説明

草刈装置

【課題】移動農機のエンジンの稼動状態に影響されることなく安定して刈取作業が行えるとともに、着脱等の取り扱いが容易な草刈装置の提供を目的とする。
【解決手段】移動農機である田植機1の走行機体3の前部または後部に具備される昇降リンク機構20に着脱可能な草刈装置100であって、昇降リンク機構20に着脱自在に取り付けられる連結ブラケット31と、連結ブラケット31に取り付けられる刈取用エンジン32と、連結ブラケット31に取り付けられ、刈取用エンジン32によって駆動される油圧ポンプ33と、連結ブラケット31に取り付けられ、油圧ポンプ33が送り出す作動油が溜められる作動油タンク34と、連結ブラケット31に取り付けられる平行リンク機構40と、平行リンク機構40に取り付けられ、油圧ポンプ33が送り出す作動油によって駆動される刈取機構50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動農機に装着可能な草刈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機や乗用型管理機等の移動農機に装着される草刈装置が公知となっている。このような草刈装置においては、乗用型田植機の場合には、走行機体の後部に具備される昇降リンク機構に着脱自在に構成される。具体的には、草刈装置の刈取機構が連結ブラケットを介して昇降リンク機構に着脱可能に支持される。刈取機構は、PTO軸からの動力により駆動される油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている草刈装置は、植付部を駆動するPTO軸により油圧ポンプが駆動されるため、走行部を停止するとPTO軸の回転も停止され、草刈作業が走行開始位置と走行停止位置で刈取ムラが生じてしまう。また、PTO軸は車速に連動されるので、低速走行時と高速走行時で刈刃の回転数が異なり、刈取の仕上が異なることとなっていた。
また、乗用型管理機に草刈装置を装着した技術が公知なっている。例えば、特許文献2に記載の如くである。この場合、乗用型管理機の走行機体のエンジンの近傍に設けられた油圧ポンプ、または、PTO軸により駆動される油圧ポンプから作動油が供給されていたため、作動油の圧力が乗用型田植機のエンジンの稼動状態に影響される。つまり、水田などを走行しながら草刈作業を行うと、走行負荷が増加して草刈装置の回転数が減少し、草刈作業が円滑に行えない場合があった。また、油圧ポンプが走行機体に設けられるエンジンの近傍に配設されていると、油圧ポンプから草刈機構までの配管が複雑になり草刈装置の着脱等の取り扱いが煩雑になり、ポンプ容量が走行機体に装着される油圧ポンプにより定まるため、ポンプ容量に合わせた草刈装置が必要となる。また、草刈装置を昇降するための、昇降機構及び油圧装置が必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−60256号公報
【特許文献2】特許第3735961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、移動農機のエンジンの稼動状態に影響されることなく安定して刈取作業が行えるとともに、着脱等の取り扱いが容易な草刈装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、請求項1においては、移動農機の走行機体の前部または後部に具備される昇降リンク機構に着脱可能な草刈装置であって、前記昇降リンク機構に着脱自在に取り付けられる連結ブラケットと、前記連結ブラケットに取り付けられる刈取用エンジンと、前記連結ブラケットに取り付けられ、前記刈取用エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記連結ブラケットに取り付けられ、前記油圧ポンプが送り出す作動油が溜められる作動油タンクと、前記連結ブラケットに取り付けられる平行リンク機構と、前記平行リンク機構に取り付けられ、前記油圧ポンプが送り出す作動油によって駆動される刈取機構と、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記刈取用エンジンは、前記連結ブラケットの左右略中央に取り付けられ、前記油圧ポンプ及び前記作動油タンクは、前記連結ブラケットの左右一側に取り付けられ、前記平行リンク機構は、前記連結ブラケットの左右他側に取り付けられることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3においては、前記作動油タンクは、前記油圧ポンプの上側であって前記油圧ポンプと重複する位置に取り付けられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
即ち、請求項1に係る発明によれば、草刈装置が備えている刈取用エンジンによって草刈機構が駆動される。このため、移動農機のエンジンの稼動状態に影響されることなく安定して刈取作業が行える。加えて、移動農機のエンジンの定格出力やPTOの回転数や油圧ポンプの容量等を考慮する必要がない。
また、連結ブラケットを介して昇降リンク機構に草刈装置が取り付けられているので、油圧配管が簡素化されるとともに移動農機から一体的に着脱することができる。このため、草刈装置(刈取用エンジン、油圧ポンプ、作動油タンク、草刈機構及びこれらを連結する配管等)の着脱、格納や調整等の取り扱い等を容易にすることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、油圧ポンプ等と草刈機構とを連結ブラケットの左右に取り付けることで、草刈装置の左右バランスが均一に近づく。このため、草刈装置が移動農機の走行時に大きく揺れることがなく、草刈装置の着脱等の取り扱いも容易にすることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、作動油タンクを取り付ける部分を連結ブラケットに設ける必要がない。このため、連結ブラケットが小さくなり草刈装置の着脱等の取り扱いを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る草刈装置が装着された乗用型田植機の構成を示す左側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る草刈装置に具備される連結ブラケットの後面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る草刈装置に具備される連結ブラケットの左側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る草刈装置の構成を示す上面図。
【図5】本発明に係る草刈装置に具備された草刈機構の構成を模式的に示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る草刈装置を乗用型田植機から取り外す状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、草刈装置100が装着された田植機1の全体的な構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0015】
本発明に係る移動農機の一実施形態である田植機1は、作業者が搭乗した状態で水田への苗の植付作業を行うものである。図1に示すように、田植機1は、走行部10と昇降リンク機構20とを具備し、昇降リンク機構20の先端(後端部)には、苗植付装置(不図示)を装着することができるように構成される。なお、以下の説明においては、矢印F方向を「前方」として前後方向を規定し、矢印R方向を右方として左右方向を規定し、矢印U方向を「上方」として上下方向を規定する。
【0016】
走行部10においては、エンジン2が走行機体3の前部に設けられて、ボンネット4により被覆される。ミッションケースが走行機体3の前部に支持されて、エンジン2の後下方に配置される。
【0017】
フロントアクスルケース5が走行機体3の前部に支持され、前車輪6が当該フロントアクスルケース5の左右両側に支承される。リアアクスルケース7が走行機体3の後部に支持され、後車輪8が当該リアアクスルケース7の左右両側に支承される。
【0018】
そして、エンジン2の動力が前記ミッションケースを介して左右の前車輪6と左右の後車輪8とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪6および後車輪8が回転駆動するように構成される。これにより、走行部10が前進又は後進走行可能とされる。
【0019】
走行部10において、走行機体3の前後中途部に運転操作装置11が設けられる。運転操作装置11の前部には、操向操作用の環状の操向ハンドル12、各種操作ペダル13、ダッシュボード14などが配置される。運転操作装置11の後部には、運転席15が操向ハンドル12の後方に位置するように配置される。
【0020】
ダッシュボード14の上には、操向ハンドル12に加えて、各種の操作具や表示装置が配置される。これらの操作具、操向ハンドル12、各種操作ペダル13等によって、走行部10等の操作を行うことが可能とされる。
【0021】
走行機体3の後部には、昇降リンク機構20が具備される。昇降リンク機構20は、左右一対の上リンク21・21、左右一対の下リンク22・22、回転アーム25、及び油圧シリンダ26等を備える。
【0022】
一対の上リンク21・21は、左右方向に間隔を空けて相互に平行に設けられる。上リンク21・21の一端部(前端部)は、軸部材23を支点として上下方向に回転可能に支持される。
一対の下リンク22・22は、左右方向に間隔を空けて相互に平行に設けられる。下リンク22・22の一端部(前端部)は、軸部材24を支点として上下方向に回転可能に支持される。
後述するように、上リンク21・21の他端部(後端部)には、上連結ピン27が着脱自在に取り付けられる。また、下リンク22・22の他端部(後端部)には、下連結ピン28が着脱自在に取り付けられる。これにより、昇降リンク機構20の後端には、上連結ピン27及び下連結ピン28によって、後述の連結ブラケット31を着脱自在に取り付けることが可能である。
【0023】
回転アーム25は棒状の部材であり、その一端部(下端部)は下リンク22・22の間に固定される。
油圧シリンダ26は、昇降リンク機構20に装着される作業機(草刈装置100又は苗植付装置)を昇降させるためのアクチュエータである。油圧シリンダ26の一端部は、回転アーム25の他端部(上端部)に連結される。油圧シリンダ26の他端部は、走行機体3に連結される。
【0024】
このような構成の昇降リンク機構20において、油圧シリンダ26が伸長されると、上リンク21・21と下リンク22・22とが平行な状態を保って下方に回転される。一方、油圧シリンダ26が縮小されると、上リンク21・21と下リンク22・22とが平行な状態を保って上方に回転される。このように、昇降リンク機構20はいわゆる平行リンク機構を構成している。なお、昇降リンク機構の構成は、上記の構成に代えて、例えば3点リンク式や2点リンク式等のものとしてもよい。
【0025】
以下では、本発明の一実施形態に係る草刈装置100の構成について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、草刈装置100は、昇降リンク機構20の後端部(先端)に装着することのできる装置であり、苗植付装置に代えて取り付けることができる。田植機1に草刈装置100を装着することにより、オペレータが走行機体3を走行させながら畦畔や土手や農道の脇等に生えている雑草等を草刈装置100によって刈り取ることができる。草刈装置100は、連結ブラケット31、刈取用エンジン32、油圧ポンプ33、作動油タンク34、平行リンク機構40、揺動リンク機構45、刈取機構50等を具備する。
【0027】
図2及び図3に示すように、連結ブラケット31は、草刈装置100を昇降リンク機構20に連結するものである。連結ブラケット31は、昇降リンク機構20の先端(後端部)に上リンク21・21及び下リンク22・22に対して着脱自在に支持される。連結ブラケット31は、左側面視略F字形状の部材であり、縦フレーム31a、上プレート31b、及び下プレート31c等を有する。
【0028】
縦フレーム31aは、上連結ピン27及び下連結ピン28が着脱自在に挿入可能に形成される。上プレート31bは、縦フレーム31aの上端から後方に向けて略垂直に固定される。下プレート31cは、上プレート31bの下方に上プレート31bと略平行に固定される。上プレート31bの下面と、下プレート31cの上面と、の間には、後述する平行リンク機構40の水平アーム41・41等が配置される。連結ブラケット31は、縦フレーム31aが昇降リンク機構20の先端(後端部)に略垂直になるように上連結ピン27及び下連結ピン28によって着脱自在に連結される。つまり、連結ブラケット31は、上プレート31b及び下プレート31cを平行に保って昇降リンク機構20に昇降自在かつ着脱自在に支持される。
【0029】
刈取用エンジン32は、草刈装置100の駆動源である。刈取用エンジン32は、連結ブラケット31の上プレート31bの略中央に配置される。詳述すると、刈取用エンジン32は、その出力軸が左側方に突出するように配置され、該出力軸に後述の油圧ポンプ33の駆動軸が連結されている。
【0030】
油圧ポンプ33は、刈取用エンジン32により駆動されるポンプである。油圧ポンプ33は、連結ブラケット31の上プレート31bの左側に配置される。油圧ポンプ33は、刈取用エンジン32の出力軸に連結されて駆動される。
【0031】
作動油タンク34は、作動油を貯留するタンクである。作動油タンク34は、連結ブラケット31の上プレート31bの左側であって油圧ポンプ33の上方となる位置に設けられる。このため、連結ブラケット31に作動油タンク34を取り付ける部分を設ける必要がない。作動油タンク34は、図示しない配管を介して油圧ポンプ33の吸入ポートに接続される。油圧ポンプ33は、切換バルブ等を介して後述の刈取機構50の油圧モータ53に接続される(図4参照)。
【0032】
このように構成されることで、草刈装置100は、田植機1の走行部10に設けられるエンジン2によって駆動されていないので、田植機1の運転状態によらずに安定して刈取作業が行える。また、連結ブラケット31を昇降リンク機構20から着脱することで刈取用エンジン32、油圧ポンプ33、作動油タンク34が後述の平行リンク機構40、刈取機構50とともに昇降リンク機構20から一体的に着脱することができる。
【0033】
図4に示すように、平行リンク機構40は、刈取機構50を支持するものである。平行リンク機構40は、水平アーム41・41、回転軸42・42、及び回転固定板43、付勢部材44、揺動リンク機構45(図5参照)等を備える。ここで、水平アーム41・41は、平行リンクを構成している。
【0034】
水平アーム41・41は、長い棒状の部材である。水平アーム41・41の一端部は、回転軸42を介して、連結ブラケット31の右側前端部であって上プレート31bの下面と下プレート31cの上面との間に回転可能に支持される(図3参照)。ここで、回転軸42は、その軸線方向を上下方向に向けた状態で、連結ブラケット31の右側端部に形成された貫通孔と、水平アーム41・41の一端部に形成された貫通孔と、に嵌挿されている。
【0035】
回転固定板43は、概ね扇形状の板材である。回転固定板43は、その中心を水平アーム41を支持する回転軸42の軸心と一致するようにして水平アーム41に固定される。回転固定板43の周縁部(扇の円弧の部分)には、所定間隔毎に貫通孔43h・43h・・・が形成される。回転固定板43には、連結ブラケット31に形成されたネジ孔31h、及び、回転固定板43に形成された貫通孔43h・43h・・・のいずれか一つの位置を重ねて合わせて、これらのネジ孔31h及び貫通孔43hに締結部材43aが挿入される。
【0036】
このような構成により、回転固定板43の連結ブラケット31に対する回転位置が固定される。つまり、水平アーム41・41の連結ブラケット31に対する回転位置が固定される。本実施形態において、回転固定板43は、水平アーム41・41を田植機1の進行方向に対して平行な方向であって、その先端部が田植機1の後方に配置される後方位置P1から田植機1の進行方向に対して直交する方向であって、その先端部が田植機1の右側方に配置される側方位置P2までの範囲内における所定の位置で固定可能なように構成される。
【0037】
付勢部材44は、水平アーム41・41を付勢するものである。本実施形態における付勢部材44は引張コイルバネであり、連結ブラケット31に設けられたバネ座44aと、水平アーム41に設けられたバネ座44bとの間に介装される。連結ブラケット31の上端部には、水平アーム41の回転を規制する規制部材44cが設けられる。本実施形態の規制部材44cは、水平アーム41・41が側方位置P2よりも田植機1に近接しないように水平アーム41・41の動きを規制する。
【0038】
これにより、締結部材43aを回転固定板43及び連結ブラケット31から取り外した状態のとき、付勢部材44は、水平アーム41・41を規制部材44cに規制される位置である側方位置P2に保持するように付勢する。
【0039】
図4及び図5に示すように、揺動リンク機構45は、刈取機構50を平行リンク機構40の先端部(連結ブラケット31とは反対側の端部)に揺動可能に支持するものである。揺動リンク機構45は、水平アーム41・41の先端部と刈取機構50との間に介装される。揺動リンク機構45は、上ブラケット46a、下ブラケット46b、垂直アーム47・47、ステー48、及び回転軸49等を備える。
【0040】
上ブラケット46aは、板材を折り曲げて形成された部材である。上ブラケット46aは、水平アーム41・41の他端部に回転可能に支持される。この際、上ブラケット46aは、相互に平行な状態に配置された水平アーム41・41によって支持されている。すなわち、連結ブラケット31、水平アーム41・41及び上ブラケット46aから平行リンク機構が構成される。これにより、上ブラケット46aは、水平アーム41・41によって一定の向き(前後方向)に保持した状態で水平面内において移動可能に支持される。
【0041】
下ブラケット46bは、垂直アーム47・47の下端部とステー48とを連結するものである。本実施形態の下ブラケット46bは、長方形状の板材を正面視コ字状に折り曲げて形成された部材である。下ブラケット46bの下部には、ステー48が下方に突出するように固定されている。
【0042】
垂直アーム47・47は、長い棒状の部材である。垂直アーム47・47の一端部(上端部)は、上ブラケット46aに前後方向に回転可能に支持される。垂直アーム47・47の他端部(下端部)には、下ブラケット46bが前後方向に回転可能に支持される。この際、下ブラケット46bは、相互に平行な状態に配置された垂直アーム47・47によって支持されている。すなわち、上ブラケット46a、垂直アーム47・47、及び下ブラケット46bから平行リンク機構が構成される。下ブラケット46bに固定されるステー48には、軸線が前後方向に延びている回転軸49を介して後述の刈取機構50が連結される。これにより、揺動リンク機構45は、刈取機構50を上ブラケット46aに対して一定の傾き(前後方向)に保持した状態で垂直面内において移動可能に支持する。また、揺動リンク機構45は、回転軸49を介することで刈取機構50を上ブラケット46aに対して左右方向に回転自在に支持する。
【0043】
以上より、平行リンク機構40は、刈取機構50の向きを前後方向に保持した状態で水平面内において移動可能、かつ刈取機構50の前後方向の傾きを保持した状態で垂直面内において移動可能に支持する。また、草刈装置100の連結ブラケット31には、右側前端部に平行リンク機構40が配置され、左側端部に油圧ポンプ33、作動油タンク34が配置される。このため、草刈装置100の左右バランスが均一に近づくので草刈装置100の着脱等の取り扱いを容易にすることができる。
【0044】
図4及び図5に示すように、刈取機構50は、畦畔や農道等(地表面)に生えている雑草等を刈り取る作業(草刈)を行うための装置である。刈取機構50は、左右の刈取カバー51L・51R、該刈取カバー51L・51Rの内側に収容される左右の刈刃、左右の該刈刃を回転駆動する油圧モータ53、カバー回転軸54、前ゲージ輪55、ローラ56、ゲージ輪57、及びゴム垂れ58L・58C・58R等を備える。
【0045】
本実施形態の刈取カバーは、左右に二分割して構成される。左の刈取カバー51Lは、右の刈取カバー51Rに対して、カバー回転軸54を支点として上下方向に回転可能であり、適宜の回転位置に固定することができる。
このような構成により、左右の前記刈刃を法面等の傾斜面に追随させることができる。例えば、刈取機構50の左半部と右半部とを一つの平面状(面一)に配置した状態で、畦畔の法面の草刈を行う、という使用態様が可能である。あるいは、刈取機構50の右半部で畦畔の上面の草刈を行うと同時に、刈取機構50の左半部で畦畔の法面の草刈を行う、という使用態様も可能である。
【0046】
左右の前記刈刃(不図示)は、ブレード式の回転刃である。左の刈刃は、左の刈取カバー51L内に回転自在に設けられた左回転軸の下端に固定される。右の刈刃は、右の刈取カバー51R内に回転自在に設けられた右回転軸の下端に固定される。そして、前記左回転軸と前記右回転軸とがベベルギヤ及び伸縮可能な駆動軸52を介して接続される。なお、前記刈刃はブレード式のものに限定するものではなく、例えばバリカン式やリール式のものであってもよい。
【0047】
油圧モータ53は、前記刈刃を回転駆動するためのモータである。油圧モータ53は右の刈取カバー51Rの上に搭載される。油圧モータ53の出力軸は、左側方に突出するように配置され、該出力軸と前記刈刃の駆動軸とが連結されている。このような構成により、油圧ポンプ33からの作動油が送油されることにより油圧モータ53が駆動され、前記刈刃が回転駆動される。
但し、前記刈刃を駆動する態様は上述のものに限定するものではなく、例えば、油圧モータ53を連結ブラケット31に配置し、油圧モータ53の出力軸と刈刃の駆動軸をフレキシブルワイヤで連結して刈刃を駆動してもよい。あるいは、油圧モータを具備しない構成とし、刈取用エンジン32の出力軸にクラッチや変速機構等を連結し、当該変速機構の出力軸と前記刈刃の駆動軸をフレキシブルワイヤで連結して刈刃を駆動する構成としてもよい。
【0048】
前ゲージ輪55、ローラ56及びゲージ輪57は、前記刈刃の地表面に対する高さを適宜に調節するものである。前ゲージ輪55は、右の刈取カバー51Rに設けられた取付部に高さ調節可能に取り付けられる。ローラ56は、取付ステーを介して、右の刈取カバー51Rの後端部に取り付けられる。ゲージ輪57は、左の刈取カバー51Lの前部に設けられた取付部に高さ調節可能に取り付けられる。前ゲージ輪55、ローラ56及びゲージ輪57が地表面上を転動することにより刈取機構50が地表面に沿って円滑に移動される。
【0049】
なお、左の刈取カバー51Lにウエイト(錘)の取付部を形成する等して、当該ウエイトを刈取機構50に装着可能な構成とすることもできる。畦畔の法面が急斜面である場合等に、当該ウエイトを取り付けることによって左のゲージ輪57を法面に押し付けて刈取機構50の地表面への追従性の向上を図ることが可能である。
あるいは、左右の刈取カバー51L・51Rがカバー回転軸54を支点として相互に離れる方向(広がる方向)に回転するように付勢する付勢部材を追加することによって刈取機構50の地表面への貼付性を向上させることも可能である。
【0050】
ゴム垂れ58L・58C・58Rは、前記刈刃の回転により跳ね上げられた小石等が刈取機構50の周囲に飛散することを防止するものである。左のゴム垂れ58Lは、左の刈取カバー51Lの前左端部から垂れ下げられて左の刈刃及びゲージ輪57Lを前方から覆っている。右のゴム垂れ58Rは、右の刈取カバー51Rの前右端部から垂れ下げられて右の刈刃及びゲージ輪57Rを前方から覆っている。ゴム垂れ58Cは、左右のゴム垂れ58L・58Rの間に配置されるとともに前ゲージ輪55とゲージ輪57との間に垂れ下げられる。
【0051】
なお、本実施形態における刈取機構50の前端部は、刈取カバー51R・51Lが前方に向かうに従って地表面から離れるように形成される。換言すれば、刈取カバーの前端部は、大きく開口した形状を有する。このように構成することにより、雑草等を刈取機構50内に誘導しやすくしている。本実施形態において、刈取カバーの形状は、上述のものに限定するものではなく、例えば、刈取カバーの後端部も前記前端部と同様に大きく開口した形状としてもよい。このように構成した場合、刈り取った雑草等が刈取機構の内部に留まることを防止できる。
【0052】
以上の如く構成される草刈装置100において、刈取機構50は、平行リンク機構40によって後方位置P1から側方位置P2までの範囲内において移動可能に構成される。
【0053】
以下では、このような構成の草刈装置100の使用態様について図4から図6を用いて説明する。
【0054】
田植機1を他の圃場等に移動させる場合、図4に示すように、草刈装置100は、刈取機構50が走行機体3の後方である後方位置P1に配置され、連結ブラケット31と回転固定板43とによって固定される。この結果、走行機体3と草刈装置100とを合わせたものの横幅(左右方向の寸法)がコンパクトになる。従って、田植機1は、道幅の狭い道路等においても、草刈装置100が邪魔になることなく容易に走行させることができる。
【0055】
刈取機構50を所定の位置に配置して草刈作業を行う場合、図4及び図5に示すように、草刈装置100は、刈取機構50が後方位置P1と側方位置P2との間の所望の位置に配置され、連結ブラケット31と回転固定板43によって固定される。この結果、草刈装置100は、刈取機構50を所望の位置に固定して草刈作業を行うことが可能となる。なお、このように水平アーム41・41の位置を固定している場合、付勢部材44により側方位置P2側へ付勢する必要がない上に、付勢部材44に負荷がかかるのを防止することが望ましいため、付勢部材44はバネ座44a又はバネ座44bから外している。
【0056】
刈取機構50を畦畔等に追従するようにして草刈作業を行う場合、草刈装置100は、バネ座44aとバネ座44bに付勢部材44が連結され、水平アーム41・41が前方(側方位置P2側)へ回転するように付勢される。この結果、刈取機構50が付勢部材44の付勢力により水平アーム41・41が前方(側方位置P2側)へ回転するように付勢されつつ、任意の位置に移動することができる。従って、草刈装置100は、刈取機構50が水平リンク機構40及び揺動リンク機構45によって畦等に追従する。
【0057】
具体的には、田植機1が畦畔に近づくと、刈取機構50は畦畔の法面に押し付けられることになるが、水平アーム41・41が付勢部材44の付勢力に抗して後方(後方位置P1側)へ回転されるので、大きな負荷がかかることを回避できる。また、畦畔の高さが高くなると垂直アーム47・47が後方へ回転されるので、刈取機構50に大きな負荷がかかることを回避できる。
【0058】
走行機体3が畦畔から離れると、平行リンク機構40は付勢部材44の付勢力により前方(側方位置P2側)へ回転されるので、刈取機構50は畦畔の法面側に押し付けられる。また、畦畔の高さが低くなると垂直アーム47・47が前方へ回転され、畦畔の法面から離間することがない。
【0059】
このように、走行機体3から畦畔(地表面)までの距離の変動に合わせて平行リンク機構40及び揺動リンク機構45の作用により刈取機構50が地表面から離間することを防止して地表面への追従性を良好にすることができる。よって、オペレータは、刈取機構50の位置を調整することに特段の注意を払う必要がないので、田植機1の操向操作に集中することができる。
【0060】
また、付勢部材44が伸縮することにより、平行リンク機構40や揺動リンク機構45を構成する部材に大きな衝撃荷重がかかることを回避して構成部品が変形したり損傷したりすることを防止することができる。
【0061】
さらに、草刈りが終了して、刈取機構50を上昇させた場合等では、急に水平アーム41・41に外力が加わらなくなる。この場合、水平アーム41・41が付勢部材44に引っ張られて前方へ勢いよく回転することになるが、水平アーム41・41の前面が規制部材44cに当接し、それ以上前方へ回転することはない。よって、刈取機構50が走行機体3側に急に回転して走行機体3に損傷を与えることがなく、大きく重量バランスを崩すこともなくなるのである。
【0062】
田植機1から草刈装置100を取り外す場合、図6に示すように、刈取機構50を後方位置P1に固定した状態で、連結ブラケット31の縦フレーム31aから上連結ピン27及び下連結ピン28を取り外す(白矢印参照)。つまり、昇降リンク機構20の上リンク21及び下リンク22と連結ブラケット31の連結を解除する。そして、田植機1の昇降リンク機構20から連結ブラケット31を取り外すことで(黒矢印参照)田植機1から草刈装置100を一体的に取り外すことができる。
田植機1に草刈装置100を取り付ける場合においても、田植機1の昇降リンク機構20に上連結ピン27及び下連結ピン28によって連結ブラケット31を取り付けることで田植機1に草刈装置100を一体的に取り付けることが出来る。このようにして、田植機1からの草刈装置100の着脱を容易にすることができる。但し、昇降リンク機構20と連結ブラケット31との着脱構成は前記構成に限定するものではなく、上リンク側にフック、下リンク側にロックレバー機構を構成したフックワンタッチ式(所謂オートヒッチ)の着脱構成とすることも可能である。
【0063】
以上の如く、移動農機である田植機1の走行機体3の前部または後部に具備される昇降リンク機構20に着脱可能な草刈装置100であって、昇降リンク機構20に着脱自在に取り付けられる連結ブラケット31と、連結ブラケット31に取り付けられる刈取用エンジン32と、連結ブラケット31に取り付けられ、刈取用エンジン32によって駆動される油圧ポンプ33と、連結ブラケット31に取り付けられ、油圧ポンプ33が送り出す作動油が溜められる作動油タンク34と、連結ブラケット31に取り付けられる平行リンク機構40と、平行リンク機構40に取り付けられ、油圧ポンプ33が送り出す作動油によって駆動される刈取機構50と、を備えるものである。
このように構成することで、草刈装置100が備えている刈取用エンジン32によって刈取機構50が駆動される。このため、移動農機である田植機1のエンジン2の稼動状態に影響されることなく安定して刈取作業が行える。加えて、田植機1のエンジン2の定格出力やPTOの回転数や田植機1が備える油圧ポンプの容量等を考慮する必要がない。また、連結ブラケット31を介して昇降リンク機構20に草刈装置100が取り付けられているので、油圧配管が簡素化されるとともに田植機1から一体的に着脱することができる。このため、草刈装置100(刈取用エンジン32、油圧ポンプ33、作動油タンク34、草刈機構50及びこれらを連結する配管等)の着脱、格納や調整等の取り扱い等を容易にすることができる。
【0064】
また、刈取用エンジン32は、連結ブラケット31の左右略中央に取り付けられ、油圧ポンプ33及び作動油タンク34は、連結ブラケット31の左右一側に取り付けられ、平行リンク機構40は、連結ブラケット31の左右他側に取り付けられることを特徴とするものである。
このように構成することで、油圧ポンプ33等と刈取機構50とを連結ブラケット31の左右に取り付けることで、草刈装置100の左右バランスが均一に近づく。このため、草刈装置100が田植機1の走行時に大きく揺れることがなく、草刈装置100の着脱等の取り扱いを容易にすることができる。
【0065】
また、作動油タンク34は、油圧ポンプ33の上側であって油圧ポンプ33と重複する位置に取り付けられることを特徴とするものである。
このように構成することで、作動油タンク34を取り付ける部分を連結ブラケット31に設ける必要がない。このため、連結ブラケット31が小さくなり草刈装置100の着脱等の取り扱いを容易にすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 田植機(移動農機)
3 走行機体
20 昇降リンク機構
31 連結ブラケット
32 刈取用エンジン
33 油圧ポンプ
34 作動油タンク
40 平行リンク機構
50 刈取機構
100 草刈装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動農機の走行機体の前部または後部に具備される昇降リンク機構に着脱可能な草刈装置であって、
前記昇降リンク機構に着脱自在に取り付けられる連結ブラケットと、
前記連結ブラケットに取り付けられる刈取用エンジンと、
前記連結ブラケットに取り付けられ、前記刈取用エンジンによって駆動される油圧ポンプと、
前記連結ブラケットに取り付けられ、前記油圧ポンプが送り出す作動油が溜められる作動油タンクと、
前記連結ブラケットに取り付けられる平行リンク機構と、
前記平行リンク機構に取り付けられ、前記油圧ポンプが送り出す作動油によって駆動される刈取機構と、を備える草刈装置。
【請求項2】
前記刈取用エンジンは、
前記連結ブラケットの左右略中央に取り付けられ、
前記油圧ポンプ及び前記作動油タンクは、
前記連結ブラケットの左右一側に取り付けられ、
前記平行リンク機構は、
前記連結ブラケットの左右他側に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の草刈装置。
【請求項3】
前記作動油タンクは、
前記油圧ポンプの上側であって前記油圧ポンプと重複する位置に取り付けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の草刈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−239395(P2012−239395A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109720(P2011−109720)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000177184)三陽機器株式会社 (26)
【Fターム(参考)】