説明

落橋防止装置の固定具の緩み防止構造

【課題】落橋防止装置の固定具の緩みを防止できて、固定具の落下防止を確実に行うことができる緩み防止構造を提供すること。
【解決手段】落橋防止装置1のブラケット3内の前面部分に収容された偏向ブロック10を、抜け止め板35によって抜け止めする。抜け止め板35をブラケット3に固定する複数のボルト7,7,・・・の2つに連結板6を装着する。2つのボルト7は、連結板6の扁平6角形穴6aと正6角形穴6bに夫々嵌合することにより、互いに回動不可となる。ボルト7に装着したスナップピン8で連結板6のボルト7からの離脱を防止し、さらに、連結板6に接続されたワイヤ62で連結板6の落下を防止する。橋梁の活荷重によって橋桁に複雑なモードの振動が継続的に生成されても、ボルト7の緩み及び落下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に橋梁の橋桁の落下を防止する落橋防止装置に関し、詳しくは、落橋防止装置の構成部品を固定する固定具の緩み防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋や鉄道橋等の橋梁には、地震時に橋桁の落下を防止するため、落橋防止装置が設置されている。落橋防止装置としては、橋桁と橋脚又は橋台との間や、橋桁相互間をケーブルで接続するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。この種の落橋防止装置では、ケーブルとの連結を行うブラケットを橋桁の側面に固定している。
【0003】
落橋防止装置のブラケットは、一般的に箱形状を有し、橋桁の側面に橋軸直角方向に突出した状態で固定される。ブラケットの背面には緩衝材と指圧板が設置されており、これら緩衝材及び指圧板に夫々形成された貫通穴にケーブルを挿通し、このケーブルの端部に取り付けた座金を、指圧板に係止可能にしている。この座金と指圧板の間には、ケーブルに張力を付与するコイルバネが装着されている。一方、ブラケットの前面側には、ケーブルの姿勢を適切に保持するため、ゴムや樹脂で形成された偏向部材が取り付けられている。
【0004】
偏向部材は、中央にケーブルが挿通される貫通穴を有し、前面の開口に臨むようにブラケット内に収容される。偏向部材は、ケーブルの外周面を貫通穴の内周面で支持して、ブラケットの開口から橋脚や他の橋桁に向かって延びるケーブルの姿勢を保持している。ブラケットの側面にはボルト穴が設けられており、このボルト穴を通してボルトを偏向部材に螺着させて、偏向部材をブラケットに固定している。
【特許文献1】特開2003−138519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の落橋防止装置は、橋梁が受ける活荷重に起因する振動がブラケットに伝達し、ブラケットに偏向部材を固定するボルトに緩みが生じ易いという不都合がある。ボルトの緩みが進むと、ボルトが偏向部材及びブラケットから離脱して落下する問題がある。
【0006】
特に、橋梁が道路橋である場合、活荷重を生成する車両が終日にわたって走行し、また、車両は走行路の幅方向の範囲内において種々の位置を走行するので、橋桁に複雑なモードの振動が継続的に生じる。そのため、ボルトの緩みが進行しやすく、短時間のうちにボルトの離脱と落下に至る恐れがある。道路橋は、下方に歩道や道路が設置される場合が多いので、落下物の発生を防止する対策が強く求められる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、落橋防止装置の固定具の緩みを防止できて、固定具の落下防止を確実に行うことができる緩み防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造は、落橋防止装置の構成部品を固定する固定具の緩み防止構造であって、
固定具に嵌合可能な複数の嵌合穴を有する嵌合部材を備え、
落橋防止装置の2つ以上の固定具に、各固定具が嵌合穴に夫々嵌合するように上記嵌合部材を装着することにより、上記2つ以上の固定具を互いに回動不可としたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、落橋防止装置の2つ以上の固定具が嵌合部材の嵌合穴に各々嵌合することにより、嵌合部材がいずれの固定具周りにも回動不可となり、その結果、上記2つ以上の固定具が互いに回動不可となる。これにより、上記2つ以上の固定具の緩みを防止でき、ひいては、緩んだ固定具が落橋防止装置から離脱して落下する問題を解決できる。
【0010】
ここで、本発明の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造は、道路橋の落橋防止装置に適用される場合、特に有効である。道路橋は、鉄道橋等と比較した場合、特有の活荷重によって複雑なモードの振動が長時間に亘って生成され、この振動により、落橋防止装置の固定具の緩みが促進される傾向にあるからである。このような特性を有する道路橋の落橋防止装置に本発明を適用することにより、固定具に嵌合部材を装着するという簡易な構成により、固定具の緩みを効果的に防止することができる。ひいては、道路橋の下方に存在する歩道や道路に固定具が離脱して落下する問題を、簡易かつ効果的に解決することができる。
【0011】
なお、上記落橋防止装置の固定具は、例えば6角形等の多角形のボルト又はナットであるのが好ましい。また、上記嵌合部材の嵌合穴は、上記ボルト又はナットの形状に対応した多角形の輪郭を有するのが好ましい。
【0012】
また、上記落橋防止装置の固定具は、構成部品を互いに固定する固定具と、構成部品を所定の固定位置に固定する固定具とのいずれにも該当する。
【0013】
一実施形態の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造は、上記嵌合部材は板状体で形成され、
上記嵌合穴は、嵌合する固定具の一部を板状体の表面から突出させる貫通穴である。
【0014】
上記実施形態によれば、板状体に貫通穴を形成することにより、極めて容易に嵌合部材を作製することができる。
【0015】
一実施形態の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造は、上記嵌合部材の嵌合穴の少なくとも1つは、互いの嵌合穴を結ぶ方向に長い長穴に形成されている。
【0016】
上記実施形態によれば、嵌合穴を長穴に形成することにより、固定具の嵌合位置の余裕を長穴の長手方向に与えることができる。したがって、離隔が異なる種々の固定具の組み合わせに、同一形状の嵌合部材を用いることができ、また、複数の固定具を複数の嵌合穴に夫々嵌合させる作業を容易にできる。その結果、安価であり、しかも、装着の容易な嵌合部材が得られる。
【0017】
ここで、固定具の形状が正6角形であり、嵌合穴の長穴は、正6角形の対向する2辺を引き延ばしたような形状であるのが好ましい。これにより、一般に広く普及したボルト又はナットを用いることができる。また、ボルト頭又はナットを長穴に嵌合させるための回動角の調整作業が容易になる。さらに、長穴とボルト頭又はナットとの嵌合部の接触面積を比較的広くできるので、ボルト頭又はナットの回動を安定して防止できる。
【0018】
一実施形態の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造は、上記固定具の上記嵌合部材の嵌合穴から突出した部分に、嵌合部材と係合可能な係合体が装着されている。
【0019】
上記実施形態によれば、嵌合部材が固定具の突出側に移動したとき、係合体が嵌合部材と係合するので、嵌合部材が固定具から離脱する不都合を防止できる。
【0020】
ここで、上記係合体は、固定具の嵌合穴からの突出部分に装着されるスナップピンや割ピンであるのが好ましい。これにより、嵌合部材の離脱を簡易な構成で効果的に防止できる。
【0021】
一実施形態の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造は、上記嵌合部材に、落橋防止装置の本体に固定された線状部材が接続されている。
【0022】
上記実施形態によれば、万一、嵌合部材が固定具から離脱しても線状部材によって落橋防止装置に吊り下げられるので、嵌合部材の落下を防止できる。
【0023】
一実施形態の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造は、上記落橋防止装置の構成部品は、橋桁を橋脚又は橋台或いは他の橋桁に接続するケーブルと、橋桁に固定されるブラケットと、ケーブルをブラケットに緩衝可能に連結する緩衝連結部と、ブラケットの緩衝連結部と反対側に装着されてケーブルを所定方向に向けて支持する偏向部材と、この偏向部材をブラケットから抜け止めする抜け止め板とを含み、
上記固定具は、上記抜け止め板をブラケットに固定するボルト又はナットである。
【0024】
上記実施形態によれば、偏向部材の抜け止め板をボルト又はナットでブラケットに固定し、このボルト又はナットに緩み防止構造を適用する。これにより、活荷重に起因する橋梁の振動が落橋防止装置のブラケットに伝達しても、ボルト又はナットの緩みを防止でき、従来のように偏向部材に螺着されたボルトが緩んで落下する不都合を防止できる。
【0025】
なお、上記橋梁は、鉄道橋及び道路橋のいずれでもよいが、活荷重を生成する車両の通行頻度が高く、車両の荷重の幅が広く、しかも、走行路の種々の幅方向位置に荷重が作用する点で、振動に起因する固定具の緩みが進行し易い道路橋であるのが好ましい。道路橋に本実施形態を適用することにより、固定具としてのボルト又はナットの落下を効果的に防止でき、その結果、落橋防止装置の補修の手間を削減でき、また、下方の道路や歩行路の安全性を効果的に向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、落橋防止装置の固定具の緩みを簡易かつ安価に防止でき、活荷重を受ける平常時には固定具の落下を防止することができ、また、地震荷重を受ける地震時には構成部品が適切に機能して落橋防止効果を発揮できる。その結果、落橋防止装置の保守管理を容易にできると共に、平常時及び地震時の両方において橋梁の周辺環境の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明を適用した落橋防止装置を示す断面図であり、図2は、落橋防止装置のブラケットを前面側から見た様子を示す正面図である。
【0028】
この落橋防止装置1は、橋梁としての道路橋に設置されるものであり、橋脚上に支持された2つの橋桁の端部を互いに接続して、橋桁の橋脚からの落下を防止するものである。なお、落橋防止装置は、橋脚又は橋台と、橋桁との間を接続するものであってもよい。本実施形態では、鋼製の橋梁に落橋防止装置を設置した場合を例示するが、橋梁はコンクリート橋であってもよい。
【0029】
落橋防止装置1は、橋桁の側部のウェブ2に固定されたブラケット3と、このブラケット3と図示しない他方の橋桁のブラケットとの間を連結するケーブル4と、ケーブル4をブラケット3に連結する緩衝連結部5とを備える。緩衝連結部5は、地震時にはケーブル4とブラケット3との間に作用する衝撃力を緩衝する一方、平常時にはケーブルの張力を保持する機能を有する。
【0030】
ブラケット3は鋼板を主要材料として形成されており、ライナープレート21を介して橋桁のウェブ2から幅方向(橋軸直角方向)の外側に突出するように固定されている。このブラケット3は、ライナープレート21に固定された取付プレート30と、取付プレート30の上下に固定された2つの水平プレート31,31と、水平プレート31,31の間に固定された2つの仕切プレート32,32と、水平プレート31及び仕切プレート32の背面側に固定された鉛直プレート33を有する。なお、ブラケット3に関し、ブラケット3からケーブル4が延出する側であって他のブラケットと向かい合う側(図1において右側)の面を前面と言い、ブラケットの互いに遠い側(図1において左側)の面を背面と言う。
【0031】
図1に示すように、2つの水平プレート31,31と2つの仕切プレート32,32の間に、橋軸方向に延びる直方体のケーブル収容室34が形成されている。このケーブル収容室34の背面側を塞ぐように、取付プレート30から橋桁の幅方向外側に延びる鉛直プレート33が固定されている。鉛直プレート33の背面側には、緩衝連結部5が設置されている。ケーブル収容室34内の前面部分には、ケーブル4を支持して姿勢を保持する偏向部材としての偏向ブロック10が収容されている。
【0032】
緩衝連結部5には、加硫接着により一体化された緩衝ゴム板51と指圧板52が、緩衝ゴム板51を鉛直プレート33側に向けた状態で配置されている。鉛直プレート33、緩衝ゴム板51及び指圧板52には同心の貫通穴が夫々形成されており、各貫通穴にケーブル4が挿通されている。指圧板52よりも背面側に突出したケーブル4の端部にアンカー55が設けられており、このアンカー55に座金53が定着ナット54で固定されている。座金53と指圧板52との間には、ケーブル4の外周側を取り囲むようにコイルバネ57が装着されている。ケーブル4は、芯材のPC鋼線をポリエチレン管で被覆して形成されている。
【0033】
上記緩衝連結部5により、平常時には、コイルバネ57から座金53へ作用される付勢力によってケーブル4に張力が導入され、ケーブル4の垂れ下がりが防止される。地震時には、地震力によってケーブル4に作用される張力により、ケーブル4端部の座金53がコイルバネ57の付勢力に抗して指圧板52側に移動する。これに伴って座金53が指圧板52に衝突する際の衝撃を、緩衝ゴム板51で緩衝する。こうして、ケーブル4やブラケット3の損傷を緩和し、ケーブル4による橋桁間の接続を確保して、橋桁の落下を防止するようになっている。
【0034】
ブラケット3のケーブル収容室34に収容された偏向ブロック10は、中央に円形断面の貫通穴11を有する直方体形状を有し、貫通穴11に挿通されるケーブル4を、所定方向に偏向させて支持するように形成されている。偏向ブロック10は、高密度ポリエチレンやゴム等の弾性材料で形成されており、前面に、貫通孔11の内周面と連なるラッパ状の凹部10aが形成されている。このラッパ状の凹部10aに、貫通孔11から延出するケーブル4を沿わせることにより、ケーブル4が急激に屈曲する不都合を防止している。偏向ブロック10は、貫通穴の軸線を通る平面に沿って2つのブロック片12,12に分割可能に形成されている。なお、偏向ブロック10の前面は、凹部10aを設けることなく平坦に形成してもよい。
【0035】
偏向ブロック10は、図2に示すように、ケーブル収容室34内に嵌合しており、ブラケット3の前端に取り付けられた抜け止め板35によって抜け止めがされている。抜け止め板35の上端縁の一部は、背面側の偏向ブロック10の凹部10aに対応して、正面視において凹部10aの外縁と概ね重なり合う円弧状に形成されている。これにより、偏向ブロック10から延出されるケーブル4が、抜け止め板35と接して急激な屈曲や応力集中等を生じる不都合を防止している。抜け止め板35は、複数の固定具としてのボルト7,7,・・・によってブラケット3に固定されている。ボルト7,7,・・・は正6角形のボルト頭7aを有し、ボルト頭7aの側面に、軸直角方向に延びる貫通穴72の開口71を有する。貫通穴72は、正6角形のボルト頭7aの中心を通る対角線に沿って形成されており、これにより、開口71はボルト頭7aの側面において平坦面間を繋ぐ峰に形成されている。ボルト7の軸部7bは、ブラケット3の水平プレート31及び仕切プレート32に形成された螺旋穴に螺着されている。
【0036】
上記抜け止め板35をブラケット3に固定するボルト7に、本発明の緩み防止構造が適用されている。
【0037】
図3Aは、2つのボルト7,7に、緩み防止構造を構成する嵌合部材としての連結板6が装着された様子を示す正面図であり、図3Bは、連結板6が装着されたボルト7の周辺部分を示す断面図である。
【0038】
連結板6は長方形の金属板で形成され、金属板の長手方向の両端部に、ボルト頭7aに嵌合する2つの貫通穴が設けられている。2つの貫通穴は、長穴としての扁平6角形穴6aと、正6角形穴6bとで構成されている。扁平6角形穴6aは、正6角形の対向する2つの辺を、この扁平6角形穴6aと正6角形穴6bとの間を結ぶ方向に引き延ばしたような形状を有する。これにより、扁平6角形穴6aとボルト7との嵌合位置の余裕が長手方向に得られるので、離隔が異なる種々のボルト7,7の対に同一の連結板6を装着することができる。すなわち、連結板6は、扁平6角形穴6aで得られる余裕の範囲内で、種々の離隔のボルト7,7対に汎用的に用いることが可能となっている。
【0039】
連結板6が装着されるボルト7は、連結板6の貫通穴に嵌合することによって互いに回動不可となるので、ブラケット3に強固に締結しなくてもよい。これにより、ボルト頭7aの回動角度を、連結板6の貫通穴に嵌合可能な角度に適宜調節することができる。
【0040】
連結板6が装着されたボルト7,7には、ボルト頭7aにスナップピン8が装着されている。スナップピン8は、図4に示すように、3辺が互いに約120°をなして山形状に屈曲した屈曲部8aと直部8bとを有する。屈曲部8aをボルト頭7aの側面に嵌合させると共に直部8bをボルト頭7aの貫通穴72に挿通させて、スナップピン8をボルト7に装着するようになっている。ボルト7にスナップピン8を装着することにより、連結板6が万一脱落側に移動しても、スナップピン8の両端部が連結板6に係合して連結板6の脱落及び落下を防止するようになっている。なお、ボルト7には、スナップピン8に替えて割りピンを装着してもよい。
【0041】
スナップピン8の直部8bが挿通される貫通穴72は、正6角形穴6bに嵌合するボルト7には1つ設けられている一方、扁平6角形穴6aに嵌合するボルト7には2つ設けられている。これにより、扁平6角形穴6aに嵌合するボルト7の貫通穴72が、扁平6角形穴6aの長手方向と平行になってスナップピン8が連結板6と係合しなくなる不都合を防止している。すなわち、扁平6角形穴6aに嵌合するボルト7において、1つの貫通穴72が扁平6角形穴6aの長手方向と平行となっても、他の貫通穴72にスナップピン8を挿通することにより、スナップピン8が確実に連結板6と係合するようにしている。上記2つの貫通穴72は、互いに60°の挟角をなす位置に形成されている。なお、扁平6角形穴6aに嵌合するボルト7は、正6角形の中心を通る全ての対角線に沿って3つの貫通穴72が形成されていてもよい。また、2つ以上の貫通穴72を有するボルト7を、扁平6角形穴6aと正6角形穴6bとのいずれに嵌合させてもよい。
【0042】
連結板6には、固定金具61によってワイヤ62が接続されている。このワイヤ62はブラケット3に固定されており、連結板6が万一ボルト7から離脱した場合、連結板6をワイヤ62で吊り下げて落下防止を行うようにしている。なお、固定金具61に替えて貫通穴を設け、この貫通穴にワイヤ62の端部をループ状に巻き掛けて、連結板6にワイヤ62を接続してもよい。
【0043】
上記落橋防止装置1を備える橋梁が、例えば都市部の高速道路の高架橋である場合、橋梁に活荷重を生じさせる車両が終日にわたって多数走行する。また、車両は、床版上の走行路を、幅方向に設定された複数の車線に沿って走行する。これにより、橋桁に複雑なモードの振動が継続的に生成され、ボルト、ナット、或いはタップボルト等の固定具に緩みが生じ易くなる。特に、橋桁の側面に突出して固定された落橋防止装置1のブラケット3は、ケーブル4による共振等に起因して、振動の影響を強く受ける場合がある。ここで、落橋防止装置1の2つのボルト7に連結板6が装着されて緩み防止構造が構成され、上記2つのボルト7が互いに回動不可とされているので、これらのボルト7は緩みが防止される。したがって、従来の落橋防止装置のように、偏向部材を固定するボルトが振動で緩み、このボルトが偏向部材及び箱材から離脱して落下する不都合を効果的に防止できる。
【0044】
しかも、嵌合部材としての連結板6は、板状体に貫通穴を形成した簡易な構成を有し、しかも、一方の貫通穴を長穴にして高い汎用性を有するので、効果的に製造コストを削減して安価に固定具の緩み防止構造を提供することができる。さらに、上記連結板6は、ボルト7,7に装着されたスナップピン8によってボルト7,7からの脱落が防止されるので、ボルト7の緩み及び落下と連結板6の落下とを高度に防止することができる。さらに、連結板6は、ワイヤ62でブラケット3に固定されているので、万一ボルト7から離脱しても落下の不都合を防止できる。
【0045】
このように、本実施形態の緩み防止構造が適用された落橋防止装置1は、偏向ブロック10の抜け止め板35をブラケット3に固定するボルト7が効果的に緩み止めされる。したがって、平常時にはボルト7の緩み及び落下を防止できると共に、地震時には偏向部材10等の部品の脱落を防止して十分に落橋防止効果を発揮し、橋桁の落下を防止することができる。すなわち、平常時と地震時との両方において、周辺環境の安全性を高めることが可能な落橋防止装置1が得られる。
【0046】
上記実施形態において、2つのボルト7,7に嵌合部材としての連結板6を装着したが、他のボルト7,7,・・・に、さらに連結板6を装着してもよい。また、連結板6は、2つのボルト7を嵌合可能に形成したが、3つ以上のボルトに嵌合可能に形成してもよい。
【0047】
また、本実施形態の緩み防止構造は、抜け止め板35をブラケット3に固定するボルト7の緩み止めを行ったが、水平プレート31や仕切プレート32等の他の部品を互いに固定するボルトの緩み止めを行ってもよい。また、取付けプレート30等の部品を橋梁に固定するボルトの緩み止めを行ってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、緩み防止構造を固定具としてのボルト7に適用したが、緩み防止構造を適用する固定具はボルトに限られず、タップボルトに螺合するナットであってもよい。また、ボルト頭は6角形に限られず、8角形等の他の多角形であってもよく、複数のボルトが嵌合部材に嵌合することによって互いに回動不可となるのであれば、形状は限定されない。
【0049】
また、嵌合部材としての連結板6に形成される貫通穴は、少なくとも1つが長穴であればよい。
【0050】
また、本実施形態において、落橋防止装置1は橋桁の側面に設置されたが、落橋帽子装置は橋桁の下面等に設置されていてもよい。要は、本発明は、振動の伝達する部位に設けられる落橋防止装置に広く適用でき、橋梁における落橋防止装置の取り付け位置は限定されない。
【0051】
また、本発明は、道路橋以外に、鉄道橋、歩道橋、及び、水道やガス等の各種配管橋等の橋梁に設置される落橋防止装置に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用した落橋防止装置を示す断面図である。
【図2】落橋防止装置のブラケットの正面図である。
【図3A】2つのボルトに連結板を装着した様子を示す正面図である。
【図3B】連結板が装着されたボルトの周辺部分を示す断面図である。
【図4】スナップピンを示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 落橋防止装置
3 ブラケット
4 ケーブル
6 連結板
6a 扁平6角形穴
6b 正6角形穴
7 ボルト
7a ボルト頭
8 スナップピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落橋防止装置の構成部品を固定する固定具の緩み防止構造であって、
固定具に嵌合可能な複数の嵌合穴を有する嵌合部材を備え、
落橋防止装置の2つ以上の固定具に、各固定具が嵌合穴に夫々嵌合するように上記嵌合部材を装着することにより、上記2つ以上の固定具を互いに回動不可としたことを特徴とする落橋防止装置の固定具の緩み防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造において、
上記嵌合部材は板状体で形成され、
上記嵌合穴は、嵌合する固定具の一部を板状体の表面から突出させる貫通穴であることを特徴とする落橋防止装置の固定具の緩み防止構造。
【請求項3】
請求項2に記載の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造において、
上記嵌合部材の嵌合穴の少なくとも1つは、互いの嵌合穴を結ぶ方向に長い長穴に形成されていることを特徴とする落橋防止装置の固定具の緩み防止構造。
【請求項4】
請求項2に記載の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造において、
上記固定具の上記嵌合部材の嵌合穴から突出した部分に、嵌合部材と係合可能な係合体が装着されていることを特徴とする落橋防止装置の固定具の緩み防止構造。
【請求項5】
請求項1に記載の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造において、
上記嵌合部材に、落橋防止装置の本体に固定された線状部材が接続されていることを特徴とする落橋防止装置の固定具の緩み防止構造。
【請求項6】
請求項1に記載の落橋防止装置の固定具の緩み防止構造において、
上記落橋防止装置の構成部品は、橋桁を橋脚又は橋台或いは他の橋桁に接続するケーブルと、橋桁に固定されるブラケットと、ケーブルをブラケットに緩衝可能に連結する緩衝連結部と、ブラケットの緩衝連結部と反対側に装着されてケーブルを所定方向に向けて支持する偏向部材と、この偏向部材をブラケットから抜け止めする抜け止め板とを含み、
上記固定具は、上記抜け止め板をブラケットに固定するボルト又はナットであることを特徴とする落橋防止装置の固定具の緩み防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−24772(P2010−24772A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190076(P2008−190076)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(508061549)阪神高速技術株式会社 (20)
【Fターム(参考)】