説明

茶製造方法

本発明は、周囲又は冷蔵庫温度で貯蔵される場合、ほとんどか、又はまったく濁りを形成しない、茶飲料物又は茶濃縮物を生成するために、茶抽出物とペクチンリアーゼとを接触せしめることを含んでなる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、周囲又は冷蔵庫温度で貯蔵される場合、ほとんどか、又はまったく濁りを形成しない、茶飲料物又は茶濃縮物を生成するために、茶抽出物とペクチンリアーゼとを接触せしめることを含んでなる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
インスタント茶飲料物は典型的には、消費のために容易な、カン又はボトルに詰められた単一−濃度の飲料物として、又は飲用茶飲料物を形成するために、水により希釈される濃縮物として、消費者が入手できる。
【0003】
茶抽出物は、温水による茶葉の抽出及び次に、前記葉からの水性茶抽出物の分離により商業的に調製される。茶抽出物は、可溶性及び不溶性茶固形物を含み、このために茶抽出物は、周囲温度で又は冷蔵庫下で貯蔵される場合、しばしば濁りを進行せしめる。茶製造工程は通常、不溶性固形物の量を低めるために、一連の追加の処理工程を含んでなる。不溶性固形物を除去する従来の方法は、脱クリーム化方法として知られており、そして固形物の沈殿を引起すために、工程変数、例えば温度の調節、続いて、沈殿物複合体を除去するために、遠心分離、濾過又は他の同等の技法を用いる。また、ペクチナーゼ、タンナーゼ及び/又はラッカーゼ、等による酵素処理が使用されて来た(例えば、アメリカ特許第5,919,500号)。
【0004】
本発明はまた、周囲又は冷蔵温度で貯蔵される場合、包装の後、濁りの形成を妨げるための効果的酵素システムを見出すための目的を有する。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約:
本発明者は、周囲又は冷蔵条件下で貯蔵される場合、包装された茶飲料物において形成される濁りが、茶抽出物を純粋なペクチンリアーゼにより処理することにより低められ得ることを見出した。それにより、貯蔵安定性は低められる。
【0006】
従って、第1の観点においては、本発明は、包装された茶抽出物において少なくとも10pct, 50pct, 75pct, 90pct, 95pct又は特に99pct、貯蔵誘発される濁り形成を低めるための方法に関し、ここで前記方法は、
a)茶抽出物とペクチンリアーゼとを接触し;
b)前記茶抽出物から不溶性固形物を分離し;そして
c)前記茶抽出物を包含する段階を含んで成る。
第2の観点においては、本発明は、改良された貯蔵安定性を有する茶抽出物を生成するためへのペクチンリアーゼの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明の特定の記載:
定義
用語“茶抽出物”とは、発酵されているか又は発酵されていない茶葉、例えばブラックティー、ウーロン茶、緑茶又はそれらの混合物であり得る、茶葉の水性抽出物として理解される。抽出状態は従来通りであり、大気圧又は高圧下で行われ、ここで茶葉が茶抽出物を得るために、周囲又は高温度で水と接触せしめられる。茶抽出物が、不溶性固形物を除去するために、従来の脱クリーム化段階、及び色又は風味を増強するために、種々の処理を受けることができる。茶抽出物の生成方法は、当業者に知られている。
【0008】
用語“包装された茶飲料物又は濃縮物”とは、気密容器、例えばカン、ボトル、カートン又は飲料製品のために適切な他のタイプの容器において、茶抽出物を分散し、そして密封することを含んで成る工程の生成物として理解される。
【0009】
貯蔵濁りの測定
用語“濁り”とは、茶飲料物の透明度を低める不溶性粒子として理解される。濁りは、2種のタイプに分離され得る:冷蔵に続いて進行する“冷濁り”、及び延長された貯蔵の後に進行する“貯蔵濁り”。貯蔵濁りの進行は、45℃でのインキュベーションにより促進され得る。濁り低下は、処理されていない茶抽出物における濁りに対して、処理された茶抽出物における濁り(“冷濁り”又は“貯蔵濁り”)として表され得る。改良された貯蔵安定性を有する茶抽出物は、貯蔵に基づく濁り形成、すなわち貯蔵誘発された濁り及び/又は促進された貯蔵誘発された濁りを、未処理の茶抽出物に比較して、少なくとも10pct, 50pct, 75pct, 90pct, 又は特に99pct低められた茶抽出物として定義される。
【0010】
冷濁りの評価は、Haze Meterを用いて、又は5℃で12時間、貯蔵された茶抽出物の可視試験により行われる。
貯蔵誘発された濁りの評価は、Haze Meterを用いて、又は周囲温度で3ヶ月間、貯蔵された茶抽出物の可視試験により行われる。
促進された貯蔵誘発された濁りの評価は、Haze Meterを用いて、又は45℃で1ヶ月間、貯蔵された茶抽出物の可視試験により行われる。
【0011】
ペクチンリアーゼ
ペクチンリアーゼ(EC4.2.2.10)は、(1→4)−α−D−ガラクツロナンメチルエステルの排除的分解を触媒し、それらの非還元端で4−デオキシ−6−O−メチル−α−D−ガラクト−4−エヌロノシル基を有するオリゴ糖を付与する。ペクチンリアーゼは、次の名称下で知られている:ペクチントランスエリミナーゼ;エンド−ペクチンリアーゼ;ポリメチルガラクツロン酸トランスエリミナーゼ;ペクチンメチルトランスエリミナーゼ;ペクトリアーゼ。
【0012】
本発明によれば、微生物ペクチンリアーゼが好ましい。微生物ペクチンリアーゼは、細菌又は菌類(例えば、糸状菌及び酵母)から誘導され得る。微生物ペクチンリアーゼは、好ましくは、菌類から得られる。菌類は、バシジオミコチナ(Basidiomycotina)又はアスコミコチナ(Ascomycotina)に属する菌株であり得る。適切な例は、アスペルギラスsp. の株から誘導できるペクチンリアーゼを包含する。A. ニガー又はA. オリザエ内の株から誘導できるペクチンリアーゼが好ましい。
好ましくは、本発明に適用されるペクチンリアーゼは、副活性、例えばペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンリアーゼ、及び/又はポリガラクツロナーゼ活性及び/又はプロテアーゼ、フィターゼ、アミラーゼ又はリパーゼ活性を有さない純粋なペクチンリアーゼである。
【0013】
ペクチンリアーゼはさらに、前記ペクチンリアーゼをコードするDNA配列及び前記ペクチンリアーゼをコードするDNA配列の発現を可能にする機能をコードするDNA配列を担持する組換えDNAベクターにより形質転換された宿主細胞を、ペクチンリアーゼの発現を可能にする条件下で培養培地において培養し、そしてその培養物からペクチンリアーゼを回収することを含んで成る方法により生成できる。
アスペルギラス・ニガー由来のペクチンリアーゼ、例えばEP353188号においてPLAとして記載されるペクチンリアーゼが、本発明のために好ましい。
本発明のために適切な市販のペクチンリアーゼは、Novozyme A/Sから入手できるCITROZYM PREMIUM, PECTINEX SMASH XXL, NOVOFERM P 及び NOVOFERM Aである。
【0014】
ペクチンリアーゼ活性(UPTE)の測定
ペクチンリアーゼ(ペクチントランスエリミナーゼ)の活性は、UPTEで測定される。その方法は、分光計(例えば、Hitachi 1100)を用いて測定される、溶解されたペクチンの酵素分解に基づかれる。1ペクチントランスエリミナーゼ単位(UPTE)は、次の標準条件下で1分当たり0.01吸光単位、吸光度を高める酵素の量として定義される:基質濃度0.5%Obipectin, 30℃、pH5.4、反応時間10分及び238nmでの吸光度。
【0015】
クエン酸−リン酸緩衝液及びペクチン基質が分析のために使用される。0.1Mのクエン酸緩衝液は、21.0gのクエン酸(C6H8O7・H2O)、例えばMerck244及び1000ml間での脱イオン水から調製される。0.1Mのリン酸水素二カリウム緩衝液は、17.4gのK2HPO4(リン酸水素二カリウム)、例えばMerck5104及び1000mlまでの脱イオン水から調製される。クエン酸−リン酸緩衝液は、290mlの0.1Mクエン酸緩衝液及び710mlの0.1Mリン酸水素二カリウムから調製される。ペクチン基質は、0.50gのObipectin(Braunband)、0.5mlの96%エタノール及び50mlの0.1Mクエン酸−リン酸緩衝液から、沸点まで加熱し、そして15分間、攪拌することにより調製される。その溶液が周囲温度に冷却され、そしてpHが1MのNaOHを用いて、5.4に調節される。脱イオン水が100mlまで添加される。
【0016】
1つのブラインドを次の通りに調製する:2.5mlの基質を10ml、ピペットにより試験菅に取る。管を30℃の水浴において約5分間、加熱する。0.5mlの脱イオン水を添加し、そして管を振盪する。吸光度を分光計上で238nmで測定し、そしてブラインドをゼロで設定する。
【0017】
酵素サンプルを、脱イオン水により、約7UPTE/mlに希釈する。2.5mlの基質を、10mlの試験菅にピペットにより取る。管を30℃の水浴において約5分間、加熱する。0.5mlの酵素溶液を添加し、そして管を振盪する。吸光度を、正確に10分後、測定する。
ペクチンリアーゼ活性を、次の式を用いて計算する:
【0018】
【数1】

[式中、△Abs=Abs238nm(10分)−Abs238nm(0分)、V1=フラスコ体積、T=10分、M=gでのサンプルの重量、V2=酵素体積、0.01=吸光度の上昇]。分析方法の詳細(EB−SM−0368.02/01)は、Novozymes A/Sから要求に応じて入手できる。
【0019】
処理
本発明の処理を、良好な貯蔵安定性を確保するために、従来通りに生成された茶抽出物に対して行う。
第1の観点においては、茶抽出物とペクチンリアーゼとを接触する。インキュベーションの間の温度は、0〜100℃、又は20〜80℃、又は30〜60℃、又は特に40〜50℃で維持され得る。インキュベーションは、1分〜10時間、又は10分〜5時間、又は20分〜2時間、又は45分〜1.5時間、及び貯蔵誘発された濁り及び/又は促進された貯蔵誘発された濁りが、未処理の茶抽出物に比較して、50pct以下、又は40pct、又は30pct、又は20pct、又は15pct、又は10pct、又は5pct、又は1pct以下、低められるまで、ペクチンリアーゼ触媒された反応の進行を可能にするのに十分な間、もたらされ得る。
【0020】
固形物分離は、茶抽出物を冷却タンクに通し、沈殿を促進するために、それを、0〜5℃の温度に冷却することを包含する。茶抽出物を、少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1,2,3,6,9又は12時間、冷却する。沈殿物の除去は、他の装置、例えばフィルターが使用され得るが、遠心分離機を用いて達成され得る。茶抽出物の包装は、ボトル、カン、又は他の適切な容器において行われ得る。容器は無菌であるが、しかし任意には、包装は、温充填又は殺菌がパック低温殺菌として達成され得るようにして行われ得る。
【0021】
ペクチンリアーゼ処理、固形物分離及び茶抽出の包装は、連続的工程で、又はその間に他の工程段階を伴って行われ得る。前記工程は、連続工程、又はバッチ工程、又はそれらの組合せであり得る。消費される前、包装された茶飲料物は、冷蔵庫に貯蔵される。本発明の方法は、包装された茶飲料物における貯蔵誘発された濁り及び/又は促進された貯蔵誘発された濁りの進行を、少なくとも20pct、又は50pct、又は75pct、又は90pct、または95pct、又は特に99pct、有意に低める。
【0022】
第1の観点によれば、ペクチンリアーゼは、固体支持体上に固定される。もう1つの態様においては、ペクチンリアーゼの量は、茶抽出物1L当たり、0.1〜1000000UPTE(ペクチントランスエリミナーゼ単位)、又は1〜100000UPTE、又は特に10〜10000UPTE、又はより特定には1000〜8000UPTEの範囲である。
【実施例】
【0023】
例1
従来の茶抽出物を、75℃の温水により60分間、緑茶葉(6%w/v)を抽出することにより生成した。次に、茶抽出物を、本発明に従って処理した。茶抽出物を、水浴において45℃で、攪拌しながらインキュベートし、そしてペクチンリアーゼを添加し、4800UPTE/Lの最終濃度にした。1時間後、酵素を、90℃に2分間、加熱することにより不活性化した。茶抽出物を5℃に冷却し、そして5,000rpm(TDL-60B, Shanghai Anting Scientific Equipment Factory)で10分間、遠心分離した。
【0024】
上清液をデカントし、ボトルに詰め、そして密封した。ボトルに詰められた茶抽出物を、周囲温度で3ヶ月間(貯蔵安定性)又は45℃で1ヶ月間(促進された貯蔵安定性)、貯蔵した。添加される酵素活性を有さない対照処理においては、可視調査が、45℃で1ヶ月後、及び25℃で3ヶ月後、形成される濁りを検出した。濁りは、ペクチンリアーゼにより処理された茶抽出物には観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装された茶抽出物において少なくとも10pct, 50pct, 75pct, 90pct, 95pct又は特に99pct、貯蔵誘発される濁り形成を低めるための方法であって、
a)茶抽出物とペクチンリアーゼとを接触し;
b)前記茶抽出物から不溶性固形物を分離し;そして
c)前記茶抽出物を包装する、
段階を含んで成る方法。
【請求項2】
前記ペクチンリアーゼが、菌類ペクチンリアーゼである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記菌類ペクチンリアーゼが、アスペルギラスsp. (Aspergillus sp.), 例えばA.ニガー(A. niger)又はA. オリザエ(A. oryzae)から誘導できる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ペクチンリアーゼの量が、茶抽出物1L当たり、0.1〜1000000UPTE(ペクチントランスエリミナーゼ単位)、又は1〜100000UPTE、又は特に10〜10000UPTE、又はより特定には1000〜8000UPTEの範囲である請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ペクチンリアーゼが、固体支持体上に固定される請求項1記載の方法。
【請求項6】
改良された貯蔵安定性を有する茶抽出物を生成するためへのペクチンリアーゼの使用。

【公表番号】特表2006−523442(P2006−523442A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504361(P2006−504361)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000268
【国際公開番号】WO2004/091303
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】