説明

草刈り用作業機械及び草刈り作業機

【課題】刈り取られた草を適切に破砕できるとともに、破砕に必要な動力を低減することのできる技術を提供する。
【解決手段】カッター16及びシャフト15の上方を、前方から後方に亘って覆って、カッター16により刈り取られた草をシャフト15の上方を案内して後方に搬送する搬送空間を形成するカッターケース10を備え、カッターケース10は、シャフト15の軸Oに対して垂直上方となる位置Aより後方において、カッターケース10の内面とカッター16の通過領域の外周Lとの距離が初めて最短となるように構成されている。このため、位置Aより後方において最小すきま位置を確保できるとともに、それよりも前方においては、より広い領域を確保することができる。このため、刈り取られた草を搬送する場合に、草を重力に逆らって持ち上げる範囲において、狭い領域を通過させるための力が必要ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ハンマーナイフモア等のような自走式または乗用式の草刈り用作業機械及び、作業機械に装着可能な草刈り作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、堤防等の傾斜地や荒れ地等の不整地に生い茂る雑草や樹木を刈り取るために、ハンマーナイフモアのような草刈り用作業機械が用いられる(特許文献1)。草刈り用作業機械は、内蔵エンジンから生じる力を用いて、草や茎を刈取り、破砕する。
【0003】
このような草刈り用作業機械において、刈り取られた草によって、草刈り用作業機械内部の通路が目詰まりするのを防止するようにした技術が知られている(特許文献2,特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−225530号公報
【特許文献2】特開平10−248351号公報
【特許文献3】特開平11−275924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、ハンマーナイフモアのような草刈り用作業機械では、走行しながらカッターを高速回転させることにより多量の雑草等を刈り取り、さらに、刈り取った草や茎を、カッターの近傍を通過させて破砕して、外部に排出する。
【0006】
このような草刈り用作業機械では、刈り取られた草や茎がカッターと接触して破砕されるように、例えば、草や茎が刈り取られる位置の直後において、草等が搬送される領域は、カッターの通過する外周と所定の小さい間隔しかないような領域が構成されている。
【0007】
カッターは、草刈り用作業機械のエンジンやモータ等によって回転駆動されており、カッターを駆動させるために必要な動力をできるだけ低減することが要請されている。
【0008】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、刈り取られた草を適切に破砕できるとともに、必要な動力を低減することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、刈り取られた草等をカッターによって破砕するための限られた広さの領域が形成される位置に着目してなされたものである。
【0010】
本発明の第1の観点に従う草刈り用作業機械は、草刈り用のカッター(16)が設けられたシャフト(15)を草刈り面に対して略平行な軸(O)を中心に、草刈り前面側の下方から上方方向に回転させて草刈りを行う草刈り用作業機械(1)であって、前記カッター(16)及びシャフト(15)の前記草刈り面に対する上方を、前方から後方に亘って覆って、前記カッター(16)により刈り取られた草を前記シャフト(15)の上方を案内して後方に搬送する搬送空間を形成するハウジング(10)を備え、前記ハウジング(10)は、前記シャフト(15)の前記軸(O)に対して前記草刈り面の略垂直上方となる第1位置(A)より後方において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されている。
【0011】
上記草刈り用作業機械において、前記ハウジング(10)は、前記軸(O)を含み前記草刈り面と略平行な平面と交差する第2位置(C)において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されていてもよい。
【0012】
また、上記草刈り用作業機械において、前記ハウジング(10)は、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が、前記第2位置(C)より前方側(B)から徐々に短くなるように構成されていてもよい。
【0013】
また、上記草刈り用作業機械において、前記カッター(16)は、前記シャフト(15)に揺動可能にカッター接続部(17)により接続されており、前記ハウジング(10)は、前記カッター接続部(17)の最上位置を含み前記草刈り面と略平行な平面と交差する位置近傍(B)において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されていてもよい。
【0014】
また、本発明の第2の観点に従う草刈り作業機は、走行可能な作業機械(2、3)に装着可能であって、草刈り用のカッター(16)が設けられたシャフト(15)を草刈り面に対して略平行な軸(O)を中心に、草刈り前面側の下方から上方方向に回転可能な草刈り作業機(4)であって、前記カッター(16)及びシャフト(15)の前記草刈り面に対する上方を、前方から後方に亘って覆って、前記カッター(16)により刈り取られた草を前記シャフト(15)の上方を案内して後方に搬送する搬送空間を形成するハウジング(10)を備え、前記ハウジング(10)は、前記シャフト(15)の前記軸(O)に対して前記草刈り面の略垂直上方となる第1位置(A)より後方において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されている。
【0015】
また、本発明の第3の観点に従う草刈り作業機は、走行しながら草を刈る草刈り用作業機械(1)であって、作業車両本体(2)と、前記作業車両本体の下側に設けられる走行体(3)と、前記作業車両本体の前側に設けられる草刈り部(4)と、を備え、前記草刈り部は、刈り取った草を前方から後方に搬送するための搬送路を有し、前記搬送路は、入口側よりも出口側の方の搬送路の断面積が小さくなるように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の観点に従う草刈り用作業機械によれば、刈り取られた草を破砕するために必要なハウジング(10)の内面とカッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が最短となる領域を第1位置より後方の位置に初めて配置しているので、第1位置の前方においては、それよりも広い領域とすることができる。このため、刈り取られた草を搬送する場合に、刈り取られた草を重力に逆らって持ち上げる範囲において距離が最短となる領域を通過させることがないので、必要な動力を低減することができる。なお、第1位置より後方の位置においては、破砕するために必要な広さの領域を通過させることが必要になるが、この場合には、刈り取られた草の重力が領域を通過するために働くので、必要な動力を低減できる。さらに、刈り取られた直後の位置において、草を搬送するために比較的広い領域を確保することができるので、刈り取られた草によって、これから刈り取ろうとしている草が押しつぶされるということを適切に防止することができ、刈り残りを適切に低減することができる。
【0017】
また、ハウジング(10)は、前記軸(O)を含み前記草刈り面と平行な平面と交差する第2位置(C)において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成すれば、より効果的に必要な動力を低減することができる。
【0018】
また、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が、前記第2位置(C)より前方側(E)から徐々に短くなるように構成されていれば、搬送される草等が詰まってしまうことを防止でき、必要な動力を低減することができる。
【0019】
また、本発明の第2の観点に従う草刈り作業機によれば、刈り取られた草を破砕するために必要なハウジング(10)の内面とカッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が最短となる領域を第1位置より後方の位置に初めて配置しているので、第1位置よりも前方においては、それよりも広い領域とすることができる。このため、刈り取られた草を搬送する場合に、刈り取られた草を重力に逆らって持ち上げる範囲において距離が最短となる領域を通過させることがないので、必要な動力を低減することができる。なお、第1位置より後方の位置においては、破砕するために刈り取られた草を破砕するために必要な所定の限られた広さの領域を第1位置より後方の位置で確保でき、第1位置よりも前方においては、その領域よりも広い領域とすることができる。このため、刈り取られた草を搬送する場合に、刈り取られた草を重力に逆らって持ち上げる範囲において、狭い領域を通過させるための力が必要ないので、必要な動力を低減することができる。なお、第1位置より後方においては、破砕するために必要な領域を通過させることが必要になるが、この場合には、刈り取られた草の重力が領域を通過するために働くので、必要な動力を低減できる。さらに、刈り取られた直後の位置において、草を搬送するために広い領域を確保することができるので、刈り取られた草によって、これから刈り取ろうとしている草が押しつぶされるということを適切に防止することができ、刈り残りを適切に低減することができる。
【0020】
また、本発明の第3の観点に従う草刈り作業機によれば、刈り取られた草の入口側の搬送路の断面積を、広く確保することができるので、刈り取られた草によって、これから刈り取ろうとしている草が押しつぶされるということを適切に防止することができ、刈り残りを適切に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、「草刈り用作業機械」として、ハンマーナイフモアを例に挙げて説明する。
【0022】
図1は、ハンマーナイフモア1の斜視図である。ハンマーナイフモア1は、ハンマーのようなカッター16(図2参照)を高速回転させながら走行することにより、雑草や小型の樹木等を刈取り、破砕する機械である。ハンマーナイフモア1は、例えば、走行可能な「作業機械」としての車両本体2及びクローラ3と、「草刈り作業機」としての作業機4とを備えて構成される。
【0023】
車両本体2の下側には、クローラ3が設けられている。車両本体2は、外装5によって覆われている。車両本体2の外装5の内部には、エンジン(図示せず)や油圧装置(図示せず)が収容されている。
【0024】
車両本体2の上側には、カバー6が開閉可能に取り付けられている。カバー6の基端側は、車両本体2の前側に回動可能に取り付けられている。カバー6の先端側は、操縦装置8側に向けて延びるようにして設けられている。これにより、カバー6は、車両本体2の上側を覆うようにして、開閉可能に設けられる。カバー6を開くことにより、オペレータは、内部のエンジンや油圧機械等の整備等を行うことができる。車両本体2の後側下部には、ステップ7が設けられている。オペレータは、ステップ7に立って、ハンマーナイフモア1を操作することができる。
【0025】
車両本体2の前側には、作業機4が上下に調整可能に装着されている。なお、草刈りを行う際には、作業機4は、所定の高さに調整されることとなる。作業機4は、例えば、「ハウジング」の一例としてのカッターケース10と、カッターカバー11と、左右両側のリンク12と、左右両側のバネ13と、左右両側のソリ14と、「シャフト」の一例としての回転軸15(図2参照)及び複数のカッター16(図2参照)とを備えている。
【0026】
カッターケース10は、回転軸15及びカッター16の周囲、例えば、回転軸15及びカッター16の側面及び上方を覆うとともに、カッター16によって刈り取られた草等を、回転軸15及びカッター16の上方から後方に向けて搬送する搬送領域を形成している。カッターケース10の前側の下部には、カッターカバー11がリンク12及びバネ13を介して、開閉可能に取り付けられている。この構成により、刈取り対象物である雑草等の背丈に応じて、カッターカバー11の開口量が変化する。雑草の背丈が低い場合、カッターカバー11の開く量は小さくなる。これにより、小石等がカッターケース10内から前方に飛散するのを防止する。雑草の背丈が高い場合、カッターカバー11には開方向(上方向)への力が加わり、カッターカバー11の開く量は大きくなる。これにより、背丈の高い雑草を大量にカッターケース10内に取り込んで、破砕することができる。カッターケース10の両側面の下側には、ソリ14が設けられている。
【0027】
図2は、カッターカバー11を開いた状態で示す正面図である。カッターケース10内に設けられた回転軸15は、例えば、油圧モータ等によって回転される。本実施形態では、回転軸15は、アッパカット方向、すなわち、下側から前面(図面手前方向)を通って上側に至る方向に回転される。回転軸15には、その軸方向に離間して、ハンマーナイフ型のカッター16が複数設けられている。カッター16は、回転軸15に対して、カッター接続部17を介して揺動可能に接続されている。
【0028】
図3は、作業機4の側面断面図である。
【0029】
図3においては、通常の草刈りを行う際における草刈り面としての地面Gと作業機4の位置関係を示しており、草刈り時には、矢印M方向に作業機4が移動されることとなる。したがって、図面左側が草刈り時における前側を示し、図面右側が後側を示している。
【0030】
回転軸15は、地面Gに対して平行な軸Oを中心に、時計回り方向(R方向)に回転駆動されるようになっている。回転軸15には、カッター16が設けられている。回転軸15が回転すると、カッター16は、外周L(カッター外周という)の内側の領域を通過する。外周Lの内側の領域では、カッター16が通過するので、この範囲に存在する草等は、カッター16によって破砕されることとなる。
【0031】
ここで、軸Oに対して垂直な面における、軸Oから前方に伸びる辺とのなす角度を用いて説明することとする。例えば、軸Oに対して直前方向が0度であり、軸Oを中心に時計回り方向に角度が増加し、軸Oの真上の位置が90度であり、軸Oに対して直後の方向が180度として表される。
【0032】
カッターケース10の内面は、軸Oに対して30度の位置において、外周Lとの距離が例えば、146.1mmとなるように構成され、更に、150度の位置Bに至るまで、徐々に外周Lとの距離が短くなり、150度の位置Bにおいて、外周Lとの距離が初めて最短(例えば、109mm)となる。ここで、位置Bは、カッター16を回転軸15に接続するカッター接続部17が最も上方にくる位置(最上位置)を含み、草刈り面と略平行な平面と交差する位置の近傍となっている。最短距離は、回転軸15の上方を搬送される刈り取られた草等を、所望の大きさ以下に破砕するために要求とされる距離となっている。ここで、カッターケース10の内面と外周Lとの距離が最小になる位置を最小すきま位置ということとする。カッターケース10の内面は、150度以降において徐々に外周Lとの距離が長くなるように構成されている。この構成によると、カッター16の外周Lとカッターケース10の内面との距離を所定の最短距離にすることができるので、刈り取られた草を所定の大きさ以下に破砕することができる。さらに、最小すきま位置、すなわち、刈り取られた草の通過領域が最も狭くなる部分を位置Aよりも後方に初めて位置させているので、刈り取られた草の重力がカッター16の回転に対しての負荷となると考えられる範囲において、刈り取られた草を狭くなる領域に押し込む力が必要ないため、その範囲で必要となる動力を低減することができる。
【0033】
このような構成により、図面左側において刈り取られた草等は、回転軸15により回転されるカッター16によって、回転軸15の上方においてカッターケース10の内面との間の空間を後方へ搬送される。その際、カッター16の外周Lの内側に搬送されている草は、カッター16によって破砕される。更に、最小すきま位置において、より多くの草がカッター16の外周Lの内部に入り込むこととなり、草を所望の大きさ以下により効果的に破砕することができる。
【0034】
そして、回転軸15とカッターケース10との間で破砕された草は、カッターケース10に沿って搬送されて、クローラ3の直前の地面に落下する。これにより、破砕された草は、直後に通過するクローラ3によって踏みつけられることとなり、破砕された草が舞い上がることを抑制することができる。
【0035】
上記実施形態によれば、最小すきま位置を確保できるとともに、それよりも前方においては、最小すきま位置の領域より広い領域を確保することができる。このため、刈り取られた草を搬送する場合に、草を重力に逆らって持ち上げる範囲において、狭い領域を通過させるための力が必要ない。そのため、必要な動力を低減することができる。
【0036】
次に、本実施形態の草刈り用作業機械による効果を説明するために、最小すきま位置の違いによる回転軸15の回転に必要となる動力(必要草刈動力)の違いを、試験結果を用いて詳細に説明する。
【0037】
図4は、最小すきま位置の違いによる必要草刈動力の測定試験に使用した作業機の側面断面図である。
【0038】
試験においては、図3に示すカッターケース10に代えて、図4に示すカッターケース30を備えた作業機4を用いている。
【0039】
試験に使用した作業機4は、カッターケース30は、外周Lと一定の間隔(147mm)を持った内面を有しており、最小すきま位置となる内面を形成するための内面形成部材30Aの位置を変えて設置可能となっている。試験においては、内面形成部材30Aを、45度の位置、90度の位置、180度の位置のいずれか一箇所に設置して、その場合における必要草刈動力を測定した。本試験においては、刈り取る草の量を約0.3kg/mとし、刈り取り方向へのハンマーナイフモア1の移動速度を約6.0km/hとした。
【0040】
図5は、図4に示す作業機4による試験により得られた最小すきま位置と必要草刈動力との関係図である。
【0041】
試験によると、図5に示すように、最小すきま位置を45度に設置した場合には、必要草刈動力が12.15PSであり、90度に設置した場合には、必要草刈動力が10.81PSであり、180度に設置した場合には、9.62PSであった。なお、内面形成部材30Aを設置しなかった場合には、破線Iに示すように、必要草刈動力が9.33PSであった。
【0042】
図5によれば、破線Jに示すように、90度よりも前方に最小すきま位置を設けた場合には、必要となる動力が高いことがわかる。また、後方に最小すきま位置を設けるほど必要となる動力を低減することができることがわかる。例えば、180度に最小すきま位置を設けた場合には、最小すきま位置を設けなかった場合とほとんど変わらない必要草刈動力となり、効果的に動力を低減することができることがわかる。
【0043】
この結果から、最小すきま位置をより後方に位置させることが必要草刈動力の低減することができることがわかる。例えば、最小すきま位置は、90度〜180度の間に設置するようにすれば必要草刈動力を低減することができる。このように設置すると、作業機4の後方側のサイズを小さくすることができるので、作業機4の上下動を抑制でき、刈り残りを低減することができる。
【0044】
図6は、作業機4のカッターケース10の変形例を説明する図である。図6は、カッターケース10と、カッター外周Lとの間の刈り取った草が搬送される搬送路の断面積との関係を示している。図6(a)は、図3に示すカッターケース10により形成される搬送路の断面積のグラフを示している。図6(a)に示すように、カッターケースにより構成される搬送路を、入口側から徐々に断面積が小さくなっていき、180度よりも前の位置で最小断面積sとなり、その後、断面積が徐々に大きくなるようにしてもよい。
【0045】
本実施形態におけるカッターケース10としては、次のような断面積となるカッターケースを用いてもよい。
【0046】
図6(b)は、第1の変形例に係るカッターケースにより形成される搬送路の断面積のグラフである。図6(b)に示すように、カッターケースにより構成される搬送路を、入口側から徐々に断面積が小さくなっていき、180度の位置で、最小断面積sとなるようにしてもよい。
【0047】
図6(c)は、第2の変形例に係るカッターケースにより形成される搬送路の断面積のグラフである。図6(c)に示すように、カッターケースにより構成される搬送路を、入口側から一定の断面積を維持し、90度以降において徐々に断面積が小さくなっていき、180度よりも前の位置で最小断面積sとなり、最小断面積sを維持するようにしてもよい。
【0048】
図6(d)は、第3の変形例に係るカッターケースにより形成される搬送路の断面積のグラフである。図6(d)に示すように、カッターケースにより構成される搬送路を、入口側から一定の断面積を維持し、出口側(後方側)にいくにつれて、徐々に断面積が小さくなっていき、180度よりも前の位置で最小断面積sとなり、その後、断面積が徐々に大きくなるようにしてもよい。
【0049】
図6(e)は、第4の変形例に係るカッターケースにより形成される搬送路の断面積のグラフを示している。図6(e)に示すように、カッターケースにより形成される搬送路を、入口側(前方側)から一定の断面積となっており、出口側(後方側)では、180度に近づくにつれて断面積が減少していき、180度において最小断面積s(最小すきま位置における断面積)となるようにしてもよい。
【0050】
図7は、第4の変形例に係るカッターケースにおける作業機4の側面の断面図である。なお、同図においては、作業機4の一部の構成のみを図示している。
【0051】
図7においては、通常の草刈りを行う際における草刈り面としての地面Gと作業機4の位置関係を示しており、草刈り時には、矢印M方向に作業機4が移動されることとなる。したがって、図面左側が草刈り時における前側を示し、図面右側が後側を示している。
【0052】
回転軸15は、地面Gに対して平行な軸Oを中心に、時計回り方向(R方向)に回転駆動されるようになっている。回転軸15には、カッター16が設けられている。回転軸15が回転すると、カッター16は、外周L(カッター外周という)の内側の領域を通過する。外周Lの内側の領域では、カッター16が通過するので、この範囲に存在する草等は、カッター16によって破砕されることとなる。
【0053】
カッターケース10の内面は、軸Oに対して45度の位置において、外周Lとの距離が例えば、147mmとなるように構成され、更に、45度の位置から90度の位置Aを越えて135度を超えた位置Eまで、外周Lとの距離が一定となるように構成されている。
【0054】
また、カッターケース10の内面は、位置Eから180度の位置Cに至るまで、徐々に外周Lとの距離が短くなり、180度の位置Cにおいて、外周Lとの距離が初めて最短(例えば、94mm)となるように構成されている。この最短距離は、回転軸15の上方を搬送される刈り取られた草等を、所望の大きさ以下に破砕するために要求とされる距離となっている。ここで、カッターケース10の内面と外周Lとの距離が最小になる位置を最小すきま位置ということとする。この構成によると、カッター16の外周Lとカッターケース10の内面との距離を所定の最短距離にすることができるので、刈り取られた草を所定の大きさ以下に破砕することができる。さらに、最小すきま位置、すなわち、刈り取られた草の通過領域が最も狭くなる部分を位置Aより後方に初めて位置させているので、刈り取られた草の重力がカッター16の回転に対しての負荷となると考えられる範囲において、刈り取られた草を狭くなる領域に押し込む力が必要ないため、その範囲で必要となる動力を低減することができる。
【0055】
また、本変形例では、カッターケース10の後方側の面10Aを、地面Gに対して略垂直となるように構成している。これによって、作業機4の大きさを小さくすることができる。このため、作業機4を装着する車体本体2との間隔を狭めることができる。車体本体2の装着位置との間隔を狭めることができるので、作業機4に外部から加えられる上下方向への力が作業機4の上下動に与える影響を低減することができ、刈り残りを低減することができる。
【0056】
また、本変形例では、カッターケース10の内面と外周Lとの距離を短くする開始位置を、例えば、カッター16の外周Lと同じ高さの位置Dよりも後方側の位置Eとしている。位置Eは、カッター16の外周よりも低い位置であるので、カッター16による力が水平より上方に作用する範囲、すなわち、草を上方に持ち上げるために動力が消費される範囲において、刈り取った草を狭くなる領域に押し込む必要がないため、その範囲で消費される動力を低減することができる。
【0057】
このような構成により、図面左側において刈り取られた草等は、回転軸15により回転されるカッター16によって、回転軸15の上方においてカッターケース10の内面との間の空間を後方へ搬送される。その際、カッター16の外周Lの内側に搬送されている草は、カッター16によって破砕される。更に、最小すきま位置において、より多くの草がカッター16の外周Lの内部に入り込むこととなり、草を所望の大きさ以下により効果的に破砕することができる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、草刈り用作業機械として、車両の後方にオペレータが立って操作する形式のハンマーナイフモアを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、乗用車型の草刈り作業機械や手押し式の草刈り作業機械、または各種農業機械にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ハンマーナイフモアの斜視図。
【図2】作業機の正面図。
【図3】作業機の側面断面図。
【図4】最小すきま位置の測定に使用した作業機の側面断面図。
【図5】最小すきま位置と必要草刈り動力との関係図。
【図6】作業機のカッターケースの変形例の説明図。
【図7】変形例に係る作業機の側面断面図。
【符号の説明】
【0060】
1…ハンマーナイフモア、2…車両本体、3…クローラ、4…作業機、5…外装、6…カバー、7…ステップ、8…操縦装置、10…カッターケース、11…カッターカバー、12…リンク、13…バネ、14…ソリ、15…回転軸、16…カッター、L…外周。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草刈り用のカッター(16)が設けられたシャフト(15)を草刈り面に対して略平行な軸(O)を中心に、草刈り前面側の下方から上方方向に回転させて草刈りを行う草刈り用作業機械(1)であって、
前記カッター(16)及びシャフト(15)の前記草刈り面に対する上方を、前方から後方に亘って覆って、前記カッター(16)により刈り取られた草を前記シャフト(15)の上方を案内して後方に搬送する搬送空間を形成するハウジング(10)を備え、
前記ハウジング(10)は、前記シャフト(15)の前記軸(O)に対して前記草刈り面の略垂直上方となる第1位置(A)より後方において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されている
草刈り用作業機械。
【請求項2】
前記ハウジング(10)は、前記軸(O)を含み前記草刈り面と略平行な平面と交差する第2位置(C)において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されている
請求項1に記載の草刈り用作業機械。
【請求項3】
前記ハウジング(10)は、前記ハウジング(10)の前記内面と前記シャフト(15)の前記軸(O)との距離が、前記第2位置(C)より前方側(E)から徐々に短くなるように構成されている
請求項2に記載の草刈り用作業機械。
【請求項4】
前記カッター(16)は、前記シャフト(15)に揺動可能にカッター接続部(17)により接続されており、
前記ハウジング(10)は、前記カッター接続部(17)の最上位置を含み前記草刈り面と略平行な平面と交差する位置近傍(B)において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されている
請求項1に記載の草刈り用作業機械。
【請求項5】
走行可能な作業機械(2、3)に装着可能であって、草刈り用のカッター(16)が設けられたシャフト(15)を草刈り面に対して略平行な軸(O)を中心に、草刈り前面側の下方から上方方向に回転可能な草刈り作業機(4)であって、
前記カッター(16)及びシャフト(15)の前記草刈り面に対する上方を、前方から後方に亘って覆って、前記カッター(16)により刈り取られた草を前記シャフト(15)の上方を案内して後方に搬送する搬送空間を形成するハウジング(10)を備え、
前記ハウジング(10)は、前記シャフト(15)の前記軸(O)に対して前記草刈り面の略垂直上方となる第1位置(A)より後方において、前記ハウジング(10)の内面と前記カッター(16)の通過領域の外周(L)との距離が初めて最短となるように構成されている
草刈り作業機。
【請求項6】
走行しながら草を刈る草刈り用作業機械(1)であって、
作業車両本体(2)と、
前記作業車両本体の下側に設けられる走行体(3)と、
前記作業車両本体の前側に設けられる草刈り部(4)と、を備え、
前記草刈り部は、
刈り取った草を前方から後方に搬送するための搬送路を有し、前記搬送路は、入口側よりも出口側の方の搬送路の断面積が小さくなるように構成されている
草刈り用作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−283884(P2008−283884A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130282(P2007−130282)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(307009883)ハスクバーナ・ゼノア株式会社 (66)
【Fターム(参考)】