説明

落下式による春雨の製造方法

【課題】落下式製法にて春雨を製造する際、冷凍工程を行わずとも麺の引っ付きが無くなり、落下式製法の利点を備えながら、冷凍工程の省略による製造コストの低減を図る春雨の製造方法を提供する。
【解決手段】加水混練した澱粉スラリーをダイスの孔から沸騰している熱湯中に線状に落下させて糊化させてから冷水で冷却後、冷凍せずに、pH2〜pH7の有機酸溶液に1〜120分間浸漬させた後に乾燥させる落下式による春雨の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、春雨の製造方法に関し、更に詳しくは落下式による春雨の製造工程中において冷凍工程を行わずに乾燥をしても麺線同士が引っ付かずに製造可能となる春雨の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、澱粉を主原料とした澱粉麺として、春雨がよく知られており、製造方法としては澱粉に加水して練った澱粉スラリーをダイスの孔から沸騰した熱湯中に線状に落下させて糊化させ、水にて冷却した後、冷凍し、解凍して乾燥させる方式(以下、単に落下式製法という)と、原料と水を混合した懸濁液を薄膜に展開してシート状にして固め、麺状に裁断、乾燥して仕上げる製法(以下、単にシート式製法という)がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−238624号公報(段落0002、0003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、麺径を小さくした場合、前記したシート式製法は、細い麺を得る前提として作成するシート厚みを薄くしなければならず、あまりシート厚みが薄いとシートや切断後の麺の剥離性に問題が生じると共に、原料をシート状に固めてから麺状に細く裁断するという時間的、工程的な手間がかかり、コスト高になる懸念があると共に、裁断間隔によって麺の太さが決まるので細い麺の場合は特に裁断刃の作動に高度な精度が要求されることになる。
【0004】
これに対して、落下式製法であれば、ダイスの孔の大きさ及び落下距離にて得られる麺の太さがほぼ決まり、また裁断工程が必要なく短時間で大量の春雨が低コストで得られるという利点がある。
【0005】
しかしながら、落下式製法の場合、澱粉に加水混練した澱粉スラリーをダイスの孔から熱湯中に線状に落下させ糊化し水にて冷却した後、半日以上の間冷凍させ、それを解凍し乾燥させて春雨を製造している。
【0006】
この麺の冷凍工程は電気代のコストが非常に高く、冷凍時間も半日以上に及ぶなど長い時間がかかっている。
【0007】
ここで冷凍工程を省略してしまうと、麺から澱粉質が溶けだし、麺同士が引っ付き乾燥後に捌けないという問題がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、春雨の製造方法において、落下式製法の利点を備えながら、冷凍工程を省略しても麺同士が接着してしまうことがなく、冷凍工程に伴うコスト上昇を抑えた春雨の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、加水混練した澱粉スラリーをダイスの孔から沸騰している熱湯中に線状に落下させて糊化させてから冷水で冷却後、冷凍せずに、水に1〜120分間浸漬させた後に乾燥させる落下式による春雨の製造方法である。
【0010】
また、請求項2の発明は、加水混練した澱粉スラリーをダイスの孔から沸騰している熱湯中に線状に落下させて糊化させてから冷水で冷却後、冷凍せずに、pH2〜pH7の有機酸溶液に1〜120分間浸漬させた後に乾燥させる落下式による春雨の製造方法である。
【0011】
本発明に使用される原料澱粉スラリーには、食感、調理方法等に応じて、馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、緑豆澱粉、えんどう澱粉、さご澱粉、米澱粉、小麦澱粉等を1種、もしくは2種類以上を混合加水して得る事ができる。
【0012】
この澱粉スラリーをダイスの孔から沸騰している熱湯中に線状に落下させて糊化させた直後の麺の表面は、糊状の澱粉膜に覆われており、通常、冷凍工程を行なわずにそのまま乾燥すれば、糊状の澱粉膜の粘着によって、麺同士がくっつくことになるが、請求項1の発明のように、落下式製法により熱湯中で糊化直後の麺を、冷水で冷却後、水に浸漬させれば、水への浸漬中に麺線の澱粉質の溶け出しがなくなることで麺表面の粘着力が弱まり、乾燥後の麺線同士の引っ付きが改善される。
【0013】
水への浸漬時間は、1分〜120分とする。1分未満だと効果が出ず、浸漬時間は長ければ長い程良いが、あまりに長いと麺がふやけすぎて、乾燥時間が延びて乾燥コストが高くなると共に麺が切れやすくなったり、その後の乾燥した製品を茹で戻した時の食感が落ちるので、120分を限度とする。
【0014】
また、請求項2で使用する有機酸溶液としては、クエン酸、乳酸、りんご酸、塩酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、食品に使用できる有機酸であればいずれのものも使用でき、これら有機酸溶液への浸漬によっても麺線の澱粉質の溶け出しがなくなることで麺表面の粘着力が弱まり、乾燥後の麺線同士の引っ付きが改善される。
【0015】
その際の水溶液のpHは2〜7の範囲が好ましく、pH値を2より下げると、喫食時に酸味を強く感じて商品価値が下がり、pH値が5より上になると、麺の粘着防止効果がなくなる。
【0016】
また、これら有機酸溶液への浸漬時間は、pH値によって変わるが、1分〜120分とする。1分以内だと効果が低く、浸漬時間は長ければ長い程良いが、あまりに長いと麺に有機酸が染みこみすぎて喫食時に酸味を強く感じて商品価値が下がるので、120分を限度とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明の春雨の製造方法によると、落下式製法の利点を生かしつつ、冷凍工程を省略しても麺同士がくっつくことを無くすことが出来るので、冷凍工程にともなうコストを削減することが出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の即席春雨の製造方法を説明する。
【0019】
原料澱粉として、食感、用途に応じて、馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、緑豆澱粉、えんどう澱粉、さご澱粉、米澱粉、小麦澱粉等を1種、もしくは2種類以上を混合加水し得た澱粉スラリーを、ダイスの孔から熱湯中に線状に落下させ糊化した後、水にて冷却する。
【0020】
次に、糊化直後の麺を水に1〜120分の範囲内で浸漬させるが、特に、麺のほぐれ効果と麺のふやけすぎるバランスを考慮すれば、30〜60分の範囲が好ましい。その後に麺の乾燥工程を行う事により、麺線表面からの澱粉質の溶け出しがなくなり、麺線が引っ付かずに乾燥が可能な春雨が得られる。
【0021】
また、原料粉末として、先に用いたものと同様、馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、緑豆澱粉、えんどう澱粉、さご澱粉、米澱粉、小麦澱粉等を1種、もしくは2種類以上を混合加水し得た澱粉スラリーを、ダイスの孔から熱湯中に線状に落下させ糊化した後、水にて冷却する。
【0022】
その後、有機酸溶液pH2〜pH7、好ましくはpH3〜pH6のクエン酸、乳酸、りんご酸、塩酸等の食用として利用可能な有機酸溶液に1〜120分間浸漬させるが、特に、麺のほぐれ効果と麺への酸味の移りを防止できる範囲のバランスを考慮すれば、30〜60分の範囲が好ましい。その後に麺の乾燥工程を行う事により、麺線表面からの澱粉質の溶け出しがなくなり、麺線が引っ付かずに乾燥が可能な春雨が得られる。
【実施例】
【0023】
原料澱粉として、馬鈴薯澱粉に加水し得た澱粉スラリーを、落下式製法としてダイスの孔から熱湯中に線状に落下させ糊化した後、水にて冷却し、pH4のクエン酸溶液に45分間浸漬し、その後乾燥工程を行った。
【0024】
その結果、麺線の引っ付きがなく、乾燥後の春雨の麺の塊に熱湯をかければ、麺全体がすぐほぐれる春雨が得られた。
【0025】
比較例として、落下式製法でダイスの孔から熱湯中に線状に落下させ糊化した後、水にて冷却し、そのまま乾燥工程を行った春雨は、麺線同士が接着し、熱湯をかけても麺同士が引っ付いている箇所が沢山あり、麺全体のほぐれが悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水混練した澱粉スラリーをダイスの孔から沸騰している熱湯中に線状に落下させて糊化させてから冷水で冷却後、冷凍せずに、水に1〜120分間浸漬させた後に乾燥させることを特徴とする落下式による春雨の製造方法。
【請求項2】
加水混練した澱粉スラリーをダイスの孔から沸騰している熱湯中に線状に落下させて糊化させてから冷水で冷却後、冷凍せずに、pH2〜pH7の有機酸溶液に1〜120分間浸漬させた後に乾燥させることを特徴とする落下式による春雨の製造方法。