説明

荷崩れ予報装置

【課題】走行中の車両の荷台に積載されている荷物の荷崩れを精度良く予測して、効果的に荷崩れに対する注意を喚起できる荷崩れ予報装置を提供する。
【解決手段】走行中の車両の荷台に積載されている荷物の荷崩れを予報する荷崩れ予報装置は、車両の荷台に生じる加速度の変化量を検出する加速度変化量検出手段P1と、加速度変化量検出手段P1によって検出された加速度の変化量、及び、予め定められた荷崩れ加速度変化量判定条件に基づいて、荷崩れを予測する荷崩れ予測手段P2と、荷崩れ予測手段P2によって荷崩れが予測されたとき、荷崩れの予報を予報出力部D1から出力する予報手段P3と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両の荷台に積載されている荷物の荷崩れを予報する荷崩れ予報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車体後部に荷台を備えたトラックや、荷台車が駆動車に牽引されるトレーラなどの車両においては、加減速やカーブでの遠心力等によって運転席で感じる車体の傾きを超えて荷台が大きく傾くことがあり、運転者が認識しないうちに当該荷台に積載されている荷物の荷崩れが生じてしまうという問題があった。そして、このような問題を解決する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているトラック横転防止装置は、荷台の傾きを検出するための変位センサと、横方向の加速度を検出するための加速度センサと、警報器と、を備えており、変位センサによって検出された荷台の傾きが所定傾度を超えたとき、及び、加速度センサによって検出された加速度が所定値を超えたとき、に警報器を作動させて警報を発するように構成されている。そして、このようなトラック横転防止装置において、上記所定傾度及び上記所定値を荷崩れが発生する前の値にそれぞれ設定することにより事前に警報を発することができ、運転手に荷崩れに対する注意を喚起することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−124543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、荷台の傾きは、車両の懸架装置の変位に基づいて検出するので、車種毎に異なる車両改造が必要となり、そのため、導入コストが高くなり、また、横方向の加速度が上記所定値を超えたか否かを判定するだけでは、この加速度が当該所定値以下だった場合にそのあとどのような動きをするのか、つまり、当該所定値から離れるのか又は当該所定値に近づくのか、また、近づくとしたらどの程度の速さで近づくのかなど、加速度の動きの傾向を判断することができないので、加速度に基づく荷崩れの予測は精度が低く、そのため、荷崩れに対する注意喚起の信用が低下して、当該注意喚起の効果が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、走行中の車両の荷台に積載されている荷物の荷崩れを精度良く予測して、効果的に荷崩れに対する注意を喚起できる荷崩れ予報装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、図1の基本構成図に示すように、走行中の車両の荷台に積載されている荷物の荷崩れを予報する荷崩れ予報装置であって、前記車両の荷台に生じる加速度の変化量を検出する加速度変化量検出手段P1と、前記加速度変化量検出手段P1によって検出された前記加速度の変化量、及び、予め定められた荷崩れ加速度変化量判定条件に基づいて、前記荷崩れを予測する荷崩れ予測手段P2と、前記荷崩れ予測手段P2によって前記荷崩れが予測されたとき、前記荷崩れの予報を予報出力部D1から出力する予報手段P3と、を有していることを特徴とする荷崩れ予報装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、図1の基本構成図に示すように、前記車両の速度を測定する速度測定部D2をさらに有し、前記荷崩れ予測手段P2が、前記加速度変化量検出手段P1によって検出された前記加速度の変化量、予め定められた荷崩れ加速度変化量判定条件、前記速度測定部D2によって測定された前記速度、及び、予め定められた荷崩れ速度判定条件に基づいて、前記荷物の荷崩れを予測するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、図1の基本構成図に示すように、前記荷台に積載されている荷物を撮影する撮影部D3と、前記撮影部D3によって撮影された前記荷物の映像についての映像情報を記憶可能に設けられた映像情報記憶部D4と、前記荷崩れ予測手段P2によって前記荷崩れが予測された時点近傍の所定の情報取得期間にわたって前記撮影部D3によって撮影された前記荷物の映像についての映像情報を、前記映像情報記憶部D4に記録する映像情報記録手段P4と、をさらに有していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、図1の基本構成図に示すように、前記車両の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部D5と、前記荷崩れが発生する可能性が高い箇所を示す注意箇所情報及び当該注意箇所情報に示される箇所を前記荷崩れなく走行できる速度を示す安全速度情報を含む荷崩れ回避情報が記憶された荷崩れ回避情報記憶部D6と、前記位置情報取得部D5によって取得された前記位置情報に示される前記車両の位置が、前記荷崩れ回避情報記憶部D6に記憶された前記荷崩れ注意箇所情報に示される箇所から所定の予報距離内にあるかを判定する車両位置判定手段P5と、前記車両位置判定手段P5によって前記車両の位置が前記荷崩れ注意箇所情報に示される箇所から前記所定の予報距離内にあると判定されたとき、当該荷崩れ注意箇所情報に対応する前記安全速度情報に示される速度を速度指示出力部D7から出力する安全速度指示手段P6と、をさらに有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、車両の荷台に生じる加速度の変化量を検出し、この加速度の変化量を用いて荷崩れを予測して、荷崩れが予測されると荷崩れを予報するので、荷台の傾きや横方向の加速度に基づく荷崩れの予測に比べて、加速度の変化量を用いることで当該加速度の動きの傾向を把握でき、そのため、荷崩れの予測精度を高めることができ、効果的に荷崩れに対する注意を喚起することができる。また、荷台の傾きを計測する必要が無く、コストを低くすることができる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、車両の速度を測定するとともに、加速度の変化量に加えて車両の速度も用いて荷崩れを予測するので、予測精度をさらに高めることができる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、荷崩れが予測されたときに、当該予測がされた時点近傍の所定の情報取得期間にわたって撮影された映像についての映像情報を映像情報記憶部に記録するので、荷崩れが予測されたときに実際に荷崩れが発生したか否かを事後的に検証することができ、この検証結果を荷崩れの予測にフィードバックすることで、予測精度をさらに高めることができる。また、記録された映像を運転指導に活用することで安全運転技術の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、現在の車両の位置が、荷崩れが発生する可能性が高い箇所から所定の予報距離内にあるときに、当該箇所を荷崩れなく走行できる速度を指示するので、この速度の指示が荷崩れの予報となって荷崩れを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の荷崩れ予報装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の荷崩れ予報装置の一実施形態であるデジタルタコグラフと、情報収集装置と、で構成される運行管理システムの概略図である。
【図3】図2のデジタルタコグラフの構成図である。
【図4】図3のCPUが実行する本発明に係る処理(荷崩れ予報処理1)の一例を示すフローチャートである。
【図5】図3のCPUが実行する本発明に係る処理(荷崩れ予報処理2)一例を示すフローチャートである。
【図6】図3のCPUが実行する本発明に係る処理(荷崩れ回避情報更新処理)の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の荷崩れ予報装置の一実施形態である運行記録計としてのデジタルタコグラフを、図2〜図6を参照して説明する。
【0017】
以下に説明するデジタルタコグラフ1は、例えば、図2に示すようにトラックやトレーラなどの荷物運搬用の車両50に搭載されており、当該車両50における速度やエンジン回転数、走行している位置などの車両データを収集して運行情報としてメモリカードに記録するものである。さらに、デジタルタコグラフ1は、荷台に積載された荷物の荷崩れが予測されるときに、荷崩れが予測される旨を運転者に聴覚的、視覚的に通知(即ち、予報)するものである。このデジタルタコグラフ1は、車両50の運行を管理する管理会社などに設置されたパソコン等で構成された情報管理装置70と無線通信で接続されており、デジタルタコグラフ1と情報管理装置70とで運行管理システムが構成されている。
【0018】
図3に示すように、デジタルタコグラフ1は、CPU2、不揮発性メモリ3、速度インタフェース(以下I/F)10、速度センサ20、エンジン回転数I/F11、回転数センサ21、GPSI/F12、GPS受信機22、外部記録メディアI/F13、メモリカード23、アナログ入力I/F14、加速度センサ24、カメラI/F15、カメラ25、音声I/F16、スピーカ26、LCDコントローラ17、表示部27、外部出力I/F18、警報ランプ28、通信端末I/F19、通信端末29、及び、図示しない電源などを備えている。
【0019】
上記CPU2は、ROMやRAMなどを内蔵しており、ROMに予め格納された制御プログラムによってデジタルタコグラフ1全体の制御を司る。CPU2は、例えば、運行記録処理として、速度I/F10、エンジン回転数I/F11及びGPSI/F12からの信号を基に車両データを収集して、外部記録メディアI/F13に接続された、例えば、CFカードなどの可搬型のメモリカード23に記録する処理を行う。
【0020】
上記速度I/F10には、単位距離走行する毎に走行パルス信号を出力する速度センサ20が接続されていて、この速度センサ20は、速度I/F10を介して上記走行パルス信号をCPU2に対して出力する。上記エンジン回転数I/F11には、車両50のエンジン回転数を検出する回転数センサ21が接続されていて、回転数センサ21は、エンジン回転数I/F11を介して検出した車両50のエンジン回転数をCPU2に対して出力する。
【0021】
上記GPSI/F12には、GPSを構成する複数のGPS衛星から供給される位置及び時刻を示す信号を受信するGPS受信機22が接続されていて、このGPS受信機22は、GPSI/F12を介して位置信号及び時刻信号をCPU2に対して出力する。この位置信号は緯度経度を含み、即ち、車両50の位置を示す位置情報である。外部記録メディアI/F13には、メモリカード23を着脱可能なリーダライタ部が設けられている。外部記録メディアI/F13は、CPU2の制御に応じてリーダライタ部に取り着けられたメモリカード23に車両データ等を記録したり、メモリカード23に記録された情報を読み出したりする。
【0022】
上記アナログ入力I/F14には、加速度に応じたアナログ信号を出力する加速度センサ24が接続されている。このアナログ入力I/F14は入力されたアナログ信号を量子化してデジタル信号に変換する機能を備えている。加速度センサ24は、3軸(X、Y、Z)方向の加速度を測定する3軸加速度センサで形成される。なお、3軸加速度センサは、周知であるように、薄いシリコンの梁(ビーム)によって錘を支え、加速度によって錘が動くことで梁が歪み、この歪みを梁上に形成したピエゾ抵抗素子等の抵抗変化で加速度を測定するようにしたものである。加速度センサ24は、3軸方向についてそれぞれ測定した加速度を示す3軸方向の各加速度信号を、アナログ入力I/F14を介してCPU2に対して出力する。加速度センサ24は、車両50の荷台に設置されている。このような3軸加速度センサに限らず、例えば、1軸加速度センサを用いて、カーブなどでの遠心力等などについての車両50の左右方向の加速度のみを測定するようにしてもよい。
【0023】
上記カメラI/F15には、積載された荷物を撮影するように車両50の荷台に設置されたカメラ25が接続されていて、このカメラ25は、カメラI/F15を介して撮影した映像についての映像情報をCPU2に対して出力する。
【0024】
上記音声I/F16には、車両50の運転席に向けて配置されたスピーカ26が接続されていて、このスピーカ26は、CPU2から音声I/F16を介して入力された音声信号に応じた音声を出力する。LCDコントローラ17には、車両50の運転席から視認しやすい場所に配置された液晶ディスプレイからなる表示部27が接続されていて、表示部27は、CPU2からLCDコントローラ17を介して入力された画像信号に応じた画像を表示部27に表示する。
【0025】
上記外部出力I/F18には、車両50の運転席から視認しやすい場所に配置されたLEDなどで構成された警報ランプ28が接続されており、この警報ランプ28は、CPU2から外部出力I/F18を介して入力された制御信号に応じて点灯又は消灯する。通信端末I/F19には、例えば、公衆無線通信回線を利用した無線通信が可能な通信端末29が接続されていて、この通信端末29は、CPU2の制御に応じて、情報管理装置70に車両データ等を通信端末I/F19を介して送信したり、上記情報管理装置70から各種情報を受信して通信端末I/F19を介してCPU2に対して出力したりする。
【0026】
上記不揮発性メモリ3は、電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリであり、例えば、周知のEEPROMやフラッシュメモリが用いられている。この不揮発性メモリ3には、例えば、デジタルタコグラフ1が搭載された車両50に固有の識別データや、荷崩れ予測のための荷崩れ加速度変化量判定閾値及び荷崩れ速度判定閾値、荷崩れが予測されたときの荷台状況などの情報を取得する期間である情報取得期間、荷崩れが発生する可能性が高い箇所(以下、注意箇所ともいう)に近づいたことの判定に用いられる予報距離、などの各種情報が格納されている。加速度変化量(増加量)が大きいと短時間で加速度が増加して荷崩れが発生する可能性が高くなる傾向にある。また、速度が大きいと、その後のブレーキ操作やハンドル操作などにより加速度が大きく変化する可能性が高くなる傾向にある。そのため、このような傾向を鑑みて、加速度変化量判定閾置及び荷崩れ速度判定閾置について、荷崩れ時の加速度変化量等の予備計測結果やシミュレーション結果に基づいて、適宜値を設定する。
【0027】
上記電源は、デジタルタコグラフ1が搭載されている車両50のバッテリやイグニッションスイッチと接続され、イグニッションスイッチに連動してデジタルタコグラフ1に電源供給やデジタルタコグラフ1の各回路の接地およびイグニッションスイッチのオンオフをCPU2に出力する。
【0028】
次に、上述した構成のデジタルタコグラフ1の本発明に係る動作(荷崩れ予報処理1、荷崩れ予報処理2、荷崩れ回避情報更新処理)を、図4〜図6を参照して説明する。
【0029】
まず、運転者は車両50に乗車する前に管理会社からメモリカード23を受け取る。このメモリカード23には、管理会社内に設置された情報管理装置70などよって車両50の識別データや、その日の荷積み・荷下ろしを行う必要のある荷積地・荷下地の緯度経度、などが予め記憶されている。また、メモリカード23には、上記荷積地から荷下地までの経路上に存在する荷崩れが発生する可能性が高い箇所(注意箇所)の緯度経度を示す注意箇所情報及び当該荷崩れ注意箇所情報に示される注意箇所を荷崩れなく走行できる速度を示す安全速度情報を含む荷崩れ回避情報も予め記憶されている。運転者は、受け取ったメモリカード23をデジタルタコグラフ1の外部記録メディアI/F13に装着した後、車両50のイグニッションスイッチをオンする。このイグニッションスイッチのオンに応じてCPU2に電源が供給されて、CPU2が、図4〜図6に示す各処理をそれぞれ並行して開始する。
【0030】
図4に示される荷崩れ予報処理1では、まず、CPU2は、速度センサ20から出力された走行パルス信号に基づいて車両50の速度を検出する(ステップS110)。検出した速度が0km/hであれば(ステップS120でN)車両50が停止中であるものとして処理を終了する。そうでなければ(ステップS120でY)車両50が走行中であるとして、続いて、加速度センサ24から出力された加速度信号に基づいて、車両50の前後方向、左右方向、上下方向の加速度をそれぞれ検出する(ステップS130)。
【0031】
そして、CPU2は、これら検出した加速度から、直前に検出されてRAM上に一時的に記憶されている直前加速度を差し引いて、上記各方向についての加速度変化量を算出(即ち、検出)する(ステップS140)。そのあと、次回の加速度変化量の算出のために上記検出した加速度をRAM上に一時的に記憶する。そして、不揮発性メモリ3から上記各方向についての荷崩れ加速度変化量判定閾値を読み出してそれぞれの加速度変化量と比較を行い、全てが荷崩れ加速度変化量判定閾値未満であれば速度の検出に戻り(ステップS150でN)、1つでも荷崩れ加速度変化量判定閾値以上であれば、続いて、速度の判定に進む(ステップS150でY)。
【0032】
速度の判定では、不揮発性メモリ3から荷崩れ速度判定閾値を読み出して、上記検出した速度と比較を行い、荷崩れ速度判定閾値未満であれば速度の検出に戻り(ステップS160でN)、荷崩れ速度判定閾値以上であれば、荷崩れが予測されるものとして、予測に応じた処理に進む(ステップS160でY)。
【0033】
荷崩れが予測されると、CPU2は、GPS受信機22から出力された各信号に基づいて車両50が現在走行している位置を示す位置情報(緯度経度)を取得する(ステップS170)とともに、荷台に設けられたカメラ25によって、荷崩れが予測された直後から所定の情報取得期間(例えば、30秒)にわたって撮影された荷物の映像についての映像情報を取得し、それぞれ取得した上記位置情報と上記映像情報とを互いに関連づけてメモリカード23に記録する(ステップS180)。
【0034】
なお、これに限らず、例えば、カメラ25によって常時撮影を行うとともに、荷崩れが予測されたときに、当該予測より前の時点(例えば、10秒前)又は後の時点(例えば、10秒後)から所定の情報取得期間にわたって撮影された荷物の映像についての映像情報を取得するように構成してもよく、本発明の目的に反しない限り、荷崩れが予測された時点近傍の所定の情報取得期間にわたって前記撮影部によって撮影された荷物の映像についての映像情報を取得するものであればよい。また、メモリカード23には、映像情報のみ記録するものであってもよい。また、メモリカード23に代えて、不揮発性メモリ3に記録するものであってもよい。
【0035】
また、荷崩れが予測されると同時に、CPU2は、スピーカ26から、例えば、「ピッポ、ピッポ、荷崩れ注意。」などのメッセージを出力するとともに、表示部27にも同様のメッセージを表示し、さらに、警報ランプ28を点滅させて、荷崩れを通知し、即ち、予報する(ステップS190)。
【0036】
そして、CPU2は、情報管理装置70に対して無線通信により荷崩れが予測されたときに取得した車両50の位置を示す位置情報を送信するとともに(ステップS200)、荷崩れが予測されたことを運行情報としてメモリカード23に記録する(ステップS210)。以降、上記処理を繰り返す。
【0037】
また、図5に示される荷崩れ予報処理2では、まず、CPU2は、速度センサ20から出力された走行パルス信号に基づいて車両50の速度を検出する(ステップT110)。検出した速度が0km/hであれば(ステップT120でN)車両50が停止中であるものとして処理を終了する。そうでなければ(ステップT120でY)車両50が走行中であるとして、続いて、GPS受信機22から出力された各信号に基づいて車両50が現在走行している位置を示す位置情報(緯度経度)を取得する(ステップT130)。そして、CPU2は、メモリカード23から荷崩れ回避情報を読み出して、上記位置情報に示される位置が、荷崩れ回避情報に含まれる注意箇所情報に示される注意箇所まで予報距離(例えば、100m)内に近づいていなければ(ステップT140でN)、速度の検出に戻り、予報距離内に近づいていれば(ステップT140でY)、当該注意箇所情報とともにメモリカード23に記憶された安全速度情報を読み出して、スピーカ26から、例えば、「ピッポ、ピッポ、荷崩れ注意、速度30km/h以下で走行してください。」などの当該安全速度情報に示される速度(安全走行速度)での走行を指示するためのメッセージを出力するとともに、表示部27にも同様のメッセージを表示する(ステップT150)。以降、上記処理を繰り返す。
【0038】
また、図6に示される荷崩れ回避情報更新処理では、まず、CPU2は、通信端末29を通じて情報管理装置70から荷崩れ回避情報を受信するまで待ち(ステップU110でN)、荷崩れ回避情報を受信すると(ステップU110でY)、この受信した荷崩れ回避情報をメモリカード23に記録されている荷崩れ回避情報に上書き(即ち、更新)する(ステップU120)。以降、上記処理を繰り返す。
【0039】
上述したステップS140が、請求項中の加速度変化量検出手段P1に相当し、ステップS150、S160が、請求項中の荷崩れ予測手段P2に相当し、ステップS190が、請求項中の予報手段P3に相当し、ステップS180が、請求項中の映像情報記録手段P4に相当し、ステップT140が、請求項中の車両位置判定手段P5に相当し、ステップT150が、請求項中の安全速度指示手段P6に相当し、ステップU120が、情報受信手段P7に相当し、ステップS200が、情報送信手段P8に相当する。
【0040】
また、スピーカ26、表示部27及び警報ランプ28が、請求項中の予報出力部D1に相当し、速度センサ20が、請求項中の速度測定部D2に相当し、カメラ25が、請求項中の撮影部D3に相当し、メモリカード23が、請求項中の映像情報記憶部D4に相当し、GPS受信機22が、請求項中の位置情報取得部D5に相当し、メモリカード23が、荷崩れ回避情報記憶部D6に相当し、スピーカ26及び表示部27が、請求項中の速度指示出力部D7に相当し、通信端末29が、無線通信部D8に相当する。また、荷崩れ加速度変化量判定閾値が、請求項中の荷崩れ加速度変化量判定条件に相当し、荷崩れ速度判定閾値が、請求項中の荷崩れ速度判定条件に相当する。
【0041】
上述したデジタルタコグラフ1の動作例を示す。
【0042】
例えば、車両50が走行中にカーブにさしかかったとき、カーブ通過により荷台に積載された荷物に遠心力が加わると、車両の左右方向に加速度が加わる。そして、このときの加速度変化量(加加速度)と速度とがそれぞれ所定の判定閾値以上であったときに、音声及び光等によって荷崩れの注意喚起を行う。また、車両50が急加速した場合などにおいても、同様の注意喚起を行う。
【0043】
また、車両50が、複数の車両から収集した情報に基づいて設定された、荷崩れが生じる可能性が高い注意箇所に近づいたとき、この注意箇所を荷崩れなく通過できる速度を音声などによって指示する。
【0044】
以上より、本発明によれば、車両50の荷台に生じる加速度の変化量を検出し、この加速度の変化量を用いて荷崩れを予測して、荷崩れが予測されると荷崩れを予報するので、荷台の傾きや横方向の加速度に基づく荷崩れの予測に比べて、加速度の変化量を用いることで当該加速度の動きの傾向を把握でき、そのため、荷崩れの予測精度を高めることができ、効果的に荷崩れに対する注意を喚起することができる。また、荷台の傾きを計測する必要が無く、コストを低くすることができる。
【0045】
また、車両50の速度を測定するとともに、加速度の変化量に加えて車両50の速度も用いて荷崩れを予測するので、予測精度をさらに高めることができる。
【0046】
また、荷崩れが予測されたときに、当該予測がされた直後から情報取得期間にわたって撮影された映像についての映像情報をメモリカード23に記録するので、荷崩れが予測されたときに実際に荷崩れが発生したか否かを事後的に検証することができ、この検証結果を荷崩れの予測にフィードバックすることで、予測精度をさらに高めることができる。また、記録された映像を運転指導に活用することで安全運転技術の向上を図ることができる。
【0047】
また、現在の車両50の位置が、荷崩れが発生する可能性が高い注意箇所まで予報距離内に近づいたときに、当該注意箇所を荷崩れなく走行できる速度を指示するので、この速度の指示が荷崩れの予報となって荷崩れを回避できる。
【0048】
また、車両50外に配置された情報管理装置70から無線で送信された、荷崩れが発生する可能性が高い注意箇所及び当該注意箇所を荷崩れなく走行できる速度に関する情報を含む荷崩れ回避情報を受信してメモリカード23に記憶するので、車両の走行中でも上記荷崩れ回避情報を更新することができ、そのため、より有効性の高い更新後の荷崩れ回避情報を用いることにより、さらに荷崩れを回避できる。
【0049】
また、荷崩れが予測されたときに車両50が走行している位置を情報管理装置70に無線で送信するので、情報管理装置70においてリアルタイムで荷崩れの予測に関する情報を収集することで、いち早く荷崩れ回避情報にフィードバックすることができ、より有効性の高い荷崩れ回避情報を早期に生成することができる。
【0050】
上述した本実施形態では、加速度変化量と速度とを用いて荷崩れを予測するものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、上述した図4のフローチャートにおいてステップS160を省略して、加速度変化量のみを用いて荷崩れを予測するようにしてもよい。
【0051】
または、加速度変化量と、速度に代えて現在の加速度と、を用いて荷崩れを予測するものであってもよい。現在の加速度が小さければ、増加傾向にある加速度変化量が大きくても、荷崩れが発生する加速度までは到達しづらく、また、現在の加速度が大きければ、増加傾向にある加速度変化量が小さくても、荷崩れが発生する加速度にすぐに到達してしまう。また、現在の加速度が、荷崩れが発生する加速度に近くても、加速度変化量が減少傾向にあれば、荷崩れが発生する加速度に到達しない。このような、加速度と加速度変化量との関係を鑑みて、例えば、現在の加速度毎に異なる加速度変化量の判定閾置を適宜設定するなどして、より予測精度を高めることができる。
【0052】
また、上述した実施形態では、加速度変化量と速度とのそれぞれに判定閾値を設けて、この判定閾値との比較により荷崩れを予測するものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、速度毎に異なる加速度変化量の判定閾値(即ち、荷崩れ加速度変化量判定条件)を設けるようにしてもよい。速度が高い場合、カーブや減速時において車両に加わる加速度がより大きくなる蓋然性高いので、速度が高くなるにしたがって加速度変化量判定閾値をより小さくするようにする。具体的には、速度を複数段階に分けて、これら速度の段階毎に加速度変化量の判定閾値を設定する。このとき、速度が高い段階ほど、前記判定閾値の値が小さくなるようにする。そして、速度及び加速度変化量を検出したのち、所定の荷崩れ速度判定条件を用いて上記検出された速度が属する段階を特定し、この特定された段階に対応して設定された加速度変化量の判定閾値を取得する。そして、この判定閾値を用いて加速度変化量を判定して、荷崩れを予測するようにしてもよい。すなわち、CPU2において、算出された加速度の変化量、予め定められた荷崩れ加速度変化量判定条件、検出された速度、及び、荷崩れ速度判定条件に基づいて、荷物の荷崩れを予測するように構成されていれば、本発明の目的に反しない限り、予測方法は任意である。このように、加速度変化量に加えて速度も用いて荷崩れ予測を行うことで、精度をより向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態が備える、荷崩れを予測したときに荷物の映像情報等を記録する機能(ステップS170、S180)、荷崩れを予測したときに車両の位置情報を情報管理装置70に送信する機能(ステップS200)、注意箇所に近づいたときに安全走行速度での走行を指示する機能(荷崩れ予報処理2(ステップT110〜T150))、荷崩れ回避情報を更新する機能(荷崩れ回避情報更新処理(ステップU110、U120))、のそれぞれについては、いずれかを備えるものであってもよく、または、これら各機能をすべて省略したものであってもよい。
【0054】
また、本実施形態では、メモリカード23に荷崩れ回避情報が記録されているものであったが、不揮発性メモリ3に予め記憶されているものであってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、本発明の荷崩れ予報装置をデジタルタコグラフに適用した構成について説明するものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、ナビゲーション装置やタクシーメータなどの車両に搭載される装置であれば、本発明を適用する装置の種類は任意である。
【0056】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 デジタルタコグラフ(荷崩れ予報装置)
2 CPU(加速度変化量検出手段、荷崩れ予測手段、予報手段、映像情報記録手段、車両位置判定手段、安全速度指示手段、情報受信手段、情報送信手段)
3 不揮発性メモリ
20 速度センサ(速度測定部)
21 回転数センサ
22 GPS受信機(位置情報取得部)
23 メモリカード(映像情報記憶部、荷崩れ回避情報記憶部)
24 加速度センサ
25 カメラ(撮影部)
26 スピーカ(予報出力部、速度指示出力部)
27 表示部(予報出力部、速度指示出力部)
28 警報ランプ(予報出力部)
29 通信端末(無線通信部)
70 情報管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両の荷台に積載されている荷物の荷崩れを予報する荷崩れ予報装置であって、
前記車両の荷台に生じる加速度の変化量を検出する加速度変化量検出手段と、
前記加速度変化量検出手段によって検出された前記加速度の変化量、及び、予め定められた荷崩れ加速度変化量判定条件に基づいて、前記荷崩れを予測する荷崩れ予測手段と、
前記荷崩れ予測手段によって前記荷崩れが予測されたとき、前記荷崩れの予報を予報出力部から出力する予報手段と、を有している
ことを特徴とする荷崩れ予報装置。
【請求項2】
前記車両の速度を測定する速度測定部をさらに有し、
前記荷崩れ予測手段が、前記加速度変化量検出手段によって検出された前記加速度の変化量、予め定められた荷崩れ加速度変化量判定条件、前記速度測定部によって測定された前記速度、及び、予め定められた荷崩れ速度判定条件に基づいて、前記荷物の荷崩れを予測するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷崩れ予報装置。
【請求項3】
前記荷台に積載されている荷物を撮影する撮影部と、
前記撮影部によって撮影された前記荷物の映像についての映像情報を記憶可能に設けられた映像情報記憶部と、
前記荷崩れ予測手段によって前記荷崩れが予測された時点近傍の所定の情報取得期間にわたって前記撮影部によって撮影された前記荷物の映像についての映像情報を、前記映像情報記憶部に記録する映像情報記録手段と、をさらに有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷崩れ予報装置。
【請求項4】
前記車両の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記荷崩れが発生する可能性が高い箇所を示す注意箇所情報及び当該注意箇所情報に示される箇所を前記荷崩れなく走行できる速度を示す安全速度情報を含む荷崩れ回避情報が記憶された荷崩れ回避情報記憶部と、
前記位置情報取得部によって取得された前記位置情報に示される前記車両の位置が、前記荷崩れ回避情報記憶部に記憶された前記荷崩れ注意箇所情報に示される箇所から所定の予報距離内にあるかを判定する車両位置判定手段と、
前記車両位置判定手段によって前記車両の位置が前記荷崩れ注意箇所情報に示される箇所から前記所定の予報距離内にあると判定されたとき、当該荷崩れ注意箇所情報に対応する前記安全速度情報に示される速度を速度指示出力部から出力する安全速度指示手段と、をさらに有している
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の荷崩れ予報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−224270(P2012−224270A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94993(P2011−94993)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】