説明

苗植機

【課題】本発明は、苗植機の昇降制御やローリング制御を簡単な構成として傾斜検出の精度や感度の調節を容易にすることを課題とする。
【解決手段】左右車輪10を共に同方向に上下作動させて機体の上下高さを制御する昇降アクチュエータ15と片側の車輪10の高さを変更して機体の左右傾斜を制御するローリングアクチュエータ17と上下作動して圃場に苗を植付ける左右苗植付ホッパー3を設けた苗植機において、左右の植付圃場面に接地して機体に対する圃場の高さを検出する右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lを設け、この右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lにて昇降アクチュエータ15を作動させ、左右傾斜センサ35によって機体の左右傾きを検出してローリングアクチュエータ17を作動させる車体姿勢制御装置を設け、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lが共に接地するようにローリングアクチュエータ17を制御した苗植機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体の姿勢を制御する姿勢制御装置を備えた苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
左右の走行車輪を有する左右車輪ケースを、接地する昇降センサの高さ検出によって上下動して車体の地上高を一定に維持するように昇降制御させると共に、傾斜センサによる車体の左右傾斜の検出によって、片側の車輪ケースを上下動して車体の左右傾斜を一定に維持するようにローリング制御させる姿勢制御装置の技術が知られている。
【特許文献1】特開2002−46661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
苗植機の昇降制御やローリング制御には、車体の圃場面からの上下高さを検出する昇降センサや、左右方向の傾斜を検出する傾斜センサを設けている。そして、この傾斜センサとしては、振子構成のセンサが一般的に知られているが、この傾斜検出の精度や感度の調節が難しく、また、制御構成が複雑となるものであった。
【0004】
そこで、本発明は、苗植機の昇降制御やローリング制御を簡単な構成として傾斜検出の精度や感度の調節を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、左右車輪10を共に同方向に上下作動させて機体の上下高さを制御する昇降アクチュエータ15と片側の車輪10の高さを変更して機体の左右傾斜を制御するローリングアクチュエータ17と上下作動して圃場に苗を植付ける左右苗植付ホッパー3を設けた苗植機において、左右の植付圃場面に接地して機体に対する圃場の高さを検出する右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lを設け、この右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lにて昇降アクチュエータ15を作動させ、左右傾斜センサ35によって機体の左右傾きを検出してローリングアクチュエータ17を作動させる車体姿勢制御装置を設け、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lが共に接地するようにローリングアクチュエータ17を制御した苗植機とした。
【0006】
この請求項1に記載の構成によって、圃場面に接地して機体に対する圃場の高さを検出する右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lにて昇降アクチュエータ15を作動させて左右苗植付ホッパー3を植え付ける圃場面に対して所望の高さになるように昇降制御すると共に、左右傾斜センサ35にて機体の左右傾きを検出してローリングアクチュエータ17を作動させて圃場面に対する機体の左右方向での高さを所定高さに維持して、左右苗植付ホッパー3の圃場面からの高さを適正に保持して、苗を適正な植付深さで姿勢良く植付ける。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの圃場接地部5RS,5LSを平板として該接地部5RS,5LSで植付け面を均平作用すべくした請求項1記載の苗植機とした。
【0008】
この構成で、請求項1記載の作用に加えて、植付け面を均平にする鎮圧装置を格別に設けなくても、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lによって植付け面を均平にすることができる。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、左右傾斜センサ35の傾斜角検出を制限する左右傾斜制限手段を設けた請求項1または請求項2記載の苗植機とした。
この構成で、請求項1または請求項2記載の作用に加えて、圃場の部分的凹凸による機体の左右傾斜を制限して機体の安定走行を維持できる。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明は、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lと左右傾斜センサ35で適正な昇降制御及びローリング制御が行え、安定した車体姿勢制御を行わせることができ、苗を適正な植付深さで姿勢良く植付ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の一形態の2条植え苗植機を以下に説明する。尚、以下の説明では、操縦ハンドル8を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン6を配置した側を前とする。そして、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者の右手側を右とし、左手側を左とする。
【0012】
車体2は、前部にエンジン6、及びミッションケース7を配置して、後端部に操縦ハンドル8を設け、このミッションケース7の両側に張出する左右アクスルハウジング9周りに回動する回動筒部9aに各々上下揺動する左右車輪ケース1を設け、この車輪ケース1の後端部に設けた車軸11に車輪10を軸装して、これら左右の車輪10と、車体2前端部に設けた前輪軸12に軸装した左右の前輪13とによって走行する構成にしている。尚、エンジン6の左側面部には該エンジン6の動力で駆動する油圧ポンプ6aが設けられている。また、エンジン6の上側には燃料タンク6bが設けられ、その上部をボンネット6cが覆っている。また、7aは、ミッションケース7の左右両側に基部が固定された左右回動筒部9aを回動自在に支持する左右支持フレームである。
【0013】
車体2には機体に対し左右の車輪10を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニットBUから後方に向けて昇降アクチュエータとしての昇降油圧シリンダ15が設けられ、該昇降油圧シリンダ15のピストンロッドの先端部に機体左右方向に長いアームとしての連動アーム16が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッドは、前部が油圧バルブユニットBUに支持され後部が車体2に固着された取付部材2aに支持されたガイド軸2bに沿って摺動するようになっている。連動アーム16の左右両端部と、回動筒部9aに固着した左右ハウジングアーム14とが、連結体としての左右ロッド18を介して連結されている。左側の左ロッド18は、ローリングシリンダ17が組み込まれており、該ローリングシリンダ17を伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0014】
昇降油圧シリンダ15及びローリングシリンダ17は、各々前記油圧ポンプ6aから供給される作動油を油圧バルブユニットBU内の昇降制御バルブ49とローリング制御バルブ48とで制御して作動させられる。昇降油圧シリンダ15を伸縮作動させると、左右車輪10が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ17を伸縮作動させると、左車輪10が機体に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0015】
左右支持フレーム7aの後側には、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lを設け、この右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lが上下回動すると、その回動を連結ロッド5dにて昇降制御バルブ49に伝え、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの角度が元に戻る方向に昇降油圧シリンダ15を作動させる(昇降制御)。これにより、畝Uの上面(圃場面)から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝Uの高さ変更に係わらず常に苗の植付深さが一定になるように制御され、植付後の苗の成育が良い。
【0016】
即ち、一方のハウジングアーム14と連動アーム16の側端部との間を連結する一側部の前記ローリングシリンダ17の伸縮によって、この側の車輪10を、他側部の前記ロッド18によって連結された側の車輪10に対して昇降させて、車体2をローリングさせて、車体2の左右傾斜を水平にしたり、土壌面に対して平行状にしたりすることができ、車体2の左右傾斜姿勢を制御することができる。そして、このような昇降制御は、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの畝Uの高さ検出により行い、ローリング制御は、左右傾斜センサ35によって左右傾斜状態を検出して行うものである。
【0017】
右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lは、上端部に横方向の長穴5aを形成し、この上端部を板状の取付プレート50の左右端部に重ねて締付ボルト5bで取り付けて、左右の取付位置を調整可能にしている。そして、取付プレート50の上に溶接した支持プレート51を車体2に横架する支持軸52に回動可能に枢支している。支持プレート51の取付プレート50に対する位置は、右昇降センサ5R側に偏り、取付プレート50の右昇降センサ側幅Bを広く左昇降センサ側幅Aを狭くして剛性を変え、右昇降センサ5Rの上下動が直接支持プレート51の上下回動に影響し、左昇降センサ5Lの上下動は取付プレート50の幅の狭い部分が捻じれて支持プレート51の上下回動にあまり影響しないようにしている。従って、前記連結ロッド5dが支持プレート51に取り付けられているので、取付プレート50の上下回動で昇降油圧シリンダ15を作動することになる。
【0018】
また、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lは、板体で、上端部の近くを斜め(進行方向45°)に折り曲げ、さらに下端部を同じ角度で斜めに折り曲げて接地面5RS,5LSを形成し、この接地面5RS,5LSの後端5RE,5LEを同じ斜め方向に折り曲げて立ち上げている。この右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lは、平面的にみると左右平行になっている。
【0019】
右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの接地面5RS,5LSは、接地して圃場面までの機体高さを測ると共に植付け面を平らにする均平作用もある。この接地面5RS,5LSは内側に傾斜していることで通常は接地面の土を中央に寄せる作用があるが、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lを振り替えて取り付けると、接地面の土を削って外へ押し出すように作用する。
【0020】
なお、油圧バルブユニットBU内のローリング制御バルブ48は車体2に設けた左右傾斜センサ35による畝U上面の左右傾斜検出に連動して切り替わるようになっており、車体2が左右に傾斜するとローリングシリンダ17が適宜作動し、車体2を左右水平に戻すように制御する。左右傾斜センサ35の中立位置はリモートワイヤ53で連結した操作パネル8aに設けた中立調整レバー54で変更でき、左右の傾き検出制限も行える。従って、中立調整レバー54で左右傾き検出制限を行うと、圃場面の部分的な凹凸では車体2の傾きが変わらずに右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの接地面5RS,5LSで部分的な凹凸が均されるようになる。
【0021】
図7には、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの取付構成の別実施例を示している。
車体2に固定して設ける第二支持軸57から前方へ向けて設けたアーム58の先端に枢支軸60で支持枠59を設け、この支持枠59の上端にローリング制御バルブ48に連結する連結ロッド5dを連結する。支持枠59には第一ギヤ62と第二ギヤ63を噛み合わせて左右に左六角軸61と右六角軸69を突出させている。左六角軸61には左昇降センサ5Lの左六角ボス64を外嵌して左締付ボルト66で固定し、右六角軸69には右昇降センサ5Rの右六角ボス65を外嵌して右締付ボルト67で固定している。左六角軸61と右六角軸69は引張スプリング68で右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lが平行になるように引っ張っている。
【0022】
従って、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lに均等な上昇圧力が加わっている場合は左右の高さが同じで、例えば、右昇降センサ5Rの接地高さが高くて上昇圧力が高くなると左昇降センサ5Lを下方へ押し下げるように作用するので、右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lが左右の凹凸変化に関わらず常に接地するようになる。
【0023】
右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの後側で苗植付ホッパー3の後側位置には鎮圧具4を設け、機体左右方向に2つ並列して配置した苗植付ホッパー3の昇降によって圃場に植付けた苗の左右側方をこの鎮圧具4によって鎮圧し、苗の植付けられた姿勢を安定した状態とする。
【0024】
前記車体2の後部に取付ブラケット38によって支持する支持軸40を設け、この支持軸40へ鎮圧アーム41の前端に溶接固定したアームボス42を勘合し、鎮圧アーム41の後端に左右鎮圧具4を設けている。このアームボス42をヘアピン43の差込位置変更によって、横軸方向へ移動固定可能に設け、左右鎮圧具4の鎮圧位置を左右に移動調節することができる。
【0025】
各鎮圧アーム41の後端部を背面視で門形状のリヤフレーム44に形成して、このリヤフレーム44の左右両側部に前記左右一対の鎮圧具(鎮圧輪)4を配置して、支軸32で回転自在に支持している。このリヤフレーム44は、畝Uに植付けた苗の上部を左右に跨いで前進方向へ移動することができる構成となっている。又、このリヤフレーム44上には支持アーム46によって、複数個のバランスウエイト45を嵌合支持して、バランスウエイト45の装着数を変えて鎮圧圧力を調整できる構成としている。
【0026】
また、支持軸40の下方に受け杆55を側枠56で設け、前記左右車輪ケース1の非苗植位置への揺動(左右車輪10を最下動させて機体を最も上昇させた状態)によって、受け杆55が左右鎮圧アーム41を受けて、左右両鎮圧具4を非接地高さへ上昇するようにしている。即ち、機体を高く上昇させるときは、左右車輪ケース1を最下動させて車体2を非苗植姿勢に上昇させ、左右鎮圧具4が非作用姿勢位置へ連動して上昇され、車体2の走行旋回の邪魔にならない状態となり、容易に機体の旋回が行える。
【0027】
操縦ハンドル8の基部には操作パネル8aが設けられ、該操作パネル8aに、昇降制御バルブ49を手動操作して機体を手動にて上下動させると共に植付部の駆動を止める植付昇降レバー8bとメインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー8cが設けられている。
【0028】
前記苗植付ホッパー3は、左右一定間隔位置に配置の二条植え構成として、左右車輪10間の後側幅内に配置している。車体2の後部には、ターンテーブル構成に複数の苗カップ19を連接して回転搬送する苗供給装置20を設け、この苗供給装置20の機体後側の下側に苗植付ホッパー3を左右に2つ配置している。この苗カップ19を左右方向へ回転することによって、車体2上部の補助苗受台21に予め搭載されている苗トレイから苗を取出しながら各苗カップ19へ供給する。この各苗カップ19が回転して苗植付ホッパー3の上側に位置したときは、カップ底部のシャッタが開かれて、収容していた苗を下側の苗植付ホッパー3に落下供給する構成である。
【0029】
この苗植付ホッパー3は、苗植ブラケット22に対して左右へ開閉回動可能に設けられて、上側に前記苗カップ19から供給される苗を落下案内するホッパー23を有し、苗植伝動ケース24に対して平行上下リンクアーム25,26を介して昇降駆動する構成としている。前記苗植伝動ケース24は車体2のフレーム部に固着して、前記ミッションケース7部から伝動構成される。この伝動機構の一部によって回転されるクランクアーム軸27によってロッド28を介して上リンクアーム25が昇降回動されて、苗植付ホッパー3を上下方向に植付軌跡Pにて植付作動する。
【0030】
前記苗植ブラケット22のレバー29と下リンクアーク26の基端部に形成のアーム30との間はワイヤ31で連結して、苗植付ホッパー3の昇降に伴って、この苗植付ホッパー3を開閉するものである。前記クランクアーム軸27の回転によって苗植付ホッパー3を略楕円形状の植付軌跡Pを描いて昇降させると共に、この上死点直前位置から下降する行程ではこの苗植付ホッパー3を閉鎖状態とし、最下降位置で開き上昇行程は開いたままである。
【0031】
左右苗植付ホッパー3は、苗植伝動ケース24に装着した位置から大きく左右外側方に変位した位置になるように構成している。即ち、左苗植付ホッパー3は、苗植伝動ケース24に対して上下リンクアーム25,26を介して昇降駆動する構成としているが、該上下リンクアーム25,26は苗植伝動ケース24に装着された基部から機体左外側に向けて折り曲げた構成としており、該上下リンクアーム25,26の先端部に装着される左苗植付ホッパー3の前方には空間部Kが構成された構造となっている。後述の左車輪10の左右位置調節(トレッド調節)により、この空間部Kに左車輪10を位置させることができ、左苗植付位置のすぐ近傍に左車輪10を配置することができる。同様に、右苗植付ホッパー3は、苗植伝動ケース24に対して上下リンクアーム25,26を介して昇降駆動する構成としているが、該上下リンクアーム25,26は苗植伝動ケース24に装着された基部から機体右外側に向けて折り曲げた構成としており、該上下リンクアーム25,26の先端部に装着される右苗植付ホッパー3の前方には空間部Kが構成された構造となっている。後述の右車輪10の左右位置調節(トレッド調節)により、この空間部Kに右車輪10を位置させることができ、右苗植付位置のすぐ近傍に右車輪10を配置することができる。従って、畝Uの左右端のぎりぎりの位置に苗を植付けが行える。
【0032】
次に、左右車輪10の左右位置調節(トレッド調節)の構成について説明する。
ミッションケース7の両側に張出する左右アクスルハウジング9周りに回動する左右回動筒部9aに各々上下揺動する左右車輪ケース1を設け、この左右車輪ケース1の後端部に各々設けた左右車軸11に車輪10を設けているが、左右回動筒部9aの左右両端部側の内部には各々左右車輪ケース1の基部に各々固定した左右移動筒体9cが嵌入支持されており、左右取手付きボルト9dにて左右移動を固定している。左右車輪10の左右位置調節(トレッド調節)を行う場合には、左右取手付きボルト9dを緩めて、左右回動筒部9aに対して左右移動筒体9cを機体左右方向に移動させて左右車輪10の位置調節を行い、再び左右取手付きボルト9dを締めて左右回動筒部9aに左右移動筒体9cを固定する。このようにして、左右車輪10は、自由にその左右位置調節(トレッド調節)を行うことができる。図5に示すように、車輪10を車輪ケース1の内側に付ければトレッドは最短となる。
【0033】
ここで、一畝に往復四条植えを行う例を説明すると、左車輪10は左車輪ケース1の内側に装着して機体中心からの距離を450mmとし(このとき、左車輪10は左苗植付ホッパー3の平行リンクアーム25、26前方の空間部Kに位置させて、左苗植付位置のすぐ近傍に左車輪10は配置される)、右車輪10は機体中心からの距離を725mmに設定する。そして、左右植付ホッパー3の植付位置及び左右鎮圧具4の苗鎮圧位置は、機体中心から250mmに設定する。そして、左右車輪10が畝Uを跨がって各々畝溝を走行するようにして、各部を駆動し往路行程で一条目と三条目を植付け、復路行程で二条目と四条目を植付けて、一畝に往復で四条を植付けることができる。
【0034】
左右苗植付ホッパー3の後方には、各々、これら左右苗植付ホッパー3によって圃場面に植付けられた苗の左右側方を鎮圧及び覆土する左右鎮圧具4を設ける。この鎮圧具4は、各苗植付位置に対して左右一対の、左右対称状構成とし、支軸32の周りに回転自在に構成して、前側及び上側を左右に開くように傾斜させた構成としている。尚、鎮圧具4の前側の開き角度がボルト4aを緩めて調節できる構成としており、圃場条件や苗条件に応じて、鎮圧具4の圃場に植付けた苗に対する土寄せ量を変更できるようにして、圃場の条件や色々な苗に対応できるようにしている。
【0035】
前記車体2には座席33や、ステップ34等を配置して、作業者が搭乗して補助苗受台21の苗を苗供給装置20の苗カップ19へ補給することができる構成としている。
70はU字状に形成したスタンドであって、回動支持ピン71と引張バネ72によって、下方に垂下した状態で機体を支持する作用状態と機体後方に向けて回動上昇させた収納状態とに切替えられる構成となっている。
【0036】
左右の前輪13の間となる機体の前端部には圃場面に接地して畝Uの終端を検出する畝終端センサ73を設け、該畝終端センサ73は下方に向けてバネで付勢した状態となっており、機体の前進により畝Uのないところに到達して畝終端センサ73がバネの付勢力で下動して、畝Uの終端に到達したことを検出する構成となっている。この畝終端センサ73による畝Uの終端の検出に基づいて、主クラッチを自動的に切って左右の車輪10の駆動と左右苗植付ホッパー3並びに苗供給装置20の駆動を停止し、機体を停止させると共に、警報(例えばブザー等の警音)を出して作業者に告知する。これにより、座席33に座る作業者は、機体の進行方向に対して後ろ向きとなり、苗補給作業に集中しているため機体の前方を確認しにくく、機体が畝の終端に達したことに気づかず、周囲の構造物への衝突等の事故を発生させるおそれがあるが、前記畝終端センサ73により畝の終端で機体を自動停止すると共に警報で畝の終端に達したことを告知するため、安全に作業が行え、また機体の前方の状況及び畝の終端の位置を気にせずに苗供給装置20への苗補給作業を集中して行え、植付作業能率が向上する。
【0037】
この畝終端センサ73は、機体の左右方向右側位置で右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの接地面5RS,5LS及び右苗植付ホッパー3が苗を植付ける位置及び右鎮圧具4の前方に配置されている。即ち、畝終端センサ73及び右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの接地面5RS,5LS及び右苗植付ホッパー3が苗を植付ける位置及び右鎮圧具4は、機体左側に配置されたローリングシリンダ17とは機体左右方向で反対側の機体右側に機体前後方向で一直線上に配置された構成となっている。従って、ローリングシリンダ17を配置した側と機体左右方向で反対側の右側(機体のローリング制御で上下動する左車輪10と機体左右方向で反対側の右側)に畝終端センサ73及び右昇降センサ5Rと左昇降センサ5Lの接地面5RS,5LS及び右苗植付ホッパー3が苗を植付ける位置及び右鎮圧具4を機体前後方向で一直線上に配置することにより、ローリング制御時に機体の右側は大きく上下動しないので、畝終端センサ73にて正確な畝Uの終端を検出でき、昇降センサ5にて正確な圃場面の検出が行えて、ローリング制御にあまり影響を受けずに正確な畝Uの終端検出による各部停止や報知が行え、また、適正な機体の昇降制御が行えて、適切な苗植付け深さで適切に苗の植付け作業が行える。尚、畝終端センサ73も他の部材と同様に、ボルト73aを緩めて畝終端センサ73の基部を機体左右方向に移動調節して再びボルト73aにて固定することにより、機体左右方向に位置調節をすることができる。
【0038】
図8は、前記車輪10の代わりに使用されるクローラ走行装置80の実施例で、クローラベルト74を前転輪75と後転輪76及び中間の駆動輪77に巻きかけて、前転輪75と駆動輪77との間は円弧状の前ガイド体78で、後転輪76と駆動輪77との間は直線状の後ガイド体79で、側面視で下向き三角状にしている。このクローラ走行装置80では、機体の後方を押し下げて旋回する場合にクローラベルト74の後ガイド体79が接地して接地面積が広がり、安定した旋回が行える効果がある。
【0039】
図9(a)は、別実施例を示す第二クローラ走行装置85を示している。上部の第二駆動輪81と下部の第二前転輪82と第二後転輪83との間に第二クローラベルト84を巻きかけて側面視で不等辺三角形に構成している。この第二クローラ走行装置85では、第二駆動輪81を持ち上げると、(b)図の如く、第二後転輪83側が接地して接地面積を最小とし、第二駆動輪81を押し下げると、(c)図の如く、第二駆動輪81と第二前転輪82の間の第二クローラベルト84が接地して接地面積が通常よりも狭くなって旋回性が良くなる。
【0040】
図10は、別実施例を示す第三クローラ走行装置86を示している。上部の第三駆動輪87と下部の第三前転輪89と第三後転輪88との間に第三クローラベルト92を巻きかけて側面視で不等辺三角形に構成している。第三駆動輪87と第三前転輪89は伸縮可能な第一フレーム93で連結して第一シリンダ91で間隔を変更し、第一フレーム93に対して伸縮可能な第二フレーム94で第三後転輪88を支持し、第二シリンダ90で間隔を変更する。
【0041】
この第三クローラ走行装置86で旋回する場合には、第一シリンダ91を伸ばし第二シリンダ90を縮める。すると、第三クローラベルト92の接地面積が狭くなって旋回性が良くなる。
【0042】
図11は、第四クローラベルト96の内側に畝Uの側面に接触する円弧状のガイド板95を設けた実施例で、畝Uに沿って走行する作業走行時に畝追従性が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】昇降センサ部分の斜視図である。
【図2】苗植機全体の側面図である。
【図3】苗植機全体の平面図である。
【図4】油圧回路図である。
【図5】部分拡大平面図である。
【図6】苗植付ホッパーの斜視図である。
【図7】昇降センサの別実施例の拡大斜視図である。
【図8】クローラ走行装置の側面図である。
【図9】別実施例のクローラ走行装置の側面図である。
【図10】さらに別実施例のクローラ走行装置の側面図である。
【図11】別実施例のクローラ走行装置の正面図である。
【符号の説明】
【0044】
3 左右苗植付ホッパー
5R 右昇降センサ
5RS 右昇降センサの圃場接地部
5L 左昇降センサ
5LS 左昇降センサの圃場接地部
10 左右車輪
15 昇降アクチュエータ(昇降油圧シリンダ)
17 ローリングアクチュエータ(ローリングシリンダ)
35 左右傾斜センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右車輪(10)を共に同方向に上下作動させて機体の上下高さを制御する昇降アクチュエータ(15)と片側の車輪(10)の高さを変更して機体の左右傾斜を制御するローリングアクチュエータ(17)と上下作動して圃場に苗を植付ける左右苗植付ホッパー(3)を設けた苗植機において、左右の植付圃場面に接地して機体に対する圃場の高さを検出する右昇降センサ(5R)と左昇降センサ(5L)を設け、この右昇降センサ(5R)と左昇降センサ(5L)にて昇降アクチュエータ(15)を作動させ、左右傾斜センサ(35)によって機体の左右傾きを検出してローリングアクチュエータ(17)を作動させる車体姿勢制御装置を設け、右昇降センサ(5R)と左昇降センサ(5L)が共に接地するようにローリングアクチュエータ(17)を制御した苗植機。
【請求項2】
右昇降センサ(5R)と左昇降センサ(5L)の圃場接地部(5RS,5LS)を平板として該接地部(5RS,5LS)で植付け面を均平作用すべくしたことを特徴とする請求項1記載の苗植機。
【請求項3】
左右傾斜センサ(35)の傾斜角検出を制限する左右傾斜制限手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の苗植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−75107(P2010−75107A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248405(P2008−248405)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】