説明

蓄冷機能付きエバポレータ

【課題】小型軽量化を図ることができるとともに、蓄冷材を効率良く冷却することが可能であり、しかも通気抵抗の上昇を抑制しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供する。
【解決手段】蓄冷機能付きエバポレータは、互いに間隔をおいて配置された複数の扁平状冷媒流通管13と、冷媒流通管13の片面側に配置されて冷媒流通管13にろう付され、かつ内部に蓄冷材が封入された扁平状蓄冷材容器15とを備えている。蓄冷材容器15は、冷媒流通管13にろう付された容器本体部21と、容器本体部21の風下側に連なるとともに冷媒流通管13よりも風下側に突出するように設けられ、かつ厚み方向の寸法が容器本体部21の厚み方向の寸法よりも大きくなった内容積増大部22とを備えている。蓄冷材容器15内に、容器本体部21から内容積増大部22に至るインナーフィン23を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1および図2の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
ところで、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を利用して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
蓄冷機能付きエバポレータとして、幅方向を通風方向に向けるとともに通風方向に間隔をおいて配置された2つの扁平状冷媒流通管からなる組が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて複数配置され、2つの冷媒流通管からなる各組の片面側に、幅方向を通風方向に向けるとともに内部に蓄冷材が封入された扁平状蓄冷材容器が、通風方向に隣り合う冷媒流通管に跨るように配置されて冷媒流通管にろう付され、蓄冷材容器の厚み方向の寸法が全体に等しくなっており、通風方向に並んだ冷媒流通管からなる組および当該組の冷媒流通管にろう付された蓄冷材容器からなる組み合わせ体が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置され、隣り合う組み合わせ体どうしの間が通風間隙とされ、通風間隙にアウターフィンが配置されて冷媒流通管および蓄冷材容器にろう付されているものが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータによれば、冷媒流通管を流れる低温の冷媒により蓄冷材容器内の蓄冷材に冷熱が蓄えられるようになっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいては、蓄冷性能を向上させる目的で蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くしようとすると、蓄冷材容器および冷媒流通管の長さを長くするとともに、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さを全体に高くする必要がある。しかしながら、蓄冷材容器および冷媒流通管の長さを長くすると、エバポレータの熱交換コア部が大型化し、重量が大きくなったり、省スペース性が損なわれたりするという問題がある。また、蓄冷材容器の容器高さを全体に高くすると、蓄冷材を冷却するのに時間がかかるため、冷房運転開始からのクールダウン性能が低下する。しかも、蓄冷機能付きエバポレータの熱交換コア部の寸法を変えないで蓄冷材容器の容器高さを高くすると、通風間隙の通風面積が減少して通気抵抗が増加し、エバポレータとしての冷却性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4043776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比べて小型軽量化を図ることができるとともに、蓄冷材を効率良く冷却することが可能であり、しかも通気抵抗の上昇を抑制しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)上下方向にのびるとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、互いに間隔をおいて並列状に配置され、冷媒流通管の片面側に、上下方向にのびるとともに幅方向を通風方向に向け、かつ内部に蓄冷材が封入された扁平状蓄冷材容器が配置されて冷媒流通管に熱的に接触させられた蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器が、冷媒流通管に熱的に接触させられた容器本体部と、容器本体部の風上側または風下側に連なるとともに冷媒流通管よりも通風方向外側に突出するように設けられ、かつ厚み方向の寸法が容器本体部の厚み方向の寸法よりも大きくなった内容積増大部とを備えており、蓄冷材容器内に、容器本体部から内容積増大部に至るインナーフィンが配置されている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0013】
2)複数の蓄冷材容器の内部が内容積増大部において連通させられている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
3)すべての蓄冷材容器の内部が連通させられている上記2)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
4)インナーフィンがコルゲート状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなる上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
5)インナーフィンがオフセット状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部を有する波状帯板が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、通風方向に隣り合う2つの帯板の波頂部どうしおよび波底部どうしが上下方向に位置ずれしている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0017】
6)インナーフィンのフィン高さが全体に同一であり、かつ蓄冷材容器の容器本体部の内部高さと等しくなるとともに内容積増大部の内部高さよりも低くなっている上記4)または5)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0018】
7)冷媒流通管および蓄冷材容器が別個に形成されるとともに、蓄冷材容器の容器本体部が冷媒流通管にろう付されており、冷媒流通管および冷媒流通管にろう付された容器本体部を有する蓄冷材容器からなる組み合わせ体が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置され、隣り合う組み合わせ体どうしの間が通風間隙とされ、通風間隙にアウターフィンが配置され、アウターフィンにおける蓄冷材容器の内容積増大部側の部分が、冷媒流通管よりも通風方向外側に突出させられ、蓄冷材容器の内容積増大部の両面にアウターフィンがろう付されている上記1)〜6)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0019】
8)上記各組み合わせ体の冷媒流通管が、通風方向に間隔をおいて複数配置され、当該組み合わせ体の蓄冷材容器の容器本体部が、当該組み合わせ体の全冷媒流通管に跨るように配置されて冷媒流通管にろう付されている上記7)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0020】
9)蓄冷材容器の風下側部分が冷媒流通管部よりも通風方向外側に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも通風方向外側に突出した部分に内容積増大部が設けられている上記1)〜8)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0021】
上記1)〜9)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器が、冷媒流通管に熱的に接触させられた容器本体部と、容器本体部の風上側または風下側に連なるとともに冷媒流通管よりも通風方向外側に突出するように設けられ、かつ厚み方向の寸法が容器本体部の厚み方向の寸法よりも大きくなった内容積増大部とを備えており、蓄冷材容器内に、容器本体部から内容積増大部に至るインナーフィンが配置されているので、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータのように、冷媒流通管および蓄冷材容器の長さを長くしたり、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さを全体に高くしたりすることなく、蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くすることができる。したがって、蓄冷材容器の容器高さが全体に同一である特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータ比べて小型軽量化を図ることができる。また、蓄冷材容器の容器高さが全体に同一である特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、容器高さを大きくする場合に比べて、蓄冷材を冷却するのに要する時間を短縮することが可能になり、冷房運転開始からのクールダウン性能の低下が抑制される。しかも、蓄冷材容器内に、容器本体部から内容積増大部に至るインナーフィンが配置されているので、内容積増大部内の蓄冷材も速やかに冷却されることになる。したがって、蓄冷材容器内の蓄冷材を効率良く冷却することができる。
【0022】
また、内容積増大部が、容器本体部の風上側または風下側に連なるとともに冷媒流通管よりも通風方向外側に突出するように設けられているので、上記7)の蓄冷機能付きエバポレータのように、冷媒流通管および冷媒流通管に熱的に接触させられた容器本体部を有する蓄冷材容器からなる組み合わせ体が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置され、隣り合う組み合わせ体どうしの間が通風間隙とされた場合であっても、熱交換コア部の寸法を変えることなく蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くすることができる。したがって、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比べて、通風間隙の面積の減少を抑制することが可能なって、通気抵抗の上昇を抑制することができ、その結果冷却性能の低下を防止することができる。
【0023】
上記2)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、内部が連通させられた複数の蓄冷材容器のうちのいずれか1つの蓄冷材容器の内容積増大部に蓄冷材充填口を形成するとともに、同じくいずれか1つの蓄冷材容器の内容積増大部に空気抜き口を形成しておくことにより、内部が連通させられている蓄冷材容器内への蓄冷材の封入作業が簡単になる。
【0024】
上記4)〜6)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、内容積増大部から蓄冷材容器内に蓄冷材を充填する際に、蓄冷材容器の内容積増大部内に入った蓄冷材が、インナーフィンの隣り合う連結部間の部分を通って容器本体部に至るので、蓄冷材の充填作業を簡単に行うことができる。
【0025】
上記7)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、冷媒流通管および冷媒流通管にろう付された容器本体部を有する蓄冷材容器からなる組み合わせ体が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置され、隣り合う組み合わせ体どうしの間が通風間隙とされ、通風間隙にアウターフィンが配置され、アウターフィンにおける蓄冷材容器の内容積増大部側の部分が、冷媒流通管よりも外側に突出させられ、蓄冷材容器の内容積増大部の両面にアウターフィンがろう付されているので、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、蓄冷材容器の内容積増大部内の蓄冷材の有する冷熱が、内容積増大部の両側面から内容積増大部の両側面にろう付されているフィンを介して通風間隙を通過する空気に伝えられるので、放冷性能が向上する。
【0026】
上記9)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、内容積増大部が容器本体部の風下側に設けられているので、通風間隙を流れてくる空気の温度が低くなっている部分に、多くの蓄冷材が入れられている内容積増大部が存在することになる。したがって、蓄冷材容器内の蓄冷材を効率良く冷却することができ、蓄冷性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1の一部を省略したA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B線拡大断面図である。
【図4】図2のC−C線拡大断面図である。
【図5】一体化された複数の蓄冷材容器を示す斜視図である。
【図6】1つの蓄冷材容器を示す分解斜視図である。
【図7】蓄冷材容器の変形例を示す図6相当の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0029】
以下の説明において、通風方向下流側(図1〜図4に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。また、前方から後方を見た際の左右、すなわち図1の左右を左右というものとする。
【0030】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0031】
図1はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2〜図6はその要部の構成を示す。
【0032】
図1および図2において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0033】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(5)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ冷媒入口ヘッダ部(5)に一体化された冷媒出口ヘッダ部(6)とを備えている。冷媒入口ヘッダ部(5)の右端部に冷媒入口(7)が設けられ、冷媒出口ヘッダ部(6)の右端部に冷媒出口(8)が設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ第1中間ヘッダ部(9)に一体化された第2中間ヘッダ部(11)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(9)内と第2中間ヘッダ部(11)内とは、両中間ヘッダ部(9)(11)の右端部に跨ってろう付され、かつ内部が通路となった連通部材(12)を介して通じさせられている。
【0034】
図1〜図4に示すように、熱交換コア部(4)には、上下方向にのびるとともに幅方向を前後方向に向け、かつ前後方向に間隔をおいて配置された複数、ここでは2つのアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(13)からなる組(14)が、左右方向(冷媒流通管(13)の幅方向と直角をなす方向)に間隔をおいて複数配置されており、2つの冷媒流通管(13)からなる組(14)の片面、ここでは左側面側に、上下方向にのびるとともに幅方向を前後方向に向け、かつ内部に蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製扁平状蓄冷材容器(15)が、各組(14)の2つの冷媒流通管(13)に跨るように配置されている。
【0035】
前側の冷媒流通管(13)の上端部は冷媒入口ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は第1中間ヘッダ部(9)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(13)の上端部は冷媒出口ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は第2中間ヘッダ部(11)に接続されている。そして、前後方向に並んだ2つの冷媒流通管(13)からなる各組(14)および各組(14)の2つの冷媒流通管(13)に跨って配置された蓄冷材容器(15)によって、複数の組み合わせ体(16)が構成されている。当該組み合わせ体(16)は左右方向に間隔をおいて配置されており、隣り合う組み合わせ体(16)どうしの間が通風間隙(17)となるとともに、当該通風間隙(17)にアルミニウム製アウターフィン(18)が配置されて冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(15)にろう付されている。各組(14)の冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(15)からなる組み合わせ体(16)の左右両端に位置するものの外側にもアルミニウム製アウターフィン(18)が配置されており、右端のアウターフィン(18)は前後両冷媒流通管(13)に跨ってろう付され、左端のアウターフィン(18)は蓄冷材容器(15)にろう付されている。なお、アウターフィン(18)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。左右両端のアウターフィン(18)の外側にはアルミニウム製サイドプレート(19)が配置されてアウターフィン(18)にろう付されており、サイドプレート(19)と左右両端の組み合わせ体(16)との間にも通風間隙(17)が設けられている。
【0036】
図2〜図5に示すように、蓄冷材容器(15)は、冷媒入口ヘッダ部(5)および第1中間ヘッダ部(9)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後の冷媒流通管(13)にろう付された容器本体部(21)と、容器本体部(21)の前側縁に連なるとともに冷媒入口ヘッダ部(5)および第1中間ヘッダ部(9)の前側縁よりも前方に突出するように設けられ、かつ厚み方向(左右方向)の寸法が容器本体部(21)の厚み方向(左右方向)の寸法よりも高くなった内容積増大部(22)とよりなる。容器本体部(21)の左右方向の寸法は全体に等しくなっている。内容積増大部(22)の左右方向の寸法は、冷媒流通管(13)の厚み方向(左右方向)の寸法である管高さに、蓄冷材容器(15)の容器本体部(21)の厚み方向の寸法を加えた高さと等しくなっている。内容積増大部(22)は、容器本体部(21)対して右方のみに膨出しており、容器本体部(21)および内容積増大部(22)の左側面は面一である。
【0037】
蓄冷材容器(15)内には、容器本体部(21)の後側縁部から内容積増大部(22)の前端部に至るアルミニウム製インナーフィン(23)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(23)は、前後方向にのびる波頂部(23a)、前後方向にのびる波底部(23b)、および波頂部(23a)と波底部(23b)とを連結する連結部(23c)よりなるコルゲート状である。インナーフィン(23)のフィン高さは全体に等しく、蓄冷材容器(15)の容器本体部(21)および内容積増大部(22)の左側壁内面と、容器本体部(21)の右側壁内面とにろう付されている。
【0038】
蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)の上下両端部は、容器本体部(21)よりも上下方向外側に突出しており、当該突出部に、左右方向外方に膨出した膨出状タンク形成部(25)が設けられている。隣り合う蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)のタンク形成部(25)どうしは相互にろう付されており、これによりすべての蓄冷材容器(15)が一体化されている。また、隣り合う蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)のタンク形成部(25)内どうしは、タンク形成部(25)の膨出端壁に形成された連通穴(26)を介して通じさせられている。そして、すべての蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)の上下のタンク形成部(25)によって上下両連通タンク(27)が形成されており、すべての蓄冷材容器(15)の内部が上下両連通タンク(27)において通じさせられている。図示は省略したが、上下両連通タンク(27)のうちのいずれか一方に蓄冷材充填口が形成されるとともに、同他方に空気抜き口が形成されており、蓄冷材充填口を通して全蓄冷材容器(15)内に蓄冷材が充填されるようになっていることが好ましい。この場合、蓄冷材は、まず蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)内に入り、インナーフィン(23)の隣り合う連結部(23c)間を通って、容器本体部(21)内に入る。蓄冷材充填口および空気抜き口は、蓄冷材容器(15)内への蓄冷材の充填後に適当な手段により塞がれている。蓄冷材容器(15)内へ充填される蓄冷材としては、たとえば水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整されたものが用いられる。また、蓄冷材容器(15)内への蓄冷材の充填量は、全蓄冷材容器(15)内を上端部まで満たすような量とするのがよい。
【0039】
図6に示すように、蓄冷材容器(15)は、周縁部どうしが互いにろう付された2枚の略縦長方形状アルミニウム板(28)(29)よりなる。すべてのアルミニウム板(28)(29)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、左右両方から見た外形は同一となっている。蓄冷材容器(15)を構成する左側のアルミニウム板(28)は、前側部分を除いた大部分を占めるとともに、左方に膨出した容器本体部(21)形成用の第1膨出部(31)と、第1膨出部(31)の前側に連なるとともに左方に膨出し、かつ第1膨出部(31)と膨出高さの等しい内容積増大部(22)形成用の第2膨出部(32)と、第2膨出部(32)の上下両端部に設けられて左方に膨出し、かつ第2膨出部(32)よりも膨出高さの高いタンク形成部(25)形成用の第3膨出部(33)とを備えている。左端の蓄冷材容器(15)を除いた蓄冷材容器(15)を構成する左側アルミニウム板(28)における第3膨出部(33)の膨出端壁に連通穴(26)が形成されている。
【0040】
蓄冷材容器(15)を構成する右側のアルミニウム板(29)は、前側部分を除いた大部分を占める容器本体部(21)形成用の平坦部(34)と、平坦部(34)の前側に連なるとともに右方に膨出した内容積増大部(22)形成用の第1膨出部(35)と、第1膨出部(35)の上下両端部に設けられて右方に膨出し、かつ第1膨出部(35)よりも膨出高さの高いタンク形成部(25)形成用の第2膨出部(36)とを備えている。右端の蓄冷材容器(15)を除いた蓄冷材容器(15)を構成する右側アルミニウム板(29)における第2膨出部(36)の膨出端壁に連通穴(26)が形成されている。
【0041】
そして、2枚のアルミニウム板(28)(29)を、膨出部(32)(35)および(33)(36)の開口どうしが対向するとともに、平坦部(34)により第1膨出部(31)の開口を閉鎖するように組み合わせてろう付することによって、蓄冷材容器(15)が形成されている。隣接する2つの蓄冷材容器(15)のタンク形成部(25)どうしは、第3膨出部(33)と第2膨出部(36)の連通穴(26)どうしが通じるように相互にろう付されている。
【0042】
アウターフィン(18)の前側部分は、前側の冷媒流通管(13)よりも前方に突出させられており、アウターフィン(18)における前側の冷媒流通管(13)よりも前方に突出した部分が、左右両側に位置する蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)の左右両側面にろう付されている。
【0043】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の冷媒入口ヘッダ部(5)内に入り、前側の全冷媒流通管(13)を通って第1中間ヘッダ部(9)内に流入する。第1中間ヘッダ部(9)内に入った冷媒は、連通部材(12)を通って第2中間ヘッダ部(11)内に入った後、後側の全冷媒流通管(13)を通って出口ヘッダ部(6)内に流入し、冷媒出口(8)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(13)内を流れる間に、通風間隙(17)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0044】
このとき、冷媒流通管(13)内を流れる冷媒によって蓄冷材容器(15)の容器本体部(21)内の蓄冷材が冷却され、さらに容器本体部(21)内の冷却された蓄冷材の有する冷熱がインナーフィン(23)を介して蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)内の蓄冷材に伝えられるとともに、通風間隙(17)を通って冷媒により冷やされた空気によって蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)内の蓄冷材が冷却され、その結果蓄冷材容器(15)内全体の蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0045】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷材容器(15)の容器本体部(21)および内容積増大部(22)内の蓄冷材の有する冷熱が、インナーフィン(23)を介して容器本体部(21)および内容積増大部(22)の左側壁に伝えられ、さらに蓄冷材容器(15)の左側面にろう付されているアウターフィン(18)を介して通風間隙(17)を通過する空気に伝えられる。また、蓄冷材容器(15)の容器本体部(21)内の蓄冷材の有する冷熱が、インナーフィン(23)を介して容器本体部(21)の右側壁に伝えられるとともに、容器本体部(21)の右側面から冷媒流通管(13)および当該冷媒流通管(13)にろう付されているアウターフィン(18)を介して通風間隙(17)を通過する空気に伝えられる。さらに、蓄冷材容器(15)の内容積増大部(22)内の蓄冷材の有する冷熱は、内容積増大部(22)の右側面から内容積増大部(22)の右側面にろう付されているアウターフィン(18)を介して通風間隙(17)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0046】
上記実施形態において、蓄冷機能付きエバポレータの冷媒流通管は、所謂積層型エバポレータの場合と同様に、2枚のアルミニウム板を対向させて周縁部どうしをろう付することにより形成された扁平中空体に設けられていてもよい。すなわち、扁平中空体を構成する両アルミニウム板間に膨出状に形成されたものであってもよい。
【0047】
図7は蓄冷材容器の変形例を示す。
【0048】
図7に示す蓄冷材容器(40)の場合、その内部には、容器本体部(21)の後端部から内容積増大部(22)の前端部に至るオフセット状のアルミニウム製インナーフィン(41)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(41)は、前後方向(通風方向)にのびる波頂部(42a)、前後方向にのびる波底部(42b)、および波頂部(42a)と波底部(42b)とを連結する連結部(42c)を有する波状帯板(42)が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成されたものであり、前後方向に隣り合う2つの帯板(42)の波頂部(42a)どうしおよび波底部(42b)どうしは、上下方向に位置ずれしている。
【0049】
その他の構成は、上述した実施形態の蓄冷材容器(15)と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0051】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(13):冷媒流通管
(15)(40):蓄冷材容器
(16):冷媒流通管と蓄冷材容器との組み合わせ体
(17):通風間隙
(18):アウターフィン
(21):容器本体部
(22):内容積増大部
(23)(41):インナーフィン
(23a):波頂部
(23b):波底部
(23c):連結部
(42):波状帯板
(42a):波頂部
(42b):波底部
(42c):連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にのびるとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、互いに間隔をおいて並列状に配置され、冷媒流通管の片面側に、上下方向にのびるとともに幅方向を通風方向に向け、かつ内部に蓄冷材が封入された扁平状蓄冷材容器が配置されて冷媒流通管に熱的に接触させられた蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器が、冷媒流通管に熱的に接触させられた容器本体部と、容器本体部の風上側または風下側に連なるとともに冷媒流通管よりも通風方向外側に突出するように設けられ、かつ厚み方向の寸法が容器本体部の厚み方向の寸法よりも大きくなった内容積増大部とを備えており、蓄冷材容器内に、容器本体部から内容積増大部に至るインナーフィンが配置されている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
複数の蓄冷材容器の内部が内容積増大部において連通させられている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
すべての蓄冷材容器の内部が連通させられている請求項2記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
インナーフィンがコルゲート状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなる請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
インナーフィンがオフセット状であり、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部を有する波状帯板が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、通風方向に隣り合う2つの帯板の波頂部どうしおよび波底部どうしが上下方向に位置ずれしている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
インナーフィンのフィン高さが全体に同一であり、かつ蓄冷材容器の容器本体部の内部高さと等しくなるとともに内容積増大部の内部高さよりも低くなっている請求項4または5記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項7】
冷媒流通管および蓄冷材容器が別個に形成されるとともに、蓄冷材容器の容器本体部が冷媒流通管にろう付されており、冷媒流通管および冷媒流通管にろう付された容器本体部を有する蓄冷材容器からなる組み合わせ体が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置され、隣り合う組み合わせ体どうしの間が通風間隙とされ、通風間隙にアウターフィンが配置され、アウターフィンにおける蓄冷材容器の内容積増大部側の部分が、冷媒流通管よりも通風方向外側に突出させられ、蓄冷材容器の内容積増大部の両面にアウターフィンがろう付されている請求項1〜6のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項8】
上記各組み合わせ体の冷媒流通管が、通風方向に間隔をおいて複数配置され、当該組み合わせ体の蓄冷材容器の容器本体部が、当該組み合わせ体の全冷媒流通管に跨るように配置されて冷媒流通管にろう付されている請求項7記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項9】
蓄冷材容器の風下側部分が冷媒流通管部よりも通風方向外側に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも通風方向外側に突出した部分に内容積増大部が設けられている請求項1〜8のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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