説明

蓄光性セメントモルタル木質合板複合体

【課題】夜光性のセメントモルタルを用いて避難路の床等に、照明が無くなった後、直ちに発光して床面の高低や幅、避難方向を表示する舗装を施工することにより、従来のプラスチック蓄光製品や蓄光タイルで表示されている避難誘導表示の欠点を改良する蓄光性セメントモルタル木質合板複合体を提供する。
【解決手段】発光する蓄光顔料と白セッメント等のセメント原料とを水とともに材料が均等に分散するまで攪拌混合した発光性セメントモルタルと木質合板1を複合一体化してなる蓄光性セメント合板複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
夜光セメントモルタルと木質合板を複合化することにより、木質合板を難燃化するとともに、災害や電源の故障などが原因で照明が無くなった後、直ちに合板が発光して付近を明るくすることを特徴とする合板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は暗い箇所を明るくするためには、電灯により照明することが行われていた。 電灯が何らかの故障により消えた場合には、非常灯により照明を継続していた。この発明は非常灯の電源が故障し、なんら照明が無くなることを防止する方法に関する。
本出願人は従来の樹脂系発光塗料に代わる不燃性の夜光セメントモルタルに関する発明を継続してきたが、その成果を特許文献1のように出願をしている。
また、下記の特許文献2から特許文献5にあげたようにモルタルに蓄光剤を添加した方法も出願されている。
【特許文献1】特願2007−306292号
【特許文献2】特開2002−155609号
【特許文献3】特開平8−310848号
【特許文献4】特願2006−357269号
【特許文献5】実願昭58−123593号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1は夜光セメントモルタの組成についての本出願人の出願であるが、その具体的な施工方法については何ら記述してはいなかった。また、特許文献2から特許文献5まではモルタルに蓄光剤を添加した単純な発想のものであり、実際に施工するとセメントが強アルカリであるために、蓄光顔料は作用をしなくなって実用上の効果は無かった。
【0004】
本発明は上記問題点を解決し、災害時に避難が確実に行なわれるようにするための特許文献1の技術を実施するための施工法を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、一般的に大量に使用されている木質合板(通称ベニヤ板と呼ばれている)と夜光セメントモルタを複合させ、蓄光性を木質合板に付加することにより実用化をめざす。木質合板は天井、床、壁、仮囲い、など多くの用途に使用されている。この木質合板を蓄光性にすることにより、このように複合化された木質合板を使用した施設の付近は暗くなると光り、付近を淡い光で照らし出すので、光源の途絶した場合の緊急時の安全を確保し、また、6〜7時間はJ I S Z 9 1 0 7の基準値以上の輝度で付近を照らすから安全灯が不要になり省エネルギーにも寄与する。
【発明の効果】
【0006】
蓄光性セメントモルタルは過去に多くの実験と製品試作が行はれてきたが、蓄光性の持続と高輝度が得られず使用が断念されていた。この原因は、蓄光顔料が中性の環境で無ければ蓄光性を保持できないことに対しての処置がなされていない材料を使用していたことが原因である。セメントは水を加えると硬化反応を開始し、当初はPH11以上の強アルカリ性が100年間で中性化するといわれているので蓄光顔料の効果を発揮する中性域の環境にはない。セメントモルタルが強アルカリ環境であっても蓄光顔料が性能を保持し、コンクリートの表面加工やモルタルとして長期間蓄光性を維持して電源を必要としない各種の夜光製品用途に使用することができるように効果あるものにした出願(特願2007−306292号)を利用して、これを木質合板に吹付けや鏝塗りで施工することにより、照明光源が無くなったとき、太陽光や照明光源に照らされることにより蓄光していた蓄光性モルタル木質合板複合体は、同時に発光して明るく周辺を照らし出して安全を確保する。
夜光セメントモルタルはJ I S Z 9 1 0 7規格の安全標識板で定められている60分後の輝度7mcd/m2の基準値を大きく上回る9.54 mcd/m2以上の性能を持っているので(東京都立産業技術研究センター成績証明書)、安全確実な避難誘導の性能のある建材として各所に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施例にもとづき、実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施例では、白セメント30%と寒水35%に蓄光顔料35%を加えて、それぞれの材料が均等に分散するまで空練りした後、W/Cを50%〜55%となるように水を加えて攪拌して均質な蓄光セメントモルタルを作り、モルタル用のスプレーガンで木質合板にムラの無いように吹きつけた。乾燥した木質合板の上にモルタルを吹きつけると、木質合板がモルタル中の水を吸い取りW/Cが変化する。したがって、蓄光セメントモルタルは硬化のための水分が不足して硬化不良や接着不良を生じることがあるので、木質合板の表面をモルタルの接着性を増加するメトローズの溶解水で湿らせておかなければならない。このようにして木質合板と複合させた蓄光性セメント木質合板複合体の蓄光セメントモルタル面はそのまま自然状態で4週間養生すると表面がつや消しの状態で使用に耐える強度になる。もし、表面を緻密な滑面にしたいときは吹付け直後に左官ゴテで綺麗に均すと良い。冬季の湿度が低い時期や夏季の表面水の蒸発が激しい時期には表面にビニールシートを掛けるか、乾燥防止剤を散布しなければならない。
【0008】
蓄光性セメント木質合板複合体が振動する場所や曲げなどの応力のかかる場所に設置された場合には、木質合板の曲げや振動などの繰返し応力にセメントモルタルが追従しないので複合材としての機能を発揮しなくなるので、其の場合にはシリコーンオリゴマーを5〜10%添加するとセメントモルタルの伸び率を増加して、複合材としての機能を持続できる。このようなシリコーンオリゴマーを添加した蓄光性セメント木質合板複合体の場合の製造方法は、複合化させる木質合板の接着面を湿らせておき、この上に水を加えないドライモルタルにシリコーンオリゴマーを加えて練りこんだものをスプレー又は鏝で塗りつける。ドライモルタルの中のセメントもシリコーンオリゴマーも水分と化合して硬化するので、其の上を水をつけた左官ゴテで均すと良い。表面の指触乾燥は約60分であるが、最終強度はセメントと同様に4週間が必要である。
【0009】
夜光セメントモルタルは蓄光剤の添加量が20%以下では輝度が低く、また35%以上ではモルタルの強度が落ちるので、この範囲で使用するのが良い。表面の密度を高くし、耐磨耗性を向上させるため透明なアクリル樹脂を塗布し、ナトリュームシリケートやカリュウムシリケートを含浸させる方法もある。
【実施例】
【0010】
具体的には、蓄光顔料30% 、硫酸バルューム粉30%、白色セメント30%、シリコンオリゴマー10%を混合して練り上げたものを、水を霧状で散布した木質合板の上に、厚さ500ミクロン程度の厚さでコーティングした状態で、湿度80%の暗室に一時間保管した後に取り出して常温で24時間放置した。表面指触乾燥は暗室から取り出した時点で硬化しているので表面が損蝕することはない。
【0011】
このようにして製造した蓄光性セメント木質合板複合体は晴天の太陽光に10分間晒した後暗室に移動したときの輝度は534mcd/mであったが、一時間後の輝度は47mcd/mとなり、以後7時間経過後の輝度は9.2mcd/mであった。これらの輝度はJ I S Z 9 1 0 7規格の安全標識板で定められている60分後の輝度7mcd/mの基準値を大きく上回るものであり、肉眼で光として確認できる0.3mcd/mの30倍の輝度であるから、実用上十分に効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0012】
この発明は、紫外線劣化や可燃性を理由として使用範囲が限定されていた従来の蓄光樹脂製品の利用範囲を超えて、屋内と屋外への応用範囲を飛躍的に拡大する。
この発明は太陽の自然エネルギーを光源に利用し、無駄に消失されていた蛍光灯の光エネルギーを蓄光して、電源の得られない港湾や海洋施設、盗難防止のための光る壁や床などの建材、等々、従来は利用出来なかった場所や施工箇所の形状に制限されること無く利用範囲への応用が拡大する。エネルギーの有効利用に多大の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明により製造した蓄光性セメント木質合板複合体の断面図
【符号の説明】
【0014】
1 夜光セメントモルタル層
2 木質合板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光する蓄光顔料を用いた蓄光性セメントモルタルと木質合板を複合一体化してなる蓄光性セメント合板複合体。

































【図1】
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【公開番号】特開2009−297937(P2009−297937A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152630(P2008−152630)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(592118734)
【Fターム(参考)】