説明

蒸気タービンおよびその静止部シール構造

【課題】蒸気タービンにおいて、互いに異なる圧力の空間同士を仕切る静止部同士のシール部の蒸気漏洩を抑制して、効率向上を図る。
【解決手段】蒸気タービンは、互いに圧力が異なる第1、第2および第3の空間13,14,15と、第1および第2の空間13,14の間を仕切る第1のシール部21と、第2および第3の空間の間を仕切る第2のシール部22と、を形成する、互いに固定されていない第1および第2の静止部材101,102を有する。第1のシール部21は、第1および第2の空間13,14内の圧力の違いによって第1および第2の静止部材101,102を互いに押し付ける力によって互いに押し付けられてシールされるように構成される。第2のシール部22には、第1および第2の静止部材101,102が互いに近接する間隙にシール部材30が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンおよびその静止部シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電プラントの運転経済性を改善し発電効率の改善を図るために、タービン性能の向上を図ることが重要な課題となっている。
【0003】
タービンの内部における損失は翼のプロファイル損失、2次損失、あるいは最終段の排気損失といった本質的な損失が主であるが、もっと分かりやすい損失として蒸気漏洩がある。蒸気漏洩量が多ければ、それだけ仕事をする蒸気が減ることになるため、当然損失が増えることになる。従来からこの蒸気漏洩量を減らすために、数々のシール構造が開発されているが、それらは羽根・ロータとノズル、ロータとグランドなど、回転部と静止部間に生じる蒸気漏洩に関するものが主である。実際に最も大きな蒸気漏洩損失は羽根・ロータとノズル間にあるため、当部のシール構造に力を入れられているのは当然であるが、もっと全体を見渡すと、他にも、損失量は少ないものの蒸気漏洩による損失が見られる箇所がある。特に、タービン車室、タービンノズル、グランド車室等の静止部の組み合わせによって、圧力、温度の異なる空間を分離する境界を2箇所以上持つ二重化車室構造(特許文献1参照)において蒸気漏洩損失が顕著に見られる。
【0004】
タービン内部の蒸気条件はプラントにもよるが、最近の高性能化により25MPa以上、600℃以上になることもある。タービン外部は大気圧である。二重化車室構造の蒸気タービンでは、タービン内・外部間には、高温、高圧の蒸気が外部に流出するのを防止し、圧力・温度差を緩和するように二重化された静止部が設置されている。そして、静止部によって、圧力、温度が異なる少なくとも三つの空間を分離するために、少なくとも二つの境界が存在している。一つの境界では、圧力差によって、静止部同士が面接触することによりシールする構造(以下、「スチームジョイント」によるシール構造と呼ぶ)を採用している。一方、他の境界では、熱膨張の逃げが必要なことから、静止部同士を面接触させることができないため、嵌合部のクリアランスを可能な限り小さくするシール構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−221012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような蒸気タービンの静止部間シール構造においては、スチームジョイントによるシールは確実に漏洩量を無くすことができるものの、スチームジョイントによらないシールに関しては、クリアランスは小さくしているものの完全には漏洩量をゼロにすることはできない。この漏洩による損失は最近の分析で、無視できないレベルであることが分かってきており、またこのような箇所が多数あれば過大な損失となってしまう。
【0007】
本発明は上記背景技術の課題を解決するためになされたものであり、蒸気タービンにおいて、互いに異なる圧力の空間同士を仕切る静止部同士のシール部の蒸気漏洩を抑制して、蒸気タービンの効率向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る蒸気タービンは、互いに圧力が異なる第1、第2および第3の空間と、前記第1および第2の空間の間を仕切る第1のシール部と、前記第2および第3の空間の間を仕切る第2のシール部と、を形成する、互いに固定されていない第1および第2の静止部材を有する蒸気タービンであって、前記第1のシール部は、前記第1および第2の空間内の圧力の違いによって前記第1および第2の静止部材が互いに押し付けられてシールされるように構成され、前記第2のシール部には、前記第1の静止部材と第2の静止部材とが近接する間隙にシール部材が配置されていること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる蒸気タービン静止部シール構造は、互いに圧力が異なる第1、第2および第3の空間と、前記第1および第2の空間の間を仕切る第1のシール部と、前記第2および第3の空間の間を仕切る第2のシール部と、を形成する、互いに固定されていない第1および第2の静止部材を有する蒸気タービンの静止部シール構造であって、前記第1のシール部は、前記第1および第2の空間内の圧力の違いによって前記第1および第2の静止部材が互いに押し付けられてシールされるように構成され、前記第2のシール部には、前記第1の静止部材と第2の静止部材とが近接する間隙にシール部材が配置されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、蒸気タービンにおいて、互いに異なる圧力の空間同士を仕切る静止部同士のシール部の蒸気漏洩が抑制され、蒸気タービンの効率向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る蒸気タービンの第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図2のI部を拡大して示す部分縦断面図。
【図2】本発明に係る蒸気タービンの第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図。
【図3】本発明に係る蒸気タービンの第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図1のIII部を拡大して示す部分縦断面図。
【図4】本発明に係る蒸気タービンの第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図2のIV部を拡大して示す部分縦断面図。
【図5】本発明に係る蒸気タービンの第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図2のV部を拡大して示す部分縦断面図。
【図6】本発明に係る蒸気タービンの第2の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【図7】本発明に係る蒸気タービンの第3の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【図8】本発明に係る蒸気タービンの第4の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【図9】本発明に係る蒸気タービンの第5の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【図10】本発明に係る蒸気タービンの第6の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【図11】本発明に係る蒸気タービンの第7の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【図12】本発明に係る蒸気タービンの第8の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【図13】本発明に係る蒸気タービンの第9の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る蒸気タービンの実施形態を、図面を参照しながら説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係る蒸気タービンの第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図2のI部を拡大して示す部分縦断面図である。図2は第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図である。図3は第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図1のIII部を拡大して示す部分縦断面図である。図4は第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図2のIV部を拡大して示す部分縦断面図である。図5は第1の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、図2のV部を拡大して示す部分縦断面図である。
【0014】
この蒸気タービンは多段軸流タービンであって、二重車室構造のものであり、静止部として、外部車室101と、その内側に配置された内部車室102およびグランド車室202とを備えている。外部車室101の外側は大気にさらされている。内部車室102およびグランド車室202の内側には、タービンロータ50が、回転軸を水平にして配置されている。タービンロータ50には、軸方向に複数段の動翼51が配置され、各段の動翼51の上流側にタービンノズル302が配置されている。
【0015】
タービンノズル302は、複数の静翼が円周方向に配列された静翼部303と、静翼部303の外側の外側円環部304と、静翼部303の内側の内側円環部305とを備えている。
【0016】
外部車室101、内部車室102、グランド車室202、タービンノズル302はいずれも静止部材であるが、熱膨張の逃げを許容するために互いに固定はされていない。そして、これらの静止部材同士が隣接する各部にシール部が形成されている。以下、それら各部のシール構造について説明する。
【0017】
(外部車室・内部車室間のシール部)
はじめに、外部車室101と内部車室102との間のシール部について、図1、図2および図3を参照して説明する。内部車室102の外側には第1の隔壁11および第2の隔壁12が形成され、外部車室101と内部車室102とによって形成される円環状の空間が、第1の隔壁11および第2の隔壁12によって、第1の空間13、第2の空間14、第3の空間15に仕切られている。
【0018】
外部車室101が第1の隔壁11の外周部16と対向する位置には、第1の隔壁11の外周部16を受け容れる円環状に延びる第1のはめあい溝17が形成されている。第1の隔壁11の外周部16と第1のはめあい溝17の間は互いに固定されておらず、組立時にはわずかではあるが互いに動ける状態にある。
【0019】
同様に、外部車室101が第2の隔壁12の外周部18と対向する位置には、第2の隔壁12の外周部18を受け容れる円環状に延びる第2のはめあい溝19が形成されていて、第2の隔壁12の外周部18と第2のはめあい溝19の間は互いに固定されておらず、間隙を有して互いに対向している。
【0020】
第2のはめあい溝19内で第2の隔壁12の外周部18の外側と第2のはめあい溝19の底部との間には環状に延びて半径方向に揺動可能なシール部材30が配置されている。第2の隔壁12の外周部18にはシール部材30の一部を収容するシール部材収容溝31が回転円周全周にわたって形成されている。シール部材30の根元に幅広部32が形成され、第2のはめあい溝19の底部に近い位置には幅狭部33が形成され、さらに幅狭部33の先端には第2のはめあい溝19の底部に向かって突出するフィン部34が形成されている。フィン部34は円環板状であって、図示の例では、回転軸方向に互いに間隔をあけて2枚が並んで配列されている。
【0021】
シール部材収容溝31は、シール部材30の幅広部32と幅狭部33に対応して幅広部と幅狭部があり、シール部材30が回転半径方向に揺動可能であり、しかもシール部材収容溝31から抜け出さないように構成されている。
【0022】
シール部材収容溝31の底部にはバネなどの弾性部材35が配置され、シール部材30を回転半径方向外側に、すなわち第2のはめあい溝19の底部に向かって押し付けていて、これによりフィン部34が第2のはめあい溝19の底部に押し付けられるようになっている。
【0023】
蒸気タービンの運転時には、外部車室101内および内部車室102内に蒸気が導入され、第1の空間13、第2の空間14、第3の空間15内の圧力は、第1の空間13内で最も高く、第3の空間15内で最も低く、第2の空間14内では中間の高さになるように構成されている。このような圧力の差によって、内部車室102は外部車室101に対して相対的に回転軸方向に、図1、図2の左向きに押し付けられる。このとき、第1の隔壁11の外周部16と第1のはめあい溝17の対向面で、第2の空間14寄りの部分が互いに押し付け合い、「スチームジョイント」により、第1の空間13と第2の空間14との間のシール部(第1のシール部)21が形成される。
【0024】
一方、第2の隔壁12の外周部18と第2のはめあい溝19との間にはシール部材30が介在することにより、第2の空間14と第3の空間15との間のシール部(第2のシール部)22が形成される。
【0025】
特に、第2のシール部22で、弾性部材35がシール部材30を第2のはめあい溝19の底部に押し付けるので蒸気漏洩を抑制することができる。さらに、フィン部34が突出していることから第2のシール部22でのシール部材30とはめあい溝19の底面との接触を保つことができ、さらには、フィン部34が複数個あることによりフィン部34先端を通って漏洩する蒸気の流量を抑制することができる。
【0026】
このようにして、スチームジョイントによる第1のシール部21のみならず、第2のシール部22でも、シール部材30の働きによって、外部車室101と内部車室102との間での蒸気漏洩を抑制することができる。
【0027】
(外部車室・グランド車室間のシール部)
つぎに、外部車室101とグランド車室202との間のシール部について、図2および図4を参照して説明する。
【0028】
図4に示す構造において、外部車室101と、その内側に配置されたグランド車室202により、円環状に、第1の空間213、第2の空間214、第3の空間215が形成されている。
【0029】
グランド車室202に円環状の第1のはめあい溝40が形成され、この第1のはめ合い溝40にはめ合うように外部車室101に第1の突起部41が形成されている。
【0030】
また、外部車室101に円環状の第2のはめ合い溝42が形成され、この第2のはめ合い溝42にはめ合うようにグランド車室202に第2の突起部43が形成されている。
【0031】
さらに、グランド車室202の第2の突起部43の近くで外部車室101に対向する位置にシール部材収容溝231が形成されている。シール部材収容溝231に、シール部材230および弾性部材235が配置されている。シール部材収容溝231、シール部材230および弾性部材235の構成は、それぞれ、前述の外部車室・内部車室間の第2のシール部22におけるシール部材収容溝31、シール部材30および弾性部材35(図3)と同様である。
【0032】
前述の外部車室・内部車室間のシール部と同様に、蒸気タービンの運転時には、外部車室101内およびグランド車室202内に蒸気が導入され、第1の空間213、第2の空間214、第3の空間215内の圧力は、第1の空間213内で最も高く、第3の空間215内で最も低くなるように構成されている。このような圧力の差によって、グランド車室202は外部車室101に対して相対的に回転軸方向に、図2および4の左向きに押し付けられる。
【0033】
このとき、グランド車室202の第1のはめあい溝40と外部車室101の第1の突起部41との間で、「スチームジョイント」により、第1の空間213と第2の空間214との間のシール部(第1のシール部)221が形成される。
【0034】
一方、弾性部材235がシール部材230を回転半径方向外側に向かって、外部車室101の内面に向かって押し付けているので、第2の空間214と第3の空間215との間のシール部(第2のシール部)222が形成される。
【0035】
これにより、前述の外部車室・内部車室間のシール部と同様の原理により、外部車室101とグランド車室202との間で蒸気漏洩を抑制することができる。
【0036】
(内部車室・タービンノズル間のシール部)
つぎに、内部車室102とタービンノズル302との間のシール部について図2および図5を参照して説明する。
【0037】
図5に示す構造において、内部車室102とタービンノズル302により、第1の空間313、第2の空間314、第3の空間315が形成されている。この構成では、蒸気タービン運転時の圧力は、第1の空間313の圧力は第2の空間314の圧力よりも高い。第3の空間315の圧力は、蒸気タービンの運転状態によって、第1の空間313の圧力および第2の空間314の圧力よりも高い場合も低い場合もありうる。
【0038】
なお、各段落ごとにタービンノズルが配置されているが、ここでは第1段落のタービンノズル302のみに着目して説明する。
【0039】
内部車室102に、回転半径方向内側に向かって突出する円環状の第1の突出部45が形成されている。また、第1の突出部45と回転軸方向に対向する位置にタービンノズル302の外側円環部304の対向面46が形成されている。蒸気タービン運転中は、第1の空間313の圧力が第2の空間314の圧力よりも高いことから、タービンノズル302の対向面46が第1の突出部45に押し付けられる。これによって、「スチームジョイント」により、第1の空間313と第2の空間314との間のシール部(第1のシール部)321が形成される。
【0040】
一方、内部車室102とタービンノズル302の内側円環部305との間には、第1の空間313と第3の空間315とを仕切る第2のシール部322が形成され、ここでは、外部車室・グランド車室間のシール部における第2のシール部222(図4)と同様の構造になっている。すなわち、内部車室102がタービンノズル302の内側円環部305の円筒外側面に対向する位置の内部車室102内周にシール部材収容溝331が形成されている。シール部材収容溝331に、シール部材330および弾性部材335が配置されている。シール部材収容溝331、シール部材330および弾性部材335の構成は、それぞれ、前述の外部車室・内部車室間のシール部におけるシール部材収容溝31、シール部材30および弾性部材35(図3)と同様である。
【0041】
このような構成により、弾性部材335がシール部材330を回転半径方向内側に向かって、タービンノズル302の内側円環部305の円筒外側面に押し付けているので、第1の空間313と第3の空間315との間のシール部(第2のシール部)322が形成される。
【0042】
[第2の実施形態]
図6は本発明に係る蒸気タービンの第2の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0043】
第1の実施形態(図3)における外部車室101の第2のはめあい溝19と同様の第2のはめあい溝19の底部に、シール部材収容溝431が形成されている。このシール部材収容溝431に、シール部材430および弾性部材435が配置されている。シール部材収容溝431、シール部材430および弾性部材435はそれぞれ、第1の実施形態(図3)のシール部材収容溝31、シール部材30および弾性部材35と同様の構造であって、シール部材収容溝31、シール部材30および弾性部材35とは回転半径方向の内側・外側の関係が逆に配置されている。シール部材430の先端には、フィン部434が形成され、弾性部材435によって、フィン部434の先端が第2の隔壁12の外周部18の外周部に押し付けられている。
【0044】
この実施形態によれば、第1の実施形態と同様に蒸気漏洩量を減らすことができる。
【0045】
なお、ここでは、第1の実施形態の外部車室・内部車室間の第2のシール部22を図6のような構成に代えるものとして説明したが、図6と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0046】
[第3の実施形態]
図7は本発明に係る蒸気タービンの第2の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0047】
この実施形態は、第1の実施形態(図3)におけるシール部材収容溝31、シール部材30および弾性部材35と、第2の実施形態(図6)におけるシール部材収容溝431、シール部材430および弾性部材435とを組み合わせた構成となっている。シール部材30とシール部材430は、回転軸方向に間隔をあけて並べて配置されている。
【0048】
この実施形態によれば、二つのシール部材30、430が上流側と下流側に直列に並べて配置されているので、第1または第2の実施形態に比べて蒸気漏洩量を減らすことができる。
【0049】
なお、二つのシール部材30、430の配置を上流側・下流側で逆にしてもよい。また、3個以上のシール部材を並べてもよい。さらに、図7と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0050】
[第4の実施形態]
図8は本発明に係る蒸気タービンの第4の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0051】
この実施形態は第1の実施形態の変形であって、第1の実施形態のシール部材30に代えて複数枚の植え込みフィン508が、外部車室101の第2の隔壁12の外周部18に植え込まれている。植え込みフィン508は回転軸に垂直な面に沿って延びる円環板状であって、先端が第2のはめあい溝19の底部に向かって突出している。図示の例では植え込みフィン508は3個あって、軸方向に互いに間隔をあけて配列されている。
【0052】
この実施形態によれば、植え込みフィン508の先端を第2のはめあい溝19の底部に接触させてこの部分からの蒸気漏洩量を減らすことができる。また、複数の植え込みフィン508が上流側と下流側に直列に並べて配置されているので、漏洩量をさらに減らすことができる。
【0053】
なお、植え込みフィン508の枚数は3枚に限られず、1枚か2枚、または4枚以上でもよい。また、ここでは、第1の実施形態の外部車室・内部車室間の第2のシール部22を図8のような構成に代えるものとして説明したが、図8と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0054】
[第5の実施形態]
図9は本発明に係る蒸気タービンの第5の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0055】
この実施形態は第4の実施形態の変形であって、第4の実施形態(図8)における外部車室101の第2のはめあい溝19と同様の第2のはめあい溝19の底部に、植え込みフィン608が植え込まれている。植え込みフィン608は、第4の実施形態の植え込みフィン508と同様の円環板状であるが、第2のはめあい溝19の底部に植え込まれていて、植え込みフィン608の先端は外部車室101の第2の隔壁12の外周部18に向かって延びていて、第2の隔壁12の外周部18の外周部に押し付けられている。
【0056】
この実施形態によれば、第4の実施形態と同様に、蒸気漏洩量を減らすことができる。
【0057】
なお、植え込みフィン608の枚数は任意である。また、ここでは、第4の実施形態の外部車室・内部車室間の第2のシール部22を図9のような構成に代えるものとして説明したが、図9と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0058】
[第6の実施形態]
図10は本発明に係る蒸気タービンの第6の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0059】
この実施形態は、第4の実施形態(図8)における植え込みフィン508と、第5の実施形態(図9)における植え込みフィン608とを組み合わせた構成となっている。いずれも回転軸に垂直な面に沿って延びる植え込みフィン508と植え込みフィン608とは、回転軸方向に交互に、かつ、互いに間隔をあけて並べて配置されている。
【0060】
この実施形態によれば、内側から外側に延びる植え込みフィン508と、外側から内側に延びる植え込みフィン509とが交互に、かつ、互いに間隔をあけて並べて配置されていることから、第4または第5の実施形態に比べて蒸気漏洩量を減らすことができる。
【0061】
なお、図10と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0062】
[第7の実施形態]
図11は本発明に係る蒸気タービンの第7の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0063】
この実施形態は第1の実施形態の変形であって、第1の実施形態のシール部材30(図3)に代えて、回転軸に垂直な面に沿って延びる円環板状のシール部材708を備えている。第2の隔壁12の外周部18にシール部材受け溝710が形成され、第2のはめあい溝19の底部にシール部材受け溝711が形成されている。シール部材受け溝710、711は回転半径方向に互いに対向して配置されている。シール部材708の内周部がシール部材受け溝710内にあり、シール部材708の外周部がシール部材受け溝711内にあり、シール部材708は回転軸方向および半径方向に若干揺動できるように配置されている。
【0064】
蒸気タービン運転時は、第2の空間14の圧力が第3の空間15の圧力よりも高いため、シール部材708は、図11に示すように、第3の空間15側に押されて、シール部材受け溝710およびシール部材受け溝711との間でシールを構成する。これにより、この部分での蒸気漏洩を抑制することができる。
【0065】
ここで、はじめから一体で形成された円環板状のシール部材708を図11に示す位置に配置することは困難であるから、実際には、あらかじめ複数(たとえば2個)に周方向に分割した円環板状のシール部材708を互いに周方向に隣接配置することにより、円環板状のシール部材708とすればよい。
【0066】
なお、ここでは、第1の実施形態の外部車室・内部車室間の第2のシール部22を図11のような構成に代えるものとして説明したが、図11と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0067】
[第8の実施形態]
図12は本発明に係る蒸気タービンの第8の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0068】
この実施形態は第1の実施形態の変形であって、第1の実施形態と同様に、外部車室101が第2の隔壁12の外周部18と対向する位置には、第2の隔壁12の外周部18を受け容れる円環状に延びる第2のはめあい溝19が形成されていて、第2の隔壁12の外周部18と第2のはめあい溝19の間は互いに固定されておらず、間隙を有して互いに対向している。
【0069】
この実施形態では、第2の隔壁12の外周部18に、回転円周方向に延びる溝801が形成され、この溝801内に挿入されるように、第2のはめあい溝19の底部中央から回転円周方向に延びる突起802が形成されている。溝801の底部には、回転円周方向に延びるガスケット808が配置されている。ガスケット808はこの蒸気タービンを組み立てる際に塑性変形しうる比較的柔軟な材質・構造のものである。
【0070】
この実施形態では、蒸気タービンを組み立てる際に、ガスケット808が押しつぶされ、それにより、製作精度を高めることなく、組み立て時の第2の隔壁12の外周部18での間隙を小さくすることができる。それにより、蒸気の漏洩を抑制することができる。
【0071】
なお、ここでは、第1の実施形態の外部車室・内部車室間の第2のシール部22を図12のような構成に代えるものとして説明したが、図12と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0072】
[第9の実施形態]
図13は本発明に係る蒸気タービンの第9の実施形態の要部を示す部分縦断面図であって、第1の実施形態の図3に相当する部分縦断面図である。
【0073】
この実施形態は第1の実施形態の変形であって、第1の実施形態と同様に、外部車室101が第2の隔壁12の外周部18と対向する位置には、第2の隔壁12の外周部18を受け容れる円環状に延びる第2のはめあい溝19が形成されていて、第2の隔壁12の外周部18と第2のはめあい溝19の間は互いに固定されておらず、間隙を有して互いに対向している。
【0074】
この実施形態では、第2のはめあい溝19と第2の隔壁12との間隙にシール剤908が充填されている。シール剤908はたとえばグリスであって、粘性材料であり、しかも、蒸気タービン運転時に第2の空間14内と第3の空間15内の圧力差によって流出してしまわない程度の粘度を保つものである。
【0075】
この実施形態によれば、第2の隔壁12の外周部での蒸気の漏洩を抑制することができる。
【0076】
なお、ここでは、第1の実施形態の外部車室・内部車室間の第2のシール部22を図13のような構成に代えるものとして説明したが、図13と同様の構造を、内部車室・グランド車室間の第2のシール部222および内部車室・タービンノズル間の第2のシール部322にも適用できる。
【0077】
[他の実施形態]
以上説明した各実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されない。
【0078】
たとえば、本発明に係るシール機構を図2に示す静止シール部のうちのすべてに適用する必要はなく、それらの一部に適用することも可能である。また、上記各実施形態の構造の特徴を各シール部ごとに変えて組み合わせてもよい。さらに、本発明に係るシール機構を図2に示すシール部以外の静止シール部に適用することもできる。
【符号の説明】
【0079】
11…第1の隔壁、12…第2の隔壁、13…第1の空間、14…第2の空間、15…第3の空間、16…外周部、17…第1のはめあい溝、18…外周部、19…第2のはめあい溝、21…シール部(第1のシール部)、22…第2のシール部、30…シール部材、31…シール部材収容溝、32…幅広部、33…幅狭部、34…フィン部、35…弾性部材、40…第1のはめあい溝、41…第1の突起部、42…第2のはめ合い溝、43…第2の突起部、50…タービンロータ、51…動翼、101…外部車室(静止部材)、102…内部車室(静止部材)、202…グランド車室(静止部材)、213…第1の空間、214…第2の空間、215…第3の空間、230…シール部材、231…シール部材収容溝、235…弾性部材、302…タービンノズル(静止部材)、303…静翼部、304…外側円環部、305…内側円環部、313…第1の空間、314…第2の空間、315…第3の空間、330…シール部材、331…シール部材収容溝、335…弾性部材、430…シール部材、431…シール部材収容溝、434…フィン部、435…弾性部材、508…植え込みフィン、608…植え込みフィン、708…シール部材、710…シール部材受け溝、711…シール部材受け溝、801…溝、802…突起、808…ガスケット、908…シール剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに圧力が異なる第1、第2および第3の空間と、前記第1および第2の空間の間を仕切る第1のシール部と、前記第2および第3の空間の間を仕切る第2のシール部と、を形成する、互いに固定されていない第1および第2の静止部材を有する蒸気タービンであって、
前記第1のシール部は、前記第1および第2の空間内の圧力の違いによって前記第1および第2の静止部材が互いに押し付けられてシールされるように構成され、
前記第2のシール部には、前記第1の静止部材と第2の静止部材とが近接する間隙にシール部材が配置されていること、
を特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
前記第1のシール部で、前記第1および第2の静止部材が回転軸方向に互いに押し付けられ、
前記第2のシール部では前記第1および第2の静止部材が回転半径方向に互いに対向するように構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記第1の静止部材には前記第2のシール部で回転半径方向に窪んで回転円周方向に沿って延びるはめあい溝が形成され、
前記第2の静止部材には前記前記第1の静止部材に形成されたはめあい溝に挿入されて回転円周方向に沿って延びる突出部が形成され、
前記シール部材は、前記はめあい溝内でそのはめあい溝の底部と前記突出部の先端との間に位置するように配置されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記シール部材は、弾性力によって前記第1および第2の静止部材の少なくとも一方に押し付けられるように構成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記第1のシール部で、前記第1および第2の静止部材が回転軸方向に互いに押し付けられ、
前記シール部材は、回転軸に垂直な面に沿って延びる円環板状部を含むこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の蒸気タービン。
【請求項6】
前記シール部材は、前記第1および第2の静止部材が組み立てられる際に塑性変形可能であって、前記シール部材の塑性変形によって前記第2のシール部の間隙が狭まるように調整されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の蒸気タービン。
【請求項7】
前記第1および第2の静止部材は、タービン外部車室とタービン内部車室との組み合わせ、タービン車室とグランド車室との組み合わせ、タービン車室とタービンノズルとの組み合わせ、のいずれかの組み合わせであること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の蒸気タービン。
【請求項8】
互いに圧力が異なる第1、第2および第3の空間と、前記第1および第2の空間の間を仕切る第1のシール部と、前記第2および第3の空間の間を仕切る第2のシール部と、を形成する、互いに固定されていない第1および第2の静止部材を有する蒸気タービンの静止部シール構造であって、
前記第1のシール部は、前記第1および第2の空間内の圧力の違いによって前記第1および第2の静止部材が互いに押し付けられてシールされるように構成され、
前記第2のシール部には、前記第1の静止部材と第2の静止部材とが近接する間隙にシール部材が配置されていること、
を特徴とする蒸気タービン静止部シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−285924(P2010−285924A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139946(P2009−139946)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】