説明

苔玉観葉植物およびその製造方法

【課題】斬新で見た目の演出効果に優れた苔玉観葉植物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】苔玉観葉植物10は、苔玉2とこの苔玉2に根付かせた植物体4とを備えた苔玉観葉植物であって、苔玉2の表面が、羊毛材を針で突いて形成されるフェルト皮3で被覆される。苔玉観葉植物10を製造する場合、A.水苔を所定形状に固めて苔玉2を作製する工程、B.苔玉2を羊毛材でくるむ工程、C.羊毛材を針で突いてフェルト状にし、苔玉の表面をフェルト皮3で被覆する工程を順に行うとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を身近に楽しむための苔玉観葉植物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、苔玉に観葉植物を根付かせて観賞するようにした苔玉観葉植物が知られている。苔玉観葉植物は、苔玉と観葉植物の自然な風合いが調和して癒しの効果を高め、インテリアとしても広く販売されている。苔玉を作る場合、例えば土や炭などを水苔で包んで球状に固め、その表面に糸を巻いて苔玉の形が崩れないように保持する。
なお、本発明に関連する先行技術としては、下記特許文献1および2が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−325055号公報
【特許文献2】実用新案登録第3135440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような苔玉観葉植物は、植物体の種類や鉢のサイズ・色などに応じて種々の大きさや形状の苔玉が使用されるが、通常はその外観が盆栽としての範疇に入るものである。このため、苔玉の演出効果に物足りなさを感じることもある。
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、斬新で見た目の演出効果に優れた苔玉観葉植物およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の苔玉観葉植物は、苔玉とこの苔玉に根付かせた植物体とを備えた苔玉観葉植物であって、
前記苔玉の表面が、羊毛材を針で突いて形成されるフェルト皮で被覆されている構成とした。
【0006】
本発明の苔玉観葉植物を製造する場合、下記工程A〜Cを順に行うとよい。
A.水苔を所定形状に固めて苔玉を作製する工程、
B.前記苔玉を羊毛材でくるむ工程、
C.前記羊毛材を針で突いてフェルト状にし、前記苔玉の表面をフェルト皮で被覆する工程。
このような製法によることで、種々の形状および色の苔玉観葉植物を、糸巻きを行うことなく比較的簡単に作ることができる。
【0007】
本発明の苔玉観葉植物によれば、苔玉の表面全体がフェルト皮によって覆われるため、水苔表面がフェルト皮の中に隠れる。すなわち、苔玉部分がフェルト皮によってぬいぐるみのような外観になり、そのフェルト皮の一部から植物体が枝葉を伸ばす格好になる。この結果、苔玉観葉植物の外観が演出効果の高い斬新なものとなり、見る者の購買意欲を刺激するものとなる。
【0008】
本発明において、前記フェルト皮の材料となる羊毛材には各種の色を用いる。例えば青や赤、黄などを採用することでカラフルで見た目のよい苔玉に仕上げることができる。
【0009】
前記苔玉のフェルト表面には、必要に応じてデコレーションを付けてもよい。例えば植物体の枝葉を髪の毛に見立てて、フェルト表面に目や口などのデコレーションを付けると、苔玉観葉植物をキャラクター化することができる。
【0010】
また、本発明によれば、苔玉の表面をフェルト皮で覆うため、球状以外の苔玉を容易に作製することができる。
例えば、前記苔玉の形状および色を各種野菜を模したものにし、植物体の枝葉を野菜の葉に見立てることで、斬新でユニークな苔玉観葉植物に仕上げることができる。本発明は、フェルト皮によって苔玉の形状と色を自在に選択できるため、このような演出が可能となる。
【0011】
本発明において、植物体の種類は問わず、苔玉に根付くものであればいずれの植物であってもよい。特に、アフェランドラ、ゴムノキ類、クロトン、シェフレラ、ギヌラ、パキラ、ポトス、ヘデラ、ホヤ、シッサス、ガジュマル、シンゴニウム、エスキナンサス、ブライダルベール、コルムネアなど挿し木で根付く植物を用いると、苔玉を比較的簡単に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による苔玉観葉植物を示す正面図である。
【図2】同苔玉観葉植物の作製に使用する苔玉の模式図である。
【図3】同苔玉観葉植物の苔玉を羊毛材でくるんだ状態を示す模式図である。
【図4】図3の羊毛材を圧縮する様子を示す模式図である。
【図5】同苔玉観葉植物の苔玉を羊毛材のフェルト皮で被覆した状態を示す模式断面図である。
【図6】図5の苔玉に植物体を根付かせた状態を示す模式断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による苔玉観葉植物を示す模式断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態による苔玉観葉植物を示す模式断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による苔玉観葉植物の変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に実施形態による苔玉観葉植物10を示した。苔玉観葉植物10は、苔玉2の表面がフェルト皮3で被覆される。苔玉2には植物体4が根付いており、フェルト皮3の上部の孔から植物体4の枝葉が外に突き出している。フェルト皮3の表面には「目」を模したデコレーション5,5が取り付けられている。
【0014】
苔玉観葉植物10を作製する場合、例えばまず、適量の水苔6を用意し、この水苔6を団子状に固めて苔玉2を作る(図2参照)。苔玉2の内部には必要に応じて土や炭を入れる。従来は水苔の周りに糸を巻いて苔玉2の形状を保持するが、本実施形態では糸は巻かなくてもよい。
【0015】
次に、この苔玉2を羊毛材7でくるんで綿菓子状の固まりとし、その中心付近に苔玉2をおく(図3参照)。その後、苔玉2の表面に沿って羊毛材7をアップリケ針8で突いてフェルト状に圧縮していく(図4参照)。羊毛材7を十分に圧縮して層状にすると、この層がフェルト皮3となる(図5参照)。
【0016】
なお、フェルト皮3の層の厚さは、2〜8mm程度、望ましくは5mm程度にするとよい。この程度の厚みにすると、苔玉2に含まれる砂や滓などが外に出にくくなり、また、フェルト皮3を通して水分が水苔に容易に浸み込む。
【0017】
苔玉2の表面にフェルト皮3を形成した後、フェルト皮3の上部にキリで孔を空け(図6参照)、この孔に植物体4を挿し木する。適度に水遣りを行って植物体4が苔玉2に根付いたら、フェルト皮3の表面に接着剤などでデコレーション5,5を付ける。
なお、上記手順については、デコレーション5,5をフェルト皮3に付けてから植物体4を挿し木してもよい。
【0018】
デコレーション5,5は、プラスチックや厚紙などで予め作製したものを用いる。フェルト皮3に糸でデコレーション5,5を縫い付けてもよい。
【0019】
苔玉観葉植物10によれば、苔玉2の表面がフェルト皮3で覆われるため、その外観がぬいぐるみのような柔らかな質感になる。一見すると、観葉植物とは認識できず、よく見るとフェルト皮3から植物体4が伸びているのが判る。このような斬新な外観によって演出効果を高めて見る者の購入意欲を刺激することができる。
【0020】
苔玉2に水遣りを続けると、植物体4が成長し、根がフェルト皮3から外に突き出るようになる。このように時期になった後は、適当な大きさの鉢に植え替えてさらに植物体4を大きく育てることができる。植え替えの際には、フェルト皮3を付けたままでも、フェルト皮3を剥がしてもよく、作業に手間はかからない。
【0021】
第1実施形態では、苔玉2を球状としたが、野菜を模した形状を採用すると、さらに演出効果を高めることができる。
例えば図7に示す第2実施形態では、ナスの形状を模して苔玉2を形成している。フェルト皮3には紫色の羊毛材を使用し、苔玉2の表面が紫色のフェルト皮3で覆われるようにしている。フェルト皮3のヘタに当たる部分から植物体4の枝葉を突き出させるようにし、植物全体として、見る者にナスをイメージさせるようにしている。
【0022】
図8の第3実施形態は、苔玉2をニンジンの形状にしたものである。フェルト皮3にはオレンジ色の羊毛材を使用し、ニンジンの葉に当たる部分に植物体4の枝葉を突き出させるようにしている。
【0023】
このような第2実施形態および第3実施形態によれば、野菜を連想させる観葉植物とすることで、さらに演出効果を高めることができる。もちろん野菜形状のフェルト表面に目や口などのデコレーションを施してもよい。
【0024】
以上実施形態を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限らず種々の変更が可能である。例えば苔玉の形状は、前述の形状に限らず、立方体、直方体、三角錐形、ハート形などの形状に変更してもよい。
野菜形状は、イモやキュウリ、トマトなどを採用してもよい。また、野菜に限定することなく、リンゴやバナナ、みかんなど各種果物の形状および色を模した苔玉観葉植物にすることもできる。
【0025】
また、図9に示すように、苔玉2の表面全体にポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレンなどの樹脂からなる不織布Sの層を設けてもよい。この場合、苔玉2を所定形状に固めてその外側を不織布Sのシートでくるんでテープ貼りする。その後、不織布Sの外側にフェルト皮3を形成する。
このように不織布Sの層を設けることで、苔玉2の形が整ってフェルト皮3の形成時の作業効率が向上する。仮に綿布で苔玉2をくるんで形を整える場合には、綿布に針が通りにくいため、作業性が悪くなるおそれがあるが、不織布Sには十分な隙間が確保されるため、針の通りが悪くなるようなこともない。
【符号の説明】
【0026】
2 苔玉
3 フェルト皮
4 植物体
5,5 デコレーション
6 水苔
7 羊毛材
8 アップリケ針
10,20,30 苔玉観葉植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苔玉とこの苔玉に根付かせた植物体とを備えた苔玉観葉植物であって、
前記苔玉の表面が、羊毛材を針で突いて形成されるフェルト皮で被覆されていることを特徴とする苔玉観葉植物。
【請求項2】
前記苔玉の形状および前記フェルト皮の色が野菜また果物を模した形状および色になっている、請求項1記載の苔玉観葉植物。
【請求項3】
請求項1または2記載の苔玉観葉植物の製造方法であって、
A.水苔を所定形状に固めて苔玉を作製する工程、
B.前記苔玉を羊毛材でくるむ工程、
C.前記羊毛材を針で突いてフェルト状にし、前記苔玉の表面をフェルト皮で被覆する工程を含む苔玉観葉植物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−246479(P2010−246479A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100558(P2009−100558)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(305000758)
【Fターム(参考)】