説明

草刈り機用の刈り刃装置

【課題】 起風部24を有したブレート形回転刈り刃を備えるものでありながら、発生風に起因した切断不良が発生したままになりにくい草刈り機用の刈り刃装置を提供する。
【解決手段】 先行回転刈り刃22と後行回転刈り刃27を一体回転自在に備えてある。後行回転刈り刃27の刃先28aが、先行回転刈り刃22の起風部24の下方の起風部24の後端24aよりも刈り刃回転方向前側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード形の回転刈り刃を備えた草刈り機用の刈り刃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の刈り刃装置において、従来、たとえば特許文献1に示されるように、blade14,15に、bent portion23やlift portion32,33(図中は34)を設け、bent portion23、lift portion32,34(起風部に相当)によって風を発生させながら草や芝の刈り込み処理を行なうことが可能になったものがあった。
【0003】
【特許文献1】USP5,109,656(第3,4欄、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示すように、起風部24は、回転刈り刃22のエッジの回転方向後側に回転刈り刃22から立ち上がる状態で設けられる。これにより、回転刈り刃22の回転によって発生する風の一部は、回転刈り刃22の前側から回転刈り刃22の下方を通って起風部24の後側に至り、起風部24の後側を上昇するように流動する。
このため、従来の起風タイプの刈り刃装置を採用した場合、回転刈り刃が切断しようとする草や芝に、回転刈り刃の前側を下降向きに流動する下降風a(図4参照)のために倒れ気味になったものが発生し、切断漏れとなった草や芝が発生したり、切断後に起立して他のものよりも高く突出する状態になった草や芝が発生したりすることがあった。
【0005】
本発明の目的は、起風部を備えるものでありながら、上記した切断不良が発生したままになりにくい草刈り機用の刈り刃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明による草刈り機用の刈り刃装置にあっては、起風部を備えたブレード形の先行回転刈り刃と、前記先行回転刈り刃の回転方向後側に位置する後行回転刈り刃とを一体回転自在に備え、前記後行回転刈り刃の刃先が、刈り刃回転軸芯に直交する方向視において、前記先行回転刈り刃の前記起風部の下方の前記起風部の後端よりも刈り刃回転方向前側に位置している。
【0007】
すなわち、先行回転刈り刃の起風部が先行回転刈り刃と共に回転して風を発生させる。この風の一部が先行回転刈り刃の前側から先行回転刈り刃の下方を通って起風部の後側に至るように流動し、先行回転刈り刃の前側を下降向きに流動する下降風による影響が先行回転刈り刃によって切断処理される草や芝に及ぶことになっても、後行回転刈り刃が先行回転刈り刃と一体回転していて先行回転刈り刃からの草や芝に切断作用する。このとき、先行回転刈り刃からの草や芝は、先行回転刈り刃の下側から起風部の後側に至って上昇流動する上昇風のために起立状態になっており、かつ、後行回転刈り刃の刃先が先行回転刈り刃の起風部の下方の起風部の後端よりも刈り刃回転方向前側に位置していることから、後行回転刈り刃は、起立状態にある草や芝に作用して、先行回転刈り刃による刈高さの不揃いや切断漏れを解消するように切断処理する。
【0008】
従って、本第1発明によれば、先行回転刈り刃の起風部によって風を発生させながら草や芝を切断処理するものでありながら、先行回転刈り刃からの草や芝が上昇風によって起立した状態になって後行回転刈り刃によって切断処理されて、全体としては切断漏れが発生しにくいとともに刈高さがよく揃った仕上がりによい刈り込み作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1と、左右一対の駆動自在な後車輪2とによって自走するように構成され、かつ、車体前部に位置したエンジン3を有した原動部、車体後部に位置した運転座席4を有した運転部が備えられた自走車体の車体フレーム5の前後輪1,2の間に、リンク機構6を介して草刈り装置10を連結するとともに、エンジン3の駆動力が車体後部に位置する伝動装置7から回転軸8を介して草刈り装置10に伝達されるように構成して、乗用型の草刈り機を構成してある。
【0010】
この草刈り機は、草や芝の刈り込み作業を行なうものであり、リンク機構6に連動された昇降シリンダ(図示せず)を伸縮操作すると、この昇降シリンダがリンク機構6を車体フレーム5に対して上下に揺動操作することにより、草刈り装置10を接地ゲージ輪11が地面上に接地した下降作業状態と、接地ゲージ輪11が地面上から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。草刈り装置10を下降作業状態にして自走車体を走行させると、草刈り装置10は、図2に示す如く刈り刃ハウジング12の内部に車体横方向に並んで位置する複数の駆動回動自在な刈り刃装置20によって草や芝を刈り込み処理し、切断された刈り草や刈り芝を各刈り刃装置20の回動によって発生した風によって刈りハウジング12の外部に排出していく。
【0011】
図2に示すように、刈り草装置10の前記各刈り刃装置20は、刈り刃ハウジング12の内部に車体上下向きの軸芯まわりで駆動回動自在に位置する刈り刃駆動軸13の下端部に中間部が一体回動自在に支持された一枚の先行ブレード21の一端側と他端側とで成る一対のブレード形の先行回転刈り刃22、及び、前記刈り刃駆動軸13の下端部に中間部が一体回動自在に支持された一枚の後行ブレード26の一端側と他端側とで成る一対のブレード形の後行回転刈り刃27を備えて構成してある。
【0012】
図2,3に示すように、各先行回転刈り刃22の先端側に、回転刈り刃回転方向前側に向かった刃先を有した切断刃23、この切断刃23よりも回転刈り刃回転方向後側に位置する起風部24を設けてある。各起風部24は、先行ブレード21の端部に設けた舌片部を、先行回転刈り刃22の回転軸芯としての刈り刃駆動軸13の回転軸芯Xに直交する方向視で回転刈り刃回転方向後側に至るほど高い配置高さに位置した湾曲状態に曲げ成形することによって構成してある。
【0013】
図3に明示するように、各後行回転刈り刃27の先端側に、回転刈り刃回転方向前側に向かった刃先28aを有した切断刃28を設けてある。
【0014】
前記先行ブレード21と、前記後行ブレード26とは、図2,3,5の如き配置関係になった状態で刈り刃駆動軸13に支持されている。
すなわち、後行ブレード26の中間部が先行ブレード21の中間部の上面側に重なって接触した配置関係になっている。また、一方の後行回転刈り刃27が一方の先行回転刈り刃22の刈り刃回転方向後側に位置し、他方の後行回転刈り刃27が、他方の先行回転刈り刃22の刈り刃回転方向後側に位置した配置関係になっている。さらに、一方の後行回転刈り刃27の刃先28aが、刈り刃回転軸芯Xに直交する方向視で一方の先行回転刈り刃22の起風部24の下方のこの起風部24の後端24aよりも回転刈り刃回転方向前側に位置し、他方の後行回転刈り刃27の刃先28aが、刈り刃回転軸芯Xに直交する方向視で他方の先行回転刈り刃22の起風部24の下方のこの起風部24の後端24aよりも回転刈り刃回転方向前側に位置にした配置関係になっている。
先行ブレード21の上面側に突設された一対の位置決め突起25が後行ブレード26に位置決め作用しており、先行ブレード21と後行ブレード26は、相対回転しないように互いに回り止めされた状態になっている
【0015】
これにより、草刈り装置10の各刈り刃装置20は、互いに寄り合った一方の先行回転刈り刃22と一方の後行回転刈り刃27とを有した刈り刃対と、互いに寄り合った他方の先行回転刈り刃22と他方の後行回転刈り刃27とを有した刈り刃対とを備えており、各刈り刃対における先行回転刈り刃22が後行回転刈り刃27に対して先行して回転する状態で先行回転刈り刃22と後行回転刈り刃27が回転軸芯Xまわりで一体回転するように各刈り刃対が刈り刃駆動軸13によって回転駆動され、各刈り刃対において、草や芝を先行回転刈り刃22の切断刃23によって切断処理する。このとき、図4に示す如く先行回転刈り刃22の前側から先行回転刈り刃22の下側を通る下降風aのために草や芝が倒れ気味になって切断漏れなどの切断不良が発生した草や芝が発生しても、先行回転刈り刃22が移動して先行回転刈り刃22の後側に位置した草や芝を、図5に示す如く先行回転刈り刃22の下方から起風部24の後側に流動して上昇流動する上昇風によって起立状態にしながら後行回転刈り刃27の切断刃28によって再度、切断処理する。そして、切断された刈り草や刈り芝を、各刈り刃対における先行回転刈り刃22の起風部24によって発生させた風によって刈り刃ハウジング12から外部に排出する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】乗用型草刈り機全体の側面図
【図2】草刈り装置の横断平面図
【図3】刈り刃装置の斜視図
【図4】回転刈り刃の回りの風の流れを示す説明図
【図5】刈り刃装置による切断作用を示す説明図
【符号の説明】
【0017】
22 先行回転刈り刃
24 起風部
24a 起風部の後端
27 後行回転刈り刃
28a 後行回転刈り刃の刃先
X 刈り刃回転軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起風部を備えたブレード形の先行回転刈り刃と、前記先行回転刈り刃の回転方向後側に位置する後行回転刈り刃とを一体回転自在に備え、前記後行回転刈り刃の刃先が、刈り刃回転軸芯に直交する方向視において、前記先行回転刈り刃の前記起風部の下方の前記起風部の後端よりも刈り刃回転方向前側に位置している草刈り機用の刈り刃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−262755(P2006−262755A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84198(P2005−84198)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】