説明

荷電粒子装置

【課題】試料ステージの可動範囲を狭めることなく振動の影響を防止し荷電粒子発生部と試料ステージとの相対変位を抑制可能な荷電粒子装置を実現する。
【解決手段】荷電粒子装置1は上部に長筒状のカラム2を備えカラム2の下部には内部が空洞の試料室3がある。試料室3は水平方向の振動よりも垂直方向の振動が大きい試料室上部3aと水平方向の振動が大きい試料室底部3bに分かれている。カラム2は荷電粒子銃及び試料検出系を備える。カラム1と試料ステージ5を支持する試料ステージ支持体4とが共に試料室上部3aに支持され、カラム1の中心軸と試料ステージ支持体4の中心軸とが一致若しくは互いに平行となるように構成されている。環境音がカラム2や試料室3に加わってもカラム2と試料ステージ5が共に試料室上部3aに固定され、互いに一体となって振動するので、荷電粒子発生部と試料との間に相対変位が生じにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ステージを有する荷電粒子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子装置は、荷電粒子を試料に向けて照射し、試料を加工・観察するものである。試料は試料ステージと呼ばれる台に載せられており、様々な形状へ加工されたり、様々な方向から観察されたりする。
【0003】
そのため、試料ステージは、面内や面外など多数の方向に駆動する機構を備えている。例えば、特許文献1に記載された技術のように、試料ステージは、面内・面外に駆動する多軸の機構を備えている。また、試料ステージに環境音や床振動などの外部振動が加わると、荷電粒子とステージ上の試料との間に相対変位が生じる。
【0004】
これにより、例えば電子顕微鏡では観察像に揺らぎが生じ、分解能が低下する。また、イオンビーム加工装置では加工位置がずれ加工精度が低下する。これらの装置は、分解能や加工精度が極めて小さいため、微小な振動であっても影響を受ける。
【0005】
そのため、試料ステージと荷電粒子発生部とは相対変位が生じにくいように構成されている。例えば、特許文献2に記載の技術では、試料ステージと荷電粒子発生部との相対変位が生じないように、対物レンズとステージとを4本の柱で繋いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−282016号公報
【特許文献2】特開平6−176729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、例えば、特許文献1に記載ように、試料ステージが試料室側面で支持されており、荷電粒子発生部のカラム支持位置と試料ステージ支持位置とは一体となっていない。
【0008】
このような構造では、装置振動時にカラムと試料ステージとが一体となって振動しないため、試料ステージを強固にしても荷電粒子発生部と試料ステージとの相対変位が小さくはならない。
【0009】
相対変位を小さくするためには、カラム支持位置と試料ステージ支持位置とが一体になるように、試料室を小型化することが考えられる。
【0010】
しかし、試料室を小型化すると、試料ステージの可動範囲が限定されてしまい、試料の加工・観察範囲が限定されてしまう。また、特許文献2に記載の構造では、相対変位をより小さくするために支柱を高剛性化すると、支柱が太くなり試料ステージの可動範囲が限定されてしまう。さらに、試料台は支柱下部で支えられているため、面外運動が制限されてしまう。
【0011】
本発明の目的は、試料ステージの可動範囲を狭めることなく、振動の影響を防止し、荷電粒子発生部と試料ステージとの相対変位を最小限に抑制することが可能な荷電粒子装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0013】
本発明の荷電粒子装置は長筒状のカラムと、カラムが面に垂直な方向に設置される試料室と、内部が空洞で試料室のカラム設置面と同じ面に設置されている試料ステージ支持体と、支持体に内蔵されている試料ステージを備えている。試料ステージは支持体で支持される水平面傾斜機構と、水平面傾斜機構で支持される垂直方向駆動機構と、垂直方向駆動機構で支持される水平面駆動機構と、水平面駆動機構で支持される水平面内回転機構を備えている。
さらに、本発明の荷電粒子装置は、水平面傾斜機構の傾斜軸と回転中心軸が直交するよう支持体側面に設置された傾斜軸回転機構を備えている。
さらに、本発明の荷電粒子装置は、傾斜した駆動面を持つ垂直方向駆動機構を備えている。
さらに、本発明の荷電粒子装置は側面に穴を開けた試料ステージ支持体を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ステージの可動範囲を狭めることなく、振動の影響を防止し、荷電粒子と試料の相対変位を最小限に抑制する多軸の荷電粒子装置の試料ステージを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1による荷電粒子装置の側面の一部を断面にして示す図である。
【図2】本発明の実施例1による荷電粒子装置の正面の一部を断面にして示す図である。
【図3】本発明の実施例1による試料ステージ平面の一部を断面にして示す図である。
【図4】本発明の実施例1要部斜視図である。
【図5】本発明の実施例2による荷電粒子装置の側面の一部を断面にして示す図である。
【図6】本発明の実施例3による荷電粒子装置の側面の一部を断面にして示す図である。
【図7】本発明の実施例4による荷電粒子装置の側面の一部を断面にして示す図である。
【図8】本発明の実施例5による荷電粒子装置の要部斜視図である。
【図9】本発明の実施例6による荷電粒子装置の要部斜視図である。
【図10】本発明の実施例7による荷電粒子装置の要部断面図である。
【図11】本発明の実施例8による荷電粒子装置の要部断面図である。
【図12】本発明の実施例9による荷電粒子装置の要部断面図である。
【図13】本発明の実施例10による荷電粒子装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図4は、本発明の実施例1である荷電粒子装置の概略構成図である。図1は実施例1における荷電粒子装置の側面の一部を断面にして示した図であり、図2は実施例1の荷電粒子装置の正面の一部を断面にして示した図、図3は実施例1の試料ステージの平面の一部を断面にして示した図であり、図1、図2の断面方向とほぼ直交する方向の断面を示している。図4は、実施例1の要部斜視図である。
【0018】
図1〜図4において、荷電粒子装置1は、上部に長筒状のカラム2を備え、カラム2の下部には内部が空洞の試料室3がある。試料室3は試料室上部3aと試料室底部3bに分かれている。このうち、試料室上部3a(カラム固定面)にはカラム2が設置され支持されている。カラム2には、荷電粒子銃(荷電粒子発生手段)及び試料検出系を備えている。
【0019】
カラム2の中心軸が支持体である試料室上部3aの中心軸と一致もしくは平行になるように、試料室上部3aには内部が空洞の試料ステージ支持体4が設置されている。そして、試料ステージ支持体4に試料ステージ5が内蔵されている。
【0020】
試料の加工・観察時には、まず、操作者がモニタ6を見ながら加工・観察のための設定を行なう。設定条件がモニタ6から制御装置7に伝達され、制御装置7からの制御信号がカラム2や試料ステージ5に送られる。そして、試料室上部3a及び試料室底部3bにより囲まれた試料室内が真空排気され、試料ステージ5が所定の位置に移動し、カラム2の荷電粒子銃から試料ステージ5の水平面回転テーブル41上の試料に向けて、荷電粒子が照射される。
【0021】
カラム2の検出系は、試料に照射された荷電粒子を検出し、検出したデータを分析部8に送る。そして、分析部8により分析された試料の画像がモニタ6に表示される。
【0022】
試料ステージ支持体4の内壁には、円形の穴9a、9bが互いに対向する位置に形成されており、これらの穴9a、9bの中心軸は一致している。この穴9a、9bに、水平面傾斜軸受10が設置されている。このとき、互いに対向する2つの軸受10の回転軸が一致するように設置されている。
【0023】
軸受10の内輪には、形状の一部が円筒で端部が軸受10よりも外側にある水平面傾斜テーブル11が設置されている。ただし、水平面傾斜テーブル11の形状は図示の限りではなく、他の形状であってもよい。水平面傾斜テーブル11の円筒端部には、例えばギアのような水平面回転力伝達部12が設置されている。また、試料ステージ支持体4には、水平面回転力伝達部12と噛合う位置に、例えば電動モーターのような水平面回転駆動部13が設置されている。水平面傾斜軸受10と、水平面傾斜テーブル11と、水平面回転力伝達部12と、水平面回転駆動部13とにより傾斜機構が形成される。
【0024】
水平面傾斜テーブル11の水平面を傾斜させる場合には、図示しない電源及び制御装置から駆動電力及び制御信号が水平面傾斜駆動部13に供給され、駆動部13が動作する。駆動力が水平面回転力伝達部12を介して水平面傾斜テーブル11に伝達され、水平面傾斜テーブル11が水平面傾斜軸受10と共に回転する。このとき、水平面傾斜テーブル11に位置センサを設置しておき、傾斜角度の制御を行っても良い。
【0025】
なお、水平面傾斜テーブル11の円形内部を通して、試料ステージ5から試料を取り出してもよい。
【0026】
水平面傾斜テーブル11には、垂直方向に2列の垂直方向移動リニアガイド20が設置されている。垂直方向移動テーブル21は垂直方向移動リニアガイド20で両端部を支持されている。垂直方向移動テーブル21の形状は図示の限りではない。垂直方向移動テーブル21の片側中央には、例えばボールねじやボールスプラインなどのような垂直方向駆動力伝達部22が設置されている。水平面傾斜テーブル11の試料ステージ側中央には、垂直方向駆動力伝達部22と同一軸上になるよう、例えば電動モーターのような垂直方向駆動部23が設置されている。垂直方向移動リニアガイド20と、垂直方向移動テーブル21と、垂直方向駆動力伝達部22と、垂直方向駆動部23とにより垂直方向駆動機構が形成される。
【0027】
垂直方向に駆動する場合には、図示しない電源及び制御装置から駆動電力及び制御信号が垂直方向駆動部23に供給され、駆動部が動作する。駆動力が垂直方向駆動力伝達部22を介して垂直方向移動テーブル21に伝達され、垂直方向移動テーブル21が垂直方向移動リニアガイド20上を移動する。このとき、テーブルに位置センサを設置しておき、垂直方向の位置制御を行っても良い。
【0028】
垂直方向駆動力伝達部22が垂直方向移動テーブル21の水平方向の中央に設置されているため、移動時にテーブル面垂直軸周りのモーメントがテーブル21に作用しにくく、安定した動作になる。また、垂直方向移動リニアガイド20が垂直方向移動テーブル23の両端を支持しているため、テーブル21が回転しにくく安定した動作になる。
【0029】
垂直方向移動テーブル21上には水平面傾斜軸(試料ステージ支持体4の穴9a、9bが互いに対向する方向に伸びる軸)と直角になるよう2列の水平方向移動リニアガイド(傾斜軸直角方向)30が広い間隔で設置されている。水平方向移動テーブル(傾斜軸直角方向)31は水平方向移動リニアガイド(傾斜軸直角方向)30で両端を支持されている。水平方向移動テーブル(傾斜軸直角方向)31は図示の限りではなく、種々の変形が可能である。
【0030】
水平方向移動テーブル31の中央には、例えばボールねじやボールスプラインなどの水平方向駆動力伝達部32(図3)が設置されている。垂直方向移動テーブル21上には、水平方向駆動力伝達部32と同一軸上になるよう、例えば、電動モーターのような水平方向駆動部(傾斜軸直角方向)33が設置されている。
【0031】
さらに、水平方向移動テーブル31には水平面傾斜軸と同一方向になるよう2列の水平方向移動リニアガイド(傾斜軸方向に延びる)34が広い間隔で設置されている。
【0032】
水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)35は、水平方向移動リニアガイド(傾斜軸方向)34で、その端部が支持されている。水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)35は図示の限りではなく、種々の変形が可能である。テーブル35の中央部には、例えばボールねじやボールスプラインなどの水平方向駆動力伝達部(傾斜軸方向)36が設置されている。水平方向移動リニアガイド30と、水平方向移動テーブル31と、水平方向駆動力伝達部32と、水平方向駆動部33と、水平方向移動リニアガイド34と、水平方向移動テーブル35とにより水平方向駆動機構が形成される。
【0033】
また、水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)35には水平方向駆動部(傾斜軸方向)37が設置されている。さらに、水平方向移動テーブル35上には、水平方向駆動力伝達部36と同一軸上になるよう、例えば、電動モーターのような水平方向駆動部(傾斜軸方向)が設置されている。
【0034】
水平方向移動テーブル35が水平方向に移動する場合には、図示しない電源及び制御装置から駆動電力及び制御信号が駆動部33、37に供給され、駆動部33、37が動作する。駆動部33、37の駆動力が伝達部32、36を介して移動テーブル31、35に伝達され、移動テーブル31、35が、リニアガイド30、34上を移動する。このとき、テーブル31、35に位置センサを設置しておき、水平方向の位置制御を行っても良い。
【0035】
水平方向駆動力伝達部(傾斜軸直角方向)32が水平方向移動駆動部(傾斜軸直角方向)33の中央に設置されているため、移動時に垂直軸周りのモーメントがテーブル32に作用しにくく、安定した動作になる。また、水平方向移動リニアガイド(傾斜軸直角方向)30が水平方向移動テーブル(傾斜軸直角方向)31の両端を支持しているため、テーブル31が回転しにくく安定した移動動作となる。
【0036】
同様に、水平方向駆動力伝達部(傾斜軸方向)36が水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)35の中央に設置されているため、テーブル35の移動時に垂直軸周りのモーメントがテーブル35に作用しにくく、安定した動作になる。また、水平方向移動リニアガイド(傾斜軸方向)34が水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)35の両端を支持しているため、テーブル35が回転しにくく安定した動作になる。
【0037】
水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)35には、軸受回転軸が垂直方向になるよう水平面回転軸受40が設置されている。軸受40の内輪には水平面回転テーブル41が配置されている。水平面回転テーブル41の形状は図示の限りではなく、種々の変形が可能である。テーブル41の外周には例えばギアなどのような水平面回転力伝達部42が設置されている。水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)35には、水平面回転力伝達部42とかみ合う位置に、例えば電動モーターのような水平面回転駆動部43が設置されている。軸受40水平面回転テーブル41と、水平面回転力伝達部42と、水平面回転駆動部43とにより、水平面内回転機構が形成される。
【0038】
テーブル41が水平面内で回転する場合には、図示しない電源及び制御装置から駆動電力及び制御信号が駆動部43に供給され、駆動部43が動作する。駆動部43からの駆動力が伝達部42を介して移動テーブル41に伝達され、移動テーブル41が軸受40と共に回転する。このとき、テーブルに位置センサを設置しておき、水平面内の回転角度の制御を行っても良い。
【0039】
本発明の実施例1は、荷電粒子線発生部を有するカラム1と、試料ステージ5を支持する試料ステージ支持体4とが共に試料室上部3aに支持され、カラム1の中心軸と試料ステージ支持体4の中心軸とが一致若しくは互いに平行となるように構成されている。
【0040】
よって、環境音がカラム2や試料室3に加わっても、カラム2と試料ステージ5が共に試料室上部3aに固定されているため、互いに一体となって振動するので、荷電粒子発生部と試料との間に相対変位が生じにくい。
【0041】
試料ステージ支持体4を、試料ステージ5が配置される内部側は拡張せず、外部側のみ拡張させると、試料ステージ5の可動範囲を狭めることなく試料ステージ5を高剛性化でき、相対変位がより小さくなる。
【0042】
また、試料ステージ支持体4は外側及び内部空間を拡張させると、試料ステージ5が高剛性化するだけでなく、可動範囲を広げることができる。
【0043】
また、通常、試料室の下方にターボ分子ポンプが設置されるが、試料ステージ5が試料室上部3aに固定される構成となっているので、試料室の底部に試料ステージが固定される場合と比較して、ターブ分子ポンプの設置位置の自由度を増加することができる。
【実施例2】
【0044】
図5は、本発明の実施例2による荷電粒子装置の正面の一部を断面にして示した図である。この図5は、実施例1を示した図2に対応する図である。
【0045】
図5に示した例は、図2の例に、水平面傾斜軸受10に両端を支持された水平面傾斜テーブル11aと、水平面傾斜テーブル11a及び垂直方向移動テーブル21の間に設置された傾斜面を持つ傾斜方向移動ガイド26と、傾斜方向移動ガイド26を両端で支持する水平方向移動ガイド27と、傾斜方向移動ガイド26の中央に設置された、例えば、ボールねじやボールスプラインなどのような水平方向駆動力伝達部25と、水平方向駆動力伝達部25に設置された水平方向駆動部24とが追加されている。
【0046】
垂直方向移動リニアガイド20は、水平面傾斜テーブル11aの内側側壁に支持されている。
【0047】
図5において、垂直方向移動テーブル21を垂直方向に駆動するには場合には、図示しない電源及び制御装置から駆動電力及び制御信号が駆動部24に供給され、駆動部24が動作する。駆動部24の駆動力が伝達部25を介して傾斜方向移動ガイド26下部に伝達され、水平方向移動ガイド27に沿って、傾斜方向移動ガイド26下部が移動し、ガイド26の上下間の傾斜面がスライドし、垂直方向移動リニアガイド20に沿って、傾斜方向移動ガイド26上部とともに垂直方向移動テーブル21が移動する。このとき、テーブル21に位置センサを設置しておき、垂直方向の位置制御を行っても良い。
【0048】
その他の構成は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0049】
本発明の実施例2は、以上のように構成されているので、実施例1と同等な効果を得ることができる他、実施例1に比較して、垂直方向移動テーブル21の垂直方向への移動動作ピッチを細かくすることができる。
【0050】
また、傾斜方向移動ガイド26の傾斜面角度を変えると、動作ピッチを変えることができる。
【0051】
さらに、傾斜方向移動ガイド26の動作方向寸法を長くすると、移動範囲を大きくすることができる。
【0052】
さらに、傾斜方向移動ガイド26が垂直方向移動テーブル21を下方から支持しているため、実施例1と比べ支持剛性が高くなる。
【実施例3】
【0053】
図6は、本発明の実施例3による荷電粒子装置の正面の一部を断面にして示した図である。この図6は、実施例1を示した図2に対応する図である。
【0054】
図6において、試料ステージ支持体4の内側には、回転軸が垂直軸と同一方向を向く傾斜軸回転軸受50が設置されている。軸受50の内輪には、傾斜軸回転テーブル51が設置されている。傾斜軸回転テーブル51は、互いに対向する円形の穴9c、9dが形成されている。傾斜軸回転テーブル51の下端には傾斜軸回転力伝達部52が設置され、試料ステージ支持体4の下端には、傾斜軸回転駆動部53が設置されている。また、傾斜軸回転テーブル51の穴9c、9dには、水平面傾斜軸受10が設置されている。
【0055】
傾斜軸回転テーブル51を回転する場合には、図示しない電源及び制御装置から駆動電力及び制御信号が傾斜軸回転駆動部53に供給され、傾斜軸回転駆動部53が動作する。傾斜軸回転駆動部53の駆動力が傾斜軸回転力伝達部52を介して、水平面傾斜機構が設置された傾斜軸回転テーブル51に伝達され、回転テーブル51が軸受50と共に回転する。このとき、傾斜軸回転テーブル51に位置センサを設置しておき、傾斜軸回転テーブル51の回転角度の制御を行っても良い。
【0056】
その他の構成は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0057】
本発明の実施例3は、以上のように構成されているので、実施例1と同等な効果を得ることができる他、水平方向移動リニアガイド30が傾いて設置されていても、傾斜軸回転テーブル51を回転させて、傾きを補正することができる。
【0058】
また、複数のカラムを備えた装置、例えばデュアルビーム装置においては、カラムの向きをあわせて傾斜軸を変えることが可能になる。
【実施例4】
【0059】
図7は、本発明の実施例4による荷電粒子装置の正面の一部を断面にして示した図である。この図7は、実施例1を示した図2に対応する図である。
【0060】
図7の例と図2の例との異なるところは、図7の例においては、ステージ支持体4の側壁に複数の開口部61が形成されているところである。
【0061】
その他の構成は実施例1と同様な構成となっている。
【0062】
実施例4は、上記構成にすることで、実施例1と同等な効果を得ることができる他、マイクロサンプリング60を、開口部61を介してステージ5内に挿入することが可能になる。また、複数のカラムを備えた装置、例えばデュアルビーム装置においては、上方向以外からも荷電粒子を試料に向けて照射することが可能になる。
【0063】
なお、この実施例4は、実施例1〜3にも適用可能である。
【実施例5】
【0064】
図8は、本発明の実施例5による荷電粒子装置の要部斜視図である。
【0065】
図8において、ステージ支持体4の外側側面には複数のリブ62を形成する。複数のリブ62の板厚は、垂直方向に変化するように構成することができる。この場合、リブ62の板厚は、ステージ支持体4の下端部で最も大きくなるように構成することができる。
【0066】
また、リブ62の形状及び本数(6)は図示した例以外でも可能である。
【0067】
他の構成は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0068】
本発明の実施例5は、以上のような構成となっているので、実施例1と同等な効果を得ることができる他、実施例1に比較して、ステージ支持体4の側面の面外曲げ剛性が高くなり、面外の曲げ方向に変形する振動を低減することができる。また、ステージ支持体4の側面の厚さを減らし、リブ62の板厚を増加すると、ステージ支持体4を軽量で高剛性な構造にすることができる。
【実施例6】
【0069】
図9は、本発明の実施例6による荷電粒子装置の要部斜視図である。
【0070】
図9において、ステージ支持体4は、このステージ支持体4よりも高剛性な芯材63を、ステージ支持体4の上端から下端まで、垂直方向に複数本設置する。芯材63の形状及び本数は、図示して例以外とすることも可能である。
【0071】
その他の構成は実施例1と同様な構成となっている。
【0072】
実施例6は、上記構成にすることで、実施例1と同等な効果を得ることができる他、実施例1に比較して、ステージ支持体4の垂直方向の引張圧縮剛性が高くなり、自重による垂直方向の変形を低減できる。
【実施例7】
【0073】
図10は、本発明の実施例7による荷電粒子装置の要部断面図であり、一部を省略して示している。
【0074】
図10において、ステージ支持体4aは上端で厚さが最も大きく、下方に向かうに従って小さくなり、下端で最も小さくなる。
【0075】
他の構成は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0076】
本発明の実施例7は、以上のような構成となっているので、実施例1と同等な効果を得ることができる他、実施例1に比べ、固定部が自重に対して強くなるだけでなく、ステージ支持体4が軽量化される。
【実施例8】
【0077】
図11は、本発明の実施例8による荷電粒子装置の要部断面図である。
【0078】
図11において、試料室3は、試料室上部3aと試料室下部3bの間に減衰材3cが配置されている。
【0079】
他の構成は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0080】
本発明の実施例8は、以上のような構成となっているので、実施例1と同等な効果を得ることができる他、実施例1に比較して、カラム2及びステージ5に入力される振動が小さくなる。
【実施例9】
【0081】
図12は、本発明の実施例9による荷電粒子装置の要部断面図である。
【0082】
図12において、試料室上部3aは中央部に段差の付いた開口部3a1が形成されており、開口部3a1の段差に、上からステージ支持体4の上端部の鍔4uを設置する。ステージ支持体4の上端部の鍔4uには、上からカラム2を設置し、カラム2の下部の鍔2dがステージ支持体4の上端部の鍔4uと一体となるようにボルトなどで互いを固定する。
【0083】
他の構成は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0084】
本発明の実施例9は、以上のような構成となっているので、実施例1と同等な効果を得ることができる他、実施例1に比較して、ステージ支持体4を試料室上部3aに圧着させることができる。
【実施例10】
【0085】
図13は、本発明の実施例10による荷電粒子装置の一部断面図である。
【0086】
図13において、試料室上部3aは中央部に段差の付いた開口部3a1が形成されおり、開口部3a1の段差に、上からステージ支持体4上端部の鍔4uを設置する。ステージ支持体4の上端部の鍔4uの面は、試料室上部3a表面と同一平面になるよう設置する。ステージ支持体4上端部の鍔4uには、上からカラム2を設置し、カラム2の下部の鍔2dがステージ支持体4上端部の鍔4uと一体となるようボルトなどで固定する。
【0087】
カラム2の下部の鍔2dの大きさはステージ支持体4の上端部の鍔4uよりも大きくする。試料室上部3aには、ステージ5の水平方向の移動軸と同一軸上に位置調整ねじ64を設置する。カラム2の位置を調整する場合には、カラム2を固定するボルトを取外し、位置調整ねじ64を回して、ねじ64がカラム2を押しながら移動させる。
【0088】
他の構成は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0089】
本発明の実施例10は、以上のような構成となっているので、実施例1と同等な効果を得ることができる他、ステージ5の傾斜軸とカラム2の中心軸とを位置調節ねじ64により調整することが可能になる。
【符号の説明】
【0090】
・・・荷電粒子装置、 2・・・カラム、 2d、4u・・・鍔、3a・・・試料室上部、3a1・・・開口部、 3b・・・試料室底部、 3c・・・減衰材 4、4a・・・試料ステージ支持部体 5・・・試料ステージ、 6・・・モニタ、 7・・・制御装置、 8・・・分析部、 9a〜9d・・・穴、 10・・・水平面傾斜軸受 11、11a・・・水平面傾斜テーブル、 12・・・水平面回転力伝達部、 13・・・水平面回転駆動部 20・・・垂直方向移動リニアガイド、 21・・・垂直方向移動テーブル、 22・・・垂直方向駆動力伝達部、 23・・・垂直方向駆動部、 24・・・水平方向駆動部、 25・・・水平方向駆動力伝達部、 26・・・傾斜方向移動ガイド、 27・・・水平方向移動ガイド、 30・・・水平方向移動リニアガイド(傾斜軸直角方向)、 31・・・水平方向移動テーブル(傾斜軸直角方向)、 32・・・水平方向駆動力伝達部(傾斜軸直角方向)、 33・・・水平方向駆動部(傾斜軸直角方向)、 34・・・水平方向移動リニアガイド(傾斜軸方向)、 35・・・水平方向移動テーブル(傾斜軸方向)、 36・・・水平方向駆動力伝達部(傾斜軸方向)、 37・・・水平方向駆動部(傾斜軸方向)、 40・・・水平面回転軸受、 41・・・水平面回転テーブル、 42・・・水平面回転力伝達部、 43・・・水平面回転駆動部、 50・・・傾斜軸回転軸受、 51・・・ 傾斜軸回転テーブル、 52・・・傾斜軸回転力伝達部、 53・・・傾斜軸回転駆動部、 60・・・マイクロサンプリング、 61・・・開口部、 62・・・リブ、 63・・・芯材、 64・・・位置調整ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子発生手段を有する長筒状のカラムと、
上記カラムの一方端が固定されるカラム固定面を有する試料室と、
上記試料室の内部に配置され、上記カラム固定面に固定される試料ステージ支持体と、
上記試料ステージ支持体に支持され、上記荷電粒子発生手段から荷電粒子が照射される試料を支持する試料ステージと、
を備えることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子装置において、上記試料ステージは、
上記荷電粒子発生される荷電粒子線に対して、試料を傾斜させる傾斜機構と、
上記傾斜機構に支持され、試料を垂直方向に移動させる垂直方向駆動機構と
上記垂直方向駆動機構に支持され、試料を水平方向に移動させる水平方向駆動機構と、
上記水平方向駆動機構に支持され、試料を水平面内で回転させる水平面内回転機構と、
を備えることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子装置において、上記傾斜機構は、
上記試料ステージ支持体に配置された傾斜軸受と
上記傾斜軸受の内輪に支持された水平面傾斜テーブルと、
上記水平面傾斜テーブルに接する水平面回転力伝達部と、
上記試料ステージ支持体に支持され、上記水平面回転力伝達部に回転力を伝達する水平面回転駆動部と、
を備えていることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項4】
請求項3に記載の荷電粒子装置において、上記垂直方向駆動機構は、
上記水平方向駆動機構を支持する垂直方向移動テーブルと、
上記垂直方向移動テーブルを垂直方向にガイドする垂直方向移動リニアガイドと、
を備えることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項5】
請求項2に記載の荷電粒子装置において、上記ステージ支持体は、
上記傾斜機構を支持する互いに対向する位置に形成された2つの開口を備えていることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項6】
請求項1に記載の荷電粒子装置において、上記試料ステージ支持体の外表面に複数のリブが形成されていることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項7】
請求項1に記載の荷電粒子装置において、上記試料ステージ支持体は、内部に芯材を備えていることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項8】
請求項1に記載の荷電粒子装置において、上記試料ステージ支持体は、上記カラム固定面から離間するにつれて、厚さ寸法が小となるように構成されていることを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項9】
請求項1に記載の荷電粒子装置において、上記試料室は、上記カラム固定面と、このカラム固定面を支持する試料室底部と、上記カラム固定面と試料室底部との間に配置される減衰材と有することを特徴とする荷電粒子装置。
【請求項10】
請求項1に記載の荷電粒子装置において、上記試料ステージ支持体の上記カラム固定面に、上記カラムの位置を調整する位置調整ねじを備えていることを特徴とする荷電粒子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−3892(P2012−3892A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136330(P2010−136330)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】