説明

草本植物である、ハマウツボ科の全寄生植物[CISTANCHETUBULOSA(SCHENK.)WIGHT]から抽出されるフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物、これの製造方法およびこれの使用

【課題】草本植物由来、特に、ハマウツボ科(Cistanche)に属する草本植物から抽出されるフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物及び当該医薬調製物の製造方法を提供する。
【解決手段】ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]から抽出されたフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物であって、該調製物は、該調製物の10〜70質量%のエキナコサイド及び該調製物の1〜40質量%のアクテオサイドを含む、医薬調製物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草本植物由来の医薬調製物に関し、特に、ハマウツボ科(Cistanche)に属する草本植物から抽出されるフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物に関するものである。当該調製物は、老人性痴呆を予防および/または治療できるまたは血小板の凝集を阻害できる薬剤の活性成分として使用される。本発明はまた、当該医薬調製物の製造方法および当該医薬調製物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
年配の人々は、一般的に、薬では治療できないことの多い様々な肉体的及び精神的なダメージを受けている。老人性痴呆は、このようなものの一例である。しかしながら、ハマウツボ科(Cistanche)に属する草本の新鮮な茎が不妊症、インポテンス、便秘などの治療に有効であることは臨床上明らかである。加えて、このような多年生草本の新鮮な茎から得られる調製物は血液及び腎臓の栄養となる。これらの寄生及び多年生草本は、中国の北西地方で広く栽培され、地方によっては「砂漠のチョウセンニンジン(desert ginseng)」として知られている。最も大量に栽培されているハマウツボ科(Cistanche)の種は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]である。
【0003】
日本の科学者らによってハマウツボ科(Cistanche)の多年生草本の化学成分及び薬理活性が組織的に研究された結果、フェニルエタノイド配糖体がこれらの多年生草本の主な活性成分であることが分かった(例えば、非特許文献1〜3参照)。このような活性成分は、効果的な抗酸化剤、代謝促進剤、記憶促進剤、性欲促進剤などである。様々なフェニルエタノイド配糖体化合物の医学的な特性が多くの研究者によって研究されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sato T., et al. Yakugaku Zasshi, 1985, 105 (12): 1131
【非特許文献2】Jimenez C., et al. Nat Prod Rep, 1994, 11 (6): 591
【非特許文献3】Cometa F., et al. Fitoterapia, 1993, 64 (3): 195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、草本植物由来、特に、ハマウツボ科(Cistanche)に属する草本植物、特にハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]から抽出されるフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物及び当該医薬調製物の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、上記医薬調製物を含む老人性痴呆を予防および/または治療できるまたは血小板の凝集を阻害できる医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ハマウツボ科(Cistanche)の多年生草本について10年以上研究や実験を重ねてきた結果、ハマウツボ科(Cistanche)の種の中でも、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]が最も多くの量のフェニルエタノイド配糖体化合物を含んでいることを発見した。また、本発明者らは、フェニルエタノイド配糖体化合物のハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]からの抽出方法についても鋭意検討を行った結果、特定の極性溶剤でハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分を抽出し、ここで得られた抽出物を、疎水性マクロ細孔のポリマービーズが充填されたカラムに入れて、フェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させ、特定の極性溶剤を移動相として用いてカラムを溶出し、さらに上記極性溶剤より極性の低い極性溶剤を用いて該カラムを溶出させて、フェニルエタノイド配糖体を含む溶出液を得ることによって、目的成分を効率の良く抽出できることを知得した。さらに、このような方法によって得られたフェニルエタノイド配糖体の薬理効果を試験したところ、フェニルエタノイド配糖体を含む医薬組成物は、記憶促進、血栓形成の防止・抑制、血小板凝集の阻害等に顕著な効果を有することが分かった。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記諸目的は、下記(1)〜(17)によって達成される。
【0009】
(1)ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]から抽出されたフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物であって、該調製物は、該調製物の10〜70質量%のエキナコサイド(echinacoside)及び該調製物の1〜40質量%のアクテオサイド(acteoside)を含む、医薬調製物。
【0010】
(2)上記調製物の25〜70質量%のエキナコサイド及び上記調製物の5〜40質量%のアクテオサイドを含む、前記(1)に記載の医薬調製物。
【0011】
(3)上記フェニルエタノイド配糖体は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の新鮮な茎から抽出される、前記(1)または(3)に記載の医薬調製物。
【0012】
(4)2'−アセチルアクテオサイド;カンプネオサイド(campneoside)I;カンプネオサイドII;シスタンチュブロサイド(cistantubuloside)A,B1,B2,C1,C2;クレナトサイド(crenatoside);デカフェオイルアクテオサイド(decaffeoylacteoside);イソアクテオサイド(isoacteoside);ロディオロサイド(rhodioloside);シリンガライド(syringalide)A;3'−α−L−ラムノピラノシド(rhamnopyranoside)、及びチュブロサイド(tubuloside)Aからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含み、上記成分は、それぞれ、上記調製物の5質量%未満の量で含まれる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬調製物。
【0013】
(5)a)第一の極性溶剤でハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分を抽出し;
b)段階a)で得られた抽出物を、疎水性マクロ細孔のポリマービーズが充填されたカラムに入れて、フェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させ;
c)第二の極性溶剤を移動相として用いてカラムを溶出し、相対的にあまり強く吸着していない化合物をカラムから溶出させて、ほとんどのフェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させたままにし;さらに
d)第二の極性溶剤より極性の低い第三の極性溶剤を用いて該カラムを溶出させて、フェニルエタノイド配糖体を含む溶出液を得る、
段階を有する、フェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物の製造方法。
【0014】
(6)段階a)において、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分は、新鮮な茎である、前記(5)に記載の方法。
【0015】
(7)段階a)における抽出工程は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分を第一の極性溶剤と混合し、得られた混合物を0.5〜10時間煎出し、さらに煎出された混合物を濾過して液状抽出物を得るまたは該液状抽出物を減圧下でまたは真空中で濃縮して濃縮形態の抽出物を得ることを有する、前記(5)または(6)に記載の方法。
【0016】
(8)上記第一の極性溶剤は、水、または水とエタノールとの混合液である、前記(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(9)段階b)において、ポリマービーズは、架橋芳香族化合物ポリマーである、前記(5)〜(8)のいずれかに記載の方法。
【0018】
(10)上記ポリマービーズは、架橋ポリスチレンまたはスチレン及びジビニルベンゼンの架橋共重合体から形成される、前記(9)に記載の方法。
【0019】
(11)上記第二の極性溶剤は、水であり、上記第三の極性溶剤は、メタノール、エタノール、水及びメタノールの混合液、または水及びエタノールの混合液である、前記(5)〜(10)のいずれかに記載の方法。
【0020】
(12)上記第三の極性溶剤は水及びエタノールの混合液である、前記(11)に記載の方法。
【0021】
(13)段階d)において、溶出液に含まれる溶剤を除去して、乾燥調製物を製造する段階をさらに有する、前記(5)〜(12)のいずれかに記載の方法。
【0022】
(14)治療上有効な量の活性成分としての前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬調製物、および活性成分の製薬上許容できる担体または希釈剤を含む、老人性痴呆の予防および/または治療に使用される医薬組成物。
【0023】
(15)治療上有効な量の活性成分としての前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬調製物、および活性成分の製薬上許容できる担体または希釈剤を含む、血小板の凝集を阻害するのに使用される医薬組成物。
【0024】
(16)患者の老人性痴呆を予防および/または治療する、特に予防するための医薬の製造における前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬調製物の使用。
【0025】
(17)患者の血小板の凝集を阻害するための医薬の製造における前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬調製物の使用。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]には、記憶促進、血栓形成の防止・抑制、血小板凝集の阻害等に顕著な効果を有するフェニルエタノイド配糖体が多くの量含まれており、このようなフェニルエタノイド配糖体を多量に含む医薬調製物は記憶促進、血栓形成の防止・抑制、血小板凝集の阻害を目的とする医薬、特に老人性痴呆の予防および/または治療に使用される医薬組成物や血小板の凝集を阻害するのに使用される医薬組成物に好適に使用できる。
【0027】
また、本発明の方法によると、目的成分であるフェニルエタノイド配糖体を効率の良く抽出できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明の第一は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]から抽出されたフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物であって、該調製物は、該調製物の10〜70質量%のエキナコサイド及び該調製物の1〜40質量%のアクテオサイドを含む、医薬調製物に関するものである。
【0030】
本発明において、エキナコサイド及びアクテオサイドは上記範囲内で医薬調製物中に含まれていれば、記憶促進、血栓症の予防、血小板凝集の阻害等に十分な効果を示すことができるが、好ましくは、エキナコサイドの医薬調製物中の含量は、該調製物の25〜70質量%であり、また、アクテオサイドの医薬調製物中の含量は、該調製物の5〜40質量%である。
【0031】
本発明では、抽出されるハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の部位は、特に制限されず、所望の効果が得られれば、葉、根、茎などいずれでもよい。好ましくは、フェニルエタノイド配糖体は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の茎、特に新鮮な茎から抽出される。
【0032】
本発明の医薬調製物は、エキナコサイド及びアクテオサイドを含むフェニルエタノイド配糖体を必須の成分として含むが、これに加えて、2'−アセチルアクテオサイド(2'-acetylacetoside);カンプネオサイド(campneoside)I;カンプネオサイドII;シスタンチュブロサイド(cistantubuloside)A,B1,B2,C1,C2;クレナトサイド(crenatoside);デカフェオイルアクテオサイド(decaffeoylacteoside);イソアクテオサイド(isoacteoside);ロディオロサイド(rhodioloside);シリンガライド(syringalide)A;3'−α−L−ラムノピラノシド(rhamnopyranoside)、及びチュブロサイド(tubuloside)Aを含んでいてもよい。この際、上記成分は、単独で含まれてもあるいは2種以上の混合物の形態で含まれてもよいが、上記すべての成分を含むことが好ましい。また、上記したような成分を別途含む場合の各成分の含量は、記憶促進、血栓症の予防、血小板凝集の阻害等の所望の効果を阻害しない程度であれば特に制限されないが、該調製物の5質量%未満の量であることが好ましい。
【0033】
本発明において、上記したようなハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]由来のフェニルエタノイド配糖体化合物は、下記式:
【0034】
【化1】

【0035】
で示される構造を有し、エキナコサイド、アクテオサイドに加えて、2'−アセチルアクテオサイド;カンプネオサイド(campneoside)I;カンプネオサイドII;シスタンチュブロサイド(cistantubuloside)A,B1,B2,C1,C2;デカフェオイルアクテオサイド(decaffeoylacteoside);イソアクテオサイド(isoacteoside);ロディオロサイド(rhodioloside);シリンガライド(syringalide)A;3'−α−L−ラムノピラノシド(rhamnopyranoside)、及びチュブロサイド(tubuloside)Aなどをも含むものである。上記各成分と上記式中の置換基(R1〜R7)との関係を、下記表1に示す。ただし、クレナトサイド(crenatoside)の構造式は、下記式に示す。上記成分のうち、エキナコサイド及びアクテオサイド以外の成分はほとんど、調製物中に少量または微量しか含まれない。
【0036】
【化2】

【0037】
【表1】

【0038】
上記表1において、*が付されているものは、新規な化合物であり、Acはアセチル、Cfはトランス−カフェオイル(trans-Caffeoyl)、Cmはトランス−クマロイル(trans-Coumaroyl)、c−Cmはシス−クマロイル(cis-Coumaroyl)、Glcはβ−D−グルコピラノース、Rhaはα−L−ラムノピラノースを、それぞれ、表す。
【0039】
上記表1に示される化合物はすべて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって確認できる。この際、高速液体クロマトグラフィーの条件は、以下のとおりである。固定相は、C18アルキルシランのシリコーンであり、移動相は、アセトニトリル−0.05Mリン酸水溶液(溶出勾配 4:96→15:85)であり、流速が1ml/分であり、検出波長が330nmである。
本発明の医薬調製物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を単独であるいは組み合わせて使用できるが、本発明の医薬調製物の製造方法の好ましい一実施態様を以下に詳述する。すなわち、本発明による方法は、抽出及び精製の2段階からなる。第一の段階では、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]、好ましくは当該植物の茎、より好ましくは当該植物の新鮮な茎を、フレーク状に切断する、または微粒子若しくは粉末状に粉砕する。次に、このようにして得られたフレーク、または微粒子若しくは粉末を、水若しくはエタノール、メタノール等の低級脂肪族アルコールなどの溶媒またはこれらの混合液に浸漬する。この際、抽出は、室温で行われる。次に、この混合溶液を濾過して、濾液を減圧下または真空中で濃縮し、抽出物を得る。次に、第二段階として、この抽出物を水中で熱した後、D−101タイプまたはAB−8タイプのマクロ細孔の吸着樹脂が充填された吸着カラムに移すことによって、抽出物を精製する。この際、カラムは、水、メタノール、エタノール、水及びメタノールの混合液、または水及びエタノールの混合液などを溶出溶媒として使用して溶出する。溶出は、上記したような溶出溶媒を、一定濃度の溶液でまたは溶液に濃度勾配をつけて行ってもよい。溶出液を集めて、濃縮した後、公知の乾燥方法によって乾燥する。溶出液が乾燥し終わったら、本発明の医薬調製物が得られる。このようにして得られた医薬調製物はフェニルエタノイド配糖体を含み、老人性痴呆を予防するのに、または血小板の凝集を阻害するのに使用される医薬組成物を作製するのに好適に使用できる。
【0040】
本発明において、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]からのフェニルエタノイド配糖体の抽出方法は、特に制限されず、公知の植物からの目的物質の抽出方法が使用できる。しかしながら、本発明者らは、以下に示すような特定の段階を有する方法によって、効率よく所望のフェニルエタノイド配糖体を抽出できることを発見した。したがって、本発明の第二は、a)第一の極性溶剤でハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分を抽出し;b)段階a)で得られた抽出物を、疎水性マクロ細孔のポリマービーズが充填されたカラムに入れて、フェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させ;c)第二の極性溶剤を移動相として用いてカラムを溶出して、相対的にあまり強く吸着していない化合物をカラムから溶出させて、ほとんどのフェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させたままにし;さらにd)第二の極性溶剤より極性の低い第三の極性溶剤を用いて該カラムを溶出させて、フェニルエタノイド配糖体を含む溶出液を得る段階を有する、フェニルエタノイド配糖体を医薬調製物の製造方法に関するものである。
【0041】
本発明の方法において、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分は、地下部分であれば、根、茎などいずれの部分であってもよいが、好ましくは茎、特に新鮮な茎である。
【0042】
上記段階a)において、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分が第一の極性溶剤で抽出されるが、この際、当該地下部分を第一の極性溶剤と混合した後、得られた混合物を0.5〜10時間煎出(煮沸)した後、この煎出(煮沸)混合物を濾過して溶液(液状抽出物)を得ることが好ましい。または、必要であれば、当該溶液を減圧下または真空中で濃縮して、濃縮形態の抽出物を得てもよい。この際、当該地下部分と第一の極性溶剤の混合比は、地下部分から所望の成分を効率よく抽出できる割合であれば特に制限されないが、好ましくは混合比(地下部分:第一の極性溶剤の質量比として表す)が1:4〜1:20である。また、上記段階a)において使用される第一の極性溶剤は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分を効率よく抽出できるものであれば特に制限されないが、好ましくは水、または水とエタノールの混合液である。
【0043】
次に、段階b)では、上記段階a)で得られた抽出物または抽出物を含む溶液を、疎水性マクロ細孔のポリマービーズが充填されたカラムに入れて、フェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させるが、この際使用されるポリマービーズは、目的のフェニルエタノイド配糖体を効率よく吸着できるものであればいずれのポリマービーズであってもよい。具体的には、架橋芳香族化合物ポリマーであり、より好ましくは架橋ポリスチレンまたはスチレン及びジビニルベンゼンの架橋共重合体から形成されるポリマービーズである。
【0044】
さらに、段階c)で使用される第二の極性溶剤は、移動相として用いてカラムを溶出するのに使用されるが、これは、カラムに相対的にあまり強く吸着していない化合物はカラムから溶出させるが、ポリマービーズに強く吸着しているフェニルエタノイド配糖体はポリマービーズに吸着させたままにして、第二の極性溶剤によってはカラムから溶出されないような極性溶剤であれば特に制限されない。好ましくは、水である。
【0045】
次に、段階d)では、段階c)のカラムにさらに第三の極性溶剤を通して、所望のフェニルエタノイド配糖体を溶出させて、フェニルエタノイド配糖体を含む溶出液を得る。この際、第三の極性溶剤は、第二の極性溶剤より極性の低いものであり、このような溶剤としては、第二の極性溶剤より極性が低く、所望のフェニルエタノイド配糖体を効率よくカラムから溶出できるものであれば特に制限されない。好ましくは、第三の極性溶剤は、メタノール、エタノール、水及びメタノールの混合液、または水及びエタノールの混合液であり、より好ましくは水及びエタノールの混合液である。
【0046】
本発明では、上記段階d)で得られた溶出液に含まれる溶剤を除去して、フェニルエタノイド配糖体を乾燥調製物として製造してもよい。
【0047】
本発明の医薬調製物は、老人性痴呆の予防および/または治療、特に予防に好適に使用される。したがって、本発明の第三および第四は、治療上有効な量の活性成分としての本発明の医薬調製物、および製薬上許容できる活性成分の担体または希釈剤を含む、老人性痴呆の予防に使用される医薬組成物;ならびに患者の老人性痴呆を予防及び治療するための医薬の製造における本発明の医薬調製物の使用に関するものである。
【0048】
また、本発明の医薬調製物は、血小板の凝集を阻害するのにも好適に使用される。したがって、本発明の第五および第六は、治療上有効な量の活性成分としての本発明の医薬調製物、および製薬上許容できる活性成分の担体または希釈剤を含む、血小板の凝集を阻害するのに使用される医薬組成物;ならびに血小板の凝集を阻害するための医薬の製造における本発明の医薬調製物の使用に関するものである。
【0049】
本発明において、製薬上許容できる活性成分の担体または希釈剤は、特に制限されず、公知の担体及び希釈剤が同様にして使用でき、その使用形態に応じて、適宜選択される。
【0050】
なお、本明細書において、本発明の医薬調製物の薬理試験は、マウスの試験群に本発明の医薬調製物を含むエサを与える、いわゆる「水迷路実験(water maze experiment)」によって行なった。その結果、コントロール群に比べて、試験群のマウスの学習記憶は促進され、試験群のエタノールまたは薬剤による記憶の欠損は明らかに抑制された。同様にして、ラットの群にも本発明の医薬調製物を含むエサを与えて実験を行ったところ、これらのラットは、コントロール群に比して、血栓が形成しにくい、または血小板が凝集しにくいことが分かった。これらの薬理試験結果に基づいて、VD及びAD等の、老人性痴呆の予防及び治療への本発明の医薬調製物の効果を研究するために、臨床試験を行った。
【実施例】
【0051】
本発明の医薬調製物の抽出、精製、及び薬理効果を、下記実施例及び比較例を参照しながら、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0052】
<抽出工程>
実施例1
ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の新鮮な茎のフレーク10kgを、フレークの8倍量の水に浸漬した。フレークを1時間水に漬けた後、水で2時間煎出した。このようにして煎出された混合物を濾過して、第一の濾液を得た。次に、残渣を、残渣の6倍量の水で煎出して、煎出された混合物を濾過して、第二の濾液を得た。第二の濾液の残渣について、上記と同様の操作を繰り返して、第三の濾液を得た。これら3種の濾液を合わせて、比重が1.10(50℃)となるように、真空中で濃縮した。濃縮形態の濾液をエタノールと混合して、60%のエタノールを含む混合液を得、これを12時間冷却した。その後、上清を冷却した混合液から集める一方、残渣を濾過して濾液を得て、この濾液を上清と合わせて最終抽出物を得た。この最終抽出物を比重が1.10(50℃)となるように、真空中で濃縮した。この際、エタノールは再利用した。このようにして得られた最終抽出物の重量は、5.6kgであった。
【0053】
実施例2
粉末形態のハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の新鮮な茎10kgを、粉末の15倍量の水中に2時間浸漬した後、3時間煎出した。このようにして煎出された混合物を濾過して、第一の濾液を得た。次に、残渣を、残渣の12倍量の水と混合して、2時間煎出して、煎出された混合物を濾過して、第二の濾液を得た。第二の濾液の残渣について、上記と同様の操作を2回繰り返して、第三及び第四の濾液を得た。これら4種の濾液を合わせて、比重が1.25(50℃)となるように、真空中で濃縮した。濃縮形態の濾液をエタノールと混合して、80%のエタノールを含む混合液を得、これを24時間冷却した。その後、上清を冷却した混合液から集める一方、残渣を濾過して濾液を得て、この濾液を上清と合わせて最終抽出物を得た。この最終抽出物を比重が1.25(50℃)となるように、真空中で濃縮した。この際、エタノールは再利用した。このようにして得られた最終抽出物の重量は、7.2kgであった。
【0054】
実施例3
ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の新鮮な茎のフレーク10kgを、フレークの7倍量の水に浸漬した。フレークを3時間水に漬けた後、水で4時間煎出した。このようにして煎出された混合物を濾過して、第一の濾液を得た。次に、残渣を、残渣の5倍量の水で煎出して、煎出された混合物を濾過して、第二の濾液を得た。第二の濾液の残渣について、上記と同様の操作を2回繰り返して、第三及び第四の濾液を得た。これら4種の濾液を合わせて、比重が1.05(50℃)となるように、真空中で濃縮した。濃縮形態の濾液をエタノールと混合して、50%のエタノールを含む混合液を得、これを10時間冷却した。その後、上清を冷却した混合液から集める一方、残渣を濾過して濾液を得て、この濾液を上清と合わせて最終抽出物を得た。この最終抽出物を比重が1.10(50℃)となるように、真空中で濃縮した。この際、エタノールは再利用した。このようにして得られた最終抽出物の重量は、6.5kgであった。
【0055】
実施例4
粉末形態のハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の新鮮な茎10kgを、粉末の4倍量の40%エタノール中に3時間浸漬した後、3時間還流しながら煎出した。このようにして煎出された混合物を濾過して、第一の濾液を得た。次に、煎出された混合物の残渣を、残渣の4倍量の40%エタノールと混合して、4時間煎出して、煎出された混合物を濾過して、第二の濾液を得た。第二の濾液の残渣について、上記と同様の操作を2回繰り返して、第三及び第四の濾液を得た。これら4種の濾液を合わせて、比重が1.05(50℃)となるように、真空中で濃縮することによって、最終抽出物を得た。このようにして得られた最終抽出物の重量は、6.2kgであった。
【0056】
<精製工程>
実施例5
最終抽出物6kgを、加熱しながら、最終抽出物の半分の量の水に溶解した。次に、この抽出物溶液を、D−101タイプの予め処理されたマクロ細孔の吸着樹脂が充填された吸着カラムにのせた。カラムをまず水で溶出して、新鮮な茎の2倍量の水溶出液を得、カラムをさらに20%エタノールで溶出して、新鮮な茎の2倍量の第一の20%エタノール溶出液を得た。水溶出液は、再度吸着−脱着操作を繰り返して、第二のエタノール溶出液を得た。これらの2種の20%エタノール溶出液を合わせて、濃縮し、乾燥することによって、フェニルエタノイド配糖体を含む調製物を得た。このようにして得られた調製物の重量は、865gであった。
【0057】
エキナコサイド及びアクテオサイドの含量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。この際、HPLCの条件は、以下のとおりである。固定相は、C18アルキルシランのシリコーンであり、移動相は、メタノール−0.15%酢酸水溶液(30:70)であり、流速が1ml/分であり、検出波長が330nmであった。
【0058】
60℃で真空中で24時間乾燥したエキナコサイド及びアクテオサイドを測定し、50%メタノールに溶解して、参考溶液(各1ml溶液は0.1mgの溶質を含む)を調製した。
【0059】
試験溶液は、超音波処理しながら、25mlの目盛りの付いた容器に適当量の50%メタノール中に50mgのフェニルエタノイド配糖体を含む調製物を溶かすことによって、調製した。25ml容になるまで、50%メタノールをさらに上記溶液に添加した。約1mlのこの溶液を正確に採り、10mlの目盛りの付いた容器に移し、これにマークまで50%メタノールを添加した。この溶液を0.45μmの膜で濾過することによって、試験溶液とした。
【0060】
参考溶液及び試験溶液を、それぞれ、5μl量採り、液体クロマトグラフィーカラムに注入し、エキナコサイド及びアクテオサイドのピーク面積を測定した。これらのピーク面積を用いて、含量を算出した。この結果、エキナコサイドの含量は調製物の37.5質量%であり、アクテオサイドの含量は調製物の6.7%であった。
【0061】
実施例6
最終抽出物6kgを、加熱しながら、最終抽出物の5倍量の水に溶解した。次に、この抽出物溶液を、AB−8タイプの予め処理されたマクロ細孔の吸着樹脂が充填された吸着カラムにのせた。カラムをまず水で溶出して、新鮮な茎の8倍量の水溶出液を得、カラムをさらに60%エタノールで溶出して、新鮮な茎の8倍量の第一の60%エタノール溶出液を得た。水溶出液は、カラムを新鮮な茎の6倍量の水で及び60%エタノールで順次溶出することによって、再度吸着−脱着操作を繰り返して、新鮮な茎の7倍量の第二のエタノール溶出液を得た。これらの2種の60%エタノール溶出液を合わせて、濃縮し、乾燥することによって、フェニルエタノイド配糖体を含む調製物を得た。このようにして得られた調製物の重量は、1203gであった。
【0062】
実施例5と同様のHPLC分析を行うことによって、エキナコサイド及びアクテオサイドの含量は、それぞれ、調製物の48.6質量%及び11.8質量%であることが分かった。
【0063】
実施例7
最終抽出物6kgを、加熱しながら、最終抽出物の3倍量の水に溶解した。次に、この抽出物溶液を、AB−8タイプの予め処理されたマクロ細孔の吸着樹脂が充填された吸着カラムにのせた。カラムをまず水で溶出して、新鮮な茎の8倍量の水溶出液を得、カラムをさらに95%エタノールで溶出して、新鮮な茎の8倍量の第一の95%エタノール溶出液を得た。水溶出液は、カラムを新鮮な茎の6倍量の水で及び95%エタノールで順次溶出することによって、再度吸着−脱着操作を繰り返して、新鮮な茎の8倍量の第二のエタノール溶出液を得た。これらの2種の95%エタノール溶出液を合わせて、濃縮し、乾燥することによって、フェニルエタノイド配糖体を含む調製物を得た。このようにして得られた調製物の重量は、1260gであった。
【0064】
実施例5と同様のHPLC分析を行うによって、エキナコサイド及びアクテオサイドの含量は、それぞれ、調製物の41.3質量%及び7.4質量%であることが分かった。
【0065】
実施例8
最終抽出物6kgを、加熱しながら、最終抽出物と等量の水に溶解した。次に、この抽出物溶液を、マクロ細孔の吸着樹脂が充填された吸着カラムにのせた。カラムをまず水で溶出して、新鮮な茎の4倍量の水溶出液を得、カラムをさらに40%エタノールで溶出して、新鮮な茎の5倍量の第一の40%エタノール溶出液を得た。水溶出液は、カラムを新鮮な茎の3倍量の水で及び40%エタノールで順次溶出することによって、再度吸着−脱着操作を繰り返して、新鮮な茎の4倍量の第二のエタノール溶出液を得た。これらの2種の40%エタノール溶出液を合わせて、濃縮し、乾燥することによって、フェニルエタノイド配糖体を含む調製物を得た。このようにして得られた調製物の重量は、1107gであった。
【0066】
実施例5と同様のHPLC分析を行うによって、エキナコサイド及びアクテオサイドの含量は、それぞれ、調製物の31.7質量%及び6.1質量%であることが分かった。
【0067】
<生理学的な効果>
実施例9
本発明の医薬調製物を水迷路実験(water maze experiment)に用いて、LACAマウスの学習記憶の効果を研究した。ピラセタム(Piracetam)錠を陽性の比較薬剤として用いて、1週間で6日間試験した。試験は27日間続けた。試験結果を下記表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
上記表2に示される結果から、コントロール群と、それぞれ、50mg/kgのフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物、200mg/kgのフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物及び400mg/kgのフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物を与えられた投与群との間の応答時間の差異によって示されるように、本発明の医薬調製物はマウスの学習記憶に有効な効果を有することが示唆される。また、応答時間がd値分析によって有意な差異を示す時間は、50mg/kgの群で9日;200mg/kgの群で13日;および400mg/kgの群で27日であった。これから、応答時間は、投与量の増加に比例して、増加することが示される。加えて、陽性の対照群(ピラセタム群)で、応答時間が有意な差異を示す時間は7日であり、これは、上記いずれの投与群のよりも短く、これから、ピラセタム錠は、本発明の医薬調製物に比べて、マウスの学習記憶での効果が低いことが示唆される。
【0070】
実施例10
LACAマウスによる記憶の損失の予防に関する本発明の医薬調製物の効果を、水迷路実験(water maze experiment)によって調べた。マウスに、薬剤を経口投与した。経口投与を行ってから1時間後、30%エタノールを0.1ml/10g体重、与えた。30分以内に、水迷路実験(water maze experiment)を開始した。マウスの水泳能(swimming performance)の結果を下記表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
上記表3に示される結果から、本発明の医薬調製物は、ピラセタムに比べて、マウスの記憶の欠損の予防により有効であることが示される。本発明の医薬調製物が投与された群の到達時間は、エタノールをマウスに与えた後では、ピラセタムが投与された群に比べて、より短かった。本発明の医薬調製物を200mg/kg投与した群とコントロール群との間の相違はP<0.01である。本発明の医薬調製物を50mg/kg投与した群と本発明の医薬調製物を200mg/kg投与した群との間の相違はP<0.05である。これから、医薬調製物の投与量は一つの因子であることが示唆される。また、本発明の医薬調製物を400mg/kg投与した群、ピラセタム投与群、及びコントロール群の間では有意差はないことから、200mg/kgの投与量が記憶の欠失の予防に最も有効であることが示される。表3に示される「失敗」データによると、200mg/kgの投与量が記憶の欠失の予防に最も有効であることが示される。
【0073】
実施例11
ハイオシン(Hyosine)によって生じるマウスの記憶向上の困難性に関する本発明の医薬調製物の効果を調べた。
【0074】
(1)薬剤および動物
試験薬剤及び比較薬剤は、実施例9で使用したのと同様であった。マウスを、正常な対照群、モデル群、ピラセタム600mg/kg群、ならびに本発明の医薬調製物400mg/kg群、200mg/kg群、100mg/kg群に任意に分けた。各群は15匹のマウスであった。薬剤を、0.2ml/10g体重で投与した。ジャンプ訓練を29日目の投与が終了してから開始した。薬剤は、訓練の1時間前に与えた。正常な対照群以外は、各群に、1mg/kg量のハイオシン(Hyosine)を腹腔に注射して与えた。試験は30日目に行い、薬剤は訓練の1時間前に与えた。結果を下記表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
上記表4に示される結果から、群の試験不応期(test latent period)は、正常な対照群に比べて短くなっていることが示される。しかしながら、試験失敗の頻度は上昇した。モデル群に比べて、ピラセタム600mg/kg群ならびに本発明の医薬調製物400mg/kg群、200mg/kg群は、試験不応期が延び、試験失敗の頻度が減少したことから、記憶の改善が示唆される。また、100mg/kg群は、試験不応期が延びたものの、試験失敗の頻度がモデル群とあまり変わらなかった。
【0077】
実施例12
ラットの静脈のバイパスの血栓形成に関する本発明の医薬調製物の効果を調べた、
オスのSDラットを、アスピリンと比較した。結果を下記表5に示す。
【0078】
この際、血栓形成阻害率(%)を以下の式で算出した。
【0079】
【数1】

【0080】
【表5】

【0081】
上記表5に示される結果から、本発明の医薬調製物200mg/kg群及び100mg/kg群は、血栓阻害率が、それぞれ、16.04%及び19.60%であり、蒸留水対照群に比べて、ラットの静脈バイパスの血栓形成を阻害することができることが示される。しかしながら、本発明の医薬調製物200mg/kg群及び100mg/kg群の血栓阻害率は、アスピリン100mg/kg群(血栓阻害率が34.97%)に比べると、血栓阻害効果は低い。また、本発明の医薬調製物50mg/kg群は、血栓形成に何の効果も示さない。
【0082】
実施例13
ラットの血小板の凝集に関する本発明の医薬調製物の効果を調べた。
【0083】
血小板の凝集は、アデノシン2ナトリウム2リン酸(adenosine disodium diphosphate)(ADP)を用いることによって生じる。1mg/mlのADP溶液を使用するまでは冷蔵しておく。ADP溶液を使用しようとする際には、リン酸緩衝液で3倍希釈した。
【0084】
オスのSDラットを、体重に従って5群に任意に分けた。これらの5群は、蒸留水対照群、アスピリン群、本発明の医薬調製物200mg/kg群、100mg/kg群及び50mg/kg群であった。薬剤を経口投与し、この際の投与量は、0.5mg/100gであった。蒸留水対照群のラットには、等量の蒸留水を与えた。投与は7日間続けた。最後の投与前12時間は、ラットを絶食させた。最後の投与から1時間後、血液を大動脈から採取した。採取された血液を、3.8%クエン酸ナトリウム(1:9)で凝固しないようにした。血液サンプルを1000rpmで3分間遠心して、多血小板血漿(PRP)の除去を容易にした。残りの血液サンプルをさらに300rpmで10分間遠心して、乏血小板血漿(PPP)の分離を容易にした。200μlのPRPを不透明度比較管(opacity-comparison tube)に入れて、不透明度をPPPで0になるように調節した。混合物を5分間インキュベートした後、50μlのADP溶液を加えて、血小板の凝集を引き起こした。凝集の度合いを、SPA−4多機能血小板凝集計(SPA-4 multifunctional blood platelet aggregation meter)を用いて測定した。血小板の凝集の阻害率を下記式によって算出した。
【0085】
【数2】

【0086】
結果を下記表6に示す。表6から、本発明の医薬調製物200mg/kg群、100mg/kg群及び50mg/kg群は、血小板の凝集を阻害でき、本発明の医薬調製物200mg/kg群は59.48%の最大の阻害率を示した。
【0087】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物は、記憶促進、血栓形成の防止・抑制、血小板凝集の阻害等に顕著な効果を有するため、老人性痴呆を予防および/または治療するためのまたは血小板の凝集を阻害するための医薬組成物に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]から抽出されたフェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物であって、該調製物は、該調製物の10〜70質量%のエキナコサイド及び該調製物の1〜40質量%のアクテオサイドを含む、医薬調製物。
【請求項2】
該調製物の25〜70質量%のエキナコサイド及び該調製物の5〜40質量%のアクテオサイドを含む、請求項1に記載の医薬調製物。
【請求項3】
該フェニルエタノイド配糖体は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の新鮮な茎から抽出される、請求項1または2に記載の医薬調製物。
【請求項4】
2'−アセチルアクテオサイド;カンプネオサイド(campneoside)I;カンプネオサイドII;シスタンチュブロサイド(cistantubuloside)A,B1,B2,C1,C2;クレナトサイド(crenatoside);デカフェオイルアクテオサイド(decaffeoylacteoside);イソアクテオサイド(isoacteoside);ロディオロサイド(rhodioloside);シリンガライド(syringalide)A;3'−α−L−ラムノピラノシド(rhamnopyranoside)、及びチュブロサイド(tubuloside)Aからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含み、該成分は、それぞれ、該調製物の5質量%未満の量で含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬調製物。
【請求項5】
a)第一の極性溶剤でハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分を抽出し;
b)段階a)で得られた抽出物を、疎水性マクロ細孔のポリマービーズが充填されたカラムに入れて、フェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させ;
c)第二の極性溶剤を移動相として用いてカラムを溶出し、相対的にあまり強く吸着していない化合物をカラムから溶出させて、ほとんどのフェニルエタノイド配糖体をポリマービーズに吸着させたままにし;さらに
d)第二の極性溶剤より極性の低い第三の極性溶剤を用いて該カラムを溶出させて、フェニルエタノイド配糖体を含む溶出液を得る、
段階を有する、フェニルエタノイド配糖体を含む医薬調製物の製造方法。
【請求項6】
段階a)において、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分は、新鮮な茎である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
段階a)における抽出工程は、ハマウツボ科の全寄生植物[Cistanche tubulosa (Schenk.) Wight]の地下部分を第一の極性溶剤と混合し、得られた混合物を0.5〜10時間煎出し、さらに煎出された混合物を濾過して液状抽出物を得るまたは該液状抽出物を減圧下でまたは真空中で濃縮して濃縮形態の抽出物を得ることを有する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
該第一の極性溶剤は、水、または水とエタノールとの混合液である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階b)において、ポリマービーズは、架橋芳香族化合物ポリマーである、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該ポリマービーズは、架橋ポリスチレンまたはスチレン及びジビニルベンゼンの架橋共重合体から形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該第二の極性溶剤は、水であり、該第三の極性溶剤は、メタノール、エタノール、水及びメタノールの混合液、または水及びエタノールの混合液である、請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該第三の極性溶剤は水及びエタノールの混合液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
段階d)において、溶出液に含まれる溶剤を除去して、乾燥調製物を製造する段階をさらに有する、請求項5〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
治療上有効な量の活性成分としての請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬調製物、および活性成分の製薬上許容できる担体または希釈剤を含む、老人性痴呆の予防および/または治療に使用される医薬組成物。
【請求項15】
治療上有効な量の活性成分としての請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬調製物、および活性成分の製薬上許容できる担体または希釈剤を含む、血小板の凝集を阻害するのに使用される医薬組成物。
【請求項16】
患者の老人性痴呆を予防および/または治療するための医薬の製造に使用される請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬調製物。
【請求項17】
患者の血小板の凝集を阻害するための医薬の製造に使用される請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬調製物。

【公開番号】特開2012−21022(P2012−21022A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220805(P2011−220805)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【分割の表示】特願2004−39317(P2004−39317)の分割
【原出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【出願人】(504061318)杏輝藥品工業股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】