説明

菌体培養方法

【課題】スケールアップの際、KLa(酸素移動容量係数)を実際に求めることを必要とせず、しかも、高度不飽和脂肪酸又は高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含んでなる化合物の良好な生産性を確保し得る培養方法を提供する。
【解決手段】攪拌動力と最大通気量とが調整制御可能な通気攪拌型培養装置を使用して、培養開始から所定時間までの間は、単位液量あたりの攪拌動力を269(W/m3)以下とする機械的攪拌を行い、所定時間経過以降に、P;攪拌所要動力(W)、V;液量(m3)、Vs;通気線速度(m/sec)としたときのKLA(=(P/V)0.95 Vs0.67)が59以上および通気線速度パラメータVs0.67[(m/sec)0.67]が0.075以上および攪拌所要動力パラメータ(P/V)0.95[(W/m30.95]が203以上を満たすような範囲まで最大通気量および最大所要攪拌動力を高める、菌体培養方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも炭素源及び窒素源を含む培地中で、通気攪拌型培養装置を用いて高度不飽和脂肪酸又は高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含んでなる化合物の少なくともいずれか一方を産生することができる微生物を培養する、菌体培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
好気培養においては、酸素の供給が培養の結果(例えば高度不飽和脂肪酸(以下「PUFA(poly unsaturated fatty acid)」と記す)の生産性等)を左右することが多く、スケールアップを考える場合には、通気量や攪拌速度、通気攪拌所要動力といったファクターとともにKLa(酸素移動容量係数)が指標として重要視されている。
【0003】
スケールアップを考える際にKLaを指標とするのは、培養槽の形式や規模が異なっても酸素移動速度を等しくすれば、同一の培養成績を得られるという考え方によるものである(例えば、非特許文献1及び2を参照)。
【0004】
KLa測定の方法としては、種々の方法が提案されているが、その操作が煩雑であることから、より簡便にKLaを推定する方法として、CooperらはKLaについて、KLa=K(P/V)0.95(Vs)0.67〔K;比例定数、P;攪拌所要動力(W)、V;液量(m3)、Vs;通気線速度(m/sec)〕という近似式を提唱している(非特許文献3を参照)。
【0005】
【非特許文献1】村上聖ら、化学工学論文集 26(4):557-562(2000)
【非特許文献2】A.E.Humphery,発酵工学会誌,42:334-345(1964)
【非特許文献3】C.M.Cooper et al.,Ind.Chem.Eng.36:504-509(1944)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Cooperらが提唱した上記近似式により、KLaを予測することができるが、彼らは、12枚羽根のVaned disk型の翼を使用してKLaと操作条件との相関を求めているので、厳密にはそのような型とは異なる培養槽にこの相関を用いることは出来ない。
【0007】
また、Cooperらの実験は、水で行われているため、細菌や酵母等のレオロジーの低いものの培養に関してはその有用性は評価されているが、糸状菌や放線菌のようにレオロジーの高いものの場合には、実際の培養液とは大きな違いがあると考えられている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、スケールアップの際、KLa(酸素移動容量係数)を実際に求めることを必要とせず、しかも、PUFA又はPUFAを構成成分として含む化合物の良好な生産性を確保し得る培養方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、少なくとも炭素源及び窒素源を含む培地中で、通気攪拌型培養装置を用いて高度不飽和脂肪酸又は高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含んでなる化合物の少なくともいずれか一方を産生することができる微生物を培養する方法であって、前記通気攪拌型培養装置は攪拌動力と最大通気量とが調整制御可能であり、培養開始時から所定時間までの間は、単位液量あたりの攪拌動力を269(W/m3)以下とする機械的攪拌を行い、所定時間経過以降に、P;攪拌所要動力(W)、V;液量(m3)、Vs;通気線速度(m/sec)としたときのKLA(=(P/V)0.95 Vs0.67)が59以上および通気線速度パラメータVs0.67[(m/sec)0.67]が0.075以上および攪拌所要動力パラメータ(P/V)0.95[(W/m30.95]が203以上を満たすような範囲まで最大通気量および最大所要攪拌動力を高める点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
少なくとも炭素源及び窒素源を含む培地であれば培養可能であり、機械的攪拌を行うため常に均質なものを調製することが可能であり、その結果、菌体の増殖や生産性においての再現性を確保することも可能となる。
【0011】
また、通気攪拌型培養槽にて培養を行うため、PUFA又はPUFAを構成成分として含む化合物の少なくともいずれか一方(以下「PUFA類」と記す)を産生する好気性の微生物を効率良く培養することができる。
【0012】
さらに、前記通気攪拌型培養槽は、攪拌動力と最大通気量とが調整制御可能であるため、例えば、培養液中の溶存酸素濃度を、PUFA類の産生に適する範囲に随時調節することができる。
【0013】
また、培養開始時から所定時間までは、単位液量あたりの攪拌動力を269(W/m3)以下とする攪拌せん断力の小さい機械的攪拌を行うことにより、放線菌や糸状菌の菌糸及びペレット状菌体が受ける物理的損傷を抑えることが可能となり、その結果、それらの菌体をPUFA類の生産に適した形態で培養することができる。
そして、所定時間経過後は、KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67)を59以上、なおかつ通気線速度パラメータVs0.67[(m/sec)0.67]が0.075以上および攪拌所要動力パラメータ(P/V)0.95[(W/m30.95]が203以上を満たすような範囲まで最大通気量および最大所要攪拌動力を高めることによって、さらに効率良くPUFA類生産菌の培養が行われて、PUFA類の生産性の向上を促すことができる〔P;攪拌所要動力(W)、V;液量(m3)、Vs;通気線速度(m/sec)〕。
【0014】
さらに、スケールアップの際は、上記の数値を基に、最大通気量と最大所要攪拌動力の設定を行えば、最小限の通気量や攪拌動力で生産性の高い培養を行うことが可能となり、ランニングコストの低減にもつながるため、生産効率の非常に高いスケールアップを実現することも可能となる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記高度不飽和脂肪酸がアラキドン酸であるという点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
アラキドン酸は、血液や肝臓などの重要な器官を構成する脂肪酸の約10%程度を占めており(例えば、ヒト血液のリン脂質中の脂肪酸組成比では、アラキドン酸は11%、EPAは1%、DHAは3%)、細胞膜の主要構成成分として膜の流動性の調節に関与し、体内の代謝で様々な機能を示す一方、プロスタグランジン類の直接の前駆体として重要な役割を果たす。
【0017】
特に最近は、乳幼児栄養としてのアラキドン酸の役割、神経活性作用を示す内因性カンナビノイド(2-アラキドノイルモノグリセロール、アナンダミド)の構成脂肪酸として注目されている。
【0018】
通常はリノール酸に富む食品を摂取すればアラキドン酸に変換されるが、成人病患者やその予備軍、乳児、老人では生合成に関与する酵素の働きが低下し、これらアラキドン酸は不足しがちとなるため、油脂(トリグリセリドの構成脂肪酸)として、直接に摂取することが望まれる。
従って、本発明によれば、このように特に乳幼児栄養として重要な役割を果たすアラキドン酸又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする油脂等の化合物の少なくともいずれか一方を効率良く安定生産することが可能なので、これらを配合して成る飲食物、治療用栄養食品、飼料及び医薬品等の製造販売を通して、公衆の健康維持・増進に寄与し得る。
本発明の第3特徴構成は、PUFA類生産菌が、モルティエレラ(Mortierella)属モルティエレラ(Mortierella)亜属であるという点にある。
【0019】
〔作用及び効果〕
PUFA類生産菌をモルティエレラ(Mortierella)属モルティエレラ(Mortierella)亜属とすることで、PUFA類をより効率良く生産することができるようになり、しかもこれらの菌体は容易に入手可能である。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、培養開始後の所定時間が好ましくは12〜24時間であるという点にある。
【0021】
〔作用及び効果〕
単位液量あたりの攪拌動力を269(W/m3)以下とする攪拌せん断力の小さい機械的攪拌を培養開始後12〜24時間とすることで、この間、培養中パルプ状菌糸からペレット状菌体へ形態変化を起こすような菌体において、その形態変化を効率的に行わせることにより、その後の培養液の粘度の極端な上昇が抑えられ、PUFA類をより効率良く生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔実施形態〕
本発明において使用される、PUFAあるいはPUFAを構成脂肪酸として成る化合物(例えば、油脂(トリグリセリド)及び/又はリン脂質)の少なくともいずれか一方の生産能を有する微生物としては、例えば、モルティエレラ(Mortierella)属、コニディオボラス(Conidiobolus)属、フィチウム(Pythium)属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ペニシリウム(Penicillium)属、クロドスポリウム(Cladosporium)属、ムコール(Mucor)属、フザリウム(Fusarium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、エントモフトラ(Entomophthora)属、エキノスポランジウム(Echinosporangium)属、サプロレグニア(Saprolegnia)属に属する微生物を挙げることができる。
【0023】
特に、モルティエレラ(Mortierella)属モルティエレラ(Mortierella)亜属に属する微生物では、例えばモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)等を挙げることができる。具体的にはモルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・フィグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、ATCC32221、ATCC42430、CBS219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68等の菌株を挙げることができる。
【0024】
これらの菌株はいずれも、大阪市の財団法人醗酵研究所(IFO)、及び米国のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection, ATCC)及び、Centrralbureau voor Schimmelcultures(CBS)からなんら制限無く入手することができる。また、本発明の研究グループが土壌から分離した菌株モルティエレラ・エロンガタSAM0219(微工研菌寄第8703号)(微工研条寄第1239号)、モルティエレラ・アルピナ1S−4を使用することもできる。
【0025】
本発明に使用される菌株を培養する為には、その菌株の胞子、菌糸、又は予め培養して得られた種培養液あるいは種培養より回収した菌体を、液体培地に接種し本培養する。液体培地の場合に、炭素源としては、グルコース、フラクトース、キシロース、サッカロース、マルトース、可溶性デンプン、糖蜜、グリセロール、マンニトール、糖化澱粉等の一般的に使用されているものが、いずれも使用できるが、これらに限られるものではない。
窒素源としてはペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、カザミノ酸、コーンスティープリカー、大豆タンパク、脱脂ダイズ、綿実カス等の天然窒素源の他に、尿素などの有機窒素源、ならびに硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機窒素源を用いることができるが、特に大豆から得られる窒素源、具体的には大豆、脱脂大豆、大豆フレーク、食用大豆タンパク、おから、豆乳、きな粉などが挙げられるが、特に脱脂大豆に熱変性を施したもの、より好ましくは脱脂大豆を約70〜90℃で熱処理し、さらにエタノール可溶成分を除去したものを単独又は複数で、あるいは前記窒素源と組み合わせて使用することができる。
【0026】
この他、必要に応じて、リン酸イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン以外に、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ニッケル、コバルト等の金属イオンやビタミン等を微量栄養源として使用できる。これらの培地成分は微生物の生育を害しない濃度であれば特に制限はない。実用上、一般に炭素源の総添加量は0.1〜40重量%、好ましくは1〜25重量%、窒素源の総添加量は2〜15重量%、好ましくは2〜10重量%とするのが望ましく、より好ましくは初発の炭素源添加量を1〜5重量%、初発の窒素源濃度を3〜8重量%として、培養途中に炭素源及び窒素源を、さらにより好ましくは炭素源のみを流加して培養する。
【0027】
なお、不飽和脂肪酸の収率を増加せしめるために、不飽和脂肪酸の前駆体として、例えば、ヘキサデカン若しくはオクタデカンのごとき炭化水素;オレイン酸若しくはリノール酸のごとき脂肪酸又はその塩、あるいは脂肪酸エステル、例えばエチルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル;又はオリーブ油、大豆油、なたね油、綿実油若しくはヤシ油のごとき油脂類を単独で、又は組み合わせて使用できる。基質の添加量は培地に対して0.001〜10%、好ましくは0.5〜10%である。またこれらの基質を唯一の炭素源として培養してもよい。
【0028】
本発明における微生物の培養温度は使用する微生物により異なるが、5〜40℃、好ましくは20〜30℃とし、また20〜30℃にて培養して菌体を増殖せしめた後5〜20℃にて培養を続けて不飽和脂肪酸を生産せしめることもできる。このような温度管理によっても、生成脂肪酸中の高度不飽和脂肪酸の割合を上昇せしめることができる。
【0029】
種培養では通気攪拌培養、振盪培養、固体培養、又は静置液体培養を、本培養では通気攪拌培養を行う。本培養開始時(種培養液接種時)の培地pHは5〜7、好ましくは5.5〜6.5に調整する。本培養期間は、通常2〜30日間、好ましくは5〜20日間、より好ましくは5〜15日間行う。
【0030】
本培養方法としては、攪拌動力と最大通気量とが調整制御可能な通気攪拌型培養装置を使用して行い、攪拌翼直径(=d)、培養槽直径(=D)の比率が、d/D=0.30〜0.6、好ましくはd/D=0.34〜0.55、より好ましくはd/D=0.37〜0.55、最も好ましくはd/D=0.42〜0.55の攪拌翼を備えた培養槽を用いて培養を行う。
【0031】
モルティエレラ属モルティエレラ亜属に属する微生物は、アラキドン酸を主たる構成脂肪酸として成る油脂(トリグリセリド)を産生しうる微生物として知られているが、本発明者らは、上記菌株に変異処理を施すことによって、ジホモ−γ−リノレン酸を主たる構成脂肪酸としてなる油脂(トリグリセリド)を産生しうる微生物(特開平 5−91887)や、ω9系高度不飽和脂肪酸を主たる構成脂肪酸としてなる油脂(トリグリセリド)を産生しうる微生物を(特開平 5−91888)得ている。さらに、高濃度の炭素源に耐性を有する微生物(WO98/39468)も得ており、これら微生物は、モルティエレラ属モルティエレラ亜属の微生物であり、本発明の培養法で培養することによって、生産性を向上することができる。
【0032】
上記の菌体、培地、培養装置を使用して行われる本培養の培養プロセスの概略を説明する。
【0033】
まず、培養開始時は、単位液量あたりの攪拌動力を269(W/m3)以下とする比較的弱い機械的攪拌と通気をしながら培養を行う。
【0034】
また、このときの通気量については特になんら制限はない。放線菌や糸状菌を好気的な条件下で液体培養すると、栄養増殖期から生産期へ移行する時期にパルプ状菌糸からペレット状菌体(別名、球状菌糸)へ形態変化する場合がある。
【0035】
ここで、ペレット状菌体とは、液体培地で培養したときの放線菌や糸状菌の菌形態の一つであり、平均直径0.2〜数ミリの球状または紡錘状の菌糸集合体を示している。
【0036】
また、パルプ状菌糸とは、液体培地で培養したときの放線菌や糸状菌の典型的な菌形態であり、直線又は放射状に伸びた菌糸が分散した状態を示している。つまり、そのようなパルプ状菌糸からペレット状菌体への形態変化は、PUFA類の生産性と密接に関わっている。
【0037】
攪拌せん断力の大きな機械的攪拌を行って、ペレット状の菌形態が崩れたり、ペレット状のへの形態形成が妨げられると、菌体の増殖に伴って培養液の粘度が上昇し、混合効率が下がり、その結果、酸素等が菌体に十分に供給され難くなるため、PUFA類の生産性が低下するものと考えられている。
【0038】
そこで従来はペレット状への形態形成を促進するために、最適な培地組成を検討したり、あるいは通気ガス中の酸素分圧を調整したりしていたが、本発明では、培養開始から所定時間の間は、攪拌せん断力の小さい攪拌を行うことにより、菌体のペレット状への形態形成を促進させている。
【0039】
通気攪拌型装置には、溶存酸素濃度検出センサーが取り付けられており、培養液中の溶存酸素濃度がモニターされる。
【0040】
菌体の増殖と共に培地中の溶存酸素濃度(DO)が低下し始めるが、PUFA類の生産性に影響を及ぼさない下限DO値(およそ50%)に達する直前に攪拌動力と通気量を上げてDO値を維持するように調整する。
【0041】
この下限DO値に達する時間が、培養開始からおよそ12〜24時間後である。その後は、KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67)が59以上および通気線速度パラメータVs0.67[(m/sec)0.67]が0.075以上および攪拌所要動力パラメータ(P/V)0.95[(W/m30.95]が203以上を満たすような範囲まで最大通気量および最大所要攪拌動力を高めて培養を行う。
【0042】
ここでKLA値とは、本発明者らが、CooperらのKLa(酸素移動容量係数)=K(P/V)0.95(Vs)0.67という近似式をもとに、新たに設定したパラメータであり、本発明者らによって、このKLA値とPUFA類の生産量との間に良好な正の相関があることが初めて見出されたものである。
【0043】
培養開始後、およそ40〜48時間後に、培地栄養分の消尽(特に窒素源)と共に菌体濃度が最高値に達し、栄養増殖期からPUFA類の生産期に移行して、PUFA類の菌体内の蓄積が促進される。
【0044】
次いで、培養途中で随時グルコースの培地流加をしながら、およそ5〜15日間の培養を行う。培養終了後は、菌体を回収して乾燥させ、乾燥菌体についてヘキサン抽出等を行いPUFA又はPUFAを構成脂肪酸として含む化合物(例えば、トリグリセリドやリン脂質など)の少なくともいずれか一方を得る。
【実施例】
【0045】
実施例1(攪拌所要動力の測定)
10kL容の通気攪拌培養層に、水道水を6kL(=V)張り込み、通気1vvm条件のもと、様々な攪拌回転数で運転した場合の攪拌消費電力を測定した(=A)。次いで、同培養槽、同回転数で空運転を行なって攪拌所要電力を測定した(=B)。空運転の際は、攪拌軸の過熱を防止するため、攪拌翼よりも下の水位でかつ攪拌軸下部軸受け部分が水に浸るように水を張りこんで運転した。
【0046】
電力測定は、インバータの一次側(電源側)に電力計(日置電機(株)製、クランプオン電力計)を設置して、有効電力を測定した。
【0047】
A値よりB値を差引いた値を攪拌所要動力(=P)とし、P値を液量で除した値を液量あたり所要攪拌動力((=P/V)として求めた。求められた実測値を下表に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実測値を、横軸に攪拌回転数(=N)、縦軸に液量あたり攪拌所要動力(=P/V)のグラフ上にプロットし、近似式P/V=XNYのパラメータXおよびYを最小二乗法で求めた。求められたX値、Y値および近似式を用いて、任意の攪拌回転数における単位液量あたり攪拌所要動力を求めた。
【0050】
培養槽への通気を停止することによって、攪拌所要動力の増加が認められたが、上述と同様の方法によって無通気時のX値およびY値を求め、任意の攪拌回転数における、液量あたり攪拌所要動力を求めた。
【0051】
実施例2(培養液の攪拌所要動力)
アラキドン酸生産菌モルティエレラ・アルピナ1S−4株(Mortierella alpina 1S−4株)を10kLの培養槽で培養した。培養液量6kL、通気1vvm条件のもと、様々な攪拌回転数で運転した場合の攪拌消費電力を測定した。その結果を下表に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例1および実施例2で得られた攪拌動力の比較より、水張運転時(実施例1)と培養液張込時(実施例2)では攪拌動力に大きな差は無いことが確認された。このことより、培養中における攪拌所要動力は、同培養槽において水張運転で求めた攪拌所要動力でほぼ近似できると考えられた。
【0054】
実施例3
M. alpina 1S−4株の胞子懸濁液を、酵母エキス1.0%、グルコース2.0%、pH6.3の培地に0.1vol.%接種し、往復振盪100rpm、温度28℃の条件にて種培養(第一段階)を開始し、3日間培養した。
【0055】
次に、酵母エキス1%、グルコース2%、大豆油0.1%、pH6.3の培地30Lを50L容通気攪拌培養槽に調製し、これに種培養(第一段階)液を接種して、攪拌回転数200rpm、温度28℃、槽内圧150kPaの条件にて、種培養(第二段階)を開始し、2日間培養した。
【0056】
次に、10kL容の通気攪拌槽(培養槽内直径1.8m)に本培養の培地を調製した。培地調製法としては、まず4500Lの培地(培地A:大豆粉336kg、KH2PO4 16.8kg、MgCl2・6H2O 2.8kg、CaCl2・2H2O 2.8kg、大豆油 5.6kg)をpHを4.5に調製して、121℃、20分の条件で本培養槽内で滅菌した。別培地として、1000Lの培地(培地B:含水グルコース112kg)を121℃、20分の条件で別の培養槽で滅菌した後、無菌的に本培養槽へ移送して先の培地Aに添加した(添加後の培地を培地Cとする)。培地Cに滅菌した水酸化ナトリウム水溶液を無菌的に添加してpH6.1に調整した後、容量28Lの種培養液(第二段階)を無菌操作によって接種し、計5600Lの初発培養液量(培養槽容積10kL)に合わせた。温度26℃、内圧200kPa、通気量49m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.00535m/sec)、培養液量あたり所要攪拌動力攪拌動力(=P/V)112W/m3で培養を開始した。培養開始時の各パラメータの値は次のように求められた。
【0057】
〔数1〕
(P/V)0.95:89 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.03 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):2.67 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0058】
培養15時間目に攪拌動力(=P/V)を880W/m3に変更した後、培養40時間目までの間に、徐々に通気量および攪拌回転数を上げていき、通気量を437m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.0477m/sec)まで、攪拌動力(=P/V)を3250W/m3まで高めた。通気攪拌を高めた状態での各パラメータの値は次のように求められた。
【0059】
〔数2〕
(P/V)0.95:2169 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.130 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):282 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0060】
培養途中で以下に示すように培地流加を行ない、306時間の本培養を行なった。培養終了時は、培地流加による増加分と蒸発による減少分の影響で、7750Lの培養液量となった。
【0061】
【表3】

【0062】
培養終了後、120℃、20分の条件で殺菌した後、連続式脱水機で湿菌体を回収し、振動流動層乾燥機で熱風乾燥(熱風温度120℃)によって水分含量2wt%まで乾燥した。乾燥した菌体を流動層で、室温空気の供給によって、40℃まで冷却した後、空気輸送機を用いて充填場所に乾燥菌体を輸送した。得られた乾燥菌体を、容積約1m3のアルミパウチ製コンテナバッグに窒素ガスとともに充填し、バッグ口部をヒートシールシールした後、10℃以下の冷蔵室で保管した。
【0063】
コンテナバッグより取り出した乾燥菌体に、ヘキサン抽出を施し、ヘキサン溶液を濾過して含有固形分を除去した後、減圧下で加熱することによってヘキサンを除去し、アラキドン酸を構成脂肪酸として成る粗油を得た。
【0064】
実施例4(培養開始時攪拌所要動力の影響)
実施例3と同様の方法で種培養を行ない、本培養の培地調製を行なった。培養開始時の攪拌条件を下表に示すような様々な条件に設定する他は、実施例3と同条件で本培養を行なった。
【0065】
培養結果より、培養開始時のP/V値は、アラキドン酸生産に大きな影響を及ぼすことが見出された。
【0066】
【表4】

【0067】
〔数3〕
アラキドン酸生成量(補正値)
=培養終了時の培養液当りアラキドン酸生成量×培養終了時液量/培養開始時液量
【0068】
実施例5(培養開始時通気量の影響)
実施例3と同様の方法で種培養を行ない、本培養の培地調製を行なった。培養開始時の通気条件を下表に示すような様々な条件に設定する他は、実施例3と同条件で本培養を行なった。実験No.5−1およびEx.5−2の何れにおいても、培養開始時より高い通気量を設定したために、Ex.3に比べてきわめて高い起泡性が培養開始時から培養20時間目までの間認められた。そこで、泡立ちを押さえるために、間欠的に通気を停止する方法を採用した。
【0069】
通気を行なうと、泡立ちが起こり、泡高さが上昇を始める。泡高さが槽内天井付近(排気ライン近く)まで上昇したら直ちに、液中通気を停止した。通気を停止すると、泡高さは下降をしはじめるが、培養液中の溶存酸素濃度(DO)も同時に低下し始める。アラキドン酸生産性に影響を及ぼさない下限DO値まで達する直前に、再度通気を開始する。同様の操作を起泡性が収まるまで繰り返した。本実施例における通気線速度Vsとは、通気している状態における通気線速度であり、間欠通気法を考慮しての通気量積算平均値ではない。また、アラキドン酸生産性に影響を及ぼさない下限DO値は、通気停止によって起こるDOの減少が時間の経過に対して直線関係を失なうDO濃度(臨界DO濃度)であり、臨界DO濃度は、予め同等の条件で培養して動的測定法(「発酵工学の基礎(1988)、学会出版センター、石崎文彬訳」)によって求めておいた。
【0070】
培養結果より、培養開始時のVs値は、アラキドン酸生産にほとんど影響を及ぼさないことが確認された。
【0071】
【表5】

【0072】
〔数4〕
アラキドン酸生成量(補正値)
=培養終了時の培養液当りアラキドン酸生成量×培養終了時液量/培養開始時液量
【0073】
実施例6(最高KLA値の影響)
実施例3と同様に種培養を行ない、本培養の培地調製を行なった。実施例3と同様に、温度26℃、内圧200kPa、通気量49m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.00535m/sec)、培養液量あたり所要攪拌動力攪拌動力(=P/V)112W/m3で培養を開始した。培養開始時の各パラメータの値は次のように求められた。
【0074】
〔数5〕
(P/V)0.95:89 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.03 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):2.67 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0075】
培養18時間目に攪拌所要動力(=P/V)を380W/m3に変更した後、培養48時間目までの間に、徐々に通気量および攪拌回転数を上げていき、様々な最大通気量および最大攪拌動力条件のもとで培養を行なった。各培養で得られたアラキドン酸生成量と、培養中における最大KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67)値の関係をプロットしたところ、図1が得られ、KLA値とアラキドン酸生成量の間に良好な正の相関関係があることを見出した。また図1において、KLA値を100以上に上げても、アラキドン酸生成量が15〜16g/L程度しか得られない場合(例えば、図1中にAで示す範囲内のプロットの場合)もあり、KLAとアラキドン酸生成量の相関からずれる場合もあることも見出された。この原因について考察するため、KLA値を構成する2つのパラメータである(P/V)0.95値とVs0.67値の相関関係についてプロットした(図2)。ここで、図2中にA´で示す範囲内のプロットは、図1中にAで示す範囲内のプロットに対応している。その結果、KLA値が高くても、Vs0.67値が0.075以上を満たしていないと、KLA値を高めたことによるアラキドン酸生成量増大効果が得られないことが分かった。
【0076】
実施例7
実施例3と同様に種培養を行なった。実施例3と同じ濃度組成の本培養培地1300Lを2kL容培養槽に調製し、温度26℃、内圧200kPa、通気線速度0.0087(m/sec)、培養液量あたり所要攪拌動力攪拌動力(=P/V)264W/m3で培養を開始した。培養開始時の各パラメータの値は次のように求められた。
【0077】
〔数6〕
(P/V)0.95:199 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.042 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):8.28 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0078】
培養24時間目に攪拌所要動力(=P/V)を890W/m3に変更した後、培養48時間目までの間に、徐々に通気量および攪拌回転数を上げていき、通気線速度Vsを0.084(m/sec)まで、攪拌動力P/Vを1493W/m3まで高めた。通気攪拌を高めた状態での各パラメータの値は次のように求められた。
【0079】
〔数7〕
(P/V)0.95:1036 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.191 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):198 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0080】
培養途中で、実施例3と同組成濃度のグルコース添加を行ない、306時間の本培養を行なった。その結果、20.0g/Lのアラキドン酸生成量(補正値として)が得られた。
【0081】
実施例8
アラキドン酸生産菌としてMortierella alpina CBS754.68株を用いた。保存菌株から実施例3と同様の方法で種培養を行ない、本培養の培地調製を行なった。温度26℃、内圧200kPa、通気量49m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.00535m/sec)、培養液量あたり所要攪拌動力攪拌動力(=P/V)112W/m3で培養を開始した。培養開始時の各パラメータの値は次のように求められた。
【0082】
〔数8〕
(P/V)0.95:89 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.03 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):2.67 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0083】
この条件で培養を開始し、最初の攪拌回転数変更時間を様々な時間にずらして複数回の培養(実験No. Ex.6−1〜6−4)を行なった。最初の攪拌回転数変更時には、攪拌動力(=P/V)を380W/m3へと変更し、その後、培養48時間目までの間に、徐々に通気量および攪拌回転数を上げていき、最大通気量を437m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.0477m/sec)まで、最大攪拌動力(=P/V)を3250W/m3まで高めた。通気攪拌を高めた状態での各パラメータの値は次のように求められた。
【0084】
〔数9〕
(P/V)0.95:2169 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.130 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):282 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0085】
培養途中で実施例3と同様にグルコース添加を行ない、288時間の本培養を行なった。
【0086】
培養結果より、培養開始後の最初の攪拌動力変更時間は、アラキドン酸生産に大きな影響を及ぼすことが見出された。
【0087】
【表6】

【0088】
〔数10〕
アラキドン酸生成量(補正値)
=培養終了時の培養液当りアラキドン酸生成量×培養終了時液量/培養開始時液量
【0089】
実施例9(DGLA生産)
ジホモ-γ-リノレン酸生産菌としてMortierella alpina SAM1860株を用いた。保存菌株を、フラスコに調製した酵母エキス1%、グルコース2%、pH6.3の培地に接種して、100rpm、28℃の条件にて、種培養(第一段階)を3日間行なった。次に、酵母エキス1%、グルコース2%、大豆油0.1%、pH6.3の培地30Lを50L容通気攪拌培養槽に調製し、これに先の種培養(第一段階)の培養液を接種して、攪拌回転数200rpm、温度28℃、槽内圧150kPaの条件にて種培養(第二段階)を2日間行なった。
【0090】
次に、脱脂大豆粉4%、グルコース1.8%、KH2PO4 0.3%、Na2SO4 0.1%、MgCl2・6H2O 0.05%、CaCl2・2H2O 0.05%、大豆油 0.1%、pH6.1の培地に種培養液(第二段階)0.5%を接種し、液量4000Lで本培養を開始した。
【0091】
温度26℃、内圧200kPa、通気量52m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.0057m/sec)、培養液量あたり所要攪拌動力攪拌動力(=P/V)30W/m3で培養を開始した。培養開始時の各パラメータの値は次のように求められた。
【0092】
〔数11〕
(P/V)0.95:25 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.0313 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):0.782 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0093】
この条件で培養を開始し、培養開始後19時間目に、攪拌動力を変更した後、培養48時間目までの間に、さらに徐々に通気量および攪拌回転数を上げていき、最大通気量を240m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.0262m/sec)まで、最大攪拌動力(=P/V)を1251W/m3まで高めた。通気攪拌を高めた状態での各パラメータの値は次のように求められた。
【0094】
〔数12〕
(P/V)0.95:875.9 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.0871 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):76.3 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0095】
培養途中にグルコース添加を行ないながら160時間の本培養を行なった。培養終了時のジホモγリノレン酸生成濃度は7.0g/Lであった。
【0096】
実施例10(ミード酸生産)
ミード酸生産菌としてMortierella alpina SAM2086株を用いた。保存菌株を、フラスコに調製した酵母エキス1%、グルコース2%、pH6.3の培地に接種して、100rpm、28℃の条件にて、種培養(第一段階)を3日間行なった。次に、酵母エキス1%、グルコース2%、オリブ油0.1%、pH6.3の培地30Lを50L容通気攪拌培養槽に調製し、これに先の種培養(第一段階)の培養液を接種して、攪拌回転数200rpm、温度28℃、槽内圧150kPaの条件にて種培養(第二段階)を2日間行なった。
【0097】
次に、脱脂大豆粉4%、グルコース1.8%、KH2PO4 0.3%、Na2SO4 0.1%、MgCl2・6H2O 0.05%、CaCl2・2H2O 0.05%、オリブ油 0.1%、pH6.1の培地に種培養液(第二段階)0.5%を接種し、液量4000Lで本培養を開始した。
【0098】
温度24℃、内圧200kPa、通気量52m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.0057m/sec)、培養液量あたり所要攪拌動力攪拌動力(=P/V)30W/m3で培養を開始した。培養開始時の各パラメータの値は次のように求められた。
【0099】
〔数13〕
(P/V)0.95:25 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.0313 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):0.782 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0100】
この条件で培養を開始し、培養開始後22時間目に、攪拌動力を変更した後、培養48時間目までの間に、さらに徐々に通気量および攪拌回転数を上げていき、最大通気量を240m3/hr(通気線速度(=Vs)として0.0262m/sec)まで、最大攪拌動力(=P/V)を1098W/m3まで高めた。通気攪拌を高めた状態での各パラメータの値は次のように求められた。
【0101】
〔数14〕
(P/V)0.95:773.8 [(W/m3)0.95]
Vs0.67:0.0871 [(m/sec)0.67]
KLA(=(P/V)0.95 Vs0.67):67.4 [(W/m3)0.95・(m/sec)0.67]
【0102】
培養途中にグルコース添加を行ないながら376時間の本培養を行なった。培養終了時のミード酸生成濃度は6.0g/Lであった。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】各培養で得られたアラキドン酸生成量とKLA値との関係をプロットした図
【図2】KLA値を構成する2つのパラメータである(P/V)0.95値とVs0.67値の相関関係についてプロットした図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭素源及び窒素源を含む培地中で、通気攪拌型培養装置を用いて高度不飽和脂肪酸又は高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含んでなる化合物の少なくともいずれか一方を産生することができる微生物を培養する方法であって、前記通気攪拌型培養装置は攪拌動力と最大通気量とが調整制御可能であり、培養開始時から所定時間までの間は、単位液量あたりの攪拌動力を269(W/m3)以下とする機械的攪拌を行い、所定時間経過以降に、P;攪拌所要動力(W)、V;液量(m3)、Vs;通気線速度(m/sec)としたときのKLA(=(P/V)0.95 Vs0.67)が59以上および通気線速度パラメータVs0.67[(m/sec)0.67]が0.075以上および攪拌所要動力パラメータ(P/V)0.95[(W/m30.95]が203以上を満たすような範囲まで最大通気量および最大所要攪拌動力を高める、菌体培養方法。
【請求項2】
前記高度不飽和脂肪酸がアラキドン酸である、請求項1に記載の菌体培養方法。
【請求項3】
前記微生物が、モルティエレラ(Mortierella)属モルティエレラ(Mortierella)亜属である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の菌体培養方法。
【請求項4】
前記所定時間が、好ましくは12〜24時間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の菌体培養方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−67964(P2006−67964A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258151(P2004−258151)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】