説明

葛花を含有する香料

【課題】 葛花が有する香りを利用して香料を得、葛花の利用分野を拡大すること。
【解決手段】 本発明の香料は、葛花乾燥物および/または葛花抽出液を有効成分として含む。本発明の香料は、食品素材などと混合することができ、そして風味がよい食品用組成物を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葛花乾燥物および/または葛花抽出液を有効成分とする香料に関する。
【背景技術】
【0002】
葛は、マメ科の大形蔓性の植物であり、その根から採取される葛澱粉は、古くから和菓子の原料として用いられている。その根および花は、それぞれ葛根および葛花と称し、解熱薬、鎮痛薬、鎮痙薬、発汗などの症状に対する薬などの漢方薬の原料として用いられている。特に、葛花は、他のマメ科植物とは異なり、肝障害改善作用、二日酔い予防作用、尿窒素代謝改善作用など様々な作用を有することが明らかとなってきている(特許文献1〜3)。
【0003】
このように、葛花は、抽出物の乾燥粉末または乾燥物自体を漢方薬の原料などとして用いられている。しかし、食品、飲料などには、十分に利用されていない。
【0004】
さらに、葛花抽出物を乾燥して得られる抽出物粉末、葛花乾燥物をエタノールのみで抽出して得られる抽出物などは、葛花乾燥物が有する香気が失われている。そのため、葛花が有する独特の風味のみが残り、食品などへの利用が困難となり、摂取しにくくなる。
【特許文献1】特許第3454718号公報
【特許文献2】特公平8−32632号公報
【特許文献3】特開昭64−68318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、葛花が有する香りを利用して、葛花の利用分野を拡大することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、葛花の利用について様々な検討をしたところ、葛花の長所である優れた香気を、香料として利用し得ることを見出した。
【0007】
本発明は、葛花乾燥物および/または葛花抽出液を有効成分とする、香料を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、上記香料を含有する、食品用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の香料は、優れた香気を有するだけでなく、葛花が漢方薬として使用されてきたので、人体への安全性も高く、例えば食品用の香料として利用価値が高い。すなわち、葛花が有する香りを利用して、葛花の利用分野が拡大され得る。特に、本発明の香料は、食品用組成物、飲料などに添加することが好ましい。
【0010】
さらに、葛花乾燥物および/または葛花抽出液と緑茶などとを組合せると、葛花が有する香りを効果的に利用できるだけでなく、その組合せによって、より食品の風味を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(葛花)
葛の花部である葛花は、フラボノイド、サポニン、およびトリプトファン配糖体を含有している。葛花とは、蕾から全開した花までの段階で採取した花を含む。本発明においては、特に、蕾を用いることが好ましい。
【0012】
(葛花乾燥物)
本明細書において、「葛花乾燥物」とは、葛花を乾燥して得られた物、葛花を乾燥後破砕して得られた乾燥粉末などをいう。
【0013】
葛花乾燥物は、葛花、好ましくは蕾の段階の葛花を、日干し、熱風乾燥などの方法により乾燥することにより得られる。好ましくは、水分含有量が、10質量%またはそれ以下となるまで乾燥される。
【0014】
葛花の乾燥粉末は、上記葛花乾燥物を粉砕して得られる。粉末化は、当業者が通常用いる方法、例えば、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミルなどを用いて行う。
【0015】
あるいは、葛花粉末(乾燥粉末)は、採取した葛花を、マスコロイダー、スライサー、コミトロールなどを用いて破砕して葛花破砕物を得、この葛花破砕物を乾燥することによって得られる。
【0016】
(葛花抽出液)
本明細書において、「葛花抽出物」とは、葛花、上記葛花乾燥物から抽出された抽出液、これらの抽出液を濃縮した濃縮液などをいう。
【0017】
葛花抽出物は、例えば、葛花、葛花破砕物、葛花乾燥物、または葛花乾燥粉末に溶媒を添加し、必要に応じて加温して、抽出を行い、遠心分離または濾過により抽出液を回収することによって得られる。
【0018】
葛花抽出物を得るために用い得る溶媒としては、水、含水有機溶媒などが挙げられる。含水有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、アセトン、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチルなどと水との混合溶媒が挙げられる。これらの中で好ましくは極性有機溶媒と水との混合溶媒、より好ましくはエタノール、メタノール、アセトン、プロピレングリコール、および酢酸エチルと水との混合溶媒であり、最も好ましくはエタノールと水との混合溶媒である。葛花乾燥物から抽出する場合は、熱湯が好ましく用いられる。
【0019】
抽出方法としては、加熱還流などの加温抽出法、超臨界抽出法などが挙げられる。これらの抽出方法において、必要に応じて加圧して加温を行ってもよい。加温する場合、葛花に添加した溶媒が揮発するのを防ぐ必要がある。加温する場合、抽出温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは130℃以下、より好ましくは100℃以下である。
【0020】
抽出時間は、抽出原料から十分に可溶性成分が抽出される時間であればよく、抽出温度などに応じて適宜設定すればよい。好ましくは30分〜48時間である。例えば、抽出温度が50℃未満の場合は、6時間〜48時間であり得、50℃以上の場合は、30分〜24時間であり得る。
【0021】
得られた抽出液は、必要に応じて、減圧濃縮などの方法により濃縮して、液状またはペースト状としてもよい。しかし、抽出物の乾燥粉末は、葛花が有する香気が、除去または低減されるので、得られた抽出液は、乾燥粉末化処理を施さない方がよい。
【0022】
(香料)
本発明の香料は、葛花乾燥物および/または葛花抽出液を有効成分として含有する。この葛花乾燥物および葛花抽出液は、葛花特有の甘い香りを有する。したがって、飲料、食品などに本発明の香料を添加することによって、飲料、食品などの香りを改善することができる。また、液体の香料(例えば、葛花抽出液)に食品を浸漬することにより、浸漬した食品に香りを付与することもできる。さらに、葛花乾燥物および葛花抽出液には、有用な成分が含有されているため、このような成分を同時に摂取することができる。
【0023】
本発明の香料中に、葛花乾燥物および/または葛花抽出液は、有効成分として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上の割合で含有される。
【0024】
本発明の香料は、飲料、食品などに香りだけを付与し、飲料、食品などの風味を変えないことが好ましい。通常、葛花の抽出液は、苦み、えぐみなどを有さず、無味である。したがって、このような抽出液を含む香料は、食品用の香料として用いることに適している。しかし、例えば、香料中の葛花抽出物および抽出液の濃度が高い場合、あるいは抽出液の温度が50℃以下となる場合には、独特の苦みやえぐみを有することがある。このような場合でも、後述する特定の食品素材との組合せによって、苦みやえぐみが改善される。
【0025】
(食品用組成物)
本発明の食品用組成物は、上記香料を含有し、好ましくは、さらに食品素材を含有する。必要に応じて、添加剤などを含有する。本発明の食品用組成物に用いられる食品素材としては、特に限定されない。例えば、ツバキ科植物由来の茶葉、甜茶、コーヒー、ココア、麦若葉、アシタバ、ケール、甘藷茎葉、および桑葉(以下、これらの食品素材を「特定の食品素材」という場合がある)が挙げられる。上記香料と食品素材とを混合する場合、食品素材は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
本明細書において、「特定の食品素材」とは、上記の食品素材自体、あるいは食品素材の加工物(例えば、食品素材から得られる抽出物および食品素材の乾燥物)をいう。
【0027】
本明細書において、「特定の食品素材の加工物」とは、特定の食品素材に、加熱、発酵、乾燥、抽出などの加工を施して得られる素材をいう。
【0028】
本明細書において、特に「特定の食品素材の乾燥物」と記載する場合は、特定の食品素材を乾燥して得られた物、特定の食品素材を乾燥後破砕して得られた乾燥粉末などをいい、以下の特定の食品素材の抽出物を含まない。
【0029】
本明細書において、特に「特定の食品素材の抽出物」と記載する場合は、特定の食品素材の搾汁、特定の食品素材から抽出された抽出液、これらの搾汁または抽出液を濃縮した濃縮液、これらの搾汁または抽出液を乾燥して得られる乾燥粉末(抽出物粉末)などをいう。
【0030】
ツバキ科植物由来の茶葉としては、例えば、加工方法により、無発酵茶葉(例えば抹茶、緑茶、煎茶、番茶、およびほうじ茶)、半発酵茶葉(例えばウーロン茶)、完全発酵茶葉(例えば紅茶)、後発酵茶葉(例えばプーアル茶)、香り付けされた茶葉(例えばジャスミン茶)などが挙げられる。
【0031】
甜茶は、バラ科植物であり、その葉は、甘味料の原料などとして使用されている。したがって、この葉から得られる飲料は、嗜好性がよい。さらに、近年、抗アレルギー作用などを有することが見出されており、いわゆる健康茶として利用されている。
【0032】
コーヒーおよびココアは、通常、飲料として用いられている食品素材である。例えば、乾燥したココア豆の粉砕物、コーヒー豆の焙煎物およびこの破砕物、これらを水または熱湯で抽出して得られる抽出物の乾燥粉末など、通常、当業者が使用する形態で使用することができる。
【0033】
イネ科植物の麦の葉である麦若葉、セリ科植物のアシタバ、アブラナ科植物のケール、ヒルガオ科植物の甘藷の茎葉、クワ科植物の桑より得られる葉は、緑葉の乾燥粉末、搾汁などの加工によって得られる青汁素材として、近年利用されている。これらの青汁素材は、嗜好性がよく、これらの乾燥粉末、搾汁、搾汁を乾燥したエキス末などの抽出物を利用することができる。
【0034】
本発明の食品用組成物は、必要に応じて、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、本発明の香料以外の香料、他の食品原料、調味料、医薬品原料などの添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、B、B、B、B12、ナイアシン、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体など)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、セレンなど)、キチン・キトサン、レシチン、ポリフェノール(フラボノイド類、これらの誘導体など)、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテインなど)、キサンチン誘導体(カフェインなど)、脂肪酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチンなど)、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ケタラン、これらの塩など)、アミノ糖(グルコサミン、アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、アセチルノイラミン酸、ヘキソサミン、それらの塩など)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖など)リン脂質およびその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミドなど)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタンなど)、糖アルコール、リグナン類(セサミンなど)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガなど)などが挙げられる。
【0035】
本発明の食品用組成物は、そのまま食品および飲料として、または食品(例えば飲料)を得るための原料として用いることができる。
【0036】
例えば、飲料を得るための原料として用いる場合、上記の様々な茶葉と葛花乾燥物などとを混合して、食品用組成物(例えば飲料用食品)としてもよい。このようにして得られた飲料用食品は、熱湯などで抽出(煎じる)すると、葛花の香気を有する茶飲料が得られる。
【0037】
したがって、本発明においては、食品素材と上記香料とを混合してもよく、あるいは食品素材に葛花乾燥物または葛花抽出物を直接混合してもよい。後者の場合は、例えば、茶飲料などのように、最終的な食品を得るまでの過程で、香りが付与される。
【0038】
本発明の食品用組成物は、用途に応じて、顆粒、錠剤、ティーバッグなどの形態に加工されてもよい。例えば、本発明の食品用組成物を顆粒とすれば、得られた顆粒と水または湯とを混合して、飲料とし得る。ティーバッグの形態で提供すれば、本発明の食品用組成物は、抽出用の原料として利用することができ、さらに、ティーバッグを湯などに浸漬して得られる抽出液を飲料として利用し得る。
【0039】
本発明の食品用組成物において、上記香料と食品素材とを含有する場合、その配合割合については、特に制限されない。例えば、食品素材100質量部に対して、上記香料の配合割合は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05〜50質量部とするのがよい。
【0040】
次に、本発明の食品用組成物が飲料である場合について説明する。飲料は、食品用組成物の一つの態様であり、他の態様である固形の食品用組成物から調製することもできる。例えば、固形の食品用組成物をティーバッグなどに入れて、媒体(熱湯、水、含水アルコール、またはアルコール)に浸漬して、飲料を得ることができる。
【0041】
具体的には、本発明の固形の食品用組成物を抽出用器具(ポット、急須、ティーバッグなど)に入れ、媒体(例えば水または熱湯)を加える。固形の食品用組成物の成分を媒体に溶出させて、得られた液体を飲料とすることができる。必要に応じて、固液分離することによって飲料を得てもよい。
【0042】
媒体として水または熱湯を用いる場合、本発明の固形の食品用組成物(茶葉など)1質量部に対し、媒体の量は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは50質量部以上とするのがよく、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは4500質量部以下、最も好ましくは4000質量部以下とするのがよい。
【0043】
抽出温度については、好ましくは20℃以上、より好ましくは70℃以上とするのがよく、好ましくは100℃以下、より好ましくは98℃以下とするのがよい。抽出時間については、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上とするのがよく、好ましくは6時間以下、より好ましくは2時間以下、最も好ましくは1時間以下とするのがよい。
【0044】
また、上記とは異なる方法で飲料を調製してもよい。例えば、まず、媒体(水、熱湯、含水アルコール、アルコールなど)に緑茶などを浸漬することにより抽出物を得る。必要に応じて、媒体を蒸発させて抽出物を濃縮してもよい。そして、その抽出物を葛花抽出物などに配合して、飲料を得てもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、この範囲に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
葛花乾燥物(葛花乾燥粉末:太田胃散社製)と熱湯とを用いて、香料を調製した。具体的には、0.1g、0.5g、および1gの葛花乾燥粉末を、それぞれ150mLの熱湯に3分間浸漬し、抽出液を得た。次いで、これらの抽出液を濾過し、そして濾液を室温まで冷却した。これらの濾液をそれぞれ試験香料とした。
【0047】
上記各試験香料を、室温で減圧濃縮し、乾固させて乾燥粉末を得た。これらの乾燥粉末をそれぞれ150mLの熱湯に溶解し、室温まで冷却した。これらの液体をそれぞれ比較香料とした。
【0048】
そして、10名の女性パネラーに、試験香料および比較香料のそれぞれについて、「甘い香りを有する」、「わずかに甘い香りを有する」、および「香りを有さない」のいずれかを回答させた。結果を表1に示す。表1中の値は人数を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、試験香料については、いずれも、ほぼパネラー全員が「甘い香りを有する」と回答した。すなわち、優れた香気を有する香料が得られたことがわかる。一方、比較香料では、葛花乾燥粉末を0.1gおよび0.5g用いて得られた香料は、「香りを有さない」と回答したパネラーが8人以上であった。
【0051】
(実施例2)
0.1gの葛花乾燥物(葛花乾燥粉末:太田胃散社製)と4種類の茶葉(緑茶葉(煎茶)、ウーロン茶葉、紅茶葉、および甜茶の葉)のいずれか1種類(1g)とを、ティーバッグに分包して飲料用食品を調製した。次いで、各ティーバッグを150mLの熱湯に3分間浸漬して、4種類の試験飲料1−1〜1−4を調製した。
【0052】
比較のために、それぞれ4種類の茶葉のみを分包したティーバッグを調製し、各ティーバッグを150mLの熱湯に3分間浸漬して、4種類の比較飲料1−1〜1−4を調製した。
【0053】
これらの試験飲料1−1〜1−4および比較飲料1−1〜1−4を10名の女性パネラーに試飲させた。次いで、女性パネラーに、各試験飲料の風味を対応する茶葉のみを含有する各比較飲料(葛花非含有飲料)の風味と比較して、「好ましい」、「好ましくない」、および「どちらともいえない」の3段階で評価させた。パネラーには、それぞれの飲料に何が含まれているかは告げなかった。結果を表2に示す。表2中の値は人数を示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示すように、いずれの試験飲料1の風味についても、比較飲料1の風味に比べて「好ましい」と回答したパネラーが多いことがわかった。したがって、茶葉と葛花乾燥物とを混合し、熱湯で抽出して得られる飲料は、葛花の香りが付与され、飲料の風味がよくなることがわかった。特に、緑茶、ウーロン茶、および紅茶、すなわちツバキ科植物由来の茶葉を用いた場合、風味が非常によくなった。
【0056】
(実施例3)
緑茶葉(煎茶)、ウーロン茶葉、紅茶葉、甜茶の葉、プーアル茶葉、コーヒー豆の焙煎後の粉砕物、および麦の実の焙煎物を、それぞれ1gずつ準備した。そして、準備した素材を熱湯(200mL)に2分間浸漬し、濾過して、室温になるまで放置し、各素材からそれぞれ飲料を得た。ココア粉末については、1gを熱湯(200mL)に溶いた後、室温になるまで放置して8種類の飲料を調製した。
【0057】
次いで、1gの葛花乾燥物(葛花乾燥粉末:太田胃散社製)を、1000mLの熱湯に2分間浸漬した。その後、濾過して濾液を得た。この濾液を、室温になるまで冷却し、葛花の抽出液(香料1)を得た。
【0058】
上記8種類の飲料(100mL)をそれぞれ、上記香料1(30mL)と混合し、試験飲料2−1〜2−8を調製した。
【0059】
上記8種類の飲料(100mL)をそれぞれ、水(30mL)と混合し、比較飲料2−1〜2−8を調製した。
【0060】
これらの試験飲料2−1〜2−8および比較飲料2−1〜2−8を10名の女性パネラーに試飲させた。次いで、女性パネラーに、各試験飲料の風味を対応する茶葉、コーヒー豆、ココア粉末、または麦の実のみを含有する各比較飲料(香料非含有飲料)の風味と比較して、「好ましい」、「好ましくない」、および「どちらともいえない」の3段階で評価させた。パネラーには、それぞれの飲料に何が含まれているかは告げなかった。結果を表3に示す。表3中の値は人数を示す。
【0061】
【表3】

【0062】
表3に示すように、いずれの試験飲料2の風味についても、比較飲料2の風味に比べて「好ましい」と回答したパネラーが多かった。したがって、試験飲料2は、香料1を含有することによって、葛花の香りが付与され、風味がよくなることがわかる。
【0063】
(実施例4)
2gの葛花の乾燥物(葛花乾燥粉末:太田胃散社製)を2000mLの熱湯に2分間浸漬した。その後、濾過して濾液を得た。この濾液を、室温になるまで冷却し、葛花の抽出液(香料2)を得た。
【0064】
大麦若葉の乾燥粉末、ケールの乾燥粉末、明日葉の乾燥粉末、桑葉の乾燥粉末、および甘藷茎葉の乾燥粉末(2g)と香料2(100mL)とをそれぞれ混合して、試験飲料3(3−1〜3−5)を調製した。
【0065】
大麦若葉の乾燥粉末、ケールの乾燥粉末、明日葉の乾燥粉末、桑葉の乾燥粉末、および甘藷茎葉の乾燥粉末(2g)と水(100mL)とをそれぞれ混合して、比較飲料3(3−1〜3−5)を調製した。
【0066】
次いで、香料2を凍結乾燥し、乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末を水1000mLに再度溶解して、葛花の抽出物粉末溶液を調製した。そして、大麦若葉の乾燥粉末、ケールの乾燥粉末、明日葉の乾燥粉末、桑葉の乾燥粉末、および甘藷茎葉の乾燥粉末(2g)と得られた葛花の抽出物粉末溶液(100mL)とをそれぞれ混合して、対照飲料(3−1〜3−5)を調製した。
【0067】
同じ素材を含む飲料間で、香料2を含む場合と含まない場合との風味を比較するために、各試験飲料3および各比較飲料3を10名の女性パネラーに試飲させた。次いで、各試験飲料3と各比較飲料3との風味を対比させ、各比較飲料3の風味に対して、各試験飲料3の風味が「好ましい」、「好ましくない」、および「どちらともいえない」のいずれかを回答させた。
【0068】
次いで、同じ素材を含む飲料間で、香料2を含む場合と本発明の香料ではない葛花の抽出物粉末溶液を含む場合との風味を比較するために、各試験飲料3および各対照飲料を10名の女性パネラーに試飲させた。次いで、各試験飲料3と各対照飲料との風味を対比させ、各対照飲料の風味に対して、各試験飲料3の風味が「好ましい」、「好ましくない」、および「どちらともいえない」のいずれかを回答させた。
【0069】
さらに、同じ素材を含む飲料間で、本発明の香料ではない葛花の抽出物粉末溶液を含む場合と含まない場合との風味を比較するために、各比較飲料3および各対照飲料を10名の女性パネラーに試飲させた。次いで、各比較飲料3と各対照飲料との風味を対比させ、各比較飲料3の風味に対して、各対照飲料の風味が「好ましい」、「好ましくない」、および「どちらともいえない」のいずれかを回答させた。
【0070】
これらの結果を表4に示す。表4中の値は人数を示す。
【0071】
【表4】

【0072】
表4に示すように、各試験飲料3と各比較飲料3との風味を比較した場合、ほとんどのパネラーは、各試験飲料3の方が「好ましい」と回答した。したがって、本発明の香料を含む各試験飲料3は、葛花の香りが付与されて、風味がよくなった。
【0073】
また、各試験飲料3と各対照飲料との風味を比較した場合についても、ほとんどのパネラーは、各試験飲料3の方が「好ましい」と回答した。すなわち、葛花の抽出物粉末は、葛花が有する香気が、除去または低減されるので、香料として用いるには不適切であることがわかった。
【0074】
さらに、各比較飲料3と各対照飲料との風味を比較した場合、ほとんどのパネラーは、「どちらともいえない」と回答した。すなわち、葛花の抽出物粉末溶液は、水とほとんど変わらないという結果であり、この結果からも、葛花の抽出物粉末は、香料として用いるには不適切であることがわかった。
【0075】
(製造例1)
下記の原料を用いて、ティーバッグ(1包あたり3g)を調製した。
【0076】
<配合成分> 配合量(質量%)
葛花乾燥粉末 50
松葉茶の茶葉 10
緑茶葉 30
玄米 10
【0077】
(製造例2)
下記の原料を用いて、飲料を調製した。具体的には、葛花の乾燥粉末(10g)、紅茶葉(10g)、および麦茶用の麦(30g)を、それぞれ1Lの熱湯(98℃)へ10分間浸漬し、濾過して得られた各飲料を以下の容量で混合した。
【0078】
<配合成分> 配合量
葛花乾燥粉末より得られた飲料 200mL
紅茶葉より得られた飲料 500mL
麦茶用の麦より得られた飲料 300mL
アスコルビン酸 500mg
【0079】
(製造例3)
製造例2で用いた飲料を用いて、以下の配合量にて飲料を調製した。
【0080】
<配合成分> 配合量
葛花乾燥粉末より得られた飲料 200mL
紅茶葉より得られた飲料 500mL
麦茶用の麦より得られた飲料 300mL
【0081】
(実施例5)
製造例2および製造例3により得られた茶飲料500mLを、透明なペットボトル容器に入れて、1週間、室温で放置した。その結果、製造例2で得られたアスコルビン酸を含有する飲料は、製造例3の飲料よりも変色が少なく、沈殿も見られなかったことから、優れた安定性を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、葛花乾燥物および/または葛花抽出液を有効成分として含む香料は、優れた香気を有するので、食品、飲料などに用いる食品用香料として有用である。さらに、本発明の香料と食品素材、特に特定の食品素材とを混合して得られる食品、飲料などは、葛花が有する香気が付与され、風味が改善される。加えて、葛花が有する有用な成分も同時に摂取可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葛花乾燥物および/または葛花抽出液を有効成分として含有する、香料。
【請求項2】
請求項1に記載の香料を含有する、食品用組成物。

【公開番号】特開2006−70261(P2006−70261A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226890(P2005−226890)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】