説明

蒸気噴射ノズル構造

【課題】 電食の原因となっている指紋や汗等の人体分泌物を含む塵埃を除去し、十分満足の得られる洗浄効果を得ることのできる蒸気噴射ノズル構造を提供すること。
【解決手段】外ノズル2内に噴射口3aを臨ませて内ノズル3を配設し、前記内ノズル3の外周壁3bと外ノズル2の内周壁2cとの間に、負圧を生じさせるための間隙空間部4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を噴射して洗浄を行なう洗浄装置の蒸気噴射ノズル構造であって、特に、液晶表示パネルの製造工程における基板洗浄に好適な蒸気噴射ノズル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造工程における基板の洗浄としては、従来は、溶剤を浸した綿棒で払拭する方法が採用されていたが、この方法によっては汗や唾液などの人体分泌物を完全に除去することが困難であり、また、端子形成部に形成された端子を傷つけ、破損させてしまうことがあった。さらに、液晶表示パネルを構成する2枚の基板を貼り合わせるシール部材のシール際などには、前記綿棒が行き届かず、払拭洗浄できないという問題があった。
【0003】
そこで、近年は、洗浄対象の基板に対し、溶剤を含ませた蒸気を噴射させて非接触で洗浄する洗浄方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−49405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の蒸気を噴射させる洗浄方法は、唾液やシリコーン汚染などに対しては洗浄効果が高く、シール際の洗浄も容易に行うことができるが、指紋や汗等を完全に除去することが困難であり、洗浄後に皮膚片が残留し、その残留した皮膚片が電食の原因となることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、電食の原因となっている指紋や汗等の人体分泌物を含む塵埃を除去し、十分満足の得られる洗浄効果を得ることのできる蒸気噴射ノズル構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明の蒸気噴射ノズル構造は、蒸気を洗浄対象物に噴射するための蒸気噴射ノズル構造であって、外ノズル内に噴射口を臨ませてなる内ノズルが配設されており、前記内ノズルの外周壁と外ノズルの内周壁との間には、負圧を生じさせるための間隙空間部が形成されていることを特徴とする。また、前記内ノズルおよび外ノズルは同心の円筒形状であることが好ましい。
【0008】
本発明の蒸気噴射ノズル構造によれば、内ノズルの噴射口から噴射される蒸気を前記間隙空間部に発生している負圧により外ノズルの内周壁に沿って引くことで、外ノズルの噴射口から噴射される蒸気を拡散させることなく、洗浄対象物方向へ加速度をつけて直線的に押し出し、高い衝撃力を以て洗浄対象物に向けて噴射させることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
このように構成され、作用する本発明の蒸気噴射ノズル構造によれば、除去が困難である指紋や汗等の人体分泌物を含む塵埃を除去し、十分満足の得られる洗浄効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の蒸気噴射ノズル構造は、円筒状とされた外ノズル2内に蒸気の噴射口3aを臨ませた内ノズル3が前記外ノズル2と同心に配設されており、前記内ノズル3の外周壁3bと外ノズル2の内周壁cとの間には、内ノズル3の噴射口3aから外ノズル2内に噴射された蒸気により負圧を生じさせるための間隙空間部4が形成されている。前記内ノズル3と外ノズル2とを同心とすることで、間隙空間部4が周方向で均一となり、蒸気の噴射力をさらに向上させることができる。
【0011】
図1は、本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズル1の第1実施形態を説明するための要部断面図であり、図2は図1のII−II断面図である。
【0012】
本実施形態の蒸気噴射ノズル1は、図示しない蒸気製造装置の給気ホースの先端部に配設されたノズルを前記内ノズル3とし、この内ノズル3に対して、着脱可能に形成された円筒状のアタッチメントが前記外ノズル2として内ノズル3の外周に嵌着されている。
【0013】
本実施形態において、前記内ノズル3は、例えば、金属材等により形成されており、噴射口3aとなる部分の外周壁3bを該内ノズル3と同心の円筒状に切欠いて、外向きのフランジ部3dが形成された形状とされている。
【0014】
また、前記外ノズル2は、例えば、プラスチック樹脂材等により形成されており、前記内ノズル3の先端部を外ノズル2内の中心部に位置させるようにして、前記内ノズル3の外周に嵌着されている。
【0015】
これにより、本実施形態の蒸気噴射ノズル1は、内ノズル3と外ノズル2とを有する2重構造とされ、前記内ノズル3の外周壁3bと外ノズル2の内周壁2cとの間に、内ノズル2に形成された前記外向きのフランジ部3dによって間隙空間部4が形成され、本発明の蒸気噴射ノズル構造を有するものとなる。
【0016】
そして、本実施形態の蒸気噴射ノズル1によれば、前述の蒸気噴射ノズル構造を有することにより、図3に示すように、内ノズル3の噴射口3aから噴射される蒸気を前記間隙空間部4に発生している負圧により外ノズル2の内周壁2cに沿って引くことで、外ノズル2の噴射口2aから噴射される蒸気を、外ノズル2の噴射口2aを通過直後に拡散させることなく、洗浄対象物方向へ加速度をつけて直線的に押し出し、高い衝撃力を以て洗浄対象物に向けて噴射させることが可能となる。また、蒸気をより直線的に押し出すために、外ノズル2の内周壁2cは平滑な面であることが好ましい。抵抗をなるべく少なくすることで層流が発生しやすくなるためである。
【0017】
このようにして気流の調整がされた蒸気を用いることにより、従来の蒸気洗浄の方法では除去が困難であった指紋や汗等の人体分泌物を含む塵埃を除去し、十分満足の得られる洗浄効果を得ることができる。
【0018】
実施例:
蒸気噴射ノズル1の前記内ノズル3の内径寸法をφ4mm(変更可能寸法φ3〜5mm)、前記内ノズル3の噴射口3aの外径寸法をφ5.5mm(変更可能寸法φ5〜9mm)、前記内ノズル3の噴射口3aの長さ寸法を6mm(変更可能寸法4〜8mm)、外向きのフランジ部3dの外径寸法及び前記外ノズル2の内径寸法をφ7mm(変更可能寸法5〜9mm)とし、前記内ノズル3の先端部を、外ノズル2の先端部から8mm(変更可能寸法5〜10mm)程、内側に位置させるように構成した。
【0019】
そして、その蒸気噴射ノズル1を用い、蒸気圧力を0.3MPa、洗浄対象物としての液晶表示パネルの端子面に対する仰角を30°、離間距離を10mmとする条件下で蒸気を噴射して、液晶表示パネルの洗浄を試みたところ、従来の方法では残留していた皮膚片の塵埃までも除去することができ、十分満足の得られる洗浄効果を得ることができた。
【0020】
また、図4は、本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズル1の第2実施形態を説明するための要部断面図である。以下、第1実施形態の蒸気噴射ノズル1と異なる構成点のみを説明する。
【0021】
この第2実施形態の蒸気噴射ノズル1は、前記内ノズル3の先端部は、例えば、金属材等により形成されており、噴射口3aとなる部分は円筒状に形成されている。
【0022】
また、前記外ノズル2は、例えば、プラスティック樹脂材等により形成されており、円筒状とされた本体の後端部には、内向きのフランジ部2dが形成されている。そして、前記内ノズル3の先端部を外ノズル2内の中心部に位置させるようにして、前記内向きのフランジ部2dの内径端面を以て、前記内ノズル3の外周に嵌着されている。
【0023】
これにより、本実施形態の蒸気噴射ノズル1は、内ノズル3と外ノズル2とを有する2重構造とされ、前記内ノズル3の外周壁3bと外ノズル2の内周壁2cとの間には、外ノズル2に形成された前記内向きのフランジ部2dによって間隙空間部4が形成され、本発明の蒸気噴射ノズル構造を有するものとなる。
【0024】
そして、本実施形態の蒸気噴射ノズル1によっても、本発明の蒸気噴射ノズル構造を有することにより、前述のように、従来の蒸気洗浄の方法では除去が困難であった指紋や汗等の人体分泌物を含む塵埃を除去し、十分満足の得られる洗浄効果を得ることができる。また、本実施形態においても、外ノズル2の内周壁2cは溝などが形成されていない平滑な面であることが好ましい。
【0025】
なお、本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズル1は、図5に示すように、前記内ノズル3と外ノズル2とを一体に形成することも可能である(第3実施形態)。
【0026】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0027】
例えば、蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズルの各部材の材料や寸法等は、前述した材料や寸法に限らない。また、本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズルを用いた洗浄条件も、前述の実施例の洗浄条件に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズルの第1実施形態を説明する要部断面図
【図2】図1のII−II断面図
【図3】本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズルにおける蒸気噴射イメージ(作用)を示す説明図
【図4】本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズルの第2実施形態を説明する要部断面図
【図5】本発明の蒸気噴射ノズル構造を有する蒸気噴射ノズルの第3実施形態を説明する要部断面図
【符号の説明】
【0029】
1 蒸気噴射ノズル
2 外ノズル
2a (外ノズルの)噴射口
2c (外ノズルの)内周壁
2d (外ノズルの内向き)フランジ部
3 内ノズル
3a (内ノズルの)噴射口
3b (内ノズルの)外周壁
3d (内ノズルの外向き)フランジ部
4 間隙空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を洗浄対象物に噴射するための蒸気噴射ノズル構造であって、外ノズル内に噴射口を臨ませてなる内ノズルが配設されており、前記内ノズルの外周壁と外ノズルの内周壁との間には、負圧を生じさせるための間隙空間部が形成されていることを特徴とする蒸気噴射ノズル構造。
【請求項2】
前記内ノズルおよび外ノズルはともに同心の円筒形状である請求項1に記載の蒸気噴射ノズル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−229611(P2007−229611A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53983(P2006−53983)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】