説明

荷崩れ防止治具、これを用いた積荷方法および積荷構造体

【課題】積荷の横ずれに起因した荷崩れを有効に防止する。
【解決手段】積荷となる箱体に取り付けられる荷崩れ防止治具1は、積荷となる箱体を積み上げた際、個々の箱体の隅部を保護するとともに、積み上げられた状態を安定的に維持するために用いられる。この治具1は、軽量かつ高剛性のアルミ等の金属製で、直線状の脚部2と、平板状のプレート部3とを主体に構成されている。脚部2は、略L字状の横断面を有するアングル棒であって、それぞれが直線状に延在する2つの平面部2a,2bが直交するように連結した構造を有する。一方、脚部2の上端には、平板状のプレート部3が溶接等によって一体的に取り付けられている。このプレート部3は、脚部2の上端より略垂直に屈曲して横方向に延在しており、上段の箱体を下方より支える受け板として作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷崩れ防止治具、これを用いた積荷方法および積荷構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商品の流通は、商品単体または複数の商品をまとめて収容した梱包箱を用いて行われる。この梱包箱を倉庫で保管する場合等では、保管場所の省スペース化を図るために、梱包箱が積み上げられることが多い。商品が収容された状態の梱包箱はかなりの自重があるため、積み上げた梱包箱の荷崩れが生じないように、積荷の安定性には十分な注意が必要である。それとともに、積荷作業は頻繁に行われるので、その作業性に対する配慮も必要となる。
【0003】
従来より、複数段に積み上げた箱体の荷崩れを防止するための補強治具が知られている。例えば、特許文献1には、梱包箱側面に存在する四隅の辺に沿った4つの垂直片と、梱包箱上面に存在する四隅の辺に沿った4つの水平片とを有する積荷ユニット補強体が開示されている。これらの垂直/水平片は、略L字状の断面形状を有し、このL字を形成する二面の内側が、梱包箱の隅部を形成する2面の外側と接触する。この補強体を使用する際、1つの垂直片と1つの水平片よりなる4本の略L字状のフレームを梱包箱の四方から囲むように配置する。そして、隣接したフレーム同士を結合し、緊結用ベルトで拘束することによって、梱包箱全体が櫓状に組み付けられる。また、特許文献2には、略直方体状の被包物品の各稜線部に沿った金属製のアングルを用いて梱包物のコーナーを保護する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−63554号公報
【特許文献2】特開平9−142410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の金属フレームを一体化した補強治具では、積み上げられた上段の箱体の横ずれが生じ易いという問題がある。なぜなら、金属フレームの高剛性であるがゆえに、下段の箱体の上面四隅に沿った水平なフレームの撓みが生じ難く、上段の箱体の横すべりが生じ易いからである。また、補強治具が一体化されているので、箱体のサイズが異なると治具を別個に用意しなければならないという問題もある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、積荷の横ずれに起因した荷崩れを有効に防止することである。
【0007】
また、本発明の別の目的は、様々なサイズの箱体に柔軟に適用できる荷崩れ防止治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、積荷となる箱体に取り付けられ、脚部と、平板状のプレート部とを有する荷崩れ防止治具を提供する。脚部は、直線状に延在している。プレート部は、脚部の上端より屈曲し、脚部の横幅よりも大きな横幅で脚部の横幅方向に突出している。
【0009】
ここで、第1の発明において、脚部は、それぞれが直線状に延在する第1の平面部と第2の平面部とが連結された略L字状断面のアングル棒であってもよい。この場合、プレート部は、第1の平面部の横幅よりも大きな横幅で第1の平面部の横幅方向に延在し、かつ、第2の平面部の横幅よりも大きな横幅で第2の平面部の横幅方向に延在している。また、プレート部の厚みは、脚部の厚みよりも小さいことが好ましい。また、荷崩れ防止治具は、脚部の下端に取り付けられ、脚部の高さを調整する交換可能なカバーをさらに有することが好ましい。この場合、荷崩れ防止治具は、脚部の下端と、カバーとの間に介在し、個数を調整することによって、脚部の高さを調整するスペーサをさらに有することが好ましい。また、カバーは、合成樹脂製であることが好ましい。この場合、脚部およびカバーのいずれか一方に設けられた凸部と、脚部およびカバーのいずれか他方に設けられ、凸部に嵌合することによって、脚部およびカバーを係止する凹部とを有することが好ましい。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る荷崩れ防止治具を用いて、積荷となる箱体を積み上げる積荷方法を提供する。この積荷方法は、上記荷崩れ防止治具を、脚部が箱体の側部に位置し、かつ、プレート部が箱体の上面の一部を覆うように、箱体に複数セットする第1のステップと、箱体にセットされた複数の荷崩れ防止治具を緊結ベルトを用いて緊結する第2のステップとを有する。
【0011】
ここで、第2の発明において、脚部は、それぞれが直線状に延在する第1の平面部と第2の平面部とが連結された略L字状断面のアングル棒であってもよく、このアングル棒を箱体の隅部に沿ってセットしてもよい。この場合、箱体の上面は、第1の平面部の横幅よりも大きな横幅で第1の平面部の横幅方向に延在し、かつ、第2の平面部の横幅よりも大きな横幅で第2の平面部の横幅方向に延在するプレート部で覆われる。また、プレート部の厚みは、脚部の厚みよりも小さいことが好ましい。さらに、互いに緊結された荷崩れ防止治具が取り付けられた箱体の上段に、別の箱体を積み上げる第3のステップをさらに設けてもよい。また、荷崩れ防止治具は、脚部の下端に取り付けられ、脚部の高さを調整する交換可能なカバーをさらに有することが好ましい。この場合、荷崩れ防止治具は、脚部の下端と、カバーとの間に介在し、個数を調整することによって、脚部の高さを調整するスペーサをさらに有することが好ましい。
【0012】
第3の発明は、下段の箱体と、互いに緊結された状態で、下段の箱体に取り付けられた複数の荷崩れ防止治具と、下段の箱体の上段に配置された上段の箱体とを有する積荷構造体を提供する。荷崩れ防止治具のそれぞれは、下段の箱体の側部に位置する直線状の脚部と、脚部の上端より屈曲し、脚部の横幅よりも大きな横幅で脚部の横幅方向に突出しているとともに、下段の箱体と上段の箱体との間に介在する平板状のプレート部とを有する。
【0013】
ここで、第3の発明において、脚部は、それぞれが直線状に延在する第1の平面部と第2の平面部とが連結された略L字状断面のアングル棒であり、下段の箱体の隅部に沿って取り付けられていてもよい。この場合、プレート部は、第1の平面部の横幅よりも大きな横幅で第1の平面部の横幅方向に延在し、かつ、第2の平面部の横幅よりも大きな横幅で第2の平面部の横幅方向に延在している。また、プレート部の厚みは、脚部の厚みよりも小さいことが好ましい。また、荷崩れ防止治具のそれぞれは、脚部の下端に取り付けられ、脚部の高さを調整する交換可能なカバーをさらに有することが好ましい。この場合、荷崩れ防止治具のそれぞれは、脚部の下端と、カバーとの間に介在し、個数を調整することによって、脚部の高さを調整するスペーサをさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
第1から第3の発明によれば、箱体を積み上げた際、上段の箱体の自重によってプレート部が撓み、箱体の上面に強固に押し付けられる。これにより、上段の箱体の横ずれが生じ難くなるので、積荷の横ずれに起因した荷崩れを有効に防止できる。また、複数の荷崩れ防止治具を箱体に緊結することにより、箱体のサイズに依存することなく治具の共通化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る荷崩れ防止治具の斜視図
【図2】第1の実施形態に係る荷崩れ防止治具の取付状態を示す図
【図3】箱体を3段に積み上げた状態の正面図
【図4】プレート部が撓んだ状態の説明図
【図5】第2の実施形態に係る荷崩れ防止治具の斜視図
【図6】第2の実施形態に係る荷崩れ防止治具の取付状態を示す図
【図7】第3の実施形態に係る荷崩れ防止治具の分解斜視図
【図8】第3の実施形態に係るカバーの取付状態を示す斜視図
【図9】第4の実施形態に係る荷崩れ防止治具を外側から見た分解斜視図
【図10】第4の実施形態に係る荷崩れ防止治具を内側から見た分解斜視図
【図11】第4の実施形態に係るカバーの取付状態を外側から見た斜視図
【図12】第4の実施形態に係るカバーの取付状態を内側から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る荷崩れ防止治具の斜視図である。荷崩れ防止治具1は、積荷となる箱体を積み上げた際、個々の箱体の隅部を保護するとともに、積み上げられた状態を安定的に維持するために用いられる。この治具1は、軽量かつ高剛性のアルミ等の金属製で、直線状の脚部2と、平板状のプレート部3とを主体に構成されている。脚部2は、略L字状の横断面を有するアングル棒であって、それぞれが直線状に延在する2つの平面部2a,2bが直交するように連結した構造を有する。脚部2の長さは、これが取り付けられる箱体の高さ(パレットの高さを含む)に応じて適宜設定されている。脚部2の下端には、床面の凹みを防止するためにベースプレート4が取り付けられているとともに、脚部2の側部には、緊結ベルト用のフック5が取り付けられている。
【0017】
一方、脚部2の上端には、平板状のプレート部3が溶接等によって一体的に取り付けられている。このプレート部3は、脚部2の上端より略垂直に屈曲して横方向に延在しており、上段の箱体を下方より支える受け板として作用する。本実施形態では、プレート部3として、矩形状のものを用いているが、プレート部3の形状はどのようなものであってもよい。ここで、プレート部3は、脚部2の横幅よりも大きな横幅で、脚部2の横幅方向に突出している。具体的には、プレート部3の一方の横幅W1は、第1の平面部2aの横幅W2よりも大きく(W1>W2)、両者の差に相当する分だけ、平面部2aの横幅W1の方向に突出して延在している。また、プレート部3の他方の横幅W3は、第2の平面部2bの横幅W4よりも大きく(W3>W4)、両者の差に相当する分だけ、平面部2aの横幅W3の方向に突出して延在している。また、外力が加わった際にプレート部3が適度に撓むように、プレート部3の厚みは脚部2の厚みよりも小さくなっている。
【0018】
図2は、本実施形態に係る荷崩れ防止治具1を箱体に取り付けた状態を示す図である。プラスチック製のパレット6の上には箱体7が載置されている。この箱体7は、単一の梱包箱であってもよいが、複数の梱包箱をまとめたものであってもよい。個々の梱包箱の中には、例えば飲料入り容器といった商品が複数収容されている。箱体7の側面の四隅には、荷崩れ防止治具1がそれぞれ取り付けられ、これらはベルト8によって緊結されている。ベルト8は、布製のラッシングベルト等を用いてもよいが、作業性の観点でいえば、ワンタッチで取付可能な面ファスナーを備えたゴムベルト等を用いることが好ましい。
【0019】
積荷となる箱体7の積荷作業を行う場合、作業者は、まずパレット6に箱体7を載置した後、箱体7の横方向から4つの荷崩れ防止治具1を箱体7にセットする。これにより、治具1の脚部2は、箱体7の側部、より具体的には箱体7の隅部に沿うように配置され、箱体7の上面は、治具1のプレート部3によって部分的に覆われる。つぎに、作業者は、治具1のフック5にベルト8を差し込みながら、箱体7の周囲全体を巻回した上でベルト8を締め付ける。ベルト8の緊結により、箱体7の四隅に取り付けられた治具1が固定される。その後、必要に応じて、この箱体7の上段に、別の箱体7を積み上げる。上段に積み上げる箱体7には、治具1が取り付けられている必要性は必ずしもない。
【0020】
図3は、パレット6付の箱体7a〜7cが3段に積み上げられた状態を示す図である。荷崩れ防止治具1は、下段の箱体7aにのみに用いられており、中段および上段の箱体7b,7cには取り付けられていない。図4に示すように、下段の箱体7aの上面と中段のパレット6との間に介在するプレート部3は、これよりも上に存在する箱体7b,7cの自重によって下方に押し下げられる。これにより、脚部2よりも肉薄なプレート部3は、パレット6の変形と共に、脚部2との付け根から先端に向かって下方に撓んで、箱体7aの上面に強固に押し付けられる。その結果、箱体7aとパレット6との間にプレート部3が挟み込まれているので、治具1の脱落を招くことなく、下段の箱体7aに対する中段の箱体7bの横ずれを規制する。
【0021】
このように、本実施形態によれば、箱体7a〜7cを積み上げた際、上の箱体7b,7cの自重によって下のプレート部3が撓み、箱体7aの上面に強固に押し付けられる。これにより、箱体7bの横ずれが生じ難くなるので、積荷の横ずれに起因した荷崩れを有効に防止できる。また、複数の荷崩れ防止治具1を箱体7に緊結することにより、箱体7のサイズに依存することなく治具1の共通化を図ることが可能になる。
【0022】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る荷崩れ防止治具1'の斜視図である。荷崩れ防止治具1'は、上述した第1の実施形態と同様、直線状の脚部2と、平板状のプレート部3とを主体に構成されている。ただし、脚部2は、略L字状の横断面のアングル棒ではなく、単なる板状のものが用いられ、プレート部3の一辺の略中央に取り付けられている。ここで、プレート部3の一方の横幅W5は、脚部2の横幅W6よりも大きく(W5>W6)、両者の差に相当する分だけ、脚部2の横幅W6の方向に突出して延在している。
【0023】
図6は、本実施形態に係る荷崩れ防止治具1'を箱体7に取り付けた状態を示す図である。箱体7における4つの側面の略中央には、荷崩れ防止治具1'がそれぞれ取り付けられ、これらはベルト8によって緊結されている。
【0024】
上記以外の点については、上述した第1の実施形態と同様なので、図1および図2と同様の符号を付してここでの説明を省略する。
【0025】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、積荷の横ずれに起因した荷崩れを有効に防止でき、箱体7のサイズに依存することなく治具1'の共通化を図ることが可能になる。
【0026】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る荷崩れ防止治具1bの分解斜視図である。荷崩れ防止治具1bは、上述した第1の実施形態と同様、直線状の脚部2と、平板状のプレート部3とを主体に構成されている。ただし、脚部2は、上下方向に延在するように平面部2aに形成された長穴2cを有している。また、脚部2の下端には、ベースプレート4は取り付けられていない(図1参照)。なお、図7は、荷崩れ防止治具1bにおける脚部2の下端近傍を拡大した図であり、プレート部3およびフック5の図示を省略している。
【0027】
また、荷崩れ防止治具1bは、カバー9と、スペーサ10とを有している。カバー9は、合成樹脂からなる交換可能なカバーであり、脚部2の下端を覆うように取り付けられる。具体的には、カバー9は、略L字状の横断面を有し、脚部2の側面を覆うように周設される壁部91と、脚部2の下端と対向する底部92とを有している。壁部91は、図7中手前側に位置する外壁部93と、奥側に位置する内壁部94とを有する。外壁部93は、図7中左側に形成されるとともに、ナット11が嵌め込まれるナット穴93aと、左右両側にそれぞれ形成された2つのスリット93bとを有する。内壁部94は、ナット11と締結するボルト12が嵌め込まれるボルト穴94aを有する。ナット穴93aおよびボルト穴94aは、脚部2の長穴2cと対応する位置に形成される。各スリット93bは、上下方向に延在するように外壁部93の左右両側にそれぞれ形成されるとともに、カバー9の内部まで貫通して形成される。スペーサ10は、金属からなる四角柱状の部材を略L字状に折り曲げたものである。このスペーサ10は、脚部2の下端と、カバー9との間に介在し、個数を調整することによって、脚部2の高さを調整する。
【0028】
図8は、本実施形態に係るカバー9の取付状態を示す斜視図である。カバー9は、長穴2cを介してナット11と、ボルト12とを締結させることによって脚部2に取り付けられる。この状態において、脚部2の下端と、カバー9との間に介在するスペーサ10の個数は、スリット93bを介して視認することができる。また、脚部2の長穴2cは、上下方向に延在して形成されているので、スペーサ10の個数を増減させた場合であってもカバー9を脚部2に取り付けることができる。
【0029】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様、積荷の横ずれに起因した荷崩れを有効に防止でき、箱体7のサイズに依存することなく治具1bの共通化を図ることが可能になる。また、スペーサ10の個数を調整することによって、脚部2の高さを調整することができるので、高さ方向においても箱体7のサイズに依存することなく治具1bの共通化を図ることが可能になる。
【0030】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態に係る荷崩れ防止治具1cを外側から見た分解斜視図である。図10は、本実施形態に係る荷崩れ防止治具1cを内側から見た分解斜視図である。荷崩れ防止治具1cは、上述した第3の実施形態と同様、直線状の脚部2と、平板状のプレート部3とを主体に構成されている。ただし、脚部2は、平面部2bに設けられた締結部材21を有する。締結部材21は、脚部2に形成された穴に外側から挿入されたボルト21aと、脚部2の内側においてボルト21aと締結するナット21bとによって構成される。
【0031】
また、荷崩れ防止治具1cは、カバー9cと、スペーサ10とを有している。カバー9cは、合成樹脂からなる交換可能なカバーであり、脚部2の下端を覆うように取り付けられる。具体的には、カバー9cは、略L字状の横断面を有し、脚部2の側面を覆うように周設される壁部91cと、脚部2の下端と対向する底部92とを有している。壁部91cは、図9中手前側に位置する外壁部95と、奥側に位置する内壁部96とを有する。外壁部95は、図9中右側に設けられた中央部97と、中央部97に上下方向に延在するように形成されたスリット98とを有する。中央部97は、上端から下側に向かって2箇所に切り欠きを形成することによって区画される。スリット98は、上側に位置するとともに、ボルト21aと嵌合する第1スリット98aと、下側に位置するとともに、第1スリット98aよりも狭い幅に形成される第2スリット98bとを連結して構成される。内壁部96は、上端から下側に向かって形成された切欠部96aを有する。この切欠部96aは、内壁部96の図10中左右両側にわたって形成される。
【0032】
図11は、本実施形態に係るカバー9cの取付状態を外側から見た斜視図である。図12は、本実施形態に係るカバー9cの取付状態を内側から見た斜視図である。ボルト21aの頭部は、脚部2から突出する半球状に形成されているので、カバー9cを脚部2に挿入すると、中央部97は脚部2から離間する方向に押し広げられる。この際、ナット21bは、切欠部96aに挿入される。そして、カバー9cは、凸部としてのボルト21aの頭部と、凹部としての第1スリット98aとが嵌合することによって、脚部2の下端に係止される。この状態において、脚部2の下端と、カバー9cとの間に介在するスペーサ10の個数は、第2スリット98bを介して視認することができる。また、第1スリット98aは、上下方向に延在して形成されているので、スペーサ10の個数を増減させた場合であってもカバー9cを脚部2に取り付けることができる。
【0033】
カバー9cを脚部2から取り外す際には、中央部97と、脚部2との間にマイナスドライバーなどを挿入することによって、中央部97を脚部2から離間する方向に押し広げ、カバー9cを脚部2から抜き取る。ここで、切欠部96aは、左右両側にわたって形成されているので、ナット21bと対応する左側のみに形成されている場合と比較して中央部97を押し広げるときの負荷を低減することができる。
【0034】
本実施形態によれば、第3の実施形態と同様、積荷の横ずれに起因した荷崩れを有効に防止でき、箱体7のサイズに依存することなく治具1cの共通化を図ることが可能になる。また、カバー9cは、ボルト21aの頭部と、第1スリット98aとが嵌合することによって、脚部2の下端に係止されるので、カバー9cを脚部2に容易に取り付けることができる。
【0035】
なお、上述した各実施形態において、プレート部3の上面に、積荷を滑り難くするための摩擦部を設けてもよい。摩擦部が設けられる部位は、プレート部3の全面であってもよいし、その一部のみであってもよい。摩擦部としては、プレート部3自体の表面に設けられた凹凸構造、プレート部3に取り付けられたシート状の凹凸部材、または、プレート部3に取り付けられたシート状の弾性部材(ゴムシート等)が挙げられる。プレート部3の上面に摩擦部を設けた場合には、その直上に位置する箱体7の底面との摩擦力が高まるので、荷崩れの防止に効果的に寄与する。
【0036】
また、上述した第3の実施形態および第4の実施形態において、スペーサ10の個数を調整することによって、脚部2の高さを調整していた。これに対して、カバーの底部の厚さを調整することによって、スペーサを介在させることなく脚部の高さを調整してもよい。また、上述した第3の実施形態において、合成樹脂製のカバー9を採用していたが、金属製などの他のカバーを採用してもよい。すなわち、カバーは、脚部の高さを調整する交換可能なものであればよい。
【0037】
また、上述した第4の実施形態において、脚部2に設けられた凸部としてのボルト21aと、カバー9cに設けられた凹部としての第1スリット98aとによって、脚部2およびカバー9cを係止していた。これに対して、脚部に凹部を設けるとともに、カバーに凸部を設けることによって、脚部およびカバーを係止してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明に係る荷崩れ防止治具は、積荷となる箱体が積み上げられた状態を安定的に保持する用途に対して広く適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1,1',1b,1c 荷崩れ防止治具
2 脚部
2a 第1の平面部
2b 第2の平面部
2c 長穴
3 プレート部
4 ベースプレート
5 フック
6 パレット
7 箱体
8 ベルト
9,9c カバー
10 スペーサ
11 ナット
12 ボルト
21 締結部材
21a ボルト
21b ナット
91,91c 壁部
92 底部
93 外壁部
93a ナット穴
93b スリット
94 内壁部
94a ボルト穴
95 外壁部
96 内壁部
96a 切欠部
97 中央部
98 スリット
98a 第1スリット
98b 第2スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積荷となる箱体に取り付けられる荷崩れ防止治具において、
直線状の脚部と、
前記脚部の上端より屈曲し、前記脚部の横幅よりも大きな横幅で前記脚部の横幅方向に突出した平板状のプレート部と
を有することを特徴とする荷崩れ防止治具。
【請求項2】
前記脚部は、それぞれが直線状に延在する第1の平面部と第2の平面部とが連結された略L字状断面のアングル棒であって、
前記プレート部は、前記第1の平面部の横幅よりも大きな横幅で前記第1の平面部の横幅方向に延在し、かつ、前記第2の平面部の横幅よりも大きな横幅で前記第2の平面部の横幅方向に延在していることを特徴とする請求項1に記載された荷崩れ防止治具。
【請求項3】
前記プレート部の厚みは、前記脚部の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載された荷崩れ防止治具。
【請求項4】
前記脚部の下端に取り付けられ、前記脚部の高さを調整する交換可能なカバーをさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された荷崩れ防止治具。
【請求項5】
前記脚部の下端と、前記カバーとの間に介在し、個数を調整することによって、前記脚部の高さを調整するスペーサをさらに有することを特徴とする請求項4に記載された荷崩れ防止治具。
【請求項6】
前記カバーは、合成樹脂製であることを特徴とする請求項4または5に記載された荷崩れ防止治具。
【請求項7】
前記脚部および前記カバーのいずれか一方に設けられた凸部と、
前記脚部および前記カバーのいずれか他方に設けられ、前記凸部に嵌合することによって、前記脚部および前記カバーを係止する凹部と
を有することを特徴とする請求項6に記載された荷崩れ防止治具。
【請求項8】
積荷となる箱体の積荷方法において、
直線状の脚部と、前記脚部の上端より屈曲し、前記脚部の横幅よりも大きな横幅で前記脚部の横幅方向に突出した平板状のプレート部とを有する荷崩れ防止治具を、前記脚部が前記箱体の側部に位置し、かつ、前記プレート部が前記箱体の上面の一部を覆うように、前記箱体に複数セットする第1のステップと、
前記箱体にセットされた複数の前記荷崩れ防止治具をベルトで緊結する第2のステップと
を有することを特徴とする積荷方法。
【請求項9】
前記脚部は、それぞれが直線状に延在する第1の平面部と第2の平面部とが連結された略L字状断面のアングル棒であって、
前記第1のステップにおいて、前記脚部は、前記箱体の隅部に沿ってセットされ、これによって、前記箱体の上面は、前記第1の平面部の横幅よりも大きな横幅で前記第1の平面部の横幅方向に延在し、かつ、前記第2の平面部の横幅よりも大きな横幅で前記第2の平面部の横幅方向に延在する前記プレート部によって、覆われることを特徴とする請求項8に記載された積荷方法。
【請求項10】
前記プレート部の厚みは、前記脚部の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項8または9に記載された積荷方法。
【請求項11】
互いに緊結された前記荷崩れ防止治具が取り付けられた前記箱体の上段に、別の箱体を積み上げる第3のステップをさらに有することを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載された積荷方法。
【請求項12】
前記荷崩れ防止治具は、前記脚部の下端に取り付けられ、前記脚部の高さを調整する交換可能なカバーをさらに有することを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載された積荷方法。
【請求項13】
前記荷崩れ防止治具は、前記脚部の下端と、前記カバーとの間に介在し、個数を調整することによって、前記脚部の高さを調整するスペーサをさらに有することを特徴とする請求項12に記載された積荷方法。
【請求項14】
積荷となる複数の箱体よりなる積荷構造体において、
下段の箱体と、
互いに緊結された状態で、前記下段の箱体に取り付けられた複数の荷崩れ防止治具と、
前記下段の箱体の上段に配置された上段の箱体とを有し、
前記荷崩れ防止治具のそれぞれは、
前記下段の箱体の側部に位置する直線状の脚部と、
前記脚部の上端より屈曲し、前記脚部の横幅よりも大きな横幅で前記脚部の横幅方向に突出しているとともに、前記下段の箱体と前記上段の箱体との間に介在する平板状のプレート部と
を有することを特徴とする積荷構造体。
【請求項15】
前記脚部は、それぞれが直線状に延在する第1の平面部と第2の平面部とが連結した略L字状断面のアングル棒であって、前記下段の箱体の隅部に沿って取り付けられ、
前記プレート部は、前記第1の平面部の横幅よりも大きな横幅で前記第1の平面部の横幅方向に介在し、かつ、前記第2の平面部の横幅よりも大きな横幅で前記第2の平面部の横幅方向に介在することを特徴とする請求項14に記載された積荷構造体。
【請求項16】
前記プレート部の厚みは、前記脚部の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項14または15に記載された積荷構造体。
【請求項17】
前記荷崩れ防止治具のそれぞれは、前記脚部の下端に取り付けられ、前記脚部の高さを調整する交換可能なカバーをさらに有することを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載された積荷方法。
【請求項18】
前記荷崩れ防止治具のそれぞれは、前記脚部の下端と、前記カバーとの間に介在し、個数を調整することによって、前記脚部の高さを調整するスペーサをさらに有することを特徴とする請求項17に記載された積荷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−143972(P2011−143972A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281335(P2010−281335)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(505130075)ラーク物産株式会社 (3)
【Fターム(参考)】