説明

芳香族テトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール誘導体に基づくリオトロピック液晶系およびその製造方法

芳香族テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールから誘導される化合物を開示する。これらの化合物は、望ましい光学的性質を持つ光学等方性または異方性フィルムを作ることができる液晶系を形成する能力を有する。式(I)もしくは(II)、またはその塩(式中、yは0〜約4の範囲内の整数である)。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年2月27日に出願された米国仮特許出願第61/155,970号および2009年7月29日に出願された米国仮特許出願第61/229,470号に基づく優先権を主張し、これらの仮特許出願はどちらも、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(発明の分野)
本発明は概して有機化学および光学異方性コーティングの分野に関する。より具体的には、本発明は、リオトロピック発色団化合物、1つまたはそれ以上のリオトロピック発色団化合物を含むリオトロピック液晶系、および光学等方性または光学異方性フィルムに関する。
【0003】
(関連技術の説明)
光学素子は、精密に制御することが可能な特殊な性質を有する新しい材料に基づくものが増えつつある。多くの最新視覚表示システムにおける重要な素子は、ある特定デバイスの要件に適合するように調節することが可能な光学特性および他の特性の組合せを有する光学異方性フィルムである。というのも、各デバイスはそれぞれ独自に一組の要件を持つことが多いからである。
【0004】
液晶表示装置(LCD)の人気の高まりが、さまざまな液晶(LC)化合物を研究する動機になってきた。初期の研究者らは、機械的力によって異方性フィルムへと配向させることができるサーモトロピックLC化合物に焦点を合わせた。しかし、サーモトロピックLCフィルムにおける分子の強制的配向は、力が中断されると消失しがちであるだろう。これに対して、リオトロピック液晶(LLC)フィルムは、機械的力が取り除かれた後も、その二色性配向を保持する能力を持つ。適切な材料には、異方性フィルムを形成するように配向させることができるLC中間相を形成する能力を持つものが含まれる。
【0005】
光学異方性フィルムの製造にはさまざまなポリマー材料が使用されてきた。そのような材料に基づくフィルムは、一軸伸長と有機色素またはヨウ素による改質とによって、異方性の光学的性質を獲得することができる。多くの応用では、ベースポリマーがポリビニルアルコール(PVA)である。そのようなフィルムは、モノグラフ、B.Bahadur編「Liquid Crystals:Applications and Uses」(World Scientific、シンガポール−ニューヨーク(1990))第1巻の101ページに、さらに詳しく記載されている。しかし、PVA系フィルムの低い熱安定性が、その応用を制限する場合がある。したがって、改良された特徴を有する光学異方性フィルムを合成するための新しい材料と方法の開発は、極めて有益である。特に、高い耐熱性、簡便な合成、および均一性などの性質を持つフィルムは、非常に望ましい。
【0006】
高い光学異方性を有するフィルムであって、さまざまな波長域における改良された選択性をも特徴とするフィルムの需要が、近年増加しつつある。赤外(IR)から紫外(UV)に至る広いスペクトル範囲において異なる場所に吸収極大を持つフィルムは、非常に望ましい。有機二色性分子は、一般に円柱状の外形を持つ超分子複合体にパッキングされることが知られている。これらの円柱は中間相の基本構造単位を形成し、その中間相を、強い二色性を持つ異方性フィルムが形成されるように、配向させることができる。例えば米国特許第5,739,296号および同第6,174,394号ならびに欧州特許EP0961138では、水溶性有機色素に基づいて、異方性材料が合成されている。これらの材料は可視スペクトル領域において高い吸光度を示す。これらは多くの応用にとって有益でありうるが、これらの化合物の吸光度プロファイルは、透明複屈折フィルムの形成におけるその応用を制限する。
【0007】
そのうえ、現在利用できるフィルム応用技術では、通例、例えば色素濃度、フィルム形成温度などの工程パラメータを入念に選択し、フィルムの形成中はそれらを厳密に守ることが要求される。しかし、たとえフィルム形成の条件が全て精密に制御されたとしても、誤配向(misorientation)ゾーンおよび/または微小欠陥の形成ゆえに、コーティングレジームのランダムな局所的ばらつきは、依然として起こり得る。これは、LLC系(例えばLLC溶液)を基材表面に適用した後の溶媒除去の過程における不均一な微細結晶化および巨視的結晶化プロセスの結果でありうる。また、現在利用することができる色素を使うと厚さが不均一なコーティングが形成される可能性が高く、それが結果として、目標とするフィルムパラメータの再現性を低下させる。
【0008】
異なる波長域において選択的である異方性フィルムが、ますます数を増やしつつある新しい応用によって必要とされている。したがって、要求される性質を伴うLLC相およびフィルムを形成する能力を持つ、新しいさまざまな化合物を開発することが望ましい。赤外から紫外に至る広いスペクトル範囲において異なる吸光度極大位置を持つフィルムも望ましい。しかし、現在利用できる色素でリオトロピック中間相の形成に役立つものは、わずかしかない。そこで今、新しいLC色素が注目を集めている。
【0009】
光学異方性フィルムは、ガラス、プラスチックまたは他の基板材料上に形成させることができる。高品質な光学特性を示すフィルムは、Bobrovら「Environmental and Optical Testing of Optiva Thin Crystal Film(登録商標)Polarizers」、第10回SIDシンポジウム講演要旨集「Advanced display technologies」(ベラルーシ共和国ミンスク、2001年9月18〜21日)の23〜30ページに記載されている偏光子として使用することができる。そのようなフィルム(高い結晶化度を持つものを含む)を製造するための方法は、PCT公開番号WO02/063,660に記載されている。上述のPTCA誘導体はLLC相を形成する能力を持ち、そのLLC系を使って得られる異方性フィルムは、優れた光学特性を有し、偏光子として良好な性能を示す。
【0010】
ナフタレン−およびペリレン−テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールジスルホ誘導体は、光学異方性フィルムの製造にも役立つLLC系を形成する能力を持つ、二色性色素である。ナフタレン−およびペリレン−テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールはどちらも水に不溶であるが、スルホン化工程によって水溶性型に変換することができる。ジスルホ誘導体を製造するには、有効量のナフタレン−またはペリレン−テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールを、所定の条件下で発煙硫酸に加える。
【0011】
既述の水溶性ナフタレン−およびペリレン−テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールジスルホ誘導体の主な欠点の一つは、基材表面上に均一な性質を持つ異方性フィルムを作製することの複雑さである。この複雑さは、その相不安定性、液晶を基材表面にコーティングした後の溶媒除去中に無配向(disorientation)ゾーンを形成する可能性、ならびに微細結晶化および巨視的結晶化の可能性に起因する。これらの短所が、高度な光学特性を持つフィルムを形成させる工程を複雑にした。再現性の低さゆえに、コーティングから乾燥までの各フィルム形成段階において固定された技術的条件の正確な調節と厳密な制御とが必要になり、それがフィルム製造費用を劇的に増加させうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
芳香族テトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール誘導体に基づく新しい改良されたLLC系が、広く必要とされている。本明細書には、安定なLLC中間相および信頼できる透明光学フィルムを形成する能力を持つ、いくつかのテトラカルボン酸ビスベンゾイミダゾール化合物を含む新規化学化合物のファミリーを記載する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある実施形態は、一般構造式(I)または(II)によって表されるリオトロピック発色団化合物またはその塩を提供する:
【化1】

[式中、yは0〜約4の範囲内の整数であり、各RおよびRは、−H、−OH、−NH、−Cl、−Br、−I、−NO、−F、−CF、−CN、−COOH、−CONH、置換されていてもよいC〜Cアルキル、置換されていてもよいC〜Cアセチル、置換されていてもよいC〜C10アリール、置換されていてもよいC〜Cアルキニル、置換されていてもよいC〜Cアルケニル、置換されていてもよいC〜Cアルコキシル、置換されていてもよいC〜Cアルキルアミノ、−L−(M、−L−(M、ならびに以下の式(III)、(IV)、および(V):
【化2】

からなる群より独立して選択される]。
【0014】
ある実施形態では、LおよびLがそれぞれ独立して親水性リンカーを表し;各MおよびMは独立して、酸性基、塩基性基、またはその塩を表し;各rは独立して1または2であり;各sは独立して1または2であり;Rは、−NH−、−CONH−、−O−および−COO−からなる群より独立して選択され;R、R、R、およびRは、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキル基であって少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されているもの、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基からなる群より、それぞれ独立して選択され;zは0〜約4の範囲内の整数である。
【0015】
ある実施形態では、リオトロピック発色団化合物が、一般構造式(VI)または(VII)によって表される:
【化3】

[式中、LおよびLはそれぞれ独立して親水性リンカーを表し;各MおよびMは独立して酸性基、塩基性基、またはその塩を表し;各rは独立して1または2であり;各sは独立して1または2であり;yは0〜約4の範囲内の整数である]。
【0016】
ある実施形態では、リオトロピック発色団化合物が一般構造式(XIV)または(XV)によって表されるか、またはその塩である:
【化4】

[式中、各RおよびRは、−H、−OH、−NH、−Cl、−Br、−I、−NO、−F、−CF、−CN、−COOH、−CONH、置換されていてもよいC〜Cアルキル、置換されていてもよいC〜Cアセチル、置換されていてもよいC〜C10アリール、置換されていてもよいC〜Cアルキニル、置換されていてもよいC〜Cアルケニル、置換されていてもよいC〜Cアルコキシル、置換されていてもよいC〜Cアルキルアミノ、ならびに上述した式(III)、(IV)、および(V)のいずれかからなる群より独立して選択される]。
【0017】
本明細書に記載するリオトロピック発色団化合物は、光学デバイスに使用することができ、そのようなデバイスを製造するために使用されるシステムにも使用することができる。ある実施形態は、少なくとも1つの上記リオトロピック発色団化合物を含むリオトロピック液晶系を提供する。ある実施形態では、リオトロピック液晶系が、溶媒、例えば水または有機溶媒と混合された水を含む。本明細書に記載する化合物は、異方性または等方性光学フィルムの製造に使用することができる。もう一つの実施形態は、少なくとも1つの本明細書記載のリオトロピック発色団化合物を含む光学異方性フィルムを提供する。フィルムは、本明細書に記載するリオトロピック液晶系を基材上に適用することによって形成させることができる。本明細書に記載するフィルムは、液晶表示デバイスの製造に使用することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、一般構造式(I)によって表されるリオトロピック発色団化合物が、一般構造式(VI)を持つ化合物である。いくつかの実施形態では、一般構造式(I)によって表されるリオトロピック発色団化合物が、一般構造式(XIV)を持つ化合物である。いくつかの実施形態では、一般構造式(II)によって表されるリオトロピック発色団化合物が、一般構造式(VII)を持つ化合物である。いくつかの実施形態では、一般構造式(II)によって表されるリオトロピック発色団化合物が、一般構造式(XV)を持つ化合物である。したがって、式(VI)および(XVI)の化合物は、式(I)に関するどの議論にも包含され、式(VII)および(XV)の化合物は、式(II)に関するどの議論にも包含される。
【0019】
これらの実施形態および他の実施形態を以下にさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書には、安定な液晶を形成する能力を持つリオトロピック発色団化合物と、そのような化合物を合成する方法とを記載する。本明細書に記載するリオトロピック発色団化合物は一般に発色団と呼ぶことができる。溶媒と、1つまたはそれ以上の本明細書に記載するリオトロピック発色団化合物とを含む、LLC系も提供される。また、これらの系および化合物に基づく等方性、異方性、または少なくとも部分的に結晶性のフィルム、ならびにそのようなフィルムを製造するための方法も提供される。本明細書に記載するフィルムの実施形態は、優れた光学的性質および作業特性を有する。
【0021】
LLC系を形成する能力を持つ二色性色素を使うと、高度な光学異方性を有するフィルムを得ることができる。光学異方性フィルムは、ガラス、プラスチック、または他の基板材料上に形成させることができる。高い二色比を持つフィルムは偏光子として使用することができる。そのようなフィルムは、超分子複合体の光吸収の特異性に関係するE型偏光子の性質を示し、吸収がわずかであるスペクトル領域において、遅延子(retarder)(すなわち位相シフトデバイス)として挙動する。これらの異方性フィルムの位相遅延性は、その複屈折、すなわち基材上へのLLC系の適用の方向に測定した屈折率と垂直方向に測定した屈折率との相違に関係する。強い(好ましくは耐光性の)色素分子に基づくLLC系から形成される好ましいLLCフィルムは、高い熱安定性および良好な耐退色性を特徴とする。
【0022】
本明細書に記載する実施形態は、水溶性芳香族テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾール誘導体と、それらの化合物に基づく薄い異方性フィルムおよび光学素子を製造するための方法とを提供する。ある実施形態では、化合物の芳香族性が、ナフタレンに基づくか、ペリレンに基づく。ある実施形態では、安定なLLC中間相を形成させるために、本明細書に記載する化合物を使用することができる。これらの化合物に基づく異方性および少なくとも部分的に結晶性のフィルムを製造するための方法も提供する。これらのフィルムは高度に望ましい光学的性質および作業特性を持つ。
【0023】
本明細書に記載する実施形態のこれらの利点および他の利点は、上述の一般構造式(I)または(II)を持つリオトロピック発色団化合物を使って達成することができる。
【0024】
式(I)および(II)における各RおよびRは、独立して選択することができる。RおよびRは同じであるか、異なることができる。好ましくは、RおよびRの少なくとも1つが、−L−(M−、−L−(M、ならびに上述の式(III)、(IV)、および(V)からなる群より選択される。
【0025】
式(I)、(II)、(VI)、および(VII)における親水性連結基LおよびLのそれぞれは、独立して選択することができる。LおよびLは同じであるか、異なることができる。本明細書にいう「親水性リンカー」は、それらが取り付けられた化合物を、その化合物が水などの適切な溶媒中で対イオンと反応することができるように、十分可溶にするのに有効な長さおよび組成を持つ連結基である。ただし親水性リンカーは、対イオンの添加前に、化合物を、選択した溶媒に完全に可溶にする必要はない。しかし、対イオンとの塩がひとたび形成されたら、親水性リンカーは、化合物をその溶媒に可溶にするべきである。ある実施形態では、化合物が水に少なくとも部分的に可溶である。ある実施形態では、化合物が水に可溶である。好ましくは、式(I)、(II)、(VI)、および(VII)におけるLおよびLが、ポリエチレングリコール基を含んでも含まなくてもよい一般式(VIII)を持つリンカー、ポリプロピレングリコール基を含んでも含まなくてもよい一般式(IX)を持つリンカー、およびポリエチレンイミン基を含んでも含まなくてもよい一般式(X)を持つリンカー:
【化5】

から、それぞれ独立して選択される。
【0026】
式(VIII)、(IX)、および(X)における各Aは、独立して結合を表すことができるか、あるいは
【化6】

および
【化7】

からなる群より選択される。
【0027】
式(VIII)、(IX)、および(X)における各nは、0〜約9の範囲内の整数から、独立して選択することができる。連結基の親水性は、より大きな数をnに使用することによって増加させることができる。ある実施形態では、式(VIII)、(IX)、および(X)における各nを、約1〜約8の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(VIII)、(IX)、および(X)における各nを、約2〜約7の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(VIII)、(IX)、および(X)における各nを、0〜約3の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(VIII)、(IX)、および(X)における各nを、約3〜約6の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(VIII)、(IX)、および(X)における各nを、約6〜約9の範囲内の整数から、独立して選択することができる。式(VIII)、(IX)、および(X)における各mは、0〜約6の範囲内の整数から、独立して選択することができる。式(VIII)、(IX)、および(X)におけるmは、親水性リンカーの親水性部分と酸性基、塩基性基、またはその塩との間の距離を制御するために選択される。ある実施形態では、mが0〜約6の範囲内の整数になるように選択される。ある実施形態では、mが1〜3の範囲内の整数になるように選択される。ある実施形態では、式(VIII)、(IX)、および(X)における各mを、0〜約2の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(VIII)、(IX)、および(X)における各mを、約2〜約4の範囲内の整数から、独立して選択することができる。好ましくは、nまたはmの少なくとも1つが、少なくとも1である。
【0028】
親水性リンカーは直鎖状または分枝鎖状であることができる。ある実施形態では、Lおよび/またはLが、一般式(XI)を含むリンカー、一般式(XII)を含むリンカー、および一般式(XIII)を含むリンカー:
【化8】

から、独立して選択される。
【0029】
ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各Xが、独立して、NまたはPを表す。ある実施形態では、Xが窒素である。ある実施形態では、Lおよび/またはLが一般式(XI)、(XII)、または(XIII)を持つリンカーを含む場合に、式(I)、(II)、(VI)または(VII)におけるrが、2に等しい。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各Aが、独立して、結合を表すか、または
【化9】

および
【化10】

からなる群より選択される。
【0030】
式(XI)、(XII)、および(XIII)における各nは、0〜約9の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各nを、1〜約8の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各nを、2〜約7の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各nを、0〜約3の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各nを、約3〜約6の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各nを、約6〜約9の範囲内の整数から、独立して選択することができる。式(XI)、(XII)、および(XIII)における各m、m1、およびm2は、0〜約6の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各m、m1、およびm2を、0〜約2の範囲内の整数から、独立して選択することができる。ある実施形態では、式(XI)、(XII)、および(XIII)における各m、m1、およびm2を、約2〜約4の範囲内の整数から、独立して選択することができる。好ましくは、nまたはmの少なくとも1つが、少なくとも1である。
【0031】
式(I)、(II)、(VI)、および(VII)における各MおよびMは、独立して、酸性基、塩基性基、またはその塩を表すことができる。MおよびMは同じであるか、異なることができる。発色団化合物のMおよび/またはMが酸性基を含む実施形態では、発色団化合物を適切な塩基と混合することにより、その酸性基を塩に変換することができる。発色団化合物のMおよび/またはMが塩基性基を含む実施形態では、発色団化合物を適切な酸と混合することにより、その塩基性基を塩に変換することができる。当業者は、本明細書の開示を参考にして、例えば酸または塩基との反応によって形成される対イオンの選択を決定することができる。各MおよびMは、水またはもう一つの有機溶媒と混合された水に可溶である化合物を構成する塩になるように、選択することができる。例えば、酸性基または塩基性基を塩に変換すると、化合物の溶解度が増加しうる。したがって、化合物の溶解度は、親水性リンカーの選択、例えば親水性リンカーの親水性部分の長さの選択、ならびにMおよび/またはMの塩原子団の選択によって、制御することができる。
【0032】
ある実施形態では、各MおよびMが、独立して、−CONH、−COOH、−SOH、−SH、−NR、−PO(OH)、−PO(OR’)(OH)、−PO(OR’)、−OH、および以下の構造:
【化11】

から選択される酸性基または塩基性基を含み、この場合、上記の構造におけるR’、R、およびRは、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、または置換されていてもよいC〜C16アラルキル基からそれぞれ独立して選択される。
【0033】
ある実施形態では、MおよびMが、−PO2−、−PO(OR’)O、−SO、および−COから独立して選択される陰イオン部分を含むように、それぞれ独立して選択され、この場合、R’は、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、または置換されていてもよいC〜C16アラルキル基から選択される。化合物に共有結合されているMおよびMの陰イオン部分は、1つまたはそれ以上の対イオンにイオン結合することができる。ある実施形態では、各MおよびMがさらに1つまたはそれ以上の対イオンを含む。ある実施形態では、対イオンが、H、NH、K、Li、Na、Cs、Ca++、Sr++、Mg++、Ba++、Co++、Mn++、Zn++、Cu++、Pb++、Fe++、Ni++、Al3+、Ce3+、La3+、もしくはプロトン化有機アミン、または類似の対イオンから独立して選択される。適切なプロトン化有機アミンの例には、NH(Et)、NH(Et)、NH(Et)、NH(Me)、NH(Me)、NH(Me)、HNCHCHOH、およびHNCH(CHOCHCHOH)などがある。ある実施形態では、対イオンがNHおよびNH(Et)から独立して選択される。対イオンの数はさまざまであることができ、1つまたは複数の対イオンが1分子より多くの分子と会合する場合には、分数になることもある。ある実施形態では、1つまたはそれ以上の対イオンが少なくとも2つの分子によって共有される。
【0034】
ある実施形態では、MおよびMが、
【化12】

および
【化13】

[式中、R、R、R10、およびR11は、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、または置換されていてもよいC〜C16アラルキル基から、それぞれ独立して選択される]
から独立して選択される陽イオン部分を含むように、それぞれ独立して選択される。ある実施形態では、R、R、R10、およびR11が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびシクロヘキシルから、それぞれ独立して選択される。適当な対イオンを選択することができる。ある実施形態では、対イオンが、COCF、CHSO、Cl、Br、およびIから独立して選択される。ある実施形態では、対イオンがCHSOである。対イオンの数はさまざまであることができ、1つまたは複数の対イオンが1分子より多くの分子に属する場合には、分数になることもある。ある実施形態では、1つまたはそれ以上の対イオンが少なくとも2つの分子によって共有される。
【0035】
ある実施形態では、式(I)、(II)、(VI)、および(VII)における各yが、0〜4の範囲内の整数になるように選択される。yが増加するにつれて、化合物の芳香族性も増加する。芳香族性を増加させると、化合物の溶解度が減少しうる。UV−Visスペクトルにおいて吸光が起こるピークは、yを増減することによって調節することができる。芳香族的挙動が高いと、一般に、高い波長でピーク吸収が起こり、芳香族性が低いと、一般に、低い波長でピーク吸収が起こる。ある実施形態では、yが、0〜約2の範囲内の整数になるように選択される。
【0036】
ある実施形態では、yが0である。一般構造式(XIV)または(XV)によって表される化合物は、yが0である非限定的実施形態である。ある実施形態では、式(XIV)および(XV)における各RおよびRを独立して選択することができる。RおよびRは同じであるか、異なることができる。各RおよびRは、−H、−OH、−NH、−Cl、−Br、−I、−NO、−F、−CF、−CN、−COOH、−CONH、置換されていてもよいC〜Cアルキル、置換されていてもよいC〜Cアセチル、置換されていてもよいC〜C10アリール、置換されていてもよいC〜Cアルキニル、置換されていてもよいC〜Cアルケニル、置換されていてもよいC〜Cアルコキシル、置換されていてもよいC〜Cアルキルアミノ、ならびに以下の式(III)、(IV)、および(V):
【化14】

[式中、R、R、R、R、R、およびzは、それぞれ上に定義したとおりである]
からなる群より選択される。zが1より大きい実施形態では、RおよびRがどちらも2回以上存在することになる。zが1より大きい実施形態における各RおよびRは、独立して選択することができる。いくつかの具体的実施形態では、R、R、R、およびRが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヒドロキシメチル、およびシクロアルキルからなる群より、それぞれ独立して選択される。
【0037】
ある実施形態では、一般構造式(XIV)および(XV)のリオトロピック発色団化合物の塩が提供される。ある実施形態では、RおよびRの少なくとも1つが窒素塩と対イオンXとを含み、Xが、F、Cl、Br、I、CHSO、およびR12COOからなる群より選択される、一般構造式(XIV)および(XV)の化合物の塩が提供される(この場合、R12は、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキル基であって少なくとも1つのハロゲンで置換されているもの、置換されていてもよいC〜Cアルキル基であって少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されているもの、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基からなる群より選択される)。ある実施形態では、一般構造式(XIV)または(XV)の化合物の塩が、構造式(XIV)または(XV)内の(例えば式(III)、(IV)、または(V)の置換基中の)アミンのプロトン化によって提供される。ある実施形態では、一般構造式(XIV)または(XV)の化合物の塩が、構造式(XIV)または(XV)内の(例えば式(III)、(IV)、または(V)の置換基中の)アミンのアルキル化によって提供される。
【0038】
化合物を塩型に変換することも、化合物の溶解度を調節するために使用することができる。例えば、構造式(XIV)または(XV)内のアミンのアルキル化により、化合物をある程度水溶性にするか、完全に水溶性にすることができる。水における溶解度は適当な対イオンの選択によってさらに制御することができる。
【0039】
本明細書において「置換されていてもよい」と記載されるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキル基のそれぞれは、無置換であるか、1つまたはそれ以上の置換基で置換されることができる。置換される場合、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル(heteroalicyclyl)、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、およびアミノ(一置換および二置換アミノ基、ならびにその保護誘導体を含む)から個別に独立して選択される1つまたはそれ以上の基である。置換基の非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、ペントキシドおよびフェニルなどがある。
【0040】
アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、直鎖基または分枝鎖基であることができる。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルなどがある。また、置換基はシクロアルキル基を含むこともできる。例えば、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロヘプチルを含めることができる。有用なアリール基の例には、フェニル、トリル、ナフチル、フェナントリル、およびアントラセニルなどがある。有用なアラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、フェナンチルメチル(phenanthylmethyl)、およびアントラニルメチル(anthranylmethyl)などがある。好ましくは、R’、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、およびシクロヘキシルから、独立して選択される。
【0041】
いくつかの実施形態では、以下の一般構造式(XV)−Aの化合物が提供される:
【化15】

[式中、z、R、R、R、R、およびRは上に定義したとおりであり、化合物の末端アミンはプロトン化されている]。会合する対イオンXは、F、Cl、Br、I、CHSO、およびR12COOからなる群より独立して選択され、この場合、R12は、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいハロゲン含有C〜Cアルキル基、置換されていてもよいヒドロキシル含有C〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基からなる群より独立して選択される。いくつかの実施形態では、化合物の末端アミンがアルキル化されて、対イオンXが会合したアンモニウム塩を形成する。アンモニウム塩を形成するアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルからなる群より独立して選択され、Xは、F、Cl、Br、I、CHSO、およびR12COOからなる群より独立して選択される(この場合、R12は、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいハロゲン含有C〜Cアルキル基、置換されていてもよいヒドロキシル含有C〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基からなる群より独立して選択される)。一般構造式(XV)−Aの化合物はトランス化合物であるが、当業者は、本明細書の開示を参考にして、シス化合物を製造することもできる。
【0042】
いくつかの実施形態では、RおよびRの少なくとも1つが、独立して、一般式(III)、(IV)または(V)によって表される、式(XIV)または(XV)の化合物が提供される。いくつかの実施形態では、式(XIV)または(XV)の化合物がアンモニウム塩を含む。ある実施形態では、本明細書に記載する化合物が、幅広い可視スペクトル域において透明であり、サーモトロピック液晶よりも増加した安定性を持つLLC相を形成する能力を持つ。ある実施形態では、化合物が約400nm〜約700nmの可視スペクトル域において透明である。ある実施形態では、化合物が、約400nm〜約600nmの可視スペクトル域において透明である。ある実施形態では、化合物が、約500nm〜約700nmの可視スペクトル域において透明である。
【0043】
当業者は、本明細書の開示を参考にして、類似するリオトロピック有機構造物を合成するために使用される常用の技法により、本明細書に記載する化合物を合成することができる。ある実施形態は、芳香族テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールカルボキシルアミド誘導体を合成するための手法を提供する。例えば、制御された量のナフタレン−またはペリレン−テトラカルボン酸ビス無水物を、3,4−ジアミノ−安息香酸カルボキシルアミドと、約120℃〜約180℃の温度範囲で、アルゴン下に、酢酸またはフェノールを溶媒として使用して、約15時間反応させることができる。得られた生成物を限外濾過によって精製して、最終的な水溶性ナフタレン−およびペリレン−テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールカルボキシルアミド誘導体を製造することができる。もう一つの実施形態では、制御された量の1,2−ジアミノベンゼンまたはその誘導体を、ナフタレン−またはペリレン−テトラカルボン酸ビス無水物と、約150℃で、アルゴン下に、Zn(OAc)およびDMFを溶媒として使用して、約15時間反応させる。得られた生成物を、場合によっては、プロトン化またはアルキル化して、水可溶化基を持つ最終的な水溶性テトラカルボキシルビスベンゾイミダゾールを製造する。
【0044】
本明細書に記載する「LLC系」は、溶媒と本明細書に記載する1つまたはそれ以上のリオトロピック発色団化合物とを含む溶液である。ある実施形態では、LLC系がLLC中間相を含む。LLC中間相は、LLC系におけるリオトロピック発色団化合物の濃度が、系内での液晶の形成に関して臨界濃度になるかそれを上回った場合に形成される。本明細書に記載する化合物は、可視スペクトル域の光を吸収するように構成させることができ、サーモトロピック液晶よりも増加した安定性を持つLLC系を形成するように構成させることもできる。これらの安定なLLC系は、再現性の高い最適な光学特性を持つ異方性、等方性、および/または少なくとも部分的に結晶性のフィルムの形成に使用することができる。溶媒除去後の均一性が高く微小欠陥が少ないフィルム形成も、本明細書に記載するリオトロピック発色団化合物を含むLLC系の実施形態を使って達成することができる。
【0045】
本明細書に記載する化合物を使って形成されるLLC系の実施形態はさらに、広範な濃度、温度、およびpH域にわたって、増加した安定性を有する。したがって、この系および化合物は異方性フィルム形成の工程を単純化し、フィルム層の作製にさまざまな技法を使用することを可能にする。再現性の高いパラメータ(二色比を含む)を持つフィルムの製造が容易になる。本明細書に記載する有機化合物の実施形態は、改良された水溶解度を示す。本発色団化合物を含むフィルムの実施形態が示す増加した光学異方性は非常に望ましい。理論に束縛されるわけではないが、一定の実施形態が示す高度の光学異方性は、2つまたはそれ以上の分子の間の非共有結合、例えば水素結合および陽イオン−陰イオン相互作用に由来するものであると、本発明者らは考えている。
【0046】
LLC系は広いpH範囲にわたって形成させることができる。例えば、式(III)、(IV)、および(V)の窒素含有置換基は、上述のように、プロトン化して、塩を形成させることができる。また当業者は、さまざまなpH溶液における溶解度に影響を及ぼすために、MおよびMの酸特性、塩基特性、または塩特性を調節することができる。ある実施形態では、Mおよび/またはMが酸性基を含み、その化合物は、化合物の濃度に依存して、溶液中で約1〜約6の範囲内のpHを持つ。ある実施形態では、Mおよび/またはMが塩基性基を含み、その化合物は、化合物の濃度に依存して、溶液中で約8〜約12の範囲内のpHを持つ。
【0047】
酸性基または塩基性基をその塩型に変換することも、化合物の溶解度を調節するために使用することができる。例えば、適当な対イオンの選択によって、水における溶解度をさらに制御することができる。また、一定の対イオン、例えばとりわけLiは、化合物の二色比を改良することができる。
【0048】
一般構造式(I)または(II)を持つ化合物は、個別でも、混合物でも、安定なLLC系を形成することができる。LLC系およびLLCフィルムの製造には、式(I)および(II)の化合物のさまざまな組合せを使用することができる。ある実施形態において、本明細書に記載するLLC系は、式(I)または(II)の化合物であって一般式(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つが一般式(III)、(IV)または(V)によって表されるものを、少なくとも1つは含む。ある実施形態では、LLC系が2つまたはそれ以上の化合物を含み、ここで、少なくとも1つの化合物は、RおよびRの少なくとも1つが一般式(III)によって表され、少なくとも1つの化合物は、RおよびRの少なくとも1つが一般式(IV)によって表される。ある実施形態では、LLC系が、共通の一般構造、R、およびRを共有するが、R〜Rの少なくとも1つが異なる点で相違する、2つまたはそれ以上の化合物を含む。ある実施形態では、LLC系が、一般式(I)または(II)によって表される第1化合物(ここに、一般式(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、一般式(III)によって表され、第1化合物はリオトロピック液晶系の約5〜約50重量%の範囲内の濃度を持つ);一般式(I)または(II)によって表される第2化合物(ここに、一般式(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、一般式(IV)によって表され、第2化合物はリオトロピック液晶系の約5〜約50重量%の範囲内の濃度を持つ);および一般式(I)または(II)によって表される第3化合物(ここに、一般式(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、一般式(V)によって表され、第3化合物はリオトロピック液晶系の約5〜約50重量%の範囲内の濃度を持つ)を含む。ある実施形態では、本明細書に開示するLLC系が、一般式(XV)−Aによって表される少なくとも1つの化合物を含む。
【0049】
さらにまた、これらの化合物のそれぞれは、他の既知リオトロピック化合物と混合することができる。ある実施形態では、一般構造式(I)および/または(II)を持つ化合物を、LLC相を形成する能力を持つ他の二色性色素と組み合わせて、LLC系を形成させる。ある実施形態では、一般構造式(I)および/または(II)を持つ化合物を、可視領域では概して非吸収性(無色)であるか、弱く吸収し、LLC系を形成する能力を持つ他の物質と組み合わせる。LLC系は、例えば化合物を水などの溶媒と混合することによって形成させることができる。溶媒の除去後に、このLLC系は、再現性よく高い光学特性を持つ異方性、等方性および/または少なくとも部分的に結晶性のフィルムを形成することができる。安定なLLC系とその結果得られる異方性、等方性および/または少なくとも部分的に結晶性の光学フィルムを形成させるための方法およびシステムは、米国特許第6,563,640号に、より詳しく説明されており、その開示は、特に光学フィルムとその作製方法の説明を目的として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本明細書に記載する水溶液中のリオトロピック発色団化合物は、典型的には、約400nm〜約780nmの波長区間に極大光吸収を示す。ある実施形態では、水溶液中の発色団化合物が約450nm〜約700nmの波長区間に極大光吸収を示す。本明細書に記載する化合物を使用すれば、LLC系内に形成される分子集合体の親水性−疎水性バランスを制御することができる。例えば、式(I)および(II)(式(VI)および(VII)も同様)中の発色団ナフタレンまたはペリレン核構造は、疎水性が増加するようにyを変化させる(テトラペリレン(tetra perylene)またはより高次の構造にする)ことによって、調節することができる。さらにまた、親水性を調節するために、一般式(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、または(XIII)を持つリンカーの長さを増加させることができる。これらのパラメータのどちらかまたは両方を変化させることにより、当業者は、化合物の溶解度および溶媒と混合したときの溶液粘度を変化させることができる。また当業者は、吸収波長を調節し、フルカラー波長スペクトルの全部または一部をカバーする発色団化合物を作り出すことができる。
【0051】
本明細書に記載するリオトロピック発色団化合物の実施形態は、安定なリオトロピック液晶系を形成させるために使用することができる。当業者は、本明細書の開示を参考にして、一般構造式(I)または(II)を持つ個々の化合物およびそのような化合物の混合物のLLC系を調製することができる。
【0052】
本明細書に記載する化合物の1つまたはそれ以上を溶媒と混合してLLC系を形成させ、次にそれを基材表面に適用し、任意の既知の方法によって、例えばPCT公開番号WO94/28073およびWO00/25155(それらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法などによって、配向させることができる。光学異方性フィルムの作製に適した基材のタイプとして、例えば透明/半透明な基材、例えばガラス、プラスチック、カラーフィルタ、および透明/半透明ポリマーシート、ならびに半導体などを挙げることができる。いくつかの実施形態では、LLC系が、噴霧、流し込み、印刷、コーティング、浸漬、またはスプーン、スパチュラ、ロッド、もしくは液晶系を移送する能力を持つ任意の物体による移送を使って、基材に適用される。所望する液晶の配向は、例えばずれ応力、重力、または電磁場を適用することなどによって与えることができる。いくつかの実施形態では、LLC系を配向または配列させるために、アプリケーターロッドまたは適切なツールを使って、表面に圧力を加えることができる。液晶中間相を配向させるために、約25mm/秒〜約1m/秒の範囲内の線速度をフィルム表面に適用することができる。フィルム形成工程は室温で行うことができる。いくつかの実施形態において、配向中の相対湿度は約55%〜約85%の範囲内にあることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載するジイミドは、ガラス棒を使って基材に最低限の機械で「塗布(spreading)」するだけでLLC系を配向させることができるので、簡単な方法の一つで分子を整列させることができる。ある実施形態では、LLC系がLLC中間相を含む。ある実施形態では、LLC系を一方向に塗布することによって、LLC系を配向させる。
【0053】
次に、配向した液晶溶液からの溶媒の除去を行って、約0.1μm〜約2μmの範囲内の厚さを持つ光学異方性フィルムを形成させることができる。ある実施形態では、フィルムが約0.2μm〜約1μmの範囲内の厚さを持つ。ある実施形態では、フィルムが約0.2μm〜約0.6μmの範囲内の厚さを持つ。ある実施形態では、フィルムが約0.2μm〜約0.3μmの範囲内の厚さを持つ。ある実施形態では、フィルムが約0.3μm〜約0.5μmの範囲内の厚さを持つ。いくつかの実施形態では、異方性フィルムが多結晶フィルムであってもよい。
【0054】
基材濡れを改良し、液晶系のレオロジー的性質を最適化するために、例えば可塑化水溶性ポリマーおよび/または陰イオン性もしくは非イオン性界面活性剤を添加することなどによって、溶液を改質することができる。LLC系は1つまたはそれ以上の水溶性低分子量添加剤をさらに含んでもよい。添加剤のそれぞれは、液晶系の配列性を破壊しないように有利に選択することができる。水溶性低分子量添加剤の例には、PVAおよびポリエチレングリコールなどの可塑化ポリマー、ならびに陰イオン性または非イオン性界面活性剤、例えば親水性ポリエチレンオキシド基と炭化水素親油性または疎水性基とを持つ非イオン性界面活性剤であってTRITONという商標で入手できるものなどがあるが、これらに限定されるわけではない。これらの添加剤は、基材濡れを改良し、LLC系のレオロジー的性質を最適化することができる。添加剤は、なるべくLLC系の配列性を破壊しないように選択される。
【0055】
本明細書に記載するLLC系から形成されるフィルムの実施形態は、一般に、他のフィルムと比較して、約10%またはそれ以上の性能優位性、例えばバッチ間、同じバッチ中の異なるフィルム間、および1枚のフィルムの表面における、1つまたはそれ以上の性能パラメータの再現性の増加によって特徴づけることができる。
【0056】
本明細書に記載する化合物は、等方性フィルムを得るために使用することもできる。例えば、一般構造式(I)または(II)を持つ化合物と溶媒とを含むLLC系を、基材上に適用して、何の外部配向処理にも供さないことができる。これは、噴霧、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷などの方法でLLCを適用することによって達成することができる。溶媒を除去すると、等方性の光学的性質を有する全体的ドメイン構造を持つ多結晶性フィルムで覆われた基材が残る。
【0057】
本リオトロピック発色団化合物は、少なくとも部分的に結晶性のフィルムおよび/または偏光フィルムおよび/または復屈折フィルムを形成させるために使用することができる。これらのリオトロピック発色団化合物は、光学等方性または異方性、偏光フィルムおよび/または位相遅延フィルムおよび/または複屈折フィルムの製造に使用することができる。ある実施形態では、光学等方性または異方性フィルムを形成させるために使用するLLC系が、一般構造式(I)および(II)から選択される少なくとも2つの化合物を含む。いくつかの実施形態では、LLC系が水性液晶溶液を包含し、これを「水性インク組成物」と呼ぶことができる。
【0058】
ある実施形態では、LLC系が水性である。例えばLLC系は、一般構造式(I)および/または(II)を持つ本明細書記載のリオトロピック発色団の1つまたはそれ以上の化合物と水とを含むことができる。他の溶媒も使用することができる。ある実施形態では、LLC系が、水と、水と混和できる有機溶媒との混合物を含む。ある実施形態では、LLC系が、水と、水と任意の比率で混和できる有機溶媒または水との限られた混和性を特徴とする有機溶媒との混合物を含む。有用な有機溶媒には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アルコール(例えばメタノールまたはエタノール)およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの極性溶媒が含まれる。
【0059】
当業者に知られている他の材料も含めることができる。ある実施形態では、LLC系が1つまたはそれ以上の界面活性剤をさらに含む。ある実施形態では、界面活性剤がLLC系の約5重量%までの量で存在する。ある実施形態では、界面活性剤がLLC系の約0.01〜約3重量%の範囲内の量で存在する。ある実施形態では、界面活性剤がLLC系の約0.1〜約1重量%の範囲内の量で存在する。ある実施形態では、LLC系が1つまたはそれ以上の可塑剤をさらに含む。ある実施形態では、可塑剤がLLC系の約5重量%までの量で存在する。ある実施形態では、可塑剤がLLC系の約0.01〜約3重量%の範囲内の量で存在する。ある実施形態では、可塑剤がLLC系の約0.1〜約1重量%の範囲内の量で存在する。
【0060】
本明細書に記載するLLC系におけるリオトロピック発色団化合物またはリオトロピック発色団化合物の混合物の濃度はさまざまであることができる。ある実施形態では、LLC系におけるリオトロピック発色団化合物またはリオトロピック発色団化合物の混合物の濃度が、LLC系の約1〜約70重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系におけるリオトロピック発色団化合物またはリオトロピック発色団化合物の混合物の濃度が、LLC系の約3〜約60重量%である。ある実施形態では、LLC系におけるリオトロピック発色団化合物またはリオトロピック発色団化合物の混合物の濃度が、LLC系の約5〜約50重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系におけるリオトロピック発色団化合物またはリオトロピック発色団化合物の混合物の濃度が、LLC系の約8〜約40重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系におけるリオトロピック発色団化合物またはリオトロピック発色団化合物の混合物の濃度が、LLC系の約10〜約30重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系におけるリオトロピック発色団化合物またはリオトロピック発色団化合物の混合物の濃度が、LLC系の約7〜約30重量%の範囲内にある。
【0061】
LLC系における個々のリオトロピック発色団化合物の濃度も、以下に述べるように、要求されるフィルムの性質に依存して、さまざまであることができる。ある実施形態では、LLC系が2つまたはそれ以上の一般構造式(I)および/または(II)の化合物の組合せを含み、式(I)の化合物の量は発色団化合物の総量に基づいて約0〜約99重量%の範囲内にあり、式(II)の化合物の量は発色団化合物の総量に基づいて約0〜約99重量%の範囲内にある。場合により、式(I)および/または(II)の化合物の総量は、発色団化合物の総重量の少なくとも50%を占めることができる。場合により、式(I)および/または(II)の化合物の総量は、発色団化合物の総重量の少なくとも75%を占めることができる。場合により、式(I)および/または(II)の化合物の総量は、発色団化合物の総重量の少なくとも90%を占めることができる。場合により、式(I)および/または(II)の化合物の総量は、発色団化合物の総重量の約100%を占めることができる。
【0062】
ある実施形態では、LLC系における式(I)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約1〜約100重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(I)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約5〜約95重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(I)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約10〜約90重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(I)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約20〜約80重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(I)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約1〜約50重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(I)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約50〜約99重量%の範囲内にある。
【0063】
ある実施形態では、LLC系における式(II)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約1〜約100重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(II)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約5〜約95重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(II)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約10〜約90重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(II)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約20〜約80重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(II)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約1〜約50重量%の範囲内にある。ある実施形態では、LLC系における式(II)の化合物の量が、発色団化合物の総量に基づいて約50〜約99重量%の範囲内にある。
【0064】
ある実施形態では、リオトロピック液晶系が、約0〜約50質量%の濃度を持つ式(I)または(II)の第1化合物と、約0〜約50質量%の濃度を持つ、第1化合物とは異なる式(I)または(II)の第2化合物とを含み、第1化合物と第2化合物の総量はLLC系の総量に基づいて約50質量%までである。
【0065】
系テクスチャーの偏光顕微鏡分析によれば、色素濃度がLLC系の約5〜約50重量%、約5〜約40重量%、約5〜約30重量%、または約7〜約30重量%である場合は、安定なリオトロピック中間相がほぼ室温で形成されうることがわかる。いくつかの実施形態では、安定なリオトロピック中間相を、約10℃〜約40℃、約15℃〜約30℃、または約20℃〜約28℃の範囲内の温度で形成させることができる。したがって、十分に広い範囲にわたる色素濃度および温度で、ネマチック相が観察される。等方性相およびそれらの境界ならびに二相遷移領域の存在が、この系内に検出された。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するLLC系が、所望の光吸収性を与えることのできる少なくとも1つの有機色素または実質上無色の化合物をさらに含む。ある実施形態では、有機色素または実質上無色の有機化合物が、液晶系の形成に関与するように構成される。ある実施形態では、LLC系が、少なくとも1つの水溶性有機色素または少なくとも1つの実質上無色の有機化合物をさらに含む。その結果得られるフィルムも、有機色素または他の有機化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、適切な有機色素または実質上無色の化合物が、ブリリアントブラックBNまたはナフトールブルーブラックを含む。
【0067】
本発明の光学異方性フィルムは、本明細書に記載するLLC系を基材上に適用した後、場合によっては配向処理を行い、次に乾燥させることによって得ることができる。リオトロピック発色団化合物の合成、それらの化合物を含むLLC系の形成、そしてそのLLC系を使った有機フィルムの形成を説明する実例を、以下に詳しく述べる。
【0068】
ある実施形態では、少なくとも1つのリオトロピック発色団化合物を含むLLC系を基材上に沈着させることによって、光学異方性フィルムが形成される。ある実施形態では、フィルムが少なくとも部分的に結晶性である。ある実施形態では、フィルムが少なくとも1つの水溶性有機色素をさらに含む。ある実施形態では、フィルムが偏光フィルムである。ある実施形態では、フィルムが位相遅延フィルムである。
【0069】
もう一つの実施形態は、少なくとも1つのE型偏光子を含む液晶表示装置を提供する。ある実施形態では、前記少なくとも1つのE型偏光子が、少なくとも1つの本明細書に記載する光学異方性フィルムと基材とを含む。ある実施形態は、基材と少なくとも1つの本明細書に記載するLLCフィルムとを含む二色性光偏光素子を提供する。いくつかの実施形態では、二色性光偏光素子がE型偏光子である。ある実施形態は、少なくとも1つのE型偏光子フィルムを含み、そのE型偏光子フィルムが少なくとも1つの本明細書に記載するLLCフィルムを含む、液晶アクティブ表示装置を提供する。従来のLC表示装置にはO型フィルムが使用されることが多く、LC表示装置を斜め方向から見ると、コントラスト比が著しく低下しうる。逆に、少なくとも1つのE型偏光子フィルムを含むLC表示装置は、コントラスト比の実質的な低下を伴わずに広い視野角を与えることができる。さらにまた、好ましい実施形態では、本明細書に記載するLLCフィルムを含むE型偏光子を作製する工程は、O型偏光子を作製するための従来の工程と比較して、より容易に実行することができる。これは簡略化された低コストのLCデバイスにもつながりうる。E型偏光子を含むLC表示装置の設計と構成要素は、米国特許第7,015,990号により詳しく記載されており、この特許は、参照によりそのまま、とりわけそのような設計と構成要素の説明を目的として、本明細書に組み込まれる。
【0070】
もう一つの実施形態は、光学異方性フィルムを形成させる方法を提供する。ある実施形態において、光学異方性フィルムを形成させる方法は、複数のLLC中間相を含む本明細書に記載するLLC系を、基材上に適用すること、および前記複数のLLC中間相を配向させることを含む。ある実施形態において、本方法はさらに、少なくとも1つの本明細書に記載する発色団化合物を水または水および有機溶媒の混合物と混合することによって、LLC系を形成させることを含む。ある実施形態において、本方法は、基材上でLLC系を乾燥させることを含む。ある実施形態では、複数のLLC中間相を配向させることが、LLC中間相を一方向に塗布することを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するフィルムが高い光学異方性を示す。例えば、式(I)および/または式(II)の化合物から形成される偏光子フィルムは、典型的には、主要吸収バンド極大に対応する波長で、ある二色比を持つ。そのような偏光子フィルムの二色比は、さまざまな波長にわたって約9〜約23の範囲内にあり、これは、発色団コア上に直接取り付けられたスルホン酸基を持つ色素(例えば表1の比較例参照)と比較して、著しく改良されている。増加した二色比は、LCD表示装置応用に、より良いコントラスト比を提供する。また、本明細書に記載する化合物は改良された水溶性を示し、その結果得られるフィルムも表面全体にわたって高い再現性を有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、光学異方性フィルムを複屈折フィルムとしてさまざまな応用に使用することもできる。
(表1:LLC発色団の二色比)
【表1】

【実施例】
【0073】
〔実施例1:合成〕
(式(I)および(VI)の化合物の合成)
以下の一般合成スキーム(スキーム1)に、式(I)および(VI)の化合物を製造することができる合成工程を図解する。ただし、類似の合成を使って式(II)および(VII)のトランス化合物を製造できることは、本明細書の開示を参考にすれば、当業者には理解されるであろう。
【化16】

【0074】
スキーム1におけるRは、以下に説明する化合物の合成において、さまざまであることができる。例えば化合物1において、Rは−CHCHOCHCHOCHCHCHSOHである。
【化17】

化合物1の合成:
ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、Rが−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2SO3Hであるo−フェニルジアミン誘導体、およびピペラジンの混合物を、撹拌したフェノールの融解物に約70℃〜約80℃で加えた。ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物対o−フェニルジアミン誘導体対ピペラジン対フェノールのモル比は約1:2.3:3:50とした。混合物を約170℃から約180℃までの範囲内の温度に加熱し、その温度を一晩保った。生成した反応水をフェノールとの共沸混合物として留去した。130℃まで冷却した後、メタノール(反応混合物と等体積)を混合物にゆっくり加えた。混合物を60℃で1時間撹拌した。次に反応生成物を濾別し、透明な濾液が生じるまで、メタノールで洗浄した。乾燥後に、黒色固形物を得た(収率70%)。黒色固形生成物の0.4%水溶液のpH値を、水酸化アンモニウムを使って5.5〜6.5に調節してから、脱塩し、10%水溶液に濃縮した。LCMS(ESI)M−H計算値(C52H46N6O14S2として):1042;実測値:1042。
【化18】

【0075】
化合物2の合成:
o−フェニルジアミン誘導体中のRを、Rが−CHCHOCHCHSOHであるo−フェニルジアミン誘導体とした点以外は、化合物1と同様の方法で、化合物2を製造した。LCMS(ESI)M−H計算値(C463412として):926;実測値:926。
【化19】

【0076】
化合物3の合成:
o−フェニルジアミン誘導体中のRを、Rが−CHCHN(CHCHCHSOH)であるo−フェニルジアミン誘導体とした点以外は、化合物1と同様の方法で、化合物3を製造した。タイプCについてLCMS(ESI)M−H計算値(C545216として):1196;実測値:1196。
【化20】

【0077】
化合物4の合成:
融解したフェノールの溶液に、CHCHOCHCHOCHCHN(CHCHCHSOH)によって表されるRを持つo−フェニルジアミン誘導体(1.43g、2.5mmol)、二無水物(0.41g、1.05mmol)、およびピペラジン(0.27g、3.1mmol)を加えた。得られた溶液を170℃で一晩加熱撹拌した。フェノールの大半がフラスコの口に結晶化していて、それを反応混合物から分離した。反応混合物を水で抽出し、固形物を除去するために濾過し、残存するフェノールおよびピペラジンを除去するために、濾液を酢酸エチルで洗浄した。ピペラジンと未反応のジアミンを除去するために、残った水溶液を逆浸透(RO)膜で「脱塩」した。得られた水溶液を10重量%まで濃縮することにより、1.3gの生成物(収率97%)を得た。LC−MS(M−2H;計算値(C62641020−−として)=1370.3;実測値:685、M−3H=457)。
【化21】

【0078】
化合物5の合成:
o−フェニルジアミン誘導体が−CHCHOCHCHOCHCHOCHCHP(OCHCH)OHで表されるRを持つ点以外は、化合物4と同様の方法で、化合物5を製造した。最終生成物を、トリエチルアンモニウム酢酸緩衝液を使ってC−18での分取HPLCによって精製することにより、トリエチルアンモニウム塩を得た。LCMS(M−2Hの計算値(C58581622として)=1156.3;実測値:578)。
【0079】
(式(II)および(VII)の化合物の合成)
以下の一般合成スキーム(スキーム2)に、式(II)および(VII)の化合物を製造することができる合成工程を図解する。ただし、類似の合成を使って式(I)および(VI)のトランス化合物を製造できることは、本明細書の開示を参考にすれば、当業者には理解されるであろう。
【化22】

【0080】
化合物6(ビス酸クロライド)の合成:
ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸無水物(20.0g、74.6mmol)および3,4−ジアミノ安息香酸(34.0g、22.4mmol)の混合物を600mLの酢酸に懸濁し、3日間、加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、固形物を濾過によって集め、水で洗浄した。固形物を水に懸濁し、それを200mmolの水酸化ナトリウムで塩基性にした。残存固形物を遠心分離によって除去した。その暗色溶液を濃塩酸でpH3.7にした。得られた固形物を遠心分離によって集め、1:1メタノール/水ですすいだ。固形物を減圧下で乾燥して32.4g(87%)の二酸を得た。UV−max(456)。FT−IR(固体)は、酸の強いC=O伸縮を1682cm−1に示す。LC−MS(M−H)=499.HNMR(CF3CO2D,400MHz)10.18(bs,1H),9.93(bs,2H),9.78(bs,2H),9.55―9.63(m,1H),9.38―9.45(m,1H),9.16―9.27(m,2H),8.78―8.86(m,1H).
【0081】
上記の二酸を塩化チオニルに懸濁し、3日間、加熱還流した。その混合物を冷却し、過剰の塩化チオニルを減圧下で除去した。固形物をキシレン類に懸濁し、残存塩化チオニルを除去するためにロータリーエバポレーターで乾燥(3回)した。酸クロライドの生成は、高周波数側(1691cm−1)へのC=Oバンドのシフトと、ブロードなO−H伸縮(1700〜3700cm−1)の消失とによって裏付けられた。
【化23】

【0082】
化合物7の合成:
2−アミノエタンスルホン酸(9.5mmol、1.7g)および水酸化カリウム(9.5mmol、0.53g)を100mLの水に溶解することによって溶液を調製した。溶液の初期pHを測定したところ9.6だった。その混合物にビス酸クロライド(化合物6、3.1mmol、1.7g)を加え、得られた混合物を撹拌する。約90〜180分撹拌した後、混合物のpHを1M水酸化カリウムで9.5に調節する。次に、得られた混合物を3日間撹拌しておいた。混合物を水で190mLに希釈し、固形沈殿物を遠心分離によって除去した。濾液を膜上で脱塩し、減圧下で濃縮して、水中に8w/w%とした。収量(1.4g、58%)。LC−MS分析(M−2H=356)。
【化24】

【0083】
化合物8の合成:
3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(36.9mmol、5.14g)を100mLの水に溶解した。その溶液を18mLの1M LiOHでpH9.9にした。その溶液にビス酸クロライド(化合物6)を加え、その混合物を3時間撹拌した。7mLの1M LiOHを追加してpHを8.8から9.4まで上昇させ、その混合物を室温で終夜撹拌した。pHは一晩で1.6まで低下した。18mLの1M LiOHを追加して、pHを9.3まで上昇させ、その混合物をさらに2時間撹拌した。1M HClでpHを2.5に調節し、固形物を濾過によって除去した。過剰の塩をRO膜で除去し、その溶液を減圧下で7.5wt%まで濃縮した。収量(固形物として4.9g、70%)。LCMS(M−H=741)。
【化25】

【0084】
化合物9の合成:
ビス二酸クロライド化合物6(10.4g、18.4mmol)を少しずつ、ニートのN,N−ジメチルエチレンジアミン(100g、1.13モル)に撹拌しながら加えた。得られた暗色混合物を終夜撹拌した。過剰のアミンを減圧下に80℃で除去した。残渣を2リットルの水にとり、濃塩酸で酸性(pH<1)にした。セライトで濾過することによって固形物を除去した。過剰の塩をRO膜で除去した。その溶液を10.2wt%まで濃縮した。生成物の収量(HCl塩として)は11.5グラム(理論値の88%)だった。まず最初に減圧下で水を除去し、次に固形残渣をトリフルオロ酢酸に溶解してロータリーエバポレーターで乾燥する操作を繰り返すことにより、塩酸塩の一部をトリフルオロ酢酸塩に変換した。最終的なトリフルオロ酢酸塩は、Ag(I)と混合しても沈殿を示さなかった。LCMS(M−H=641)。
【化26】

【0085】
化合物10の合成:
9−アミノ−4,7−ジオキサノナンスルホン酸(4.1mmol、1.17g)を15mLのDMFに60℃で懸濁した。その混合物にトリエチルアミン(1.8mL、13.1mmol)を撹拌しながら加えた。ビス酸クロライド化合物6(1.0g、1.86mmol)を少しずつ加えてから、終夜撹拌した。DMFの大半を減圧下で除去し、残渣を水にとった。不溶物を濾過によって除去した。濾液を減圧下で濃縮し、EtNHCl緩衝液を用いるC−18カラムでの分取HPLCによって精製した後、残留移動相緩衝液を除去するためにRO膜による最終的脱塩工程を行った。LCMS(M−2H=458)。
【0086】
(式(I)および(II)の化合物の合成)
以下の一般合成スキーム(スキーム3)に、式(II)および(XV)の化合物を製造することができる合成工程を図解する。ただし、類似の合成を使って式(I)および(XIV)のシス化合物を製造できることは、本明細書の開示を参考にすれば、当業者には理解されるであろう。
【化27】

【0087】
スキーム3における各R”は、その関連するR’に従って決定することができる。例えば、化合物14aにおいてR’が−CHCHN(Me)である場合、化合物15aおよび16aにおけるR”は−CHである。各化合物における2つのR”が環を形成することもできる(14d〜16dおよび14e〜16e参照)。
【0088】
化合物11の合成:
1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物(2.68g、10mmol)、3,4−ジアミノ安息香酸(3.05g、20mmol)、酢酸亜鉛(183mg、1.0mmol)、および20mLのDMFを、マイクロ波加熱器で、145℃で2時間加熱するか、あるいは125〜140℃においてDMF中で5時間、またはN−メチルピロリジノン中で終夜加熱した。冷却後に、混合物を200mLのDI水で希釈し、さらに10分間撹拌した。帯褐赤色の懸濁液を濾過によって分離してから、DMFを完全に除去するために水でよく洗浄(10回)した。減圧下、60℃で2時間乾燥することにより、NMRで純度>90%の固形物4.9g(90%)を得た。HNMR(400MHz,DSO):δ10.2(d,2H),9.95(dd,2H)9.8(dd,2H),9.23(m,2H),8.81(m,2H)。
【0089】
化合物12の合成:
)カルボン酸誘導体11(2.0g、4.0mmol)をニートの塩化チオニル(20mL)中で5時間加熱還流した。過剰のSOClを留去することで、酸クロライド12を明るい帯赤色粉末として得て、その粉末をそれ以上精製せずに使用した。
【0090】
化合物14a〜eの合成(一般手法):
4.0mmolの酸クロライド12を20mLのDMF、10ml(72mmol)のトリエチルアミン、およびN,N−ジメチルエチレンジアミン(13a)(2.65mL、24mmol)に加えた。その反応混合物を100℃で5時間加熱した後、溶媒と過剰の試薬を減圧下で除去した。残渣に1LのDI水を加え、その溶液を、透過物の伝導度が30〜35μSに達するまで、タンジェンシャルフロー濾過(5kDaフィルターを使用)に供した。水を減圧下で除去して1.8g(70%)の化合物14aを得た。MS(ESI):m/z=641[M+H](100%)(C3632として)。化合物14b。MS(ESI):m/z=697 M(100%)(C4040として)。化合物14c(56%)。MS(ESI):m/z=753 M(100%)(C4448として)。化合物14d(66%)。MS(ESI):m/z=693 M(100%)(C4036として)。化合物14e(60%)。MS(ESI):m/z=652 M(100%)(C3820として)。反応時に化合物13aを化合物13b〜13eで置き換えることにより、それぞれ化合物14b〜14eが生成した。
【0091】
化合物15a〜eの合成(一般手法):
1gのジアミン14aにギ酸(50mL)を加え、次に超音波処理とわずかな加熱を行った。過剰のギ酸を減圧下で除去し、この工程を2〜3回繰り返したところ、プロトン化された15aが光沢のある黒色残渣として定量的収率で生じた。その残渣に1LのDI水を加え、その溶液を、透過物の伝導度が30〜35μSに達するまで、タンジェンシャルフロー濾過(5kDaフィルターを使用)に供した。水を減圧下で除去して800mg(70%)の化合物15aを得た。MS(ESI):m/z=643[M](100%)(C3634として)。反応時に化合物14aを化合物14b〜14eで置き換えることにより、それぞれ化合物15b〜15eが生成した。
【0092】
化合物16a〜eの合成(一般手法):
1gのジアミン14aに10当量のメトキシメシレートを加え、その溶液を15分間還流した。次に反応を冷却し、1LのDI水を加え、その溶液を、透過物の伝導度が30〜35μSに達するまで、タンジェンシャルフロー濾過(5kDaフィルターを使用)に供した。水を減圧下で除去して900mg(67%)の化合物16aを得た。MS(ESI):m/z=671[M](100%)(C3838として)。反応時に化合物14aを化合物14b〜14eで置き換えることにより、それぞれ化合物16b〜16eが生成した。
【0093】
〔実施例2:二色比の測定〕
150mgの化合物1を10mLの脱イオン水に溶解し、5%トリエチルアミン溶液でpH=7まで滴定し、ロータリーエバポレーターを使って12wt%まで濃縮することにより、サンプル1を調製した。得られた溶液を、標準スライドガラス(2インチ×3インチ×1mm、前もって、超音波タンク中、1%アルコール溶液で20分間洗浄した後、脱イオン水、イソプロピルアルコールですすぎ、室温で乾燥しておいたもの)に、アプリケーターロッド(直径3/8インチ、ワイヤサイズ#2−1/2、Paul N.Gardner Co.Inc.)を使って、25mm/sの線速度でコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。この工程を、室温(約20℃)および相対湿度65%において、フィルムを同じ条件下で乾燥させた後に行った。
【0094】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域においてPerkin Elmer Lamda Bio 40 UV/Vis Spectrum分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比K=log(Apar)/log(Aper)は、約500nmにおいて約23に相当した。
【0095】
150mgの化合物2を10mLの脱イオン水に溶解し、5%LiOH溶液でpH=7まで滴定し、ロータリーエバポレーターを使って8wt%まで濃縮することにより、サンプル2を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0096】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約500nmにおいて約11に相当した。
【0097】
150mgの化合物3を10mLの脱イオン水に溶解し、5%LiOH溶液でpH=7まで滴定し、ロータリーエバポレーターを使って15wt%まで濃縮することにより、サンプル3を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0098】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約500nmにおいて約17に相当した。
【0099】
150mgの化合物4を10mLの脱イオン水に溶解し、5%NaOH溶液でpH=7まで滴定し、ロータリーエバポレーターを使って15wt%まで濃縮することにより、サンプル4を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0100】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約500nmにおいて約17に相当した。
【0101】
150mgの化合物5を10mLの脱イオン水に溶解し、5%NaOH溶液でpH=7まで滴定し、ロータリーエバポレーターを使って12wt%まで濃縮することにより、サンプル5を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0102】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約500nmにおいて約17に相当した。
【0103】
150mgの化合物7を10mLの脱イオン水に溶解し、5%KOH溶液でpH=7まで滴定し、ロータリーエバポレーターを使って8wt%まで濃縮することにより、サンプル6を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0104】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約450nmにおいて約8に相当した。
【0105】
150mgの化合物8を10mLの脱イオン水に溶解し、5%LiOH溶液でpH=7まで滴定し、ロータリーエバポレーターを使って8wt%まで濃縮することにより、サンプル7を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0106】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約450nmにおいて約10に相当した。
【0107】
150mgの化合物9を10mLの脱イオン水に溶解し、次にロータリーエバポレーターを使って8wt%まで濃縮することにより、サンプル8を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0108】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約450nmにおいて約13に相当した。
【0109】
150mgの化合物10を10mLの脱イオン水に溶解し、次にロータリーエバポレーターを使って8wt%まで濃縮することにより、サンプル9を調製した。この溶液を、サンプル1について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約0.2μmだった。
【0110】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜800nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約450nmにおいて約9に相当した。
【0111】
150mgの化合物15aを2mLの脱イオン水に溶解し、次にロータリーエバポレーターを使って17wt%まで濃縮することにより、サンプル10を調製した。得られた溶液を、標準スライドガラス(2インチ×3インチ×1mm、前もって、超音波タンク中、1%アルコール溶液で60分間洗浄した後、脱イオン水、イソプロピルアルコールですすぎ、室温で乾燥しておいたもの)に、アプリケーターロッド(直径3/8インチ、ワイヤサイズ#1−1/2、Paul N.Gardner Co.Inc.)を使って、25mm/sの線速度でコーティングした。得られたフィルム厚は約200nmだった。この工程を、室温(約20℃)および相対湿度65%において、フィルムを同じ条件下で乾燥させた後に行った。
【0112】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜780nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約454nmにおいて約12に相当した。
【化28】

【0113】
ギ酸の代わりにグリコール酸を使ってアンモニウム塩を形成させた点以外は上記化合物15dと同じ方法で、化合物17dを製造した。150mgの化合物17dを2mLの脱イオン水に溶解し、次にロータリーエバポレーターを使って25wt%まで濃縮することにより、サンプル11を調製した。この溶液を、サンプル10について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約200nmだった。
【0114】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜780nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約470nmにおいて約4に相当した。
【0115】
150mgの化合物16eを5mLの脱イオン水に溶解し、ロータリーエバポレーターを使って18wt%まで濃縮することにより、サンプル12を調製した。この溶液を、サンプル10について説明した技法と同じ技法で、標準スライドガラス上にコーティングした。得られたフィルム厚は約200nmだった。
【0116】
フィルム適用の方向(Apar)およびそれに対して垂直な方向(Aper)に沿って偏光した光ビームを使用し、380〜780nmの波長域において分光測光器で測定される吸光スペクトルによって、フィルムを特徴づけた。二色比(K)は約460nmにおいて約3に相当した。
【0117】
上記の説明では好ましい実施形態の方法および材料をいくつか開示した。本発明では、これらの方法および材料に変更を加える余地があり、作製方法および装置に改変を加える余地もある。そのような変更は、この開示の検討または本明細書に開示した発明の実施から、当業者には明白になるであろう。したがって、本発明は本明細書に開示した具体的実施形態に限定されるものではなく、本願特許請求の範囲に体現される本発明の真の範囲および要旨に含まれる変更および代替実施形態は、いずれも本発明に包含されるものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般構造式(I)または(II)によって表されるリオトロピック発色団化合物またはその塩:
【化1】

[式中、yは0〜約4の範囲内の整数であり、各RおよびRは、−H、−OH、−NH、−Cl、−Br、−I、−NO、−F、−CF、−CN、−COOH、−CONH、置換されていてもよいC〜Cアルキル、置換されていてもよいC〜Cアセチル、置換されていてもよいC〜C10アリール、置換されていてもよいC〜Cアルキニル、置換されていてもよいC〜Cアルケニル、置換されていてもよいC〜Cアルコキシル、置換されていてもよいC〜Cアルキルアミノ、−L−(M、−L−(M、ならびに以下の式(III)、(IV)、および(V):
【化2】

からなる群より独立して選択され;
およびLはそれぞれ独立して親水性リンカーを表し;各MおよびMは独立して、酸性基、塩基性基、またはその塩を表し;各rは独立して1または2であり;各sは独立して1または2であり;Rは、独立して、−NH−、−CONH−、−O−または−COO−によって表され;R、R、R、およびRは、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキル基であって少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されているもの、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基からなる群より、それぞれ独立して選択され;かつ、zは0〜約4の範囲内の整数である]。
【請求項2】
構造式(VI)または(VII):
【化3】

によって表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびLの一方または両方が、一般構造式(VIII)を含むリンカー、一般構造式(IX)を含むリンカー、および一般構造式(X)を含むリンカー:
【化4】

[式中、各Aは独立して結合を表すか、または
【化5】

および
【化6】

からなる群より選択され;
各nは、独立して、0〜約9の範囲内の整数であり;各mは、独立して、0〜約6の範囲内の整数である;ただし、nまたはmの少なくとも1つは、少なくとも1である]
から独立して選択される、請求項1〜2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
およびLの一方または両方が、一般構造式(XI)を含むリンカー、一般構造式(XII)を含むリンカー、および一般構造式(XIII)を含むリンカー:
【化7】

[式中、各Xは独立してNまたはPを表し、各Aは独立して結合を表すか、
【化8】

および
【化9】

からなる群より選択され;
各nは独立して0〜約9の範囲内の整数であり;各m、m1、およびm2は独立して0〜約6の範囲内の整数である;ただし、nまたはmの少なくとも1つは、少なくとも1である]
から独立して選択される、請求項1〜2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
各MおよびMが、独立して、−CONH、−COOH、−SOH、−SH、−NR、−PO(OH)、−PO(OR’)(OH)、−PO(OR’)、−OH、および以下の構造:
【化10】

から選択される部分を含み、
R’、R、およびRが、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基から、それぞれ独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
各MおよびMが、−PO2−、−PO(OR’)O、−SO、および−CO(式中、R’は、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基から選択される)から独立して選択される陰イオン部分を含むように独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
各MおよびMが、
【化11】

および
【化12】

[式中、R、R、R10、およびR11は、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基から、それぞれ独立して選択される]
から選択される陽イオン部分を含むように独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
、R、R10、およびR11が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびシクロヘキシルからそれぞれ独立して選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
各MおよびMがさらに対イオンを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
対イオンが、H、NH、NH(Et)、K、Li、Na、Cs、Ca++、Sr++、Mg++、Ba++、Co++、Mn++、Zn++、Cu++、Pb++、Fe++、Ni++、Al3+、Ce3+、およびLa3+から独立して選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
対イオンが、COCF、CHSO、Cl、Br、およびIから独立して選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
1つまたはそれ以上の対イオンが少なくとも2つの分子によって共有されている、請求項9〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
yが0である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
以下の一般構造式(XIV)もしくは(XV)、またはその塩によって表される、請求項13に記載の化合物:
【化13】

[式中、各RおよびRは、−H、−OH、−NH、−Cl、−Br、−I、−NO、−F、−CF、−CN、−COOH、−CONH、置換されていてもよいC〜Cアルキル、置換されていてもよいC〜Cアセチル、置換されていてもよいC〜C10アリール、置換されていてもよいC〜Cアルキニル、置換されていてもよいC〜Cアルケニル、置換されていてもよいC〜Cアルコキシル、置換されていてもよいC〜Cアルキルアミノ、および以下の式(III)、(IV)、および(V):
【化14】

[式中、R、R、R、R、R、およびzは、それぞれ請求項1において定義したとおりである]
からなる群より独立して選択される]。
【請求項15】
およびRの少なくとも1つが、独立して、式(III)、(IV)または(V)によって表される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
、R、R、およびRが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヒドロキシメチル、およびシクロアルキルからなる群より、それぞれ独立して選択される、請求項14〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
およびRの少なくとも1つが窒素塩と対イオンXとを含み、Xが、F、Cl、Br、I、CHSO、およびR12COOからなる群より選択され、R12が、水素、置換されていてもよいC〜Cアルキル基、置換されていてもよいC〜Cアルケニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキニル基、置換されていてもよいC〜Cアルキル基であって少なくとも1つのハロゲンで置換されているもの、置換されていてもよいC〜Cアルキル基であって少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されているもの、置換されていてもよいC〜Cシクロアルキル基、置換されていてもよいC〜C10アリール基、および置換されていてもよいC〜C16アラルキル基からなる群より選択される、請求項14〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
少なくとも1つの請求項1〜17のいずれか一項に記載のリオトロピック発色団化合物を含むリオトロピック液晶系。
【請求項19】
リオトロピック液晶系が水性である、請求項18に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項20】
リオトロピック液晶系が、水と、水と混和できる有機溶媒との混合物を含む、請求項18に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項21】
リオトロピック液晶系におけるリオトロピック発色団化合物の濃度がリオトロピック液晶系の約5〜約50重量%の範囲内にある、請求項18〜20のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項22】
リオトロピック液晶系の約5重量%までの量の1つまたはそれ以上の界面活性剤をさらに含む、請求項18〜21のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項23】
リオトロピック液晶系の約5重量%までの量の1つまたはそれ以上の可塑剤をさらに含む、請求項18〜22のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項24】
2つまたはそれ以上の、式(I)および/または(II)のリオトロピック発色団化合物の組合せを含み、式(I)の化合物の量が発色団化合物の総量に基づいて約0〜約99重量%の範囲内にあり、式(II)の化合物の量が発色団化合物の総量に基づいて約0〜約99重量%の範囲内にある(ただし、式(I)および/または(II)の化合物の総量はリオトロピック液晶系中の全ての発色団化合物の総重量の少なくとも50%を占めるものとする)、請求項18〜23のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項25】
2つまたはそれ以上の、式(VI)および/または(VII)のリオトロピック発色団化合物の組合せを含み、式(VI)の化合物の量が発色団化合物の総量に基づいて約0〜約99重量%の範囲内にあり、式(VII)の化合物の量が発色団化合物の総量に基づいて約0〜約99重量%の範囲内にある(ただし、式(VI)および/または(VII)の化合物の総量はリオトロピック液晶系中の全ての発色団化合物の総重量の少なくとも50%を占めるものとする)、請求項18〜23のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項26】
一般式(I)または(II)によって表される第1化合物(ここに、一般式(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、一般式(III)によって表され、第1化合物はリオトロピック液晶系の約5〜約50重量%の範囲内の濃度を持つ);
一般式(I)または(II)によって表される第2化合物(ここに、一般式(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、一般式(IV)によって表され、第2化合物はリオトロピック液晶系の約5〜約50重量%の範囲内の濃度を持つ);および
一般式(I)または(II)によって表される第3化合物(ここに、一般式(I)または(II)におけるRおよびRの少なくとも1つは、それぞれ独立して、一般式(V)によって表され、第3化合物はリオトロピック液晶系の約5〜約50重量%の範囲内の濃度を持つ)、
をさらに含む、請求項18〜23のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項27】
液晶の形成に関与するように構成された少なくとも1つの水溶性有機色素または有機化合物をさらに含む、請求項18〜25のいずれか一項に記載のリオトロピック液晶系。
【請求項28】
少なくとも1つの請求項1〜17のいずれか一項に記載のリオトロピック発色団化合物を含む、光学異方性フィルム。
【請求項29】
少なくとも1つのリオトロピック発色団化合物を含むリオトロピック液晶系を基材上に沈着させることによって形成される、請求項28の光学異方性フィルム。
【請求項30】
少なくとも部分的に結晶性である、請求項28〜29のいずれか一項に記載の光学異方性フィルム。
【請求項31】
少なくとも1つの水溶性有機色素をさらに含む、請求項28〜30のいずれか一項に記載の光学異方性フィルム。
【請求項32】
偏光フィルムである、請求項28〜31のいずれか一項に記載の光学異方性フィルム。
【請求項33】
位相遅延フィルムである、請求項28〜32のいずれか一項に記載の光学異方性フィルム。
【請求項34】
少なくとも1つのE型偏光子を含み、該少なくとも1つのE型偏光子が、基材と、少なくとも1つの請求項28〜33のいずれか一項に記載の光学異方性フィルムとを含む、液晶表示装置。
【請求項35】
少なくとも1つの請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物を含み、かつ複数の液晶中間相を含むリオトロピック液晶系を、基材上に適用すること;および
該複数の液晶中間相を配向させること
を含む、光学異方性フィルムを形成させる方法。
【請求項36】
複数の液晶中間相を配向させることが、リオトロピック液晶系を一方向に塗布することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
基材上のリオトロピック液晶系を乾燥させることをさらに含む、請求項35〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
一般構造式(I)および(II)から選択される少なくとも1つの化合物を水または水と有機溶媒との混合物中で混合することによってリオトロピック液晶系を形成させることをさらに含む、請求項35〜37のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−519303(P2012−519303A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552133(P2011−552133)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025264
【国際公開番号】WO2010/099223
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】