説明

菊花型エレメント及びその製造方法並びに濾過体及び流体フィルタ

【課題】濾材へ接着剤を塗布する必要がなく、濾材が本来有する濾過面積を十分に活用することができ、濾過効率及び濾過寿命に優れる菊花型エレメント及びその製造方法並びに濾過体及び流体フィルタを提供する。
【解決手段】本発明の菊花型エレメントは、ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状のものであって、(A)濾紙と、ひだの内面側となる濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、(B)ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備えており、前記低融点繊維層は、濾紙を形成する濾紙材料(例えば、PET繊維等)よりも融点の低い繊維(例えば、PP繊維等)、及び/又は濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菊花型エレメント及びその製造方法並びに濾過体及び流体フィルタに関する。更に詳しくは、本発明は、濾材へ接着剤を塗布する必要がなく、濾材が本来有する濾過面積を十分に活用することができ、濾過効率及び濾過寿命に優れる菊花型エレメント及びその製造方法並びに濾過体及び流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般的な流体フィルタに用いられる濾過体としては、例えば、(1)帯状の濾紙の上端部及び下端部の近傍に接着剤が塗布され、筒状の菊花型に折り曲げられた後、ひだ間の上端部及び下端部が接着されて形成される菊花型エレメントを備える濾過体(特許文献1参照)、(2)帯状の濾紙の上端部及び下端部に熱溶融型接着剤が塗布され、筒状の菊花型に折り曲げられた後、ひだ間の上端部及び下端部が接着されて形成される菊花型エレメント(特許文献2参照)、(3)複数のスパンボンド不織布からなる複層不織布が巻回され、隣り合う不織布同士が熱融着されてなる筒状フィルタ(特許文献3参照)、(4)有孔筒状体に、熱可塑性繊維を含む帯状不織布が綾状に巻き付けられ、その不織布の一部が熱融着されて形成された筒状フィルタ(特許文献4参照)等が知られている。
【0003】
フィルタの製品用途上、濾紙の有効面積を増やすことが製品の寿命を延ばすことにつながるため、濾過機能が得られない濾材同士の接着部位の面積は可能な限り小さい方が好ましい。しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されているような菊花型エレメントを製造する場合、濾過体からの未濾過油の流出を防ぐ油密確保のために、ひだを形成する濾材の上端部及び下端部に接着剤を塗布する工程が必要である。これらの製造に使用されている熱溶融型の接着剤は、溶融した接着剤の広がる範囲を制御することが困難であり、濾材の上下端部における各接着範囲を必要以上に広く取る必要があるため、本来有する濾過面積を活かすことができず、濾過機能の改善が求められている。
また、有効な濾過面積をできるだけ大きく確保するために、上下端部の接着位置は端に近いほど好ましいといえるが、特許文献1の菊花型エレメントを製造する場合には、接着剤の塗布位置を端部に近づけ過ぎると、ひだ間を接着する際に接着剤が上下端からはみ出してしまい、製造ラインにエレメントが固着してしまうという不具合もあるため、上下端部近傍に接着剤を塗布する必要があり、本来有する濾過面積を活かせていないのが現状である。
一方、上記特許文献3及び4に記載されているような筒状フィルタでは、繊維同士を熱融着させているため、接着剤を塗布する工程は必要としていない。しかしながら、濾材として機能する繊維そのものを熱融着させており、本来有する濾過面積を活かしきれておらず、更には、熱融着させる部分の制御は容易ではなく、濾材として機能すべき部分の繊維を必要以上に熱溶着させてしまうこともあり、高い濾過精度を常に維持することができないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−181212号公報
【特許文献2】特開平10−57716号公報
【特許文献3】特開2006−150222号公報
【特許文献4】特開2001−19717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、濾材へ接着剤を塗布する必要がなく、濾材が本来有する濾過面積を十分に活用することができ、濾過効率及び濾過寿命に優れる菊花型エレメント及びその製造方法並びに濾過体及び流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
[1] ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状の菊花型エレメントであって、
(A)濾紙と、前記ひだの内面側となる該濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、
(B)前記ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ前記低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備えており、
前記低融点繊維層は、前記濾紙を形成する濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって形成されていることを特徴とする菊花型エレメント。
[2] 前記低融点繊維層が、前記ひだの内面側となる濾紙の表面の全面に形成されている上記[1]に記載の菊花型エレメント。
[3] 前記低融点繊維層を形成する繊維の繊維径が0.1〜10μmである上記[1]又は[2]に記載の菊花型エレメント。
[4] 前記低融点繊維層の厚みが、前記濾紙の厚みの20〜50%である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の菊花型エレメント。
[5] 前記濾紙を形成する濾紙材料が、セルロース繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維のうちの少なくとも一方であり、且つ前記低融点繊維層を形成する繊維が、ポリプロピレン繊維及びポリプロピレン繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方である上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の菊花型エレメント。
[6] 上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の菊花型エレメントの製造方法であって、濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に、該濾紙を形成している濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって低融点繊維層を形成する工程と、
前記低融点繊維層が形成された面がひだの内面となるように、該低融点繊維層が形成された濾紙を筒状の菊花型となるように折り曲げ、該ひだの上端部及び下端部を加熱して、前記低融点繊維層同士を熱溶着することにより、前記ひだの上端部及び下端部を接合する工程と、を備えることを特徴とする菊花型エレメントの製造方法。
[7] 前記低融点繊維層を形成する工程において、メルトブロウ法又はスパンボンド法により、該低融点繊維層を前記濾紙の表面に形成する上記[5]に記載の菊花型エレメントの製造方法。
[8] 上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の菊花型エレメントと、該菊花型エレメント上面及び下面に形成されたシール部と、を備えることを特徴とする濾過体。
[9] 上記[8]に記載の濾過体と、該濾過体を収納する収納体と、該収納体に設けられ且つ該濾過体を上下方向から支持する上方支持部及び下方支持部と、を備えており、
前記濾過体におけるシール部が、該濾過体における菊花型エレメントの軸方向の両端面と、前記上方支持部及び前記下方支持部との間をシールしていることを特徴とする流体フィルタ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の菊花型エレメントは、ひだの接合部が低融点繊維層の加熱溶着により形成されており、その接合面積を必要最小限とすることができるため、本来濾材が有する濾過面積を最大限に活用することができ、濾過効率及び濾過寿命に優れている。
また、低融点繊維層が、ひだの内面側となる濾紙表面の全面に形成する場合、加熱溶着される部分(接合部)以外の低融点繊維層が濾材の役割を果たすため、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
更に、低融点繊維層を形成する繊維の繊維径を0.1〜10μmとする場合、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
また、低融点繊維層の厚みが、濾紙の厚みの20〜50%とする場合、菊花型エレメントのひだの内面における上端部及び下端部を確実に接合することができる。更には、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
更に、濾紙を形成する濾紙材料を、セルロース繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維のうちの少なくとも一方とし、且つ低融点繊維層を形成する繊維を、ポリプロピレン繊維及びポリプロピレン繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方とする場合、菊花型エレメントの濾過効率を確実に向上させることができ、濾過寿命をより長くすることができる。
また、本発明の菊花型エレメントの製造方法によれば、濾紙表面に形成した低融点繊維層をひだの内面の接合剤として利用でき、且つ接合範囲の制御が容易であるため、ひだの上端部及び下端部を必要最小限の範囲で接合することができ、濾過機能を有する有効面積が大きな菊花型エレメントを容易に製造することができる。また、従来の濾材への接着剤を塗布する工程を省略することができるため、菊花型エレメントの製造に要する時間を短縮することができる。
更に、低融点繊維層をメルトブロウ法又はスパンボンド法により形成する場合、繊維径の小さな繊維からなる低融点繊維層を容易に形成することができる。
また、本発明の濾過体は、上記の菊花型エレメントを備えているため、濾過効率及び濾過寿命に優れている。
更に、本発明の流体フィルタは、上記の菊花型エレメントを備えているため、濾過効率及び濾過寿命に優れており、自動車等に用いられるオイルフィルタ等の液体用フィルタ、内燃機関の吸気系に設置されたエアクリーナの構成部品として利用できるエアフィルタ等の気体用フィルタ等の分野において幅広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[1]菊花型エレメント
本発明の菊花型エレメントは、ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状のものであって、(A)濾紙と、前記ひだの内面側となる該濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、(B)前記ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ前記低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備える。
【0009】
上記「エレメント本体」は、濾紙と、この濾紙の表面の少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなる。
【0010】
上記「濾紙」を形成する濾紙材料としては、融点が170℃以上のものが好ましく、より好ましくは180〜300℃のもの、更に好ましくは230〜300℃のものが好ましい〔尚、溶融せずに熱分解してしまう材料(例えば、セルロース繊維等)の場合には、上記温度範囲を熱分解温度として置き換えることができる。〕。
具体的には、セルロース繊維(例えば、パルプ繊維、リンター繊維、レーヨン繊維等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド系合成繊維等が挙げられる。これらのなかでも、セルロース繊維、PET繊維が好ましい。
尚、これらの繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
上記濾紙材料の繊維径は、1〜60μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μmである。
【0012】
また、上記濾紙の厚みは、0.4〜1.2mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.1mmであり、更に好ましくは0.6〜1.0mmである。この濾紙の厚みが0.4〜1.2mmである場合には、十分な濾過性能を得ることができる。
【0013】
上記「低融点繊維層」は、上述の濾紙の表面に形成されており、少なくとも濾紙の表面の上端部及び下端部に形成されている。特に、この低融点繊維層は、濾紙の表面の全面において形成されていることが好ましい。この場合、上端部及び下端部において加熱溶着される部分(接合部となる部分)以外の低融点繊維層が濾材の役割を果たし、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
尚、ここでいう濾紙の表面とは、本発明の菊花型エレメントのひだの内面側となる面を意味する。また、濾紙表面における上下方向は、菊花型エレメントの軸方向の上下方向に対応している。
【0014】
上記低融点繊維層は、上述の濾紙を形成する濾紙材料よりも融点の低い繊維(以下、「低融点繊維」ともいう。)、及び/又はこの低融点繊維を含有する複合繊維によって形成されている。即ち、低融点繊維、及び、この低融点繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方によって形成されている。
上記低融点繊維としては、融点が200℃未満のものが好ましく、より好ましくは150〜190℃のもの、更に好ましくは150〜170℃のものが好ましい。
具体的には、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ビニリデン繊維等が挙げられる。これらのなかでも、ポリプロピレン繊維が好ましい。尚、これらの低融点繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
上記複合繊維としては、(a)上記低融点繊維と、(b)セルロース繊維、PET繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド系合成繊維等から選ばれる、上記低融点繊維よりも融点が高い繊維(特に、融点が170℃以上)と、からなる複合繊維が挙げられる。これらのなかでも、ポリプロピレン繊維を含有する複合繊維が好ましく、具体的には、ポリプロピレン繊維とセルロース繊維とからなる複合繊維、ポリプロピレン繊維とPET繊維とからなる複合繊維が好ましい。尚、これらの複合繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
上記複合繊維の形態は特に限定されず、例えば、芯鞘型、並列型、分割型、海島型又は星雲型の複合繊維等が挙げられる。
本発明の菊花型エレメントにおいて、このような複合繊維を用いた場合には、菊花型エレメントのひだの内面における上端部及び下端部の接合部に、耐熱性能を付与することができる。
【0016】
また、上記低融点繊維層を形成する繊維は微細であることが好ましく、その繊維径は、0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1〜8μmであり、更に好ましくは1〜6μmである。この繊維径が0.1〜10μmである場合、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
【0017】
上記低融点繊維層の厚みは、上述の濾紙の厚みの20〜50%であることが好ましく、より好ましくは25〜45%、更に好ましくは30〜40%である。この低融点繊維層の厚みが、上述の濾紙の厚みの20〜50%である場合には、本発明の菊花型エレメントのひだの内面における上端部及び下端部を確実に接合することができる。更には、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
【0018】
本発明の菊花型エレメントにおいては、前記濾紙を形成する濾紙材料が、セルロース繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維のうちの少なくとも一方であり、且つ前記低融点繊維層を形成する繊維が、ポリプロピレン繊維及びポリプロピレン繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方であることが好ましい。この場合、本発明の菊花型エレメントのひだの内面における上端部及び下端部をより確実に接合することができる。
【0019】
また、上記「接合部」は、本発明の菊花型エレメントにおけるひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、上述の濾紙表面に形成されている低融点繊維層が加熱溶着されて形成されたものである。
上記ひだの内面の上端部及び下端部における各接合部(以下、それぞれ、「上端接合部」及び「下端接合部」ともいう。)の大きさは、所望の菊花型エレメントのサイズに必要な強度に応じて適宜調整されるものである。特に、各接合部の大きさは、未濾過油が流出しないように十分な油密を確保できる強度を備えている限り、濾材の有効な濾過面積を大きくできるため小さいほど好ましい。
【0020】
上記上端接合部の具体的な寸法は、エレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだの内面の上端から全長の5〜20%となる幅まで形成されていることが好ましく、より好ましくは5〜15%となる幅まで、更に好ましくは5〜10%となる幅までである。
また、上記下端接合部の具体的な寸法は、エレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだの内面の下端から全長の5〜20%となる幅まで形成されていることが好ましく、より好ましくは5〜15%となる幅まで、更に好ましくは5〜10%となる幅までである。
尚、上端接合部及び下端接合部の大きさは同一であってもよいし、異なっていてもよい。特に、本発明においては、流体フィルタにおけるオイル等の流体の流入口近傍は、他の部分に比べ流れが高流速になり、濾過体に高負荷が加わるため、図6に示すように、流体の流入口側となる下端接合部27bの大きさを上端接合部27aよりも大きく設定し、下端接合部27bの強度を上端接合部27aよりも大きくしておくことができる。
【0021】
更に、本発明の菊花型エレメントにおいては、上記上端接合部及び下端接合部以外にも、ひだの内面側の上端部及び下端部以外に形成された低融点繊維層を選択的に加熱溶着し、「他の接合部」を設けることによって、菊花型エレメント全体の強度を向上させることができる。
また、流体フィルタの濾過体を通過するオイル等の流体の流速は一様ではなく、インレット及びアウトレットに近いほど高流速となることが知られているため、菊花型エレメントを通過する流体の流速分布が均質となるように、上記他の接合部を形成することによって、菊花型エレメントの濾過効率を向上させ、濾過寿命を長くすることもできる。
具体的には、図7に示すように、整流作用が働くように、即ち上部側にも均等に流体が流れるように、傾斜を有する他の接合部37cを形成することができる。
尚、この他の接合部の形状は特に限定されない。また、他の接合部は、1つのみ形成されていてもよいし、複数形成されていてもよい。更に、この他の接合部は、全てのひだに形成されていてもよいし、一部のひだにのみ形成されていてもよい。
【0022】
[2]菊花型エレメントの製造方法
本発明の菊花型エレメントの製造方法は、上述の菊花型エレメントの製造方法であって、濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に、その濾紙を形成している濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又はその濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって低融点繊維層を形成する工程(以下、「低融点繊維層形成工程」という)と、前記低融点繊維層が形成された面がひだの内面となるように、その低融点繊維層が形成された濾紙を筒状の菊花型となるように折り曲げ、ひだの上端部及び下端部を加熱して、前記低融点繊維層同士を加熱溶着することにより、前記ひだの上端部及び下端部を接合する工程(以下、「接合工程」という)と、を備える。
尚、上記「濾紙」、上記「濾紙材料よりも融点の低い繊維(低融点繊維)」及び上記「濾紙材料よりも融点の低い繊維(低融点繊維)を含有する複合繊維」については、それぞれ、前述の説明をそのまま適用することができる。
【0023】
上記低融点繊維層形成工程において用いられる上記「濾紙」の形状は、通常、帯状であり、その寸法は、所望の菊花型エレメントの寸法に合わせて適宜調整することができる。
【0024】
上記低融点繊維層を濾紙表面に形成する方法は特に限定されないが、メルトブロウ法又はスパンボンド法を用いることが好ましく、特にメルトブロウ法が好ましい。これらの方法を用いた場合、繊維径の小さい微細な繊維からなる低融点繊維層を容易に形成することができる。
【0025】
上記低融点繊維層は、上記の方法等により濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成すればよいが、濾紙の表面の全面にわたって形成することが好ましい。この低融点繊維層が、濾紙の表面の全面にわたって形成される場合、加熱溶着される部分(接合部となる部分)以外の低融点繊維層が濾材の役割を果たし、得られる菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
尚、ここでいう濾紙の表面とは、濾紙の片面を意味し、且つ得られる菊花型エレメントのひだの内面側となる面を意味する。また、濾紙表面における上下方向は、得られる菊花型エレメントの軸方向の上下方向に対応している。
【0026】
濾紙表面に形成する低融点繊維層の厚みは、濾紙の厚みの20〜50%とすることが好ましく、より好ましくは25〜45%、更に好ましくは30〜40%である。この低融点繊維層の厚みが、濾紙の厚みの20〜50%である場合には、得られる菊花型エレメントのひだの内面における上端部及び下端部を確実に接合することができるため好ましい。
【0027】
また、上記接合工程では、上記濾材における低融点繊維層が形成された面がひだの内面となるように、その低融点繊維層が形成された濾紙が菊花型となるように折り曲げられ、その後、ひだの外面側からひだの上端部及び下端部が加熱され、互いに隣り合うひだの内面側の上端部及び下端部における低融点繊維層同士が加熱溶着されることにより、ひだの上端部及び下端部が接合される。
また、この工程では、必要に応じて、適宜の形状の他の接合部が加熱溶着により形成される。
【0028】
また、加熱溶着させて上端接合部とするひだの上端部の大きさは、エレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだの上端から全長の5〜20%となる幅まで接合することが好ましく、より好ましくは5〜15%となる幅まで、更に好ましくは5〜10%となる幅までである。
更に、加熱溶着させて下端接合部とするひだの下端部の大きさは、エレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだの下端から全長の5〜20%となる幅まで接合することが好ましく、より好ましくは5〜15%となる幅まで、更に好ましくは5〜10%となる幅までである。
【0029】
上記ひだの上端部及び下端部を加熱する手段は、ひだの上端部及び下端部を接合できる限り、特に限定されない。例えば、図8に示すような、両端部に複数の加熱板が並んだ加熱治具等を用いることができる。尚、この加熱板の位置や大きさは、所望のエレメントの大きさや、他の接合部の数や形状等に応じて適宜調整することができる。
また、上記加熱溶着させる際の加熱温度は、上述の濾紙と低融点繊維層とからなる濾材における濾紙を形成している繊維の融点よりも低く、且つ低融点繊維層を形成する低融点繊維の融点よりも高い温度に設定される。具体的には、160〜230℃で行うことが好ましく、より好ましくは170〜220℃、更に好ましくは180〜210℃である。
更に、この加熱時間は、上記加熱温度や加熱溶着させる面積に応じて適宜調整されるが、具体的には、1〜30秒間が好ましく、より好ましくは1〜20秒間、更に好ましくは1〜10秒間である。
【0030】
[3]濾過体
本発明の濾過体は、上述の菊花型エレメントと、この菊花型エレメント上面及び下面に形成されたシール部と、を備えることを特徴とする。
上記「シール部」は、菊花型エレメント上面及び下面、即ち、菊花型エレメントの軸方向の両端部に設けられており、濾過体とこの濾過体を収納する収納体との間を確実にシールすることができるものであれば、その形状、大きさ、配置形態等は特に限定されるものではない。通常、このシール部の形状はリング状である。
【0031】
上記シール部の形成方法は特に限定されないが、例えば、筒状の菊花型エレメントの上面及び下面に光硬化性樹脂を塗布し、必要に応じて成形型等を押し当て、所定の光照射を行うことによって所望の形状のシール部を形成することができる。
上記光硬化性樹脂とは、例えば、硬化性重合体(未硬化の重合体、オリゴマー等)に、光重合開始剤が配合された組成物であり、可視光、紫外光、電子線、中性子線等により光重合されるものである。このような光硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂(シリコーンポリエステル型、アクリロイル基を有するアクリルシリコーン、メルカプト−ビニル付加重合型等)、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、グアナミン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等を用いることができる。尚、これらの樹脂は無溶剤型であってもよいし、溶剤型であってもよい。
【0032】
[4]流体フィルタ
本発明の流体フィルタは、上述の濾過体と、この濾過体を収納する収納体と、この収納体に設けられ且つ濾過体を上下方向から支持する上方支持部及び下方支持部と、を備え、濾過体におけるシール部が、菊花型エレメントの軸方向の両端面と、上方支持部及び下方支持部との間をシールしていることを特徴とする。
【実施例】
【0033】
以下、図面に基づいて実施例により本発明を具体的に説明する。
本実施例では、本発明に係る「流体フィルタ」として、スピンオン型のオイルフィルタを例示する。このオイルフィルタは、自動車等の車両のエンジン潤滑系回路の途中に適宜固定手段を介して設置され、エンジンオイル中に混入する塵埃(ダスト)、金属磨耗片やスラッジなどの異物を濾過し得るものである。
【0034】
〔実施例1〕
(1)オイルフィルタの構成
本実施例1に係るオイルフィルタ1は、図1に示すように、ケーシング2(本発明に係る「収納体」として例示する)と、このケーシング2内に収納される濾過体10と、この濾過体10を上下方向から狭持するリリーフバルブ4(本発明に係る「上方支持部」として例示する。)及びチェックバルブ5(本発明に係る「下方支持部」として例示する。)と、を備えている。
【0035】
上記ケーシング2は、濾過体10を収納するための筒状のケース部材2aと、ケース部材2aの下部に形成された開放部を閉鎖するボトムプレート2bとからなる。このボトムプレート2bには、その中央部に1つのオイル流出口6が形成されると共に、このオイル流出口6の周囲に円周方向に沿って所定間隔で複数のオイル流入口7が形成されている。そして、この濾過体10を構成する後述のシール部によって、ケーシング2内の空間は、オイル流入口7に連なり濾過体10の上流側となる油路8aと、オイル流出口6に連なり濾過体10の下流側となる油路8bとに分割されている。
【0036】
(2)濾過体の構成
本実施例1に係る濾過体10は、図2及び図3に示すように、筒状の菊花型エレメント11と、この菊花型エレメント11の上面12a及び下面12bの内端部に形成されたシール部14,15と、を備えている。
上記シール部14,15は、アクリル系樹脂等の光硬化性樹脂等によって形成されている。これらのシール部14,15は、所定の弾性力を有するものである。そして、上記濾過体10をケーシング2内に収納した状態で、シール部14によって、濾過体10の上面とリリーフバルブ4との間がシールされていると共に、シール部15によって、濾過体10の下面とチェックバルブ5との間がシールされている(図1参照)。
【0037】
(3)菊花型エレメントの構成
本実施例1に係る筒状の菊花型エレメント11は、図4及び図5に示すように、帯状の濾材が多数のひだ16を備えるように菊花状に折り曲げられて形成されており、互いに隣り合うひだ16の内面の上端部13a及び下端部13bは、それぞれ、上端接合部17a及び下端接合部17bにより接合されている。
上記濾材は、濾紙(厚み;約0.8mm)と、ひだ16の内面側となる濾紙の表面の全面にわたって形成された低融点繊維層(厚み;約0.3mm)と、を備えるものである。また、上記濾紙は、繊維径20〜50μmのパルプ繊維(分解点;約180℃)、及び繊維径10〜50mmのPET繊維(融点;約260℃)から形成されており、上記低融点繊維層は、繊維径1〜3μmのポリプロピレン繊維(融点;約160℃)から形成されている。
上記上端接合部17aは、隣り合うひだ16の内面の上端部13aに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ16の内面の上端から全長の10%となる幅まで形成されている。
また、上記下端接合部17bは、隣り合うひだ16の内面の下端部13bに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ16の内面の下端から全長の10%となる幅まで形成されている。
【0038】
(4)菊花型エレメントの製造方法
まず、図4及び図5に示されるように、帯状の濾材[ひだ16の内面側となる面の全域にポリプロピレン繊維からなる低融点繊維層が形成された濾紙]をひだ16が形成されるように折り曲げる。次いで、両端部に複数の加熱板が並んだ加熱治具X(図8参照)を用いて、図9の(a)に示すように、互いに隣り合うひだの外面側の上端部同士の間、及び下端部同士の間に加熱治具Xの各加熱板が挟まれるように加熱治具Xを差込む。その後、図9の(b)に示す状態で、170℃、5秒間の条件で加熱することにより、互いに隣り合う各ひだの内面側の上端部13a(図5参照)に形成されている低融点繊維層同士、及び下端部13b(図5参照)に形成されている低融点繊維層同士を熱融着させて上端接合部17a(図5参照)及び下端接合部17b(図5参照)を形成する。次いで、ひだを備える濾材の両端を接合して筒状体とすることによって、菊花型エレメント11が得られる。
【0039】
(5)濾過体の製造方法並びに組み付け
上記(4)のようにして形成された菊花型エレメント11(図4及び5参照)を用意する。次いで、その軸方向が垂直方向を向いた状態の菊花型エレメント11の上端面に光硬化性樹脂を塗布する。その後、菊花型エレメント11の上方から、その塗布された光硬化性樹脂に向って透明な成形型を押し当て、約30秒間、紫外線照射を行う。その結果、菊花型エレメント11の上端面12aにシール部14が形成される。更に、上端面側と同様にして、菊花型エレメント11の下端面12bにもシール部15が形成される。このようにして、濾過体10が得られる。
また、上述のように得られた濾過体10において、菊花型エレメント11の内周面には、多数の貫通孔を有する筒状で金属製のプロテクタ部材9(図1参照)が装着される。そして、その濾過体10が、ケース部材2aに収納され、このケース部材2aにボトムプレート2bが装着されて、上述のオイルフィルタ1が得られることとなる。
【0040】
(6)実施例1の効果
本実施例1における菊花型エレメント11は、図5に示すように、ひだ16の上端及び下端の接合部17a,17bが低融点繊維層を加熱溶着させて形成されているため、濾材が本来有する濾過面積を十分に活用することができる。また、ひだ16の内面側となる濾紙表面の全面に低融点繊維層が形成されており、上記上端及び下端接合部17a,17b以外の低融点繊維層が濾材の役割を果たし、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させ、濾過寿命をより長くすることができる。
また、本実施例1におけるオイルフィルタ1及び濾過体10は、上記の菊花型エレメント11を備えているため、濾過効率及び濾過寿命に優れている。
【0041】
また、本実施例1の菊花型エレメントの製造方法によれば、濾紙表面に形成した低融点繊維層をひだの内面の接合剤として利用でき、且つ接合範囲の制御が容易であるため、ひだの上端部及び下端部を必要最小限の範囲で接合することができ、濾過機能を有する有効面積が大きな菊花型エレメントを容易に得ることができる。
【0042】
〔実施例2〕
実施例2においては、上記実施例1における菊花型エレメント11の代わりに、図6に示す菊花型エレメント21を用いた例を説明する。尚、菊花型エレメント21以外の他の構成は、全て実施例1と同様であるため、他の構成に関する説明及び効果の記載は省略する。
(1)菊花型エレメントの構成
実施例2における菊花型エレメント21は、図6に示すように、帯状の濾材が多数のひだ26を備えるように菊花状に折り曲げられて形成されており、互いに隣り合うひだ26の内面の上端部23a及び下端部23bは、それぞれ、上端接合部27a及び下端接合部27bにより接合されている。
上記濾材は、濾紙(厚み;約0.8mm)と、ひだ26の内面側となる濾紙の表面の全面にわたって形成された低融点繊維層(厚み;約0.3mm)と、を備えるものである。また、上記濾紙は、繊維径20〜50μmのパルプ繊維(分解点;約180℃)、及び繊維径10〜50mmのPET繊維(融点;約260℃)から形成されており、上記低融点繊維層は、繊維径1〜3μmのポリプロピレン繊維(融点;約160℃)から形成されている。
上記上端接合部27aは、隣り合うひだ26の内面の上端部23aに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ26の内面の上端から全長の10%となる幅まで形成されている。
また、上記下端接合部27bは、隣り合うひだ26の内面の下端部23bに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ26の内面の下端から全長の20%となる幅まで形成されている。
【0043】
(2)実施例2の効果
実施例2の菊花型エレメント21を備える場合には、図6に示すように、流体フィルタにおけるオイル等の流体の流入口近傍であり、他の部分に比べ流れが高流速となり高負荷が加わる下端接合部27bが、上端接合部27aよりも幅広に形成されており、優れた強度を有しているため、菊花型エレメントの寿命をより向上させることができる。
【0044】
〔実施例3〕
実施例3においては、上記実施例1における菊花型エレメント11の代わりに、図7に示す菊花型エレメント31を用いた例を説明する。尚、菊花型エレメント31以外の他の構成は、全て実施例1と同様であるため、他の構成に関する説明及び効果の記載は省略する。
(1)菊花型エレメントの構成
実施例3における菊花型エレメント31は、図7に示すように、帯状の濾材が多数のひだ36を備えるように菊花状に折り曲げられて形成されており、互いに隣り合うひだ36の内面の上端部33a及び下端部33bは、それぞれ、上端接合部37a及び下端接合部37bにより接合されている。また、ひだ36において、整流作用を有するように、所定の傾斜を有する他の接合部37cが2箇所ずつ形成されている。
上記濾材は、濾紙(厚み;約0.8mm)と、ひだ26の内面側となる濾紙の表面の全面にわたって形成された低融点繊維層(厚み;約0.3mm)と、を備えるものである。また、上記濾紙は、繊維径20〜50μmのパルプ繊維(分解点;約180℃)、及び繊維径10〜50mmのPET繊維(融点;約260℃)から形成されており、上記低融点繊維層は、繊維径1〜3μmのポリプロピレン繊維(融点;約160℃)から形成されている。
上記上端接合部37aは、隣り合うひだ36の内面の上端部33aに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ36の内面の上端から全長の10%となる幅まで形成されている。
また、上記下端接合部37bは、隣り合うひだ36の内面の下端部33bに形成されている上記低融点繊維層同士が熱融着されて形成されており、且つエレメント本体の全長(軸方向の長さ)を100%とした場合に、ひだ36の内面の下端から全長の10%となる幅まで形成されている。
更に、上記他の接合部37cは、隣り合うひだ36の所定の位置に形成されている低融点繊維層同士が熱融着されて形成されている。
【0045】
(2)実施例3の効果
実施例3の菊花型エレメント31を備える場合には、図7に示すように、濾過体を通過するオイル等の流体の流速分布が均質となるように、各ひだ36に他の接合部37cが所定の傾斜角を有して形成されているため、菊花型エレメントの濾過効率をより向上させることができる。更には、他の接合部37cによって、菊花型エレメント全体の強度をより向上させることができる。
【0046】
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、本実施例は、オイルを濾過するものであるが、用途は、オイルを濾過するものに限定されず、例えば、エア等を濾過するものにも適用できる。
また、本実施例のオイルフィルタの構成はいわゆるスピンオン型オイルフィルタであるが、オイルフィルタの構成はこれに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明における菊花型エレメント及びその製造方法並びに濾過体及び流体フィルタは、
自動車等に用いられるオイルフィルタ等の液体用フィルタ、内燃機関の吸気系に設置されたエアクリーナの構成部品として利用できるエアフィルタ等の気体用フィルタ等の分野において幅広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1に係るオイルフィルタの片側断面とした側面図である。
【図2】実施例1に係る濾過体の平面図である。
【図3】実施例1に係る濾過体の片側断面とした側面図である。
【図4】実施例1に係る菊花型エレメントの平面図である。
【図5】実施例1に係る菊花型エレメントの片側断面とした側面図である。
【図6】実施例2に係る菊花型エレメントの片側断面とした側面図である。
【図7】実施例3に係る菊花型エレメントの片側断面とした側面図である。
【図8】加熱治具の模式図である。
【図9】実施例1に係る菊花型エレメントの製造方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1;オイルフィルタ、2;ケーシング、4;リリーフバルブ、5;チェックバルブ、10;濾過体、11,21,31;菊花型エレメント、12a;上端面、12b;下端面、14,15;シール部、16,26,36;ひだ、17a,27a,37a;上端接合部、17b,27b,37b;下端接合部、37c;他の接合部、X;加熱治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひだが形成され、互いに隣りあっているひだの内面の上端部及び下端部が接合された筒状の菊花型エレメントであって、
(A)濾紙と、前記ひだの内面側となる該濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に形成された低融点繊維層と、を備える濾材からなるエレメント本体と、
(B)前記ひだの内面の上端部及び下端部に形成されており、且つ前記低融点繊維層が加熱溶着されて形成された接合部と、を備えており、
前記低融点繊維層は、前記濾紙を形成する濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって形成されていることを特徴とする菊花型エレメント。
【請求項2】
前記低融点繊維層が、前記ひだの内面側となる濾紙の表面の全面に形成されている請求項1に記載の菊花型エレメント。
【請求項3】
前記低融点繊維層を形成する繊維の繊維径が0.1〜10μmである請求項1又は2に記載の菊花型エレメント。
【請求項4】
前記低融点繊維層の厚みが、前記濾紙の厚みの20〜50%である請求項1乃至3のいずれかに記載の菊花型エレメント。
【請求項5】
前記濾紙を形成する濾紙材料が、セルロース繊維及びポリエチレンテレフタレート繊維のうちの少なくとも一方であり、且つ前記低融点繊維層を形成する繊維が、ポリプロピレン繊維及びポリプロピレン繊維を含有する複合繊維のうちの少なくとも一方である請求項1乃至4のいずれかに記載の菊花型エレメント。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の菊花型エレメントの製造方法であって、
濾紙の表面のうちの少なくとも上端部及び下端部に、該濾紙を形成している濾紙材料よりも融点の低い繊維、及び/又は該濾紙材料よりも融点の低い繊維を含有する複合繊維によって低融点繊維層を形成する工程と、
前記低融点繊維層が形成された面がひだの内面となるように、該低融点繊維層が形成された濾紙を筒状の菊花型となるように折り曲げ、該ひだの上端部及び下端部を加熱して、前記低融点繊維層同士を加熱溶着することにより、前記ひだの上端部及び下端部を接合する工程と、を備えることを特徴とする菊花型エレメントの製造方法。
【請求項7】
前記低融点繊維層を形成する工程において、メルトブロウ法又はスパンボンド法により、該低融点繊維層を前記濾紙の表面に形成する請求項6に記載の菊花型エレメントの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の菊花型エレメントと、該菊花型エレメント上面及び下面に形成されたシール部と、を備えることを特徴とする濾過体。
【請求項9】
請求項8に記載の濾過体と、該濾過体を収納する収納体と、該収納体に設けられ且つ該濾過体を上下方向から支持する上方支持部及び下方支持部と、を備えており、
前記濾過体におけるシール部が、該濾過体における菊花型エレメントの軸方向の両端面と、前記上方支持部及び前記下方支持部との間をシールしていることを特徴とする流体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−161843(P2008−161843A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356802(P2006−356802)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】