説明

草刈作業機

【課題】草刈時の作業効率を向上できる草刈作業機を提供すること。
【解決手段】草刈作業機1は回転駆動式のカッタ44、54を有する草刈機4、5とカッタ44,54の駆動源および走行装置2が設けられた車両本体3とを備え、草刈機4、5が車両本体3を挟んで進行方向の前後に1つずつ設けられている。また、進行方向の前方側の前記草刈機では、前記カッタが進行方向に対してダウンカット方向に回転され、進行方向の後方側の前記草刈機では、前記カッタが進行方向に対してアップカット方向に回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈作業機に係り、特に、回転駆動式のカッタを備えた草刈作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転駆動式のカッタを有する草刈機を車体前方側に備えた草刈作業機が知られている。このような草刈作業機においては、進行方向に対して草をアップカットまたはダウンカットする方向にカッタを回転させることで、草を刈ることができる。
【0003】
また、車体前方側の草刈機に一対のカッタを設けた草刈作業機も知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の草刈作業機では、車体前方側に一対のカッタを前後方向に並べて配置し、前方のカッタを進行方向に対してダウンカットする方向に回転させ、後方のカッタをアップカットする方向に回転させている。これにより、ダウンカット方向に回転しているカッタが、倒れ込んだ草に接触して起こすとともに、回転するカッタの外周に沿って草を後方側になびかせる。その後、後方側のカッタのアップカットにより、後方側になびいた草を効果的に刈り取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−035840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、草刈作業は、刈り取り場所の端の位置でUターンして、走行レーンをずらしながら往復走行することで行われる。しかしながら、草刈作業機は重量が重く、傾斜地でのUターンが困難である。特に、特許文献1のように、一対のカッタが設けられた草刈作業機は、車体前方のカッタ収容部分が大きくなるので、傾斜地でのUターンがより困難になる。このため、堤防のような傾斜地で草刈作業を行う場合は、草刈作業機を平坦地まで移動してUターンさせる必要がある。従って、その分だけ作業時間が長くなり、作業効率が低下してしまう。
【0006】
ここで、Uターンするかわりに、後進しながら草刈を行うことが考えられるが、後進時は走行装置が前方側となって走行するため、刈ろうとする草が走行装置により倒されてしまうという現象が生じる。このような場合には、カッタが理想的な角度で草に接触できなくなって表面を擦るだけとなるため、刈り残しが増え、かえって作業効率が低下することになる。
【0007】
本発明の目的は、草刈時の作業効率を向上できる草刈作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の草刈作業機は、回転駆動式のカッタを有する草刈機と、前記カッタの駆動源および走行装置が設けられた車両本体とを備え、前記草刈機は、前記車両本体を挟んで進行方向の前後に1つずつ設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記進行方向の前方側の前記草刈機では、前記カッタが前記進行方向に対してダウンカット方向に回転され、前記進行方向の後方側の前記草刈機では、前記カッタが前記進行方向に対してアップカット方向に回転されることを特徴とする。
ここで、ダウンカット方向とは、刈ろうとする草の取り込み側で、カッタが上方から下方に向けて回転する方向をいう。また、アップカット方向とは、ダウンカット方向と反対に、刈ろうとする草の取り込み側で、カッタが下方から上方に向けて回転する方向をいう。
【発明の効果】
【0010】
以上において、本発明によれば、草刈作業機には、車両本体を挟んで進行方向の前後に草刈機が設けられているため、その場で走行装置の駆動を逆転させ、それまで進行方向の後方側だった草刈機を前方側として走行するだけで、草刈作業機の進行方向を反転することができる。従って、草刈作業機を平坦地まで移動してUターンさせる必要がなくなるので、草刈時の作業時間の短縮を図ることができ、作業効率を向上できる。
【0011】
本発明において、進行方向の前方側の草刈機では、カッタが進行方向に対してダウンカット方向に回転され、進行方向の後方側の草刈機では、カッタが進行方向に対してアップカット方向に回転される場合、何れの草刈機側を進行方向としても、常に進行方向前方側の草刈機のカッタがダウンカット方向に回転するので、外部への小石の飛散を抑制できる。
【0012】
また、草刈作業機は、車両本体の後方側にも草刈機を備えるとともに、進行方向後方側の草刈機のカッタは、ダウンカット方向よりも効果的に草刈が行えるアップカット方向に回転されるので、前方側の草刈機で刈り切れなかった草を、車両本体の後方側の草刈機で再び刈り取ることができ、刈り残しを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る草刈作業機の全体を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る草刈作業機1の全体を示す側面図である。図1において、草刈作業機1は、クローラ式の走行装置2が設けられた車両本体3と、この車両本体3を挟んで進行方向の前後に設けられた草刈機4,5とを備え、草刈機4,5が他のアタッチメントと交換可能に車両本体3に着脱自在とされた構成である。
【0015】
走行装置2は、車両本体3内に搭載されたエンジン6および図示略の油圧駆動装置等によって駆動され、車両本体3には、無線受信機7が設けられている。草刈作業機1は、この無線受信機7および図示しない操縦用コントローラを用いた無線操縦により、草刈機4および草刈機5のどちら側の方向にも走行可能に構成されている。
【0016】
草刈機4,5はハンマーナイフ式であるとともに、車両本体3に取り付けられる図示しないリフトシリンダによって上下にリフト可能に構成されている。この草刈機4,5は、左右に一対のソリ41,51が設けられた無底箱状のカッタケース42,52を備え、カッタケース42,52の内部には、両側の側面板43,53に回転自在に支持されたカッタ44,54が収容されている。
【0017】
カッタケース42,52には、カッタ44,54を駆動するためのプーリ等で構成された図示しない動力伝達装置が設けられ、カッタ44,54の駆動源でもあるエンジン6の出力が、この動力伝達装置を介してカッタ44,54に伝達される。また、各カッタケース42,52における車両本体3との反対側には、小石の飛散を防止するためのフロントカバー45,55が取り付けられている。
【0018】
カッタ44,54はそれぞれ、回転自在なシャフト441,541の外周から複数のハンマーナイフ442,542が径方向の外側に突設された構成である。
ここで、各草刈機4,5のカッタ44,54の回転方向はそれぞれ反対向きであり、草刈作業機1の進行方向に関わらず、進行方向前方側の草刈機4,5のカッタ44,54が進行方向に対してダウンカット方向となるように回転し、後方側の草刈機4,5のカッタ44,54が進行方向に対してアップカット方向となるように回転する。
【0019】
例えば、図1の草刈機4側を草刈作業機1の進行方向とした場合、図に破線の矢印Aで示すように、草刈機4のカッタ44が進行方向に対してダウンカットとなるように回転し、破線の矢印Bで示すように、車両本体3を挟んで後方側の草刈機5のカッタ54がアップカットとなるように回転する。カッタ44,54の回転速度は、本実施形態では略同じに設定されている。
【0020】
フロントカバー45,55は、各側面板43,53に回動自在に設けられた回動アーム451,551により、上方に回動自在となっている。また、フロントカバー45,55の上端には、コイルばね452,552の一端が係止され、このコイルばね452,552の他端が側面板43,53の所定位置に係止されている。このようなコイルばね452,552は、フロントカバー45,55の上方への回動をアシストする。
【0021】
以上のような構成の草刈作業機1によれば、車両本体3を挟んで進行方向の前後に草刈機4,5が設けられているので、その場で走行装置2の駆動を逆転させ、それまで進行方向の後方側だった草刈機4,5を前方側として走行するだけで、草刈作業機1の進行方向を反転させることができる。従って、堤防のような傾斜地での草刈作業時において、草刈作業機1を平坦地まで移動してUターンさせる必要がなくなるので、作業時間の短縮を図ることができる。
【0022】
また、本実施形態の草刈作業機1によれば、何れの草刈機4,5を進行方向の前方側として走行しても、常に進行方向前方側の草刈機4,5のカッタ44,54が進行方向に対してダウンカット方向に回転するので、外部への小石の飛散が抑制される。加えて、フロントカバー45,55が設けられているので、もし前方側のカッタ44,54により小石が弾き飛ばされても、小石がフロントカバーに当たり、外部へ飛散するのを防止できる。
【0023】
このように、常に進行方向前方側の草刈機4,5のカッタ44,54を進行方向に対してダウンカット方向に回転することで、外部への小石の飛散が抑制されるため、例えば、カッタ44,54を進行方向に対してアップ方向に回転した場合に必要となる簾状のチェーンを、フロントカバー45,55の端縁に垂設する必要がなくなる。
【0024】
さらに、草刈作業機1は、車両本体3の後方側に草刈機4,5を備えており、進行方向前方側の草刈機4,5で刈り切れなかった草を、後方側の草刈機4,5のカッタ44,54のアップカットにより再び刈り取るので、刈り残しを低減できる。
また、刈り残しがあった場合でも、走行装置2の駆動を逆転させ、草刈作業機1の進行方向をその場で反転させることで、仕上げ刈りを行うことができる。従って、仕上げ刈りのためだけに、草刈作業機1を平坦地まで移動してUターンさせる必要がなくなるので、この点においても作業時間の短縮に貢献できる。
【0025】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、カッタ44,54にはハンマーナイフ442,542が取り付けられていたが、本発明の草刈作業機1では、カッタ刃の種類に関わらず、回転駆動式のカッタ44,54が設けられていればよい。すなわち、カッタ44,54の回転により草を刈ることが可能であれば、カッタ44,54にハンマーナイフ442,542を用いるかどうかは任意である。
【0026】
前記実施形態では、草刈作業機1は、エンジン6を駆動源として走行装置2およびカッタ44,54を駆動していたがこれに限られない。要するに、草刈作業機1にいて、車両本体3に設けられた走行装置2と、車両本体3を挟んで進行方向の前後に設けられた草刈機4,5のカッタ44,54とが駆動できればよく、例えば、走行装置2およびカッタ44,54を電気モータで駆動してもよい。
【0027】
前記実施形態では、カッタ44,54の回転速度が略同じになるように設定されていたが、それぞれの回転速度を変えてもよく、カッタ44,54のいずれの回転速度を速くし、いずれを遅くするかは、その実施にあたって適宜に決められてよい。
【0028】
前記実施形態の草刈作業機1には、無線操縦用の無線受信機7が設けられていたが、本発明の草刈作業機1は、オペレータが起立姿勢で乗り込む操縦台を設けた構成であってもよく、また、操縦台上に着座シートが設けられた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、無線操縦式の草刈作業機に利用できる他、オペレータが搭乗して操縦する草刈作業機にも利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…草刈作業機、2…走行装置、3…車両本体、4,5…草刈機、44,54…カッタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草刈作業機であって、
回転駆動式のカッタを有する草刈機と、
前記カッタの駆動源および走行装置が設けられた車両本体とを備え、
前記草刈機は、前記車両本体を挟んで進行方向の前後に1つずつ設けられている
ことを特徴とする草刈作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の草刈作業機において、
前記進行方向の前方側の前記草刈機では、前記カッタが前記進行方向に対してダウンカット方向に回転され、
前記進行方向の後方側の前記草刈機では、前記カッタが前記進行方向に対してアップカット方向に回転される
ことを特徴とする草刈作業機。

【図1】
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【公開番号】特開2011−87482(P2011−87482A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242042(P2009−242042)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(307009883)ハスクバーナ・ゼノア株式会社 (66)
【Fターム(参考)】