説明

荷電粒子エネルギー・フィルタ

【課題】2重極要素に静電4重極および静電6重極励起が追加された多要素静電シケイン・エネルギー・フィルタを提供すること。
【解決手段】絞りの位置に線焦点を形成することができる2重極、4重極および6重極要素の組合せを備える本発明に基づく荷電粒子エネルギー・フィルタは、空間電荷効果および絞りの損傷を低減させる。好ましい一実施形態は、このフィルタが、共役ブランキング・システムの役目を果たすことを可能にする。このエネルギー・フィルタは、エネルギー幅を狭くし、その結果としてビームをより小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された荷電粒子ビーム装置に関し、より具体的には、この装置内にあって、ビームの質およびミリング(milling)の質を向上させるエネルギー・フィルタ(energy filter)に関する。
【背景技術】
【0002】
集束イオン・ビーム(FIB)システムでは、源からイオンを引き出し、それらのイオンをビームとし、集束させ、それらのイオンで基板を走査して、特徴部分(feature)の画像を形成し、特徴部分をミリングし、またはガス環境から材料を付着させる。特徴部分がますます小さくなるにつれて、FIBシステムは、より質の高いビームを提供するように、すなわちより小さくより集束したビーム・スポットを提供するように最適化されていなければならず、そのようなビーム・スポットでは、電流の分布が可能な限りコンパクトであるべきである。
【0003】
FIBの電流分布の質を低下させる因子はいくつかある。液体金属イオン源(liquid metal ion source)(LMIS)を使用しているイオン・カラムについて言うと、低ないし中程度のビーム電流を有するビームの質を低下させる主たる原因は色収差(chromatic aberration)である。液体金属イオン源から放出されたガリウム・イオンは、固有の相互作用と粒子の相互作用の組合せであるエネルギー分布を有し、粒子の相互作用は普通、ベルシュ効果(Boersch effect)と呼ばれている。イオンを形成する機構には異なるいくつかの機構があるため、固有の相互作用は非常に複雑である。色収差は、異なるエネルギーを有する粒子がイオン・カラム内のレンズによって異なる位置に集束する結果として生じる。この色収差によって、ビームの電流分布は、イオンのエネルギー幅(energy spread)(ΔE)とともに変化する。それぞれのエネルギー値におけるイオンの出現度数を示すヒストグラム上に、イオン・ビーム中のイオンのエネルギーをプロットした場合、そのグラフは、「公称」エネルギー値の位置にピークを有し、そのピークよりも高いエネルギーおよびそのピークよりも低いエネルギーではイオンの出現度数が急速に低下し、次に、それより緩やかに次第に低下するであろう。グラフのこの次第に低下する領域はビームの「尾(tail)」として知られている。エネルギー幅ΔEは一般に「半値全幅(full width,half maximum)」として、すなわちピークの両側の、値が最大ピーク値の半分である2点間のエネルギーとして測定される。一般的なガリウム液体金属イオン源において、1pAから数百nAの電流を有するビームのエネルギー幅は、源からの放出電流が1.5から2.5μAであるときに一般に約5eVである。
【0004】
図1A〜1Cは、フォトレジストのイオン・ビーム・ミリングに対するビーム・エネルギーの尾の影響を示す顕微鏡写真である。図1A〜1Cに示す特徴部分は、金−ケイ素イオン源を使用し、ビーム電流0.2nAでミリングしたものである。図1Aでは、このビームを2秒間当てて、1cm2あたり4×1014個のイオンを供給した。このビームを正方形パターンに従って移動させて、片面に中心正方形100nmをミリングした。ピークから離れたエネルギーを有するエネルギーの尾の中のイオンは、イオン・カラム内で異なる態様で偏向され、正方形の外側に落下し、フォトレジストを円102の形に軽くミリングする。
【0005】
図1Bでは、このビームを10秒間当てて、1cm2あたり合計2×1015個のイオンを供給した。特定のエネルギー値を有するイオンの相対数は、その特定のエネルギー値が公称ビーム値から離れるにつれて減少する。すなわち、エネルギー値が公称値から離れるほどイオンの数は少なくなる。しかしながら、イオンの総数が増加するにつれて、公称値からより離れたエネルギーを有するイオンの数も増加する。ミリング操作の時間が長いほど、エネルギーの尾の中のより離れたイオンの影響は顕著になる。図1Bの円102の幅が図1Aよりも大きいのは、尾の中のより離れたイオンの数が増加したために、それらのイオンの影響がより大きくなったためである。図1Cでは、このビームを100秒間当てて、1cm2あたり合計2×1016個のイオンを供給した。公称エネルギー値からより離れたイオンの数が増えてそれらの影響がより顕著になるため、円102の幅はよりいっそう大きくなる。
【0006】
電子ビーム画像化システムについて言うと、画像化の鋭敏さ(acuity)は、集束カラム内の色差と源サイズ、回折および球面収差からの寄与との組合せによって変化する。色収差は電子のエネルギー幅に比例し、したがって、電子ビーム・カラム内でエネルギー・フィルタを使用した場合にはより小さなビームを達成することができ、それによって画像化の鋭敏さを向上させることができる。
【0007】
「シケイン(chicane)」2重屈曲(dual−bend)エネルギー・フィルタは、先行技術のエネルギー・フィルタの一型であり、このフィルタでは、通常はカラムに沿って直列に配置された4つの2重極偏向器により、荷電粒子ビームを曲げて軸からずらし(オフアクシス(off−axis))、次いで再び曲げてビームが軸上を進むようにする(オンアクシス(on−axis))。それらの2重極偏向器は一般に上カラムと最終レンズの間に位置する。シケインの2番目の偏向器と3番目の偏向器の間には通常、ナイフエッジ(knife−edge)形の絞り(aperture)または円形の絞りが配置されており、それらの絞りはそれぞれ、高域フィルタにおいて公称エネルギーよりも低いエネルギーを有するイオンの通過を阻止し、または帯域フィルタにおいて公称エネルギー範囲外のエネルギーを有するイオンの通過を阻止するために使用される。いずれにしても、エネルギー・フィルタの上方のレンズが絞りの平面のクロスオーバ(crossover)にビームを集束させるため、空間電荷効果が増大することは避けられない。空間電荷効果は、「ベルシュ効果」として知られているビームのエネルギー幅の増大、および「レフラー効果(Loeffler Effect)」として知られているビームの横断方向の空間的な広幅化を引き起こす。
【0008】
図2は、4つの2重極要素202、204、206および208を備える先行技術のシケイン・エネルギー・フィルタ200の等角図である。適切なエネルギー・フィルタリングのため、カラムの上方に位置するレンズ(図示せず)が、絞りアセンブリ210内の絞りの平面内の円形のスポット(図示せず)に荷電粒子ビームを集束させる。高域通過または低域通過エネルギー・フィルタリングに対しては、絞りをナイフエッジまたはスリットとすることができる。帯域通過エネルギー・フィルタリングに対しては、絞りをスリットまたは円形の穴とすることができる。先行技術のこれらのいずれの場合も、絞りの位置におけるビームの電流密度は一般に非常に高い。これは、分散軸に沿った方向(この図では垂直方向)と分散軸に対して垂直な方向(この図では右上から左下へ向かう方向)の両方の方向にビームを集束させるためである。したがって、イオン・ビームと電子ビームの両方で、絞りの位置および絞りの近くで強い空間電荷相互作用が生じる可能性がある。イオン・ビームでは、この高いビーム電流密度がさらに、エネルギー・フィルタの通過帯域の外側の全てのイオンに関して、絞りの望ましくないスパッタリングを生じさせる。4つの要素202、204、206および208は2重極として励起されて、絞りの位置に必要なビーム・オフセットを提供する。この図では、202、204、206および208が8重極として実現されており、それらはそれぞれ、独立に励起可能な8つの電極を備える。このようにすることは、より幅の広い物理的な絞りを横切る静電場の均一性を向上させ、それによって光学収差を低減させることが先行技術において知られている一般的な実践である。あるいは、先行技術では、要素202、204、206および208を、平行な平面静電電極の対としてまたは4重極として実現することも知られている。
【0009】
先行技術のシケイン・エネルギー・フィルタでは、絞りの平面にビームを集束させ、最終的なビーム中に存在させたくないエネルギーを有するイオンを絞りに衝突させ、それによってそれらのイオンが最終レンズ内へ進むことを阻止する。阻止されたビームの高いビーム電流密度およびエネルギーのため(最終的なビーム・エネルギーは通常、最大30〜40keVになりうる)、絞りのスパッタリングが重大なものなることがあり、その結果、時には、絞りを貫通するスパッタリング穴が形成されることがある。これが起こったときには、荷電粒子ビーム・システムを開いて、損傷した絞りを交換しなければならない。
【0010】
ある種のFIBカラムでは、ビーム・ブランカ(beam blanker)が単一の偏向要素であり、このことは、試料上でビームを動かすことなしにビームをオン/オフすることを可能にするであろうビームの「共役ブランキング」が不可能であることを意味する。単一の偏向要素をビーム・ブランカとして使用すると、ビームが試料に到達するのを防ぐためにビームを偏向させてオフアクシスにしたときに、同時に試料上でビームが移動し、それによってそのビームによって処理することが意図されていないエリアにビームが当たり、それによってそのエリアをビームがミリングする。
【0011】
さらに、現行のいくつかのFIBカラムでは、一部の粒子が中性粒子として源を出るか、または最終レンズに到達する前に一部の粒子がカラム内で中性粒子に変化する。それらの粒子は帯電していないため、ターゲット上に集束させることができず、結果的に幅の広い中性のバックグラウンドを構成することがあり、この幅の広い中性のバックグラウンドは、不必要なミリングまたは画像コントラストの低下を引き起こす可能性がある。したがって、ビームが最終レンズに入る前にビームからこのバックグラウンドを除去することができることが望ましいであろう。
【0012】
先行技術のシケイン・フィルタは、エネルギー・フィルタリング絞りの位置において円形の焦点を使用し、空間電荷効果による負の影響と絞りの損傷による負の影響の両方を受ける。したがって、画像化の鋭敏さおよびミリングの鋭敏さならびに絞りの寿命に対するこれらの不利な影響を低減させることができるエネルギー・フィルタも求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、先行技術のこれらの課題を解決し、試料のミリングおよび/または画像化に対するビームの質を高めるシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、シケイン・エネルギー・フィルタ内の2重極要素に、静電4重極および静電6重極励起を追加することにより、シケインの2番目の要素と3番目の要素の間に配置された絞りの位置で線焦点(line focus)を結ぶようにビームを成形する。この追加を実施すると、線焦点が絞り平面においてより鋭くかつよりまっすぐになることにより、エネルギー分解能がさらに向上することを本出願の出願人は見出した。いくつかの実施形態では、シケイン・エネルギー・フィルタが共役ブランカとして機能することができる。
【0015】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0016】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】ビーム・エネルギーの尾の影響を示す顕微鏡写真である。
【図1B】ビーム・エネルギーの尾の影響を示す顕微鏡写真である。
【図1C】ビーム・エネルギーの尾の影響を示す顕微鏡写真である。
【図2】4つの2重極要素を備える先行技術のシケイン・エネルギー・フィルタの等角図である。
【図3】2重極、4重極および6重極励起が可能な4つの8重極要素を備える本発明の好ましい一実施形態に基づくエネルギー・フィルタの等角図である。
【図4】フィルタを通過する荷電粒子ビームの経路を示す、図3のエネルギー・フィルタの破断等角図である。
【図5】図3のエネルギー・フィルタの側断面図である。
【図6】垂直軸が拡大された、図5のエネルギー・フィルタの絞り領域の側断面図である。
【図7A】帯域フィルタおよび高域フィルタの絞り領域を示す、図5のエネルギー・フィルタのクローズアップ側断面図である。
【図7B】帯域フィルタおよび高域フィルタの絞り領域を示す、図5のエネルギー・フィルタのクローズアップ側断面図である。
【図8】エネルギー分散軸に対して平行に見た、組み合わされた2重極、4重極および6重極要素を備える本発明の好ましい一実施形態に基づく4要素シケイン・エネルギー・フィルタを示す図である。
【図9】スリット幅が140nm、絞り位置におけるビーム・オフセットが3.0mmである本発明の好ましい一実施形態に基づく典型的なエネルギー・フィルタの計算された透過率のグラフである。
【図10】一般的なガリウム液体金属イオン源のFWHM5.0eVのエネルギー分布のグラフである。
【図11】本発明の好ましい一実施形態に基づく典型的なエネルギー・フィルタのFWHM透過率およびFW0M全エネルギー範囲(full energy range)を絞りスリット幅の関数として示すグラフである。
【図12】フィルタリングされていないFWHMエネルギー幅が5.0eVであるガリウムLMISを用いたエネルギー・フィルタの透過率のグラフである。
【図13】本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタの断面図である。
【図14A】共役ビーム・ブランカとして動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタを示す図である。
【図14B】共役ビーム・ブランカとして動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタを示す図である。
【図15】2重偏向ビーム走査システムの部分として動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタを示す図である。
【図16】2重偏向アライナ(aligner)として動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタを示す図である。
【図17】エネルギー・フィルタリングの前にビーム電流を測定するように動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタである。
【図18】エネルギー・フィルタリングの後にビーム電流を測定するように動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタである。
【図19】本発明に基づくエネルギー・フィルタを備える荷電粒子ビーム・システムを示す図である。
【図20】5つの8重極を備える本発明の一実施形態の側断面図である。
【図21】図20の断面A−Aを示す図である。
【図22】図20の断面B−Bを示す図である。
【図23】本発明の好ましい一方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましいいくつかの実施形態は、2重極要素に静電4重極および静電6重極励起が新規に追加された4要素静電シケイン・エネルギー・フィルタを備える。好ましい別の実施形態は、倍率(magnification)およびビーム電流に関する改良された柔軟性を提供するために5つの要素を備える。4重極要素は、シケインの2番目の要素と3番目の要素の間に配置された絞りの位置で線焦点を結ぶようにビームを成形することが好ましい。この線焦点の長さは、エネルギー・フィルタの入口における入来ビームの直径およびエネルギー・フィルタの出口における出行ビームの直径の少なくとも2倍であることが好ましい。線焦点は、ビームの電流密度を大幅に低減させ、絞りのスパッタリングまたは汚染を数桁低減させ(先行技術のスパッタリングまたは汚染の≦1/10)、空間電荷効果を数桁低減させる(先行技術の≦1/10)。シケインの4つの要素はそれぞれ、別々に励起される8つの電極をそれぞれが有する8重極を使用して実現することができる。本出願の出願人は、広範な荷電粒子モデル化から、2重極励起および4重極励起に6重極励起を追加すると、線焦点が絞り平面においてより鋭くかつよりまっすぐになることにより、エネルギー分解能がさらに向上することを見出した。したがって、幅の狭いスリット絞り、一般に幅が500nm未満であるスリット絞りを使用すると、原則として、数eVのエネルギーへのエネルギー・フィルタリングが可能である。より幅の広い絞り、一般に幅が1μm未満または3μm未満の絞りを使用すると、中心のビーム・スポットに影響を及ぼすことなくイオン・ビームの空間的な「尾」を除去することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、エネルギー・フィルタを出て、最終レンズに入り、画像化中またはミリング中の試料に集束させるビームのエネルギー分布の幅を狭くすることにより、画像化およびミリングの鋭敏さを向上させる。ビームのエネルギー分布の幅を狭くすることにより、ビームの空間的な尾が実質的に排除され、それによってより小さなより質の高いビームが得られる。先行技術のシケイン・フィルタの円形の焦点の代わりに線焦点を組み込むと、ビームのエネルギー幅の増大および空間的な広幅化を引き起こす増大した空間電荷効果が大幅に低減される。線焦点内の電流密度は、本発明の線焦点の幅と同様の直径を有する円形の焦点の電流密度よりも数桁小さい。この利点は、イオン・ビーム・システムと電子ビーム・システムの両方で得られる。
【0020】
ビーム電流密度の低下に比例して絞り材料のスパッタリング速度が低下するため、絞りのスパッタリングおよびそれに続く絞りの交換も大幅に低減する。電子ビームは材料をスパッタリングしないため、この利点はイオン・ビーム・システムで最も明らかである。しかしながら、電子ビーム・システムには、絞りが汚染されるという問題がある。したがって、電流密度の低い線焦点を絞り平面において使用すると、電子ビーム・システム内のエネルギー・フィルタの性能を向上させることができる。本明細書の議論では、事実上、絞りのスパッタリング(イオン)と絞りの汚染(電子およびおそらくはイオン)の両方を「絞りの損傷」とみなすことがある。
【0021】
現行のFIBカラムに共役ブランキング機構がないことにより意図されていないエリアが処理される問題も、エネルギー・フィルタの要素のうちの4つの要素を、エネルギー・フィルタ内の飛行時間を考慮するために要素間の適当な時間遅れを有する「拡張された」ビーム・ブランカとして使用することによって解決される。これは、複数のディジタル−アナログ変換器(DAC)を使用して、電極電圧を駆動し、次いで基準電圧を調節し、それによって要素間の時間遅れを有する4つの全ての光学要素の偏向強度を変化させることによって電子的に実現することができる。これは、スリット絞り上でビームが遮断される時点までは、ビームがオンアクシスでエネルギー・フィルタを出ることを可能にする。絞りスリットのスパッタリングによる腐食を回避するために、ビームをブランキングしている間の絞り位置における偏向を十分に大きくすることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態に基づくエネルギー・フィルタは、その構成により、中性粒子を自然に除去することができる。中性粒子は最初の要素によって偏向されず、したがってまっすぐ前方へ進んで絞り取付けアセンブリに衝突する。
【0023】
本発明の好ましいいくつかの実施形態に基づくエネルギー・フィルタは、ビームを偏向させてビームを軸から一般に2から4mmずらす4要素シケインと、スリットを使用した絞りとを備え、この絞りの後、ビームは、入口軸と同一直線上にある出口軸上に戻される。本発明の好ましい実施形態に基づくエネルギー・フィルタは以下の仕様を有することが好ましい。
【0024】
1)全てが静電要素である、2重極、4重極および(任意選択で)6重極励起が可能な複数の8重極要素。
【0025】
2)(エネルギー・フィルタ以外の)カラムの1次光学部品全体に対する影響を最小化する。
【0026】
3)カラムの1次光学部品の見地からのクロスオーバおよび空間電荷によるビームの広幅化に関するクロスオーバが事実上存在しない。
【0027】
4)同一直線上にある光学部品:入口軸が出口軸と同じである。
【0028】
5)エネルギー・フィルタリング絞りの位置で線焦点を結ぶ。
【0029】
6)ビームの共役ブランキング能力。
【0030】
7)最終レンズ(L2)内への2重偏向ビーム・アライメント能力。
【0031】
8)エネルギー・フィルタの最後の要素がビーム走査用の上偏向器を兼ねることができる。
【0032】
9)エネルギー・フィルタ内の絞り取付けアセンブリのところで中性粒子を遮断することにより、ビームから中性粒子を除去することができる。
【0033】
全ての実施形態が全ての利点を提供するというわけでない。本発明の好ましい一実施形態に従って設計され、動作するエネルギー・フィルタのさまざまな実施形態を図3から図16に示す。
【0034】
図3は、2重極、4重極および(任意選択で)6重極励起が可能な4つの8重極要素302、304、306および308を備える本発明の好ましい一実施形態に基づくエネルギー・フィルタ300の等角図である。絞りアセンブリ310は、高域通過または低域通過エネルギー・フィルタリングに対してはナイフエッジとすることができ、または帯域通過エネルギー・フィルタリングに対してはスリットとすることができる絞りを含む。ビームは、絞りの平面で線焦点を結ぶように成形されるため、円形の絞りを使用することはできない。全ての1次集束は、要素302、304、306および308に加えられる4重極励起によって実行されるため、本発明の好ましい一実施形態に従って設計されたエネルギー・フィルタは、図2の先行技術のエネルギー・フィルタとは違い、絞りの平面へのビームの予備集束(pre−focusing)を必要としない。図3では、エネルギー分散軸が垂直であり、要素304および306は、要素302と304の2重極励起を合わせた効果によって誘起される(要素306および308の2重極励起によって元に戻される)ビーム・オフセットに等しい量だけ垂直に上方へずれている。広範な荷電粒子光学部品モデル化によれば、要素302、304、306および308に6重極励起を追加することは、いくつかの状況、特にエネルギー・フィルタにより大きな直径のビームが入射することを含む状況において有益であり、6重極励起は、要素302、304、306および308の入口および出口におけるフリンジ場(fringing field)に由来するこれらの要素の2重極成分および4重極成分の収差を低減させることが実証されている。
【0035】
図4は、フィルタを通過する荷電粒子ビームの経路を示す、本発明の好ましい一実施形態に基づくエネルギー・フィルタ300の図3に対応する破断等角図である。フィルタリングされていないビーム320が軸402に沿って左上からフィルタに入る。次いで、要素302の2重極励起が、軸406に沿ってビームを上方へ偏向させ、要素302の4重極励起が、垂直軸406に沿ってビームを集束させ、同時に、水平軸404(この等角図では右上から左下)に沿った線焦点を形成するようにビームを広げる。次いで、要素304の2重極励起が、要素302に入ったときと同じ方向を向くようにビームを偏向させる。ただし、このとき、ビームは、最初のビーム軸から一般に2から4mmずれている。要素304の4重極励起が垂直軸406に沿ってビームをかすかに焦点ずれ(defocus)させ、同時に水平軸404に沿ってビームを強く集束させる。これら偏向および集束の正味の結果は、絞りに到達するビームが、最初の軸に対してほぼ平行に移動し、最初の軸からは外れており、幅の広い水平な線焦点(図7参照)を結ぶように成形されていることである。
【0036】
初期のビームの所望の通過帯域の外側のエネルギーを有する部分は、スリット絞り(スリット開口の上側または下側)に衝突し、それによって、エネルギー・フィルタをビームが通過し、そのビームによって画像化しているまたは処理しているターゲットにビームが到達することが妨げられる。初期のビームの所望のビーム・エネルギーを有する部分は、ナイフエッジのそばまたはスリットを通り抜け、したがって最終レンズに入射してターゲット上へ集束する。本質的に、要素308および306の励起はそれぞれ、要素302および304の励起の鏡像である。好ましい実施形態では、エネルギー・フィルタによる1次光学効果があまりなく、より高次の収差も最小限である。
【0037】
図5は、図3および4に示した本発明の好ましい一実施形態に基づくエネルギー・フィルタ300の側断面図である。図5には、要素302および306の錐形の出口502ならびに要素304および308の錐形の入口504がより明確に示されている。いくつかの実施形態では、これらの錐形の特徴部分を任意選択で組み込んで、エネルギー・フィルタ300によって誘起される収差を低減させることができる。これらの錐形の入口および出口がない場合、要素302と304の間を通過しているビーム520および要素306と308の間を通過しているビームはともに個々の電極のすぐ近くを通過することになり、したがって8重極要素302、304、306および308のフリンジ場にさらされることになる。これらの錐形の特徴部分は、図14AおよびBにより明確に示されているように電極をビームから遠ざけることで、エネルギー・フィルタの光学性能を高めるのに有益であることがある。ターミネーション・プレート(termination plate)を使用して8重極の入口および出口におけるフリンジ場の影響を低減させる代替法が、本発明の他の実施形態に関する図20に示されている。図5には、要素304および306の側方オフセット510もより明確に示されている。このオフセットは、ビームがオンアクシスで要素304を出、さらにオンアクシスで要素306に入ることを可能にし、両方の場合に収差はさらに低減する。好ましい実施形態では、一般的な2重極電圧が−600から+600V、一般的な4重極電圧が−250から+250V、一般的な6重極電圧が−2.5から+2.5Vである。要素302および308上の電圧の大きさは一般に、要素304および306上の電圧の大きさよりもやや大きい。これは、要素304および306内では、分散軸に垂直な方向のビームの大きさがより大きいためである。したがって、4重極の偏向力は、光学要素の中心線からのビームの変位に比例するため、4重極は、ビームを集束させるのにより有効である。異なるイオン質量による質量−分散効果を回避するため、要素302、304、306および308は全て静電要素であることが好ましい。電子ビーム・カラム内のエネルギー・フィルタまたは単一元素単一同位体源を使用するイオン・カラム内のエネルギー・フィルタに関しては、質量−分散効果が問題とはならないため、磁気要素または静電および磁気の組合せ要素も本発明の範囲に含まれる。エネルギー・フィルタに入った中性粒子は、要素304または絞りアセンブリ310のところで遮断することができる。
【0038】
図6は、ビームのオフセット604をより詳細に示すために垂直軸を大幅に拡大した、図5の絞り領域の側断面図である。好ましい実施形態では、一般的なビーム・オフセットが2から4mmである。一例として、ビーム・オフセットが3.0mm、長さが176mmであるエネルギー・フィルタでは、絞りの位置におけるエネルギー分散が、30keVである公称エネルギーからのエネルギー差1eVあたり約111nmである。好ましい実施形態では、絞りアセンブリ310内の絞り602をスリットまたはナイフエッジとすることができる。
【0039】
図7Aおよび7Bはそれぞれ、SIMION光線追跡プログラムによって描画した、帯域フィルタおよび高域フィルタの絞り領域付近の図5のクローズアップ側断面図である。図7Aは、絞り710を備える帯域フィルタ702を示し、この絞りは、FWHM3.4eVを透過させる約600nmの隙間を有する。図7Bは、ナイフエッジ絞り712を備える高域フィルタ704を示し、透過の減衰(fall off)は4.0eVである(100%から0%透過)。
【0040】
図8は、エネルギー分散軸に対して平行に見た、組み合わされた2重極、4重極および6重極要素302、304、306および308を備える本発明の好ましい一実施形態に基づく4要素シケイン・エネルギー・フィルタを示す図である。フィルタリングされてないビームは、直径200μmに対応する初期直径802を有する。要素302の4重極励起は負レンズとして機能し、ビームが要素302と304の間を通過するときにビームの幅を広げることが分かる。次いで、反対の極性を有する要素304の4重極励起がビームを平行に戻す。しかし、この時点でビームの幅はかなり広くなっている。要素304を通過した後、ビームの直径804は約360μmである。次いで、要素306の4重極励起が、ビームを軸に向かって再び集束させ、その後、要素308での焦点ずらし作用がビームを再び平行にし、ビーム直径806は最初の直径200μmに戻る。この例は、平行ビームが入射し、平行ビームが出射する場合に対応しているが、発散ビームまたは収束ビームがエネルギー・フィルタに入り、発散ビームまたは収束ビームがエネルギー・フィルタから出るケースも本発明の範囲に含まれ、それらのケースも光線追跡ソフトウェアを使用して評価した。
【0041】
図9は、スリット幅が140nm、絞り位置におけるビーム・オフセットが3.0mmである本発明の好ましい一実施形態に基づく典型的なエネルギー・フィルタの計算された透過率のグラフである。半値全幅(FWHM)透過は1.22eV、0値全幅(full width zero maximum)(FW0M)は2.50eVである。したがって、約±1.25eVよりも外側のエネルギーを有する荷電粒子はこのフィルタを通過しない。白抜きの正方形の線902は、高域通過フィルタリング・モードにおけるナイフエッジ絞りの場合に対応し、黒塗りの菱形の線904は、帯域通過モードにおける140nmのスリット絞りに対応する。低エネルギー側(すなわち30000eVよりも低い側)では、これらの2本の線902および904が一致する。
【0042】
図10は、一般的なガリウム液体金属イオン源のFWHM5.0eVのエネルギー分布のグラフであり、このグラフは、白抜きの正方形の線1002で描かれている。当技術分野では、LMIS源のFWHMエネルギー分布が5.0から6.0eV超の範囲にあることがある。図9からとった透過エネルギー分布線904、およびエネルギー・フィルタから出たフィルタリングされたガリウム・ビームの結果として生じたエネルギー分布線1004(塗り潰された三角形)も示されている。エネルギー・フィルタリングの後、ビームのエネルギー幅は約1.2eV FWHMまで低減し、2.5eV FW0Mの外側の透過はゼロであった。総透過率は、初期ビーム電流の22.4%であり、したがって源の有効輝度は1/4未満に低減した。この例では、ビームの初期エネルギー幅(約5.0eV)が、エネルギー・フィルタのエネルギー幅(約1.2eV)よりもはるかに大きいため、結果として生じるビーム・エネルギー幅1004は、エネルギー・フィルタのエネルギー幅904とほぼ同一である。スリットの幅がより広く、それによってより幅の広い透過FWHMを与える場合(図11参照)、フィルタリングされたビームのエネルギー幅は、エネルギー・フィルタのエネルギー幅よりも小さい。
【0043】
図11は、本発明の好ましい一実施形態に基づく典型的なエネルギー・フィルタのFWHM透過率1102およびFW0M全エネルギー範囲1104を、最小140nmから最大750nmまでの範囲の絞りスリット幅の関数として示すグラフである。FWHM1102は、約1.2eVから約6.7eVのこの範囲にわたってほぼ直線的に変化し、FW0M1104は、約2.5eVから約8.0eVまでほぼ直線的に変化する。FW0Mは、荷電粒子がフィルタを透過しないその外側のエネルギー幅に対応する。
【0044】
図12は、初期(フィルタリングされてない)FWHMエネルギー幅が5.0eVであるガリウムLMISを用いたエネルギー・フィルタの透過率のグラフである。絞りスリットの幅が狭くなるにつれ(図11参照)、透過FWHMエネルギーは、右側の5.0eVから左側の約1.2eVまで低下する。このエネルギー・フィルタは、イオン・エネルギーを変化させることができず、単に、所望の帯域通過範囲の外側のエネルギーを有する荷電粒子を遮断するだけなので、透過パーセントは、約88%(FWHM5.0eV)から約22.4%(約1.2eV)まで低下する。この透過率の低下は、有効角強度および有効輝度の低下に対応する。ビーム電流を維持するためには一般に、ビーム画定絞りを開放して、源によって放出された、光軸に対してより大きな初期角度を有するイオンがターゲットまで透過することができるようにすることが必要であろう。しかしながら、そうすると、色収差および球面収差が増大し、エネルギー・フィルタリングによって得られるビーム・サイズの向上が部分的に相殺されることになる。
【0045】
図13は、本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタ1300の断面図である。この例では、要素304、絞りアセンブリ310および要素306が、要素302および308の軸からオフセットされている。好ましい実施形態では、このオフセットが一般に2から3mmである。要素302、304、306および308内の電極1332の角度方向の位置が8重極1350によって示されている。電極1332間の隙間1334の幅は0.5mm〜1.5mmであることが好ましい。この実施形態では、長さ1302、1304、1306および1308が等しいが、エネルギー・フィルタを適正に動作させるのにこのことは必須ではない。要素302および306の出口ならびに要素304および308の入口には、偏向したビームが物理的な電極からより離れたところを通過することを可能にし、それによって収差を低減させる円錐が示されている。エネルギー・フィルタの中央平面1312には、示されているように、移動可能なスリット絞り1314が配置されている。
【0046】
図14Aおよび14Bは、共役ビーム・ブランカとして動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタを示す。図14Aには、スリット絞り1410を通過しているビーム1402が示されている。これはエネルギー・フィルタの通常の動作モードであり、このモードでは、より高エネルギーのイオンがスリットの底部で遮断され、この図ではより低エネルギーのイオンがスリット1410の頂部で遮断される。公称透過エネルギー付近のエネルギーを有するイオンはスリット1410を通過する。スリット1410の幅は一般に0.5〜3.0μmである。図14Bでは、ビームがブランキングされているときに同じ出口軸(入口軸と同一直線上にある)上にビーム1432を維持するために、要素302、304、306および308に加える2重極励起が同じ比率で低減されている。スリット絞り1410の位置において、尾を含むビームの全エネルギー範囲にわたって全てのイオンを遮断するのに十分な量だけビーム1432が下方へ移動すると、ビームはブランキングされる。
【0047】
図15は、2重偏向ビーム走査システムの部分として動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタを示す。フィルタの要素308は、下走査偏向器1502および最終レンズ1504と連携する上走査偏向器として機能して、試料表面1512にわたってビーム1510を移動させる。走査が最適になるようにレンズ1504を通してビーム1510を誘導する2重偏向走査システムによって試料表面1512にわたって偏向しているビーム1510が示されている。(ビームが試料表面に対して常に垂直である)テレセントリック(telecentric)ビーム走査では、ビームのピボット点がレンズの後焦点面である。
【0048】
図16は、レンズ1604の中心に、かつレンズ1604の光軸に平行にビーム1610を誘導する2重偏向アライナとして動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタを示す。この場合、要素306および308は、2重偏向アライナとして動作する。このアライメント能力は、試料上に集束させるビームの光学収差を最小化する。このアライメント・プロセスの間、要素306および308に加えられる2重極励起は動的であり、アライメントが完了した後の2重極励起は静的である。
【0049】
図17は、エネルギー・フィルタリングの前にビーム電流を測定するように動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタである。要素302および304は(個別にまたは組み合わされて)、スリット絞り1712の前に配置されたファラデー・カップ1710に向かってビーム1702を偏向させる役目を果たす。ビーム1702は、要素302の穴の内側および要素304の電極6と7(図13に示されている)の間を通過する。ファラデー・カップ1710によって検出される電流は、エネルギー・フィルタリング前のビーム電流を表す。この操作は一般に、図14に示したビーム・ブランキング操作の後に実行されるであろう。
【0050】
図18は、エネルギー・フィルタリングの後にビーム電流を測定するように動作している本発明の好ましい一実施形態に基づくシケイン・エネルギー・フィルタである。要素302および304は(個別にまたは組み合わされて)、ビーム1802を偏向させてスリット絞り1812を通過させる役目を果たす。要素306および308は(個別にまたは組み合わされて)、要素308の近くに図示のように配置されたファラデー・カップ1804に向かってビームを偏向させる役目を果たす。ファラデー・カップ1804によって検出される電流は、エネルギー・フィルタリング後のビーム電流を表す。ビーム1802は、要素302、304および306の穴の内側および要素308の第2の電極と第3の電極の間を通過する。ファラデー・カップ1804によって集められた電流と図17のファラデー・カップ1710によって集められた電流の比は、初期ビーム電流のうちエネルギー・フィルタを透過したビーム電流の割合を表す。この操作は一般に、図14に示したビーム・ブランキング操作の後に実行されるであろう。
【0051】
図19は、イオン・ビーム・カラム1902および本発明の好ましい実施形態に基づくエネルギー・フィルタ1904を備える荷電粒子ビーム・システム1900を示す。上で説明したエネルギー・フィルタなどの本発明に基づくエネルギー・フィルタを使用して、ビームの質を大幅に向上させることができる。イオン・ビーム・カラム1902は排気された外囲容器1906を含み、外囲容器1906内には、イオン源1908、引出し光学部品1910、エネルギー・フィルタ1904、ビーム偏向器1914および最終レンズ1916が配置されている。イオン源1908は一般に、ガリウム・イオンのビームを供給する液体金属イオン源だが、マルチカスプ(multicusp)イオン源、プラズマ・イオン源など、他のイオン源を使用することもできる。源1908からのイオンは、引出し光学部品1910によって引き出され、成形されてビーム1920となり、ビーム1920は次いでエネルギー・フィルタ1904を通過する。エネルギー・フィルタ1904は空間電荷効果および絞りの損傷を低減させ、ある種の実施形態では共役ブランカとして機能することもできる。ビーム偏向器1926はビームを走査し、ビームは次いで、最終レンズ1916によって、真空室1932内の試料ステージ1934上の試料1930の上に集束する。ビーム1920はしたがって、例えば知られている方法に基づくミリング、化学強化エッチング、材料付着または画像化によって試料を改変することができる。
【0052】
図20は、5つの8重極を備える本発明の一実施形態の側断面図2000である。8重極2002、2010、2016、2024および2030は、図4に示した第1の実施形態のような錐形の端部を持たないことが好ましい。イオン・ビームはカラムの軸2040に沿って8重極2002に入り、次いで、軸から右へわずかにずれたターミネーション・プレート2004の中心穴をビームが通過するように右方へ曲げられる。8重極2002はさらに線集束プロセスを開始し、続いて8重極2010がこのプロセスを継続して、スリット絞り領域2044内で線焦点を結ぶようにする。ビームは、軸から左へわずかにずれたターミネーション・プレート2008の中心穴を通過し、次いで8重極2010に入る。8重極2010はビームを偏向させて、ビームをカラム軸2040に対して平行にし、カラム軸2040からおよそ4mmずらして、軸2042上を進むようにする。ビームは次いで、ターミネーション・プレート2012の中心穴を通過してスリット絞り領域2044に入る。スリット絞り領域2044はターミネーション・プレート2012および2014を境界とし、スリット絞り(図示せず)を含む。ビームのエネルギー分布の幅を狭める所望の量に従って、イオン・ビームの一部はスリット絞りを通過する。幅500nmのスリットは一般に、液体金属イオン源からの一般的なFWHM5から6eVのエネルギー幅のうち約3.5eVのエネルギー幅を通過させる。
【0053】
ビームのスリット絞りを通過した部分は次いで、ターミネーション・プレート2014の中心穴を通過して8重極2016に入る。8重極2016は、ビームを左方へ偏向させて、軸から左へわずかにずれたターミネーション・プレート2018の中心穴を通過させ、さらに、8重極2024の中心において線焦点を結ぶようにビームを集束させる。8重極2024における線焦点は、光軸2040とスリット絞り領域2044内の線焦点の両方に対して垂直である。8重極2024に入る前、ビームは、軸から右へわずかにずれたターミネーション・プレート2022の中心穴を通過する。8重極2024は、通過するイオン・ビームを偏向させ、8重極2030において円形のビーム・プロファイルを有するように集束させる。次いで、8重極2030が、円錐形の発散ビームとなるようにイオンを集束させる。このビームは、図19のレンズ516などのカラムの最終レンズに入射する。
【0054】
代替動作モードは、直前の実施形態に関する図18の場合のように、スリット絞りを通過しているビーム電流を測定することを可能にする。この代替モードでは、8重極2002および2010によって実行される偏向および線集束に変更はないが、8重極2016は、8重極2024と2030の間に配置されたブロック2046内の下ファラデー・カップ2028内へ軸2042に沿ってビームを誘導する弱い偏向器としてしか機能しない。示されているように、ファラデー・カップ2028の入口は、ターミネーション・プレート2026の穴によって形成されている。ブロック2046の下端は、8重極2030に対するターミネーション・プレートの役目も果たす。ターミネーション・プレート2004、2008、2012、2014、2018、2022、2026およびブロック2046は全て、8重極2002、2010、2016、2024および2030によって生み出された電場を途絶えさせて、2重極、4重極、6重極および8重極励起が可能な8重極の入口および出口に広がった電場によって誘起される可能性がある光学収差を低減させる役目を果たす。ターミネーション・プレート2004と2008の間の切れ間2006は、エネルギー・フィルタとFIBカラムの全体設計との間の統合を最適化するため、およびエネルギー・フィルタの性能を最適化するために、8重極2002と2010の間の距離を調整することができることを示している。ターミネーション・プレート2018と2022の間の切れ間2020も同様の機能を果たす。
【0055】
図21は、8重極2002の8つの電極を示す、図20の断面A−A2100を示す。図20で上述した光学機能を達成するための2重極、4重極および6重極電場の発生を可能にするために、8重極要素2102、2104、2106、2108、2110、2112、2114および2116はそれぞれ、別個の可変高圧電源に接続されている。電極間の8つの隙間2118は、一般に−700Vから+700Vの範囲にわたる異なる高電圧をそれぞれが有することがある電極間の高電圧絶縁を可能にする。中心穴2120は、イオン・ビームが8重極を通過することを可能にし、一般に3から6mmの範囲の直径を有する。断面A−Aは8重極2002に関して示したものだが、残りの4つの8重極2010、2016、2024および2030も同様のまたは同一の電極構成を有することができる。
【0056】
図22は、ターミネーション・プレート2008を示す、図20の断面B−B2200を示す。中心穴2204は、ビームが通過して8重極2010の入口に達することを可能にする。エネルギー・フィルタがオフで、ビームがそのまま軸2040上を進むとき、ビームは、穴2204ではなく穴2206を通過する。円2208の半径は、図20の軸2040と2042の間の距離に対応する。プレート2202の追加の7つの穴は、単一の穴2206だけの場合よりも電場をより対称にする。
【0057】
エネルギー・フィルタの追加の動作モードは、5つの8重極の全ての電極電圧が0Vにセットされているときである。このモードにおいて、イオン・ビームは、偏向されずにフィルタを通過し、カラムに沿って下方へ進み、図19のレンズ516などの最終レンズに到達することができる。このモードの利点は、優勢な収差が球面収差であって、色収差ではなく、したがってターゲット位置におけるビームの直径を小さくしまたはビームの電流密度を増大させることに対するエネルギー・フィルタの利点が限定的であると考えられる場合に、より高いビーム電流で動作することができることである。
【0058】
集束イオン・ビーム・システムに関しては可能な多くの構成があり、本発明は、特定の集束イオン・ビーム・システムに限定されないことを当業者は理解するであろう。例えば、偏向器1914を最終レンズ1916の下に配置することができ、またはエネルギー・フィルタ510の前に最初の集束レンズを配置することができる。イオン・ビームを詳細に説明したが、本発明の実施形態は、電子ビーム、レーザ・ビームなどの他の荷電粒子ビームの使用を可能にすることもできる。
【0059】
図23は、本発明を実施する方法を示す流れ図2300である。ステップ2302で、第1の光軸に沿ってビームがエネルギー・フィルタに入る。ステップ2304で、第1の光軸から第2の光軸上へビームを偏向させる。いくつかの実施形態では、第2の軸が第1の光軸とほぼ平行である。光軸間の間隔は2mmから4mmの間であることが好ましい。この第1の光軸からのビームの偏向は、例えば複数の2重極静電偏向器を使用して実行することができる。ステップ2306で、第2の軸上に中心を有するスリット絞りの位置で線焦点を結ぶように、ビームを集束させる。いくつかの実施形態では、線焦点を結ぶようにビームを集束させることが、複数の4重極レンズを使用して実行される。ステップ2308で、ビームを偏向させて第1の光軸上に戻す。この第2の光軸からのビームの偏向は、例えば複数の2重極静電偏向器を使用して実行することができる。ステップ2310で、エネルギー・フィルタの出口で円錐形のビームを形成するように、ビームを集束させる。この円錐形のビームへのビームの集束は、複数の4重極レンズを使用して実行することができる。いくつかの実施形態では、第1の光軸からビームを偏向させること、およびスリット絞りの位置で線焦点を結ぶようにビームを集束させることが、偏向器と4重極レンズの両方を備える共通の光学要素によって達成される。いくつかの実施形態では、第2の光軸からビームを偏向させること、および円錐形のビームを形成するようにビームを集束させることが、偏向器と4重極レンズの両方を備える共通の光学要素によって達成される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態は、
・荷電粒子ビーム・システム用のエネルギー・フィルタであって、
・エネルギー・フィルタを通過する荷電粒子ビームを通す入口および出口であり、前記荷電粒子ビームがある軸上で導かれる入口および出口と、
・直列に配置された少なくとも4つの偏向器であり、エネルギー・フィルタを通過している荷電粒子を集束させ、偏向させる少なくとも4つの偏向器と、
・前記偏向器のうちの2つの偏向器間に配置された絞りと
を備え、
・直列に配置された偏向器に加えた2重極励起を使用して、荷電粒子ビームを偏向させてオフアクシスとし、次いで再び偏向させてオンアクシスに戻すことができ、
・4重極励起を使用して、絞りの位置で線焦点を結ぶように荷電粒子ビームを成形することができる
エネルギー・フィルタを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、絞りが、ナイフエッジ絞りまたはスリット絞りである。
【0062】
いくつかの実施形態では、絞りが、幅1〜3μmのスリット絞りである。
【0063】
いくつかの実施形態では、絞りが、幅500nm以下のスリット絞りである。
【0064】
いくつかの実施形態では、線焦点の長さが、エネルギー・フィルタの入口における入来ビームの直径およびエネルギー・フィルタの出口における出行ビームの直径の少なくとも2倍である。
【0065】
いくつかの実施形態では、絞りが、2番目の偏向器と3番目の偏向器の間に配置されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、偏向器が、別々に励起される8つの電極をそれぞれが有する少なくとも4つの8重極を備える。
【0067】
いくつかの実施形態では、8重極が全て静電要素である。
【0068】
いくつかの実施形態では、エネルギー・フィルタが、カラムの1次光学部品の見地からのクロスオーバおよび空間電荷によるビームの広幅化に関するクロスオーバを事実上提供しない。
【0069】
いくつかの実施形態では、エネルギー・フィルタの入口軸が出口軸と共軸である。
【0070】
いくつかの実施形態では、エネルギー・フィルタが、ビームを共役ブランキングする能力を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、エネルギー・フィルタの最後の要素がビーム走査用の上偏向器を兼ねる。
【0072】
いくつかの実施形態では、エネルギー・フィルタが、エネルギー・フィルタ内の絞り取付けアセンブリの位置で中性粒子を遮断することにより、ビームから中性粒子を除去する。
【0073】
いくつかの実施形態では、絞りの平面へのビームの予備集束が必要ない。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態は、
・荷電粒子の源と、
・荷電粒子ビーム・レンズと、
・上に記載のエネルギー・フィルタと
・を備える荷電粒子システム
を含む。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態は、
・荷電粒子ビーム・システム用のエネルギー・フィルタであって、
・荷電粒子ビームをその最初の軸から偏向させてエネルギー・フィルタリング絞りに通し、次いでフィルタリングされたビームを再び偏向させてその最初の軸に戻すように荷電粒子ビームを2重偏向させる直列に配置された少なくとも4つの偏向器を有するシケイン型のエネルギー・フィルタ
を備え、
・少なくとも4つの偏向器が、2重極、4重極および6重極励起の能力を有し、
・4重極励起を使用して、ビームを、エネルギー・フィルタリング絞りの位置で線焦点を結ぶように集束させる
エネルギー・フィルタを含む。
【0076】
いくつかの実施形態は、上述のエネルギー・フィルタを使用して試料を処理する方法を含む。この方法では、エネルギー・フィルタの少なくとも4つの要素のうちの4つを、エネルギー・フィルタ内の飛行時間を考慮するために要素間の適当な時間遅れを有する「拡張された」ビーム・ブランカとして使用することにより、意図されていないエリアの処理を防ぐ。
【0077】
本発明のいくつかの方法では、ビーム・ブランキングが、複数のディジタル−アナログ変換器を使用して、電極電圧を駆動し、次いで基準電圧を調節し、それによって、要素間の時間遅れを有する4つの全ての光学要素の偏向強度を変化させることによって実現される。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態は、荷電粒子ビーム・システム内のエネルギー・フィルタを使用して荷電粒子ビームのエネルギー分布をフィルタリングする方法であって、
・第1の光軸に沿ってエネルギー・フィルタに入るようにビームを導くステップと、
・第1の光軸から第2の光軸上へビームを偏向させるステップと、
・第2の光軸上に中心を有するスリット絞りの位置で線焦点を結ぶようにビームを集束させるステップと、
・第2の光軸から第3の光軸上へビームを偏向させるステップと、
・エネルギー・フィルタの出口で円錐形のビームを形成するようにビームを集束させるステップと
を含む方法を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、第3の光軸が第1の光軸と一致し、第2の光軸から第3の光軸上へビームを偏向させるステップが、第1の光軸上に戻るようにビームを導くステップを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、第2の光軸が第1の光軸とほぼ平行である。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1の光軸と第2の光軸の間の間隔が2から4mmの間である。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1の光軸からビームを偏向させるステップが、複数の2重極静電偏向器によって実行される。
【0083】
いくつかの実施形態では、第2の光軸からビームを偏向させるステップが、複数の2重極静電偏向器によって実行される。
【0084】
いくつかの実施形態では、スリット絞りの位置で線焦点を結ぶようにビームを集束させるステップが、複数の4重極レンズによって実行される。
【0085】
いくつかの実施形態では、円錐形のビームを形成するようにビームを集束させるステップが、複数の4重極レンズによって実行される。
【0086】
いくつかの実施形態では、第1の光軸からビームを偏向させるステップおよびスリット絞りの位置で線焦点を結ぶようにビームを集束させるステップが、偏向器と4重極レンズの両方を備える共通の光学要素によって実行される。
【0087】
いくつかの実施形態では、第2の光軸からビームを偏向させるステップおよび円錐形のビームを形成するようにビームを集束させるステップが、偏向器と4重極レンズの両方を備える共通の光学要素によって実行される。
【0088】
以上の本発明の説明は主に装置を対象としているが、「特許請求の範囲」に記載の装置を使用する方法も本発明の範囲に含まれることを認識すべきである。さらに、本発明の実施形態は、コンピュータ・ハードウェアもしくはコンピュータ・ソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアの組合せによって実現することができることも認識すべきである。本発明の方法は、標準プログラミング技法を使用し、本明細書に記載された方法および図に基づいてコンピュータ・プログラムとして実現することができ、このコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・プログラムを含むように構成されたコンピュータ可読の記憶媒体を含み、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータを、予め定義された特定の方式で動作させる。コンピュータ・システムと通信するため、それぞれのプログラムは、高水準手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実現することができる。しかしながら、所望ならば、それらのプログラムを、アセンブラ言語または機械語で実現することもできる。いずれにせよ、その言語は、コンパイルまたは解釈される言語とすることができる。さらに、そのプログラムは、そのプログラムを実行するようにプログラムされた専用集積回路上で実行することができる。
【0089】
さらに、方法論は、限定はされないが、荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置とは別個の、荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置と一体の、または荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置と通信するパーソナル・コンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレーム、ワークステーション、ネットワーク化されたコンピューティング環境または分散コンピューティング環境、コンピュータ・プラットホームなどを含む、任意のタイプのコンピューティング・プラットホームで実現することができる。本発明の諸態様は、取外し可能であるか、またはコンピューティング・プラットホームと一体であるかを問わない、ハードディスク、光学式読取りおよび/もしくは書込み記憶媒体、RAM、ROMなどの記憶媒体上または記憶装置上に記憶された機械可読コードであって、プログラム可能なコンピュータが、本明細書に記載された手順を実行するために、その記憶媒体または記憶装置を読んだときに、そのコンピュータを構成し、動作させるために、そのコンピュータが読むことができるように記憶された機械可読コードとして実現することができる。さらに、機械可読コードまたは機械可読コードの一部を、有線または無線ネットワークを介して伝送することができる。本明細書に記載された発明は、マイクロプロセッサまたは他のデータ処理装置と連携して上述の諸ステップを実現する命令またはプログラムを含む、これらのさまざまなタイプのコンピュータ可読記憶媒体、およびその他のさまざまなタイプのコンピュータ可読記憶媒体を含む。本発明はさらに、本明細書に記載された方法および技法に従ってプログラムされたコンピュータを含む。
【0090】
入力データに対してコンピュータ・プログラムを適用して、本明細書に記載された機能を実行し、それによって入力データを変換して出力データを生成させることができる。この出力情報は、ディスプレイ・モニタなどの1つまたは複数の出力装置に適用される。本発明の好ましい実施形態では、変換されたデータが物理的な実在する物体を表し、これには、その物理的な実在する物体の特定の視覚的描写をディスプレイ上に生成することが含まれる。
【0091】
本発明は幅広い適用可能性を有し、上記の例において説明し、示した多くの利点を提供することができる。本発明の実施形態は、具体的な用途によって大きく異なり、全ての実施形態が、これらの全ての利点を提供するわけではなく、本発明によって達成可能な全ての目的を達成するわけではない。本発明に基づく装置とともに使用するのに適した粒子ビーム・システムは例えば、本出願の譲受人であるFEI Companyから市販されている。
【0092】
以上の議論および特許請求の範囲では、用語「含む(including)」および「備える(comprising)」が、オープン・エンド(open−ended)型の用語として使用されており、したがって、これらの用語は、「...を含むが、それらだけに限定はされない(including,but not limited to)」ことを意味すると解釈すべきである。本明細書では用語「FIB」または「集束イオン・ビーム」が、イオン光学部品によって集束させたビームおよび整形されたイオン・ビームを含む、平行イオン・ビームを指すために使用される。本明細書で特に定義されていない場合、その用語は、その通常の一般的な意味で使用されることが意図されている。添付図面は、本発明の理解を助けることが意図されており、特に明記しない限り、一律の尺度では描かれていない。
【0093】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0094】
300 エネルギー・フィルタ
302 8重極要素
304 8重極要素
306 8重極要素
308 8重極要素
310 絞りアセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム・システム用のエネルギー・フィルタであって、
前記エネルギー・フィルタを通過する荷電粒子ビームを通す入口および出口であり、前記荷電粒子ビームがある軸に沿って前記エネルギー・フィルタ内へ導かれる入口および出口と、
直列に配置された少なくとも4つの偏向器であり、前記エネルギー・フィルタを通過している荷電粒子を集束させ、偏向させる少なくとも4つの偏向器と、
前記偏向器のうちの2つの偏向器間に配置された絞りと
を備え、
前記直列に配置された偏向器に加えた2重極励起を使用して、前記荷電粒子ビームを偏向させてオフアクシスとし、次いで再び偏向させてオンアクシスに戻すことができ、
4重極励起を使用して、前記絞りの位置で線焦点を結ぶように前記荷電粒子ビームを成形することができる
エネルギー・フィルタ。
【請求項2】
前記絞りが、ナイフエッジ絞りまたはスリット絞りである、請求項1に記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項3】
前記絞りが、幅1〜3μmのスリット絞りである、請求項2に記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項4】
前記絞りが、幅500nm以下のスリット絞りである、請求項2に記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項5】
前記線焦点の長さが、前記エネルギー・フィルタの前記入口における入来ビームの直径および前記エネルギー・フィルタの前記出口における出行ビームの直径の少なくとも2倍である、請求項1に記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項6】
前記絞りが、2番目の偏向器と3番目の偏向器の間に配置されている、請求項1に記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項7】
前記偏向器が、別々に励起される8つの電極をそれぞれが有する少なくとも4つの8重極を備える、請求項1から6のいずれかに記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項8】
前記8重極が全て静電要素である、請求項7に記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項9】
カラムの1次光学部品の見地からのクロスオーバおよび空間電荷によるビームの広幅化に関するクロスオーバが事実上存在しない、請求項1から8のいずれかに記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項10】
前記エネルギー・フィルタの入口軸が出口軸と共軸である、請求項1から9のいずれかに記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項11】
前記ビームを共役ブランキングする能力をさらに含む、請求項1から10のいずれかに記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項12】
前記エネルギー・フィルタの最後の要素がビーム走査用の上偏向器を兼ねることができる、請求項1から11のいずれかに記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項13】
前記エネルギー・フィルタ内の絞り取付けアセンブリの位置で中性粒子を遮断することにより、前記ビームから前記中性粒子が除去される、請求項1から12のいずれかに記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項14】
前記絞りの平面への前記ビームの予備集束が必要ない、請求項1から13のいずれかに記載のエネルギー・フィルタ。
【請求項15】
荷電粒子の源と、
荷電粒子ビーム・レンズと、
請求項1に記載のエネルギー・フィルタと
を備える荷電粒子システム。
【請求項16】
荷電粒子ビーム・システム用のエネルギー・フィルタであって、
荷電粒子ビームをその最初の軸から偏向させてエネルギー・フィルタリング絞りに通し、次いでフィルタリングされた前記ビームを再び偏向させてその最初の軸に戻すように荷電粒子ビームを2重偏向させる直列に配置された少なくとも4つの偏向器を有するシケイン型のエネルギー・フィルタ
を備え、
前記少なくとも4つの偏向器が、2重極、4重極および6重極励起の能力を有し、
前記4重極励起を使用して、前記ビームを、前記エネルギー・フィルタリング絞りの位置で線焦点を結ぶように集束させる
エネルギー・フィルタ。
【請求項17】
請求項1に記載のエネルギー・フィルタを使用して試料を処理する方法であって、前記エネルギー・フィルタの前記少なくとも4つの要素のうちの4つを、前記エネルギー・フィルタ内の飛行時間を考慮するために要素間の適当な時間遅れを有する「拡張された」ビーム・ブランカとして使用することにより、意図されていないエリアの処理を防ぐ方法。
【請求項18】
ビーム・ブランキングが、複数のディジタル−アナログ変換器を使用して、電極電圧を駆動し、次いで基準電圧を調節し、それによって、要素間の時間遅れを有する4つの全ての光学要素の偏向強度を変化させることによって実現される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
荷電粒子ビーム・システム内のエネルギー・フィルタを使用して荷電粒子ビームのエネルギー分布をフィルタリングする方法であって、
第1の光軸に沿って前記エネルギー・フィルタに入るようにビームを導くステップと、
前記第1の光軸から第2の光軸上へ前記ビームを偏向させるステップと、
前記第2の光軸上に中心を有するスリット絞りの位置で線焦点を結ぶように前記ビームを集束させるステップと、
前記第2の光軸から第3の光軸上へ前記ビームを偏向させるステップと、
前記エネルギー・フィルタの出口で円錐形のビームを形成するように前記ビームを集束させるステップと
を含む方法。
【請求項20】
前記第3の光軸が前記第1の光軸と一致し、前記第2の光軸から第3の光軸上へ前記ビームを偏向させる前記ステップが、前記第1の光軸上に戻るように前記ビームを導くステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の光軸が前記第1の光軸とほぼ平行である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の光軸と前記第2の光軸の間の間隔が2から4mmの間である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の光軸から前記ビームを偏向させる前記ステップが、複数の2重極静電偏向器によって実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の光軸から前記ビームを偏向させる前記ステップが、複数の2重極静電偏向器によって実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
スリット絞りの位置で線焦点を結ぶように前記ビームを集束させる前記ステップが、複数の4重極レンズによって実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
円錐形のビームを形成するように前記ビームを集束させる前記ステップが、複数の4重極レンズによって実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の光軸から前記ビームを偏向させる前記ステップおよびスリット絞りの位置で線焦点を結ぶように前記ビームを集束させる前記ステップが、偏向器と4重極レンズの両方を備える共通の光学要素によって実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の光軸から前記ビームを偏向させる前記ステップおよび円錐形のビームを形成するように前記ビームを集束させる前記ステップが、偏向器と4重極レンズの両方を備える共通の光学要素によって実行される、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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