説明

落雪防止ネットの取付構造

【課題】落雪防止ネットの破損を防止できると共に落雪防止ネットが張られた鉄塔での作業性を向上させることができる落雪防止ネットの取付構造を提供する。
【解決手段】送電用鉄塔2を外側から覆う落雪防止ネット3を上記送電用鉄塔2に取り付けるための取付構造において、枠状に形成され上記落雪防止ネット3が張られるフレーム4と、上記送電用鉄塔2に取り付けられ該送電用鉄塔2から外側に張り出すと共に、上記フレーム4および該フレームに張られた落雪防止ネット3を上記送電用鉄塔2から所定の長さ離間させた状態で支持して上記鉄塔と上記フレームおよび上記落雪防止ネットとの間にスペースを確保する支持金具5とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔に付着した氷雪が剥がれ落ちる際に周囲に飛散するのを防止するための落雪防止ネットを鉄塔に取り付ける取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、送電用鉄塔などでは冬期に鋼材に雪や氷が付着し、その付着した氷雪が成長して塊となることがある。この塊は、気温が上昇したときなどに送電用鉄塔から剥がれ落ちるが、その際に、塊が飛散して送電用鉄塔の周囲に落下する虞がある。
【0003】
特許文献1では、鉄塔に雪や氷が付着することを防止するための着雪防止装置が提案されている。しかし、この着雪防止装置を設けた場合でも、雪や氷の付着を防止できなかったときには上述の落雪が生じる可能性がある。
【0004】
そこで、氷雪の塊が送電用鉄塔の塔内に落下するように、送電用鉄塔を外側から落雪防止ネットで覆うことが行われている。
【0005】
従来、送電用鉄塔への落雪防止ネットの取付構造としては、例えば、落雪防止ネットの縁部を送電用鉄塔の主柱材や水平材にロープなどの結束具により結束するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−263551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の取付構造では、送電用鉄塔に落雪防止ネットを直接に取り付けているため、落雪防止ネットが送電用鉄塔での作業・通行の妨げとなるという問題があった。
【0008】
また、強風時などに落雪防止ネットが風でバタついて送電用鉄塔のステップなどに引っかかって切れてしまうという問題があった。
【0009】
その他にも、落雪防止ネットを送電用鉄塔に取り付けると風圧荷重が増加することから、雪が降らない時期には、落雪防止ネットを送電用鉄塔の主柱材などに縛り付けて収納し、その収納した落雪防止ネットを降雪期に再び展開して送電用鉄塔を覆うことが考えられるが、収納の際に主柱材の間に張られた落雪防止ネットを一方の主柱材に寄せるときや、展開の際に一方の主柱材に寄せられた落雪防止ネットを主柱材の間に張るときには、作業員が主柱材の間を移動する必要があり、ネットの展開・収納の作業性が悪いという問題があった。
【0010】
また、充電部の近傍に落雪防止ネットを設けた場合には、その落雪防止ネットが湿潤したときに誘導電圧により帯電し、その帯電した落雪防止ネットが鉄塔に接触することで落雪防止ネットの電荷(静電気)が一気に放電されて落雪防止ネットが溶損してしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、落雪防止ネットの破損を防止できると共に落雪防止ネットが張られた鉄塔での作業性を向上させることができる落雪防止ネットの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、鉄塔を外側から覆う落雪防止ネットを上記鉄塔に取り付けるための取付構造において、枠状に形成され上記落雪防止ネットが張られるフレームと、上記鉄塔に取り付けられ該鉄塔から外側に張り出すと共に、上記フレームおよび該フレームに張られた落雪防止ネットを上記鉄塔から所定の長さ離間させた状態で支持して上記鉄塔と上記フレームおよび上記落雪防止ネットとの間にスペースを確保する支持金具とを備えたものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、上記落雪防止ネットの上縁部に沿って複数の取付リングが設けられ、該取付リングが、上記フレームの上縁部に水平方向にスライド可能に挿通されたものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、上記フレームと上記支持金具とが導電性を有する材料から形成され、それらフレームと支持金具とを介して上記落雪防止ネットが上記鉄塔にアースされたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、フレームに張られた落雪防止ネットが鉄塔から所定の長さ離間させた状態で支持されるので、落雪防止ネットが風でバタついたとしても鉄塔のステップなどに引っかかることがなく落雪防止ネットの破損を防止でき、かつ鉄塔と落雪防止ネットとの間に作業および通行のためのスペースが確保されるので、落雪防止ネットが張られた鉄塔での作業性を向上させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、フレームの上縁部に水平方向にスライド可能に挿通される取付リングが、落雪防止ネットの上縁部に沿って設けられているので、落雪防止ネットをフレームに吊り下げて支持することができ、その吊り下げられた落雪防止ネットの側縁部を引っ張ることで落雪防止ネットを容易に展開、収納することができ、展開、収納の作業性を向上させることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、導電性を有する材料から形成されたフレームと支持金具とを介して落雪防止ネットが鉄塔にアースされるので、落雪防止ネットを充電部の近傍に設置した場合でも、充電部の誘導電圧によって落雪防止ネットが帯電してしまうことがなく、落雪防止ネットの溶損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態による落雪防止ネットの取付構造が対象とする鉄塔の概略構造図である。
【図2】図2(a)−(c)は、本実施形態の塔体の模式的な断面図であり、図2(a)は塔体上部における上段を示し、図2(b)は塔体上部における下段を示し、図2(c)は塔体下部を示す。
【図3】図3は、本実施形態のネットの概略部分図である。
【図4】図4は、本実施形態の落雪防止ネットの取付構造の概略斜視図であり、塔体上部の上段のものを示す。
【図5】図5は、本実施形態の落雪防止ネットの取付構造の概略斜視図であり、図4において落雪防止ネットを省略した状態を示す。
【図6】図6は、本実施形態の落雪防止ネットの取付構造の概略部分斜視図であり、塔体下部のものを示す。
【図7】図7は、本実施形態の落雪防止ネットの取付構造の概略斜視図であり、落雪防止ネットを収納した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
本実施形態の落雪防止ネットの取付構造(以下、取付構造という)は、例えば送電用鉄塔を対象とする。
【0021】
まず、図1から図4に基づき送電用鉄塔と落雪防止ネットとの概略構造を説明する。以下の説明では、説明の便宜のために、図2の上下方向を前後方向(下が前、上が後)とし、図2の左右方向を左右方向(ただし図2とは左右が逆)とする。
【0022】
図1に示すように、送電用鉄塔2は、地上(基礎部)から上方(ほぼ鉛直上方)に延びる塔体11と、その塔体11に設けられた複数の腕金12とを備える。
【0023】
塔体11は、上下に延びる複数の主柱材13a−13dと、それら主柱材13a−13dの間に傾めに掛け渡された斜材14と、主柱材13a−13dの間にほぼ水平に掛け渡された水平材15とを有し、それら部材13−15が組み合わされたトラス構造を有する。
【0024】
図2に示すように、塔体11は、断面矩形状(図例ではほぼ正方形状)に形成され、その正方形の角に主柱材13a−13dが各々配置される。
【0025】
主柱材13a−13dは、円柱状に形成され、例えば複数の鋼管を上下に継ぎ合わされて形成される。主柱材13a−13dは、塔体11の断面が上側に至るにつれ小さくなるように、塔体11の内側に傾斜する。図4に示すように、主柱材13a−13dには、作業員の昇降のためのステップ16やガイドレール18(図2(c)参照)が設けられる。ガイドレール18は、後側(左後、右後)に配置された2つの主柱材13c、13dの下部(塔体下部L)に各々取り付けられる。
【0026】
図1に戻り、腕金12は、塔体上部Uに上下に間隔を隔てて4対配置される。各対の腕金12は、塔体11から左右方向の外側に延び、下側の3対の腕金12の先端には送電線19が保持される。各腕金12は、主柱材13a−13dからほぼ水平に左右に延びる腕金主材21と、主柱材13a−13dから左右に傾斜しつつ延びる吊材22または支材23とを有する。
【0027】
この送電用鉄塔2の塔体11が落雪防止ネット(以下、ネットという)3により覆われる。
【0028】
図2および図4に示すように、本実施形態のネット3は、主柱材13a−13dの間に区画される前後左右の4つの面のうちの隣接する2面に設けられ、平面視L字状に配置される。ネット3が張られる面は、送電用鉄塔2の設置場所における降雪期の風向きを基に風下側に設定される。図例では、塔体11の前面と左側面にネット3が取り付けられる。また、ネット3は、塔体11に沿って上下に並べて配置され、落雪の影響のない最下節パネルでは省略される。
【0029】
図3および図4に示すように、ネット3は、矩形の網地31と、その網地31を囲う周囲ロープ32と、網地31(周囲ロープ32)の上縁部(上端部)および下縁部(下端部)に沿って設けられた複数の取付リング33とを備える。
【0030】
網地31は、主柱材13aと主柱材13b(13d)との間に区画される面の形状に対応するように、上辺が下辺よりも短い台形状に形成される。なお、網地31の形状は、これに限定されず他の矩形形状(例えば長方形)など様々形状が考えられる。
【0031】
網地31は、網糸を無結節で編網してなる無結節網であり、ほぼ正方形状の網目形状を有する。網地31の網目は、約1cm以上約10cm未満に設定される。これは、網目の大きさが約1cm未満の場合、送電用鉄塔2にかかる風圧荷重が大きくなるためであり、約10cmを超えると、雪や氷の塊がネット3をすり抜けてしまう虞があるためである。なお、網地31は無結節網に限定されず、ラッセル網など様々のもが考えられる。
【0032】
周囲ロープ32は網地31の周縁部に沿って設けられ、その周囲ロープ32に網糸の端部が巻き付けられ結束される。また、周囲ロープ32には、後述するネット3の収納時に、ネット3を束ねるための固縛用ロープ34(図4参照)が取り付けられる。その固縛用ロープ34はネット3の両側に上下に間隔を隔てて複数設けられる。
【0033】
これら網地31、周囲ロープ32および固縛用ロープ34は合成樹脂繊維(例えばポリエチレンなど)から形成される。なお、網地31などの材質はこれに限定されず、様々なものが可能である。
【0034】
取付リング33は、網地31(周囲ロープ32)の上縁部(および下縁部)に間隔を隔てて、かつほぼ全長に亘り設けられる。取付リング33は、導電性を有する金属(例えば鋼)から形成され、上記合成樹脂繊維製の紐などにより周囲ロープ32に結束、固定される。
【0035】
このネット3を送電用鉄塔2の塔体11に取り付けるために、塔体11に本実施形態の取付構造1、10が設けられる。その取付構造1、10は、送電用鉄塔2に付着した氷雪が近傍に飛散して落下することを防止するために、落雪防止ネット3を送電用鉄塔2に設置し、氷雪をネット3に付着させ、天候回復後に自然融解させることにより、落下・飛散防止と軽減を図るものである。
【0036】
詳しくは後述するが、取付構造1、10では、ネット3を塔体11に設置させるために、ネット3を区画させるためのフレーム4として山形材、鋼管材、ワイヤーを用いる。また、そのフレーム4を塔体11の主柱材13a、13b、13dに固定するための支持金具5としてバンド材、山形材、鋼管材を用いる。
【0037】
ここで、塔体11へのネット3の設置は大きく分けて、塔体上部U(首上部ともいう)と塔体下部L(首下部ともいう)とに分類される。塔体上部Uと塔体下部Lとの境界線Bよりも上部のフレーム4には山形材と鋼管材を使用し、下部のフレーム4にはワイヤーを使用する。
【0038】
すなわち、充電部(送電線19)の近傍の塔体上部Uと、その塔体上部Uよりも下側の塔体下部Lとでは取付構造1、10が異なる。これら塔体上部Uと塔体下部Lの境界線Bは、充電部との離隔による作業性を考慮したラインとされる。塔体上部Uと塔体下部Lの境界線Bは、充電部の電圧や送電線19からの距離に基づいて設定され、例えば、送電線19から下方に66kVで約4m、154kVで約5m、275kVで約7m、500kVで約11mの位置に設定される。
【0039】
次に、図4および図5に基づき塔体上部Uにおける取付構造1について説明する。
【0040】
図4および図5に示すように、塔体上部Uにおける取付構造1は、枠状に形成されネット3が張られるフレーム4と、塔体11に取り付けられ塔体11から外側に張り出すと共に、フレーム4およびフレーム4に張られたネット3を塔体11から所定の長さ離間させた状態で支持して塔体11とフレーム4およびネット3との間にスペースを確保するための支持金具5とを備える。塔体上部Uの取付構造1では、フレーム4と支持金具5とは各ネット3ごとに設けられる。
【0041】
支持金具5は、主柱材13a、13b、13dの外周を把持する把持部35と、その把持部35から塔体11の外側に延び先端にフレーム4が接合される張出し部37(38、39)とを備える。
【0042】
把持部35は、各ネット3(フレーム4)の4隅を各々支持すべく、各主柱材13a、13b、13dにネット3の上下長さだけ上下に離間して取り付けられる。本実施形態では、前面と側面との間の主柱材13aに取り付けられた把持部35が、それら前面側の支持金具5と側面側の支持金具5とで共用される。
【0043】
各把持部35は、主柱材13a、13b、13dを囲むバンド材からなる。ここで、把持部35は、塔体上部Uと塔体下部Lとで同じ構造を有することから、塔体下部Lのものを示した図6(a)、(b)に基づき説明する。
【0044】
図6(a)、(b)に示すように、把持部35は、半割りの円筒状に形成された一対の半割部材からなり、その半割部材の周方向の両端には径方向外側に延びるフランジ36が設けられる。把持部35は、両半割部材のフランジ36を互いにボルトにより締結して主柱材13a、13b、13dを締め付けることで主柱材13a、13b、13dに固定される。この把持部35に張出し部37(38、39)が接合される。
【0045】
本実施形態の張出し部37−39は、前面側と側面側とで形状が異なる。さらに、側面側の張出し部38、39は、最も下側の腕金12よりも下方の部分(下段)と、その下段よりも上方の部分(上段)とで形状が異なる。
【0046】
まず、前面側の張出し部37について説明する。
【0047】
図2(a)に示すように、前面側の張出し部37は、平面視I字状に形成され、把持部35から前方(ネット3と直交する方向における塔体11の外側)に直線状に延出する。張出し部37は、作業員による作業スペースを考慮し、塔体11の外側に所定長さ(以下、第1張出し長さe1という)張出すものとされる。張出し部37は、例えば板材や山形材(アングル材)からなる。
【0048】
次に、塔体上部Uの上段における側面側の張出し部38について説明する。
【0049】
塔体上部U(首上部)の上段の側面側は、腕金主材21や吊材22などが支障となるような構造面より、上述したI字状の張出し部37では主柱材13a、13dへの取付けが困難である。そこで、張出し部38は、主柱材13a、13dに取り付けられる部材(腕金主材21や吊材22など)との干渉を避けるために、前後方向における塔体11の内側に所定の長さ張出しオフセットされる。また、張出し部38は、左右方向における塔体11の外側に、充電部とのクリアランスの関係より、前面側の張出し部37よりも短い所定長さ(以下、第2張出し長さe2という)で張出す。
【0050】
より詳細には、上段の張出し部38は、平面視L字状に形成され、把持部35から前後方向の内側(ネット3に平行な方向における塔体11の内側)に延びる逃げ部41と、その逃げ部41の先端から左方(ネット3と直交する方向における塔体11の外側)に延出する延出部42とを有する。その張出し部38は、例えば、逃げ部41が鋼管材からなり延出部42が板材や山形材からなり、それら逃げ部41と延出部42とが互いに溶接により接合される。
【0051】
次に、塔体上部Uの下段における側面側の張出し部39について説明する。
【0052】
図2(b)に示すように、下段の張出し部39は、前面側の張出し部37と同様にI字状に形成され、かつ前面側の張出し部37よりも張出し長さが短く設定される。すなわち、下段の側面側では、充電部とのクリアランスを考慮して、張出し部39の張出し長さが上記第2張出し長さe2に設定される。この張出し部39は、板材や山形材からなる。
【0053】
以上の把持部35と張出し部37−39とは、例えば溶接などにより接合され一体的に形成される。
【0054】
ここで、上記第1張出し長さe1としては、フレーム4と主柱材13との間を作業員が容易に通り抜けることができ、かつフレーム4に張設されたネット3が主柱材13に取り付けられた付属部材(ステップ16などの突起物)に干渉しないような長さが考えられる。第1張出し長さe1は、500mm以上1000mm未満、より好ましくは、約750〜800mm(人体幅)に設定される。
【0055】
これは、第1張出し長さe1が500mm未満の場合点検などにおいて人体幅が確保されず作業に支障となるためであり、1000mm以上の場合フレーム強度の増加や落雪防護の効果が減少するためである。
【0056】
なお、第1張出し長さe1は、長くなるほど張出し部37(および塔体11)にかかる力が大きくなることから、この力も考慮して適宜設定される。
【0057】
また、第2張出し長さe2としては、フレーム4と主柱材13との間を作業員が通り抜け可能で、主柱材13の付属部材がネット3に干渉せず、かつ充電部との距離が十分に確保できるような長さが考えられる。第2張出し長さe2は、送電線19からの距離(電線からのクリアランス)に基づいて設定されるが、クリアランスを確保できる条件の場合の張り出し長さの考え方はe1同様である。
【0058】
図4に戻り、フレーム4は、主柱材13a、13b、13dに沿って上下に延びる2つの縦フレーム46と、それら縦フレーム46の上端および下端の間に掛け渡された2つの横フレーム47とを有し、全体として矩形状に形成される。より詳細には、フレーム4はネット3と相似な台形状をなし、上側の横フレーム47が下側の横フレーム47よりも短く形成される。
【0059】
縦フレーム46は、上下の張出し部37の間に掛け渡される。その縦フレーム46は、張出し部37よりも上側および下側に延出し、その延出した部分に横フレーム47が各々取り付けられる。
【0060】
より具体的には、縦フレーム46は、断面L字状の山形材からなり、互いに直交する二つの面を有する。一方の面(金具接合面)は、ネット3と直交するように配置され、その金具接合面に張出し部37が外側から重ね合わされてボルトにより互いに接合される。他方の面(横フレーム接合面)はネット3に平行に配置され、その横フレーム接合面に横フレーム47が外側からU字ボルトにより取り付けられる。
【0061】
横フレーム47は、鋼管材からなり、ネット3の取付リング33の内径よりも小さな外径を有する。その横フレーム47には、取付リング33が横フレーム47に沿ってスライド可能なように、遊びをもった状態で挿通される。横フレーム47の両端には、両端を閉塞すると共に横フレーム47が縦フレーム46から外れないように長手方向の移動を規制するストッパが取り付けられる(図示せず)。
【0062】
以上の支持金具5およびフレーム4は、導電性を有する材料(例えば鋼)から形成されており、それら支持金具5およびフレーム4を介してネット3が塔体11にアースされる。送電用鉄塔2が、塗装が施された塗装鉄塔の場合には、主柱材13などに、塔体11に沿って上下に延びると共に一端がアースされたアース部材(線)が設けられ、そのアース部材に支持金具5が直接または導線などを介して接続される。
【0063】
以上のように、塔体上部Uは充電部に近く、ネット3の設置・撤去作業には送電の停止が必要になるが、重要送電線路の場合には簡単に送電停止がとれないことから、基本的にフレーム4を塔体11に常時設置することになる。そのため、ネット3を固定するフレーム4は、縦フレーム46に山形材、横フレーム47に鋼管材を使用することで、確実性・安全性のある強固な構造とした。また、ネット3の収納・展開を考えたときにネット3の端部に取り付けた取付リング33による容易な可動を考慮し横フレーム47は鋼管材とした。縦フレーム46はバンド材との接合構造を簡単にするために山形材を使用した。その縦フレーム46とネット3の接続はステンレスバンド67を使用した。
【0064】
次に、図6に基づき塔体下部Lにおける取付構造10について説明する。
【0065】
塔体下部Lにおける取付構造10は、塔体上部Uにおける取付構造1とは、フレーム4がワイヤーである点と支持金具5の張出し部の形状とが主に異なり、それ以外はほぼ同じ構造を有する。そこで、塔体上部Uにおける取付構造1と同一要素には、同一符号を付し説明を省略する。
【0066】
図6に示すように、塔体下部Lにおける取付構造10は、ワイヤー61、62からなるフレーム4と、把持部35および張出し部52(37)を有する支持金具5とを備える。また、塔体下部Lの取付構造10では、上下に隣接するネット3でフレーム4と支持金具5とが共用される。
【0067】
把持部35は、塔体下部Lの主柱材13a、13b、13dに上下に間隔を隔てて並べて複数配置される。その把持部35は、最も上側のネット3の上縁、上下に隣接するネット3の間と、最も下側のネット3の下縁とに対応する位置に各々配置される。各把持部35には、張出し部52(37)が設けられる。
【0068】
塔体下部Lの張出し部52、37は、ガイドレール18を有する左後の主柱材13dに固定された支持金具5と、前側の主柱材13a、13bに固定される他の支持金具5とで形状が異なる。
【0069】
図2(c)に示すように、ガイドレール取付け脚の張出し部52は、ガイドレール18との接触を避けるために、前後方向における塔体11の内側に張出してオフセットされ、かつ作業員によるスペースを考慮して左右方向における塔体11の外側に上記第1張出し長さe1で張出す。
【0070】
より詳細には、その張出し部52は、塔体上部Uにおける上段の側面側の張出し部38とほぼ同じ構造を有し、平面視L字状に形成されると共に、逃げ部54と延出部55とを有する。塔体下部Lの逃げ部54の長さは、塔体上部Uの逃げ部41よりも短く設定される。
【0071】
一方、他の張出し部37は、塔体上部Uにおける前面側の張出し部37と同じ構造を有し、平面視I字状に形成されて把持部35から上記第1張出し長さe1延出する。つまり、塔体下部Lは充電部から離れていることから、側面側であっても張出し部37の張出し長さが、上記第1張出し長さe1に設定される。
【0072】
その張出し部37の先端には、図6(a)に示すようにフレーム4を保持するための板状のブラケット56が設けられる。そのブラケット56には、フレーム4の後述する横ワイヤー62を結合するための横結合穴57が形成される。また、ブラケット56には、そのブラケット56との間にフレーム4の後述する縦ワイヤー62を挟み込み保持するための押さえ板(図示せず)が接合(例えばボルト接合)される。その押さえ板またはブラケット56には、上下に延び縦ワイヤー61が嵌合する凹部が形成される。
【0073】
図6(b)に示すように、最も下側(および最も上側)の張出し部37のブラケット56には、縦ワイヤー61を結合するための縦結合穴59が形成される。このブラケット56と同様のブラケットが、L字状の張出し部52の延出部55の先端にも設けられる。ブラケット56は、送電用鉄塔2への設置前に予め溶接などで張出し部37(または延出部55)に接合される。
【0074】
次に、塔体下部Lのフレーム4について説明する。なお、塔体下部Lのフレーム4は、前面側と側面側とで同じ構造を有することから、以下に前面側のフレーム4についてのみ説明を行い側面側は説明を省略する。
【0075】
フレーム4は、主柱材13a、13bに沿って上下に延びる2本の縦ワイヤー61と、それら縦ワイヤー61の間に掛け渡された複数本の横ワイヤー62とを有し、全体としてはしご状に形成される。このフレーム4では、上下に並ぶ2本の横ワイヤー62とそれら横ワイヤー62の間の縦ワイヤー61とにより各ネット3を張設するための枠が各々形成される。
【0076】
縦ワイヤー61は、最も上側のブラケット56から最も下側のブラケット56まで上下に各ブラケット56および押さえ板の間を通り延びる。縦ワイヤー61の両端には、巻き付けグリップ66が各々取り付けられ、それら巻き付けグリップ66が最も上側および下側のブラケット56の縦結合穴59に各々結合される。
【0077】
横ワイヤー62は、縦ワイヤー61の間を水平に延びる。横ワイヤー62の両端には、巻き付けグリップ66が取り付けられ、その巻き付けグリップ66がブラケット56の横結合穴57に結合される。
【0078】
横ワイヤー62は、ネット3の上縁または下縁に対応する位置に配置されており、そのネット3の取付リング33が横ワイヤー62にスライド可能に挿通される。図例の横ワイヤー62は、上下に隣接するネット3で共用され、それら上側および下側のネット3の取付リング33が横ワイヤー62に交互に挿通される。
【0079】
縦ワイヤー61および横ワイヤー62は、導電性を有する材料(例えば鋼)から形成されており、これら縦ワイヤー61、横ワイヤー62および支持金具5を介してネット3が塔体11にアースされる。
【0080】
塔体下部Lのフレーム4は、充電部から離れており、あまり強固な構造とする必要性がない。そこで、送電用鉄塔2において使用実績のあるワイヤーをフレーム4とし、ネット3の縦と横の支持に使用する。塔体下部Lは、縦ワイヤー61をネット3の区分け毎に分けずに通り線とし、横ワイヤー62は上下のネット3で共有化した構造とする。つまり、塔体下部Lでの横ワイヤー62の使用にあたっては上下フレームで共通とした。
【0081】
次に、図4および図7に基づき本実施形態に係る取付構造1、10の作用を説明する。
【0082】
本実施形態の取付構造1、10を送電用鉄塔2に設置するには、まず支持金具5の把持部35を塔体11の主柱材13a、13b、13dに取り付けボルト締めして支持金具5を主柱材13a、13b、13dに固定する。
【0083】
次に、主柱材13a、13b、13dに固定された支持金具5の張出し部37−39、52に、フレーム4およびネット3を取り付ける。
【0084】
塔体上部Uでは、張出し部37−39に縦フレーム46をボルト接合し、その縦フレーム46に横フレーム47をネット3ごと取り付ける。すなわち、予め横フレーム47にネット3の取付リング33を挿通させておき、その横フレーム47を縦フレーム46にU字ボルトでボルト接合する。さらに、ネット3を縦フレーム46の間に広げ、それら縦フレーム46にネット3の縁部をステンレスバンド67により各々結束する。これによりネット3は弛みがない状態(テンションがかかった状態)で張られる(図4参照)。
【0085】
同様に、塔体下部Lでは、張出し部52、37に予め固定されたブラケット56に縦ワイヤー61を取り付けた後、その縦ワイヤー61に横ワイヤー62をネット3ごと取り付ける。さらに、ネット3の縁部をステンレスバンド67により縦ワイヤー61に結束して、ネット3を弛みがない状態で張る。
【0086】
ここで、本実施形態の取付構造1、10では、支持金具5の張出し部37−39、52によって、フレーム4およびフレーム4に張られたネット3が、塔体11から所定の距離(第1張出し長さe1または第2張出し長さe2)だけ離間されている。
【0087】
そのため、フレーム4およびネット3と塔体11との間には、作業員が入り込むことができるスペースが確保されることとなり、ネット3が張られた状態でも送電用鉄塔2での作業や通行を容易に行うことができ、作業性および安全性を向上させることができる。
【0088】
また、ネット3が風により振動、あるいは風下側に撓んだとしても主柱材13a−13dのステップ16に引っ掛かることがなく、ネット3の破損を防止することができる。
【0089】
また、ネット3を縦フレーム46の間に広げる際に、ネット3の取付リング33が横フレーム47または横ワイヤー62により案内されるため、ネット3を容易に展開することができる。
【0090】
また、本実施形態の取付構造1、10により取り付けられたネット3は、塔体11に付着した雪や氷の塊が塔体11から剥がれて落下する際に風に流されて塔体11の外側に飛散してしまうのを防止することができ、送電用鉄塔2の周辺への落雪を防止できる。
【0091】
ここで、送電用鉄塔2にネット3を張設すると、そのネット3の分だけ送電用鉄塔2の受風面積が増えて送電用鉄塔2に大きな風圧荷重がかかることになる。このように、ネット3は風による影響(応力)が大きいため、本実施形態では、降雪期以外の高温期に関しては、ネット3を収納・撤去するようにした。
【0092】
図7に示すように、塔体上部Uにおけるネット3の撤去作業は充電部に近く困難なため、塔体上部Uではネット3を収納する。つまり、塔体上部Uは、降雪のある冬期(低温期)以外は、ネット3をいずれか一方の縦フレーム46に寄せて収納する。
【0093】
その収納の際には、まず収納側の縦フレーム46と反対側の縦フレーム46に接続されたステンレスバンド67を切断して反対側の縦フレーム46とネット3との係合を解く。次に、ネット3を収納側の縦フレーム46へ向けてスライドさせて収納側に寄せ、その寄せたネット3の両側縁部の固縛用ロープ34を互いに結び固縛用ロープ34でネット3を縛る。これによりネット3が収納され受風面積が低減する。なお、塔体上部Uのフレーム4(山形鋼、鋼管)と支持金具5とは塔体11に常時設置しておく。
【0094】
このように、本実施形態によれば、ネット3を横フレーム47に沿ってスライドさせることができるので、ネット3の収納作業を素早くかつ容易に行うことができる。なお、塔体下部Lは充電部に関係ないためネット3を撤去する。塔体下部Lのフレーム4(ワイヤー61、62)と支持金具5は常時設置とする。
【0095】
その他にも、支持金具5とフレーム4とを導電性を有する材料で形成したため、塔体上部Uでの充電部の影響によるネット3の溶損を防止できる。すなわち、ネット3を塔体上部Uに張る場合には、ネット3と充電部とが近いために、充電部の静電誘導により湿潤時(特に乾き際)にネット3が溶けて破損する虞がある。本実施形態では、フレーム4および支持金具5を介してネット3を送電用鉄塔2にアース(接地)することで、ネット3の溶損を防止することができる。
【0096】
塔体上部Uと塔体下部Lとでフレーム4を異なる構造とすることで、安全性と経済性とを両立させることができる。すなわち、充電部に近い塔体上部Uでは、フレーム4を管材やアングル材などの構造材で形成しているため、フレーム4をワイヤーで形成した場合に比べて破損し難く電気事故の発生をより確実に防止することができる。他方、電気事故の虞がない塔体下部Lでは、フレーム4をワイヤーで形成しているので、構造材でフレーム4を形成する場合に比べて材料費および製造コストを低減することができる。
【0097】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0098】
例えば、上述の実施形態はトラス構造を有する送電用鉄塔を対象としたが、これに限定されず、対象とする鉄塔は、トラス構造以外の送電用鉄塔でもよく、また送電用鉄塔以外の通信用鉄塔などでもよい。
【0099】
上述の実施形態では、ネットを、塔体の前後左右の4面のうちの隣接する2面に張ったが、これに限定されない。例えば、図2に点線で示すように4面(全面)の全てにネットを張ってもよく、また鉄塔および風の向きによっては1面のみでもよい。
【0100】
また、上述の実施形態ではフレームを塔体上部と塔体下部とで異なる構造としたが、これに限定されず、塔体上部と塔体下部とで同じ構造としてもよい。例えば全てのフレームをワイヤーから形成してもよく、この場合、製造コストを低減することができる。
【0101】
また、上述の実施形態では、ネットの上縁部と下縁部との両方に取付リングを設けたが、これに限定されず、上縁部のみに取り付けることも考えられる。
【符号の説明】
【0102】
1、10 取付構造
2 送電用鉄塔(鉄塔)
3 ネット(落雪防止ネット)
4 フレーム
5 支持金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔を外側から覆う落雪防止ネットを上記鉄塔に取り付けるための取付構造において、 枠状に形成され上記落雪防止ネットが張られるフレームと、上記鉄塔に取り付けられ該鉄塔から外側に張り出すと共に、上記フレームおよび該フレームに張られた落雪防止ネットを上記鉄塔から所定の長さ離間させた状態で支持して上記鉄塔と上記フレームおよび上記落雪防止ネットとの間にスペースを確保する支持金具とを備えたことを特徴とする落雪防止ネットの取付構造。
【請求項2】
上記落雪防止ネットの上縁部に沿って複数の取付リングが設けられ、該取付リングが、上記フレームの上縁部に水平方向にスライド可能に挿通された請求項1記載の落雪防止ネットの取付構造。
【請求項3】
上記鉄塔が送電用鉄塔であり、上記フレームと上記支持金具とが導電性を有する材料から形成され、それらフレームと支持金具とを介して上記落雪防止ネットが上記鉄塔にアースされた請求項1または2記載の落雪防止ネットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−6997(P2011−6997A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154034(P2009−154034)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】