説明

蒸気弁および発電設備

【課題】ボイラーから蒸気タービンに流入する蒸気の量を制御・遮断する際に、弁座を通過した後の蒸気の流れを制御して、大幅に圧力損失を低減すること。
【解決手段】再熱蒸気弁1は、ボイラー51からの蒸気を導く蒸気入口流路31と、中圧タービン59へ蒸気を導く蒸気出口流路32との間に配置されている。再熱蒸気弁1は、一方側から駆動されて所定方向に移動可能なインターセプト弁20と、インターセプト弁20の他方側に連結され、他方側から駆動されて前記所定方向に移動可能な再熱蒸気止め弁21と、中空環状形状からなり、調節弁および停止弁が他方側に移動したときにこれら調節弁および停止弁に当接する弁座9と、を備えている。弁座9の他方側には、前記蒸気出口流路32内まで突出した張出部10が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラーから蒸気タービンに流入する蒸気の量を制御・遮断する蒸気弁および当該蒸気弁を用いた発電設備に関連している。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気の流量を制御・遮断するために、蒸気タービンの上流側には蒸気弁が設置されている。高圧タービンの上流に設置される蒸気弁は、主蒸気止め弁と蒸気加減弁と呼ばれ、直列に配置される。中圧タービンの上流に設置される蒸気弁は、組合わせ再熱蒸気弁(以下、再熱蒸気弁とも呼ぶ)と呼ばれ、一つのケーシング2内にインターセプト弁と再熱蒸気止弁が組み合わされている(例えば,非特許文献1参照)。
【0003】
図16に示すように、このような再熱蒸気弁1には、上流側に配置されたボイラーの再熱器により過熱された蒸気が、蒸気入口管14から供給される。そして、再熱蒸気弁1を経た蒸気は、蒸気出口管15から下流側の中圧タービンへと導かれる。
【0004】
図16に示すように、再熱蒸気弁1は、上方側から駆動されて上下方向に移動可能なインターセプト弁20と、インターセプト弁20の下方側に連結され、下方側から駆動されて上下方向に移動可能な再熱蒸気止め弁25と、これらインターセプト弁20と再熱蒸気止め弁25とを囲繞して配置され、上流のボイラーからの異物が下流の中圧タービンに混入することを防止する円筒状のストレーナ6と、を備えている。なお、ストレーナ6は、多孔板から構成されている。
【0005】
このうち、インターセプト弁20は、上方から駆動されて上下方向に移動可能な弁棒21と、当該弁棒21に環状に設けられ、下面に凹部22aを有する弁体22と、を有している。
【0006】
また、再熱蒸気止め弁25は、下方から駆動されて上下方向に移動可能な弁棒26と、当該弁棒26に設けられ、弁棒26から周縁外方に突出するとともに、インターセプト弁20の弁体22の凹部22a内に受けられる弁体27と、を有している。
【0007】
また、インターセプト弁20および再熱蒸気止め弁25の下方には、インターセプト弁20の弁体22および再熱蒸気止め弁25の弁体27に当接する弁座9が設けられており、インターセプト弁20、再熱蒸気止め弁25、または、これらの両方を弁座9に圧着することによって、蒸気流路を閉鎖することができる。
【非特許文献1】火力発電総論 瀬間徹監修 電気学会 2002/10/25初版発行 (P143 図7.38、図7.39)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図17に示すように、蒸気出口管15が、再熱蒸気弁1の下流側で鋭角に曲がって配置されているので、蒸気の主流は二次流れを発生させる。この二次流れの速度欠損部に別の蒸気流れが流れ込むことなどにより、最終的には蒸気弁出口流れに強い二次流れが重なり合い圧力損失の増大を招いている。
【0009】
より具体的には、図17において、再熱蒸気弁1に流入した蒸気主流Fが、ストレーナ6を通過した後、インターセプト弁20の弁体22および再熱蒸気止め弁25の弁体27と弁座9との間を通過する。その後、蒸気が蒸気出口管15内に至ると、蒸気の流入する空間が急に広がるので、一部の流れF3は二次流れ渦となってしまい、損失につながる。
【0010】
また、他の一部の流れF1は、蒸気出口流路32に出た際の急激な方向転換についていくことが出来ず、蒸気出口管15の下方に押し付けられた後、主流として排出される。他方、蒸気出口管15の上方においては、二次流れF2が発生し、蒸気出口管15の上方で旋回渦を形成しながら排出される。
【0011】
このとき、蒸気出口管15内下方の主流F1と蒸気出口管15内上方の二次流れF2とが激しくぶつかり合ってしまい、大きな圧力損失が発生する。図18は出口方向からみた(図17の矢印Xからみた)蒸気の流れを示す図であるが、この図18に示すように、主流F1は範囲Sを流れて排出され、二次流れF2は矢印Aの方向で旋回しながら排出される。
【0012】
また、ストレーナ6面上を通過する蒸気は、ストレーナ6に設けられた多孔を通過してゆくため、ストレーナ6円筒の軸方向速度成分が誘発されて強い二次流れが生じている。
【0013】
なお、一般に蒸気弁の圧力損失が1%低減されると蒸気タービン全体のヒートレートは0.1%向上すると言われており(ターボ機械第30巻第7号参照)、蒸気弁の更なる圧力損失低減化は軽視できない重要な課題である。
【0014】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ボイラーから蒸気タービンに流入する蒸気の量を制御・遮断する蒸気弁であって、大幅に圧力損失を低減することができる蒸気弁を提供すること、かつ、当該蒸気弁を用いた発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、蒸気入口管、蒸気出口管を有するケーシングの蒸気流路内に、弁座およびこの弁座に当接可能な弁体を収納した蒸気弁において、前記弁座の当接面下流側に、前記蒸気出口管内まで滑らかに突出して蒸気を案内する張出部を設けたことを特徴とする蒸気弁である。
【0016】
本発明は、上述の蒸気弁を備えたことを特徴とする発電設備である。
【0017】
本発明は、蒸気を発生させるボイラーと、ボイラーからの蒸気が蒸気入口配管を介して導かれる蒸気弁と、蒸気弁を経た蒸気が蒸気出口配管を介して導かれ、当該蒸気を用いて電力を生成する蒸気タービンと、を備え、前記蒸気弁は、ケーシング内に一方側から駆動されて前記弁座に当接可能な調節弁と、この調節弁の他方側に配置され、他方側から駆動されて前記弁座に当接可能な停止弁と、を収納し、前記弁座の下流側には、前記ケーシングの蒸気出口管内まで突出して蒸気を案内する張出部が設けられていることを特徴とする発電設備である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弁座の下流側に蒸気出口流路内まで突出した張出部が設けられているので、弁座を通過した後の蒸気の流れを制御することができ、大幅に圧力損失を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る蒸気弁および当該蒸気弁を備えた発電設備の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図3は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0020】
図1に示すように、発電設備は、化石燃料の燃焼に伴う熱を利用して蒸気を発生させるボイラー51と、ボイラー51から排出される蒸気を用いて回転する蒸気タービン52と、蒸気タービン52で用いられた蒸気を回収する復水器53と、復水器53から供給される水を加熱する低圧給水加熱器54と、低圧給水加熱器54で加熱された水を昇圧する給水ポンプ55と、給水ポンプ55からの水を加熱する高圧給水加熱器56と、蒸気タービン52に連結された発電機57とを備えている。
【0021】
このうち、蒸気タービン52は、図1に示すように、ボイラー51からの主蒸気が導かれる高圧タービン58と、高圧タービン58から排出された後、ボイラー51内の再熱器65によって再熱された再熱蒸気が導かれる中圧タービン59と、中圧タービン59から排出された再熱蒸気がクロスオーバー管60を経由して導かれる低圧タービン61と、を有している。
【0022】
また、図1に示すように、ボイラー51内の再熱器65からの蒸気を導く流路となる蒸気入口配管31と、中圧タービン59へ蒸気を導く流路となる蒸気出口配管32との間には再熱蒸気弁1(CRV)が配置されている。
【0023】
この再熱蒸気弁1は、図2に示すように、蒸気入口管14、蒸気出口管15を有するケーシング2と、このケーシング2内に収納され、上方(一方)側から駆動されて上下方向に移動可能なインターセプト弁(調節弁)20と、インターセプト弁20の下方(他方)側に連結され、下方側から駆動されて上下方向に移動可能な再熱蒸気止め弁(停止弁)25と、インターセプト弁20と再熱蒸気止め弁25とを囲繞して配置され、上流のボイラー51からの異物が下流の中圧タービン59に混入することを防止する円筒状のストレーナ6と、を備えている。なお、ストレーナ6は、多孔板から構成されており、蒸気の流れを整流する整流機能も有している。
【0024】
このうち、インターセプト弁20は、図2に示すように、上方側から駆動されて上下方向に移動可能な弁棒21と、当該弁棒21の先端部に環状に設けられ、下面に凹部22aを有する弁体22と、を有している。また、インターセプト弁20の弁体22の周縁外方には、インターセプト弁20の弁体22を案内する円筒状の弁体ガイド7が設けられている。
【0025】
また、図2に示すように、再熱蒸気止め弁25は、下方側から駆動されて上下方向に移動可能な弁棒26と、当該弁棒26の先端部に設けられ、弁棒26から周縁外方に突出するとともに、インターセプト弁20の弁体22の凹部22a内に出入り可能に配置されている弁体27と、を有している。
【0026】
また、図2に示すように、インターセプト弁20および再熱蒸気止め弁25の弁体22、27に対向する位置には、蒸気流路を形成し中空環状形状からなる弁座9が設けられている。そして、この弁座9には、インターセプト弁20および再熱蒸気止め弁25が下方側に移動したときに、これらインターセプト弁20および再熱蒸気止め弁25に当接するようになっている。なお、インターセプト弁20、再熱蒸気止め弁25、または、これらの両方が弁座9に圧着されることによって、蒸気流路は閉鎖される。
【0027】
ところで、再熱蒸気止め弁25は、非常時に中圧タービン59に流入する蒸気を瞬時に遮断する保安弁機能を持ち、インターセプト弁20は、中圧タービン59に流入する蒸気の量を調整する蒸気量調節機能を持っている。
【0028】
また、インターセプト弁20の弁棒21の上部には、インターセプト弁20の弁棒21を上下方向に移動させる油圧駆動のインターセプト弁駆動装置(図示せず)が設置されている。また、再熱蒸気止め弁25の弁棒26の下部には、再熱蒸気止め弁25の弁棒26を上下方向に移動させる油圧駆動の再熱蒸気止め弁駆動装置(図示せず)が設置されている。
【0029】
また、図2および図3に示すように、弁座9の下面には、蒸気出口管15内まで突出した張出部10が、弁座9と一体となって形成されている。この張出部10は、その開口部の内径を弁座9の出口部の内径よりも滑らかに拡げて弁座9の下面との間に中空部13を形成するよう、弁座9から湾曲して形成されている。
【0030】
また、図2に示すように、ケーシング2の上方には、ケーシング2を上方から覆う上蓋3が、締結ボルト4によって連結されている。なお、このように上蓋3が締結ボルト4によってケーシング2に連結されることによって、ケーシング2内を流れる蒸気が外部へ漏洩することを防止することができる。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0032】
再熱蒸気弁1の上流側に配置されたボイラー51の再熱器65から再熱蒸気弁1内に、蒸気入口流路31を介して、過熱された蒸気が流入される(図1参照)。
【0033】
次に、この過熱された蒸気は、再熱蒸気弁1でその流量が調整された後、蒸気出口配管32を介して、中圧タービン59へ流出される(図1参照)。
【0034】
具体的には、インターセプト弁20と弁座9との間の間隙を調整することによって、蒸気を、その流量を調整しつつ、下流側の中圧タービン59に流入させることができる(図2参照)。
【0035】
なお、図2において、再熱蒸気止め弁25を弁座9に当接させて、蒸気流路を閉鎖させ、蒸気の流れを停止させることもできる。
【0036】
本実施の形態によれば、上述のように蒸気が再熱蒸気弁1内を流れる際に、蒸気は弁座9の下面から滑らかに拡がるように湾曲して形成された張出部10を伝わって移動する。このため、蒸気の主流F1は、張出部10の影響により蒸気出口流路32の下方へ押し付けられることなくスムーズに、蒸気出口管15の延在する方向へ導かれる。また、蒸気出口管15の上方で発生する二次流れF2は、蒸気の主流と激しくぶつかり合うことなく排出されていく。これらのことより、弁座9を通過した後の蒸気の流れを制御することができ、大幅に圧力損失を低減することができる。
【0037】
また、再熱蒸気止め弁25およびインターセプト弁20の各々が、個別の効果や機能を持つため、定格運転時、部分負荷運転時、非常時において個々の機能を確実に発揮できる。また、これら再熱蒸気止め弁25とインターセプト弁20とを組み合わせる構成は簡素であり、製造しやすいだけでなく、分解したり組立てしたりすることも容易である。さらに、インターセプト弁20と再熱蒸気止め弁25とが一体となって形成されているので、再熱蒸気弁1をコンパクトにすることができる。
【0038】
第2の実施の形態
次に、図4により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図4に示す第2の実施の形態は、張出部10と弁座9との間の中空部13に、張出部10を弁座9に固定して補強する補強リブ12が設けられているものであり、その他の構成は図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0039】
図4に示す第2の実施の形態において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
図4に示すように、張出部10と弁座9の下面との間に形成された中空部13に、張出部10を弁座9に固定して補強する補強リブ12が設けられているので、張出部10の弁座9への固定強度を向上させることができる。
【0041】
第3の実施の形態
次に、図5により、本発明の第3の実施の形態について説明する。図5に示す第3の実施の形態は、張出部10が、弁座9との間に中空部13が形成されるよう弁座9から湾曲して突出する代わりに、弁座9から蒸気出口管15に向かって間隙を形成することなく延びているものであり、その他の構成は図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0042】
図5に示す第3の実施の形態において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
図5に示すように、張出部10が弁座9から蒸気出口管15に向かって下方側に間隙を形成することなく延びている。すなわち、張出部10が第1の実施の形態のように外周側が削り取られて中空部13を形成するような構成になっている(図2および図3参照)のではなく、張出部10は、外周側が削り取られず弁座9から下方に向かって連続的に延びている。このため、張出部10の弁座9への固定強度を向上させることができる。
【0044】
第4の実施の形態
次に、図6により、本発明の第4の実施の形態について説明する。図6に示す第4の実施の形態は、張出部10が、弁座9と一体に形成される代わりに、弁座9と別体を構成し、弁座9に取付自在となっているものであり、その他の構成は図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0045】
図6に示す第4の実施の形態において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
図6に示すように、弁座9と別体を構成する張出部10は、ボルトなどの締結部材41によって、弁座9に取り付けられており、弁座9に対して取付自在となっている。このように、張出部10を弁座9と別体とすることによって、製造コストを低く押さえることができる。
【0047】
第5の実施の形態
次に、図7および図8により、本発明の第5の実施の形態について説明する。図7および図8に示す第5の実施の形態は、弁座9が、弁体との当接面よりも蒸気流路下流側に平坦面9aを有し、張出部10が、蒸気出口管15内の蒸気流路に、弁座9の平坦面9aから連続した平坦面10aを有している。そして、上下方向における弁座9の平坦面9aの長さLと張出部10の平坦面10aの長さL10とを合計した長さをLとし、再熱蒸気止め弁25の公称径(再熱蒸気止め弁25が弁座9に当接する際の当接面の半径)をDとしたときに、0<L/D≦0.25となっている。その他の構成は図5に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0048】
なお、上下方向における弁座9の平坦面9aの長さLというのは、図7に示すように、上下方向で弁座9の平坦面9aに沿って計った平坦面9aの長さを意味し、上下方向における張出部10の平坦面10aの長さL10というのは、同様に図7に示すように、上下方向で弁座10の平坦面10aに沿って計った平坦面10aの長さを意味している。
【0049】
図7および図8に示す第5の実施の形態において、図5に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
数値解析により、パラメータL/Dの圧力損失に及ぼす影響を調べたところ、図8に示すようになった。図8において、横軸はL/Dであり、縦軸は圧力損失を示している。本実施の形態によれば、パラメータL/Dを調整して0<L/D≦0.25となるようにしているので、図8から分かるように、圧力損失の発生をより確実に抑えることができる。
【0051】
第6の実施の形態
次に、図9および図10により、本発明の第6の実施の形態について説明する。図9および図10に示す第6の実施の形態は、張出部10が、縦断面で見たときに円弧状となる湾曲面10rを有し、当該湾曲面10rの円弧の半径をRとし、再熱蒸気止め弁25の公称径をDとしたときに、0<R/D≦0.25となっている。その他の構成は図5に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0052】
図9および図10に示す第6の実施の形態において、図5に示す第3の実施の形態および図7と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
数値解析により、パラメータR/Dの圧力損失に及ぼす影響を調べたところ、図10に示すようになった。図10において、横軸はR/Dであり、縦軸は圧力損失を示している。本実施の形態によれば、パラメータR/Dを調整して0<R/D≦0.25となるようにしているので、図10から分かるように、圧力損失の発生をより確実に抑えることができる。
【0054】
第7の実施の形態
次に、図11および図12により、本発明の第7の実施の形態について説明する。図11および図12に示す第7の実施の形態は、弁座9が、弁体との当接面よりも蒸気流路下流側に平坦面9aを有し、張出部10が、蒸気流路側に、弁座9の平坦面9aから連続した平坦面9aを有している。そして、弁座9の平坦面9aおよび張出部10の平坦面10aは、縦断面で見たときに、上下方向に対して傾斜角θで傾き、当該傾斜角は、0°<θ≦60°となっている。その他の構成は図5に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0055】
図11および図12に示す第7の実施の形態において、図5に示す第3の実施の形態および図7と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
数値解析により、パラメータθの圧力損失に及ぼす影響を調べたところ、図12に示すようになった。図12において、横軸はθであり、縦軸は圧力損失を示している。本実施の形態によれば、パラメータθを調整して0°<θ≦60°となるようにしているので、図12から分かるように、圧力損失の発生をより確実に抑えることができる。
【0057】
第8の実施の形態
次に、図13乃至図15により、本発明の第8の実施の形態について説明する。図13乃至図15に示す第8の実施の形態は、弁座9が、弁体との当接面よりも蒸気流路下流側に平坦面9aを有し、張出部10が、蒸気流路側に、弁座9の平坦面9aから連続した平坦面10aを有するとともに、当該平坦面10aから連続し縦断面で見たときに円弧状となる湾曲面10rを有している。そして、弁座9および張出部10の形状が、弁座9の中心を上下方向に延在する中心軸C(図13参照)に対して非対称になっている。その他の構成は図5に示す第3の実施の形態と略同一である。
【0058】
図14(a)に示すように、蒸気入口側端部(図2の弁棒21、26の軸中心線から見て蒸気出口管15に遠い左側端部)において、弁座9の平坦面9aおよび張出部10の平坦面10aは、縦断面で見たときに、上下方向に対して傾斜角θで傾いている。他方、図14(b)に示すように、蒸気出口側端部(図2の弁棒21、26の軸中心線からみて蒸気出口管15に近い端部)において、弁座9の平坦面9aおよび張出部10の平坦面10aは、縦断面で見たときに、上下方向に対して傾斜角θで傾いている。
【0059】
また、図14(a)に示すように、蒸気入口側の端部において、上下方向における弁座9の平坦面9aの長さL9iと張出部10の平坦面10aの長さL10iとを合計した長さはLとなっている。他方、図14(b)に示すように、蒸気出口側の端部において、上下方向における弁座9の平坦面9aの長さL9Oと張出部10の平坦面10aの長さL10Oとを合計した長さはLとなっている。
【0060】
また、図14(a)に示すように、蒸気入口側の端部において、張出部10の湾曲面10rの円弧の半径はRとなっており、図14(b)に示すように、蒸気出口側の端部において、張出部10の湾曲面10rの円弧の半径はRとなっている。なお、再熱蒸気止め弁25の公称径はDとなっている。
【0061】
上述のように、弁座9および張出部10の形状が、弁座9の中心を上下方向に延在する中心軸に対して非対称になっており、L/DとL/D、R/DとR/Dおよびθとθの値は各々異なっている。
【0062】
より具体的には、数値解析を駆使し各パラメータをいろいろ組み合わせて圧力損失の影響を調査した結果(図15参照)に基づき、本実施の形態では、蒸気入口側の端部において、L/D=0.131、R/D=0.039、θ=3°とし、蒸気出口側の端部において、L/D=0.013、R/D=0.197、θ=17°とするように、設計している。このため、本実施の形態によれば、圧力損失の発生を極めて低く抑えることができる。
【0063】
なお、以上の第1〜第8の実施の形態では蒸気弁として、主に組み合わせ再熱蒸気弁について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、主蒸気止め弁でも同様に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態による発電設備を示す概略図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による蒸気弁を示す縦断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態による蒸気弁を示す斜視図。
【図4】本発明の第2の実施の形態による蒸気弁を示す斜視図。
【図5】本発明の第3の実施の形態による蒸気弁を示す斜視図。
【図6】本発明の第4の実施の形態による蒸気弁の弁座および張出部を示す縦断面図。
【図7】本発明の第5の実施の形態による蒸気弁の弁座および張出部を示す縦断面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態による蒸気弁におけるL/Dと圧力損失との関係を示すグラフ図。
【図9】本発明の第6の実施の形態による蒸気弁の弁座および張出部を示す縦断面図。
【図10】本発明の第6の実施の形態による蒸気弁におけるR/Dと圧力損失との関係を示すグラフ図。
【図11】本発明の第7の実施の形態による蒸気弁の弁座および張出部を示す縦断面図。
【図12】本発明の第7の実施の形態による蒸気弁におけるθと圧力損失との関係を示すグラフ図。
【図13】本発明の第8の実施の形態による蒸気弁を示す斜視図。
【図14】本発明の第8の実施の形態による蒸気弁の弁座および張出部を示す縦断面図。
【図15】本発明の第8の実施の形態による蒸気弁のにおけるR/D、L/Dおよびθと、圧力損失との関係を示すグラフ図。
【図16】従来の蒸気弁を示す縦断面図。
【図17】従来の蒸気弁内での蒸気の流れを示す縦断面図。
【図18】図17の矢印Xからみた蒸気の流れを示す図。
【符号の説明】
【0065】
1 再熱蒸気弁
2 ケーシング
7 弁体ガイド
9 弁座
9a 弁座の平坦面
10 張出部
10a 張出部の平坦面
10r 湾曲面
12 補強リブ
13 中空部
14 蒸気入口管
15 蒸気出口管
20 インターセプト弁(調節弁)
21 インターセプト弁の弁棒
22 インターセプト弁の弁体
25 再熱蒸気止め弁(停止弁)
26 再熱蒸気止め弁の弁棒
27 再熱蒸気止め弁の弁体
31 蒸気入口配管
32 蒸気出口配管
51 ボイラー
59 中圧タービン
65 再熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気入口管、蒸気出口管を有するケーシングの蒸気流路内に、弁座およびこの弁座に当接可能な弁体を収納した蒸気弁において、
前記弁座の当接面下流側に、前記蒸気出口管内まで滑らかに突出して蒸気を案内する張出部を設けたことを特徴とする蒸気弁。
【請求項2】
前記弁体は、一方から駆動されて前記弁座に当接可能な調節弁と、この調節弁の他方側に配置され、他方側から駆動されて前記弁座に当接可能な停止弁とを有することを特徴とする請求項1記載の蒸気弁。
【請求項3】
張出部は、弁座との間に中空部を形成するよう弁座から湾曲して突出し、
張出部と弁座との間の中空部に、張出部を弁座に固定して補強する補強リブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気弁。
【請求項4】
張出部は、弁座から蒸気出口管に向かって間隙を形成することなく延びていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気弁。
【請求項5】
張出部は、弁座と別体を構成し、弁座に取付自在となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項6】
弁座は、蒸気流路側に平坦面を有し、
張出部は、蒸気流路側に弁座の平坦面から連続した平坦面を有し、
前記所定方向における弁座の平坦面の長さと張出部の平坦面の長さとを合計した長さをLとし、停止弁が弁座に当接する際の当接面の半径をDとしたときに、
0<L/D≦0.25
となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項7】
張出部は、縦断面で見たときに円弧状となる湾曲面を有し、
当該湾曲面の円弧の半径をRとし、停止弁が弁座に当接する際の当接面の半径をDとしたときに、
0<R/D≦0.25
となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項8】
弁座は、蒸気流路側に平坦面を有し、
張出部は、蒸気流路側に弁座の平坦面から連続した平坦面を有し、
弁座の平坦面および張出部の平坦面は、縦断面で見たときに、前記所定方向に対して傾斜角θで傾き、
当該傾斜角は、0°<θ≦60°となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項9】
弁座は、蒸気流路側に平坦面を有し、
張出部は、蒸気流路側に弁座の平坦面から連続した平坦面を有するとともに、当該平坦面から連続し縦断面で見たときに円弧状となる湾曲面を有し、
弁座の平坦面および張出部の平坦面は、縦断面で見たときに、前記所定方向に対して傾斜角θで傾き、
前記所定方向における弁座の平坦面の長さと張出部の平坦面の長さとを合計した長さをLとし、停止弁が弁座に当接する際の当接面の半径をDとし、張出部の湾曲面の円弧の半径をRとしたときに、
少なくとも蒸気出口側の端部と蒸気入口側の端部とでは、L/D、R/Dおよびθの各々の値が異なることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の蒸気弁。
【請求項10】
請求項1記載の蒸気弁を備えたことを特徴とする発電設備。
【請求項11】
蒸気を発生させるボイラーと、
ボイラーからの蒸気が蒸気入口配管を介して導かれる蒸気弁と、
蒸気弁を経た蒸気が蒸気出口配管を介して導かれ、当該蒸気を用いて電力を生成する蒸気タービンと、を備え、
前記蒸気弁は、
ケーシング内に一方側から駆動されて前記弁座に当接可能な調節弁と、
この調節弁の他方側に配置され、他方側から駆動されて前記弁座に当接可能な停止弁と、を収納し、
前記弁座の下流側には、前記ケーシングの蒸気出口管内まで突出して蒸気を案内する張出部が設けられていることを特徴とする発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−85201(P2009−85201A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259815(P2007−259815)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】