茶葉抽出液の製造方法、茶葉抽出液、及び茶飲料
【課題】茶葉から高濃度の可溶性固形分を抽出する酵素分解抽出処理を用いた茶葉抽出液の製造方法、およびこの茶葉抽出液を用いた茶飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペプチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉とを混合し、茶葉を酵素分解抽出処理する。さらに、前記酵素群がアミラーゼあるいはプロテアーゼを含有する茶葉抽出液の製造方法。
【解決手段】セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペプチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉とを混合し、茶葉を酵素分解抽出処理する。さらに、前記酵素群がアミラーゼあるいはプロテアーゼを含有する茶葉抽出液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼飲料用の缶およびペットボトルや粉末等の茶飲料に用いられる茶葉抽出液、及びその製造方法、並びに得られた茶葉抽出液を含有する茶飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、茶飲料は、茶葉を50〜90℃の高温にて温水抽出を行い、得られた抽出液を用いて製造されていた。しかしながら、近年、茶葉からの抽出効率を高めかつ香りや味に優れた抽出液を得るために、50℃以下の低温で酵素分解抽出処理を行い茶葉からの抽出固形分濃度を高める方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、茶葉に、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、及びプロトペクチナーゼを同時に作用させ、抽出固形分濃度を高める方法が提案されている。また、特許文献2においても茶葉に、プロテアーゼ、及びタンナーゼを同時に添加して、タンニンを分解し、渋味の少ない茶類エキスを製造する方法が提案されており、本法ではプロテアーゼを用いるので、抽出固形分濃度が増加することが期待される。しかしながら、これらの方法によっても、茶葉からの抽出固形分濃度は十分ではなく、より良い方法が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−210110号
【特許文献2】特開2003−144049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より高い濃度の固形分を茶葉から抽出する酵素分解抽出処理を用いた茶葉抽出液の製造方法、茶葉抽出液、およびこの茶葉抽出液を含有する茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を鑑みて発明者等が鋭意検討した結果、植物細胞の細胞壁を分解する酵素とタンナーゼとを茶葉に作用させることで、より茶葉からの可溶性固形分濃度が向上することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉とを混合し、茶葉を酵素分解抽出処理することを特徴とする、茶葉抽出液の製造方法に存する(請求項1)。
【0008】
このとき、前記酵素群が、さらにアミラーゼを含有することが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、前記酵素群が、さらにプロテアーゼを含有することが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明の別の要旨は、上記の茶葉抽出液の製造方法により得られたことを特徴とする茶葉抽出液に存する(請求項4)。
【0011】
本発明の別の要旨は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉からの抽出物とを含有することを特徴とする、茶葉抽出液に存する(請求項5)。
【0012】
本発明の別の要旨は、上記の茶葉抽出液を含有することを特徴とする、茶飲料に存する(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、得られる茶葉抽出液中の可溶性固形分の濃度を高めることができる。これにより短い時間でも茶葉からの抽出を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
【0015】
ここで、本発明において「Brix」とは、茶葉からの抽出操作で得られる茶葉抽出液に対する、可溶性固形分の重量比であり、可溶性固形分の濃度を表す指標である。本発明中では百分率で表現する。
【0016】
[1.茶葉抽出液の製造方法]
本発明の茶葉抽出液の製造方法は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉とを混合し、茶葉を酵素分解抽出処理するものである。
【0017】
茶葉は植物細胞で構成されており、その細胞壁を分解する作用を示す酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及びペクチナーゼ)と、タンナーゼとを併用して茶葉に作用させることで、従来の茶葉の酵素分解抽出処理と比較して、効率的に酵素分解することが可能となる。その結果、得られる茶葉抽出液中の可溶性固形分の抽出濃度(Brix)を高めることができる。
【0018】
また、上記の酵素群の至適温度近傍の40℃程度で茶葉から抽出できるため、高温の温水で抽出する従来方法と比べても、茶葉中の香り成分を逃すことなく抽出することができる。
【0019】
以下、このような茶葉抽出液の製造方法について詳細に説明する。
【0020】
<1−1.茶葉抽出液の原料>
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、茶葉、酵素群、水を用いて行うことができる。また、必要により、添加剤を用いてもよい。
【0021】
(1−1−1.茶葉)
本発明に係る茶葉は、茶樹(Camellia sinensis)の葉や茎である。収穫した後に、発酵などの加工したものであってもよい。茶葉は、発酵状態により発酵茶、半発酵茶、及び不発酵茶等に分けることができるが、本発明においては、これらのいかなる発酵状態の茶葉も用いることが可能である。具体例としては、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、てん茶等の蒸し製の不発酵茶;嬉野茶、青柳茶、各種中国茶等の釜炒茶等の不発酵茶;包種茶、鉄観音茶、ウーロン茶等の半発酵茶;紅茶、阿波番茶、碁石茶、プアール茶などの発酵茶を挙げることができる。更には、香草や薬草なども本発明に係る茶葉に含む。本発明は、細胞内にタンニンを含有する植物からの抽出に顕著な効果を奏するため、タンニンを多く含有する茶葉が好適である。
【0022】
本発明においては、中でも収穫後速やかに蒸気又は火熱で熱する作業を行うことにより、茶葉に存在する酵素を失活させ、成分の酸化が抑制された茶葉を用いることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる緑茶の茶葉としては、一般的に緑茶と称される茶葉であれば、いかなるものであっても用いることが可能である。具体的には、玉露、てん茶、かぶせ茶、煎茶、番茶などを挙げることができ、これらをブレンドした茶でもよい。また、必要に応じて、副原料として玄米や各種植物の葉、茎、根などをブレンドしたものを用いてもよい。
【0024】
本発明の茶葉抽出液の製造方法において、用いる茶葉の種類、その組み合わせ、量などは、要求される嗜好性等により異なり限定されるものではない。
具体例として、一般的に抽出用の水に対し、茶葉が通常1.0重量%以上、好ましくは3.0重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上、また、通常20.0重量%以下、好ましくは15.0重量%以下、さらに好ましくは10.0重量%以下である。水に対する茶葉の量がこの範囲であると抽出液と残存茶葉を分離しやすいため好ましい。
【0025】
(1−1−2.酵素群)
本発明に係る酵素は、植物細胞の細胞壁分解酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上の酵素、及びペクチナーゼ)と、タンニン分解酵素(タンナーゼ)とを用いる。本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、細胞壁分解酵素とタンニン分解酵素だけでなく、タンパク質分解酵素やデンプン分解酵素などを併用すると、Brixが向上し好ましい。具体例としては、デンプン分解酵素としてはアミラーゼ、タンパク質分解酵素としてはプロテアーゼが挙げられる。また、これ以外の酵素をさらに併用することもできる。これらの酵素の併用比率に制限はない。以下、これらの各酵素について詳細に説明する。
【0026】
なお、本発明に係る酵素分解抽出処理時に用いる酵素群の量は、酵素群全体の量として抽出用の水に対して、通常0.03重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常2.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対する酵素の量がこの範囲であると高いBrixを得られるため好ましい。
【0027】
(細胞壁分解酵素)
本発明で用いられる細胞壁分解酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上の酵素と、ペクチナーゼである。
【0028】
・セルラーゼ
本発明に係るセルラーゼは、セルロースのβ−1,4−グリコシド結合を加水分解する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてセルラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているセルラーゼとしては、例えば「スクラーゼC」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0029】
本発明におけるセルラーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するセルラーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0030】
・ヘミセルラーゼ
本発明に係るヘミセルラーゼは、ヘミセルロースのグリコシド結合を加水分解する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてヘミセルラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているヘミセルラーゼとしては、例えば「スクラーゼX」「スクラーゼA」(ともに三菱化学フーズ社製)がある。
【0031】
本発明におけるヘミセルラーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するヘミセルラーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0032】
・ペクチナーゼ
本発明に係るペクチナーゼは、ポリガラクツロン酸のα−1,4−グリコシド結合を加水分解する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてペクチナーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているペクチナーゼとしては、例えば「スクラーゼN」「スクラーゼS」「スクラーゼA」(いずれも三菱化学フーズ社製)がある。
【0033】
本発明におけるペクチナーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するペクチナーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0034】
(タンニン分解酵素)
・タンナーゼ
本発明に係るタンナーゼ(タンニン分解酵素)は、タンニンを加水分解する酵素であり、加水分解性タンニンに幅広く作用するものと考えられている。本発明においては、一般に食品業界においてタンナーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているタンナーゼとしては、例えば「タンナーゼ」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0035】
本発明におけるタンナーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.5重量%以下、好ましくは1.3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するタンナーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0036】
本発明の茶葉抽出液の製造方法において、細胞壁分解酵素とタンナーゼとを併用することでBrixが向上するメカニズムについては、以下のように推測される。
【0037】
茶葉からの抽出において、細胞壁成分であるセルロース、ヘミセルロースおよびペクチン等は、フラノース環あるいはピラノース環の周囲に水酸基が有機的に結合している構造をしている。このフラノース環やピラノース環は疎水的な雰囲気下にあり、水中のような親水性環境下では疎水的なタンニンとは疎水結合することにより、細胞壁成分/タンニン複合体を形成している可能性があると推定される。そのため細胞壁分解酵素は、この複合体を基質としては認識しにくくなっており、複合体非形成時に比べて反応速度が遅くなっている可能性が考えられる。実際、非水溶性固形セルロースを分解するセルラーゼは、セルラーゼを構成するアミノ酸の中でトリプトファン等の疎水性アミノ酸が、セルロースのピラノース環と疎水結合することにより基質として認識していることは、広く知られている。従って、タンニンが細胞壁分解酵素の作用を阻害している可能性が考えられる。
【0038】
そこでタンナーゼを使用して細胞壁成分/タンニン複合体を形成しているタンニンを分解することにより、タンニンの親水性を高めて複合体を分離させ、細胞壁分解酵素が働きやすい状態にすることにより、Brixが向上していると考えることもできる。
さらには、タンナーゼによるタンニンの加水分解により、Brixが向上することも十分に期待される。
【0039】
(デンプン分解酵素)
・アミラーゼ
本発明に係るアミラーゼ(デンプン分解酵素)は、デンプン等のグリコシド結合を加水分解する酵素であり、茶葉に含まれるデンプン等に作用するものと考えられる。本発明においては、一般に食品業界においてアミラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているアミラーゼとしては、例えば「コクラーゼ」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0040】
本発明におけるアミラーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するアミラーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0041】
(タンパク質分解酵素)
・プロテアーゼ
本発明に係るプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は、タンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素であり、茶葉に含まれるタンパク質に作用するものと考えられる。本発明においては、一般に食品業界においてプロテアーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているプロテアーゼとしては、例えば「コクラーゼP」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0042】
本発明におけるプロテアーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するプロテアーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0043】
(その他の酵素)
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上述した酵素以外の酵素を併用してもよい。例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ等が挙げられる。
【0044】
(1−1−3.水)
本発明の茶葉抽出液の製造方法に用いる水は、飲料用として用いることができるものであれば限定はないが、中でも脱イオン水または蒸留水を用いることが好ましい。このように脱イオン水または蒸留水が好適であるのは、水中にカルシウムイオンおよび鉄イオン等が溶解している場合に、茶葉抽出液中のタンニンと結合を生じ、不溶解物を生じたり、色の変化が生じたりすることを防止するためである。
【0045】
(1−1−4.添加剤)
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上記茶葉、酵素群、水の他に添加剤を混合してもよい。
具体的には、アスコルビン酸またはその塩、pH調整剤、香料、および着色料等を挙げることができる。以下、それぞれについて説明する。
【0046】
・アスコルビン酸またはその塩
本発明においては、添加剤としてアスコルビン酸またはその塩を用いることが好ましい。ここで、アスコルビン酸の塩としては、ナトリウム塩が好適に用いられる。
【0047】
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、茶葉の酵素分解抽出処理を行う際に、アスコルビン酸またはその塩を添加することにより、得られる茶葉抽出液の褐変化を防止することが可能となる。
【0048】
後述するように、酵素分解抽出処理に際しては、反応器内に原材料を添加した後、酵素分解および抽出が均一にかつ効率的に行われるように、これらを攪拌する。この際、必然的に酸素が原材料内に巻き込まれる。このため、タンニン等の成分が酸化して褐変化が生じることになる。上記アスコルビン酸またはその塩を添加することにより、この褐変化を防止することができるのである。
【0049】
アスコルビン酸またはその塩の添加量は、後述するように、これらがpH調整剤として機能することから、本発明に係る酵素群の至適pH等により異なるものではあるが、抽出用の水に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常3,000ppm以下、好ましくは2,500ppm以下である。この範囲にあることで褐変化を抑制するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、褐変化が十分防止できない可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、褐変化の防止効果が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0050】
・pH調整剤
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上述した酵素の至適pH近傍で酵素分解抽出処理を行うため、pH調整剤を用いてもよい。
【0051】
本発明に用いられるpH調整剤としては、上述したアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウム、さらには炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0052】
これらのpH調整剤の添加量は、原材料が目的とするpHとなるように適宜決定されるものであるが、アスコルビン酸またはその塩および炭酸水素ナトリウムの添加量の割合は、褐変化の防止効果のため必要なアスコルビン酸またはその塩の混合量を確保するとともに茶葉、酵素、水の混合系のpHが通常pH5.0以上、好ましくはpH5.5以上、また、通常pH7.0以下、好ましくはpH6.5以下の範囲になる様に適宜添加されることが好ましい。上記範囲よりpHが低い場合は、香味に酸味を感じるようになる傾向にある。また、上記範囲よりpHが高い場合は、酵素の働きが低下してBrixが低下する傾向にある。
【0053】
・その他の添加剤
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、茶フレーバー等の着香料、葉緑素等の着色料、ルチン等の酸化防止剤、およびショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤等を適宜混合してもよい。
【0054】
<1−2.酵素分解抽出処理>
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上記原材料を混合した後、反応容器内で攪拌しながら酵素分解抽出処理を行う。その後、茶葉の不溶性成分等を除去することにより茶葉抽出液が得られる。
【0055】
酵素分解抽出処理は酵素反応であるため、一般的に至適な温度、反応時間、およびpH等の抽出条件がある。以下にこのような酵素分解抽出処理の条件について説明する。
【0056】
(1−2−1.原料の混合)
本発明に係る酵素分解抽出処理において、酵素群と茶葉とを混合し反応させるにあたり、酵素を混合する順序に制限はない。酵素群の全ての酵素を同時に混合させてもよいし、酵素抽出処理の進行に応じて順次酵素を混合してもよい。
【0057】
(1−2−2.温度)
本発明に係る酵素分解抽出処理においては、比較的低温で抽出処理を行うことが好ましい。具体的には、通常20℃以上、好ましくは35℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは45℃以下である。
酵素分解抽出処理の温度が上記の範囲外の場合、酵素群が失活したり、十分に働かなくなったりする可能性があり、その結果Brixが低下し、抽出に多くの時間が必要となる傾向がある。また、上記範囲より高い温度で酵素分解抽出処理を行った場合は、得られる茶葉抽出液を用いて製造された茶飲料に苦味・渋みが強くなる可能性がある。
【0058】
(1−2−3.時間)
本発明に係る酵素分解抽出処理の時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下である。
上記範囲より酵素分解抽出処理の時間が短い場合は、酵素分解が十分ではなくBrixが低下する傾向がある。一方、上記範囲より長い時間の酵素分解抽出処理を行ったとしても、Brixがあまり向上しない傾向にある。
【0059】
(1−2−4.pH)
本発明に係る酵素分解抽出処理のpHは、酵素群の至適pH近傍または作用可能pH範囲内であれば限定されない。本発明においては、少なくともセルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペプチナーゼと、タンナーゼとを用いて酵素分解抽出処理を行うことから、茶葉、酵素、水の混合系のpHが、通常pH5.0以上、好ましくはpH5.5以上、また、通常pH7.0以下、好ましくはpH6.5以下である。
酵素分解抽出処理のpHが上記範囲外の場合、酵素群が失活したり、十分に働かなかったりする可能性があり、Brixが低下し、抽出に多くの時間が必要となる傾向がある。
【0060】
上記範囲にpHを調整する方法としては、上記原材料の項で説明したpH調整剤を適当量混合することにより行われる。
【0061】
(1−2−5.撹拌速度)
本発明に係る酵素分解抽出処理においては、酵素分解および抽出が均一にかつ効率的に行われるように、これらを攪拌することが好ましい。容器内の原料が十分に混ざり合う速度であれば限定されない。
【0062】
<1−3.茶葉抽出液>
上述した酵素分解抽出処理を行った後、遠心分離や濾過等の固液分離工程を経て、本発明の茶葉抽出液を得ることができる。
本発明の茶葉抽出液は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉からの抽出物とを含有する混合液である。
なお、本発明の茶葉抽出液の中の酵素群は、含有する酵素群を熱処理などで変性させて失活させたものであってもよいし、活性を維持したままの状態であってもよい。
【0063】
[2.茶飲料]
本発明の茶飲料は、上述したような茶葉抽出液の製造方法により得られた茶葉抽出液を含有するものであり、茶葉抽出液をそのまま茶飲料としてもよいが、茶葉抽出液を飲料用に適当な濃度になるように希釈することで茶飲料を製造することもできる。このとき、希釈液としては水でもよいが、本発明に係る酵素分解抽出処理以外の製造方法により得られた希釈用茶葉抽出液をブレンドして希釈することもできる。なお、異なる茶葉原料を用いて本発明の製造方法によって得られた複数の茶葉抽出液を適宜ブレンドして用いることが出来ることはいうまでもない。このような希釈用茶葉抽出液の製造方法としては、例えば、高温抽出法、低温抽出法、含水アルコール抽出法等が挙げられる。なお、異なる茶葉を用いて本発明の製造方法によって得られた複数の茶葉抽出液を適宜ブレンドして用いてもよい。
【0064】
このように他の製造方法により得られた希釈用茶葉抽出液をブレンドすることにより、そのブレンドの比率によっては、種々の嗜好性に合致した茶飲料を製造することが可能となる。
【0065】
従来の茶飲料の製造方法では、茶葉に含まれる成分を忠実に抽出するだけであるので、その茶葉本来の味以外のテイストを加えるには限界があり、茶飲料の味は原料に依存するという課題があった。
しかしながら、上述したように、茶葉抽出液と、種々の製造方法により得られる希釈用茶葉抽出液とをブレンドすることにより、茶葉の原料に依存することなく、これまでになかった全く新しい香りや味を有する茶飲料を得ることができる。
【0066】
なお、茶飲料は品質保持や、香りや味などの機能性を加えるために、添加剤を用いることができる。添加剤の具体例としては、上記茶葉抽出液の製造方法の欄で説明した添加剤と同様に、褐変防止剤およびpH調整剤としてのアスコルビン酸、もしくはその塩、pH調整剤としての炭酸水素ナトリウム、さらにはフレーバー等を挙げることができる。
【0067】
また、茶葉抽出液を乾燥固化して、粉末状にすることもできる。得られた粉末を飲料用に適当な濃度になるように希釈することで茶飲料を製造することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明につき実施例をもとにさらに詳細に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
[酵素群]
実施例及び比較例で用いる各酵素は、以下の商品名で市販されている酵素由来である。
【0070】
(セルラーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼC」、Trichoderma longibrachiatum由来。
【0071】
(ヘミセルラーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼX」、Trichoderma longibrachiatum由来。
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼA」、Aspergillus usamii由来。
【0072】
(ペクチナーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼN」、Aspergillus niger由来。
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼA」、Aspergillus usamii由来。
【0073】
(タンナーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「タンナーゼ」、Aspergillus oryzae由来。
【0074】
(プロテアーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「コクラーゼP」、Aspergillus oryzae由来。
【0075】
(アミラーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「コクラーゼ」、Aspergillus oryzae由来。
【0076】
[実施例1〜4、比較例1〜8]
(酵素分解抽出処理)
一度沸騰させて冷却した40℃の脱イオン水に、緑茶葉10.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.02重量%、および下記表1に示す種類の酵素製剤を表1に記載の重量%で混合し、撹拌しながら40℃にて1時間、酵素分解抽出処理を行った。酵素分解抽出処理後、茶葉を除去した後、速やかに20℃以下に冷却し、Brixを測定した。
【0077】
(Brixの測定)
得られた茶葉抽出液を、4℃、3,000rpm、10分間遠心分離し、その上澄を測定することでBrixを求めた。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例9〜11]
(酵素分解抽出処理)
一度沸騰させて冷却した40℃の脱イオン水に、緑茶葉10.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.02重量%を混合し、撹拌しながら表1記載の抽出温度にて1時間、茶葉から抽出処理を行った。抽出処理後、茶葉を除去し、速やかに20℃以下に冷却して、Brixを測定した。
【0079】
(Brixの測定)
得られた茶葉抽出液を、上記実施例1と同様に処理してBrixを求めた。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例4と比較例4とから明らかなように、細胞壁分解酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及びペクチナーゼ)と、タンナーゼとを併用することで、Brixが向上することがわかる。この傾向は、タンパク質分解酵素であるプロテアーゼが併用された場合(実施例2と比較例2との比較)、デンプン分解酵素であるアミラーゼが併用された場合(実施例3と比較例3との比較)、及びプロテアーゼ、アミラーゼが共に併用された場合(実施例1と比較例1との比較)も同様である。
【0082】
また、実施例4のBrixは、比較例1〜4のBrixよりも高いことから、細胞壁分解酵素とタンナーゼとの組み合わせは、他の酵素との組み合わせに比べても顕著に高い効果が得られることがわかる。
【0083】
なお、実施例4と実施例1〜3とを比較すると、アミラーゼやプロテアーゼを併用することで、より高い効果が得られることがわかる。
【0084】
比較例9〜11は、従来より行われてきた、酵素を使わずに高温で茶葉から抽出する方法である。実施例4のBrixは、比較例11に示されるように80℃の高温の温水で抽出した場合のBrixと比べ高い。従って、高温で抽出するよりも、本発明のように40℃で細胞壁分解酵素とタンナーゼを併用することで高いBrixが得られる。
これにより、茶葉の香り成分を失うことなく、より高濃度の茶葉抽出液を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の産業上の利用分野に制限はなく、茶飲料、フレーバーティ、茶成分入りの食品等の食用、消臭剤、化粧品等の香料用など広く用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼飲料用の缶およびペットボトルや粉末等の茶飲料に用いられる茶葉抽出液、及びその製造方法、並びに得られた茶葉抽出液を含有する茶飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、茶飲料は、茶葉を50〜90℃の高温にて温水抽出を行い、得られた抽出液を用いて製造されていた。しかしながら、近年、茶葉からの抽出効率を高めかつ香りや味に優れた抽出液を得るために、50℃以下の低温で酵素分解抽出処理を行い茶葉からの抽出固形分濃度を高める方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、茶葉に、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、及びプロトペクチナーゼを同時に作用させ、抽出固形分濃度を高める方法が提案されている。また、特許文献2においても茶葉に、プロテアーゼ、及びタンナーゼを同時に添加して、タンニンを分解し、渋味の少ない茶類エキスを製造する方法が提案されており、本法ではプロテアーゼを用いるので、抽出固形分濃度が増加することが期待される。しかしながら、これらの方法によっても、茶葉からの抽出固形分濃度は十分ではなく、より良い方法が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−210110号
【特許文献2】特開2003−144049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より高い濃度の固形分を茶葉から抽出する酵素分解抽出処理を用いた茶葉抽出液の製造方法、茶葉抽出液、およびこの茶葉抽出液を含有する茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を鑑みて発明者等が鋭意検討した結果、植物細胞の細胞壁を分解する酵素とタンナーゼとを茶葉に作用させることで、より茶葉からの可溶性固形分濃度が向上することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉とを混合し、茶葉を酵素分解抽出処理することを特徴とする、茶葉抽出液の製造方法に存する(請求項1)。
【0008】
このとき、前記酵素群が、さらにアミラーゼを含有することが好ましい(請求項2)。
【0009】
また、前記酵素群が、さらにプロテアーゼを含有することが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明の別の要旨は、上記の茶葉抽出液の製造方法により得られたことを特徴とする茶葉抽出液に存する(請求項4)。
【0011】
本発明の別の要旨は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉からの抽出物とを含有することを特徴とする、茶葉抽出液に存する(請求項5)。
【0012】
本発明の別の要旨は、上記の茶葉抽出液を含有することを特徴とする、茶飲料に存する(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、得られる茶葉抽出液中の可溶性固形分の濃度を高めることができる。これにより短い時間でも茶葉からの抽出を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
【0015】
ここで、本発明において「Brix」とは、茶葉からの抽出操作で得られる茶葉抽出液に対する、可溶性固形分の重量比であり、可溶性固形分の濃度を表す指標である。本発明中では百分率で表現する。
【0016】
[1.茶葉抽出液の製造方法]
本発明の茶葉抽出液の製造方法は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉とを混合し、茶葉を酵素分解抽出処理するものである。
【0017】
茶葉は植物細胞で構成されており、その細胞壁を分解する作用を示す酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及びペクチナーゼ)と、タンナーゼとを併用して茶葉に作用させることで、従来の茶葉の酵素分解抽出処理と比較して、効率的に酵素分解することが可能となる。その結果、得られる茶葉抽出液中の可溶性固形分の抽出濃度(Brix)を高めることができる。
【0018】
また、上記の酵素群の至適温度近傍の40℃程度で茶葉から抽出できるため、高温の温水で抽出する従来方法と比べても、茶葉中の香り成分を逃すことなく抽出することができる。
【0019】
以下、このような茶葉抽出液の製造方法について詳細に説明する。
【0020】
<1−1.茶葉抽出液の原料>
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、茶葉、酵素群、水を用いて行うことができる。また、必要により、添加剤を用いてもよい。
【0021】
(1−1−1.茶葉)
本発明に係る茶葉は、茶樹(Camellia sinensis)の葉や茎である。収穫した後に、発酵などの加工したものであってもよい。茶葉は、発酵状態により発酵茶、半発酵茶、及び不発酵茶等に分けることができるが、本発明においては、これらのいかなる発酵状態の茶葉も用いることが可能である。具体例としては、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、てん茶等の蒸し製の不発酵茶;嬉野茶、青柳茶、各種中国茶等の釜炒茶等の不発酵茶;包種茶、鉄観音茶、ウーロン茶等の半発酵茶;紅茶、阿波番茶、碁石茶、プアール茶などの発酵茶を挙げることができる。更には、香草や薬草なども本発明に係る茶葉に含む。本発明は、細胞内にタンニンを含有する植物からの抽出に顕著な効果を奏するため、タンニンを多く含有する茶葉が好適である。
【0022】
本発明においては、中でも収穫後速やかに蒸気又は火熱で熱する作業を行うことにより、茶葉に存在する酵素を失活させ、成分の酸化が抑制された茶葉を用いることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる緑茶の茶葉としては、一般的に緑茶と称される茶葉であれば、いかなるものであっても用いることが可能である。具体的には、玉露、てん茶、かぶせ茶、煎茶、番茶などを挙げることができ、これらをブレンドした茶でもよい。また、必要に応じて、副原料として玄米や各種植物の葉、茎、根などをブレンドしたものを用いてもよい。
【0024】
本発明の茶葉抽出液の製造方法において、用いる茶葉の種類、その組み合わせ、量などは、要求される嗜好性等により異なり限定されるものではない。
具体例として、一般的に抽出用の水に対し、茶葉が通常1.0重量%以上、好ましくは3.0重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上、また、通常20.0重量%以下、好ましくは15.0重量%以下、さらに好ましくは10.0重量%以下である。水に対する茶葉の量がこの範囲であると抽出液と残存茶葉を分離しやすいため好ましい。
【0025】
(1−1−2.酵素群)
本発明に係る酵素は、植物細胞の細胞壁分解酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上の酵素、及びペクチナーゼ)と、タンニン分解酵素(タンナーゼ)とを用いる。本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、細胞壁分解酵素とタンニン分解酵素だけでなく、タンパク質分解酵素やデンプン分解酵素などを併用すると、Brixが向上し好ましい。具体例としては、デンプン分解酵素としてはアミラーゼ、タンパク質分解酵素としてはプロテアーゼが挙げられる。また、これ以外の酵素をさらに併用することもできる。これらの酵素の併用比率に制限はない。以下、これらの各酵素について詳細に説明する。
【0026】
なお、本発明に係る酵素分解抽出処理時に用いる酵素群の量は、酵素群全体の量として抽出用の水に対して、通常0.03重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常2.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対する酵素の量がこの範囲であると高いBrixを得られるため好ましい。
【0027】
(細胞壁分解酵素)
本発明で用いられる細胞壁分解酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上の酵素と、ペクチナーゼである。
【0028】
・セルラーゼ
本発明に係るセルラーゼは、セルロースのβ−1,4−グリコシド結合を加水分解する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてセルラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているセルラーゼとしては、例えば「スクラーゼC」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0029】
本発明におけるセルラーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するセルラーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0030】
・ヘミセルラーゼ
本発明に係るヘミセルラーゼは、ヘミセルロースのグリコシド結合を加水分解する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてヘミセルラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているヘミセルラーゼとしては、例えば「スクラーゼX」「スクラーゼA」(ともに三菱化学フーズ社製)がある。
【0031】
本発明におけるヘミセルラーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するヘミセルラーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0032】
・ペクチナーゼ
本発明に係るペクチナーゼは、ポリガラクツロン酸のα−1,4−グリコシド結合を加水分解する酵素である。本発明においては、一般に食品業界においてペクチナーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているペクチナーゼとしては、例えば「スクラーゼN」「スクラーゼS」「スクラーゼA」(いずれも三菱化学フーズ社製)がある。
【0033】
本発明におけるペクチナーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するペクチナーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0034】
(タンニン分解酵素)
・タンナーゼ
本発明に係るタンナーゼ(タンニン分解酵素)は、タンニンを加水分解する酵素であり、加水分解性タンニンに幅広く作用するものと考えられている。本発明においては、一般に食品業界においてタンナーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているタンナーゼとしては、例えば「タンナーゼ」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0035】
本発明におけるタンナーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.5重量%以下、好ましくは1.3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するタンナーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0036】
本発明の茶葉抽出液の製造方法において、細胞壁分解酵素とタンナーゼとを併用することでBrixが向上するメカニズムについては、以下のように推測される。
【0037】
茶葉からの抽出において、細胞壁成分であるセルロース、ヘミセルロースおよびペクチン等は、フラノース環あるいはピラノース環の周囲に水酸基が有機的に結合している構造をしている。このフラノース環やピラノース環は疎水的な雰囲気下にあり、水中のような親水性環境下では疎水的なタンニンとは疎水結合することにより、細胞壁成分/タンニン複合体を形成している可能性があると推定される。そのため細胞壁分解酵素は、この複合体を基質としては認識しにくくなっており、複合体非形成時に比べて反応速度が遅くなっている可能性が考えられる。実際、非水溶性固形セルロースを分解するセルラーゼは、セルラーゼを構成するアミノ酸の中でトリプトファン等の疎水性アミノ酸が、セルロースのピラノース環と疎水結合することにより基質として認識していることは、広く知られている。従って、タンニンが細胞壁分解酵素の作用を阻害している可能性が考えられる。
【0038】
そこでタンナーゼを使用して細胞壁成分/タンニン複合体を形成しているタンニンを分解することにより、タンニンの親水性を高めて複合体を分離させ、細胞壁分解酵素が働きやすい状態にすることにより、Brixが向上していると考えることもできる。
さらには、タンナーゼによるタンニンの加水分解により、Brixが向上することも十分に期待される。
【0039】
(デンプン分解酵素)
・アミラーゼ
本発明に係るアミラーゼ(デンプン分解酵素)は、デンプン等のグリコシド結合を加水分解する酵素であり、茶葉に含まれるデンプン等に作用するものと考えられる。本発明においては、一般に食品業界においてアミラーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているアミラーゼとしては、例えば「コクラーゼ」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0040】
本発明におけるアミラーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するアミラーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0041】
(タンパク質分解酵素)
・プロテアーゼ
本発明に係るプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は、タンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素であり、茶葉に含まれるタンパク質に作用するものと考えられる。本発明においては、一般に食品業界においてプロテアーゼと称される酵素であれば用いることが可能であり、その由来等は限定されるものではなく、また精製品であっても未精製な状態のものであっても用いることができる。
市販されているプロテアーゼとしては、例えば「コクラーゼP」(三菱化学フーズ社製)がある。
【0042】
本発明におけるプロテアーゼの使用量としては、抽出用の水に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常1.50重量%以下、好ましくは1.30重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以下である。水に対するプロテアーゼの量がこの範囲にあることで酵素活性を発揮するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、酵素分解抽出効率が著しく低下する可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、酵素分解抽出効率が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0043】
(その他の酵素)
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上述した酵素以外の酵素を併用してもよい。例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ等が挙げられる。
【0044】
(1−1−3.水)
本発明の茶葉抽出液の製造方法に用いる水は、飲料用として用いることができるものであれば限定はないが、中でも脱イオン水または蒸留水を用いることが好ましい。このように脱イオン水または蒸留水が好適であるのは、水中にカルシウムイオンおよび鉄イオン等が溶解している場合に、茶葉抽出液中のタンニンと結合を生じ、不溶解物を生じたり、色の変化が生じたりすることを防止するためである。
【0045】
(1−1−4.添加剤)
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上記茶葉、酵素群、水の他に添加剤を混合してもよい。
具体的には、アスコルビン酸またはその塩、pH調整剤、香料、および着色料等を挙げることができる。以下、それぞれについて説明する。
【0046】
・アスコルビン酸またはその塩
本発明においては、添加剤としてアスコルビン酸またはその塩を用いることが好ましい。ここで、アスコルビン酸の塩としては、ナトリウム塩が好適に用いられる。
【0047】
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、茶葉の酵素分解抽出処理を行う際に、アスコルビン酸またはその塩を添加することにより、得られる茶葉抽出液の褐変化を防止することが可能となる。
【0048】
後述するように、酵素分解抽出処理に際しては、反応器内に原材料を添加した後、酵素分解および抽出が均一にかつ効率的に行われるように、これらを攪拌する。この際、必然的に酸素が原材料内に巻き込まれる。このため、タンニン等の成分が酸化して褐変化が生じることになる。上記アスコルビン酸またはその塩を添加することにより、この褐変化を防止することができるのである。
【0049】
アスコルビン酸またはその塩の添加量は、後述するように、これらがpH調整剤として機能することから、本発明に係る酵素群の至適pH等により異なるものではあるが、抽出用の水に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常3,000ppm以下、好ましくは2,500ppm以下である。この範囲にあることで褐変化を抑制するには十分量であるためである。上記範囲より少ない場合は、褐変化が十分防止できない可能性がある。また、上記範囲を超えて混合しても、褐変化の防止効果が向上するものではなく、コストが高くなる傾向がある。
【0050】
・pH調整剤
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上述した酵素の至適pH近傍で酵素分解抽出処理を行うため、pH調整剤を用いてもよい。
【0051】
本発明に用いられるpH調整剤としては、上述したアスコルビン酸およびアスコルビン酸ナトリウム、さらには炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0052】
これらのpH調整剤の添加量は、原材料が目的とするpHとなるように適宜決定されるものであるが、アスコルビン酸またはその塩および炭酸水素ナトリウムの添加量の割合は、褐変化の防止効果のため必要なアスコルビン酸またはその塩の混合量を確保するとともに茶葉、酵素、水の混合系のpHが通常pH5.0以上、好ましくはpH5.5以上、また、通常pH7.0以下、好ましくはpH6.5以下の範囲になる様に適宜添加されることが好ましい。上記範囲よりpHが低い場合は、香味に酸味を感じるようになる傾向にある。また、上記範囲よりpHが高い場合は、酵素の働きが低下してBrixが低下する傾向にある。
【0053】
・その他の添加剤
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、茶フレーバー等の着香料、葉緑素等の着色料、ルチン等の酸化防止剤、およびショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤等を適宜混合してもよい。
【0054】
<1−2.酵素分解抽出処理>
本発明の茶葉抽出液の製造方法においては、上記原材料を混合した後、反応容器内で攪拌しながら酵素分解抽出処理を行う。その後、茶葉の不溶性成分等を除去することにより茶葉抽出液が得られる。
【0055】
酵素分解抽出処理は酵素反応であるため、一般的に至適な温度、反応時間、およびpH等の抽出条件がある。以下にこのような酵素分解抽出処理の条件について説明する。
【0056】
(1−2−1.原料の混合)
本発明に係る酵素分解抽出処理において、酵素群と茶葉とを混合し反応させるにあたり、酵素を混合する順序に制限はない。酵素群の全ての酵素を同時に混合させてもよいし、酵素抽出処理の進行に応じて順次酵素を混合してもよい。
【0057】
(1−2−2.温度)
本発明に係る酵素分解抽出処理においては、比較的低温で抽出処理を行うことが好ましい。具体的には、通常20℃以上、好ましくは35℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは45℃以下である。
酵素分解抽出処理の温度が上記の範囲外の場合、酵素群が失活したり、十分に働かなくなったりする可能性があり、その結果Brixが低下し、抽出に多くの時間が必要となる傾向がある。また、上記範囲より高い温度で酵素分解抽出処理を行った場合は、得られる茶葉抽出液を用いて製造された茶飲料に苦味・渋みが強くなる可能性がある。
【0058】
(1−2−3.時間)
本発明に係る酵素分解抽出処理の時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常5時間以下、好ましくは2時間以下である。
上記範囲より酵素分解抽出処理の時間が短い場合は、酵素分解が十分ではなくBrixが低下する傾向がある。一方、上記範囲より長い時間の酵素分解抽出処理を行ったとしても、Brixがあまり向上しない傾向にある。
【0059】
(1−2−4.pH)
本発明に係る酵素分解抽出処理のpHは、酵素群の至適pH近傍または作用可能pH範囲内であれば限定されない。本発明においては、少なくともセルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペプチナーゼと、タンナーゼとを用いて酵素分解抽出処理を行うことから、茶葉、酵素、水の混合系のpHが、通常pH5.0以上、好ましくはpH5.5以上、また、通常pH7.0以下、好ましくはpH6.5以下である。
酵素分解抽出処理のpHが上記範囲外の場合、酵素群が失活したり、十分に働かなかったりする可能性があり、Brixが低下し、抽出に多くの時間が必要となる傾向がある。
【0060】
上記範囲にpHを調整する方法としては、上記原材料の項で説明したpH調整剤を適当量混合することにより行われる。
【0061】
(1−2−5.撹拌速度)
本発明に係る酵素分解抽出処理においては、酵素分解および抽出が均一にかつ効率的に行われるように、これらを攪拌することが好ましい。容器内の原料が十分に混ざり合う速度であれば限定されない。
【0062】
<1−3.茶葉抽出液>
上述した酵素分解抽出処理を行った後、遠心分離や濾過等の固液分離工程を経て、本発明の茶葉抽出液を得ることができる。
本発明の茶葉抽出液は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、茶葉からの抽出物とを含有する混合液である。
なお、本発明の茶葉抽出液の中の酵素群は、含有する酵素群を熱処理などで変性させて失活させたものであってもよいし、活性を維持したままの状態であってもよい。
【0063】
[2.茶飲料]
本発明の茶飲料は、上述したような茶葉抽出液の製造方法により得られた茶葉抽出液を含有するものであり、茶葉抽出液をそのまま茶飲料としてもよいが、茶葉抽出液を飲料用に適当な濃度になるように希釈することで茶飲料を製造することもできる。このとき、希釈液としては水でもよいが、本発明に係る酵素分解抽出処理以外の製造方法により得られた希釈用茶葉抽出液をブレンドして希釈することもできる。なお、異なる茶葉原料を用いて本発明の製造方法によって得られた複数の茶葉抽出液を適宜ブレンドして用いることが出来ることはいうまでもない。このような希釈用茶葉抽出液の製造方法としては、例えば、高温抽出法、低温抽出法、含水アルコール抽出法等が挙げられる。なお、異なる茶葉を用いて本発明の製造方法によって得られた複数の茶葉抽出液を適宜ブレンドして用いてもよい。
【0064】
このように他の製造方法により得られた希釈用茶葉抽出液をブレンドすることにより、そのブレンドの比率によっては、種々の嗜好性に合致した茶飲料を製造することが可能となる。
【0065】
従来の茶飲料の製造方法では、茶葉に含まれる成分を忠実に抽出するだけであるので、その茶葉本来の味以外のテイストを加えるには限界があり、茶飲料の味は原料に依存するという課題があった。
しかしながら、上述したように、茶葉抽出液と、種々の製造方法により得られる希釈用茶葉抽出液とをブレンドすることにより、茶葉の原料に依存することなく、これまでになかった全く新しい香りや味を有する茶飲料を得ることができる。
【0066】
なお、茶飲料は品質保持や、香りや味などの機能性を加えるために、添加剤を用いることができる。添加剤の具体例としては、上記茶葉抽出液の製造方法の欄で説明した添加剤と同様に、褐変防止剤およびpH調整剤としてのアスコルビン酸、もしくはその塩、pH調整剤としての炭酸水素ナトリウム、さらにはフレーバー等を挙げることができる。
【0067】
また、茶葉抽出液を乾燥固化して、粉末状にすることもできる。得られた粉末を飲料用に適当な濃度になるように希釈することで茶飲料を製造することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明につき実施例をもとにさらに詳細に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
[酵素群]
実施例及び比較例で用いる各酵素は、以下の商品名で市販されている酵素由来である。
【0070】
(セルラーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼC」、Trichoderma longibrachiatum由来。
【0071】
(ヘミセルラーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼX」、Trichoderma longibrachiatum由来。
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼA」、Aspergillus usamii由来。
【0072】
(ペクチナーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼN」、Aspergillus niger由来。
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「スクラーゼA」、Aspergillus usamii由来。
【0073】
(タンナーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「タンナーゼ」、Aspergillus oryzae由来。
【0074】
(プロテアーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「コクラーゼP」、Aspergillus oryzae由来。
【0075】
(アミラーゼ)
三菱化学フーズ株式会社製、商品名「コクラーゼ」、Aspergillus oryzae由来。
【0076】
[実施例1〜4、比較例1〜8]
(酵素分解抽出処理)
一度沸騰させて冷却した40℃の脱イオン水に、緑茶葉10.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.02重量%、および下記表1に示す種類の酵素製剤を表1に記載の重量%で混合し、撹拌しながら40℃にて1時間、酵素分解抽出処理を行った。酵素分解抽出処理後、茶葉を除去した後、速やかに20℃以下に冷却し、Brixを測定した。
【0077】
(Brixの測定)
得られた茶葉抽出液を、4℃、3,000rpm、10分間遠心分離し、その上澄を測定することでBrixを求めた。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例9〜11]
(酵素分解抽出処理)
一度沸騰させて冷却した40℃の脱イオン水に、緑茶葉10.0重量%、アスコルビン酸ナトリウム0.02重量%を混合し、撹拌しながら表1記載の抽出温度にて1時間、茶葉から抽出処理を行った。抽出処理後、茶葉を除去し、速やかに20℃以下に冷却して、Brixを測定した。
【0079】
(Brixの測定)
得られた茶葉抽出液を、上記実施例1と同様に処理してBrixを求めた。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例4と比較例4とから明らかなように、細胞壁分解酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及びペクチナーゼ)と、タンナーゼとを併用することで、Brixが向上することがわかる。この傾向は、タンパク質分解酵素であるプロテアーゼが併用された場合(実施例2と比較例2との比較)、デンプン分解酵素であるアミラーゼが併用された場合(実施例3と比較例3との比較)、及びプロテアーゼ、アミラーゼが共に併用された場合(実施例1と比較例1との比較)も同様である。
【0082】
また、実施例4のBrixは、比較例1〜4のBrixよりも高いことから、細胞壁分解酵素とタンナーゼとの組み合わせは、他の酵素との組み合わせに比べても顕著に高い効果が得られることがわかる。
【0083】
なお、実施例4と実施例1〜3とを比較すると、アミラーゼやプロテアーゼを併用することで、より高い効果が得られることがわかる。
【0084】
比較例9〜11は、従来より行われてきた、酵素を使わずに高温で茶葉から抽出する方法である。実施例4のBrixは、比較例11に示されるように80℃の高温の温水で抽出した場合のBrixと比べ高い。従って、高温で抽出するよりも、本発明のように40℃で細胞壁分解酵素とタンナーゼを併用することで高いBrixが得られる。
これにより、茶葉の香り成分を失うことなく、より高濃度の茶葉抽出液を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の産業上の利用分野に制限はなく、茶飲料、フレーバーティ、茶成分入りの食品等の食用、消臭剤、化粧品等の香料用など広く用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、
茶葉とを混合し、
茶葉を酵素分解抽出処理する
ことを特徴とする、茶葉抽出液の製造方法。
【請求項2】
前記酵素群が、さらにアミラーゼを含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の茶葉抽出液の製造方法。
【請求項3】
前記酵素群が、さらにプロテアーゼを含有する
ことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の茶葉抽出液の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の茶葉抽出液の製造方法により得られた
ことを特徴とする、茶葉抽出液。
【請求項5】
セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、
茶葉からの抽出物とを含有する
ことを特徴とする、茶葉抽出液。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の茶葉抽出液を含有する
ことを特徴とする、茶飲料。
【請求項1】
セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、
茶葉とを混合し、
茶葉を酵素分解抽出処理する
ことを特徴とする、茶葉抽出液の製造方法。
【請求項2】
前記酵素群が、さらにアミラーゼを含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の茶葉抽出液の製造方法。
【請求項3】
前記酵素群が、さらにプロテアーゼを含有する
ことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の茶葉抽出液の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の茶葉抽出液の製造方法により得られた
ことを特徴とする、茶葉抽出液。
【請求項5】
セルラーゼ、ヘミセルラーゼからなる群のうち一以上と、ペクチナーゼと、タンナーゼとを含有する酵素群と、
茶葉からの抽出物とを含有する
ことを特徴とする、茶葉抽出液。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の茶葉抽出液を含有する
ことを特徴とする、茶飲料。
【公開番号】特開2011−50271(P2011−50271A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200079(P2009−200079)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(593204214)三菱化学フーズ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(593204214)三菱化学フーズ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
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