説明

蓄光性シートおよび蓄光性テープ

【課題】 従来の蓄光シートに比較して発光輝度が増し、より鮮明に発光するばかりでなく、反射材で反射して散乱光となりムラがなく均一に発光する蓄光性シートおよび蓄光性テープを提供する。
【解決手段】透明性樹脂層と、粘着性材料に蓄光材料単独または蓄光材料と着色材料の両方を含有する蓄光粘着層と、反射層とをこの順に設けてなる。粘着材料が、アクリル系樹脂またはシリコーン系樹脂の何れかからなり、反射層が、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる白色系粉粒状体の中の少なくともいずれか一種を含有する樹脂層と金属蒸着材層のいずれかまたはこれらを組み合わせたものからなることが好ましい。反射層側に基材層を設け、粘着層および剥離層を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性樹脂層と、粘着性材料に蓄光材料を含有する蓄光粘着層と、反射層とをこの順に設けてなる蓄光性シートであって、従来の蓄光材料を含む塗料を塗布した蓄光シート等に比べて発光輝度が増大しより鮮明に発光することを特徴とする蓄光性シートおよび蓄光性テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄光顔料を含む塗料が塗布されたプラスチックフィルム、或いは蓄光顔料を合成樹脂に練り込んだシートの裏側に酸化チタンを含む隠蔽層が設けられた蓄光シートは広く知られている。例えば、特許文献1には、プラスチックフィルムの片面に蓄光粉末を含む塗料が塗布され、該塗料の塗布層上に隠蔽層が設けられている蓄光シートが開示されている。しかし、粘着材料に蓄光顔料を含有した蓄光粘着層の片面に反射層を設けた蓄光シートは見出されていない。
【0003】
従来の蓄光シートは、前記のように蓄光顔料を含む塗料が塗布されたプラスチックフィルム等の片側に酸化チタンを含む隠蔽層を裏打ちしていた。隠蔽層を裏打ちするのは、基材表面を隠蔽したり、基材の防食性や防錆性を付与することが目的であった。また、蓄光顔料を合成樹脂に練り込んだシートと酸化チタンを含む隠蔽層の貼り合わせには接着剤を介在する場合が多い。更に、特許文献1の塗料における、樹脂分に対する蓄光粉末の割合は固形分重量比率で樹脂100に対して10〜80、好ましくは20〜60である。蓄光粉末の割合を多くすると塗膜の入出光パスが閉ざされ透光性が阻害されるために発光輝度が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−276108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記欠点を解消し更なる発光輝度の向上と鮮やかさに優れた蓄光性シートおよび蓄光性テープを得るために、本発明者は鋭意研究した結果、前記蓄光粉末を含む塗料等に代えて、粘着性材料に蓄光材料を含有する蓄光粘着層を用い、この蓄光粘着層に硫酸バリウムや炭酸カルシウム等を含む反射層を設けることにより、蓄光材料の濃度が高くなると出光パスが閉ざされ透光性が阻害される透光性阻害要因を回避し発光輝度を向上させることを知見して本発明に至ったものであり、本発明の主たる課題は、従来品に比較して発光輝度が向上しムラがなく鮮明に発光するとともに接着剤なしで複数の蓄光粘着層を重ね合わせて多彩に発光する蓄光性シートおよび蓄光性テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、透明性樹脂層と、粘着性材料に蓄光材料単独または蓄光材料と着色材料の両方を含有する蓄光粘着層と、反射層とをこの順に設けてなることを特徴とする蓄光性シートとする(請求項1)。
【0007】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、透明性樹脂層と、粘着性材料に蓄光材料単独または蓄光材料と着色材料の両方を含有する蓄光粘着層と、反射層と、基材層とをこの順に設けてなることを特徴とする蓄光性シートとする(請求項2)。
【0008】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記反射層側または基材層側に粘着層と、剥離層とをこの順に設けてなることを特徴とする前記の蓄光性シートとすることが好ましい(請求項3)。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記透明性樹脂層に代えて剥離層を設けてなることを特徴とする前記の蓄光性シートとすることが好ましい(請求項4)。
【0010】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記蓄光粘着層が、複数の蓄光粘着層を積層してなることを特徴とする前記の蓄光性シートとすることが好ましい(請求項5)。
【0011】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記粘着性材料が、アクリル系樹脂またはシリコーン系樹脂からなることを特徴とする前記の蓄光性シートとすることが好ましい(請求項6)。
【0012】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記の反射層が、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる白色系粉粒状体の中の少なくともいずれか一種を含有する樹脂層と金属蒸着材層のいずれかまたはこれらを組み合わせたものからなることを特徴とする前記の蓄光性シートとすることが好ましい(請求項7)。
【0013】
また、前記の課題を解決するために、本発明は、前記蓄光性シートを帯状にスリットしてなることを特徴とする蓄光性テープとすることが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る蓄光シートおよび蓄光性テープは、前記のように構成したことにより、従来の蓄光シートに比較して発光輝度が増し、より鮮明に発光するばかりでなく、反射材で反射して散乱光となりムラがなく均一に発光する効果を奏する。蓄光粘着層どうしを接着剤なしで複数層重ね合わせるだけで多層蓄光シートおよび多層蓄光性テープが簡単に製造することが可能であり、しかも、層ごとに蓄光顔料や着色剤の種類を変えれば変化に富んだ多彩な色彩効果が得られる。従来の高価な酸化チタンを含有する隠蔽層に代えて割安な硫酸バリウムや炭酸カルシウムを含有する反射層を用いることにより経済的にも有利な効果が期待できる。また、硫酸バリウムや炭酸カルシウムを含有する反射層は粘着剤と馴染み易いので剥がれ難く且つ寸法安定性にも優れた効果を奏する。前記硫酸バリウムや炭酸カルシウムを含有する反射層よりも剥離強度の弱い透明性樹脂層を剥離層として用いることにより、透明性樹脂層を剥離した蓄光粘着層面をショーウインドーなどの硝子面に外側から貼り付け、硝子面の内側からブラックライトを当てて視認することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【図2】第2実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【図3】第3実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【図4】第4実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【図5】第5実施の形態に係る彩色蓄光成形体の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と称する)について、図面に基づいて以下に詳細に説明する。しかし、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の第1実施の形態に係る蓄光性シート1は、請求項1、6,7記載の発明を含み、図1に示すように、透明性樹脂層11と、粘着性材料に蓄光材料単独または蓄光材料と着色材料の両方を含有する蓄光粘着層12と、反射層13とをこの順に設けてなることを特徴とする。
【0018】
透明性樹脂層11は、透明性を有する合成樹脂性フィルムまたはシートであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン(PP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、一般用ポリスチレン(GP−PS)フィルム、耐衝撃性ポリスチレン(HI−PS)フィルム、二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、ポリエステル(PET)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、アイオノマーフィルム、セルロース系プラスチックフィルム、熱可塑性エラストマーフィルム等から使用目的に応じて選択することができる。更に、前記単一フィルムの他に共押出しフィルムや接着用樹脂層を介したドライラミネーションまたはサンドラミネーションで貼り合わせた多層フィルムであってもよい。透明性樹脂層11は保護フィルムの役割を果たし屋外仕様などに効果的である。
【0019】
蓄光粘着層12を構成する粘着性材料は、紫外線等を透過する透光性を有する限りにおいて特に限定するものではないが、原料となるポリマーの種類によって、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤またはホットメルト系粘着剤等が含まれ、使用目的に応じて適宜選択することが可能である。ゴム系粘着剤としては、天然ゴムや合成ゴム、その他のエラストマーが用いられ、粘着力が弱いときは必要に応じて粘着付与剤を添加してもよい。
【0020】
アクリル系粘着剤は、アクリル酸エステルの共重合体からなり、通常、このポリマー中に架橋剤と架橋可能なアクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチルなどの官能基含有モノマーを共重合させて、イソシアネートやエポキシなどの架橋剤を添加して3次元化して使用される。また、アクリルポリマーは極性が高いのでポリオレフィンなどの低極性被着体に対しては付きにくく粘着付与剤を添加して改質することが好ましい。溶剤タイプとエマルジョンタイプがある。
【0021】
シリコーン系粘着剤は、耐寒性、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れるために使用温度領域が広く使用される。しかし、シリコーン自体粘着性に乏しいために粘着付与剤としてシリコーン樹脂が使用される。シリコーンゴムとシリコーン樹脂の構成比を変えて必要な粘着性を得ることが可能である。耐熱性を向上させるために過酸化ベンゾイルなどの架橋剤を使用することが好ましい。ウレタン系粘着剤は、ウレタン樹脂からなり、再剥離性に優れ、低臭性、皮膚刺激性、透湿性に優れるが、粘着性とタック性が比較的弱い。本発明の蓄光粘着層を構成する粘着性材料としては、透光性と粘着性に優れることから、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。
【0022】
前記粘着性材料に蓄光材料単独または蓄光材料と着色材料の両方を含有する蓄光粘着層を形成する方法は特に限定するものではないが、例えば、粘着性材料の原料となる前記のポリマー、蓄光顔料等の蓄光材料、その他の着色剤、有機系溶剤、架橋剤、必要に応じて粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤、分散剤、増粘剤等をミキサーで攪拌混合して得た蓄光粘着溶液を透明プラスチックフィルム上に塗布後に乾燥して蓄光粘着層が得られる。エマルジョンタイプの粘着剤の場合は有機系溶剤に代えて水または有機溶剤と併用してもよい。化学反応による架橋剤に代えて、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の光重合性プレポリマー、アクリル酸エステル類等の光重合性化合物等を要求される特性を損なわない範囲で添加してもよい。電子線照射によって架橋する電離放射線硬化型樹脂を用いてもよい。
【0023】
前記着色材料としては、例えば、溶剤可溶性顔料、有機顔料、染料等でもよい。着色材料は透明着色材以外に微細粒子からなる無機顔料など透光性を保持する添加量の範囲内で使用可能であり、蛍光着色材料は鮮明で視認性を向上することから特に好ましい。また、蓄光材料の種類は特に限定されず、市販の蓄光材料を使用可能であるが、なるべく高輝度発光を呈する蓄光材料であって、耐水性を有するものを使用することが好ましい。
【0024】
本発明の蓄光シートの粘着性材料に対する蓄光材料の配合比率は、固形分質量比率で粘着性材料100に対して50〜300、好ましくは90〜200である。また、着色顔料の配合比率は、有機系の蛍光染料またはコバルトなどの無機系染料で粘着性材料100に対して0.5〜5.0、好ましくは、2.0〜3.0である。着色顔料の配合比率が0.5より少ないと着色効果が発揮されず、5.0を超えると発光輝度が低下するおそれがあるからである。発光輝度は蓄光材料の目付量と相関が強く、粘着性材料に対して蓄光材料の割合を多くすると発光輝度が強くなる。蓄光材料の割合がある限度を超すと入出光パスが閉ざされ透光性が阻害されて発光輝度が低下する傾向がある。この現象は、蓄光塗料を塗布したり粘着性材料に混練りしたりする従来タイプの蓄光シートでは特に顕著に現れる。本発明の蓄光シートにおいては、従来タイプの蓄光シートに比較し、格段に発光輝度の上昇が増大する。この現象について以下に考察する。
【0025】
従来タイプの蓄光シートは、蓄光粉末の上限濃度近辺において乾燥塗料や樹脂中の蓄光粉末はビヒクル乃至樹脂中において密着乃至密接した状態で固定されているために入出光パスが閉ざされ透光性が阻害される要因になり、蓄光シートの表面にある蓄光顔料のみが発光し、内部の蓄光顔料は発光せず若しくは発光しても表面の蓄光顔料に妨げられて外部に放射されないために発光輝度が向上しない。これに対して、本願蓄光性シートは、変形流動性を有する粘着剤で構成される蓄光粘着層中の蓄光顔料粒子どうしが粘着剤を介して互いに離間した状態で散在しており、この蓄光顔料粒子間の隙間に充填された粘着剤の入出光パスが形成され、この入出光パスを通って紫外線等の光線が透過し、蓄光粘着層内部に散在する蓄光顔料に紫外線が当たって発光した光が反射層で反射し再び入出光パスを通って外部に放射されるために発光輝度が増すものと推定される。
【0026】
ここで、本発明の実施の形態に使用する蓄光材料は、何らかのエネルギーで刺激を受け、吸引したエネルギーを可視光線またはそれに近い波長の紫外線、赤外線などの光として放出し、刺激停止後も持続してこの現象を呈する性質を有する蓄光性物質または蛍光性物質であって、蓄光顔料や蛍光顔料も含まれる。前者の蓄光性物質として、例えば、硫化亜鉛と硫化カドミウム(硫化カドミウムは安全性に問題あり現在は使用されていない)の結晶に少量の銅を賦活剤として加えたものは、その組成によって黄〜赤色を発光し、硫化亜鉛に少量の銅を賦活剤として加えたものは、緑色の発光を呈し、また、アルミン酸塩に賦活剤としてユーロピウム(Eu)を加えたもの、或いは共賦活剤として希土類元素または遷移金属を加えたものは緑色または青色の発光を呈する。
【0027】
また、前記蓄光性物質に対して蛍光性物質は、ある物質が光の照射を受け、他の波長の光を発するときに生ずる光学効果、即ち紫外線が液体、固体に当たったときに可視光線としての蛍光を発する物質であって、主として、カルシウム、バリウム、マグネシウム、カドミウム(カドミウムは安全性に問題あり現在は使用されていない)等の酸化物、硫化物、珪酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩等を主成分とし、蛍光を発する物質を言う。また、蛍光性物質の中には有機系と無機系のものがあり、無機系物質の中には紫外線照射を停止した後でも蛍光を発する所謂蓄光性を有するものがあるが、このような物質も本発明に含まれるものとする。
【0028】
近年、(Sr,M)O-(Mg,M)O-(Si,Ge)O系の蛍光母体(M=Ca,Sr,Ba,M=Be,Zn,Cd)に対してEuで賦活すると共にLn(Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Cd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,In,Bi,Snから選択された一種の元素)で共賦活させ、かつ、ハロゲン元素(F,Cl,Br,Iから選択された一種の元素)を含有させることにより、青色から緑色発光のEu賦活珪酸塩蓄光性蛍光体が開示されている(特許第3257942号公報、特許第3257947号公報参照)。この蓄光性蛍光体も本発明に含まれるものとする。
【0029】
反射層13は、反射機能を備える限り限定されないが例えば、合成樹脂製フィルムまたはシートに反射材を分散混合したものが好ましい。この反射材の素材は特に限定されるものではないが、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、パーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、石膏、中空バルーン、アルミニウム、水酸化アルミニウム、金属、各種貝殻、ガラス、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、二酸化モリブデンおよびパールなどからなる白色系粉体および粒状体の中の何れか一種または二種以上を組み合わせたものが好ましい。第1実施の形態では、硫酸バリウムや炭酸カルシウムを含有する反射層は粘着剤と馴染み易いので、剥がれ難く且つ加熱寸法安定性にも優れていることから特に好ましい。これら反射材を分散混合したインキまたは塗料を基材14に印刷または塗布するか、或いは前記粉体または粒状体を合成樹脂に分散混合したフィルムまたはシートに形成してもよい。このような反射層を設けることにより発光輝度が向上し、彩色が鮮明になるばかりでなく、反射材で反射して散乱光となりムラがなく均一に発光する。また、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属を熱可塑性樹脂製フィルムなどに蒸着した金属蒸着層または前記白色系粉粒状体を分散混合した樹脂層と組み合わせたものでもよい。
【0030】
次に、本発明の第2実施の形態に係る蓄光性シート1は、請求項2、6,7記載の発明を含み、図2に示すように、本発明の第1実施の形態に係る蓄光性シート1の反射層側に基材層14を設ける以外は第1実施の形態に係る蓄光性シート1と同様である。基材層14は透明性基材等および不透明性基材を含み、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂やアルミ、ステンレス、などの金属板、織布、不織布、紙、合成繊維の織物の両面に軟質の塩化ビニルゾルをコーティングした合成樹脂加工布など、その他テープ基材として公知のものが広く含まれる。
【0031】
次に、本発明の第3実施の形態に係る蓄光性シート1は、請求項3、6,7記載の発明を含み、図3に示すように、前記反射層13側または基材層14側に粘着層15と剥離層16とをこの順に設ける以外は第1実施の形態に係る蓄光性シート1と同様である。前記粘着層15は、本発明の第1実施の形態における蓄光粘着層12を構成する粘着性材料と同様であるので説明を省略する。剥離層16は紙にシリコーンなどの離型剤をコートした市販のいわゆる剥離紙が使用できるほか、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、または、プラスチックフィルムに離型剤を施したものなどを使用することができる。
【0032】
本発明の第4実施の形態に係る蓄光性シートは、請求項4、6,7記載の発明を含み、図5に示すように、前記透明性樹脂層に代えて剥離層を設けた以外は第1実施の形態に係る蓄光性シート1と同様である。剥離層は第3実施の形態に用いるものと同様である。この剥離層には第1実施の形態に係る透明性樹脂層の片面に離型剤を設けたものも含まれる。この離型剤を設けた面を蓄光粘着層側に向けて貼り合わせた蓄光性シートおよび蓄光性テープも本発明に含まれる。
【0033】
次に、本発明の第5実施の形態に係る蓄光性シート1は、請求項5、6,7記載の発明を含み、図4に示すように、前記蓄光粘着層12が、複数の蓄光粘着層12を積層して多層蓄光粘着層12aとなる以外は第1実施の形態に係る蓄光性シート1と同様である。多層蓄光粘着層12aは、各層が同一配合組成からなるものであってもよく、異なる配合組成からなるものであってもよい。
【0034】
次に、本発明の第6実施の形態に係る蓄光性テープは、請求項8記載の発明を含み、前記の蓄光性シートを帯状にスリットしたものからなる。本実施例に係る蓄光性テープは、特に製造方法を限定するものではないが、例えば、広幅の前記蓄光性シート1を中空状紙管に巻き取り、これを紙管ごとカッターで宜切間隔に切断して得られる。
【0035】
本発明の蓄光性シートを構成する各層の厚みは、特に限定するものではないが、透明性樹脂層11は、1〜200μm、好ましくは、20〜90μmである。1μm未満では蓄光層を保護するに充分でなく、貼り合わせ加工も困難となるからであり、200μmを超えると、透光性が阻害されるおそれがあるからである。
【0036】
蓄光粘着層12は、50〜2000μm、好ましくは、100〜1000μmである。50μm未満では目的の輝度が得られない可能性があり、2000μmを超えるとコストアップとなるので製造コストを考慮して最適な厚みを選択することが好ましい。
【0037】
反射層13は、10〜300μm、好ましくは、30〜200μmである。10μm未満では反射機能が充分発揮されないおそれがあり、基材層の色相などの隠蔽性を保持する範囲内で厚みを選択することが好ましい。
【0038】
基材層14、は、一般的には、20〜3000μm、好ましくは、50〜2000μmである。粘着層15は、10〜200μm、好ましくは、20〜150μmである。剥離層16は、5〜100μm、好ましくは、10〜80μmである。これら各層は、基本的には作業性や使用目的に合った厚みであれば特に限定されるものではない。
【0039】
本発明の蓄光性シートの製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、蓄光顔料、粘着性樹脂、架橋剤、有機溶剤等の配合剤を容器中でミキサーにて攪拌混合して得られる蓄光粘着溶液を透明性樹脂層となる透明フィルム上に塗布し、加熱乾燥して蓄光粘着シートとし、この蓄光粘着シートの蓄光粘着層側に反射層、基材層となるシートを貼り合わせて蓄光性シートが得られる。反射層、基材層となるシートを蓄光粘着層に貼り合わせるには被着物を2本の加圧ロールで圧着して接着させる。架橋剤の種類によってシリコーン系粘着性樹脂のように加熱架橋させる場合は100〜180℃に加熱した後冷却する。
【0040】
前記蓄光粘着溶液を長尺フィルム上にコーターを用いて公知のコーティング技術によって塗布することができる。本発明で用いるコーターはとくに制限されず、公知の各種コーターを用いることができる。例えば、ナイフコーター、リバースロールコーター、ダイレクトロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、バーコーター、リップコーター、ロータリースクリーンなどが挙げられる。ナイフコーターはロールコーターとともに最も広く用いられ、設計が簡単でコストが安い反面筋状の傷が発生する欠点があるが、1回引きで厚い塗膜が得られる。ロールコーターはロール間隙を正確にコントロールできるので正確な厚みの塗膜を得る場合などに用いられる。請求項5の発明に係る多層蓄光粘着層を得るにはコーティングを複数回繰り返して行う。蓄光粘着溶液の供給ヘッドを複数箇所に設けて1工程で多層蓄光粘着層を得ることも可能である。更に、層ごとに異なる蓄光材料と着色顔料を配合した蓄光粘着層を設ければより多彩な色彩効果を奏する蓄光性シートが得られる。
【0041】
反射層、基材層となるシートを蓄光粘着層に貼り合わせるには、各種ラミネーターを用い、被着物を加熱した回転ロールに沿わせて転送しつつ被着面を赤外線ヒーターなどで樹脂の融点近辺に加熱した後、2本の圧着ロール間に通して貼り合わせ冷却後に巻き取る。融着できないものは接着剤を用いて接着する。
【0042】
ゴム系粘着剤やホットメルト系粘着剤等の場合はカレンダー塗工法またはエクストルーダー法により製造できる。例えば、カレンダー塗工法では、天然ゴム、石油樹脂、炭酸カルシウム、プロセスオイル等の粘着性材料に蓄光材料を含む組成物をバンバリーミキサーやニーダーで混練り後、3本カレンダー、逆Lカレンダーなどで製膜化しトッピングによりあるいはラミネーターを用いて透明性樹脂層、反射層、基材層などとなるフィルムまたはシートと貼り合わせる。
【0043】
エクストルーダー法によって、前記組成物をエクストルーダーによって混練りして蓄光粘着材を製造し、この蓄光粘着材をカレンダー法やTダイ法によって製膜化し透明性樹脂層、反射層、基材層となるフィルムまたはシートと貼り合わせて目的の蓄光性シートが得られる。特開平11−216764によれば、主スクリューと主スクリューの周りを自転かつ公転するする遊星スクリューを有するエクストルーダーでのゴム系粘着剤の製造方法が開示されている。
【実施例】
【0044】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明に係る蓄光性シートおよび蓄光性テープについてさらに具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0045】
(実施例1)
蓄光顔料として菱晃社製クライトブライトを50質量部、粘着性樹脂としてアクリル系樹脂(綜研化学社製SKダイン1717)を50質量部、架橋剤(綜研化学社製L45)を2質量部、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)30質量部を容器中でミキサーにて攪拌混合して得られた蓄光粘着溶液を透明性樹脂層11となる透明ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称する)フィルム(東レ社製ルミラー(登録商標)T60#50)上に塗布し、加熱乾燥して厚さ100μmの蓄光粘着シートを得た。次に、この蓄光粘着シートに前記蓄光粘着溶液を塗布・乾燥する工程を繰り返して蓄光粘着層12を合計7層積層し、蓄光粘着層の総厚が合計700μmの多層蓄光粘着層12aを得た。この多層蓄光粘着層12aの蓄光粘着層側に反射層13として100μm厚の硫酸バリウム含有シート(帝人デュポン社製UX201−188)を貼り合わせて第5実施の形態に係る多層蓄光粘着層12aからなる蓄光性シート1を得た。得られた蓄光性シート1を常用光源蛍光ランプD65により励起照度200ルクスで20分間照射後、暗所下20分後の残光輝度は214mcd/mであり、均一に発光した。更に、この蓄光性シートを室温下で水中に1ヶ月間放置したところ、外観に異常は認められず、前記同条件での残光輝度は212mcd/mであった。蓄光性能の劣化も認められなかった。
【0046】
(実施例2)
実施例1において、透明性樹脂層11となる透明PETフィルム(東レ社製ルミラー(登録商標)T60#50)に代えて、剥離層16となる透明PETフィルム(東レ社製ルミラー(登録商標)T60#50)にシリコーン系剥離剤の薄膜を形成したフィルムを用いる以外は実施例1と同様にして第4および第5実施の形態に係る多層蓄光粘着層12aからなる蓄光性シート1を得た。得られた蓄光性シート1を常用光源蛍光ランプD65により励起照度200ルクスで20分間照射後、暗所下20分後の残光輝度は210mcd/mであり、均一に発光した。更に、この蓄光性シートを室温下で水中に1ヶ月間放置したところ、外観に異常は認められず、前記同条件での残光輝度は208mcd/mであった。蓄光性能の劣化も認められなかった。
【0047】
(実施例3)
前記実施例1において、蓄光顔料として菱晃社製クライトブライトを67質量部、粘着性樹脂としてシリコーン系樹脂(東レダウコーニング社製SD4580)を33質量部、架橋剤(東レダウコーニング社製SRX212)を1質量部、有機溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を30質量部として得られた蓄光粘着シートに蓄光粘着層を合計5層積層し、蓄光粘着層の総厚が合計500μmの多層蓄光粘着層12aを得、この多層蓄光粘着層12aの蓄光粘着層側に反射層13として188μm厚の炭酸カルシウム含有シートを貼り付ける以外は実施例1と同様にして第4実施の形態に係る多層蓄光粘着層12aからなる蓄光性シート1を得た。得られた蓄光性シート1を実施例1と同一条件で測定した残光輝度は220mcd/mであり、均一に発光した。更に、この蓄光性シートを実施例1と同一条件で水中に1ヶ月間放置したところ、外観に異常は認められず、残光輝度は217mcd/mであった。蓄光性能の劣化も認められなかった。
【0048】
(実施例4)
実施例1および実施例2で得られた蓄光性シート1に基材層14となる総厚が3mmのポリエチレン製芯材とアルミニウムの積層複合材(三菱樹脂社製アルポリック(登録商標))を貼り合わせて第2実施の形態に係る蓄光性シート1を得た。得られた蓄光性シート1を常用光源蛍光ランプD65により励起照度200ルクスで20分間照射後の残光輝度を測定したところ、実施例1および実施例2の蓄光性シート1の残光輝度と同じあることが確認できた。室温下で水中に1ヶ月間放置後の残光輝度も同じであった。蓄光性能の劣化も認められなかった。
【0049】
(実施例5)
実施例1および実施例2で得られた蓄光性シート1に剥離層16となる25μmのPETフィルム(東レフィルム加工社製セラピール(登録商標)WZ)にアクリル系粘着材(綜研化学社製)を施した剥離材を貼り合わせて第3実施の形態に係る蓄光性シート1を得た。得られた蓄光性シート1を常用光源蛍光ランプD65により励起照度200ルクスで20分間照射後の残光輝度を測定したところ、実施例1および実施例2の蓄光性シート1の残光輝度と同じあることが確認できた。室温下で水中に1ヶ月間放置後の残光輝度も同じであった。蓄光性能の劣化も認められなかった。
【0050】
(比較例1)
蓄光顔料として菱晃社製クライトブライトを55質量部、透光性ウレタン樹脂(一方社油脂工業社製バインゾールU−250)45質量部を混練機にて加熱混合した混練物をプレス成形して厚さ300μmの蓄光成形シートを得た。この蓄光成形シートに接着剤を介して厚さ188μmの酸化チタン含有シート(東レ社製ルミラー(登録商標)E20)を貼り合わせて比較例1の蓄光シートを得た。得られた比較例1の蓄光シートを前記実施例と同一条件で測定した残光輝度は56mcd/mであり、発光度合にはムラが有り不均一であった。更に、この蓄光シートを実施例と同一条件で水中に1ヶ月間放置したところ、シートの剥離が認められ、残光輝度は48mcd/mであった。
【0051】
前記の実施例1、2および比較例1に係る蓄光性シートの粘着性材料に対する蓄光顔料の割合(質量部)は、粘着性材料(粘着性樹脂および架橋剤)100に対してそれぞれ、96、197、122であり、同一条件で測定した残光輝度(mcd/m)はそれぞれ、214、220、56であった。以上の結果から、本願蓄光性シートは、蓄光顔料が粘着性材料(粘着性樹脂および架橋剤)100に対して90〜200質量比率の高濃度でも前記の入出光パスが形成される結果、強い残光輝度が得られることが実証された。これに対して、従来方式の、樹脂に蓄光顔料を練り込んだ比較例1の蓄光シートは、蓄光顔料濃度が実施例1と実施例2の中間位に相当するも、その残光輝度は実施例の1/4位に過ぎないことが確認された。
【0052】
また、実施例1、2の蓄光性シートの蓄光顔料濃度はそれぞれ約49wt%、約66wt%である。常用光源蛍光ランプD65により励起照度200ルクスで20分間照射の条件下では、顔料濃度67wt%以下の範囲で蓄光粘着層の厚みと濃度の選択が可能である。一方、67wt%を超過する高顔料濃度では、照射時間を2時間に延長すると、残光輝度は更に向上した。即ち、20分間照射では蓄光容量が満杯状況にならないことになる。これは顔料濃度が高くなると入出光パスが阻害されるためであると推定される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の蓄光性シートは、粘着性材料に蓄光材料を含有する蓄光粘着層と反射層とを設けることにより、従来の蓄光シートに比較して発光輝度が増し、より鮮明に発光するばかりでなく、反射材で反射して散乱光となりムラがなく均一に発光する蓄光性シートを提供する。また、コスト低減により経済的にも極めて有用である。
【符号の説明】
【0054】
1:蓄光性シート、11:透明性樹脂層、12:蓄光粘着層、12a:多層蓄光粘着層、13:反射層、14:基材層、15:粘着層、16:剥離層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性樹脂層と、粘着性材料に蓄光材料単独または蓄光材料と着色材料の両方を含有する蓄光粘着層と、反射層とをこの順に設けてなることを特徴とする蓄光性シート。
【請求項2】
透明性樹脂層と、粘着性材料に蓄光材料単独または蓄光材料と着色材料の両方を含有する蓄光粘着層と、反射層と、基材層とをこの順に設けてなることを特徴とする蓄光性シート。
【請求項3】
前記反射層側または基材層側に粘着層と、剥離層とをこの順に設けてなることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄光性シート。
【請求項4】
前記透明性樹脂層に代えて剥離層を設けてなることを特徴とする請求項1から3に記載の蓄光性シート。
【請求項5】
前記蓄光粘着層が、複数の蓄光粘着層を積層してなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の蓄光性シート。
【請求項6】
前記粘着性材料が、アクリル系樹脂またはシリコーン系樹脂からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蓄光性シート。
【請求項7】
前記反射層が、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムからなる白色系粉粒状体の中の少なくともいずれか一種を含有する樹脂層と金属蒸着材層のいずれかまたはこれらを組み合わせたものからなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の蓄光性シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の蓄光性シートを帯状にスリットしてなることを特徴とする蓄光性テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206496(P2012−206496A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130098(P2011−130098)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(390025313)株式会社菱晃 (12)
【Fターム(参考)】