説明

荷電粒子線装置、及び画像解析装置

【課題】走査電子顕微鏡において、装置内及び装置外からの磁場や振動などの影響により、SEM画像に障害が発生した場合、そのSEM画像を用いて簡単に精度よく原因を特定することを目的とする。また、SEM画像のパターンのラフネスに計測精度が影響されない測定手法を目的とする。
【解決手段】SEM画像取得時にY方向の走査ゲインをゼロにすることで、走査線方向(X方向)に一次元走査を行うと共に、当該走査によって得られる画像情報を、Y方向に時系列的に配列することで、二次元画像を作成する。相関関数により、当該二次元画像のずれ量データを取得し、当該データを周波数解析することで画像中に含まれる磁場や振動などを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関し、特に電子ビーム等を試料に走査することによって得られる電子等に基づいて形成される信号波形を用いて、磁場や振動等の外乱を評価する方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)に代表される荷電粒子線装置では高分解能化のために安定した電子線を試料上に照射する必要がある。例えば、SEMを利用した半導体測長装置では、近年のパターン寸法微小化に伴い、更なる電子ビームの安定照射が求められている。
【0003】
半導体測長装置では、測定パターンを電子線により走査することで、試料より発生した二次電子の信号を検出して、SEM画像とすることでパターンの寸法を測定する。しかし、装置が外部環境の悪い場所に設置された場合、外乱(磁場,振動)の影響によって電子線の試料に対する相対的な偏向が乱され、像障害が発生する可能性がある。また、設置条件が悪いと装置本体が発生する磁場や振動も画像形成や測定に影響を及ぼす可能性がある。像障害が発生すると、SEM画像のシャープネスの低下や、像歪の発生により、安定した測定が困難となる。
【0004】
上述したような外部の磁場を測定するための磁場検出器を、電子ビーム照射装置の外部に設けることで、ビームの照射位置のずれを補正する手法が特許文献1に開示されている。また、特許文献2には、振動を検知するための振動計を荷電粒子線装置の外部に設け、振動を計測し、当該計測によって得られた振動情報に基づいて、偏向信号を補正することが説明されている。更に、特許文献3には、SEM画像について高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)解析を行うことによって、外乱等の解析を行うことが、説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−217086号公報
【特許文献2】特開平6−188181号公報
【特許文献3】特開2010−92634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に説明されているような磁場検出器や振動計による外乱検知法によれば、磁場や外乱の影響に基づくビームへの影響をある程度、特定できるものの、ビームへの影響を直接検出しているわけではないので、高い位置ずれ補正精度が望めない。一方、特許文献3に開示された画像に基づいて外乱を測定する手法によれば、SEMの出力データである画像を用いて外乱を測定しているため、相応の精度で外乱を測定することができるが、解析に用いるパターンによって計測精度が左右される。例えば、半導体デバイス上に形成されたパターンにはラフネスとよばれるパターン形状の歪みがある。SEM画像はこのラフネスを含むため、ラフネス成分も外乱の一部として検出してしまう可能性がある。
【0007】
以下に、試料上に形成されたパターン形状等に依らず、高精度に外乱を評価、或いは外乱に依らず高精度な画像の形成や測定を行うことを目的とする荷電粒子線装置、及び画像解析装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一態様として、荷電粒子ビームを一次元的に複数走査することによって得られる検出信号を、二次元的に表示、或いは配列させ、当該二次元データ上のエッジ情報について周波数解析等を実行する荷電粒子線装置、及び画像解析装置を提案する。
【発明の効果】
【0009】
上記一態様によれば、一次元的に複数回走査することによって得られる検出信号に基づいて、評価のための情報を取得することができるため、パターンに形成されたラフネス等の存在に依らず、高精度に外乱等の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図2】試料に対する電子ビーム走査に基づいて得られる情報を用いて、外乱を評価する工程を示すフローチャート。
【図3】電子ビームの一次元走査に基づいて得られる検出信号を、二次元的に配列して形成した画像の一例を示す図。
【図4】二次元展開像のプロファイルと、二次元像のプロファイルとの関係を示す図。
【図5】二次元展開像からエッジ部の相対的な位置ずれを算出する例を示す図。
【図6】二次元展開像に含まれるノイズ成分の測定結果を示す図。
【図7】X方向、及びY方向のノイズがSEM画像にもたらす影響を示す図。
【図8】ノイズ評価結果に基づいてエラーメッセージを発生する工程を示すフローチャート。
【図9】未知のノイズが検出されたときにエラーメッセージを発生する工程を示すフローチャート。
【図10】ノイズの評価結果に基づいて、偏向器の補正量を求める工程を説明するフローチャート。
【図11】SEMを含む半導体測定,検査システムの概要図。
【図12】複数のSEMを含む測定,検査システムの概要図。
【図13】ノイズ評価の条件設定を行うためのGUI画面の一例を示す図。
【図14】二次元展開像に基づいて得られる特定周波数の信号量の変化を示すグラフ。
【図15】ラフネス測定を行うための条件を入力するためのGUI画面の一例を示す図。
【図16】ラフネスの判定を行う工程を示すフローチャート。
【図17】補正画像を形成する工程を示すフローチャート。
【図18】ノイズ除去前後のSEM画像を併せて表示した出力画像例を示す図。
【図19】検出可能なノイズ周波数を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例では、主に計測に使用するSEM画像取得時に、Y方向の走査ゲインをゼロにすることで、走査線方向(X方向)に一次元的な走査を行うと共に、当該走査によって得られる画像情報をY方向に時系列に配列することで二次元画像を作成する装置、及び当該処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムについて説明する。より具体的な一例によれば、相関関数により、当該二次元画像のずれ量データを取得し、当該データを周波数解析することで画像中の振動などを測定する。また、以下の実施例では、Y方向の走査ゲインをゼロにすることで同一位置を往復走査してパターンのラフネスの影響を排除し、さらにSlowスキャン(走査間隔が約600us)を組み合わせることで、ビーム走査方向のジッターを600us毎に測定可能とする手法についても説明する。上記によって得られたSEM画像を周波数解析することで画像中の振動などを検出する。
【0012】
上記態様によれば、パターンのラフネスの影響を排除し、低周波数から500Hzの程度の比較的高い周波数の磁場および振動まで計測することが可能となる。
【0013】
以下、図面を参照して、ノイズの評価,パターン測定時の補正データの導出、或いはノイズの影響を低減し得る方法,装置、及びこれらの処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムについて、詳細に説明する。図1は、走査電子顕微鏡の概略構成図である。
【0014】
電子銃1から放出された電子2は集束レンズ3と対物レンズ4により試料5上に集束され、偏向器6にて走査される。試料5からは二次粒子(二次電子など)7が放出し、荷電粒子検出器8にて検出される。計算機を含む制御プロセッサ9は電子銃1,集束レンズ3および対物レンズ4,偏向器6,荷電粒子検出器8および試料5などの電気的制御を行う。表示手段10は、該電気的制御を行うための制御ウィンドウや走査画像などを表示する。
【0015】
以下に説明する実施例では偏向器6のY方向のゲインをゼロにすることで一次元走査を可能とする。得られたSEM画像を制御プロセッサ9によって周波数解析を行い、その解析結果に関する情報表示は、表示手段10にて行う。
【0016】
図11は、SEMを含む半導体測定,検査システムの概要図である。本システムには、SEM本体1101,A/D変換機1104,制御装置1105が含まれている。
【0017】
SEM本体1101は電子デバイスが製造されたウエハ等の試料に電子ビームを照射し、試料から放出された電子を検出器1103で捕捉し、A/D変換器207でデジタル信号に変換する。デジタル信号は制御装置1105に入力されてメモリ1105に格納され、演算装置1106に内蔵されるCPU,ASIC,FPGA等の画像処理ハードウェアによって、目的に応じた画像処理が行われる。また、演算装置1106は、検出信号に基づいて、ラインプロファイルを作成し、プロファイルのピーク間の寸法を測定する機能をも備えている。
【0018】
更に制御装置1105は、入力手段を備えた入力装置1108と接続され、当該入力装置1108に設けられた表示装置、或いは外部ディスプレイ1109には、操作者に対して画像や検査結果等を表示するGUI(Graphcal User Interface)等の機能を有する。
なお、制御装置1105における制御や処理の一部又は全てを、CPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機等に割り振って処理・制御することも可能である。また、制御装置1106は、検査等に必要とされる電子デバイスの座標,位置決めに利用するパターンマッチング用のテンプレート,撮影条件等を含む撮像レシピを手動もしくは、電子デバイスの設計データ213を活用して作成する撮像レシピ作成装置とネットワークまたはバス等を介して接続することもできる。
【0019】
図12は、複数のSEM1201〜1203と、撮像レシピ作成装置1204がネットワークやバスを経由して接続されている例を示す図である。撮像レシピ作成装置1204では、SEMの撮像レシピを、記憶媒体1205に記憶された半導体デバイスの設計データを用いて作成することができる。撮像レシピは、測定位置,倍率(視野の大きさ),ビーム条件等を記憶した動作プログラムであり、この動作プログラムに従って、制御装置1105は、SEM本体1101を制御する。
【0020】
なお、以下に説明する実施例では、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)に搭載された制御装置、或いはSEMに通信回線等を経由して接続される制御装置(ノイズ評価装置)を例に採って説明するが、これに限られることはなく、コンピュータプログラムによって、画像処理を実行する汎用の演算装置を用いて、後述するような処理を行うようにしても良い。更に、集束イオンビーム(Focused Ion beam:FIB)装置等、他の荷電粒子線装置に対しても、後述する手法の適用が可能である。
【実施例1】
【0021】
図2は、試料に対する電子ビーム走査に基づいて得られる情報を用いて、外乱を評価する工程を説明するフローチャートである。まず、SEMの試料ステージ上に対象試料を載置した後、目的のパターンに電子ビームに視野が位置付けられるように、試料ステージの移動やビームの偏向を行う(ステップ201)。次に、目的のパターン上にて、ビームの一次元走査を行う(ステップ202)。この場合、走査偏向器のY走査ゲインをゼロにしてパターンをスキャンする。換言すれば、Y方向の走査位置を固定した状態で、X方向の走査のみを選択的に行うようにする。このような一次元の走査は、予め撮像レシピ等に記憶された情報に基づいて、偏向器制御部1116がSEM本体1101に対して制御信号を供給することで実施される。
【0022】
次に、スキャンによって得られた一次元情報をY方向に時系列に配列することで2次元の画像とする(ステップ203)。画像形成部1112では、1走査線、或いは複数の走査線単位の信号を、例えばフレームメモリのような記憶媒体に、走査順に、Y方向に配列するように記憶させることによって、二次元展開像を作成する。二次元展開像は、Y方向(走査線方向に対し垂直な方向)にビームを偏向することなく得られた信号であり、同じ位置を繰り返し走査した結果得られた信号であるため、理論上、X方向の寸法値が全く同じパターンが表示された画像が形成される筈である。しかしながら、振動等の外乱が混入すると、計時的な変化がエッジ位置の変化となって現れるため、同じ位置を走査しているのにも拘らず、寸法やエッジ位置が変化した像が得られる。
【0023】
次に二次元展開像について、Y方向の異なる位置毎の寸法値、或いはずれ量を求める(ステップ204)。寸法値は、例えば検出信号に基づいてラインプロファイルを形成し、当該ラインプロファイルの2つのピーク間の距離に基づいて求めることができる。また、ずれ量に関しては、所定の基準位置と、ピークとの間の距離をずれ量として特定することができる。このような処理は、信号解析部1113にて行うようにしても良いし、寸法測定部を別に設け、そちらで行うようにしても良い。
【0024】
以上のように、本実施例では、このような寸法値や位置の変動を二次元的に表現することによって、外乱の定量的な評価を行う。そのために、二次元展開画像について、Y方向の位置変化に応じたX方向の寸法値やエッジ位置の変化を検出する。二次元展開画像に表れるY方向に延びる線分は、Y方向が時間、X方向がずれ量を示す波形となるため、この波形信号を解析することによって、外乱を定量化することができる。
【0025】
信号解析部1113では、得られた波形情報を周波数解析することによって、ノイズ成分を抽出する(ステップ205)。具体的には、スペクトル解析を行い、周波数ごとの信号量を求める。より具体的な一例として、PSD(Power Spectral Density)を求め、周波数、或いは周波数帯域毎に、信号量と時間を関連付けてメモリ1107に記憶、或いは表示装置1109に表示するようにする。
【0026】
以上のように二次元展開像から得られるX方向の位置ずれの検出に基づいて、ずれ量を周波数解析することによって、外乱等の測定が可能となる。
【0027】
次に、Y方向の走査ゲインをゼロにしてSEM画像を取得する方法について説明する。Y走査ゲインをゼロにすることでY方向走査が行われなくなり、同一ライン上をX方向にのみ走査する。実際にY走査をゼロにして、時系列に配列した画像を図3(a)に示す。Y走査をゼロにして取得した画像には、パターンラフネスが含まれていないことがわかる。図3(b)の画像はスキャンが完了してから低倍にしてスキャンし位置を確認したものである。水平方向にコンタミ痕がありY方向に関しては同一位置をスキャンしていることが確認できる。
【0028】
次に低速走査法(以下、Slowスキャンと称する)を用いた画像取得について説明する。SEM画像は、S/Nを向上させるために、複数の走査(走査領域の走査開始点から走査終了点までの1回の走査を1フレームとしたとき)によって得られる複数フレームの画像信号を加算することによって形成されることがある。しかしながら、SEM画像をフレーム加算してしまうと電源周波数もしくはその高調波しか観察できないため、本実施例では1フレーム画像を用いる。SEM画像にはノイズが多く含まれるため、SEM画像取得後に行われるエッジ抽出などを容易に実現するために、S/Nの良い画像が得られるSlowスキャンを適用する。
【0029】
たとえば50Hz地帯では、Slowスキャンの走査線と走査線の時間間隔は606.94usであり、これはサンプリング周波数が1647.6Hzに相当する。観察可能な上限周波数が800Hz以上であることもSlowスキャンを利用する理由である。50Hzおよび60Hz時のSlowスキャンを用いた場合の観察可能な周波数を図19に示す。観察可能な下限周波数はフレーム時間に依存するが、20Hz程度の低周波数成分まで観察可能であると考えられる。
【0030】
SEM画像に含まれる振動成分を検出するためには、X方向のエッジを検出する必要がある。しかし、実際には1ラインの信号からエッジを検出するのは難しい。そこで相関法を用いてジッターを検出する方法を用いる。
【0031】
まず、画像全領域のX方向への投影(プロファイル)を得る。これを平均プロファイルとすると共にメモリ1107に記憶する。その後、1ラインごとの信号と平均プロファイルとの位置ずれを、信号解析部1113にて算出することで各ラインのジッターを求める。図4に平均プロファイルと1ラインプロファイルを求めた例を示す。
【0032】
平均プロファイルと1ライン毎の信号の位置ずれ量の算出には、相関関数を利用する。1ライン画像を摂動させながら平均プロファイルとの相関を計算し、相関値が最大となる前後2点の合計5点のデータを二次関数近似することでサブピクセル精度のずれ量を求めることが可能となる。求めた相関係数列には、ノイズが含まれず二次関数で容易に近似することが可能である。
【0033】
図5に画像中の全ラインに対して平均プロファイルからの相対的なずれ量を算出した例を示す。サブピクセル単位でのずれを検出していることがわかる。部分的に拡大してみると周期的に変化を示していることもわかる。
【0034】
図5のずれ量のデータを周波数解析することで図6に示すSEM画像に含まれる振動などを測定することができる。図6から電源の周波数である50Hzと第3高調派である150Hzのノイズが発生していることがわかる。また、振動と思われる282Hzのノイズも検出されている。
【0035】
以上のように、ノイズの適正な評価を可能とすることによって、走査電子顕微鏡等の設置環境の評価を行うことができ、測定や検査の精度を低下させる要因を排除する等の対策を講じることが可能となる。
【実施例2】
【0036】
偏向器制御部1116を用いて、スキャン方向を90度回転させることで、Y方向に作用するノイズを検出することが可能となる。図7にX方向,Y方向のノイズがSEM画像にもたらす影響を示す。ここでいうX方向,Y方向とは画面上のX方向,Y方向ではなく、ステージのX方向およびY方向へのノイズである。半導体計測装置では、2次元計測の需要が強まっており両方向からのノイズを計測し、補正を行うことで、高精度にパターン寸法を測長することが可能となる。
【実施例3】
【0037】
実施例1の測定を定期的に、例えば1日などに自動で行い、長期的に装置状態を確認することで、安定したビームの状態を維持することが可能である。また、許容できないノイズの大きさに対して任意の閾値を設定し、それ以上のノイズが計測された場合は、エラーメッセージをディスプレイに表示させることで、早期に装置の異常を察知することができる。またこれにより、装置の稼働率低下を防ぐことができる。本計測フローを図8に示す。
【0038】
まず、ステップ801〜805までは、図2のステップ201〜205と同様に、一次元走査に基づいて、ノイズ検出を行う。メモリ1107に予めノイズ量に対する閾値を記憶させておき、比較部1114は記憶された閾値と、信号解析部1113によって得られたノイズ量との比較を行うことによって、ノイズ量が閾値を超えたか否かの判定を行う。ノイズ量が閾値を超えたと判定された場合には、出力データ作成部1115は、表示装置1109等を介して、エラーメッセージを発生する(ステップ806)。このエラーメッセージは、特定周波数の信号量が所定値を超えた場合に発生するようにしても良いし、複数の周波数帯域の加算信号量が所定値を超えた場合に発生するようにしても良い。
【0039】
図11に例示する制御装置1105内に内蔵される評価条件設定部1110は、入力装置1108からの入力条件に基づいて、ノイズ評価条件を設定し、評価レシピとしてメモリ1107に登録する。具体的には、表示装置1109等にGUI(Graphical User Interface)画面を表示させ、当該画面上にて設定を行う。
【0040】
図13は、ノイズ評価の条件設定を行うためのGUI画面の一例を示す図である。このGUI画面上では、ノイズ評価を行うタイミング,ノイズ評価に用いるパターンの種類,閾値、及びエラーメッセージを発生するか否かが選択可能となっている。図13に例示するGUI画面上では、ノイズ評価を行うタイミングが“Daily”に設定されており、1日ごとに決まった時間にノイズ評価を行うように設定されている。評価条件設定部1110は、このようなGUI画面上での設定に基づいて、SEMを動作させる動作プログラムであるレシピを生成する。
【0041】
図14は、得られた二次元展開像に基づいて得られる特定周波数の信号量の変化を、横軸を日時としたグラフに表示した例を説明する図である。この表示データは出力データ作成部1115にて作成され、表示装置1109等に表示される。
【0042】
以上のような構成によれば、適切なタイミングにて装置のコンディションの評価を行うための設定が可能となる。
【実施例4】
【0043】
ノイズの周波数とその要因の組み合わせのデータベースを作成し、メモリ1107に記憶しておけば、実施例1で検出されたノイズの原因の周波数のピークごとの特定に基づいて、ノイズ要因自体を装置の操作者に知らしめることができる。予想されるノイズとしては、電源の周波数である50,60Hzの整数倍の高調波,ステージの固有振動数,カラムの固有振動数などがある。
【0044】
これらのデータベースはあらかじめシミュレーションや実機で評価を行い作成する。また、本測定を定期的に行い、データベースにないノイズやこれまでに検出されていなかったノイズが発生した場合にはモニタにエラーメッセージとして出力させ、装置の異常を知らせる。本測定フローを図9に示す。
【0045】
まず、ステップ901〜905までは、図2のステップ201〜205と同様に、一次元走査に基づいて、ノイズ検出を行う。次に予め登録しておいた周波数とノイズ要因を関連付けて記憶するデータベースを参照(ステップ906)して、ノイズ原因の特定を行う(ステップ907)。このようなノイズ要因を表示装置1109に表示することによって、操作者は、ノイズの要因として疑わしい事象を容易に把握することが可能となる。
【0046】
また、所定値以上の信号量を持つ特定周波数成分の内、データベースを参照してもノイズが特定できない場合には、未知のノイズが発生したと判断して、エラーメッセージを表示装置1109に表示する(ステップ908)。このように、未知のノイズが混入した場合には、その旨を表示装置1109に表示(ステップ909)することによって、操作者にデータベースの更新を促すようにする。操作者は、発生した時間やノイズの規模から、ノイズ要因が特定できるようであれば、未知の信号と、ノイズ要因を関連付けてデータベースに記憶させることによって、データベースを更新することができる。
【実施例5】
【0047】
上述した実施例では、装置状態や設置環境をモニタするための手法について説明したが、本実施例では、得られたノイズ情報に基づいて、得られる画像に対して補正を行う手法について説明する。具体的には、上述のようにして検出されたノイズをキャンセルするような偏向信号を、偏向器制御部1116にて生成し、当該生成された補正信号と、走査信号を重畳して、偏向器1102に供給することによって、ノイズのない画像を形成する。本実施例では、検出されたノイズを図1の偏向器6にフィードバックし、ノイズをキャンセルするようにビームを制御することで、ノイズの補正を行う。
【0048】
また、ノイズの計測をある一定間隔で定期的に実施することで、常に高精度な補正を行うことが可能となる。しかし、計測時に突発的な外乱が発生する場合も考えられるため、過去の計測結果を周波数別に記憶しておき、過去数回連続して検出されているノイズ情報を選択的に用いて補正信号を生成する。本測定フローを図10に示す。
【0049】
まず、ステップ1001〜1005までは、図2のステップ201〜205と同様に、一次元走査に基づいて、ノイズ検出を行う。次に周波数解析によって、得られた周波数別の信号をリストアップし(ステップ1006)、過去の測定結果に基づいて得られる発生回数に加算することで、トータルの発生回数を算出する(ステップ1007)。
【0050】
この累積的な発生回数が所定回数以上のノイズは、突発的な外乱ではなく、連続的に発生しているノイズであると考えられるため、当該ノイズの周波数と信号量を特定し(ステップ1008)、偏向器制御部1116では、当該ノイズをキャンセルするための補正信号を生成する(ステップ1009)。この補正信号を走査信号に重畳して、ビーム走査を行うことによって、高精度な画像形成、或いは測定を実行することができる。
【実施例6】
【0051】
本実施例では、偏向信号を補正するのではなく、ノイズの評価値に応じて、画素の位置を調整することでノイズの影響を排除した画像を形成する手法について説明する。図17は、補正画像を形成する工程を示すフローチャートである。本例では、ノイズ評価位置にビーム照射位置を移動(ステップ1701)した後、測定位置に対するビームの一次元走査を行う(ステップ1702)。次に、一次元走査によって得られた画像信号を、二次元配列することによって、二次元展開像を形成する(ステップ1703)。この二次元展開像に基づいて、異なる高さ(Y方向)位置のずれを検出(ステップ1704)し、時間経過(走査回数)に対応するずれ量の推移(波形)を求める(ステップ1705)。この波形について、周波数解析を行い、実施例5にて説明したように、発生回数が所定数以上の周波数の信号を抽出することによって、ノイズ成分を特定する(ステップ1706)。
【0052】
一方、試料上の対象パターンに対し、電子ビームを二次元的に走査する(ステップ1707)ことによって、二次元像を形成する(ステップ1708)。そしてこの二次元像に表示されたエッジ部分について、周波数解析を行い、所定値以上の信号量を持つ周波数成分を特定する(ステップ1709)。ステップ1710にて所定の信号量を持つとして特定された周波数成分の内、ステップ1706にてノイズとして特定された周波数成分を除去し(ステップ1710)、除去後の信号に基づいて、二次元像を再構築する(ステップ1711)。
【0053】
以上のような構成によれば、ノイズ等の影響を抑制しつつ、適正な二次元画像の構築が可能となる。また、ステップ1708にて形成した二次元像と、ステップ1711にて形成した二次元像を併せて表示装置等に出力することによって、ノイズ除去が適正に行われているか否かのチェックを行うことができる。
【0054】
図18は、ノイズ除去前後のSEM画像を併せて表示した出力画像例を示す図である。この画像上には、一次元走査によって得られた信号を二次元展開した二次元展開像(Fluctuation characteristic image)、一次元走査時の周波数解析結果,二次元走査に基づく二次元像(Two-dimensional image),二次元走査時の周波数解析結果,ノイズ除去後の二次元像、及び周波数解析時の測定条件(Measurement Condition)が表示されている。
【0055】
このような表示形態によれば、ノイズの発生状況を目視で確認することが可能となり、二次元像のエッジ部分のラフネスがノイズに起因するものなのか、パターン形状自体を表すものなのかを容易に把握することが可能となる。また、ノイズ除去後の画像も併せて表示することによって、ノイズ除去が適正に行われているか(或いはノイズ除去によって評価すべきラフネス情報を消していないか)の確認を行うことが可能となる。
【0056】
図16は、ノイズ除去に基づいて、二次元像を形成するのではなく、ラフネスの判定を行う工程を示すフローチャートである。ラフネス評価のみを行うのであれば、例えばノイズ除去後のエッジの線分に基づいて近似関数を求め、当該近似関数とエッジ線分間の距離に基づいて、ラフネス計測を行い、その結果をメモリ1107に登録する。また、図15は、ラフネス測定を行うための条件を入力するためのGUI画面の一例を示す図である。測定対象(Measurement Target),測定高さ(Height),パターンの種類(Pattern Type)、及び複数のエッジが含まれる場合の対象エッジ(Edge Num)が含まれており、その中にノイズ除去を行うか否かの選択を行う選択のためのボタンが設けられている。このような選択肢を設けることによって、外乱の除去を優先するか、特定周波数信号の信号を除去しないことによる信号量を優先するかの選択が可能となる。
【実施例7】
【0057】
次に、複数のSEMの機差を評価するのに好適な手法を説明する。図12に例示するように、複数のSEM1201〜1203を含む測定,検査システムの場合、各装置間に機差が存在すると、仮に同じ測定対象を測定した場合であっても異なる測定値が出力されることになり、測定再現性を低下させる要因となる。本実施例では、このような機差を抑制するために、各SEMにおいて、上述した実施例にて実施したような装置コンディションの評価を行い、機差を抑制するように、偏向器の補正信号の算出、或いは画像の補正条件の算出を行うようにする。具体的には、基準となるSEM(例えばSEM1201)と同じ偏向条件、或いは画像の補正条件となるように、他のSEM1202,1203を調整するようにすると良い。SEM1201は予め上述の実施例に例示した手法に基づく装置の調整を行っておき、その条件に追従するように、他の装置の条件も合わせるようにすることによって、機差を抑制することが可能となる。
【0058】
なお、一次元走査を行うタイミングによって、ノイズの状態が変化する可能性もあるため、同じノイズ条件下で各装置の評価を行うために、同時に複数のSEMにて一次元走査を行い、ノイズ検出を行うことが望ましい。また、ある特定の装置のみ大きなノイズが検出されるようであれば、その装置固有の原因(SEMの近傍にノイズ源が設置された、設置環境が変化しノイズが発生するようになった等)が考えられるため、例えば基準装置とのノイズ情報(特定周波数の信号量、或いは基準装置では確認されていなかった周波数の信号量)の乖離が所定値を超えた場合に、警報を発生するようにすると良い。
【0059】
このような構成によれば、装置環境の変化を早期に知徳することができ、その対策を講じることが可能となる。
【0060】
また、正確な補正を行うためには、同一倍率にて補正量を特定する必要があるため、複数のSEMにて、寸法値が既知の同じ基準試料を用いてノイズの評価を行うことが望ましい。但し、ノイズ源となる周波数成分を特定するだけであれば、上述した実施例は、パターンの寸法に因らず周波数成分を抽出することが可能であるため、用途に応じて手法を使い分けることができる。この場合は、特定された周波数信号をフィルタリングすることによって、ノイズ除去を行うようにしても良い。但し、ノイズ検出と補正信号の算出を高精度に行うためには、複数の装置間で、同時且つ同一規格で作成された基準試料を用いて、ノイズ評価を行うことが望ましい。
【0061】
このような評価法によれば、時間的な変動要因のない、装置の設置状況やコンディションに由来するノイズ源のみを選択的に検出することが可能となる。
【0062】
以上のような処理を撮像レシピ作成装置1204にて一括して行うことによってノイズに由来する機差の管理を容易に行うことができるようになる。本例の場合撮像レシピ作成装置1204は画像解析装置として機能する。
【0063】
また、上述した実施例では、ノイズ要因として主に振動等の外乱を前提として説明したが、例えば試料の帯電等に基づいて、画像が固有の揺らぎを生じさせるような場合には、その試料材質固有のノイズ源として特定し、ノイズの評価や補正信号の算出等を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 電子銃
2 電子
3 集束レンズ
4 対物レンズ
5 試料
6 偏向器
7 二次粒子
8 荷電粒子検出器
9 制御プロセッサ
10 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子源と、
当該荷電粒子源から放出されるビームを走査する偏向器と、
試料から放出された荷電粒子に基づいて画像を形成する画像形成部を備えた荷電粒子線装置において、
前記画像形成部は、前記偏向器が前記ビームを一次元的に複数回走査したときに得られる信号を、二次元的に展開して二次元像を形成することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記二次元像のエッジを示す波形情報について、周波数解析を行う信号解析部を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記信号解析部は、前記周波数解析に基づいて得られる周波数成分ごとの信号量を検出することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記信号解析部によって、得られた周波数解析結果が所定の条件となったときに、その情報を出力する出力データ作成部を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記信号解析部は、得られた周波数解析結果を、予め登録されたデータベースを参照することによって、得られた周波数成分と関連付けて記憶されたノイズ関連情報を出力することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記画像形成部は、前記ビームを前記偏向器によって異なる2つの方向に一次元的に走査することによって検出される荷電粒子に基づいて、少なくとも2つの二次元像を形成することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記画像形成部は、定期的な前記ビームの一次元走査によって得られる荷電粒子に基づいて、複数の画像を形成することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記二次元像のエッジを示す波形情報について、周波数解析を行う信号解析部と、当該信号解析部によって検出されたノイズ成分を除去するように、前記偏向器を制御する偏向器制御部を備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記二次元像のエッジを示す波形情報について、周波数解析を行う信号解析部を備え、前記画像形成部は、当該信号解析部によって検出されたノイズ成分を除去して画像を形成することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
荷電粒子線装置によって得られる検出信号に基づいて形成される画像を解析する信号解析部を備えた画像解析装置において、
前記偏向器が前記ビームを一次元的に複数回走査したときに得られる信号を、二次元的に展開して得られる二次元像を解析することを特徴とする画像解析装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記信号解析部は、複数の荷電粒子線装置によって得られる複数の二次元像を解析することを特徴とする画像解析装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記信号解析部によって得られる複数の荷電粒子線装置間の機差に基づいて、前記複数の荷電粒子線装置の装置条件を設定する条件設定部を備えたことを特徴とする画像解析装置。
【請求項13】
請求項10において、
前記信号解析部は、前記周波数解析に基づいて得られる周波数成分ごとの信号量を検出することを特徴とする画像解析装置。
【請求項14】
請求項10において、
前記信号解析部によって、得られた周波数解析結果が所定の条件となったときに、その情報を出力する出力データ作成部を備えたことを特徴とする画像解析装置。
【請求項15】
請求項10において、
前記信号解析部は、得られた周波数解析結果を、予め登録されたデータベースを参照することによって、得られた周波数成分と関連付けて記憶されたノイズ関連情報を出力することを特徴とする画像解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−151053(P2012−151053A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10351(P2011−10351)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】