説明

蒸気システム

【課題】 蒸気ボイラからの蒸気を用いて、その蒸気ボイラに付属の回転機器を駆動することで、消費電力を削減する。
【解決手段】 蒸気ボイラ2からの蒸気は、蒸気路13,15を介して蒸気使用設備へ送られる。その蒸気路の中途には、蒸気ヘッダ14が設けられる。蒸気ボイラ2の送風機3は、モータ18により駆動可能とされる。モータ18は、蒸気エンジン4によって、補助駆動可能とされる。蒸気エンジン4には、蒸気路13から蒸気が供給される。蒸気ヘッダ14内の蒸気圧に基づき、蒸気路13に設けた第一制御弁26の開度を調整することで、蒸気エンジン4への給蒸量が調整される。蒸気エンジン4によるモータ18の補助駆動が過大となる場合、蒸気エンジン4への給蒸量が削減されるか、蒸気エンジン4によるモータ18の補助駆動が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気ボイラからの蒸気を用いて、その蒸気ボイラに付属の回転機器を駆動して、消費電力の削減を図る蒸気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラには、送風機やポンプなどの各種の回転機器が用いられている。これらの回転機器は、モータで駆動されるが、ボイラの大型化に伴い、モータの駆動動力が大きくなり、消費電力も大きくなる。
【0003】
従来、蒸気タービンを用いて発電し、工場設備内の回転機器を駆動させることは行われているが、ボイラに付属の回転機器を駆動させることは行われていない。また、蒸気タービンを用いた発電は、大型の設備となり、発電機も必要で構成が複雑となる。さらに、発電を行う場合、電気事業法などの法規制に関わる課題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、簡易な構成および制御で、蒸気ボイラからの蒸気を用いて、その蒸気ボイラに付属の回転機器を駆動して、消費電力の削減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、蒸気ボイラからの蒸気を蒸気使用設備またはその手前の蒸気ヘッダへ送る蒸気路と、蒸気を用いて動力を起こし、前記蒸気ボイラに付属の回転機器を駆動する蒸気エンジンと、前記蒸気路から分岐して設けられ、前記蒸気路からの蒸気を前記蒸気エンジンへ供給するバイパス供給路と、前記蒸気エンジンにて使用後の蒸気を、前記蒸気路と前記バイパス供給路との分岐部よりも下流の前記蒸気路へ戻すバイパス戻し路と、前記蒸気路と前記バイパス供給路との分岐部よりも下流で、前記蒸気路と前記バイパス戻し路との合流部よりも上流の前記蒸気路、および/または、前記蒸気路と前記蒸気エンジンとを接続する前記バイパス供給路に設けられ、前記蒸気エンジンへの給蒸量を調整する制御弁とを備えることを特徴とする蒸気システムである。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、蒸気ボイラに付属の回転機器を、その蒸気ボイラからの蒸気を用いて駆動させることができる。従って、蒸気ボイラの消費電力を削減して、省エネルギーを図ることができる。また、蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、蒸気使用設備または蒸気ヘッダへ戻されるので、主蒸気として有効利用することができる。さらに、制御弁の開閉または開度を調整することで、蒸気エンジンへの給蒸量を調整し、これにより、蒸気使用設備または蒸気ヘッダへの給蒸量も調整する構成といえる。従って、蒸気ボイラの負荷(蒸気の利用状況)に応じて、蒸気エンジンを駆動することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記制御弁は、前記蒸気ボイラからの蒸気圧に基づき開度調整されることを特徴とする請求項1に記載の蒸気システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、簡易な構成および制御で、蒸気ボイラの負荷(蒸気の利用状況)に応じて、蒸気エンジンを駆動することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記制御弁は、第一制御弁と第二制御弁とからなり、前記第一制御弁は、前記蒸気路の内、前記バイパス供給路の分岐部よりも下流で、前記バイパス戻し路の合流部よりも上流に設けられ、前記第二制御弁は、前記バイパス供給路に設けられ、前記蒸気エンジンへの給蒸の有無または量を変更することを特徴とする請求項1に記載の蒸気システムである。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、蒸気路に設けた第一制御弁と、バイパス供給路に設けた第二制御弁とにより、蒸気エンジンの駆動制御をさらに精密に行うことができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記蒸気エンジンは、スクリュ式蒸気エンジンとされ、前記回転機器は、前記蒸気ボイラの燃焼室内へ燃焼用空気を供給する送風機とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気システムである。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、スクリュ式蒸気エンジンを用いることで、タービン式に比べて効率がよい。また、蒸気ボイラに付属の回転機器の内、消費電力の大きい送風機を蒸気エンジンにて補助駆動することで、効率よく省エネルギーを図ることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記回転機器は、モータにより駆動可能とされると共に、前記蒸気エンジンにより駆動可能とされ、前記モータによる駆動と前記蒸気エンジンによる駆動との切替えおよび/または駆動割合が変更可能とされ、前記蒸気エンジンによる前記モータの補助駆動が設定を超える場合には、前記蒸気エンジンへの給蒸量が制限されるか、前記蒸気エンジンによる前記モータの補助駆動が遮断されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気システムである。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、蒸気エンジンによるモータの補助駆動が過大となる場合には、蒸気エンジンへの給蒸量が調整されるか、蒸気エンジンによるモータの補助駆動が遮断されるので、モータなどの保護を図ることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記回転機器のモータは、インバータを用いて回転数を制御可能とされ、前記インバータから前記モータへ供給される電流値または電力値に基づき、前記蒸気エンジンによる前記モータの補助駆動が設定を超えるか否かが監視されることを特徴とする請求項5に記載の蒸気システムである。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、インバータを用いてモータの回転速度を制御することで、回転機器の制御を精密に行うことができる。しかも、そのインバータからモータへの供給電流または供給電力に基づき、蒸気エンジンによるモータの補助駆動が過大か否かを簡易に監視することができる。そして、補助駆動が過大となる場合には、蒸気エンジンへの給蒸量を調整するか、蒸気エンジンによるモータの補助駆動を遮断して、モータやインバータの保護を図ることができる。
【0017】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記蒸気ボイラへの給水タンクに、前記蒸気エンジンからのドレンが回収されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の蒸気システムである。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、蒸気エンジンから排出されるドレンの有効利用を図り、省エネルギーを図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の蒸気システムによれば、簡易な構成および制御で、蒸気ボイラからの蒸気を用いて、その蒸気ボイラに付属の回転機器を駆動して、消費電力の削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の蒸気システムは、蒸気ボイラに付属の回転機器を、同ボイラからの蒸気を用いて蒸気エンジンにより駆動可能とするシステムである。
【0021】
蒸気ボイラは、その種類を特に問わないが、たとえば貫流ボイラである。蒸気ボイラには、給水タンクから水(軟水でもよい)が供給され、その水は蒸気ボイラで蒸気化される。そして、その蒸気は蒸気路を介して蒸気使用設備へ送られる。蒸気路の中途には、蒸気ヘッダが設けられていてもよい。たとえば、複数のボイラを設置する場合、各ボイラからの蒸気路は蒸気ヘッダにまとめられ、この蒸気ヘッダからの蒸気路を介して、一または複数の蒸気使用設備へ蒸気が送られる。
【0022】
蒸気ボイラに付属の回転機器としては、蒸気ボイラへ燃焼用空気を供給する送風機、および蒸気ボイラへ水を供給する給水ポンプが含まれる。また、液体燃料を燃焼させる油焚きの蒸気ボイラの場合には、バーナへ液体燃料を供給するオイルポンプも含まれる。但し、これらに限らず、回転駆動力が用いられるその他の機器であってもよい。
【0023】
いずれの回転機器も、通常、モータにより駆動される。その際、インバータを用いて、モータの回転数を制御可能としてもよい。蒸気ボイラに付属の回転機器の内、少なくとも一つの回転機器は、蒸気エンジンによっても駆動可能とされる。この際、モータによる駆動と蒸気エンジンによる駆動との切替えおよび/または駆動割合(駆動の寄与割合)が変更可能に構成される。いずれにしても、蒸気エンジンの出力は、発電機を介することなく、直接にモータや回転機器を駆動する。
【0024】
送風機、給水ポンプおよびオイルポンプなどの回転機器の内、いずれを蒸気エンジンによっても駆動可能とするかは適宜に定められる。但し、送風機は給水ポンプやオイルポンプと比べて消費電力が大きいので、送風機を蒸気エンジンによっても駆動可能とすることが、消費電力の削減を図る上で好ましい。
【0025】
蒸気エンジンによっても駆動可能とする回転機器は、一つに限らず、複数であってもよい。複数の回転機器を蒸気エンジンによって駆動させる場合、回転機器ごとに蒸気エンジンを設けてもよいし、一つの蒸気エンジンの出力をベルト伝動などで分散させて各回転機器を駆動してもよい。
【0026】
蒸気エンジンとしては、蒸気タービンでもよいが、スクリュ式蒸気エンジンが好適に用いられる。スクリュ式蒸気エンジンは、蒸気タービンと比べて出力回転数が低く、減速機などを必ずしも必要とせずに、送風機などを回転させるのに適するからである。スクリュ式蒸気エンジンは、互いにかみ合うスクリュロータ間に蒸気が導入され、その蒸気がスクリュロータを回転させつつ膨張して減圧される構成であり、その際のスクリュロータの回転により動力を得る装置である。
【0027】
蒸気エンジンには、蒸気路から分岐するバイパス供給路を介して、蒸気が供給される。蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、バイパス戻し路を介して蒸気路へ戻される。その際、蒸気路の内、バイパス供給路の分岐部よりも下流に、バイパス戻し路が接続される。
【0028】
蒸気路および/またはバイパス供給路には、制御弁が設けられる。具体的には、次に述べる第一制御弁と第二制御弁との内、いずれか一方または双方が設けられる。第一制御弁は、蒸気路の内、バイパス供給路の分岐部よりも下流で、バイパス戻し路の合流部よりも上流に設けられる。第二制御弁は、バイパス供給路に設けられる。これらの制御弁は、それぞれ開度調整可能であるのが好ましいが、場合により開閉のみ可能な構成であってもよい。
【0029】
各制御弁は、典型的には蒸気ボイラからの蒸気圧に基づき制御される。この蒸気圧は、蒸気ヘッダまたは蒸気路に設けた圧力センサにより検出される。蒸気路に圧力センサを設ける場合、バイパス戻し路の合流部よりも下流に設けられる。この圧力センサは、蒸気ボイラの制御にも利用できる。たとえば、圧力センサの検出圧力に基づき、蒸気ボイラのバーナの燃焼状態が制御される。
【0030】
蒸気システムに設けた制御弁を制御することで、蒸気エンジンへの給蒸量が調整される。蒸気エンジンへの給蒸量の調整は、蒸気ヘッダ(または蒸気使用設備)への給蒸量にも影響を与える。そのため、蒸気使用設備における蒸気の使用負荷に応じて、蒸気エンジンへの給蒸量を調整するともいえる。たとえば、前記圧力センサの検出圧力が設定よりも低い場合には、蒸気エンジンではなく蒸気ヘッダへの給蒸を優先する。逆に、前記圧力センサの検出圧力が設定よりも高い場合には、蒸気エンジンへ給蒸して、蒸気エンジンでモータを補助駆動することで、省エネルギーを図ればよい。
【0031】
第一制御弁または第二制御弁の一方のみを備える場合、その開度を調整することで、蒸気エンジンへの給蒸量が調整される。第一制御弁と第二制御弁とのいずれか一方のみを設置する場合、第一制御のみとするのが好ましい。仮に、第一制御弁がない場合、蒸気路には圧損要素がなくなることになるので、蒸気は蒸気路を通過し易くなり、圧損要素である蒸気エンジンへのバイパス供給路へ流れにくくなるからである。また、第一制御弁を設けることで、第一制御弁が減圧弁のような役割も果たすことになる。
【0032】
一方、第一制御弁および第二制御弁の双方を備える場合、各制御弁の開度を調整することで、蒸気エンジンへの給蒸量が調整される。この際、いずれか一方の制御弁は、開閉のみ可能な構成であってもよい。
【0033】
いずれの場合も、ボイラを起動して前記圧力センサが設定圧力を検出する(起蒸)までは、モータにより回転機器を駆動する。そして、起蒸後には、蒸気エンジンへ蒸気を供給して、モータを補助駆動すればよい。蒸気エンジンによる補助駆動により、回転機器の回転負荷が軽減され、モータの消費電力の削減が図られる。
【0034】
蒸気エンジンによるモータの補助駆動が過大となる場合には、モータやインバータを保護するために、蒸気エンジンへの給蒸量が調整(制限)されるか、蒸気エンジンによるモータの補助駆動が遮断される。蒸気エンジンへの給蒸量の調整は、制御弁の開度または開閉を制御することでなされる。蒸気エンジンによるモータの補助駆動の遮断は、蒸気エンジンとモータとの接続を切り離せばよい。
【0035】
蒸気エンジンによるモータの補助駆動が過大か否かは、インバータからモータへ供給される電流値または電力値により検知することができる。あるいは、タコメータなどにより、蒸気エンジン、モータまたは回転機器の回転数(回転速度)を計測し、回転数が設定を超えるか否かで検知することができる。その他、蒸気エンジンへの給蒸圧が設定を超えるか否かなど、各種の方法で検知することができる。
【0036】
以上の構成の蒸気システムによれば、蒸気ボイラに付属の回転機器を、その蒸気ボイラからの蒸気を用いて補助駆動させることができる。従って、蒸気ボイラの消費電力を削減して、省エネルギーを図ることができる。また、蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、主蒸気として有効利用することができる。
【0037】
蒸気エンジンからのドレンを、ボイラへの給水タンクなどへ戻せば、熱回収を図ることができる。この際、蒸気エンジンからのドレンは、直接に給水タンクへ戻してもよいが、ドレンが高温高圧であることを考慮して、次のように構成してもよい。すなわち、蒸気エンジンからのドレンは、ボイラへの給水などと熱交換器にて熱交換を図られた後、給水ポンプより上流側(たとえば給水タンク)へ戻してもよい。
【0038】
ところで、蒸気エンジンは、蒸気を減圧するものであるから、減圧弁として利用することもできる。すなわち、ボイラと蒸気利用設備との間に設けられる減圧弁に代えて、蒸気エンジンを設置してもよい。この場合、減圧弁としての蒸気エンジンで、ボイラに付属の回転機器を駆動できるので、省エネルギーを図ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸気システムの一実施例を示す概略構成図である。本実施例の蒸気システム1は、蒸気ボイラ2に適用され、この蒸気ボイラ2の送風機3を、同ボイラ2からの蒸気を用いて蒸気エンジン4により補助駆動可能とする。
【0040】
蒸気ボイラ2およびその缶体5は、その構成を特に問わないが、図示例の場合、円筒状の缶体5を備える貫流ボイラとされる。この場合、上下に離隔して平行に配置される中空円環状の上部管寄せ(図示省略)と下部管寄せ(図示省略)との間を、円筒状に配列される多数の水管(図示省略)で接続して、缶体5が構成される。そして、この缶体5は、円筒状の缶体カバー6で覆われる。
【0041】
缶体5は、下部が耐火材で閉塞される一方、上部中央に下方へ向けてバーナ7が設けられる。このバーナ7には、オイルポンプ(図示省略)を介して、液体燃料が供給される。また、その燃焼用空気は、送風機3から缶体5内へ供給される。バーナ7および送風機3を作動させることで、缶体5内において燃料の燃焼がなされる。この際、円筒状の水管列の内側が、燃焼室として機能する。バーナ7による燃料の燃焼ガスは、各水管内の水と熱交換した後、煙道(図示省略)および煙突(図示省略)を介して、排ガスとして外部へ排出される。
【0042】
缶体5内へは、給水タンク8の水が、給水ポンプ9により、給水路10を介して供給可能とされる。すなわち、給水タンク8の水は、給水ポンプ9により、缶体5の下部管寄せへ供給可能とされる。
【0043】
給水タンク8は、所定量の水を貯留する。この水は、好ましくは軟水とされる。軟水を用いる場合、給水タンク8への給水路11には、軟水装置(図示省略)が設置される。軟水装置は、イオン交換樹脂などを用いて、原水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度分を除去する装置である。一方、給水ポンプ9は、給水タンク8内の水を、缶体5内へ送り込むポンプである。
【0044】
このようにして蒸気ボイラ2へ供給された水は、バーナ7の燃焼により加熱され蒸気化される。その蒸気は、気水分離器(図示省略)や主蒸気弁12を介して、蒸気路13を通って蒸気ヘッダ14へ供給される。そして、蒸気ヘッダ14の蒸気は、蒸気路15を介して蒸気使用設備へ供給される。
【0045】
蒸気ヘッダ14には圧力センサ16が設けられており、この圧力センサ16は制御器17に接続されている。そして、制御器17は、圧力センサ16による検出圧力(蒸気圧)に基づき、蒸気ボイラ2の運転状態を制御する。具体的には、制御器17は、圧力センサ16による検出圧力に基づき、バーナ7の燃焼量を制御する。たとえば、バーナ7は、高燃焼、低燃焼および停止の三段階で燃焼量が変えられる。但し、このような三位置制御に限らず、比例制御などで燃焼量を調整してもよい。
【0046】
送風機3は、モータ18により駆動される。このモータ18には、三相交流電源19からインバータ20を介して電力が供給される。インバータ20においてモータ18に印加する電源の周波数を変えることで、モータ18ひいては送風機3の回転数(回転速度)を変えることができる。インバータ20は、制御器17に接続されており、制御器17からの周波数指令信号に基づきモータ18の回転数を変化させる。
【0047】
モータ18は、蒸気エンジン4によって補助駆動可能とされる。本実施例の蒸気エンジン4は、スクリュ式蒸気エンジンとされる。スクリュ式蒸気エンジン4は、互いにかみ合うスクリュロータ間に蒸気が導入され、その蒸気がスクリュロータを回転させつつ膨張して減圧される構成であり、その際のスクリュロータの回転により動力を得る装置である。
【0048】
蒸気エンジン4には、蒸気路13から分岐するバイパス供給路21を介して、蒸気ボイラ2からの蒸気が供給される。そして、蒸気エンジン4にて使用後の蒸気は、バイパス戻し路22を介して、蒸気路13へ戻される。この際、蒸気路13の内、バイパス供給路21の分岐部よりも下流に、バイパス戻し路22が接続される。
【0049】
以上の構成から明らかなとおり、送風機3は、モータ18により駆動可能とされると共に、蒸気エンジン4によっても駆動可能とされる。具体的には、スクリュ式蒸気エンジン4のスクリュロータの回転駆動力を用いて、モータ18のロータおよび送風機3の羽根車が回転可能とされる。この際、スクリュ式蒸気エンジン4の出力軸23と、モータ18のロータ24とは、たとえばクラッチ25を介して接続される。この場合、蒸気エンジン4による送風機3の駆動の有無を切り替え可能とされる。但し、スクリュ式蒸気エンジン4の出力軸23と、モータ18のロータ24とは、クラッチ25を介して接続する代わりに、単にカップリングを介して接続してもよい。
【0050】
蒸気路13には、バイパス供給路21の分岐部よりも下流で、バイパス戻し路22の合流部よりも上流に、第一制御弁26が設けられる。この第一制御弁26は、開度調整可能な電動弁から構成される。また、場合により、この第一制御弁26に加えて、バイパス供給路21に第二制御弁27を設けてもよい。この第二制御弁27は、開度調整可能な電動弁から構成されるが、場合により開閉のみ可能な電磁弁から構成されてもよい。
【0051】
前述したように、制御器17には、インバータ20および圧力センサ16が接続されるが、これに加えて第一制御弁26も接続される。さらに、第二制御弁27やクラッチ25を有する場合には、それらも制御器17に接続される。
【0052】
制御器17は、圧力センサ16による検出圧力(蒸気圧)に基づき、蒸気ボイラ2の運転状態を制御する。具体的には、バーナ7および送風機3などを制御する。バーナ7を制御することで、バーナ7の燃焼量を変更できる。また、インバータ20で送風機3の回転数を制御することで、燃焼室内への給気量を変更できる。従って、たとえば、圧力センサ16による検出圧力が設定よりも低い場合には、バーナ7を高燃焼で作動させると共に、それに応じた燃焼用空気を供給するように、インバータ20へ周波数指令信号を出力する。このようにして、蒸気ボイラ2の負荷(蒸気使用設備における蒸気の利用負荷)に応じて、蒸気ボイラ2の運転状態が制御される。
【0053】
また、制御器17は、圧力センサ16による検出圧力に基づき、第一制御弁26の開度を調整する。たとえば、蒸気ボイラ2を起動して圧力センサ16が設定圧力を検出する(起蒸)までは、モータ18のみで送風機3を駆動する。そのために、起蒸までは第一制御弁26は全開とされる。この際、蒸気エンジン4が圧損要素となるので、第一制御弁26を全開しておけば、蒸気ボイラ2からの蒸気は、蒸気エンジン4へは流れにくく、直接に蒸気ヘッダ14へ送られる。第二制御弁27を備える場合、起蒸まで第二制御弁27を全閉しておくことで、蒸気エンジン4への給蒸を確実に遮断できる。また、クラッチ25を備える場合、起蒸まではモータ18と蒸気エンジン4との接続を切り離しておいてもよい。
【0054】
起蒸後には、蒸気エンジン4へ給蒸して、蒸気エンジン4にてモータ18を補助駆動する。つまり、制御器17は、圧力センサ16による検出圧力が設定圧力を超えることで、起蒸を確認すると、第一制御弁26を閉じる。この際、第一制御弁26を徐々に閉じることで、徐々に蒸気エンジン4を駆動すると共に、蒸気ヘッダ14の急激な圧力低下を防止することができる。このようにして蒸気エンジン4によりモータ18のロータ24を駆動すると、モータ18による送風機3の回転負荷が軽減され、消費電力の削減が図られる。
【0055】
ところで、第二制御弁27を備える場合、起蒸後には第二制御弁27は全開とされるか、第一制御弁26と反対方向へ操作される。すなわち、第一制御弁26が開く方向へ制御される場合、第二制御弁27は閉じる方向へ制御され、第一制御弁26が閉じる方向へ制御される場合、第二制御弁27は開く方向へ制御される。
【0056】
蒸気エンジン4への給蒸量の調整は、圧力センサ16による検出圧力に基づき、第一制御弁26(および第二制御弁27)の開度調整によってなされる。たとえば、設定圧力を下回った場合は、第一制御弁26を全開にし、設定圧力以上の所定圧力範囲内ならば、第一制御弁26を閉じる。また、後述するように、モータ18の補助駆動が過大となりそうなら、第一制御弁26を開いて、蒸気エンジン4の補助駆動を弱める。
【0057】
蒸気エンジン4によるモータ18の補助駆動を行うと、モータ18の回転数がインバータ20による指令以上になる場合も想定される。このようにモータ18の補助駆動が過大となる場合には、モータ18やインバータ20を保護するために、蒸気エンジン4への給蒸が削減または停止される。それには、制御器17は、第一制御弁26を開ける方向へ制御すればよい。あるいは、第二制御弁27を備える場合、第二制御弁27を閉じる方向へ制御すればよい。あるいは、クラッチ25を備える場合には、クラッチ25を制御して、蒸気エンジン4とモータ18との接続を切り離せばよい。
【0058】
制御器17は、蒸気エンジン4によるモータ18の補助駆動が過大か否かを、次のようにして検出する。たとえば、制御器17は、インバータ20からモータ18へ供給される電流値または電力値を監視し、その電流値または電力値によりモータ18の補助駆動を検出する。具体的には、たとえば、モータ18へ印加する電源の周波数に応じた設定値を、モータ18への供給電流が下回ると、補助駆動が過大と検知する。あるいは、蒸気エンジン4、モータ18または送風機3の回転数を計測し、その回転数が設定値を超えるか否かで検知してもよい。その場合、モータ18のロータ24などにタコメータを設け、モータ18などの回転数を制御器17で監視すればよい。また、蒸気エンジン4の出入口の差圧や、蒸気エンジン4への給蒸量などによって、補助駆動が過大か否かを検知してもよい。
【0059】
ところで、蒸気エンジン4からのドレンは、スチームトラップ28およびドレン回収路29を介して、給水タンク8へ戻される。この際、図2の変形例に示すように、給水路10の中途(図示例では給水ポンプ9と缶体5との間)と、ドレン回収路29の中途とに、熱交換器30を設置してもよい。この場合、高温高圧のドレンは、熱交換器30で熱エネルギーを回収された後、給水タンク8へ戻される。
【0060】
本発明の蒸気システム1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、蒸気ボイラ2およびその缶体5の構成は、一例であって、前記実施例に限定するものではない。また、前記実施例では、蒸気エンジン4は、スクリュ式としたが、場合によりタービン式としてもよい。
【0061】
前記実施例では、蒸気エンジン4により送風機3を補助駆動する例について説明したが、送風機3に代えてまたはこれに加えて、その他の回転機器(給水ポンプ9やオイルポンプなど)を補助駆動してもよい。たとえば、給水ポンプ9を蒸気エンジン4で駆動してもよく、その場合、給水ポンプ9を作動させたい場合のみ、蒸気エンジン4へ給蒸すればよい。また、各回転機器は、必ずしもインバータ制御される必要はない。
【0062】
また、蒸気エンジン4による補助駆動は、一つの回転機器に限らず、複数の回転機器であってもよい。複数の回転機器を蒸気エンジン4で補助駆動する場合、回転機器ごとに蒸気エンジン4を設けてもよいし、一つの蒸気エンジン4の出力をベルト伝動などで分散させて各回転機器を駆動してもよい。
【0063】
さらに、前記実施例のように、缶体5が一つの単缶の場合、蒸気ヘッダ14を省略して、缶体5からの蒸気を直接に蒸気使用設備へ供給してもよい。その場合、圧力センサ16は、蒸気路13(15)の内、バイパス戻し路22の合流部よりも下流側に設置される。
【0064】
一方、図1および図2において、缶体5が複数の多缶とすることもできる。その場合、図示される蒸気ヘッダ14に、複数の缶体5からの蒸気路13を接続して、その蒸気ヘッダ14から蒸気使用設備へ蒸気を供給する。そして、各缶体5から蒸気ヘッダ14への蒸気路13には、バイパス供給路21およびバイパス戻し路22を介して、蒸気エンジン4を設けて、それぞれ各種回転機器を補助駆動することができる。
【0065】
また、前記実施例では、第一制御弁26のみ、または第一制御弁26と第二制御弁27とで、蒸気エンジン4への給蒸量を調整したが、場合により第一制御弁26を設けずに、第二制御弁27のみで、蒸気エンジン4への給蒸量を調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の蒸気システムの一実施例を示す概略構成図である。
【図2】図1の蒸気システムの変形例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1 蒸気システム
2 蒸気ボイラ
3 送風機(回転機器)
4 蒸気エンジン
8 給水タンク
9 給水ポンプ(回転機器)
13 蒸気路
14 蒸気ヘッダ
15 蒸気路
16 圧力センサ
18 モータ
20 インバータ
21 バイパス供給路
22 バイパス戻し路
26 第一制御弁(制御弁)
27 第二制御弁(制御弁)
29 ドレン回収路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ボイラからの蒸気を蒸気使用設備またはその手前の蒸気ヘッダへ送る蒸気路と、
蒸気を用いて動力を起こし、前記蒸気ボイラに付属の回転機器を駆動する蒸気エンジンと、
前記蒸気路から分岐して設けられ、前記蒸気路からの蒸気を前記蒸気エンジンへ供給するバイパス供給路と、
前記蒸気エンジンにて使用後の蒸気を、前記蒸気路と前記バイパス供給路との分岐部よりも下流の前記蒸気路へ戻すバイパス戻し路と、
前記蒸気路と前記バイパス供給路との分岐部よりも下流で、前記蒸気路と前記バイパス戻し路との合流部よりも上流の前記蒸気路、および/または、前記蒸気路と前記蒸気エンジンとを接続する前記バイパス供給路に設けられ、前記蒸気エンジンへの給蒸量を調整する制御弁と
を備えることを特徴とする蒸気システム。
【請求項2】
前記制御弁は、前記蒸気ボイラからの蒸気圧に基づき開度調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項3】
前記制御弁は、第一制御弁と第二制御弁とからなり、
前記第一制御弁は、前記蒸気路の内、前記バイパス供給路の分岐部よりも下流で、前記バイパス戻し路の合流部よりも上流に設けられ、
前記第二制御弁は、前記バイパス供給路に設けられ、前記蒸気エンジンへの給蒸の有無または量を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項4】
前記蒸気エンジンは、スクリュ式蒸気エンジンとされ、
前記回転機器は、前記蒸気ボイラの燃焼室内へ燃焼用空気を供給する送風機とされた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気システム。
【請求項5】
前記回転機器は、モータにより駆動可能とされると共に、前記蒸気エンジンにより駆動可能とされ、前記モータによる駆動と前記蒸気エンジンによる駆動との切替えおよび/または駆動割合が変更可能とされ、
前記蒸気エンジンによる前記モータの補助駆動が設定を超える場合には、前記蒸気エンジンへの給蒸量が制限されるか、前記蒸気エンジンによる前記モータの補助駆動が遮断される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気システム。
【請求項6】
前記回転機器のモータは、インバータを用いて回転数を制御可能とされ、
前記インバータから前記モータへ供給される電流値または電力値に基づき、前記蒸気エンジンによる前記モータの補助駆動が設定を超えるか否かが監視される
ことを特徴とする請求項5に記載の蒸気システム。
【請求項7】
前記蒸気ボイラへの給水タンクに、前記蒸気エンジンからのドレンが回収される
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の蒸気システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−115410(P2009−115410A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290569(P2007−290569)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)