説明

蒸気システム

【課題】 蒸気エンジンを用いて空気圧縮機を駆動するに際し、圧縮空気の使用負荷だけでなく、蒸気の使用負荷をも考慮して制御する。また、蒸気エンジンと空気圧縮機からの熱回収により、省エネルギーを図る。
【解決手段】 ボイラ2からの蒸気を用いて動力を起こす蒸気エンジン3により、空気圧縮機4が駆動される。蒸気ヘッダ21に設けた圧力センサ25により、蒸気の使用負荷が監視される。圧縮空気路26に設けた圧力センサ27により、圧縮空気の使用負荷が監視される。各圧力センサ25,27による検出圧力に基づき、蒸気エンジン3への給蒸を制御する。蒸気エンジン3の軸封部から漏れる蒸気やドレン、蒸気エンジン3で発生するドレンは、回収路28,29を介して、給水タンク5へ供給される。給水タンク5への補給水は、圧縮機4を介して、給水タンク5へ供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気を用いて圧縮機などを駆動して、消費電力の削減を図る蒸気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スクリュ型膨張機(1)により空気圧縮機(2)を駆動し、空気圧縮機(2)の負荷変動に際してはスクリュ型膨張機(1)に流入する蒸気を加減弁(10)により制御して対応すると共に、スクリュ型膨張機(1)の蒸気流入側と蒸気流出側との間に設けたバイパス弁(9)を制御することにより、前記負荷変動に拘らず蒸気流出側における蒸気の背圧を一定に保持する方法が開示されている。ここで、バイパス弁(9)の制御は、スクリュ型膨張機(1)からの蒸気出口管(5)の背圧を検出器(20)により検出してなされる。また、加減弁(10)の制御は、スクリュ型膨張機(1)の駆動軸の回転数を検出器(23)により検出してなされる。
【特許文献1】特開昭63−45403号公報 (特許請求の範囲、図1、公報第2頁左下欄第1−5行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示される発明の場合、空気圧縮機の負荷変動にも拘らずその回転を一定に保持するために、加減弁を調整してスクリュ型膨張機へ供給する蒸気量が制御されるが、空気圧縮機の能力制御はアンローダによって行われる(公報第2頁右下欄第18行−第3頁左上欄第5行)。あるいは、空気圧縮機の能力制御は、スクリュ型膨張機へ供給する蒸気量を加減弁によって制御して、スクリュ型膨張機の回転数を変化させて行われる(公報第3頁左上欄第5−9行)。しかしながら、空気圧縮機の負荷変動を検知して、その負荷変動に対し迅速で正確に応答するように制御するものではない。
【0004】
また、前記特許文献1に開示される発明の場合、蒸気の使用負荷をも考慮して、スクリュ型膨張機への給蒸を制御できない。すなわち、前記特許文献1に開示される発明の場合、蒸気の使用負荷と、圧縮機から吐出される流体の使用負荷との双方に基づき制御できない。
【0005】
さらに、前記特許文献1に開示される発明の場合、空気圧縮機の能力制御はアンローダによって行われる。従って、スクリュ型膨張機は、アンローダ時に不要な運転があるために熱損失が発生し、その際に発生する熱も回収されないため、省エネルギーを図ることができない。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、簡易な構成および制御で、流体負荷だけでなく蒸気負荷をも考慮して制御すると共に、熱回収により省エネルギーを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ボイラからの蒸気を用いて動力を起こす原動機と、この原動機により駆動され、流体を吐出または吸入する被動機と、前記原動機にて使用後の蒸気が供給される箇所へ、前記原動機を介することなく蒸気を供給するバイパス路と、このバイパス路に設けられるバイパス弁と、前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、前記被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき、前記原動機への給蒸を制御する制御器と、前記ボイラへの給水が貯留され、前記原動機の軸封部から漏れる蒸気もしくはドレン、前記原動機で発生するドレン、または前記被動機の発熱を利用して、貯留水または補給水が温められる給水タンクとを備えることを特徴とする蒸気システムである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、流体負荷だけでなく蒸気負荷をも考慮して原動機への給蒸を制御すると共に、原動機の軸封部から漏れる蒸気もしくはドレン、原動機で発生するドレン、または被動機の発熱を利用して、給水タンク内の貯留水または給水タンクへの補給水を温めることで、省エネルギーを図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記原動機の軸封部から漏れる蒸気、および/または、前記原動機の軸封部から漏れるドレンが、前記給水タンクへ供給されて、前記給水タンク内の貯留水が温められることを特徴とする請求項1に記載の蒸気システムである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、原動機の軸封部から漏れる蒸気、および/または、原動機の軸封部から漏れるドレンにより、給水タンク内の貯留水が温められるため、熱損失を防止できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記原動機で発生するドレンが前記給水タンクへ供給されて、前記給水タンク内の貯留水が温められることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気システムである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、原動機で発生するドレンにより、給水タンク内の貯留水が温められるため、原動機からの熱回収を有効に図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記被動機の冷却を前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水を用いて行うことで、前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水が温められることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気システムである。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、被動機の熱により、給水タンク内の貯留水または給水タンクへの補給水が温められるため、省エネルギーを図ることができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、電動機により駆動され、流体を吐出または吸入する第二の被動機をさらに備え、前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、前記各被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき、前記原動機への給蒸が制御され、前記各被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷に基づき、前記電動機が制御され、前記第二の被動機の冷却を前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水を用いて行うことで、前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水が温められることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気システムである。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、第二の被動機の熱により、給水タンク内の貯留水または給水タンクへの補給水が温められるため、省エネルギーを図ることができる。また、ボイラからの蒸気を用いて動力を起こす原動機の他に、第二の被動機を駆動させる電動機を備えるので、蒸気負荷に拘わらず、安定して流体を吐出または吸入することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の蒸気システムによれば、簡易な構成および制御で、流体負荷だけでなく蒸気負荷をも考慮して制御すると共に、熱回収により省エネルギーを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の蒸気システムは、ボイラからの蒸気を用いて動力を起こす原動機と、この原動機により駆動される圧縮機または真空ポンプなどの被動機とを備える。
【0019】
ボイラは、周知のとおり、給水タンクから供給される水を加熱して蒸気化する。そして、その蒸気は、原動機などの蒸気利用機器へ供給可能とされる。
【0020】
原動機は、蒸気を用いて動力を起こす蒸気エンジンである。蒸気エンジンは、蒸気タービンでもよいが、好適にはスクリュ式蒸気エンジンである。スクリュ式蒸気エンジンは、互いにかみ合うスクリュロータ間に蒸気が導入され、その蒸気によりスクリュロータを回転させつつ蒸気を膨張して減圧し、その際のスクリュロータの回転により動力を得る装置である。
【0021】
被動機は、蒸気エンジンにより駆動され、流体を吐出または吸入する装置である。具体的には、被動機は、ポンプ、送風機、圧縮機、または真空ポンプなどである。被動機は、ポンプ、送風機または圧縮機の場合、流体を吐出し、真空ポンプの場合、流体を吸入する。
【0022】
被動機は、たとえば空気圧縮機とされる。この空気圧縮機は、往復式や回転式など、その種類を特に問わないが、好適にはスクリュ式圧縮機である。スクリュ式圧縮機は、互いにかみ合って回転するスクリュロータ間に気体を吸入して、スクリュロータの回転により圧縮して吐出する装置である。
【0023】
蒸気エンジンには、ボイラから給蒸路を介して、蒸気が供給される。ボイラからの蒸気は、蒸気ヘッダ(第一蒸気ヘッダという)に供給され、その蒸気ヘッダの蒸気が、給蒸路を介して蒸気エンジンに供給されてもよい。
【0024】
蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、排蒸路を介して排出される。蒸気エンジンは、蒸気を減圧するものであるから、減圧弁としても機能する。それ故、蒸気エンジンにて使用後の蒸気は、従来の減圧弁通過後の蒸気と同様に利用可能である。すなわち、従来、ボイラからの蒸気は、減圧弁を介して蒸気利用機器に供給されるが、それと同様に、蒸気エンジンにて使用後の蒸気も、蒸気利用機器に供給できる。この際、蒸気エンジンからの蒸気は、排蒸路を介して蒸気ヘッダ(第二蒸気ヘッダという)に供給され、その蒸気ヘッダの蒸気が、蒸気利用機器に供給されてもよい。
【0025】
蒸気利用機器には、蒸気エンジンを介することなく、バイパス路を介しても蒸気が供給可能とされる。典型的には、前記ボイラからの蒸気が、バイパス路を介しても、排蒸路または第二蒸気ヘッダに供給可能とされる。この際、蒸気エンジンに対する給蒸路と排蒸路とをバイパス路で接続してもよいし、第一蒸気ヘッダと第二蒸気ヘッダとをバイパス路で接続してもよい。また、前記ボイラとは異なる箇所からバイパス路を介して、排蒸路または第二蒸気ヘッダに蒸気を供給可能としてもよい。いずれにしても、バイパス路には、バイパス弁が設けられる。このバイパス弁は、電磁弁または電動弁でもよいが、自力式の減圧弁でもよい。
【0026】
蒸気エンジンの制御は、蒸気エンジンへの給蒸の有無または量を制御してなされる。具体的には、蒸気エンジンへの給蒸路に給蒸弁を設け、この給蒸弁の開閉または開度を制御する。これにより、蒸気エンジンへの給蒸の有無または量を変更でき、蒸気エンジンの作動の有無または出力を変更できる。
【0027】
たとえば、蒸気エンジンが蒸気タービンの場合、給蒸弁の開閉を制御することで、蒸気タービンへの給蒸の有無を切り替えればよい。これにより、蒸気タービンの作動の有無を変更することができる。一方、蒸気エンジンがスクリュ式蒸気エンジンの場合、蒸気タービンの場合と同様に給蒸弁の開閉を制御してもよいし、給蒸弁の開度を制御してもよい。給蒸弁の開度を制御する場合、スクリュ式蒸気エンジンへの給蒸量を調整して、スクリュ式蒸気エンジンの出力を変更することができる。
【0028】
但し、蒸気エンジンの制御は、以上の構成に限らない。すなわち、蒸気エンジンは、給蒸の有無または量が変更可能であれば足り、給蒸路に給蒸弁を設けて、その給蒸弁により制御する必要は必ずしもない。たとえば、前述したように、蒸気エンジンに対する給蒸路と排蒸路とをバイパス路で接続し、このバイパス路に設けたバイパス弁の開閉または開度を制御してもよい。また、前記給蒸弁に加えて、このバイパス弁を設けてもよい。
【0029】
蒸気エンジンは、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷と、蒸気エンジンの出口側の蒸気負荷とに基づき、給蒸を制御される。
【0030】
ここで、流体負荷とは、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体の負荷である。具体的には、被動機がポンプ、送風機または圧縮機の場合、これが吐出する空間内の流体の使用量である。また、被動機が真空ポンプの場合、これが吸入する空間内の流体の存在量である。つまり、被動機が真空ポンプの場合、真空度が低くなれば、流体負荷があることになる。いずれの流体負荷も、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の圧力により検出できる。
【0031】
一方、蒸気負荷とは、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気の使用量である。この蒸気負荷は、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気圧により検出できる。たとえば、蒸気エンジンからの排蒸路またはその先に設けられる第二蒸気ヘッダ内の蒸気圧に基づき、蒸気の使用負荷(蒸気負荷)を検出できる。すなわち、蒸気利用機器にて蒸気が使用される場合には、排蒸路内または第二蒸気ヘッダ内の蒸気圧が下がるので、蒸気負荷を検出できる。
【0032】
このように、流体負荷も蒸気負荷も、圧力にて検出するのが簡易である。従って、被動機により流体が吐出または吸入される空間内の圧力と、蒸気エンジンにて使用後の蒸気が供給される箇所の蒸気圧とに基づき、蒸気エンジンへの給蒸を制御することができる。
【0033】
ところで、給水タンク内の貯留水または給水タンクへの補給水は、原動機の軸封部から漏れる蒸気もしくはドレン、原動機で発生するドレン、または被動機の発熱を利用して温められる。その手段として、次の三つの実施形態を挙げることができる。なお、これらの三つの実施形態の内、複数の実施形態を組み合わせてもよい。
【0034】
第一実施形態では、原動機の軸封部から漏れる蒸気、および/または、原動機の軸封部から漏れるドレンは、漏れ熱回収路を介して、給水タンクへ供給される。これにより、給水タンク内の貯留水を温めることができる。
【0035】
第二実施形態では、原動機で発生するドレンは、ドレン回収路を介して、給水タンクへ供給される。これにより、給水タンク内の貯留水を温めることができる。なお、ドレン回収路の中途には、スチームトラップを設けるのが好ましい。
【0036】
第三実施形態では、給水タンク内の貯留水または給水タンクへの補給水により、被動機の冷却が図られる。給水タンク内の貯留水にて被動機を冷却する場合、給水タンク内の貯留水は、被動機を介して、給水タンク内に戻るよう循環される。一方、給水タンクへの補給水にて被動機を冷却する場合、給水タンクへの補給水は、被動機を介して、給水タンクへ供給される。いずれの場合も、被動機は、油などの媒体を介して冷却を図られてもよい。
【0037】
本発明の蒸気システムは、蒸気エンジンにより駆動される被動機(第一の被動機)とは異なる第二の被動機をさらに備えてもよい。
【0038】
第二の被動機は、第一の被動機により流体が吐出または吸入される空間に対し、第一の被動機と同様に、流体を吐出または吸入する装置である。そのため、第二の被動機は、第一の被動機と同一機能のものとされる。たとえば、第一の被動機が空気圧縮機の場合には、第二の被動機も空気圧縮機とされる。但し、第二の被動機は、第一の被動機と機能が同一であれば、機構まで同一である必要はない。たとえば、第一の被動機がスクリュ式の空気圧縮機である場合、第二の被動機は、空気圧縮機である限り、スクリュ式に限らず、往復式などでもよい。
【0039】
第二の被動機は、電動機により駆動可能とされる。電動機は、各被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷に基づき制御される。また、蒸気エンジンは、蒸気エンジンからの蒸気とバイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、各被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき制御される。このようにして制御される蒸気エンジンと電動機とは、蒸気エンジンの駆動だけでは不十分な場合、電動機を補助駆動させるのが好ましい。また、蒸気エンジンの停止中は、電動機を駆動して、第二の被動機にて流体を吐出または吸入できる。
【0040】
このような構成の場合、給水タンク内の貯留水または給水タンクへの補給水により、第二の被動機の冷却を図ってもよい。給水タンク内の貯留水にて第二の被動機を冷却する場合、給水タンク内の貯留水は、第二の被動機を介して、給水タンク内に戻るよう循環される。一方、給水タンクへの補給水にて第二の被動機を冷却する場合、給水タンクへの補給水は、第二の被動機を介して、給水タンクへ供給される。いずれの場合も、第二の被動機は、油などの媒体を介して冷却を図られてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸気システムの一実施例を示す概略図である。本実施例の蒸気システム1は、ボイラ2からの蒸気を用いて動力を起こす原動機3と、これにより駆動される被動機4とを備える。
【0042】
ボイラ2は、周知のとおり、給水タンク5から供給される水を加熱して蒸気化する。給水タンク5内の水は、給水ポンプ6を介してボイラ2へ供給され、ボイラ2において蒸気化される。
【0043】
原動機3は、ボイラ2からの蒸気を受けて動力を起こす蒸気エンジンである。蒸気エンジン3は、蒸気タービンでもよいが、好適にはスクリュ式蒸気エンジンである。図2は、スクリュ式蒸気エンジンの一例の概略構造図であり、一部を断面にして示している。
【0044】
図2に示すとおり、スクリュ式蒸気エンジン3は、中空のケーシング7内に、互いにかみ合うようスクリュロータ8,8が設けられて構成される。この際、各スクリュロータ8の両端軸部は、軸受9を介して、ケーシング7に回転自在に保持される。なお、蒸気エンジン3の軸封部は、通常、非接触のシール(Oリングなど)10のため、この軸封部から蒸気および/またはドレンが漏れてしまうものである。
【0045】
スクリュ式蒸気エンジン3は、互いにかみ合うスクリュロータ8,8間に、ボイラ2からの蒸気が吸込口11を介して導入されることで、その蒸気によりスクリュロータ8,8を回転させつつ蒸気を膨張して減圧する。そして、その際のスクリュロータ8の回転により動力を得ることができる。減圧後の蒸気は、吐出口12を介して、蒸気エンジン3から排出される。
【0046】
被動機4は、蒸気エンジン3により駆動され、流体を吐出または吸入する装置である。具体的には、被動機4は、ポンプ、送風機、圧縮機または真空ポンプなどである。本実施例の被動機4は、空気圧縮機である。この圧縮機4は、その種類を特に問わないが、好適にはスクリュ式圧縮機である。スクリュ式圧縮機は、互いにかみ合って回転するスクリュロータ間に気体を吸入して、スクリュロータの回転により圧縮して吐出する装置である。
【0047】
圧縮機4は、蒸気エンジン3により駆動される。具体的には、スクリュ式蒸気エンジン3のスクリュロータ8の回転駆動力を用いて、スクリュ式圧縮機4のスクリュロータが回転される。この際、蒸気エンジン3の出力軸13と、圧縮機4の入力軸14とは、発電機を介することなく、カップリング15で接続される。但し、出力軸13と入力軸14とは、クラッチを介して接続されてもよい。この場合、蒸気エンジン3による圧縮機4の駆動の有無を、クラッチにより切り替えることができる。また、クラッチは、変速機を備えてもよい。この場合、変速比を変更することで、圧縮機4の吐出圧力を変更することができる。さらに、出力軸13と入力軸14とは、電動機(モータ)を介して接続されてもよい。この場合、圧縮機4は、蒸気エンジン3と電動機との内、一方または双方により駆動可能に、駆動割合を変更可能とされる。本実施例では、圧縮機4は、図1に示すように、蒸気エンジン3と電動機16とに接続されている。これにより、圧縮機4は、蒸気エンジン3で駆動可能とされると共に、電動機16でも駆動可能とされる。
【0048】
蒸気エンジン3には、ボイラ2からの蒸気が、給蒸路17を介して供給される。本実施例では、ボイラ2からの蒸気は、第一蒸気ヘッダ18に供給され、この第一蒸気ヘッダ18の蒸気が、給蒸路17を介して蒸気エンジン3に供給される。第一蒸気ヘッダ18から蒸気エンジン3への給蒸路17には、給蒸弁19が設けられる。この給蒸弁19の開閉を制御することで、蒸気エンジン3の作動の有無が切り替えられる。但し、給蒸弁19の開度を制御して、蒸気エンジン3の出力を調整してもよい。
【0049】
蒸気エンジン3にて使用後の蒸気は、各種の蒸気利用機器(図示省略)において利用することができる。本実施例では、蒸気エンジン3からの蒸気は、排蒸路20を介して第二蒸気ヘッダ21に供給され、この第二蒸気ヘッダ21の蒸気が、各種の蒸気利用機器へ供給される。ところで、蒸気エンジン3は、圧縮機4を駆動するだけでなく、減圧弁としても機能する。従って、蒸気エンジン3にて使用後の蒸気は、減圧弁通過後の蒸気として、各種の蒸気利用機器において、そのまま利用することもできる。
【0050】
第一蒸気ヘッダ18と第二蒸気ヘッダ21とは、バイパス路22を介しても接続される。図示例では、第一蒸気ヘッダ18から蒸気エンジン3への給蒸路17の内、給蒸弁19よりも上流部と、蒸気エンジン3から第二蒸気ヘッダ21への排蒸路20の中途部とが、バイパス路22で接続される。そして、このバイパス路22の中途部には、バイパス弁23が設けられる。このバイパス弁23は、制御器24により制御される電磁弁または電動弁とされてもよいが、本実施例では自力式の減圧弁とされる。具体的には、バイパス弁23は、第二蒸気ヘッダ21内の蒸気圧を所定に維持するように、機械的に自力で開度調整する。いずれにしても、蒸気エンジン3経由とバイパス弁23経由とのいずれで第二蒸気ヘッダ21に蒸気を供給してもよい条件では、蒸気エンジン3経由による蒸気供給が優先されるのがよい。
【0051】
このように、本実施例の蒸気システム1は、圧力および温度が異なる二つの蒸気ヘッダ18,21を備える。そして、各蒸気ヘッダ18,21内の蒸気は、それぞれ所望の蒸気利用機器(図示省略)へ供給可能とされる。各蒸気ヘッダ18,21内の蒸気は、温度が異なるので、用途に応じた蒸気の使用が可能となる。すなわち、比較的高温の蒸気が必要とされる場合には、第一蒸気ヘッダ18から蒸気を供給すればよいし、それよりも低温の蒸気が必要とされる場合には、第二蒸気ヘッダ21から蒸気を供給すればよい。
【0052】
ところで、本実施例のボイラ2は、第一蒸気ヘッダ18内の蒸気圧に基づき、運転状態を制御される。具体的には、第一蒸気ヘッダ18内の蒸気圧に基づき、バーナの燃焼量を制御される。
【0053】
第二蒸気ヘッダ21には、その蒸気の使用負荷を把握するために、第一圧力センサ25が設けられる。この第一圧力センサ25により、第二蒸気ヘッダ21内の蒸気圧が監視される。従って、その蒸気圧が所定値未満であるか否かにより、蒸気負荷があるか否かを検知できる。すなわち、蒸気が使用される場合には、第二蒸気ヘッダ21内の蒸気圧が下がるので、それが所定値未満であるか否かにより、蒸気の使用負荷を検知できる。
【0054】
圧縮機4からの圧縮空気は、圧縮空気路26を介して一または複数の圧縮空気利用機器(図示省略)へ供給可能とされる。圧縮空気路26には、圧縮空気の使用負荷を把握するために、第二圧力センサ27が設けられる。この第二圧力センサ27により、圧縮空気路26内の空気圧が監視される。従って、その空気圧が設定値未満であるか否かにより、空気負荷があるか否かを検知できる。すなわち、圧縮空気が使用される場合には、圧縮空気路26内の空気圧が下がるので、それが設定値未満であるか否かにより、圧縮空気の使用負荷を検知できる。但し、圧縮空気路26の中途に中空のエアタンク(図示省略)を設け、このエアタンクに第二圧力センサ27を設けて、圧縮空気の使用負荷を検知してもよい。
【0055】
本実施例の蒸気システム1では、制御器24は、第一圧力センサ25と第二圧力センサ27の検出圧力を常時監視し、これに基づき後述のとおり給蒸弁19の開閉を制御する。但し、所望により、給蒸弁19の開度を制御する構成としてもよい。さらに、制御器24は、所望によりバイパス弁23や前記クラッチなどを制御可能としてもよい。但し、本実施例では、バイパス弁23は、前述したとおり、自力式の減圧弁とされている。
【0056】
制御器24は、第二圧力センサ27の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ25の蒸気圧が所定値未満であることにより蒸気負荷があると検知する場合には、給蒸弁19を開いて蒸気エンジン3を運転する。
【0057】
また、制御器24は、第二圧力センサ27の空気圧が設定値以上であることにより空気負荷がないと検知し、且つ第一圧力センサ25の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合には、給蒸弁19を閉じて蒸気エンジン3を停止する。
【0058】
また、制御器24は、第二圧力センサ27の空気圧が設定値以上であることにより空気負荷がないと検知し、且つ第一圧力センサ25の蒸気圧が所定値未満であることにより蒸気負荷があると検知する場合には、給蒸弁19を閉じて蒸気エンジン3を停止する。この場合、第二蒸気ヘッダ21ひいては蒸気利用機器には、バイパス路22を介して蒸気が供給される。
【0059】
さらに、制御器24は、第二圧力センサ27の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ25の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合には、電動機16により圧縮機4を駆動する。この場合、電動機16で前記圧縮機4を駆動可能としてもよいし、異なる圧縮機を駆動可能としてもよい。後者の場合、蒸気エンジン3により駆動される第一の圧縮機4からの圧縮空気と、電動機16により駆動される第二の圧縮機からの圧縮空気とは、共通の圧縮空気路26またはエアタンクを介して、圧縮空気利用機器へ供給される。なお、第二の圧縮機を駆動させる電動機16は、第二圧力センサ27にて検出される空気圧に基づき制御される。
【0060】
但し、制御器24は、第二圧力センサ27の空気圧が設定値未満であることにより空気負荷があると検知し、且つ第一圧力センサ25の蒸気圧が所定値以上であることにより蒸気負荷がないと検知する場合にも、給蒸弁19を開いて蒸気エンジン3を運転してもよい。この場合、電動機16は、必ずしも必要でない。また、たとえば、夏場の電力ピーク時で、電気の使用を極力抑えたい場合には、蒸気負荷がない場合でも、消費電力の大きい電気式を使わずに、圧縮機4を駆動するために、蒸気エンジン3へ蒸気を供給することができる。
【0061】
なお、空気負荷があるが蒸気負荷がない場合以外において、空気負荷がある場合には、電動機16にて第二の圧縮機を駆動してもよい。この際、蒸気エンジン3の駆動を優先し、この蒸気エンジン3だけでは賄いきれない場合に、電動機16を補助駆動させる。この場合も、第二の圧縮機を駆動させる電動機16は、第二圧力センサ27にて検出される空気圧に基づき制御される。
【0062】
ところで、蒸気エンジン3の軸封部は、非接触のシール10のため、スクリュロータ8の軸とシール10との間に、小さな隙間が生じる。これにより、蒸気および/またはドレンは、軸受9を介して軸封部へ達し、前記隙間を介してケーシング7外へ漏れる。蒸気エンジン3の軸封部から漏れる蒸気、および/または、蒸気エンジン3の軸封部から漏れるドレンは、漏れ熱回収路28を介して、給水タンク5へ供給される。これにより、給水タンク5内の貯留水は温められる。
【0063】
また、蒸気エンジン3で発生するドレンは、ドレン回収路29を介して、給水タンク5へ供給される。これにより、給水タンク5内の貯留水は温められる。なお、ドレン回収路29の中途には、スチームトラップ30が設けられている。
【0064】
さらに、給水タンク5への給水路31は、圧縮機4を介して、給水タンク5と接続される。これにより、給水タンク5への補給水と圧縮機4とが熱交換できるので、給水タンク5への補給水を温めることができると共に、圧縮機4の冷却を図ることができる。また、圧縮機4は、油などの媒体を介して冷却を図られ、この油が給水タンク5への補給水にて冷却されてもよい。
【0065】
本発明の蒸気システムは、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、蒸気エンジン3は、スクリュ式としたが、場合によりタービン式としてもよい。
【0066】
また、前記実施例では、圧縮機4は、オンオフ制御されたが、場合により容量制御されてもよい。その場合、蒸気エンジン3への給蒸弁19の開度を調整したり、電動機16をインバータ制御したりするのが簡易である。
【0067】
また、前記実施例では、蒸気の使用負荷は、第二蒸気ヘッダ21に設けた第一圧力センサ25により検出したが、第一圧力センサ25は第二蒸気ヘッダ21ではなく、蒸気エンジン3からの排蒸路20とバイパス路22との合流後の管路に設けてもよい。その場合、第二蒸気ヘッダ21は、その設置を省略することもできる。
【0068】
また、前記実施例において、圧縮機4に代えて、ポンプまたは送風機を設置してもよい。その場合も、前記実施例と同様に制御すればよい。さらに、圧縮機4に代えて、真空ポンプを設置してもよい。その場合、蒸気エンジン3や電動機16により駆動される真空ポンプが吸引する空間内の圧力に基づき、蒸気エンジン3または電動機16を制御すればよい。
【0069】
また、前記実施例において、給蒸弁19の開閉のハンチングを防止するために、「設定値」および/または「所定値」は、それぞれ動作隙間(ディファレンシャル)を設定してもよいのはもちろんである。たとえば、圧縮空気の使用に伴い、設定下限圧力になると、給蒸弁19を開ける一方、設定上限圧力になると、給蒸弁19を閉じればよい。また、第二蒸気ヘッダ21内の蒸気の使用に伴い、所定下限圧力になると、給蒸弁19を開ける一方、所定上限圧力になると、給蒸弁19を閉じればよい。同様に、制御器24は、第二圧力センサ27の検出圧力に基づき、空気圧を設定圧力域に維持するように、給蒸弁19の開度を制御してもよい。また、制御器24は、第一圧力センサ25の検出圧力に基づき、蒸気圧を所定圧力域に維持するように、給蒸弁19の開度を制御してもよい。
【0070】
また、前記実施例では、給水タンク5への補給水と圧縮機4との熱交換を図ったが、給水タンク5内の貯留水と圧縮機4との熱交換を図ってもよい。具体的には、給水タンク5内の貯留水は、給水タンク5と圧縮機4との間において循環可能とされる。これにより、給水タンク5の貯留水を温めることができると共に、圧縮機4の冷却を図ることができる。また、圧縮機4は、油などの媒体を介して冷却を図られ、この油が、給水タンク5と圧縮機4との間の循環水にて冷却されてもよい。
【0071】
また、前記実施例において、蒸気エンジン3の軸封部から漏れる蒸気、および/または、蒸気エンジン3の軸封部から漏れるドレンによる貯留水の加温、蒸気エンジン3で発生するドレンによる貯留水の加温、および圧縮機4の圧縮熱による補給水の加温の内、一または複数が実行可能であればよい。
【0072】
さらに、前記実施例において、蒸気エンジン3により駆動される圧縮機4と、電動機16により駆動される第二の圧縮機とを併設する場合、給水タンク5内の貯留水または給水タンクへの補給水と、第二の圧縮機とを熱交換してもよい。給水タンク5内の貯留水と第二の圧縮機とを熱交換する場合、給水タンク5内の貯留水は、給水タンク5と第二の圧縮機との間において循環される。これにより、給水タンク5の貯留水を温めることができると共に、第二の圧縮機の冷却を図ることができる。一方、給水タンク5への補給水と第二の圧縮機とを熱交換する場合、給水タンク5への補給水は、第二の圧縮機を介して、給水タンク5へ供給される。これにより、給水タンク5への補給水を温めることができると共に、第二の圧縮機の冷却を図ることができる。いずれの場合も、第二の圧縮機は、油などの媒体を介して冷却を図られてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の蒸気システムの一実施例を示す概略図である。
【図2】図1の蒸気システムのスクリュ式蒸気エンジンの一例の概略構造図であり、一部を断面にして示している。
【符号の説明】
【0074】
1 蒸気システム
2 ボイラ
3 蒸気エンジン(原動機)
4 圧縮機(被動機)
5 給水タンク
16 電動機
18 第一蒸気ヘッダ
19 給蒸弁
21 第二蒸気ヘッダ
22 バイパス路
23 バイパス弁
24 制御器
25 第一圧力センサ
26 圧縮空気路
27 第二圧力センサ
28 漏れ熱回収路
29 ドレン回収路
31 給水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの蒸気を用いて動力を起こす原動機と、
この原動機により駆動され、流体を吐出または吸入する被動機と、
前記原動機にて使用後の蒸気が供給される箇所へ、前記原動機を介することなく蒸気を供給するバイパス路と、
このバイパス路に設けられるバイパス弁と、
前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、前記被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき、前記原動機への給蒸を制御する制御器と、
前記ボイラへの給水が貯留され、前記原動機の軸封部から漏れる蒸気もしくはドレン、前記原動機で発生するドレン、または前記被動機の発熱を利用して、貯留水または補給水が温められる給水タンクと
を備えることを特徴とする蒸気システム。
【請求項2】
前記原動機の軸封部から漏れる蒸気、および/または、前記原動機の軸封部から漏れるドレンが、前記給水タンクへ供給されて、前記給水タンク内の貯留水が温められる
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸気システム。
【請求項3】
前記原動機で発生するドレンが前記給水タンクへ供給されて、前記給水タンク内の貯留水が温められる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気システム。
【請求項4】
前記被動機の冷却を前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水を用いて行うことで、前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水が温められる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気システム。
【請求項5】
電動機により駆動され、流体を吐出または吸入する第二の被動機をさらに備え、
前記原動機からの蒸気と前記バイパス路からの蒸気とが供給される箇所の蒸気負荷と、前記各被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷とに基づき、前記原動機への給蒸が制御され、
前記各被動機により流体が吐出または吸入される空間内の流体負荷に基づき、前記電動機が制御され、
前記第二の被動機の冷却を前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水を用いて行うことで、前記給水タンク内の貯留水または前記給水タンクへの補給水が温められる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−293502(P2009−293502A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147545(P2008−147545)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【特許番号】特許第4329875号(P4329875)
【特許公報発行日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】