説明

蓄冷剤用ラック

【課題】シート状の蓄冷剤をむらなく高効率で凍結することができるラックを提供する。
【解決手段】ハンガーラック40は、シート状蓄冷剤1を二つ折りして吊り下げ可能な前後方向に延びた吊り下げ枠46を有する略門形をなす複数の支持枠45が、本体枠41上に所定間隔を開けて並設された構造であって、各支持枠45の吊り下げ部46にはシート状蓄冷剤1が前後2つ並んで吊り下げ支持されるようになっている。吊り下げ枠46の奥側の領域が水平姿勢の水平部48である一方、手前側の領域が奥側に向けて下り勾配となった傾斜部47となっている。奥側のシート状蓄冷剤1Aは水平部48に対して真直姿勢で吊り下げられる一方、手前側のシート状蓄冷剤1Bは傾斜部47に対して、一部オーバラップしながらも奥側が下がった斜め姿勢で吊り下げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の蓄冷剤を吊り下げ支持して凍結庫内で凍結させることに用いる蓄冷剤用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄冷剤の一形態として、短冊状の蓄冷部材を複数連ねて方形のシート状としたものが知られており、このような蓄冷剤を凍結することに使用する蓄冷剤凍結庫として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
このものは、シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げて支持する前後方向に延びた吊り下げ枠を有する略門形をなす複数の支持枠が、本体枠上において所定間隔を開けて並設されたラックを備え、このラックが凍結庫内において複数段に亘って装着された構造であって、各支持枠における吊り下げ枠に対し、それぞれ下向きに二つ折りした2個のシート状の蓄冷剤を奥側と手前側とに並べて吊り下げ支持し、庫内に冷気を供給することで蓄冷剤を凍結するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−7389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の場合、例えばシート状の蓄冷剤の奥行寸法等の条件によっては、前後の蓄冷剤の間で端縁同士をオーバラップさせて支持せざるを得ない場合がある。そうすると、オーバラップしている部分については冷気が当たり難くなるため、それだけ凍結するのに時間が掛かり、また個々の蓄冷剤について凍結具合にむらができるおそれがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、シート状の蓄冷剤をむらなく高効率で凍結することができるようにしたラックを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げ可能な前後方向に延びた吊り下げ枠を有する略門形をなす複数の支持枠が、本体枠上に所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫内に水平姿勢で装着されるラックにおいて、前記支持枠の前記吊り下げ枠が長さ方向に複数の領域に分けられ、少なくとも一つの領域では、隣の領域に向けて先下がりとなった傾斜部とされている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
二つ折りしたシート状の蓄冷剤を支持枠の吊り下げ枠に対して複数個奥行方向に並べて吊り下げ支持する場合に、蓄冷剤の奥行寸法によっては、隣り合う蓄冷剤の端縁同士をオーバラップさせて支持する必要がある。本構成によれば、吊り下げ枠における区分された一つの領域が、隣の領域に向けて先下がりとなった傾斜部となっているから、同傾斜部に蓄冷剤が吊り下げ支持された場合、傾斜部の下端側に位置する蓄冷剤の端縁は、その下側領域が隣り合う蓄冷剤から離間するような斜め姿勢を取り、隣り合う蓄冷剤の端縁との間でオーバラップする面積が少なくできる。結果、蓄冷剤にとっては冷気が当たる面積が増えて凍結速度を速めることができ、かつ個々の蓄冷剤についてむらなく凍結することが可能となる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記支持枠の前記吊り下げ枠が、シート状の蓄冷剤を前後2つ並べて吊り下げ支持可能であるものであって、前記吊り下げ枠の奥側の領域が水平姿勢の水平部である一方、手前側の領域が奥側に向けて下り勾配となった傾斜部となっている。
支持枠の吊り下げ枠における奥側の水平部には、二つ折りされた蓄冷剤が、前後の端縁が鉛直姿勢を取った形態で吊り下げ支持され、一方手前側の傾斜部には、二つ折りされた蓄冷剤が、後縁の下部側が手前側に退避した斜め姿勢を取った形態で吊り下げ支持される。前後の蓄冷剤がオーバラップする場合にもそのオーバラップ面積を減少させることができる。また奥側の蓄冷剤については特にその後縁が鉛直姿勢を取って奥側に張り出さないから、蓄冷剤の奥側に冷気の流通通路を確保する場合に有利である。
【0008】
(2)前記支持枠の前記吊り下げ枠が、シート状の蓄冷剤を前後2つ並べて吊り下げ支持可能であるものであって、前記吊り下げ枠の奥側の領域が手前側に向けて下り勾配となった傾斜部である一方、手前側の領域が水平姿勢の水平部となっている。
二つ折りされた蓄冷剤がまず、支持枠の吊り下げ枠における奥側の傾斜部に対して、前縁の下部側が奥側に退避した斜め姿勢を取った形態で吊り下げ支持され、続いて手前側の水平部に対して、二つ折りされた蓄冷剤が、前後の端縁が鉛直姿勢を取った形態で吊り下げ支持される。同じく前後の蓄冷剤がオーバラップする場合にもそのオーバラップ面積を減少させることができる。この構成では、手前側の蓄冷剤を吊り下げ支持する場合に、その後縁側で、奥側に先に吊り下げ支持されている蓄冷剤の前縁側上部を挟むようにして吊り下げ支持できるから、蓄冷剤の装着作業がしやすい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラックを使用すれば、シート状の蓄冷剤をむらなく高効率で凍結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る凍結庫の側断面図
【図2】開扉状態の凍結庫の正面図
【図3】ハンガーラックの斜視図
【図4】同正面図
【図5】同平面図
【図6】同側面図
【図7】同右奥隅部の拡大平面図
【図8】ハンガーラックの装着構造を示す平面図
【図9】蓄冷剤の支持形態を示す側面図
【図10】実施形態2のハンガーラックを用いた場合の蓄冷剤の支持形態を示す側面図
【図11】実施形態3のハンガーラックを用いた場合の蓄冷剤の支持形態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9によって説明する。
本実施形態に係る蓄冷剤凍結庫10は、図1及び図2に示すように、前面開口の縦長の断熱箱体からなる凍結庫本体11を有し、内部が凍結室12とされて、底面の四隅に設けられた脚13で支持されている。凍結室12の前面開口部14には、断熱扉15が一方の縦縁(例えば右側縁)を中心とした揺動開閉可能に装着されている。
凍結庫本体11の上面には機械室16が設けられ、同機械室16内には、圧縮機18、空冷式の凝縮器19等からなる冷凍装置17等が装備されている。
【0012】
凍結室12の天井部の奥側寄りの位置には、ドレンパンを兼ねたダクトパネル20が張られることで冷却器室21が区画形成されており、同冷却器室21の手前側の位置には吸込口22が、奥側には吹出口23がそれぞれ形成されている。冷却器室21内には冷却器25が収容され、上記の機械室16内に装備された冷凍装置17と冷媒配管で接続されて冷凍サイクルが構成されているとともに、吸込口22に臨んで庫内ファン26が装着されている。
そして、冷凍装置17を運転しつつ庫内ファン26を駆動すると、後記するように、凍結室12の庫内空気が吸込口22から冷却器室21内に吸引され、その空気が冷却器25を流通する間に熱交換によって冷気が生成され、その冷気が吹出口23から凍結室12の奥壁12Aに沿うようにして吹き出され、凍結室12内に冷気が循環供給されるようになっている。
【0013】
凍結室12内には、シート状蓄冷剤1がハンガーラック40に対して整列して支持されて収納されるようになっている。シート状蓄冷剤1は、樹脂シート内にゲル化剤が充填された短冊状をなす蓄冷部材2が4枚連ねられた形状であって、二つ折り可能とされている。後記するように、シート状蓄冷剤1は、ハンガーラック40の支持枠45に対して、2個が前後に並んだ形態で吊り下げ支持されるようになっている。
ハンガーラック40を凍結室12内に装着する手段として、凍結室12の奥壁12Aの左右両端部と、左右の側壁12Bにおける前面開口部14から所定寸法入った位置に、合計4本の棚柱30が立てられており、各棚柱30における同じ高さ位置に棚受金32が装着されて、ハンガーラック40が支持されるようになっている。
【0014】
詳細には、棚受金32は、図8及び図9に示すように、水平な載置板33の先端から支え板34が斜め下方に折り返された形状であり、かつ載置板33には掛止片35が垂直に切り起こし形成されている。棚受金32は、載置板33と支え板34に設けられた取付爪(図示せず)を、棚柱30に列設された取付孔31の上下2個に亘って嵌めることで装着されるようになっている。
この実施形態では、凍結室12内にハンガーラック40が4段に亘って装着されている。ただし最下段のハンガーラック40は、凍結室12の底面上に直に載せられている。
【0015】
次に、ハンガーラック40の形状について詳細に説明する。
ハンガーラック40は、図3ないし図7に示すように、共に鋼線等の金属線材を素材として形成された本体枠41と、シート状蓄冷剤1を二つ折りして吊り下げて支持する複数個(図示8個)の支持枠45とから構成されている。一部既述したように、各支持枠45には、二つ折りされたシート状蓄冷剤1が、2個前後に並んで吊り下げ支持されるようになっており、以降、奥側に吊り下げ支持されるシート状蓄冷剤1と、手前側に吊り下げ支持されるシート状蓄冷剤1とを区別して説明する場合は、それぞれ符号「1A」、「1B」を付して説明する。
【0016】
本体枠41は、前縁と左右の側縁とからなる平面門形をなす三方枠42と、後縁枠44とから構成され、三方枠42の左右の側縁の奥端部では、内向きの鈎形に屈曲された被掛止部43が形成されている。後縁枠44は、上記した三方枠42における左右の被掛止部43の折り返し部43Aの間に亘る長さを有し、両端には、折り返し部43Aより所定寸法短い屈曲部44Aが直角曲げされている。三方枠42の両被掛止部43の間には、折り返し部43Aと屈曲部44Aの先端同士を揃えた形態で後縁枠44が差し渡され、溶接により結合されることで本体枠41が形成されている。
本体枠41は、凍結室12の間口にほぼ匹敵する横幅と、同凍結室12の奥行よりも所定寸法小さい奥行寸法を有する平面方形状に形成され、かつ、左右両側縁の奥端に形成された被掛止部43が、後縁枠44よりも所定寸法後方に突出した形状となっている。
【0017】
支持枠45は、前後方向に延びた吊り下げ枠46の前後両端に、前枠50と後枠51とを下向きに形成した側面略門形状をなしている。支持枠45の前後方向の長さ寸法は、シート状蓄冷剤1の縦幅(奥行寸法)の2倍弱であり、高さ寸法は、シート状蓄冷剤1の長さの半分程度である。
吊り下げ枠46は詳細には、手前側の略半分の長さ領域が、奥側に向けて約5°の傾斜角度で下り勾配となった傾斜部47とされているとともに、奥側の半分弱の長さ領域が水平姿勢をなす水平部48となっており、傾斜部47の後端(下端)と水平部48の前端との間が、約20°の傾斜角度で奥側に向けて上り勾配となった連結部49で連結されている。ここで、傾斜部47の実長が、シート状蓄冷剤1の縦幅(奥行)に等しい寸法が採られている。
【0018】
支持枠45の後枠51は直角に下向きに曲げられており、それに対して前枠50は、直角に下向きに曲げられたのち(垂下部50A)、中央高さより少し下方位置から奥側に向けて斜め(45°)に屈曲された(傾斜部50B)形状となっている。
このような支持枠45は、隣り合う2個の前枠50の下端同士と、後枠51の下端同士がそれぞれ連結枠45Aで連結されることにより、所定間隔を開けて一体的に形成されている。
【0019】
上記した支持枠45の対が4組、各組間に上記した両支持枠45の間隔に等しい間隔を取って左右方向に並べられ、本体枠41における左右の側縁よりも少し内側に入った領域において同本体枠41上に載せられる。詳細には、各支持枠45の対における前側の連結枠45Aが三方枠42の前縁上に載せられ、また後側の連結枠45Aが後縁枠44上に載せられ、それぞれ溶接によって固定されている。
以上により、本体枠41の上面における左右の側縁の少し内側の領域において、図示8個の支持枠45が一定間隔を開けて左右方向に並んで設けられ、かつ、各支持枠45における手前側の一部、すなわち手前側の端縁から前枠50の傾斜部50Bの下端までの奥行領域が、本体枠41の前縁の手前側に突出した形状となる。
また、各支持枠45における後枠51の内側の面には、同じく金属線材からなる規制枠53が、ほぼ中央高さ位置において全幅に亘って当てられ、溶接により固定されている。
【0020】
続いて、本実施形態の作用を説明する。
凍結室12内には、ハンガーラック40が4段に亘って装着される。
上3段のハンガーラック40は、図8に示すように、奥縁の左右両端部に設けられた被掛止部43が、奥壁12Aの左右の棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、また、本体枠51における前縁の左右の隅部が、左右の側壁12Bの棚柱30に取り付けられた棚受金32に載せられて掛止片35に掛止され、これによりハンガーラック40は前後並びに左右方向に移動不能に位置決めされて装着される。3段のハンガーラック40は、極力上下方向の間隔を詰めた状態で装着される。また、最下段のハンガーラック40は、図1に示すように、その上のハンガーラック40との間に同程度の間隔を開けて、凍結室12の底面に直接に載せられる。
【0021】
上記のようにハンガーラック40が装着された場合、ハンガーラック40の支持枠45における前枠50(垂下部50A)と、閉扉された場合の断熱扉15の裏面との間には、所定(棚柱30の幅程度)のスペースが確保されるとともに、支持枠45の後枠51と奥壁12Aとの間にも、前側と同程度のスペースが確保される。
なお、図9に示すように、上下に並んだハンガーラック40において、下側のハンガーラック40の支持枠45における吊り下げ枠46の前端部の上方に、上側のハンガーラック40の前枠50の傾斜部50Bとの間において手前側に広がったスペースができる。
【0022】
上記のようにハンガーラック40が凍結室12内に4段に亘って装着されたら、各ハンガーラック40に対してシート状蓄冷剤1が支持される。この実施形態では、既述したように、二つ折りされたシート状蓄冷剤1が、2個前後に並んで吊り下げ支持される。
まず奥側の領域にシート状蓄冷剤1が装着され、同シート状蓄冷剤1は下向きに二つ折りされたのち、図9の矢線に示すように、その折曲部3をハンガーラック40における対応する支持枠45の吊り下げ枠46の前端部に掛け、同吊り下げ枠46に沿って押し込むと、規制枠53に当たったところで押し込みが停止される。
これにより図9の上段に示すように、二つ折りされたシート状蓄冷剤1Aが、支持枠45の奥側の領域において吊り下げられた形態で支持される。より詳細には、同奥側のシート状蓄冷剤1Aは、折曲部3Aにおける奥側の80%弱の長さ領域が水平部48で支持され、かつ折曲部3Aの前端が連結部49よりも手前側に少し突出した位置まで来た形態の真直姿勢で吊り下げられる。同奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aと後縁5Aとは鉛直姿勢を取っている。
【0023】
支持枠45の手前側の領域にシート状蓄冷剤1Bを支持する場合は、同様に下向きに二つ折りしたのち、同折曲部3Bを対応する支持枠45の吊り下げ枠46における傾斜部47に掛け、その後縁5B側を、奥側の領域で支持されているシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aにおける両側に分かれた部分の間に潜り込ませてオーバラップさせつつ、その後縁5Bが、吊り下げ枠46の傾斜部47の後端に達するまで押し込む。このとき折曲部3Bの前端は傾斜部47の前端と揃えられる。
その結果、手前側のシート状蓄冷剤1Bは、傾斜部47の全長に亘って掛けられて支持され、そのとき同シート状蓄冷剤1Bは、その前縁4B並びに後縁5Bが、それぞれの下端が手前側に突き出されるような斜め姿勢を採って吊り下げられる。
【0024】
このように手前側のシート状蓄冷剤1Bを、下端が手前側に突き出されるような斜め姿勢で吊り下げると、手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bは、奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aよりも全体として低い位置に下がり、なおかつ同後縁5Bの下側が奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aから離間するような斜め姿勢を取るから、例えば、手前側と奥側のシート状蓄冷剤1が共に真直姿勢で吊り下げられた場合と比較すると、手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bと奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aとの間でオーバラップする面積が少なくなる。
【0025】
なお、特に上から2段ないし4段目のハンガーラック40では、上下の間隔が狭いと、二つ折りされたシート状蓄冷剤1を支持枠45に掛ける作業がし難いと言えるが、この実施形態では、2段目ないし4段目のハンガーラック40におけるシート状蓄冷剤1を挿入する部分が、手前側に広がるように口を開けた形態となるから、二つ折りされたシート状蓄冷剤1を挿入し、ひいては支持枠45の吊り下げ枠46に掛ける作業がしやすい。
【0026】
シート状蓄冷剤1A,1Bが、上記した要領で、各段のハンガーラック40についてそれぞれ奥側と手前側において吊り下げられた形態で支持された場合、奥側に支持されたシート状蓄冷剤1Aの後縁5Aは、規制枠53に当たることでそれ以上奥側に押し込まれることが規制され、言い換えると奥側のシート状蓄冷剤1Aの後縁5Aと奥壁12Aとの間には、所定間隔の冷気通路60が確保される。
【0027】
シート状蓄冷剤1の収納が完了したら、断熱扉15が閉じられたのち冷却運転が開始される。すなわち、冷凍装置17と庫内ファン26とが駆動されると、図1の矢線に示すように、吸込口22から吸い込まれた庫内空気が冷却器25を通過する間に冷気が生成され、その冷気が吹出口23から奥壁12Aの表面の冷気通路60に向けて吹き出されたのち、各段のハンガーラック40に支持されたシート状蓄冷剤1を通って前方に吹き抜け、そののち断熱扉15の裏面に沿って立ち上がるように循環供給され、これにより収納されたシート状蓄冷剤1が凍結されることになる。
【0028】
ここで、手前側のシート状蓄冷剤1Bは奥側が下がった斜め姿勢で吊り下げられていることによって、同手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bと奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aとの間でオーバラップする面積が少なくなっており、言い換えると、各シート状蓄冷剤1にとっては凍結室12内に循環供給される冷気が当たる面積が増えることになる。そのため、凍結速度が速められる。
また、収納された蓄冷剤群の後面側には冷気通路60が形成されていて、吹出口23から吹き出された冷気を冷気通路60を通して底部側にまで流下させることができ、もって凍結室12内の全域に亘って冷気を循環供給することができる。
【0029】
以上のように本実施形態のハンガーラック40を使用した場合は、以下のような効果を得ることができる。
当該ハンガーラック40では、支持枠45の吊り下げ枠46に対して二つ折りしたシート状蓄冷剤1を2個前後に並べて吊り下げ支持するようになっているが、特に支持枠45の吊り下げ枠46について、奥側には水平姿勢をなす水平部48が、手前側には奥側に向けて下り勾配となった斜め姿勢をなす傾斜部47が形成された形状となっている。したがって、奥側の水平部48には、二つ折りされたシート状蓄冷剤1Aが、前後の端縁4A,5Aが鉛直姿勢を取った真直形態で吊り下げ支持され、一方手前側の傾斜部47には、二つ折りされたシート状蓄冷剤1Bが、奥側が下がった斜め姿勢をなす形態で吊り下げ支持される。
【0030】
上記の結果、手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bと奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aとの間でオーバラップする場合にも、手前側のシート状蓄冷剤1Bが斜め姿勢を取ることにより、詳細には、手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bが、奥側のシート状蓄冷剤1の前縁4Aよりも全体として低い位置に下がり、なおかつ同後縁5Bの下側が奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aから離間するような斜め姿勢となることにより、手前側と奥側のシート状蓄冷剤1が共に真直姿勢で吊り下げられた場合と比較すると、手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bと奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aとの間でオーバラップする面積が少なくなる。
これにより、シート状蓄冷剤1A,1Bにとっては、凍結室12内に循環供給されてシート状蓄冷剤1A,1Bの側面に沿って流れる冷気が当たる面積が増え、凍結速度を速めることができ、かつ個々のシート状蓄冷剤1についてもむらなく凍結することが可能となる。
【0031】
また、奥側のシート状蓄冷剤1Aについては、規制枠53によって奥側への押し込みが規制され、なおかつ真直姿勢で吊り下げられることによりその後縁5Aが奥側に張り出さないから、蓄冷剤群の奥側に冷気通路60が確保される。そのため、吹出口23から吹き出された冷気を冷気通路60を通して底部側にまで流下させることができ、凍結室12内の全域に亘って冷気を循環供給することができて、全シート状蓄冷剤1を均一にかつ高速度で凍結させることに寄与し得る。
【0032】
<実施形態2>
図10は、本発明の実施形態2を示す。実施形態2のハンガーラック40Xでは、支持枠45Xにおける吊り下げ枠46Xの形状が、上記実施形態1の吊り下げ枠46とは前後対称形状、すなわち、奥側の略半分の長さ領域が、手前側に向けて約5°の傾斜角度で下り勾配となった傾斜部47とされているとともに、手前側の半分弱の長さ領域が水平姿勢をなす水平部48となっており、傾斜部47の前端(下端)と水平部48の後端との間が、約20°の傾斜角度で手前側に向けて上り勾配となった連結部49で連結されている。なお、規制枠は除去されている。
【0033】
実施形態2のハンガーラック40Xにおける支持枠45Xにシート状蓄冷剤1を支持する場合は、奥側のシート状蓄冷剤1Aについては、その折曲部3Aが傾斜部47の全長に亘って掛けられて、手前側が下がった斜め姿勢で吊り下げられ、続いて手前側のシート状蓄冷剤1Bは、折曲部3Bにおける手前側の80%弱の長さ領域が水平部48で支持された形態で、真直姿勢で吊り下げ支持される。
手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bと奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aとの間でオーバラップする場合にも、奥側のシート状蓄冷剤1Aがその前縁4Aの下端側が奥側に逃げた斜め姿勢を取ることにより、同様にオーバラップ面積が減少される。
この実施形態では、手前側のシート状蓄冷剤1Bを吊り下げ支持する場合に、その後縁5B側で、奥側に先に吊り下げ支持されているシート状蓄冷剤1Aの前縁4A側上部を挟むようにして吊り下げ支持できるから、シート状蓄冷剤1の装着作業がしやすい利点がある。
【0034】
<実施形態3>
図11は、本発明の実施形態3を示す。実施形態3のハンガーラック40Yでは、支持枠45Yにおける吊り下げ枠46Yの形状が、奥側の半分の長さ領域が、手前側に向けて約5°の傾斜角度で下り勾配となった傾斜部47Yで、手前側の半分の長さ領域が奥側に向けて約5°の傾斜角度で下り勾配となった傾斜部47Yで、両傾斜部47Yの下端同士を連結した構造となっている。規制枠は除去されている。
【0035】
実施形態3のハンガーラック40Yの支持枠45Yにシート状蓄冷剤1を吊り下げ支持する場合は、奥側のシート状蓄冷剤1Aは、折曲部3Aが奥側の傾斜部47Yに掛けられて、手前側が下がった斜め姿勢で吊り下げられ、手前側のシート状蓄冷剤1Bは、折曲部3Bが手前側の傾斜部47Yに掛けられて、奥側が下がった斜め姿勢で吊り下げ支持される。
すなわち、手前側のシート状蓄冷剤1Bの後縁5Bと奥側のシート状蓄冷剤1Aの前縁4Aとの間でオーバラップする場合にも、奥側のシート状蓄冷剤1Aではその前縁4Aの下端側が奥側に逃げた斜め姿勢を取り、また手前側のシート状蓄冷剤1Bではその後縁5Bの下端側が手前側に逃げた斜め姿勢を取ることにより、オーバラップ面積は極めて少なくなる。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、ハンガーラックの支持枠に対して、シート状蓄冷剤が奥側と手前側の二列に亘って吊り下げ支持される場合を例示したが、同シート状蓄冷剤の大きさによっては三列以上に並べる場合であってもよい。その場合、支持枠の吊り下げ枠は列の数の長さ領域に分けられ、任意の領域において隣の領域に向けて先下がりとなった傾斜部とされていればよい。
(2)ハンガーラックに支持されるシート状蓄冷剤は、短冊状の蓄冷部材を複数個連ねた形態のものに限らず、1枚の大きな蓄冷剤等、要は二つ折りして吊り下げ支持可能な形態のものであればよい。
(3)凍結庫における冷気の循環方向としては、上記実施形態とは逆に、断熱扉の裏面に沿うように吹き出されて後方に吹き抜けたのち庫内の奥壁に沿って立ち上るように循環供給されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,1A,1B…シート状蓄冷剤 10…凍結庫 12…凍結室 30…棚柱 40,40X,40Y…ハンガーラック(ラック) 41…本体枠 45…支持枠 46…吊り下げ枠 47,47Y…傾斜部 48…水平部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の蓄冷剤を二つ折りして吊り下げ可能な前後方向に延びた吊り下げ枠を有する略門形をなす複数の支持枠が、本体枠上に所定間隔を開けて並設された構造であって、凍結庫内に水平姿勢で装着されるラックにおいて、
前記支持枠の前記吊り下げ枠が長さ方向に複数の領域に分けられ、少なくとも一つの領域では、隣の領域に向けて先下がりとなった傾斜部とされていることを特徴とする蓄冷剤用ラック。
【請求項2】
前記支持枠の前記吊り下げ枠が、シート状の蓄冷剤を前後2つ並べて吊り下げ支持可能であるものであって、前記吊り下げ枠の奥側の領域が水平姿勢の水平部である一方、手前側の領域が奥側に向けて下り勾配となった傾斜部となっていることを特徴とする請求項1記載の蓄冷剤用ラック。
【請求項3】
前記支持枠の前記吊り下げ枠が、シート状の蓄冷剤を前後2つ並べて吊り下げ支持可能であるものであって、前記吊り下げ枠の奥側の領域が手前側に向けて下り勾配となった傾斜部である一方、手前側の領域が水平姿勢の水平部となっていることを特徴とする請求項1記載の蓄冷剤用ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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