説明

蒸発器一体型熱ポンプおよびランキンサイクル装置

【課題】冷熱源を廃止できると共に消費電力を低減できる蒸発器一体型熱ポンプおよびランキンサイクル装置を提供する。
【解決手段】蒸発器一体型熱ポンプ4は、蒸発室40と、入熱要素43と、ガス放出口45と、液吸入口107と、ガス吐出口45と、ガス放出口45の開放により蒸発室40のガス状の流体を外部のガス受取部に放出させて蒸発室40を低圧化させるガス放出弁46と、ガス放出弁46の開放により低圧化された蒸発室40に液状の流体を液吸入口107を介して蒸発室40に吸入させる液吸入弁47と、蒸発室41の流体をガス受取部に吐出させるガス吐出弁48とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸発器一体型熱ポンプおよびランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、膨張タンク、吸込み用の逆止弁a1、吐出側の圧力調整弁a2および膨張タンクと凝縮器の均圧弁sから構成された熱ポンプをランキンサイクルの凝縮器と集熱器の間に構成した装置を開示している。ここで、均圧弁sの開により膨張タンクと凝縮器を均圧させ、さらに膨張タンクの配管cに冷水を流すことで膨張タンク内を減圧させ逆止弁a1より液を流入させることにしている。膨張タンクの配管Hに温水を流すことにより、液が蒸発しタンク内圧が上がる。タンク内圧が圧力調整弁a2の設定値を超えると、吐出側の圧力調整弁a2が開となり、液が集熱器に吐出される。
【0003】
特許文献2は、ランキンサイクルのポンプ機能を蒸発機内での毛細管力を利用したことを特徴とするランキンサイクル装置を開示する。毛管力を利用するランキンサイクル装置は、膨張機と凝縮器と蒸発器とを備えており、蒸発器では流体を蒸発させると同時に流体に循環駆動力を付与する機能を備えている。また蒸発器は、作動流体の流路断面全面に液相状の作動流体を毛管力で駆動させるための毛細管構造体と、毛細管構造体における作動流体を蒸発させるための加熱部とを含む構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2006-535145号公報
【特許文献2】特開2009-150251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、熱ポンプを駆動させるために温熱源および冷熱源の双方が必要である。特に、冷熱源は、冷熱を作り出すエネルギーが必要となり、装置の全体効率を落とす要因となる。特許文献2は、毛細管力により液を送り出す圧力が、毛細管部における流体の表面張力と流路半径とに依存するため、高圧を得たい場合には、毛細幹部の流路半径を小さくする必要がある。例えば、冷媒R134aで500kPaの昇圧を得るためには、0.1μm以下の非常に小さな流路径が必要とされる。この場合、毛細管を形成する毛細管構造体の選定が困難となる。更に、不純物または潤滑油などにより流路の閉塞などの問題が起こる可能性が高い。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、冷熱源を廃止できると共に消費電力を低減できる蒸発器一体型熱ポンプおよびランキンサイクル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)様相1の本発明に係る蒸発器一体型熱ポンプは、
(i)液相から気相に相変化可能な流体を収容する蒸発室と、外部からの入熱に伴い蒸発室内の液状の流体を蒸発させてガス化を促進させる入熱要素と、蒸発室のガス状の流体を低圧源に放出させるガス放出口と、外部の液状流体供給源から液状の流体を蒸発室に吸入させる液吸入口と、入熱要素への入熱により高圧化された蒸発室の圧力に基づいて蒸発室のガス状の流体を外部のガス受取部に供給させるガス吐出口とを備える蒸発ポンプ部と、
(ii)蒸発ポンプ部のガス放出口を開閉させるように設けられガス放出口の開放により蒸発室のガス状の流体を低圧源に放出させて蒸発室を低圧化させるガス放出弁と、
(iii)ガス放出弁の開放により低圧化された蒸発室に、外部の液状流体供給源から液状の流体を液吸入口を介して蒸発室に吸入させる液吸入弁と、
(iv)開放により蒸発室の流体を外部のガス受取部に供給させるガス吐出弁とを具備する。
【0008】
本様相によれば、ガス放出弁が開放すると、ガス放出口が開放され、蒸発室のガス状の流体は蒸発器一体型熱ポンプの外部の低圧源に放出されるため、蒸発室はガス放出弁の開放前に比較して低圧化される。このようにガス放出弁の開放により蒸発室が低圧化されるため、液吸入弁が開放すると、外部熱(例えば、エンジンや燃料電池の廃熱、太陽熱、地熱等)が液状流体供給源から液状の流体は液吸入口を介して蒸発室に吸入される。このとき、外部から入熱要素を介して蒸発室に入熱されるため、蒸発室の液状の流体は加熱されて蒸発が進行する。蒸発の進行により蒸発室の圧力が高くなるため、ガス吐出弁が開放し、蒸発した高圧のガス状の流体は、ガス吐出弁およびガス吐出口から外部のガス受取部に供給される。なお本明細書では、低圧源は、蒸発室の液吸入口よりも低い圧力の部位を意味する。
【0009】
(2)様相2の本発明に係る蒸発器一体型熱ポンプによれば、上記様相において、蒸発ポンプ部は、液相から気相に相変化可能な流体を収容する通路状の蒸発室を形成する複数の蒸発配管を有しており、入熱要素は、蒸発配管の外壁に設けられた熱交換フィンで形成されている。熱交換フィンに入熱されると、蒸発配管の液状の流体は加熱されて蒸発される。従って、蒸発室内は高圧化され、蒸発室のガス状の流体は外部のガス受取部に供給される。
【0010】
(3)様相3の本発明に係る蒸発器一体型熱ポンプによれば、上記様相において、蒸発ポンプ部は、液相から気相に相変化可能な流体を収容する通路状の蒸発室を形成する蒸発通路を形成する複数の蒸発配管を有しており、入熱要素は、複数の蒸発配管を覆う熱交換室を形成する熱交換容器とを有する。外部熱(例えば、エンジンや燃料電池の廃熱、太陽熱、地熱等)で加熱された熱交換用流体が熱交換室に供給されると、蒸発配管の液状の流体は加熱されて蒸発される。従って、蒸発室内は高圧化され、蒸発室の高圧のガス状の流体は外部のガス受取部に供給される。
【0011】
(4)様相4の本発明に係るランキンサイクル装置は、第1吸入ポートおよび第1吐出ポートをもつ膨張機と、膨張機の第1吐出ポートから帰還したガス状の冷媒の凝縮を進行させる凝縮器と、凝縮器において凝縮が進行した冷媒を蒸発させる蒸発器と有するランキンサイクル装置において、蒸発器は蒸発器一体型熱ポンプで構成されており、
蒸発器一体型熱ポンプは、
(i)液相から気相に相変化可能な流体を収容する蒸発室と、外部からの入熱に伴い蒸発室内の液状の流体を蒸発させてガス化を促進させる入熱要素と、蒸発室のガス状の流体を外部の低圧源に向けて放出させるガス放出口と、外部の液状流体供給源から液状の流体を蒸発室に吸入させる液吸入口と、入熱要素への入熱により高圧化された蒸発室の圧力に基づいて蒸発室のガス状の流体を外部のガス受取部に供給させるガス吐出口とを備える蒸発ポンプ部と、
(ii)蒸発ポンプ部のガス放出口を開閉させるように設けられガス放出口の開放により蒸発器室のガス状の流体を低圧源に放出させて蒸発室を低圧化させるガス放出弁と、
(iii)ガス放出弁の開放により低圧化された蒸発室に、外部の液状流体供給源から液状の流体を液吸入口を介して蒸発室に吸入させる液吸入弁と、
(iv)開放により蒸発室の流体を外部のガス受取部に供給させるガス吐出弁とを具備する。
【0012】
本様相によれば、ガス放出弁が開放すると、ガス放出口が開放され、蒸発室のガス状の流体は外部の低圧源に放出されるため、蒸発室はガス放出弁の開放前に比較して低圧化される。このようにガス放出弁の開放により蒸発室が低圧化されているため、液吸入弁が開放すると、外部の液状流体供給源から液状の流体は液吸入弁および液吸入口を介して蒸発室に吸入される。このとき、外部から入熱要素を介して蒸発室に入熱されているため、蒸発室の液状の流体は加熱されて蒸発が進行する。蒸発の進行により蒸発室の圧力が高くなるため、ガス吐出弁が開放、蒸発室において蒸発したガス状の流体は、ガス吐出弁およびガス吐出口から外部のガス受取部に供給される。
【0013】
(5)様相5の本発明に係るランキンサイクル装置によれば、上記様相において、膨張機は、ランキンサイクル用の第1吸入ポートおよび第1吐出ポートの他に、膨張室の膨張作用により圧縮される圧縮室に連通された蒸気圧縮サイクル用の第2吸入ポートおよび第2吐出ポートを有する膨張圧縮機であり、
凝縮器の出口側に接続され凝縮器で凝縮された液状の冷媒を膨張させる膨張要素と、膨張要素に接続され膨張要素で膨張させた冷媒を蒸発させると共に蒸発させたガス状の冷媒を膨張圧縮機の第2吸入ポートに吸入させるヒートポンプ用蒸発器とを備える蒸気圧縮式ヒートポンプ装置が一体に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蒸発器と熱駆動型ポンプとが一体化された蒸発器一体型熱ポンプを提供できる。この場合、エンジンや燃料電池などの機器の廃熱、太陽熱、地熱等といった外部熱を蒸発器一体型熱ポンプの駆動源とするため、冷熱源を廃止できると共に、エンジンや燃料電池等の機器の廃熱、太陽熱、地熱等の外部熱を利用するため、消費電力を低減できる。
【0015】
本発明によれば、ガス放出弁が開放すると、ガス放出口が開放され、蒸発室のガス状の流体は蒸発器一体型熱ポンプの外部の低圧源に放出されるため、蒸発室はガス放出弁の開放前に比較して低圧化される。このようにガス放出弁の開放により蒸発室が低圧化されるため、液吸入弁が開放すると、外部の液状流体供給源から液状の流体は液吸入口を介して蒸発室に吸入される。このとき、外部熱が入熱要素を介して蒸発室に入熱されているため、蒸発室の液状の流体は加熱されて蒸発が進行する。蒸発の進行により蒸発室の圧力が高くなるため、ガス吐出弁が開放し、蒸発したガス状の流体はガス吐出弁およびガス吐出口から外部のガス受取部に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るランキンサイクル装置を示す回路図である。
【図2】蒸発器一体型熱ポンプの作動を説明する図である。
【図3】実施形態2に係り、蒸発器一体型熱ポンプを模式的に示す側面図である。
【図4】実施形態3に係り、蒸発器一体型熱ポンプを模式的に示す側面図である。
【図5】実施形態4に係り、蒸発器一体型熱ポンプを模式的に示す側面図である。
【図6】実施形態5に係り、(A)(B)は蒸発器一体型熱ポンプを模式的に示す側面図である。
【図7】実施形態6に係り、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置を組み込んだランキンサイクル装置を示す回路図である。
【図8】(A)は実施形態7に係り、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置を組み込んだランキンサイクル装置を示す回路図であり、(B)(C)はそれぞれ液溜めタンクの構造を模式的に示す図である。
【図9】実施形態8に係り、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置を組み込んだランキンサイクル装置を示す回路図である。
【図10】冷媒の状態を示すp−h線図である。
【図11】実施形態8に係り、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置を組み込んだランキンサイクル装置を示す図である。
【図12】実施形態9に係り、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置を組み込んだランキンサイクル装置を示す回路図である。
【図13】実施形態10に係り、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置を組み込んだランキンサイクル装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によれば、ガス放出弁が開放するとき、蒸発室から放出されるガスが供給される低圧源は、蒸発室の液吸入口よりも低い圧力の部位を意味する。凝縮器や液溜めタンクが設けられている場合には、低圧源としては、凝縮器や液溜めタンクの圧力よりも低い圧力レベルの部位が挙げられる。蒸気圧縮サイクルが設けられている場合には、低圧源としては、蒸気圧縮サイクルのうちの低圧回路(例えば、膨張弁の出口よりも下流の通路)が例示される。また、蒸気圧縮サイクルにおいて膨張弁の代わりにエジェクタを設け、低圧源としてはエジェクタの吸引口とする例が示される。蒸発器一体型熱ポンプの用途は、ランキンサイクル装置に限定されるものではなく、あるいは、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置を併有するランキンサイクル装置に限定されるものではなく、ポンプ装置に広く適用できる。従って流体も冷媒に限定されるものではなく、液相およびガス相に相変化できる流体であれば何でも良い。
【0018】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1を参照して説明する。図1は蒸発器一体型熱ポンプ4をもつランキンサイクル装置1を示す。ランキンサイクル装置1は、ランキンサイクル用の第1吸入ポート25および第1吐出ポート26をもつと共に冷媒の膨張仕事を行う膨張機21と、膨張機21に接続され膨張機21の第1吐出ポート26から帰還したガス状の冷媒を凝縮させる凝縮器3と、凝縮器3の出口3p側に接続され液状の冷媒を蒸発させてガス状の冷媒とした後に膨張機21の第1吸入ポート25に供給させるポンプ作用を果たす蒸発器一体型熱ポンプ4とを備える。
【0019】
蒸発器一体型熱ポンプ4(以下、熱ポンプ4ともいう)は、蒸発器と熱ポンプとを一体化したものであり、外部からの入熱により液を蒸発させて内圧を増加させて高圧ガスを吐出させる昇圧吐出工程と、蒸発室内のガスを低圧源に向けて放出させることにより蒸発室の圧力を減圧させ、液状流体供給源(凝縮器または液溜めタンク)より液状の冷媒を蒸発室に吸入させる吸入工程との繰り返してポンピングするものである。
【0020】
ここで本実施形態によれば、凝縮器3の入口3i側は、蒸発室41のガス放出時において蒸発室41の液吸入口107よりも低圧となり得る低圧源として機能する。位置的には、凝縮器3は蒸発室41に対して高さ方向において上方に配置されており、殊に、凝縮器3の底部は蒸発室41の上部に対して高さ方向において上方に配置されており、この高さ差による液状の冷媒のヘッド差を利用し、後述する(4)〜(1)に示す吸入工程において凝縮器3の出口3pから蒸発室41に液吸入弁47を経由して吸入させる。
【0021】
図1に示すように、熱ポンプ4は、液状の冷媒を蒸発させてガス状の冷媒とさせる蒸発器と熱ポンプとを一体化させたものであり、蒸発室41とガス放出弁46と液吸入弁47とガス吐出弁48とを有する。熱ポンプ4は、液相から気相に相変化可能な流体としての冷媒を収容する蒸発室41と、外部からの入熱に伴い蒸発室41内の液状の冷媒を蒸発させてガス化を促進させる入熱要素43と、蒸発室41のガス状の冷媒を凝縮器3の入口3i側(外部の第2ガス受取部)に向けて放出させるガス放出口49をもつガス放出通路460と、凝縮器3(外部の液状冷媒供給源)の出口3pから液状の冷媒を吸入通路470を介して蒸発室41に吸入させる液吸入口107と、入熱要素43への入熱により高圧化された蒸発室41の圧力に基づいて蒸発室41のガス状の冷媒を膨張機21の第1吸入ポート25(外部の第1ガス受取部)に供給させる電動式の第1吸入用開閉弁91iを介してガス吐出口45をもつガス吐出通路450とを備える。
【0022】
図1に示すように、蒸発器は、液相から気相に相変化可能な流体を収容する通路状の蒸発室41を形成するように複数ほぼ平行に並設された蒸発配管410を有する。入熱要素43は、蒸発配管410の外壁を覆う熱交換室430を形成する熱交換器431を有する。外部熱Qが入熱要素43に入熱されると、蒸発室41の液状の冷媒は加熱されて蒸発されてガス状の冷媒となる。外部熱Qは、エンジンや燃料電池などの機器の廃熱、太陽熱、地熱などが例示される。
【0023】
図1に示す装置によれば、熱ポンプ4の蒸発室41において外部熱Qにより液状の冷媒が加熱されて蒸発させてガス化されるため、蒸発室41は高圧化される。ガス吐出弁48および第1吐出用開閉弁91pが閉鎖している状態で、電動式のガス放出弁46が開放すると、蒸発室41のガスはガス放出口49、ガス吐出口45,ガス放出通路460を介して凝縮器3の入口3i(低圧源)側に供給される。このため、蒸発室41の圧力が低下し、前述したようにヘッド差に基づいて、圧力応答式の液吸入弁47が自動的に開放し、凝縮器3(外部の液状冷媒供給源)の出口3p側から、凝縮器3で液化された冷媒が液吸入弁47および液吸入口107を介して蒸発室41に吸入される。冷媒が蒸発室41に所定量吸入されたところで、ガス放出弁46が閉鎖される。ここで、外部熱Qの入熱が継続しているため、蒸発室41における蒸発が継続して進行し、蒸発室41が高圧化され(例えば0.8MPa)、ガス吐出弁48のリリーフ圧力よりも高くなる。このため圧力応答式のガス吐出弁48が開放する。このとき、電動開閉式の第1吸入用開閉弁91iが開放されるため、蒸発室41のガス状の高圧の冷媒がガス吐出口45およびガス吐出通路450を介して、膨張機21の第1吸入ポート25(外部の第1ガス受取部)に供給され、膨張機21は膨張仕事を行う。したがって、ランキンサイクル装置1は、膨張機21に膨張仕事を与えていると言える。
【0024】
このように蒸発室41におけるガス状の冷媒は、ガス吐出弁48,ガス吐出通路450および第1吸入用開閉弁91iを経由して膨張機21の第1吸入ポート25(ガス受取部)に吸入される。このガスが膨張機21において膨張し、ピストン24に対し膨張仕事を行なう。その後、膨張機21の第1吸入ポート25に供給されたガス状の冷媒は、膨張機21の第1吐出ポート26から吐出されて電動式の第1吐出用開閉弁91pを通して中圧状態(例えば0.25MPa)で入口3iから凝縮器3に供給される。凝縮器3は外部に放熱するため、ガス状の冷媒は凝縮器3において液状に相変化し、冷媒の液化が進行される。さらに、凝縮器3において液化が進行した冷媒は、凝縮器3の出口3pから吐出され、吸入通路470を経て液吸入口107を介して熱ポンプ4の蒸発室41に吸入される。
【0025】
前述したように熱ポンプ4の入熱要素43には、外部熱Q(エンジンや燃料電池等の機器の廃熱、太陽熱、地熱など)が継続的に入熱されているため、熱ポンプ4の蒸発室41は液状の冷媒を蒸発させてガス化させる。このように熱ポンプ4は、液状の冷媒を蒸発させてガス状の冷媒とさせる蒸発器としての機能と、蒸発化させたガス状の冷媒を膨張機21の第1吸入ポート25(外部の第1ガス受取部)に吐出させるポンプ吐出機能と、液状の冷媒を蒸発室41に吸入するポンプ吸入機能とを併有する。
【0026】
図1において、液吸入弁47は、蒸発室41の内圧がリリーフ圧よりも高くなると閉鎖する逆止弁であり、凝縮器3から熱ポンプ4の蒸発室41への冷媒流れを許容するものの、その逆方向流れを阻止する。ガス吐出弁48は、蒸発室41の内圧がリリーフ圧よりも高くなると開放してガス吐出通路450を開放させる逆止弁であり、熱ポンプ4の蒸発室41から膨張機21への冷媒流れを許容するものの、その逆方向流れを阻止する。
【0027】
次に、本実施形態の熱ポンプ4の作用について、図2を参照しつつ更に説明を加える。図2は模式であるため、弁46,48の位置は上下関係が逆として図示されている。入熱要素43からの入熱の影響で、熱ポンプ4の蒸発室41の冷媒のガス化が進行し、蒸発室41のガス層42の圧力は高圧(例えば0.8MPa程度)に維持される。図2の(1)は蒸発室41が液状の冷媒を吸入する吸入工程を示す。図2の(2)は蒸発室41の昇圧→ガス状の冷媒を吐出させる昇圧吐出工程を示す。図2の(3)は蒸発室41のガス状の冷媒を吐出させる吐出工程を示す。図2の(4)は蒸発室41が減圧されて液状の冷媒を吸入する吸入工程を示す。ここで、図2の(1)に示すように、ガス放出弁46が開くことによりガス吐出弁48が閉鎖し、蒸発室41のガス層42の高圧のガス状の冷媒がガス放出口49およびガス放出通路460を介して、低圧源、即ち、この時点で蒸発室41よりも低圧な凝縮器3の入口3i側に放出される。この結果、蒸発室41内が低圧化(例えば0.25MPa以下)される。このため圧力応答式の逆止弁である液吸入弁47が開放し、凝縮器3側の液状の冷媒が、吸入通路470、液吸入弁47および液吸入口107を通り、蒸発室41に自動的に吸入される(図2の(1)参照)。このように図2の(1)に示す吸入工程では、ガス放出弁46が開放され、液吸入弁47が開放されているものの、蒸発室41内の圧力はガス吐出弁48のリリーフ圧未満であるため、ガス吐出弁48は閉鎖されている(図2の(1)に示す吸入工程を参照)。
【0028】
そして、上記したように液状の冷媒が蒸発室41に吸入されるため、図2の(1)の吸引工程に示すように、蒸発室41に吸入された液状の冷媒の液位4kが上昇する。そして、液状の冷媒の液位4kが蒸発室41の上限付近(満液状態)まで到達すると、ガス放出弁46が閉じる(図2の(2)に示す昇圧吐出工程を参照)。この場合、入熱要素43からの入熱が連続的に継続しているため、蒸発室41の液状の冷媒のガス化が進行し、蒸発室41のガス層42の圧力が昇圧する。このように蒸発室41内の圧力が上昇するため、圧力応答式の逆止弁である液吸入弁47が自動的に閉鎖される(図2の(2)示す昇圧吐出工程を参照)。例えば、蒸発室41の圧力が0.25MPaに上昇すると、液吸入弁47が自動的に閉鎖される。前述したように入熱要素43からの入熱は継続しているため、入熱により蒸発室41内の液状の冷媒が蒸発し、蒸発室41内のガス層42の圧力が更に上昇して高圧化する。このように蒸発室41のガス層42の圧力が高圧所定値(例えば0.8MPa)以上、即ち、圧力応答式の逆止弁であるガス吐出弁48のリリーフ圧以上に上昇すると、ガス吐出弁48が自動的に開放する(図2の(2)参照)。このように図2の(2)の昇圧吐出工程に示す状態では、第1ガス放出弁46および液吸入弁47が閉鎖されているものの、蒸発室41内の圧力はガス吐出弁48のリリーフ圧を超えるため、ガス吐出弁48は開放される(図2の(2)参照)。
【0029】
この結果、蒸発室41のガス状の高圧の冷媒がガス吐出口45、ガス吐出通路450、開放状態のガス吐出弁48、開放状態の第1吸入用開閉弁91iを介して、膨張機21の第1吸入ポート25に吐出される(図2の(3)に示す吐出工程を参照)。図2の(3)に示す吐出工程では、第1ガス放出弁46および液吸入弁47が閉鎖されているものの、蒸発室41内の圧力はガス吐出弁48のリリーフ圧を超えるため、ガス吐出弁48は開放状態とされ、冷媒はガス吐出弁48を介して第1吸入ポート25へ継続的に吐出される(図2の(3)参照)。
【0030】
次に、蒸発器41内の冷媒がほとんど無くなった時点において、ガス放出弁46が開放するため、蒸発室41のガスが低圧源、即ち、凝縮器3の入口3iに放出され、蒸発室41の圧力を減圧(例えば0.8MPa→0.25MPa以下に減圧)させる。このように蒸発室41内の圧力を更に低下させるため、ガス吐出弁48が閉鎖されると共に、圧力応答式の液吸入弁47が開放し、前述したように、凝縮器側の液状の冷媒が吸入通路470および液吸入弁47を介して蒸発室41に自動的に吸入される(図2の(4)および(1)参照)。以下、同様な動作が(1)→(2)→(3)→(4)と順に繰り返される。
【0031】
なお、熱ポンプ4の動作速度に対して、膨張圧縮機2の第1吸入用開閉弁91iおよび第1吐出用開閉弁91pの開閉動作速度は充分に速く、熱ポンプ4の1サイクルに対して、膨張圧縮機2の第1吸入用開閉弁91iおよび第1吐出用開閉弁91pは数サイクルの動作を実行できる。
【0032】
以上説明したように熱駆動式の熱ポンプ4は、外部熱Qが入熱要素43に入力されると、蒸発室41で液状の冷媒をガス状の冷媒に蒸発させる蒸発器機能と、蒸発させたガス状の冷媒をランキンサイクル装置1の膨張機21の第1吸入ポート25(外部の第1ガス受取部)に自動的に吐出させるポンプ吐出機能と、液状の冷媒を蒸発室41に吸入するポンプ吸入機能とを併有する。このように熱ポンプ4は入熱要素43への入熱で駆動する熱駆動式であり、電動モータ駆動式ではないため、消費電力の節約を図り得る。
【0033】
上記したように本実施形態によれば、外部からの電力供給を抑えるのに有利な熱ポンプ4を提供できる。熱ポンプ4を駆動させるための冷熱源が不要であり、これを作り出すエネルギーが不要となり、全体効率を上昇させることができる。
【0034】
(実施形態2)
図3は実施形態2を示す。本実施形態1は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。熱ポンプ4は前述したように蒸発器と熱ポンプとを一体化させたものであり、蒸発室41とガス放出弁46と液吸入弁47とガス吐出弁48とを有する。蒸発器は、液相から気相に相変化可能な流体としての冷媒を収容する蒸発室41と、外部からの入熱に伴い蒸発室41内の液状の冷媒を蒸発させてガス化を促進させる入熱要素43と、蒸発室41のガス状の冷媒を凝縮器の入口側(外部の第2ガス受取部)に向けて放出させるガス放出口49をもつガス放出通路460と、凝縮器の出口(外部の液状冷媒供給源)から液状の冷媒を蒸発室41に吸入させる液吸入口107と、入熱要素43への入熱により高圧化された蒸発室41の圧力に基づいて蒸発室41の高圧のガス状の冷媒を膨張機21の第1吸入ポート25(外部の第1ガス受取部)に供給させるガス吐出口45をもつガス吐出通路450とを備える。
【0035】
図3に示すように、熱ポンプ4の蒸発器は、液相から気相に相変化可能な流体を収容する通路状の蒸発室41を形成する複数並設された蒸発配管410を有する。入熱要素43は、蒸発配管410の外壁に設けられた複数の熱交換フィン433で形成されている。熱交換フィン433は、外部熱(エンジンや燃料電池などの機器、太陽熱、地熱など)で加熱された熱交換用流体と熱交換して加熱される。
【0036】
(実施形態3)
図4は実施形態3を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。熱ポンプ4は蒸発器とポンプとを一体化させたものである。熱ポンプ4は、液相から気相に相変化可能な流体を収容する通路状の蒸発室41を形成するように複数並設された蒸発配管410を有する。入熱要素43は、複数の蒸発配管410を外側から覆う熱交換室430を形成すると共に入口431iおよび出口431pをもつ熱交換器431とを有する。外部熱(エンジンや燃料電池などの機器の廃熱、太陽熱、地熱など)で加熱された温水などの熱交換用流体は、入口431iから熱交換室430に流入し、出口431pから流出され、蒸発室41の冷媒を加熱させる。
【0037】
(実施形態4)
図5は実施形態4を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。熱ポンプ4は蒸発器と熱ポンプとを一体化させたものである。熱ポンプ4の蒸発器は、液相から気相に相変化可能な冷媒(流体)を収容する蒸発室41を有する筐体412を形成する。入熱要素43は、蒸発室41の底部付近に貯留された液状の冷媒に浸漬されているパイプ状の蛇行された熱交換配管435で形成されている。外部熱(エンジンや燃料電池などの機器の廃熱、太陽熱、地熱など)で加熱された熱交換用流体は、熱交換配管435に流入し、蒸発室41の底部付近の液状の冷媒を加熱させる。
【0038】
(実施形態5)
図6は実施形態5を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図6(A)に示すように、熱ポンプ4は蒸発器と熱ポンプとを一体化させたものである。熱ポンプ4の蒸発器は、液相から気相に相変化可能な冷媒(流体)を収容するパイプ41wで形成された通路状の蒸発室41を有する。入熱要素43はこのパイプ41wと並走する熱交換パイプ436を備えている。外部熱(エンジンや燃料電池などの機器の廃熱、太陽熱、地熱など)で加熱された熱交換用流体は、熱交換パイプ436に流入し、通路状の蒸発室41の液状の冷媒を加熱させて蒸発させる。図6(B)に示す形態では、入熱要素43は、蒸発室41を形成するパイプ41wを包囲しつつ収容する熱交換器室438を形成する熱交換通路435を有する。
【0039】
(実施形態6)
図7は実施形態6を示す。本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図7は、ランキンサイクル装置1に蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6を組合せたサイクルの回路図を示す。図7に示すように、ランキンサイクル装置1の膨張圧縮機2は、ランキンサイクル用の第1吸入ポート25および第1吐出ポート26をもつ膨張室を有する膨張機21と、蒸気圧縮サイクル用の第2吸入ポート27をもつ圧縮室を有する圧縮機23とをもつ。ランキンサイクル装置1は、更に、膨張機21および圧縮機23に共通する第1吐出ポート26から帰還したガス状の冷媒を凝縮させる共通の凝縮器3と、凝縮器3の出口3p側に接続された熱ポンプ4とを備える。凝縮器3は、ランキンサイクルと蒸気圧縮サイクルとに共用されているが、それぞれ独立に設けても良い。
【0040】
本実施形態によれば、凝縮器3の入口3i側は、蒸発室41のガス放出時において蒸発室41の液吸入口107よりも低圧となる低圧源として機能する。位置的には、凝縮器3は蒸発室41に対して高さ方向において上方に配置されており、この高さによる液状の冷媒のヘッド差を利用し、後述する(4)〜(1)に示す吸入工程において凝縮器3から蒸発発41に液吸入弁47を経由して吸入させる。
【0041】
前述同様に、熱ポンプ4は、外部熱(エンジンや燃料電池等の機器の廃熱、太陽熱、地熱など)の入熱により、液状の冷媒を蒸発させてガス化させる。凝縮器3は入口3iおよび出口3pをもつ。図7に示すように、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6は、凝縮器3の出口に通路100kを介して接続され凝縮器3で凝縮された液状の冷媒を膨張させる膨張弁60と、膨張弁60の出口60pに接続され膨張弁60(膨張要素)で膨張させた冷媒を蒸発させると共に蒸発させたガス状の冷媒を膨張圧縮機2の圧縮機23の第2吸入ポート27に通路100mを介して吸入させるヒートポンプ用蒸発器7とを備える。ヒートポンプ用蒸発器7は入口7iおよび出口7pをもつ。蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6では、液状の冷媒を膨張弁60で膨張させた後に、ヒートポンプ用蒸発器7においてガス化させる。ガス化された冷媒は圧縮機23の第2吸入ポート27に吸引される。
【0042】
(実施形態7)
図8は実施形態7を示す。本実施形態は上記した実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。本実施形態においても熱ポンプ4は電動式ではなく、熱駆動式とされている。図8は、ランキンサイクル装置1に蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6を組合せたサイクルの回路図を示す。図8に示すように、ランキンサイクル装置1は膨張圧縮機2をもつ。膨張圧縮機2は膨張機21と圧縮機23とをもつ。膨張機21は、ランキンサイクル用の第1吸入ポート25および第1吐出ポート26に連通可能な膨張室をもつ。圧縮機23は、蒸気圧縮サイクル用の第2吸入ポート27および第2吐出ポート28に連通可能な圧縮室をもつ。ランキンサイクル装置1は、上記した膨張圧縮機2の他に、膨張圧縮機2の膨張機21に接続され膨張機21の第1吐出ポート26および圧縮機23の第2吐出ポート28から帰還したガス状の冷媒を凝縮させる共通の凝縮器3と、凝縮器3の出口3p側に接続された液溜めタンク35と、液溜めタンク35の冷媒を吸入する熱ポンプ4とを備える。
【0043】
前述同様に、熱ポンプ4は、外部熱Q(エンジン等の機器の廃熱、太陽熱、地熱など)の入熱により、液状の冷媒を蒸発させてガス化させる。凝縮器3は入口3iおよび出口3pをもつ。図8に示すように、液溜めタンク35は凝縮器3の出口3pよりも下流に設けられている。液溜めタンク35は冷媒の気液分離機能をもつ。液溜めタンク35は入口35iおよび複数の出口35pをもつ。図8に示すように、液溜めタンク35は、液溜めタンク35に溜めた液状の冷媒を吸入通路470を介して液吸入口107から熱ポンプ4の蒸発室41に供給すると共に、液の冷媒を通路100kを介して膨張弁60に供給する。
【0044】
図8に示すように、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6は、凝縮器3に液溜めタンク35および通路100kを介して接続され凝縮器3で凝縮された液状の冷媒を膨張させる膨張弁60と、膨張弁60の出口60pに接続され膨張弁60(膨張要素)で膨張させた冷媒を蒸発させると共に蒸発させたガス状の冷媒を膨張圧縮機2の第2吸入ポート27に通路100mを介して吸入させるヒートポンプ用蒸発器7とを備える。ヒートポンプ用蒸発器7は入口7iおよび出口7pをもつ。
【0045】
図8に示すように、熱ポンプ4に設けられている入熱要素43は、エンジンや燃料電池等の機器の廃熱、太陽熱、地熱等の熱を蒸発室41内の冷媒に供給させて蒸発室41内の冷媒を加熱させ、熱ポンプ4にポンプ作用を発揮させる。ここで、図8に示すように、ガス放出通路460の他端部460fは、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6のうち膨張弁60の出口60pと圧縮機23の第2吸入ポート27との間における低圧部位100w(低圧源)に連通している。具体的には、ガス放出口49,ガス放出通路460の他端部460fは、圧縮機23の第2吸入ポート27側の低圧部位100w(例えば0.08MPa)に連通しており、圧縮機23の第2吸入用逆止弁92iとヒートポンプ用蒸発器7の出口7pとの間に位置する。
【0046】
図8(A)に示す蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6において、膨張弁60の出口60pから膨張圧縮機2の第2吸入ポート27までの通路は、冷媒の圧力が例えば0.08MPa程度とポンプ4の蒸発室41よりも低い低圧通路(低圧源)とされている。このような低圧回路であればどこでも、ガス放出通路460の他端部460fを連通させて蒸発室41のガスを低圧回路に放出させることができる。本実施形態によれば、圧縮機23の第2吸入ポート27側の低圧部位100wを低圧源として用い、他端部460fを低圧部位100wに連通させている。
【0047】
前述したように、熱ポンプ4は、入熱要素43からの入熱に基づいて、蒸発室41内の液状の冷媒をガス状の冷媒として膨張圧縮機2の膨張機21の第1吸入ポート25に供給させるポンプ吐出機能と、蒸発室41内のガス状の冷媒を蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6のうち圧力容器40のガス層42よりも低圧の低圧部位100wに供給させるガス状冷媒供給機能と、凝縮器3側の液状の冷媒を液吸入口107から蒸発室41に吸入させる液冷媒吸入機能とを実行することができる。
【0048】
図8に示すように、ガス放出通路460は電動開閉式のガス放出弁46を有する。吸入通路470は逆止弁である液吸入弁47を有する。液吸入弁47は、蒸発室41の低圧化に基づいて開放して凝縮器3側の液溜めタンク35の液状の冷媒を蒸発室41に吸入させる。吸入弁47は、凝縮器3および液溜めタンク35から蒸発室41に向かう方向へ冷媒を通過させるものの、その逆方向には冷媒を通過させない。ガス吐出通路450はガス吐出弁48を有する。ガス吐出弁48の開放に伴い、蒸発室41内のガス状の冷媒を第1吸入用開閉弁91iを介して膨張機21の第1吸引ポート25に供給させる。ガス吐出弁48は、蒸発室41から膨張機21の第1吸引ポート25に向かう方向へ冷媒を通過させるものの、その逆方向には冷媒を通過させない。なお本実施形態によれば、ランキンサイクル装置1の熱ポンプ4のガス吐出弁48は、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6に対して独立して作動できる。
【0049】
次に本実施形態の作用について図8を参照しつつ説明する。入熱要素43からの入熱の影響で、熱ポンプ4の蒸発室41の冷媒のガス化が進行し、ガス層42の圧力は高圧に維持される。ここで、熱駆動式の熱ポンプ4のガス放出弁46が開くことにより、蒸発室41のガス層42の高圧(例えば0.8MPa)のガス状の冷媒は、ガス放出口49およびガス放出通路460を介して、圧縮機23の第2吸入ポート27側の低圧の低圧部位100w(例えば0.08MPa程度)に放出される。この結果、蒸発室41内が低圧(例えば0.25MPa以下)となる。このため、液吸入弁47が開放し、凝縮器3側の液溜めタンク35に溜められている液状の冷媒が液吸入通路470、液吸入弁47および液吸入口107を通り、蒸発室41に自動的に吸入される。そして、上記したように液状の冷媒が熱ポンプ4の蒸発室41に吸入されるため、蒸発室41に吸入された液状の冷媒の液位4kが上昇する。そして、液状の冷媒の液位4kが上昇すると、ガス放出弁46が閉じる。この場合、入熱要素43からの入熱が連続的に継続しているため、蒸発室41における液状の冷媒のガス化が進行し、蒸発室41のガス圧力が昇圧する。このように蒸発室41内のガス圧力が上昇するため、圧力応答式のリリーフ弁である液吸入弁47が閉鎖される。前述したように入熱要素43からの入熱は継続しているため、入熱により蒸発室41における液状の冷媒が蒸発し、圧力が次第に上昇して高圧化する。このように蒸発室41の圧力が高圧所定値(例えば0.8MPa)以上、即ち、圧力応答式のガス吐出止弁48のリリーフ圧以上に上昇すると、ガス吐出弁48が自動的に開放する。この結果、蒸発室41におけるガス状の冷媒がガス吐出弁48を介して膨張圧縮機2の第1吸入ポート25に自動的に導入される。以下、同様な動作が繰り返される。したがって、熱駆動式の熱ポンプ4は、外部熱が入熱要素43に入力されると、蒸発室41内のガス状の冷媒を膨張圧縮機2の膨張機21の第1吸入ポート25に自動的に吐出させるポンプ吐出機能を有すると共に、液溜めタンク35の液状の冷媒を蒸発室41内に自動的に吸入させるポンプ吸入機能を有する。このように熱ポンプ4は入熱要素43への入熱で駆動する熱駆動式であり、電動モータ駆動式ではないため、電力の節約を図り得る。上記したように本実施形態によれば、外部からの電力供給を抑えるのに有利となる。熱ポンプ4を駆動させるための冷熱源が不要であり、これを作り出すエネルギーが不要となり、全体効率を上昇させることができる。図8(B)(C)は液溜めタンク35の内部構造を示す。凝縮器3の出口3pからの配管301を液溜めタンク35の天井壁に直接設けてもよい。また、凝縮器3の出口3pからの配管301を液溜めタンク35の底壁付近に浸漬させてもよい。
【0050】
(実施形態8)
図9は実施形態8を示す。本実施形態は、上記した実施形態7と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。ガス放出弁46が設けられているガス放出通路460において、ガス放出弁46の下流には、バッファタンク300とバッファバルブ302とが直列に設けられている。これにより、ガス放出弁46開時の圧縮機23の第2吸入ポート27側の低圧の低圧部位100mの圧力変動を最小限に抑えることが出来る。
【0051】
図10はp−h線図を示す。pは冷媒の圧力を示し、hは冷媒のエンタルピーを示す。冷媒の状態を示すp−h線図(図10参照)において、凝縮器3の出口3pの冷媒は、図10の(A)の位置で液状の冷媒となる。次に、液状の冷媒が熱ポンプ4の蒸発室41に液吸入口107から吸入され、蒸発室41において外部熱が加えられると、冷媒の一部は蒸発し、蒸発室41内の圧力が上昇し、図10の(B)の位置まで昇圧する。また蒸発室41の上部に溜まっているガスも加熱されることにより、図10の(C)の位置から、(D)の位置に加熱される。その後、ガス吐出弁48が開き、蒸発室41の上部のガスがガス吐出通路450に吐出され、蒸発室41の下部に溜まった液状の冷媒も、図10の(B)の位置から、図10の(D)の位置に変化し、ガス吐出通路450に順次吐出される。吐出が終わった段階で、液吸入弁47が開き、再度、凝縮器3の出口3pから液状の冷媒が液吸入口107から蒸発室41に吸入される。以下これを繰り返す。
【0052】
本実施形態によれば、図9から理解できるように、逆止弁で形成されている図8に示すガス吐出弁48自体は廃止されているが、膨張機21側の第1吸入用開閉弁91iがガス吐出弁を兼用し、ガス吐出弁として機能できる。図11の(B)は、膨張機21側の第1吸入用開閉弁91i、第1吐出用開閉弁91p、圧縮機23側の第2吸入用逆止弁92i、第2吐出用逆止弁92p、熱ポンプ4のガス吐出弁46、液吸入弁47,ガス放出弁46といった各弁の開閉のタイミングチャートを示す。このタイミングチャートで示すように、膨張機21では、第1吐出用開閉弁91pの開放が終了して膨張機21の冷媒を膨張室から吐出させた後、第1吸入用開閉弁91iが開放し、膨張機21の膨張室にガス状の冷媒を吸入する。圧縮機23では、第2吐出用逆止弁92pの開放が終了して圧縮機23の冷媒を圧縮室から吐出させた後、第2吸入用逆止弁92iが開放してガス状の冷媒を圧縮機23の圧縮室に吸入する。図11の(B)に示すタイミングチャートから理解できるように、熱ポンプ4は、冷媒の吐出、減圧、吸入、昇圧、吐出といった各工程を順に実施する。膨張機21側の第1吸入用開閉弁91iの開放動作の開始タイミングt1は、熱ポンプ4の前記したガス吐出弁48の開放の開始タイミングと同期して対応している。同様に、第1吸入用開閉弁91iの閉鎖タイミングt2は、熱ポンプ4のガス吐出弁48が閉鎖するタイミングと同期して対応している。このようにガス吐出弁48の開放時間と膨張機21側の第1吸入用開閉弁91iの開放時間とが同期しているため、本実施形態によれば、逆止弁で形成されている図8に示すガス吐出弁48が廃止されており、コスト低廉化に有利となる。
【0053】
(実施形態9)
図12は実施形態9を示す。本実施形態は、上記した実施形態と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。図12に示すように、本実施形態は前記した各実施形態と基本的には同様の構成、作用効果をもつ。本実施形態は、熱ポンプ4の吐出圧力の脈動防止を図る。図12に示すように、熱駆動式の熱ポンプ4A,Bが複数台並列に設置されている。エンジン等の機器の廃熱、太陽熱などの外部熱が入熱要素43に入力される。熱ポンプ4A,4Bはそれぞれ、液吸入通路470からの液状の冷媒の吸入工程、蒸発室41の圧力の昇圧工程、ガス状の冷媒を吐出させる吐出工程を繰り返すため、ガス吐出弁48および吐出通路450を介して膨張機21の第1吸入ポート25へのガス状の冷媒の吐出を間欠的に行う。このため、熱ポンプ4A,Bのポンプ出口側である冷媒吐出圧力が脈動し、膨張機21に影響を与える可能性がある。この対策として本実施形態によれば、図12に示すように、2台の熱駆動式の熱ポンプ4A,Bを並列に接続し、熱ポンプ4A,Bを180°位相をずらせつつ交互に交代運転させ、上記した吐出圧力の脈動を低減させることにしている。
【0054】
(実施形態10)
図13は実施形態10を示す。本実施形態は、上記した実施形態7,8と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有する。図13に示すように、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6において、液溜めタンク35の出口35pとヒートポンプ用蒸発器7の入口7iとの間には、膨張要素として機能するエジェクタ65が設けられている。エジェクタ65は、膨張弁と同様、冷媒を等エントロピー膨張させるものである。図13に示すように、エジェクタ65は、液溜めタンク35の出口35pに繋がる入口65iと、ヒートポンプ用蒸発器7の入口7iに繋がる出口65pと、圧力容器40のガス放出口49にガス放出弁46,ガス放出通路460更には脈動抑制用のバッファ210を介して繋がれた吸入口65e(低圧源)とをもつ。
【0055】
ランキンサイクル装置1の熱ポンプ4のガス放出通路460の他端部460fは、エジェクタ65の吸入口65eに連通している。圧縮機23の作動に伴い、液溜めタンク35の液状の冷媒は、入口65iからエジェクタ65に流入し、出口65pからヒートポンプ用蒸発器7に向けて流れる。このとき、ガス放出弁46が開放すると、熱ポンプ4の蒸発室41のガス状の冷媒はガス放出通路460を介してエジェクタ65の吸入口65e(低圧源、エジェクタ65の低圧の吸入部位)に吸入され、液溜めタンク35からヒートポンプ用蒸発器7に向けて流れる冷媒に合流される。
【0056】
(その他)
図7に示す形態によれば、ガス放出通路460の他端部400fは、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6のうちヒートポンプ用蒸発器7の出口7pと圧縮機23の第2吸入ポート27との間における低圧部位100w(低圧源)に連通している。これに限らず、ガス放出通路460の他端部400fは、蒸気圧縮式ヒートポンプ装置6のうち膨張弁60の出口60pとヒートポンプ用蒸発器7の入口7iとの間における低圧通路であれば、どこの部位に連通していても良い。凝縮器3は、ランキンサイクルと蒸気圧縮サイクルとに共用されていても良いし、それぞれ独立に設けられていても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、エンジンや燃料電池等の機器の廃熱、太陽熱、地熱などの外部熱を熱入力とし、冷房、暖房、給湯などに利用される。
【符号の説明】
【0058】
1はランキンサイクル装置、2は膨張圧縮機、21は膨張機、23は圧縮機、25は第1吸入ポート(外部のガス受取部)、3は凝縮器(液状流体供給源)、3iは凝縮器の入口(低圧源)、35は液溜めタンク(液状流体供給源)、4は蒸発器一体型熱ポンプ、41は蒸発室、42はガス層、43は入熱要素、430は熱交換室、431は熱交換器、435は熱交換配管、436は熱交換パイプ、45はガス吐出口、450はガス吐出通路、46はガス放出弁、460はガス放出通路、47は液吸入弁、48はガス吐出弁、6は蒸気圧縮式ヒートポンプ装置、60は膨張弁(膨張要素)、65はエジェクタ(膨張要素)、65eは吸入口(低圧源)、7はヒートポンプ用蒸発器、91iは第1吸入用開閉弁、91pは第1吐出用開閉弁、92iは第2吸入用逆止弁、92pは第2吐出用逆止弁、100wは低圧部位(低圧源)、107は液吸入口を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)液相から気相に相変化可能な流体を収容する蒸発室と、外部からの入熱に伴い前記蒸発室内の液状の流体を蒸発させてガス化を促進させる入熱要素と、前記蒸発室のガス状の流体を低圧源に放出させるガス放出口と、外部の液状流体供給源から液状の流体を前記蒸発室に吸入させる液吸入口と、前記入熱要素への入熱により高圧化された前記蒸発室の圧力に基づいて前記蒸発室のガス状の流体を外部のガス受取部に供給させるガス吐出口とを備える蒸発ポンプ部と、
(ii)前記蒸発ポンプ部の前記ガス放出口を開閉させるように設けられ前記ガス放出口の開放により前記蒸発器室のガス状の流体を前記低圧源に放出させて前記蒸発室を低圧化させるガス放出弁と、
(iii)前記ガス放出弁の開放により低圧化された前記蒸発室に、外部の前記液状流体供給源から液状の流体を前記液吸入口を介して前記蒸発室に吸入させる液吸入弁と、
(iv)開放により前記蒸発室のガス状の流体を外部の前記ガス受取部に供給させるガス吐出弁とを具備する蒸発器一体型熱ポンプ。
【請求項2】
請求項1において、前記蒸発ポンプ部は、液相から気相に相変化可能な流体を収容する通路状の前記蒸発室を形成する複数の蒸発配管を有しており、前記入熱要素は、前記蒸発配管の外壁に設けられた熱交換フィンで形成されている蒸発器一体型熱ポンプ。
【請求項3】
請求項1において、前記蒸発ポンプ部は、液相から気相に相変化可能な流体を収容する通路状の前記蒸発室を形成する蒸発通路を形成する複数の蒸発配管を有しており、前記入熱要素は、複数の前記蒸発配管を覆う熱交換室を形成する熱交換容器とを有する蒸発器一体型熱ポンプ。
【請求項4】
第1吸入ポートおよび第1吐出ポートをもつ膨張機と、前記膨張機の前記第1吐出ポートから帰還したガス状の冷媒の凝縮を進行させる凝縮器と、前記凝縮器において凝縮が進行した冷媒を蒸発させるランキンサイクル用蒸発器とを有するランキンサイクル装置において、
前記蒸発器は蒸発器一体型熱ポンプで構成されており、
前記蒸発器一体型熱ポンプは、
(i)液相から気相に相変化可能な流体を収容する蒸発室と、外部からの入熱に伴い前記蒸発室内の液状の流体を蒸発させてガス化を促進させる入熱要素と、前記蒸発室のガス状の流体を低圧源に放出させるガス放出口と、外部の液状流体供給源から液状の流体を前記蒸発室に吸入させる液吸入口と、前記入熱要素への入熱により高圧化された前記蒸発室の圧力に基づいて前記蒸発室のガス状の流体を外部のガス受取部に供給させるガス吐出口とを備える蒸発ポンプ部と、
(ii)前記蒸発ポンプ部の前記ガス放出口を開閉させるように設けられ前記ガス放出口の開放により前記蒸発室のガス状の流体を低圧源に放出させて前記蒸発室を低圧化させるガス放出弁と、
(iii)前記ガス放出弁の開放により低圧化された前記蒸発室に、外部の前記液状流体供給源から液状の流体を前記液吸入口を介して前記蒸発室に吸入させる前記液吸入弁と、
(iv)開放により前記蒸発室の流体を外部の前記ガス受取部に供給させるガス吐出弁とを具備するランキンサイクル装置。
【請求項5】
請求項4において、前記膨張機は、ランキンサイクル用の前記第1吸入ポートおよび前記第1吐出ポートの他に、膨張室の膨張作用により圧縮される圧縮室に連通された蒸気圧縮サイクル用の第2吸入ポートおよび第2吐出ポートを有する膨張圧縮機であり、
前記凝縮器の出口側に接続され前記凝縮器で凝縮された液状の冷媒を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素に接続され前記膨張要素で膨張させた冷媒を蒸発させると共に蒸発させたガス状の冷媒を前記膨張圧縮機の前記第2吸入ポートに吸入させるヒートポンプ用蒸発器とを備える蒸気圧縮式ヒートポンプ装置が一体に設けられているランキンサイクル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate