃で、H 420cc/分、HO 0.029g/分、予め混合したトルエンおよびメタノール(3.0モル比)0.16−0.17g/分
反応器入口圧 20psig
【0041】
【表2】

【0042】
<比較例3>
触媒を蒸気加熱した後、水素、水、およびメタノールを、下記で示される速度で、200℃の反応器に導入した。その後、反応器温度を480℃まで増加させ、その時点で、トルエンを反応器に導入し(すなわち、メタノールを中断し、予め混合したトルエンとメタノールを開始した)、触媒床入口温度を485℃に調節し、テストラン中、一定に維持し、反応器ストリームを分析し、変換、選択性およびp−キシレン収率を計算し、表3に示した。
触媒分量5.40ml(4.19g)
200℃で一晩中蒸気加熱させた触媒
供給物導入:
200℃で、H 420cc/分、HO 0.029g/分、メタノール 0.16−0.17g/分
反応器入口圧 20psig
480℃で、メタノール流を、予め混合したトルエンおよびメタノール(3.0モル比)0.16−0.17g/分と置換した
【0043】
【表3】

【0044】
<比較例4>
触媒を蒸気加熱した後、水素流を中断したが、水流(下記で示した速度)を触媒床を通して維持し、その後、反応器温度を480℃まで増加させた。水素および予め混合したトルエンとメタノールを480℃の反応器に導入し、触媒床入口温度を485℃に調節し、テストラン中、一定に維持し、反応器ストリームを分析し、変換、選択性およびp−キシレン収率を計算し、表4に示した。
触媒分量5.40ml(4.19g)
200℃で一晩中蒸気加熱させた触媒
供給物導入:
200℃で、HO 0.03g/分
480℃で、H、トルエンおよびメタノールを反応器に下記速度で導入した。
420cc/分
予め混合したトルエンおよびメタノール(3.0モル比)0.16−0.17g/分
反応器入口圧 20psig
【0045】
【表4】

【0046】
<実施例5>
触媒を蒸気加熱した後、水素、蒸気およびトルエンを、下記で示される速度で、200℃の反応器に導入した。その後、反応器温度を480℃まで増加させ、その時点で、メタノールを反応器に導入し(すなわち、トルエン流を中断し、予め混合したトルエンとメタノールを開始した)、触媒床入口温度を485℃に調節し、テストラン中、一定に維持し、反応器ストリームを分析し、変換、選択性およびp−キシレン収率を計算し、表5に示した。
触媒分量5.40ml(4.19g)
200℃で一晩中蒸気加熱させた触媒
供給物導入:
200℃で、H 420cc/分、HO 0.029g/分、トルエン 0.16−0.17g/分
反応器入口圧 20psig
480℃で、トルエン流を、予め混合したトルエンおよびメタノール(3.0モル比)0.16−0.17g/分と置換した
【0047】
【表5】

【0048】
<実施例6>
触媒を200℃で蒸気加熱した後、水素のみを下記で示される速度で、200℃の反応器に導入した。その後、反応器温度を480℃まで増加させ、その時点で、HOおよび予め混合したトルエンとメタノールを反応器に導入し、触媒床入口温度を485℃に調節し、テストラン中、一定に維持し、反応器ストリームを分析し、変換、選択性およびp−キシレン収率を計算し、表6に示した。
触媒分量5.40ml(4.19g)
200℃で一晩中蒸気加熱させた触媒
供給物導入:
200℃で、H 420cc/分
480℃で、蒸気、トルエンおよびメタノールを下記速度で反応器に導入した
O 0.029g/分、予め混合したトルエンおよびメタノール(3.0モル比)0.16−0.17g/分
反応器入口圧 20psig
【0049】
【表6】

【0050】
<実施例7>
触媒を200℃で蒸気加熱した後、水素および蒸気を下記で示される速度で、200℃の反応器に導入した。その後、反応器温度を480℃まで増加させ、その時点で、予め混合したトルエンとメタノールを反応器に導入し、触媒床入口温度を485℃に調節し、テストラン中、一定に維持し、反応器ストリームを分析し、変換、選択性およびp−キシレン収率を計算し、表7に示した。
触媒分量5.40ml(4.19g)
200℃で一晩中蒸気加熱させた触媒
供給物導入:
200℃で、H 420cc/分、HO 0.029g/分
反応器入口圧 20psig
480℃で、トルエンおよびメタノールを下記速度で反応器に導入した
予め混合したトルエンおよびメタノール(3.0モル比)0.16−0.17g/分
触媒床入口温度を485℃に調節し、維持
【0051】
【表7】

【0052】
実施例1−7において使用されたP修飾ZSM−5触媒は、トルエンメチル化反応中に非活性化した。触媒非活性化により、表1−7に示されるようにストリーム上での時間に伴うp−キシレンの収率が減少した。しかしながら、p−キシレンの減少は、供給成分が反応器に導入される条件に依存する。比較のために、166−171時間時でのp−キシレンの収率を実施例1−7(表1−7)から取り、表8に示す。明らかに、水素流を、任意で必要に応じて蒸気およびトルエンと共に維持しながら、反応器温度を高温または反応温度まで増加させ、その後にトルエンおよびメタノールを導入することにより、ストリーム上におけるある時点でのp−キシレン収率の改善が得られる(実施例5−7)。
【0053】
【表8】

【0054】
明らかに、本発明の多くの改変および変更が、上記教示を考慮すると可能である。そのため、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書で特定的に記載されたものとは別なように実施することができることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記ステップ:
1)水素、不活性ガスまたはその混合物を約200℃から約400℃未満の反応器温度の反応器に導入するステップ、および
2)アルキル化剤を約400℃超から約700℃の反応器温度の反応器に導入するステップ、
において、芳香族化合物と、アルキル化剤と、水素、不活性ガスまたはその混合物と、水とを形状選択性ゼオライト触媒と、反応器内で接触させる工程と、
b)アルキル化された芳香族を前記反応器から引き出す工程と、
を含む、芳香族のアルキル化の方法。
【請求項2】
前記ゼオライトはZSM−5ゼオライトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族化合物はトルエンである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族化合物はトルエンであり、前記アルキル化剤はメタノールである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記トルエン:メタノールのモル比は、1:1を超える、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記トルエン:メタノールのモル比は、2:1から20:1の範囲にある、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ゼオライト触媒は、1gのゼオライトあたり0.01から約0.15gのリンのリン量を有するリン処理ゼオライトを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ゼオライトはZSM−5ゼオライトである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記水素、不活性ガスまたはそれらの混合物は、約200℃から約250℃の範囲の反応器温度の前記反応器に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記アルキル化剤は、約400℃から約500℃の範囲の反応器温度の前記反応器に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
下記ステップ:
1)前記反応器を約200℃から約400℃未満の温度まで加熱するステップ、
2)水素、不活性ガスまたはその混合物を約200℃から約400℃未満の反応器温度の前記反応器に導入するステップ、
3)前記反応器を約400℃超から約700℃の温度まで加熱するステップ、および
4)アルキル化剤を約400℃超から約700℃の反応器温度の前記反応器に導入するステップ、
において、前記芳香族化合物と、前記アルキル化剤と、水素、不活性ガスまたはその混合物と、水とを前記形状選択性ゼオライト触媒と、反応器内で接触させる工程を含み、
前記芳香族化合物は、前記反応器にステップ2)、ステップ3)またはステップ4)で導入され、水は前記反応器にステップ2)、ステップ3)またはステップ4)で導入される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ステップ1)における前記反応器の加熱は、約200℃から約250℃の範囲の温度までである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記反応器の加熱は、前記触媒を約1から約16時間蒸気加熱することによる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
水素は前記反応器にステップ1)で、前記反応器が、約200℃から約400℃未満の温度まで加熱される間に導入される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記芳香族および前記アルキル化剤は、ステップ4)で前記反応器に導入される前に混合される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
ステップ3)における前記反応器の加熱は、約400℃から約500℃の範囲の温度までである、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記ゼオライトはZSM−5ゼオライトである、請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記芳香族化合物はトルエンである、請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記芳香族化合物はトルエンであり、前記アルキル化剤はメタノールである、請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記トルエン:メタノールのモル比は、1:1を超える、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記トルエン:メタノールのモル比は、2:1から20:1の範囲にある、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記ゼオライト触媒は、1gのゼオライトあたり0.01から約0.15gのリンのリン量を有するリン処理ゼオライトを含む、請求項11記載の方法。
【請求項23】
前記ゼオライトはZSM−5ゼオライトである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
水および前記芳香族は前記反応器にステップ4)で導入される、請求項11記載の方法。
【請求項25】
水は前記反応器にステップ2)で導入され、前記芳香族は、前記反応器にステップ4)で導入される、請求項11記載の方法。
【請求項26】
前記芳香族および水は前記反応器にステップ2)で導入される、請求項11記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−512964(P2013−512964A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543227(P2012−543227)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059383
【国際公開番号】WO2011/071977
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】