説明

荷役システム

【課題】
貨物を運送する車両と車両で運送される貨物を荷役する貨物センタとによって実現される荷役システムについて、車両の運転者の労働負担を充分に軽減することができ、車両に対する荷役を十分に効率的に行うことができるようにする。
【解決手段】
貨物Pを運送する車両Tと車両Tで運送される貨物Pを荷役する貨物センタSとにより構成され、貨物センタSには、車両Tが後部側を向けて停車されるトラックヤード100と、トラックヤード100に配置され車両Tの後部側まで貨物Pを運搬する運搬装置200とが設備されている。トラックヤード100は、複数台の車両Tが並列して停車される広さを備えている。運搬装置200は、車両Tの後部側に対して貨物Pを前後進させる搬送台200aと搬送台200aを貨物Pが載せられた状態で車両Tの並列方向へ移動する横移動機構200bとを備えている。車両Tは、貨物Pが積載される荷台Bに対して荷役作業を行う車両用荷役装置400が設備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物を運送する車両と車両で運送される貨物を荷役する貨物センタとによって実現される荷役システムに係る技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近、貨物センタ(配送センタ,物流センタ)における大量の貨物の車両に対する荷揚,荷降の荷役を効率的にするため、貨物センタにコンピュータ,センサ等を組合わせた荷役の自動化の試みが行われている。然しながら、貨物の車両に対する荷役では、最終的に人手に頼らなければならないことがあるため、車両の運転者(車両に対する荷役作業者)の労働負担が大きくなってきている。このため、車両の運転者の労働負担を大きくすることなく、車両に対する荷役を効率的に行うことのできる荷役システムの開発が要望されている。
【0003】
従来、荷役システムとしては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、貨物を運送する車両と車両で運送される貨物を荷役する貨物センタとを備え、貨物センタに車両が後部側を向けて停車されるトラックヤードとトラックヤードに設備され車両の後部側まで貨物を運搬する運搬装置とが設備された荷役システムが記載されている。
【0005】
特許文献1に係る荷役システムは、運搬装置を車両の後部側から荷台の一部にまで進入させることで、荷役作業の効率化を図るとともに、車両の荷台の後部付近での車両の運転者の労働負担を軽減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−142993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る荷役システムでは、運搬装置を車両の荷台の奥方にまで進入させることができないため、車両の荷台の奥方での荷役に人手が必要で車両の運転者の労働負担を充分に軽減することができないという問題点がある。また、運搬装置を荷役を行う車両まで頻繁に往復動等させなければならないため、車両に対する荷役を十分に効率的に行うことができないという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、車両の運転者の労働負担を充分に軽減することができ、車両に対する荷役を十分に効率的に行うことのできる荷役システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明に係る荷役システムは、特許請求の範囲の各請求項に記載の手段を採用する。
【0010】
即ち、請求項1では、貨物を運送する車両と車両で運送される貨物を荷役する貨物センタとを備え、貨物センタに車両が後部側を向けて停車されるトラックヤードとトラックヤードに配置され車両の後部側まで貨物を運搬する運搬装置とが設備された荷役システムにおいて、トラックヤードは複数台の車両が並列して停車される広さを備え、運搬装置は車両の後部側に対して貨物を前後進させる搬送台と搬送台を貨物が載せられた状態で車両の並列方向へ移動する横移動機構とを備え、車両は貨物が積載される荷台に対して荷役作業を行う車両用荷役装置が設備されていることを特徴とする。
【0011】
この手段では、車両に車両用荷役装置が設備されることで、車両の荷台の奥方での荷役に人手が不要となる。また、複数台の車両が並列して停車されるトラックヤードに車両の後部側に対して貨物を前後進させる搬送台と搬送台を貨物が載せられた状態で車両の並列方向へ移動する横移動機構とからなる運搬装置が設備されることで、運搬装置を荷役を行う車両まで頻繁に往復動等させる必要がなくなる。
【0012】
また、請求項2では、請求項1の荷役システムにおいて、運搬装置の搬送台は貨物を車両の荷台に積載される積上状態で搬送するコンベアからなることを特徴とする。
【0013】
この手段では、運搬装置の搬送台に貨物が車両の荷台に積載される積上状態で載せられることで、貨物を積上状態でそのまま車両に積載することができる。
【0014】
また、請求項3では、請求項2の荷役システムにおいて、運搬装置の搬送台は少なくとも車両の1台に満積載される量の貨物が搬送されるものであることを特徴とする。
【0015】
この手段では、運搬装置の搬送台で車両の1台に満積載される量の貨物を搬送することで、荷役作業を車両の1台に満積載される量の貨物を単位として実施することができる。
【0016】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかの荷役システムにおいて、車両に設備される車両用荷役装置は、貨物が積載される荷台の床面に貨物を荷台の前後方向へ移動させるコンベアが設置された車両用荷役装置において、コンベアはシート状に形成されて荷台の後方側に設置されたローラに巻取り,繰出し可能に連結されるとともに繰出し先端が荷台の前後方向へ移動可能に配設された移動用チェーンに連結され、ローラ,移動用チェーンを駆動する駆動部は共通化されてコンベアの巻取りの際にローラを駆動しコンベアの繰出しの際に移動用チェーンを駆動する自動的な切換えがカムによってなされる駆動伝達機構が付設されていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、車両への車両用荷役装置の設備について、シート状のコンベアをローラに巻取り移動用チェーンで繰出すことでコンベアの二段の配設構造を避け、ローラ,移動用チェーンの駆動部を自動的な切換えがカムによってなされる駆動伝達機構を介して共通化することで駆動部,駆動伝達機構を荷台の床面の凹部等を利用して設置することができるようにする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る荷役システムは、車両に車両用荷役装置が設備されることで、車両の荷台の奥方での荷役に人手が不要となるため、車両の運転者の労働負担を充分に軽減することができる効果がある。また、複数台の車両が並列して停車されるトラックヤードに車両の後部側に対して貨物を前後進させる搬送台と搬送台を貨物が載せられた状態で車両の並列方向へ移動する横移動機構とからなる運搬装置が設備されることで、運搬装置を荷役を行う車両まで頻繁に往復動等させる必要がなくなるため、車両に対する荷役を十分に効率的に行うことができる効果がある。
【0019】
さらに、請求項2として、運搬装置の搬送台に貨物が車両の荷台に積載される積上状態で載せられることで、貨物を積上状態でそのまま車両に積載することができるため、車両に対する荷役をより十分に効率的に行うことができる効果がある。
【0020】
さらに、請求項3として、運搬装置の搬送台で車両の1台に満積載される量の貨物を搬送することで、荷役作業を車両の1台に満積載される量の貨物を単位として実施することができるため、両に対する荷役をより十分に効率的に行うことができる効果がある。
【0021】
さらに、請求項4として、車両への車両用荷役装置の設備について、シート状のコンベアをローラに巻取り移動用チェーンで繰出すことでコンベアの二段の配設構造を避け、ローラ,移動用チェーンの駆動部を自動的な切換えがカムによってなされる駆動伝達機構を介して共通化することで駆動部,駆動伝達機構を荷台の床面の凹部等を利用して設置することができるようにするため、車両の貨物が積載されるコンベアの積載面を低くして車両の貨物の積載量を多くすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る荷役システムを実施するための形態の平面図である。
【図2】図1の側面図である。である。
【図3】図1,図2の要部の斜視図である(一部拡大図を含む)。
【図4】図3の要部の拡大された側面断面図である。
【図5】図4のX−X線拡大断面図である。
【図6】図4のY−Y線拡大断面図である。
【図7】図4の要部の拡大図である。
【図8】図7の横断面図である。
【図9】図8の要部の拡大図であり、(A),(B)に要部の異なる動作状態が示されている。
【図10】図9の要部の動作を示す縦断面図であり、(A),(B)に逆方向への動作状態が示されている。である。
【図11】図9の一方向への駆動における要部の動作を示す平面図であり、(A),(B)に異なる動作状態が示されている。
【図12】図9の他方向への駆動における要部の動作を示す平面図であり、(A),(B)に異なる動作状態が示されている。
【図13】図9の要部の縦断面図である。
【図14】図9の他の要部の側面図である。
【図15】図9の他の要部の側面図である。
【図16】図15の一部拡大図である。
【図17】図9の他の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る荷役システムを実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
この形態は、図1,図2に示すように、貨物センタSと車両Tとによって構成される。
【0025】
貨物センタSには、トラックヤード100,搬送装置200,積上装置300が設備される。
【0026】
トラックヤード100は、車両Tが後部側を向けて複数台が並列して停車される広さを有したプラットフォームからなる。このトラックヤード100には、貨物Pを保管する倉庫等(図示せず)が隣接して設備される。
【0027】
搬送装置100は、トラックヤード100に配置されたもので、車両Tの後部側に対して貨物Pを積上状態で車両Tの後部側に対して前後進させる前後進させる搬送台100aと、搬送台100aを貨物Pが載せられた状態で車両Tの並列方向へ移動する横移動機構100bと、搬送台100aと車両Tとの間を中継する中継台100cと、貨物Pを積上げて搬送台100aに移動させる基台100dとを備えている。搬送台100a,横移動機構100b,中継台100c,基台100dは、ベルトコンベアからなる。
【0028】
積上装置300は、搬送装置100の基台100dに貨物Pを積上げるリフト機構等からなる。
【0029】
車両Tには、車両用荷役装置400が設備される。
【0030】
車両Tとしては、バンタイプのトラックが示されている。
【0031】
車両用荷役装置400は、車両Tの荷台Bに設置されるもので、コンベア19,ローラ20,貨物支持体21,貨物支持体送り機構22,貨物固定具23,移動用チェーン24,駆動部25,駆動伝達機構Uを主要部として構成されている。
【0032】
コンベア19は、図3,図4に示すように、軽量で強靱なべルト(例えば、ポリアミドを心体層として積層したもの)でシート状に形成され、荷台Bの前後方向,幅方向(前後方向と直交する方向)に連続する全面張りの面積を有して、荷台Bの床面Baの上に貨物Pの積載面となる配設面を展開することができるものとなっている。コンベア19の配設面には、図4に示すように、コンベア19の配設方向(荷台Bの床面Baの前後方向)へ延びて積載された貨物Pの荷重をコンベア19を介して支える床フレーム26が配設されている。床フレーム26には、必要に応じて、コンベア19の移動を円滑にするために、コンベア19に当接される蝋等の固形の潤滑剤が設けられる。
【0033】
ローラ20は、図3,図4に示すように、軸線が荷台Bの幅方向へ設定されて荷台Bの床面Baの後方側の端部に回転可能に設置されてなるもので、コンベア19の繰出し基端(巻取り始端)が固定されてコンベア19を巻取り,繰出しするローラ本体20aと、ローラ本体20aに固定されたローラ軸20bとからなる。ローラ軸20bには、駆動伝達用スプロケット27が固定されている。なお、ローラ20の近くの荷台Bの前方側には、コンベア19を配設面に向けて案内するための案内ローラ28が設置されている。
【0034】
貨物支持体21は、図3,図4に示すように、背もたれ的な機能で積載された貨物Pの荷崩れを防止するもので、鳥居形の枠体に形成されてコンベア19の繰出し先端(巻取り終端)の上に荷台Bの天パネルBb付近までの高さに立設されている。貨物支持体21とコンベア19の繰出し先端とは、例えば、コンベア19に皺寄り,捻れ等が生じないように、荷台Bの幅方向に延びた板形の補強金具を介して固定されている。
【0035】
貨物支持体送り機構22は、図3〜図5に示すように、荷台Bの側パネルBcに沿って前後方向に配設されたコ字形の走行レール22aと、走行レール22aの内部に配設されたネジ棒22bと、貨物支持体21の側部に取付けられネジ棒22bと係合するナット体22cと、走行レール22aの後方側の端部付近に切欠き形成された切除部22dとからなる。ネジ棒22bは、丸ネジ棒の周面に細い丸ネジ棒を間隔を介して螺旋状に巻付けた構造からなるもので、ギア,チェーン等の連係部材29を介して移動用チェーン24と同期して回転駆動されるようになっている。ナット体22cは、ネジ棒22bの螺旋に係合する波形の係合断面が形成されている。切除部22dは、貨物Pの大きさに対応して貨物固定具23を貨物支持体送り機構22に対して着脱可能にする空間部を形成している。
【0036】
貨物固定具23は、図4,図5に示すように、ロープ掛けで積載された貨物Pの荷崩れを防止するもので、貨物支持体送り機構22の走行レール22aの外側に嵌合されるコ字形に形成された本体部23aと、本体部23aの上下側に回動可能に支持され貨物支持体送り機構22の走行レール22aの複数面を転動するローラ23bと、本体部23aの内側面の中央部に突出して設けられ貨物支持体送り機構22のネジ棒22bの螺旋の間隔に侵入する突起23cと、本体部23aの外側面の中央部に突出して設けられロープが掛けられるロープ掛部23dとからなる。本体部23aは、貨物支持体送り機構22の切除部22dに侵入可能な大きさ(横幅)となっている(図4参照)。突起23cは、貨物支持体送り機構22のネジ棒22bの回転駆動に応動してネジ棒22bの軸方向へ移動し走行レール22aに沿って貨物固定具23全体を移動させる。
【0037】
移動用チェーン24は、図3,図4に示すように、ギアに噛合するリンクチェーンからなるもので、荷台Bの床面Baの前方側と後方側とに配置されたスプロケッ30,31にエンドレス状に掛渡されて荷台Bの前後方向に配設されて荷台Bの幅方向に2本が並列されている。スプロケット30,31は、荷台Bの床面Baの前方側と後方側とに軸線が荷台Bの幅方向へ設定されて配設された回転軸32,33に2本の移動用チェーン24に対応して間隔を介した1対がそれぞれ支持されている。スプロケット30,31の近くの荷台Bの後方側には、移動用チェーン24のエンドレス状の往復ラインの間隔を狭める補助スプロケット34が設置されている。また、荷台Bの後方側の回転軸32には、駆動伝達用スプロケット35が固定されている。移動用チェーン24の一箇所と貨物支持体21(コンベア19の繰出し先端)とは、固定用ブラケット36で固定されている。
【0038】
駆動部25は、図3,図4,図7,図8に示すように、荷台Bの床面Baの後方側の端部に設置され制御回路によって正逆の回転方向の切換えができる駆動モータからなる。この駆動部25は、駆動伝達機構Uを収容し潤滑オイルが封入されたハウジング37に取付けられて駆動伝達機構Uとともにユニット化され、車両への搭載が容易になるように構成されている。
【0039】
駆動伝達機構Uは、図7以下に詳細に示されるように、駆動体1,従動体2,3,カム4,ワンウエイクラッチ5,シャッタ機構6を主要部として構成されている。
【0040】
駆動体1は、図9,図14に示すように、リング形の駆動ギア1aの両側に円筒カップ形のケーシング1bが最中合わせに接合されてボルト1cで中空体に組付けられてなる。ケーシング1bは、図8に示すように、中心に軸受孔1baが穿孔され、軸受孔1baの周囲に120度の角度を介して放射状に3個の貫通孔1bbが穿孔されている。軸受孔1baには、カム4を支持するベアリング7が固定される。貫通孔1bbには、ワンウエイクラッチ5の後述のクラッチピン5bのピン本体5baのスライドを受けるスリーブ8が固定される。
【0041】
従動体2,3は、図9,図15,図17に示すように、駆動体1のケーシング1bの両端面(外側面)にそれぞれ当接される円盤形に形成されてなるもので、中心に軸受孔2a,3aが穿孔され、軸受孔2a,3aの周囲に120度の角度を介して放射状に2個ずつ合計6個のオイル孔2b,3bが穿孔されている。軸受孔2a,3aには、カム4を支持するベアリング9が内周部に固定された従動ギア10,11が固定される。オイル孔2b,3bは、ハウジング37に封入されている潤滑オイルの流通を確保する。
【0042】
従って、従動体2,3は、カム4を介して駆動体1と同軸線上に配置されていることになる。
【0043】
カム4は、図9〜図13に示すように、小径部分4aである両端部がハウジング37に固定された段付きの固定軸として駆動体1,従動体2,3に貫通して配設されなるもので、中空体の駆動体1の内部に位置する大径部分4bの周面に周方向に刻設された案内溝4cが設けられている。案内溝4cは、平行な2条の主溝4caと主溝4caを斜め方向に連通する連絡溝4cbとからなる。案内溝4cの主溝4caは、図4に示すように、相対的に溝底の深い部分4caaと相対的に溝底の浅い部分4cabとが形成されて、溝底の深い部分4caaと溝底の浅い部分4cabとの間に段差部4cacが形成されている。なお、案内溝4cの主溝4caの溝底の浅い部分4cabは、主溝4caに対して連絡溝4cbが鋭角に交差する側に近接した一部分にのみ形成されている。
【0044】
従って、動体2,3は、カム4に対して回転可能に支持されていることになる。
【0045】
ワンウエイクラッチ5は、図9〜図13,図15,図17に示すように、スライダ5a,クラッチピン5b,弾性部材5c,クラッチ溝5dからなる。スライダ5aは、図9,図13に示すように、変形のリング盤5aaと、リング盤5aaの中心部に穿孔されてカム4が挿通される中心孔5abと、駆動体1のケーシング1bの貫通孔1bbに対応してリング盤5aaの外周部付近に120度の角度を介して放射状に3個穿孔されクラッチピン5bのスライドを許容するスライド用孔5acと、リング盤5aaにスライド用孔5abとは60度の角度を隔てて120度の角度を介して放射状に2個ずつ合計6個穿孔されたガイド孔5adと、ガイド孔5adに挿通されて両端部が駆動体1のケーシング1bに固定されてカム4と平行に配設された6本のガイドシャフト5aeと、リング盤5aaに120度の角度を介して隣接する2個のガイド孔5adの間にリング盤5aaの中心に向けて放射状にスライド可能に支持され先端がカム4の案内溝4bを移動する案内子5afと、案内子5afをリング盤5aaの中心方向(カム4の案内溝4b方向)に弾圧付勢するコイルスプリング5agとからなる。クラッチピン5bは、スライダ5aのスライド用孔5abに挿通されて駆動体1のケーシング1bの貫通孔1bbから選択的に出没される軸長をもった丸棒形の3本のピン本体5baと、ピン本体5baの両端部から少し中央寄りにそれぞれ固定されたリング形の弾性部材受5bbとからなる。弾性部材5cは、コイルスプリングからなるもので、クラッチピン5bのピン本体5baに外装されてクラッチピン5bの両側の弾性部材受5bbとスライダ5aのリング盤5aaとの間にそれぞれ弾圧装着されている。クラッチ溝5dは、図15,図17に示すように、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面(内側面)にオイル孔2b,3bを含んで周方向に円弧形に延びて刻設されクラッチピン5bのピン本体5baが係合されるもので、溝底の深さが一定の平坦部5daと、溝底の深さが傾斜して平坦部5daの一端部側にのみ設けられた傾斜部5dbとからなる。クラッチ溝5dの平坦部5daは、従動体2,3のオイル孔2b,3bが位置されている。クラッチ溝5dの傾斜部5dbは、図17に示すように、両側の従動体2,3で平坦部5daに対して逆に配置されている。
【0046】
シャッタ機構6は、図15,図16に示すように、シャッタ片6a,支軸6b,案内ピン6c,トーションコイルスプリング6dからなる。シャッタ片6aは、円弧片形に形成されて従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に当接され支軸6bで回動可能に支持されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを開閉するもので、ワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dに一部重なる円弧形の外周部分に曲線形の傾斜部6aaが設けられ、回動の先端部付近に案内ピン6cを受ける案内溝6abが設けられている。支軸6bは、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に固定されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの傾斜部5db付近に配置され、シャッタ片6aを回動の先端部がワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5daの一部に重なることができるように支持している。案内ピン6cは、従動体2,3の駆動体1のケーシング1bの端面への当接面に固定されてワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5da付近に配置され、シャッタ片6aの回動を案内する。トーションコイルスプリング6dは、支軸6bに同軸に装着されてシャッタ片6aと従動体2,3とに係止されて、シャッタ片6aをワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖する方向へ弾圧付勢している。
【0047】
さらに、この駆動伝達機構Uでは、図7,図8に示すように、従動体2,3に固定された従動ギア10,11に中継ギア12,13を介して出力軸14,15,出力スプロケット16,17が噛合連結されている。出力スプロケット16,17は、ハウジング37から露出されている。また、駆動体1の駆動ギア1aには、駆動部25である駆動モータから傘歯車等の中継ギア18が噛合連結されている。一方の出力スプロケット16と移動用チェーン24を駆動する駆動伝達用スプロケット35との間には、駆動伝達用チェーン38が掛けられている。他方の出力スプロケット17とローラ20を駆動する駆動伝達用スプロケット27との間には、駆動伝達用チェーン39が掛けられている。従って、機械的構成からなる駆動伝達機構Uを円滑に動作させる潤滑オイルがハウジング37に封入されて、移動用チェーン24,ローラ20に連結される出力スプロケット16,17が相対されてハウジング37から露出されるため、潤滑系の接続や連結の中継部材の配置が無用になって、車両への搭載箇所に自由度が得られる。
【0048】
この駆動伝達機構Uによると、ワンウエイクラッチ5が駆動体1,従動体2,3の間に設けられ、カム4が駆動体1の内部に設けられ、ワンウエイクラッチ5,カム4が駆動体1,従動体2,3から露出されなくなるため、全体がコンパクト化される。また、ワンウエイクラッチ5がクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合構造とされクラッチピン5bがカム4に規制されたスライダ5aのスライドによって動作されるため、構造が簡素化され製造が安価,容易となる。
【0049】
この駆動伝達機構Uでは、図9(A)に示すように、駆動部25が一方向(正方向)に回転駆動されると、中継ギア19を介して駆動体1(駆動ギア1a)が正方向に回転される。このとき、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afは、カム4の案内溝4cの図面右側の主溝4caにある場合に溝底の浅い部分4cabから溝底の深い部分4caaに段差部4cacを降下してそのまま図面右側の主溝4caを移動し(図10(A),図11(A)参照)、カム4の案内溝4cの図面左側の主溝4caにある場合に溝底の深い部分4caaから溝底の浅い部分4cabの手前で段差部4cacに規制されて連絡溝4cbに方向変換されて図面右側の主溝4caに変位して移動する(図10(B),図11(B)参照)。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afの移動については、コイルスプリング5agによって円滑性が確保され、固定軸として配設されているカム4の案内溝4cに案内されることによって精度が確保されている。
【0050】
この結果、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afを支持しているリング盤5aaが図面右側にスライドされることになる。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aのリング盤5aaのスライドは、図面右側の弾性部材5cを圧縮させクラッチピン5bを図面右側にスライドさせる。ワンウエイクラッチ5のスライドしたクラッチピン5bは、ピン本体5baが図面右側の従動体2に設けられているクラッチ溝5dに係合される。ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合については、クラッチピン5bのスライドが衝撃吸収機能を有する弾性部材5cの弾力を介し、クラッチピン5bのピン本体5baがクラッチ溝5dの傾斜部5dbから平坦部5daに滑込むように緩慢に侵入することによって、円滑性,非衝撃性が確保されている。なお、図16に示すように、ワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの平坦部5daに侵入したクラッチピン5bのピン本体5baは、シャッタ機構6のシャッタ片6aの傾斜部6aaに当接して、クラッチ溝5dを閉鎖しているシャッタ機構6のシャッタ片6aを自動的に開放する。ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bのピン本体5baのシャッタ機構6のシャッタ片6aの傾斜部6aaへの当接については、傾斜部6aaが滑性のある曲線形であることによって衝撃が緩和されシャッタ機構6の円滑な動作が確保され、シャッタ機構6によるワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dの開放のタイミングが正確になってワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bとシャッタ機構6のシャッタ片6aとの衝突が防止される。
【0051】
ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合は、図面右側の従動体2の正方向への駆動体1の回転に追従した回転をもたらす。そして、従動ギア10,中継ギア12,出力軸14を介して図面右側の出力スプロケット16の正方向への回転出力を生じさせる。即ち、駆動伝達用チェーン38を介して、移動用チェーン24を駆動する駆動伝達用チェーン38が駆動されることになる。
【0052】
駆動体1,従動体2の正方向への回転の際には、ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bと図面左側の従動体3に設けられているクラッチ溝5dとの係合が解除されているため、図面左側の従動体3がフリー回転可能な状態になっていて従動回転されることがない。なお、シャッタ機構6のシャッタ片6aが図面左側の従動体3に設けられているワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖しているため、クラッチピン5bが不測にクラッチ溝5dに侵入することはない。
【0053】
また、図7(B)に示すように、駆動部25が他方向(逆方向)に回転駆動されると、中継ギア19を介して駆動体1(駆動ギア1a)が逆方向に回転される。このとき、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afは、カム4の案内溝4cの図面右側の主溝4caにある場合に溝底の深い部分4caaから溝底の浅い部分4cabの手前で段差部4cacに規制されて連絡溝4cbに方向変換されて図面左側の主溝4caに変位して移動し(図10(B),図12(A)参照)、カム4の案内溝4cの図面左側の主溝4caにある場合に溝底の浅い部分4cabから溝底の深い部分4caaに段差部4cacを降下してそのまま図面左側の主溝4caを移動する(図10(A),図12(B)参照)。
【0054】
この結果、ワンウエイクラッチ5のスライダ5aの案内子5afを支持しているリング盤5aaが図面左側にスライドされることになる。ワンウエイクラッチ5のスライダ5aのリング盤5aaのスライドは、図面左側の弾性部材5cを圧縮させクラッチピン5bを図面左側にスライドさせる。ワンウエイクラッチ5のスライドしたクラッチピン5bは、ピン本体5baが図面左側の従動体3に設けられているクラッチ溝5dに係合される。
【0055】
ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5b,クラッチ溝5dの係合は、図面左側の従動体3の逆方向への駆動体1の回転に追従した回転をもたらす。そして、従動ギア11,中継ギア13,出力軸15を介して図面右側の出力スプロケット18の逆方向への回転出力を生じさせる。即ち、駆動伝達用チェーン39を介して、ローラ20を駆動する駆動伝達用スプロケット27が駆動されることになる。
【0056】
駆動体1,従動体3の逆方向への回転の際には、ワンウエイクラッチ5のクラッチピン5bと図面右側の従動体2に設けられているクラッチ溝5dとの係合が解除されているため、図面右側の従動体2がフリー回転可能な状態になっていて従動回転されることがない。なお、シャッタ機構6のシャッタ片6aが図面右側の従動体2に設けられているワンウエイクラッチ5のクラッチ溝5dを閉鎖しているため、クラッチピン5bが不測にクラッチ溝5dに侵入することはない。
【0057】
この駆動伝達機構Uによると、駆動力の伝達経路の切換えが操作部を設けなくとも駆動側の回転方向の切換に対応して自動的に実行されることになる。
【0058】
この車両用荷役装置400によると、コンベア19が二段の配設構造とならないため、ローラ20,駆動機構である駆動部25,駆動伝達機構Uを荷台Bの床面Baの凹部等を利用して設置することにより、貨物Pが積載されるコンベア19の積載面となる配設面を低くすることができる。従って、荷台Bの容積を貨物Pの積載のために有効利用して積載量を多く確保することができる。また、コンベア19の二段の配設構造を避けて取付スペースの小規模化が図られているため、既に使用されている車両Tの固定的な荷台Bに簡単に改修装備することができる。なお、駆動部25が1基からなることも、取付スペースの小規模化に寄与する。また、駆動部5に付設される駆動伝達機構Uがワンウエイクラッチ5,カム4を駆動体1,従動体2,3の間に設けてコンパクト性が備えられることも、荷台Bの床面Baの凹部等を利用しての設置に役立つ。また、移動用チェーン24が補助スプロケット34でエンドレス状の往復ラインの間隔を狭められていることも、貨物Pが積載されるコンベア19の積載面となる配設面を低くすることに寄与する。
【0059】
この車両用荷役装置400を使用するには、コンベア19を駆動部25による移動用チェーン24の駆動でローラ20から繰出すことによって、荷台Bの後方側で荷揚げされて積載された貨物Pを荷台Bの前方側まで移動させる。このとき、ローラ20は、フリー回転可能な状態になっていてコンベア19の繰出しに支障が生ずることはない。また、貨物支持体送り機構22も連係して駆動されることになるため、コンベア19に追従して貨物支持体21,貨物固定具23も荷台Bの前方側へ移動される。また、コンベア19を駆動部25によるローラ20の逆方向への駆動で駆動してローラ20に巻取ることによって、荷降ろしの際に荷台Bの前方側に積載されている貨物Pを荷台Bの後方側まで移動させることになる。このとき、移動用チェーン24は、フリー回転可能な状態になっていてコンベア19の巻取りに支障が生ずることはない。また、貨物支持体送り機構22もコンベア19の巻取りに伴う各部の逆転によって逆転されることになる、コンベア19に追従して貨物支持体21,貨物固定具23も荷台Bの前方側へ移動される
【0060】
この使用では、前述の駆動伝達機構Uの説明から明らかなように、駆動部25の回転方向の切換えで自動的にコンベア19の繰出し,巻取りが変更される。
【0061】
この形態によると、まず、貨物センタSにおいて、積上装置300によって搬送装置200の基台200dに貨物Pを載せることになる。このとき、車両Tの1台に満積載される量の貨物Pを搬送装置200の基台200dに車両Tの荷台Bに積載される積上状態で積上げる。
【0062】
続いて、搬送装置200の基台200dに載せられた貨物Pを搬送台100aに送り、貨物Pが送込まれた搬送台100aを横移動機構100bによって積載しようとする車両Tまで移動させる。
【0063】
この結果、車両Tの1台に満積載される量の積上状態に貨物Pを単位として迅速に移動させることができ、車両Tに対する荷役を十分に効率的に行うことができる。
【0064】
搬送装置200の搬送台100a,横移動機構100bによって車両Tの後部側に搬送された貨物Pは、車両Tに設備されている車両用荷役装置400によってそのまま荷台Bに積載される。
【0065】
この結果、車両Tの荷台Bの奥方での荷役は勿論、車両Tでの荷役にほとんど人手が必要なくなるため、車両Tの運転者の労働負担を充分に軽減することができる。なお、搬送装置200の中継台100cは、搬送装置200の搬送台100aから車両用荷役装置400への貨物Pの移送を円滑にする。
【0066】
なお、貨物Pの荷下ろしについても前述の荷揚げの逆の動作が実施され、車両Tに対する荷役を十分に効率的に行うことができ、両Tの運転者の労働負担を充分に軽減することができる。
【符号の説明】
【0067】
100
トラックヤード
200
搬送装置
200a 搬送台
200b 横移動機構
300 積上装置
400 車両用荷役装置
S 貨物センタ
T 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物を運送する車両と車両で運送される貨物を荷役する貨物センタとにより構成され、貨物センタに車両が後部側を向けて停車されるトラックヤードとトラックヤードに配置され車両の後部側まで貨物を運搬する運搬装置とが設備された荷役システムにおいて、トラックヤードは複数台の車両が並列して停車される広さを備え、運搬装置は車両の後部側に対して貨物を前後進させる搬送台と搬送台を貨物が載せられた状態で車両の並列方向へ移動する横移動機構とを備え、車両は貨物が積載される荷台に対して荷役作業を行う車両用荷役装置が設備されていることを特徴とする荷役システム。
【請求項2】
請求項1の荷役システムにおいて、運搬装置の搬送台は貨物を車両の荷台に積載される積上状態で搬送するコンベアからなることを特徴とする荷役システム。
【請求項3】
請求項2の荷役システムにおいて、運搬装置の搬送台は少なくとも車両の1台に満積載される量の貨物が搬送されるものであることを特徴とする荷役システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの荷役システムにおいて、車両に設備される車両用荷役装置は、貨物が積載される荷台の床面に貨物を荷台の前後方向へ移動させるコンベアが設置された車両用荷役装置において、コンベアはシート状に形成されて荷台の後方側に設置されたローラに巻取り,繰出し可能に連結されるとともに繰出し先端が荷台の前後方向へ移動可能に配設された移動用チェーンに連結され、ローラ,移動用チェーンを駆動する駆動部は共通化されてコンベアの巻取りの際にローラを駆動しコンベアの繰出しの際に移動用チェーンを駆動する自動的な切換えがカムによってなされる駆動伝達機構が付設されていることを特徴とする荷役システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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